高度専門職業人養成機能強化促進委託事業推進委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成29年12月11日(月曜日) 12時30分~15時30分

2.場所

中央合同庁舎4号館 12階1208特別会議室

3.議題

  1. 高度専門職業人養成機能強化促進委託事業について
  2. 各事業の進捗状況について
  3. その他

4.出席者

委員

鈴木主査、天羽委員、池尾委員、石井委員、川嶋委員、永里委員、古川委員

文部科学省

義本高等教育局長、瀧本大臣官房審議官(高大接続・高等教育局担当)、松永専門教育課長、川﨑専門職大学院室室長補佐 

オブザーバー

(事業委託大学)
京都大学:若林様、山口大学:福代様、上西様、筑波大学:西尾様、佐藤様、東京工業大学:藤村様、関西学院大学:山本様、香川大学:原様

5.議事録

【鈴木主査】  それでは、定刻になりましたので、第3回高度専門職業人養成機能強化促進委託事業推進委員会の中間報告会を開催いたします。本事業は、京都大学、山口大学、筑波大学、東京工業大学、関西学院大学、香川大学の6者によって実施していただいておりますが、本日は各実施主体からこれまでの取組状況、進捗の状況、これまでに分かったところなどの御説明を頂きたいと思っています。また、それぞれの報告内容について意見交換を行い、今後の事業展開の参考にしていただきたいと思います。なお、時間に余裕がありましたら、傍聴席からも御意見、御質問をお受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本日は、義本高等教育局長と瀧本大臣官房審議官に御来席いただく予定ですので、それだけ高等教育局としては重視している事業ということで、いい成果が報告できればと思っております。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【川﨑専門職大学院室室長補佐】  それでは、議事次第をお手元にお願いいたします。本日お配りの資料は、資料1から資料8までございます。それから、山口大学様からの机上配付資料を配付させていただいておりますが、会議後に回収させていただきたいと思います。
 本日の御出席者につきましては、時間の都合もございますので机上に配付しております座席表をもって代えさせていただければと思います。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。もし、資料について過不足等ございましたら、言っていただければ事務局の方から予備のものをもらえると思います。
 それでは、議題の1番目、「高度専門職業人養成機能強化促進委託事業について」ですが、事務局より本委託事業を企画した背景、及び本委託事業の概要について、御説明をお願いいたします。
【川﨑専門職大学院室室長補佐】  それでは、資料1をお手元にお願いいたします。
 この高度専門職業人養成機能強化促進委託事業は、平成29年度予算で約6,000万円の事業になっております。課題背景のところにございますように、日本再興戦略や中教審の報告書などにおきまして、持続的な成長を維持するためには、労働生産性を向上させることが必須であり、専門職大学院における高度専門職業人養成機能の一層の充実強化を図ることが喫緊の課題であるという提言を頂いているところでございます。それを踏まえまして、資料の中ほどにございます、平成28年度事業におきまして、修了生や企業等の実態調査、それから策定されたコアカリキュラムなどを基に、平成29年度の事業を実施しております。
 まず事業概要の左側にございます、「ビジネス・MOT分野のコアカリキュラム等の実証・改善」、それから右側にございます、「成長分野や産業界のニーズが高い分野のモデルとなる教育プログラムの開発」と、この2本柱で構成されている事業でございます。右側の下のところの赤字にございますように、「社会との連携強化による社会ニーズを踏まえた教育の提供」、「教育の質の向上」、「教育内容の可視化による社会的認知度の向上」、「特定分野を牽引する高度専門職業人の養成」といったようなことを通じて、我が国の労働生産性の向上や地方創生に貢献していくという事業内容でございます。
 「ビジネス・MOT分野のコアカリキュラム等の実証・改善」の、ビジネス分野につきましては京都大学、MOT分野につきましては山口大学に取り組んでいただいているものでございます。「成長分野や産業界のニーズが高い分野のモデルとなる教育プログラムの開発」につきましては筑波大学、東京工業大学、香川大学、関西学院大学様の計6大学にそれぞれ取り組んでいただいておりまして、後ほど概要について御報告があるかと思います。
 御説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは、調査、研究テーマごとに取組の進捗状況について御説明いただきたいと思います。まずはMBAコアカリキュラム担当の京都大学からお願いいたします。
