資料4 第6回会議における主な意見

第6回 経営系大学院機能強化検討協力者会議における委員の主な御意見(概要)

1.基本認識


≪社会や企業(出口)からのニーズへの対応≫


・アジアでビジネススクールが育ってきていることに加え、市場が伸びてきていることを多くの企業は意識せざるを得ない。少なくともアジアのビジネススクールと対等に伍していける異文化体験を積めるビジネススクールの教育、人材養成体験が強化されないと、日本の地位が低下していくということを、様々な企業が強く意識しているだろう。

・文化を理解した上で、リベラルな振る舞いができる人材が必要。企業側から見た場合、どの国のビジネススクールでも養成が可能であれば、日本のビジネススクールは今後どうするかという話は出て来なくなると思う。

・一般的にビジネススクールに期待するのは、スキル教育と、新たなキャリア。そういう機能と、もう1つは、自身の知らない社会の人と交わること。ビジネススクールが今後スキルに加えて、適切なものを描き出して伝えていく必要があると思うし、ビジネススクールの間である程度全体を盛り上げるために何をするかのシナリオを書いていく必要があるだろう。企業がグローバル化する上でのニーズを満たす、少し新たなビジネススクールの在り方を提示する必要があるのではないか。

・一般的に、ビジネススクールの必要性についての日本企業の認識度合いは、高まりつつある。1つの要因としてグローバル化があり、海外の子会社を管理する時に、ビジネススクールで習うスキルが必要。もう1つの要因として、日本企業の持ち株会社化が進んでいることがある。事業会社から離れた経営体となり、経営スタイルがより欧米型に近づきつつある。そういうことを踏まえ、ビジネススクールの必要性についての認識は確実に高まっていくと思う。

・個別の企業では中々賄えない部分に、ビジネススクールでの人材養成に関する魅力の1つがある。基礎的な要素もカバーしつつ、異文化、異職種、異業種に向けていかなければならない。そのような人材養成の体系があれば、非常に魅力的な異業種交流ができる。表面的にただ異業種の人が集まっているだけでは、中身が出てこない。恐らくそのような期待を持って、ビジネススクールなど外部の機関を、人材養成のために活用しているのではないか。

≪ビジネススクールで修得すべき基礎力・社会的変化への対応能力≫


・人材養成のプログラムを単に実施するだけでは恐らく教材が陳腐化する。新しい内容を入れたり、来られない教員や学生に参画してもらうためのツールや、恐らく当然に必要になるだろうという意味で、研究、オンラインの教材、教育方法について、もう一度ブラッシュアップする必要があるだろう。

・人材養成において、オンラインのみでできることは限られていると思うので、グループディスカッション、プレゼンテーション、フィールドワーク、ケースメソッド教育などの実践的なビジネススクールの教育は、今後も重要だと思う。しかし、ビジネススクールに入学しなくてもノンディグリーで学ぶ機会を広げるとか、ビジネススクールの教育を受ける時にも事前の学習教育として活用するなど、eラーニング教材、オンライン教材をどのように整備、開発していくかという、教育へのテクノロジーの導入、開発をどのように進めるかもビジネススクールの教育機能を高める上でも重要ではないか。


≪グローバルと地域≫


・日本では今後人口が減少するので、長期的にはビジネススクール自体がグローバルになっていかざるを得ないのではないか。長期的な見通しとして、例えばINSEADのように市場を外国に求める道も、念頭に置いておいていいのではないか。

・日本的なファミリービジネスや中小企業の承継、ガバナンスといった、必ずしもグローバルではない別の特徴を持つ産業を育てる人材を養成することも視野に入れないと、日本の将来を支える、地域や産業ファクターが抜け落ちたまま議論するリスクがあると感じる。

・日本企業の90%以上がSMEsで、その95%ぐらいがファミリービジネスである。経営人材と言う時に、圧倒的なマーケットはそこにある。都心や地域のビジネススクールでは、地域人材や中小企業人材に焦点を当てる話も出てきている。これも、大きな流れとして、とても重要な側面だろう。

・地域の人材、SMEsの事業承継をする人材、一般的に言われているグローバル人材など様々な人材養成のニーズが高まってきているという意味では、好機かもしれない。その好機を活かして新たなスキーム、連携、企業ニーズに根差した人材養成の実行プログラムを考えていくことは、もし機運が高まるのであれば、一気に試みを実施した方が良い。日本だけで補えない部分は、海外のビジネススクールと連携するやり方も、一部あっていいだろうと考えている。


2.規模の課題を踏まえた連携の在り方について


・1つの大学では、アジア全体に規模を拡大して、プログラムを提供するのが難しいと言い訳をして、徐々に取り逃して遅れていっているのが日本の現状。

・すべきことは結構多いが、いつまでも大学の論理を持ち出していると、産業界の期待やニーズに応えられなくなる。日本の産業人材養成の点で遅れていくことになれば、日本の競争力が下がっていくという悪循環の一端を大学が担うのは好ましくないし、本会議が、単にそのような言い訳を言い合う場であることは、好ましくない。機能強化の報告書について、そのような方向性で、出口に向けて試行するという方向に、持っていければと考えている。

