資料3 第5回経営系大学院機能強化検討協力者会議における委員の主な御意見(概要)

【今後のビジネススクールの在り方について】

(ビジネススクールの在り方について)

・ 意見を整理して並べるのではなく、社会と大学の間に何故ずれがあるのか議論が続いていることを踏まえ、ずれが生じた理由を明確にし、そこから収斂する方向で事務局には整理してほしい。


・ 一般的に、ビジネススクールは世界の経済社会全体に様々な役割を発揮していると思う。日本のビジネススクールに関しては、20世紀後半以降のAI等による大きな転換の中で、これまでの日本で成功したモデルのミスマッチが広がっており、この部分を埋める教育が課題となっている。日本のビジネススクールがそこで頑張るということは、日本経済、産業が発展していく上で非常に重要な鍵の1つだと、自らのミッション、責任を自覚する必要がある。そのためのコアカリキュラムの議論だと考える。


・ 日本のビジネススクールは、日本経済、産業が発展していく上で確固たる地位を占めているとは言えない。アメリカ、ヨーロッパ、近年ではアジアにおいてもビジネススクールは重要な地位、影響力を持つ成長市場、成長産業と言っていい状況にあると思うが、日本ではそのような状況になっていない。ビジネススクールがどのような人材を育成するかについて、企業、学生にあまり見えていないのでしっかりとした評価がされていないことが、大きな課題だろう。


・ インストラクショナルデザインの議論は、ラーニングゴールを定め、全員が一定水準に達するという発想。しかし現実には、様々な背景や目標を持った社会人が入学し、課題、強み、その伸ばし方という具合に、各人にとっての価値は、インストラクショナルデザインの議論とは多少異なる。ビジネススクールには、個人の学び、働き方、生き方を確立していく場としての側面もあるという議論があった。


・ 産業構造が変化している中で、専門性も大事であるが、ビジネススクールで学んだ人を企業がどう活用するかという視点が大事。また、知の間を埋めることができる人材を、ビジネススクールでいかに育成していくかということも同時に課題であると認識している。高度に変化が激しい時代に流されてしまうと、原点を見失う可能性がある。韓国、シンガポール、中国などが台頭する中での日本の人材育成を、この委員会で考えなければならないと感じる。

 (地域におけるビジネススクールの在り方)

・ 日本経済、産業界が抱える問題に、地域の特性も活かしつつ正面から取り組んでいくことが、ビジネススクールの大きなミッションの一つとして期待されるのではないか。


(ビジネススクールにおける教育について)

・ コンピテンシーを全て満たすと、必要な要素が全て身に付くということではなく、コンピテンシーの間を埋める思想、あるいはそれらの根底にある哲学のような、もっと大切な空間があるのではないかという考え方を、ビジネススクール教育に盛り込めたら面白いのではないか。


・ デジタル化への対応について、ブレンディッドラーニングを取り入れているアメリカの2年間のMBAでは、2か月に1回、教授と学生が週末に集まる。事前にオンラインで講義や試験を受け、知識を習得し、キャンパスで実践的な議論やフィールドワークを行う。オンラインとオンキャンパスの組み合わせで効率的な教育ができるなら、産業界からも人を派遣しやすいと感じる。


【ビジネススクールと産業界との協働の推進について】

・ 専門職大学院では、通念を破る意味で実務的な教育を重んじてきたが、実務家教員が重視される一方、教員は博士号を取得している必要があるという話があるように、必ずしも実務面だけではなく、教育と研究は、止揚、つまり螺旋状に上昇するものではないかという話が出ている。専門職と研究職を育てることは、互いに一切無関係な話ではなくなっている。その点について、産業界が納得できるデータや解説を提供し、むしろ産業界から、どのようにしたらいいか、我々はこのようにするという意見が出る流れになるよう、事務局として誘導してほしい。


・ ビジネススクールは変化する社会、産業の中でミッションを定義し、どのような人材を活かすかについては、コンピテンシーで示すべきである。将来どのような人材が必要か、ビジネススクールは研究成果を活かし、産業界はケース提供、プログラム共同開発、講師派遣等、ビジネススクールと産業界の間で、コンピテンシー・ベースでの建設的な対話を進めていくことが重要。


・ コンピテンシーを定義する際に、産業界の意見を十分に踏まえられているとは言い難い。産業界に必要な人材、課題については様々な対話をしている。ノンディグリーの社会人向けコースを展開する時には、企業の方々と開発し、参加する社会人の方々からフィードバックを受け、どのようなコンピテンシーが必要か議論している。一方、アメリカで進んでいるように、コンピテンシーリストを体系的に作り上げていくという意味においては、列挙的であり、企業側からのフィードバックを得つつうまくいっているか検証していくという点は不足している。本来ビジネススクールで学んだということでチェックするだけでなく、学んだことが企業、社会でどのように活用されているか検証することが必要だと思う。


・ ビジネススクールは、グローバリゼーションやイノベーション等が生じているビジネスコミュニティの中にある。産業の変化、ニーズに合わせてビジネススクールは変化しなければならない。同時に、ビジネススクールが主体となり、産業界が新たなものを作り上げていく役割を果たす。そのために、世界のあらゆる大学とコラボレーションしていく。


・ ビジネススクールはアメリカ発祥で、大組織の管理型の経営を行うための実践的な内容を教えるが、マネジメントだけでは大きな変化や新しい展開ができないので、戦略論やリーダーシップが入る形で発展してきた。一方、それをもっと埋めていくとか、カバーしていくといった倫理学的な側面が強調されるような教育や主張に変わってきている。日本のビジネススクールはその点が中途半端かもしれない。アメリカの展開を追っていながら、コアカリキュラムなどでビジネススクールの技術的側面、マネージャーを育てるとはこのような話で、こういった要素を与えなければならないというように、ある時期アメリカが一生懸命取り組んだ部分を改めて整備することで、ビジネススクールの在り方を定義する。現在、そこで彷徨っている感じではないかと思う。産業界にとっては、このニュアンスの変遷を直に受けている訳ではないので、ニーズをどのように教育にインプットしていくか、コミットしていけばよいか、ピンと来ない。そのため、もどかしい状況があるのではないか。


・社会のニーズが少なかったプログラムが、後に政府から支援を受けて確立された事例を見ていると、将来を見据えてプログラムを考えることが、非常に重要ではないかと感じる。機能強化という名目の下で、産学連携でプログラムや活動を立ち上げようと言いながら、産学の双方共に実践をしないということでは、進歩しない。


・社員を派遣したことがある企業はビジネススクールに対する評価が高いので、門戸を広げていくことが効果的であると思う。大学院で学んだことが活かされているかということについては、基本的には職場で活かすことができているという評価である。一定程度、ビジネススクールと企業の関係が噛み合っている傾向は確認できる。


・韓国の場合、MBAを持っていないと就職できないということはない。企業からビジネススクールへの派遣は多く、派遣されるコースは2つに分けられる。1つは2年間のフルタイムコース、もう1つは管理職に向けた、6か月から9ヶ月間の短期のパートタイムコース。


・様々な分野で専門性が高度化しており、一つのスキルの賞味期限が短くなっている。知の体系と実践を行ったり来たりしながら、それぞれの学びを高度化していくことが必要である。

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