【若林様(京都大学)】  それでは、ただいまより京都大学が担当しております経営系専門職大学院(ビジネス分野)におけるコアカリキュラム等の実証・改善に関する調査研究の中間報告を、京都大学経営管理大学院の若林靖永がさせていただきます。
 まず、4ページ目に今回受託しました事業のテーマ、趣旨、内容が書かれております。基本的にはこの事業の趣旨のところにございますように、コアカリキュラムの実証・改善を行うことによって、ビジネススクール教育の質の向上というものをますます進めていきたいということと同時に教育の内容の可視化を進めることによって、広く産業界、社会における認知度というものを向上して、社会人学生の応募の増加や、あるいは修了生の活躍の場を広げるようにしていくということが大きな狙いでございます。
 そのために行うものとして、ひとつはコアカリキュラムの実証改善を進めること。そしてもうひとつは、MOT分野の実施主体と合同で3月にシンポジウムを開催するということ。そして昨年実施されたニーズ等調査の更なる分析をして、そこからビジネススクールにおける教育・研究の質の向上に関する提言を行うこと。この3つの事業に取り組んでおります。
 特に今日は、そのうちコアカリキュラムの実証改善におきまして、12月5日京都で、12月6日東京でコアカリキュラム討論フォーラムを開催し、各経営系大学院の院長にお集まりいただいて御意見を伺うなどの議論をいたしましたので、そこで御報告した内容について主に紹介したいと考えております。
 まずその前に、事業の運営組織ですが、5ページにありますように、実証委員会とワーキンググループを設置しております。なお、実証委員会の構成メンバーについては6ページ、ワーキンググループの構成メンバーについては7ページにございます。
 進捗状況でございますが、10ページにあるように、9月26日にコアカリキュラムの実証委員会を開催し、今回の取組についての意義やその計画案について御審議いただきました。やはりアメリカと日本とでは状況が違いますので、日本の実情に合った、かといって日本にだけ通用するというものではないカリキュラムが必要だといった議論がございました。やはり日本の実情に合ったビジネススクールの議論であると同時に、国際的に活躍していく方向での議論というものをどう考えていくかということが課題として指摘されるなどの議論がなされております。
 また11ページにございますように、このようにワーキンググループを開催し、コアカリキュラムの議論、そしてニーズ等調査の分析の議論を進めているところでございます。
 また12ページにございますように、11月1日には山口大学を御訪問させていただき、山口大学が進めているMOT分野のコアカリキュラムの取組について、いろいろ学ばせていただくと同時に、今後の合同シンポジウムの開催などについての意見交換・検討を進めてきております。
 続いて13ページでございますが、コアカリキュラム討論フォーラムということで、12月5日には、7大学院8名、同志社大学、九州大学、大分大学、信州大学、長崎大学、名古屋商科大学、立命館大学の研究科長等の御参加で議論がなされました。また、12月6日は東京新丸ビルの京都アカデミアフォーラムにて、9大学院9名ということで、神戸大学、筑波大学、横浜市立大学、東洋学園大学、事業創造大学院大学、北九州市立大学、愛知工業大学、そして亜細亜大学の研究科長と、そして並びに大月専門職大学院室長並びに同川﨑室長補佐にも御出席していただいて議論を進めているというところでございます。
 御覧の通り、もうちょっと専門職大学院のビジネススクールに来てほしいなというのが、正直なところです。そのため、急遽ですが、今回の欠席者を対象に1月18日に、第3回のコアカリキュラム討論フォーラムを東京で追加開催する予定にしております。どれだけ参加いただけるか分かりませんが、これから御連絡をいたします。
 それでは、この討論フォーラムのときに御説明した内容の抜粋でございますが、15ページに主な内容の構成が書かれております。
 まず17ページに、今回どういう趣旨でこれを開催したのかという簡単なメッセージをまとめております。やはり日本のビジネススクールがミッションを明確にして、産業・社会で活躍する経営人材育成を通じて、産業・社会の発展・変革に貢献していくためには教育プログラムの開発、特にコアカリキュラムの明確化と社会への発信が必要です。発信といっても一方的な発信というよりも対話を進めていくことが重要だろうと考えています。このような問題意識から、今回コアカリキュラムのデザインについての基本的な考え方を提案いたしました。そして、この中間報告をたたき台に討論フォーラムないし大学院長向けにアンケート等を実施いたしまして、広くビジネススクールの皆様から御意見、御提案を受けて進めていくということをお願いしております。
 そしてまた、このような取組を通じて日本の各ビジネススクールが共同連携していくという機会を広げていくというようなことを希望しておりますというような趣旨で御説明しております。