・今が1つのチャンスだということを踏まえ、大学の改革を待つよりもむしろ、もう動き出すタイミングだという意味での新しいフォーマットを考えていくことが、今出て来ている1つの意見の方向と認識している。

・機能強化より、新しいものを大胆に作って進めていいのではないかという意見が多いと思う。制度論、制約など様々に言い出すと難しい面が出てくるかもしれないが、意のあるメンバーの協力を得て、意のある企業のニーズに応えられる人材を育てる。その中でネットワーク、異文化交流の機会、基礎的、応用的スキルに力点を置いたカリキュラム体系を早期に考えていく必要は、恐らく広く認識されているだろう。

・今まで日本企業は、自社で教育した方が手っ取り早いし、いい人材が育つと考えていた傾向があったが、最近では、社会の動きが非常に早くグローバルになってきたので、自社で養成する時間的余裕も無いし限界がある。そのため、人材を外部から中途採用で入れる、ビジネススクールで学んで多様性を有した人材を採用するようになってきたということで、ビジネススクールに対するニーズが少しずつ強くなってきていると思う。ニーズに対応できるビジネススクールに必要なリソース、能力があるかの話になると現実的になるので、ゴールから考えていくべきではないか。

・大学、ビジネススクールは、知的な人材に関する市場へのグラビティーを有している。海外のビジネススクールの教員に聞いた話によると、日本のビジネススクールに期待するから連携を申し出るのではなく、世界第3位の経済大国で富やビジネスチャンスがあり、加えて中国を捉えた時に一定の距離と規模があるので、連携できれば良いと考えているとのこと。ビジネススクールに限らず、人材のグラビティーの場を、特にアジアを中心に世界から集まるものを作るという、新しい時代感覚で考えてもいいのではないか。

・30、40年後の日本のビジネスの在り方が抜本的に変わった時に、対応できる知の蓄積があると非常に良いのではないか。加えて、連携といった時に、ビジネススクール自体が集まるのも確かに魅力的だが、連携を経営系大学院だけに限定する必要があるかは、考える必要があるだろう。

・生き残りや持続可能性が重要な課題になってきており、気候変動や人口爆発など様々な面で人類が経験したことのない暮らしが来るとすれば、急いで何かアイデア出しをして動き出せば、先端に立てるのではないか。

・企業によってはグローバル、もしくは地域振興だけなので他方は関係無いという話ではなく、そのような場に様々な企業、業種の方が参加する中からネットワークができていくことが、大事な視点ではないか。同時に、そのような議論では、30、40年後の日本の人材養成の在り方を考える機会になり、もう少し広い視点での人材養成、アジア地域、欧米との対峙やバランスを意識しながらの人材養成を考えなければならない。

・今後のテクノロジーの展開の中でどのような議論が必要かとか、既にスタンダードな欧米のビジネススクール教育をベースとして様々な教育プログラムを作ってきているが、もっと積極的に、何が課題なのか、どのような未来に向けてコンピテンシーが必要かを、産業界側とビジネススクール側が共同で調査研究、開発していく場を形成展開していくことを、今後の方策の1つとして提案したい。

・産業界の経営力を高めるために、個々の教員グループや企業との関係では共同研究等積極的に行っていると思うが、もっと大きく本格的に産業界とビジネス研究ということが進むような、そういう推進組織のようなものは考えられないか。そういったものを日本の企業とビジネススクールがパートナーシップを強めて進めていくというような方策も、具体化していく必要がある。

・ビジネスは、単純な競争ではいけないと言われている。自分たちの在り方をどのようにすれば、世の中が自分たちを買ってくれるか試みている。ビジネスや市場経済の枠組みで生きている以上、ビジネスが実践、先見していくことが無ければ、中々良い社会にはならない。欧米のビジネススクールはそれを取り入れ、訴えながら、結果として自分たちの存在意義を示し、ビジネスを成功させている。

・産業界とビジネススクールが同じテーブルで議論して新しいものを作ったら、それが1つのチャンスになるのではないか。

・個々のビジネススクールの改革やカリキュラムをどうするかよりも、企業のニーズに基づいてどのような人材を養成すべきかを中核に据え、ビジネススクールと企業の連携の場を新たに作り、そこでどのようなことをやっていくか議論し実践していく。各大学はそこでいい面があれば、各大学に持ち帰り、実際のカリキュラムに落とし込んで実践してもいいが、全て1つの大学でやると、その大学だけでは規模やリソースの制約が出て来るので、優れた大学の人材を集めて、横串的に教育方法論の研究等を行う機関があってもいいのではないか。

・本会議での1つの方向性として、本日の議論をサマリーした資料を基に、産業界が期待する人材の養成、長期的には日本の経営人材の構造、日本とアジアとの関係性も視点に入れる人材養成の試みを意識しながら、詳細については、もう少し実務的にそのようなプログラム内容などを別の会議体で検討し、その検討内容をこの会議体で報告し、最後のまとめに向けていくという進め方にしたい。

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