 続きまして18、19ページですが、なぜ日本においてビジネススクールのコアカリキュラムを検討する意義があるのかということですが、まず、第一に重視しなければいけないのは、欧米、特にアメリカとは雇用システム、人事システムが大きく異なるために、MBAホルダーであるということは必ずしも産業・社会で成功していくための重要なパスポートにはなっていません。そういう意味では、人事システムの中でMBAの取得が必ずしも組み込まれていないという現状が、他方このような日本の特徴的な在り方がMBAの強みという面をいまだになくしているというふうに単純に決め付けるのは言い過ぎかもしれませんが、今日において、テクノロジーの大きな変化あるいはグローバル化の更なる展開という状況の中で、日本の企業がこれらの状況に十分な対応ができず、大きく競争的な優位性を保(たも)てない状況にある理由のひとつではないでしょうか。こういうことで、日本の企業も日本の社会も変わるきっかけとして、日本のビジネススクールが、有為な活躍する人材を供給して、それを推進していくという特別なミッションがあるのではないでしょうか。そして、そういう方向を示すために、コアカリキュラムの展開とその可視化ということを進めていくということを位置付けているというお話をさせていただきました。
 続いて22ページでございますが、昨年、同事業につきまして、神戸大学様の方で、策定したコアカリキュラムについて説明しています。コアカリキュラム、つまり共通の学習到達目標とは、主に専門の学問分野に関する知識を理解しそしてそれを応用することができるということで、特に共通の内容は何かという議論の整理がなされております。23ページのスライドにありますように、組織行動・人的資源管理系、技術とオペレーションのマネジメント系、マーケティング系、会計・ファイナンス系、経営戦略系の5つのカテゴリーにつきまして、「具体的に何を学ぶのか」、「何を身に付けさせるのか」ということを、ビジネススクールで学ぶコアカリキュラム内容の主要な項目ということで整理されておりますので、今回はこれを踏まえて議論を進めております。
 続いて24ページ以降ですが、今回のコアカリキュラムの基本的な考え方についての提案でございます。25ページにありますように、今回のコアカリキュラムについてはいわゆるインストラクショナルデザイン、IDの議論でシステマティックな教育のデザイン・設計ということを考えるということを提案しております。
 その中心的な内容、フィロソフィー、様々な技術や理論を活用しているものですから、IDはこうだというふうに単純に言えるわけではありませんが、IDの中でも中心的な議論として、26ページにありますようにメイガーが3つの質問を挙げています。何といってもまず学習目標、学ぶ人たちをどこに連れて行くのかということです。どこへ行くのかということが明確である必要がある。そしてちゃんとそこにたどり着いたと学習目標を満たしているということについて、評価する方法が明確になっている。この2つをセットにしながら、どのように教えるかという教育方法をアップデート、改善して、より効果的に、より効率的に、より意欲的にとモチベーションを高めながら受講生が取り組めるようにするということがIDの基本的な考え方です。
 27ページには、このようなIDの考え方に基づいて、IDの専門家を養成するeラーニング大学院が熊本大学で開設されております。これを一つのID適用モデル例として紹介させていただきます。
 28ページのスライドにもありますように、何を目指すのかというコンセプトに基づいて、コンピテンシー、このカリキュラム、この熊本大学教授システム学専攻で何を学ぶのかという内容が決まります。このコンピテンシー、身に付けるべき内容に基づいて、それをどのような授業で学ぶのかを考えます。コアなコンピテンシーについては必修科目で、オプショナルなコンピテンシーについては選択科目でということで、明確なカリキュラムが作られて、その科目シラバスが適切に実施されているかどうかを更に相互にチェックしていくというような形で、コンピテンシーに基づいたカリキュラムの設計がなされているという仕組みでございます。
 続きまして29ページですが、まずコンピテンシーの議論をする前に基本的なコンセプトとして、ビジネススクールもまたミッションを明確にする必要があるということで、31ページにビジネススクールのミッションを幾つか紹介しております。それを受けて32ページ、33ページのところで京都大学経営管理大学院の場合どうなのかということで検証しております。
 33ページのところにありますように、京都大学経営管理大学院の場合、何を行うのか、何を生み出すのかというと、「幅広い分野で指導的な役割を果たす個性ある人材を養成する」。これが生み出す内容です。そのために何を行うかというと、「先端的なマネジメント研究」、それと「高度に専門的な実務」、この2つの懸け橋となる「教育体系を開発」する。そして、結果として社会にどのように貢献するのかという点では、「地球社会の多様化と調和のとれた発展に貢献」する。これが経営管理大学院の基本的なミッションです。それぞれのビジネススクールはそれぞれのミッションを明確にして、この社会の中でどういう役割を発揮するか、自らのアイデンティティーを明確にして、それに基づいて次のコアカリキュラム等の具体化を進めるということが求められるだろうと思います。
 続いて34ページ、ラーニングゴールということで、何を学ぶかという内容についてはコンピテンシーで考えるべきです。コンピテンシーというのは、あるジョブで成功する人に見られる知識、スキル、動機・態度その他などによるというものであり、様々な職位、様々な業界において、コンピテンシーというのは調査や検証がなされ、人事における採用や研修、配置などのベースとなるアプローチでございます。
 36ページにありますように、カリキュラムのラーニングゴールはコンピテンシーを設定することにあります。37ページにあるように、コンピテンシーを学べる授業科目というふうにブレークダウンする論理で、カリキュラムは設計されるべきだと提案をしております。
 38ページ、39ページは、論文等で先行研究としてまとめられているマネジメント、マネジリアルに関するコンピテンシー、あるいはアントレプレナーシップについてのコンピテンシーの参考例でございます。
 これらを踏まえまして、40ページに、今日のビジネススクールで求められるコンピテンシーを参考例として挙げております。8番の倫理、9番の創造性、10番のアントレプレナー、11番のグローバルなど、古典的なマネジメントの経営教育の場合ではしばしばそれほど重要視されてこなかったところも新たに追加した内容のコンピテンシーとしております。そしてまた、例えば3番の専門知識につきましては、 41ページにあるように、神戸大学における昨年度の事業の成果を踏まえて、更にこのコンピテンシーの詳細を議論することもできるというように、あくまでもこのコンピテンシーは大きなカテゴリーということです。各コンピテンシーのディテールを設計することで、何をビジネススクールの学生は学ぶのか、身に付けるのかということが明確に定義できると考えております。
 また43ページですが、これらはコアなビジネススクールのコンピテンシーの参考例として作ったものです。先ほど参考例として挙げたコンピテンシーに加えて、オプショナルな議論というのもあろうかと思います。例えば京都大学経営管理大学院は、来年の4月に観光経営科学コースという新たな観光経営人材のコースを設計しておりますが、この43ページにあるようなオプショナルなコンピテンシーの議論を踏まえながら制度設計しているというふうに考えることができると思っております。
 最後に、これらをどのように授業科目と設定しているかということで、44ページ、45ページにあるように、コンピテンシーと科目の対応関係をまとめていきます。例えば46ページが熊本大学の例でございます。47ページは平成22年度版のMOTスクールにおいて設計された、やはり同じくコアカリキュラムと授業科目の対応表でございます。そして、48ページは今回参考例として出しているコアコンピテンシーを例として京都大学で提供している授業科目の一部で並べてみたものでございます。
 このような基本的な考え方について、質問や意見を伺いたい。そして、このような枠組みでそれぞれのビジネススクールについて、どういう状況かを問い合わせて、お互いに学び合いたい。その他今後のビジネススクールの発展のために、どのような意見や要望があるかを聞きたいという内容のアンケート調査を12月から1月にかけて、各経営系大学院にお願いいたしまして、実施するという予定でございます。
 以上が現時点での京都大学でのビジネススクールのコアカリキュラムについての取組状況について御報告でございます。どうもありがとうございました。
【鈴木主査】  若林先生、どうもありがとうございました。
 質問や御意見あるかと思いますが、2つまとめて質疑を受けたいと思いますので、続いてMOTコアカリキュラム担当の山口大学より御説明をお願いいたします。
【福代様(山口大学)】  山口大学の福代でございます。引き続いて説明させていただきます。
 私どものMOT分野におけるコアカリキュラムの実証改善に関する調査研究といたしまして、今回お示しする資料はキックオフの際と重なる部分が多いですが、一応おさらいの意味も兼ねて御説明させていただきます。
 まず2ページでございます。これも確認でございますが、調査活動の概要を図にしたものでございます。昨年度のMOT教育コアカリキュラム、これは以前からあったものを更に改定したものでございますけれど、平成28年度版ができました。これに基づいて、今年度は全部で4つの作業を行います。
 マル1 がコアカリキュラムの実証でございまして、実は本日添付している会議後回収の机上資料というのはこれに関連します。まずMOT専門職大学院各校が、コアカリキュラムをどのように実現しているかについての検証をマトリックス型で行いました。この作業については、一応完了しております。マル2 に関しましては、今度はコアカリキュラムの適切な実施(実装)に向けた改善提案ということで、これに関しては産業界であるとか、また関連する学校であるとか、いろいろな立場の方々からの意見を踏まえながら、「どうすれば実際に効果のある授業が可能か」、あるいは「カリキュラムを実際にはどう設計したらよいか」、「教授法はどうあるべきか」、「シラバスはどうあるべきか」ということについて、ガイドラインをまとめるための意見を集約しているところでございます。これが完了いたしますと、次のマル3 に移り、FD研修等を行うことによって、MOT教育を実際にどうやって実施していくかということを学び合う場をつくろうと思っております。マル4 が合同シンポジウムでございまして、これは先ほど若林先生からもお話がありましたように、MBA系とMOT系合同でシンポジウムを行いたいということで、これは話合いを今進めているところでございます。
 3ページ目の実施体制については省略いたしますが、基本的にいろいろな専門職大学院以外のMOT大学院であるとか、あるいはアジア各国の意見を受けたり、あるいは産業界の意見を入れたりというような形で推進しております。
 次に4ページになりますが、これが授業計画の進捗状況を表したものです。およそ順調に進んでおりまして、現在行っている作業は、2017年12月に西日本地区で産業界の意見を集めるべく調整しており、今のところは1月19日に九州方面の企業であるとか、あるいは中国経済連合会であるといったところの意見を集めて委員会をしたいと思っております。その他、もちろん関東地区にも技術系企業の本社がございますので、そういった企業からも意見を集める予定でございます。大事な事業といたしまして、先ほど申しましたように、3月には合同シンポジウムを開催することになっておりまして、日程等についてはまた後ほど説明いたします。
 次に5ページは、マル1 の作業、コアカリキュラムの実証について検討を行った結果でございます。カバー率と書いてありますが、これは回答を頂いた学校に関して、コアカリキュラムの内容がどの程度カバーされているか、きちんと実証したものでございます。これに関わるマトリックスが、机上配付資料にあります。見るとちょっと複雑ではございますが、各校のマトリックスが載っております。
 この部分では伏せておりますが、AからFと全部で6校御提出いただきましたので、その内容を検討すると、基本的には昨年度検討した中項目に関してはどの学校もきちんとこれはカバーしております。これは当然のことでございます。特色があるのは、中項目重点カバー率とあるところで、これは90分以上の時間を使って中項目に当たる学習項目をどの程度カバーしているかというのを見ると、これには濃淡がございます。要するに、ある学習項目について集中的に教育を行っているところがあったり、あるいは全部満遍なく90分以上時間を割いていますというところがあったり、そういう違いはございます。ただ、これは良い、悪いではなくて、各大学の特徴が現れているのであろうと思います。一番大事なコアカリの中項目カバー率に関しては、どの学校も守っているということで、非常に安心している次第でございます。
 次のページでございますが、これは回答いただきました6校の中で、教育に割いている時間数が多い重点項目を抽出したものでございます。ばらばらに見えますけれど実は各校の重点トップ3項目を抽出いたしますと、結構複数の大学で重なっている項目がございます。特にB、C、D校において赤で示しております、「市場機会の発見と分析」があげられます。これは当然マーケットに対する意識で、非常に重要でございますし、またMBAで教育している内容とも重なりますので非常に重要なポイントとして共通して教えているなということも確認できました。あとは、技術系の専門職大学院もありますので、技術に関する意識であるとか研究開発に関する意識、これについては複数の学校で重視して教育を行っているということが分かりました。こういった共通項目を見ると、MOT系大学院の特徴が表れているのかなという結果でございます。
 続きまして、7ページ目でございますが、コアカリキュラムの適切な実施に向けて、いろいろな組織からの意見を聴く場を設けております。これは海外部会と申しまして、MOTに関心を持つ東南アジアの結構レベルの高い学校に集まっていただき、そこからの意見を集約したものでございます。チェンマイ、マレーシア、マラ、バンドン、ダナンというふうに意見を集めておりますが、日本でまとめられたMOTのコアカリキュラム自体に対しては各国とも非常に興味を持ち、また適切なものであるというふうに言っておられます。
 ただ、例えばアントレプレナーシップの強いタイ、世界第2位のアントレプレナーシップの国と言われていますが、そこから見ると、起業家精神などはもうちょっと強化してもいいのではないかという話も出ております。ただ、これをカバーすべきなのは、どちらかというとMBAかもしれませんが、そういう意見が出ておりました。
 それから、カリキュラムの実施についてですが、日本ではなくアジアでどういうふうに受け止めて、またどういうふうに実施したいかということについての意見を集めますと、これは先ほどの机上配布資料の後ろの方にも実は添付しておりますが、アジア各国でMOTに興味がある大学はあっても例えばMOTそのものの概念的理解やIPマネジメントの教育に対しては、十分な教育ができていないという実情があるということが分かりました。
 逆に言いますと、これは「日本の大学にとって売りができたな」というふうに考えています。どういうことかというと、例えば日本の大学とのシェアリングを行うことによって、共同でアジアの大学に対する教育を提供していけるのではないかという見込みが一つ出ております。
 今回、改善提案についてはこの程度でございますが、現在産業界等からの意見も踏まえて、どういうふうに実施したらいいかということについては、もう少し議論を深めていきたいと考えております。
 残りのページはコアカリキュラムの実証改善作業における留意点とアクションの一覧表でございます。マル1 ステークホルダーの参画、マル2 事前作業については、これも既に実施しております。また、現在取り掛かっておるのがマル4 の実態調査の結果活用で、昨年度の結果を利用して、MOT教育の実質化に向けて何か方策ができないかということをまとめようと思っております。
 次の9ページの方も重要でございまして、先ほど簡単にしか触れませんでしたが、ビジネス分野とMOT分野の合同シンポジウムをこれから開催する予定でございます。現在、開催案として、東京でのシンポジウムを3月3日に考えております。場所は未だ決まっておりませんが、仮でキャンパスイノベーションセンターを押さえております。京都大学様にも別会場を押さえてもらいまして、どちらが適切かというところも含めて、これから若林先生と協議いたしたいと思います。
 重要なポイントとして、全国に向けて発信する場合は、まず東京でしっかりやりましょうということで合意しております。地方に向けてのシンポジウムの一つとして考えておりますのが、3月17日土曜日の山口でのシンポジウムでございます。ちょうどMOT学会を同じ日に山口大学でも開催いたしますので、これを重ね合わせることによって技術系それからもちろんMBAの普及促進にもなるのではないかと考えております。
 その他の部分は、ちょっと省略させていただきます。
 最後に10ページ、11ページには、これもキックオフで既にお伝えしたことでありますが、見直すべき点、それから検討すべき点に対して、具体的なアクションを挙げておりますが、このひとつひとつについて、現在作業の中で回答を出しているところでございます。例えば、この見直すべき点や検討すべき点等について、11ページの「(6)策定したコアカリキュラムの到達目標について、国際的通用性があるものであろうかということについては、先ほど海外部会で意見を求めたところ、やはりMOT分野としては日本が提案しているようなコアカリキュラムが適切であろうということになりました。ただ、彼らが実施するに当たっては、欠けている部分、例えばIPが弱いとか、MOT自体の概念的理解がまだ深まっていないといった部分が出てきたということが分かっております。
 ということで、ちょっと駆け足でございますが、我々からの報告は以上でございます。
【鈴木主査】  福代先生、ありがとうございました。
 それでは、コアカリキュラム実施主体から御説明いただいた内容について、意見交換をさせていただきたいと思います。23分ぐらい時間の余裕がありますので、どなたからでも結構です。
【池尾委員】  若林さんにちょっと質問というかお願いがあります。先ほど御指摘いただいた中で、日本の企業の競争力が低下しているのは間違いない。それに対して何とかしようといったときに、では、競争力が低下しているのであるならば、一体何が必要で、そのためにどのような人材をつくり出すのかという、そこのロジックの流れを、もうちょっと明確にしていただけるといいのかなと思います。
 その際に、もちろん経営者の方々にお話を聞くということも大事なのだろうけれども、経営者の方々に聞いて解決するのであったら、もっと状況はよくなっているはずです。ですから、その辺もうちょっと主体性を持っていろいろ考えていただくことが必要なのではないかというのが1点でございます。
 それからもうひとつ、昨年度の神戸のときにもそういう話をしたのですが、コアカリキュラムを考えていくときに、知識についてのカリキュラムはすばらしいのですが、スキルの方、例えば考える力とか決定する力とか、そういう議論がないとは言いませんが、その辺りを特に充実していただければよろしいのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  何か若林先生ありますか。
【若林様(京都大学)】  特に後者は、本当にそのとおりだと思います。昨年度の場合、経営を機能として分類したときに、それをどのように学問分野と結び付け、学び、そして経営の実際の分野に活用していくかという点でのコアカリキュラムの検討は進みました。しかし、各企業等が求めるコンピテンシー、例えばチームワークをどうするかとかに関する検討は進んでいません。私は、これからは、前の議論のことで言うと、組織としての力ばかりが強調されている中で、やはり個の力をどう引き出していくかが必要だと考えます。そして、個が新たにチームをつくって、チームで取り組んでいくという、最初から組織があって、何かまとまっていくという議論ではない、そういうコア(核)となってチームビルディングをして、新たな課題に挑戦していく、周りを巻き込んで説得をしていくという、ある種の「アントレプレナー的な」と言ってもいいのですが、そういうマインドやスキルやビヘービアがとれることというようなことが学べる、学ぶということが重要だと思っています。これは単に、マーケティングのコンセプトについての知識があるなどというようなことで満たされる内容ではございませんので、おっしゃるとおり、態度やスキルというようなことについてもコンピテンシーの重要な要素ということで、今回は位置付けて拡張していきたいと考えております。ありがとうございました。
【天羽委員】   まず今の池尾委員からの質問を受けてですけれど。私も実は先ほど若林先生からあった19ページを見ていて、この「組織力と個人力としての違い」における個人というのは力といえます。単純に、今、何で組織力が必要なのかということをもっと真剣に考えていくと、例えば企業から見れば、少なくともこのプログラムは先導的経営陣ということを言っているのであって、何で組織力が必要ですかといった場合にはやっぱり市場で勝つことなのですね。勝たないと、意味がないのです。だから組織力を強くしていかないといけない。
 組織力というのは決して競合にもコピーはされないし、また反対にそれをコピーしようと思ったら時間がものすごくかかるのです。だから、幾らいいテクノロジーで、いいものをマーケットに出しても、組織力が強いところというのは最後には勝っていくのですね。この組織力というのは、個の集まりなのです。だから個々の力を徹底して強くしないと組織力なんて出来上がらないのですね。ですから、19ページにあるのは、例えば組織力と個の力というのは全てリンクしていると思います。どうしてリンクしているかというと、競争力を付けるという意味でです。だから経営における組織力を考えていった場合には、必ずそういうことが出てくるわけです。
 2番目にあるのは、例えば先ほど福代先生が言ったように、これは6ページにもあるのですが、事業戦略とか企業の目的、その達成のための技術戦略とか、この組織力と事業戦略というのはリンクしていて、事業戦略を作り上げたときに、並行して組織や、そこで行動を変えていかないと駄目なのです。
 だから、事業戦略と組織戦略というのはお互いに連動してて、またそのためのベースになるのは個々の力なのです。そういった形の全体的なリンケージが、このMOTとMBAのコアカリキュラムの中でうまく連動されているのですかという点に、疑問を持ちながら聞いていました。先ほど、どういうカリキュラムをやるのですかといった話がありましたが、恐らく個々の力を付けるときに、幾ら技術があろうが、幾ら経営がしっかりしていようが、少なくともビジネスファイナンスというちゃんとした数字的な目標を作れるような人間を育てていかないと、企業というのは絶対負けます。
 ただ、言えることは、皆さんが先導的経営陣というのを考えたときに、国内だけの議論であればもう全くその必要はないと思います。 ただ、これが海外に企業がどんどん進出していくとします。ヨーロッパ、アジア、アメリカの中では、レギュレーション等いろいろな要素を含めた形の数字を見ながら全体観を持っていくような企業が本来の先導的経営陣ではないのかなと私は思うのです。
 こういう視点でカリキュラムを見た場合に、基礎をやることと、もっと専門的にやることというのは、先ほど池尾委員がおっしゃったように連動しているのですかというのが疑問で、私には非常に見えにくいです。
 これは全て、戦略なり、個々なり、組織力なり、マーケティングに関しても言えます。マーケティングというのは戦略で、このカリキュラムでマーケティング戦略をしっかり策定できるようにしているのですか、といったことに、非常に疑問を感じます。マーケティングというのは、会社の代表で、全てのことを理解して、現場に出ていく。フィリップ・コトラーも言っていますが、それがマーケティング戦略なのです。
 ですから先導的経営陣というのは、そういうことを経験させるというのが本来はあるべきなのではないのかなと思います。いろいろ話が発散して申し訳ありませんが、ちょっと私なりにそう思います。
【鈴木主査】  山口大、京都大、一言ずつお答えいただければと。
【若林様(京都大学)】  今回連動しているかという問いに対して一番重要だと考えるからこそコンピテンシーという物の見方を今回はしっかり軸に据えたいと思っています。個々の分野で何をするかという点では、今おっしゃったように各ピースを埋めることになってしまいますが、どのような能力を持って、どのように活躍する人材を育成するかという議論を明確に定義したものがコンピテンシーだと思います。おっしゃるとおり、先ほどの事業戦略と組織はばらばらに議論するのではなくて、新たな事業を組み立てようと思えば、そのための組織を変えていく必要がある。そういうことを結び付けて学ぶということができているかどうかはコンピテンシーのリストとそれぞれの授業がどう対応しているかになります。
 そして、授業間の対応関係については、個々のピースを学んだ後で、それを組み合わせてどう展開するかという授業や、インターンシップ等が組み合わされているかなどに関して、今御指摘の点を関して実際のカリキュラムの改善に生かしていけたらと考えております。ばらばらではなくて、統合的に連動して考えるために、コンピテンシーをベースとしたカリキュラムを今後のベースにするということをまとめているということでございます。よろしくお願いします。
【池尾委員】  先ほどの続きで、若林さんの最初の方の話で、「そもそも何でこういう授業が必要なのか」というと、それはやはり日本の企業の競争力が低下しているからで、その低下している競争力を向上させるためには、どのようなスキルが必要なのかという議論を是非お願いしたい。 「従来のカリキュラムをもっときれいにしましょう」とか、「アメリカのものとヨーロッパのものを持ってきて、何かハイブリッドをつくりましょう」とか、そういうものももちろん必要ではないとは言わないけれども、今、日本のビジネス教育には、もっと大きな問題点があると思うので、その問題点を洗い出すところからやらないと、この事業自体の意味がなくなってしまうような気がするので、その辺を是非お願いしたいということでございます。
【鈴木主査】  山口大の方はいかがですか。
【福代様(山口大学)】  いろいろ御指摘いただいた点ですが、多分我々の答えとしてはちょっと2段階になるのですけれども、まず去年のコアカリキュラム策定の際に、MOT協議会を中心にいろいろ議論した内容は、「必須栄養素」という言い方を使っていますが、最低限こういう学習内容は身に付けなければいけない。その教え方自体は問わないのですが、身に付けなければいけないという標準をまず第1弾として作りました。
 本日御指摘いただいた話、特に競争力を持つためにはもうちょっと組合せが要るのではないかとか、実地でどういうふうに育てていくかとか、その部分が抜けていると言われるんであれば、確かに今の時点では抜けております。その部分をカバーするために今行おうとしているのが、それを実質化させるためにどういう教育を行ったらいいのかという部分について、作業マル2 として開始しました。
 もちろん既に各学校での教え方の中でそれを実現しているところもあろうかと思いますので、そういったベストプラクティスも含めて、どういうふうに教えたら、そういったものが実質化するのかと。そこを現在作業マル2 として進めているところでございます。
 あと、若林先生がおっしゃっているようなコンピテンシー、この部分も、実は今仮に山口大学のバージョンではどうなるかというのを検討中で、まだ検討段階ですのでここの資料としては挙げていませんが、コアカリキュラムのマップのほかに、コンピテンシーと絡めたマップというのもこれから御提示できると思っております。
 ということで、我々としては、先ほど御質問のあった内容については、マル2 という作業、これが一番重いのですが、どういうふうにこの学習内容を教えていくと効果といいますか能力が身に付くのかということを検討していくたたき台ではございますが、第1弾を提示したいと思っております。以上です。
【上西様(山口大学】  ちょっと今の説明に補足してよろしいですか。
   本日お配りいただいた資料1の3、4ページにMOTの全体像が書いてありますが、これの左側に我々が富士山モデルと呼んでいる図があります。そこに基礎学習から中核学習項目があって、一番上を最初に作ったコアカリでは総合領域としていました。そこでは個々の知識やスキルを全体化していくことを意味しています。今回の改定版では、我々が直面している課題を解決するために創造的活動が必要だということを強調するために、あえて総合領域という名前を創造領域に変えていますが考え方は同じです。
【鈴木主査】  学修項目をつないで、実際の問題解決を疑似体験するようなという意味ですね。
【上西様(山口大学】  そうです。そういうことを重視しているということがここにきちっと書かれておりますので、更にグッドプラクティス等も踏まえて、報告書に載せていきたいと思っています。以上です。
【鈴木主査】  京都大の方もこのことはちょっと意識していただければと思いますね。
 では、永里先生。
【永里委員】  京都大学の資料の19ページにはミスマッチの話が出てきて、21ページの方で産業界・社会として、マル1 ビジネススクールで何を学ぶのか、育てる学生像がよく分からない、あるいはビジネススクールで学んだMBA学生の雇用や処遇が難しいというようなことが産業界の方の出口のところに書かれているんですが、これこそが実は池尾先生の言う、産業界の実態なので、世界を相手にした場合は、競争力において何か安住している産業界の経営者、ここにいらっしゃる天羽委員とかそういう人たちは別なんですよ、そうではなくて、一般的に日本が相対的に落ちてきている産業界の競争力というのは、こういう状態だからこそ起こっているのではないでしょうか。
 だから、今回、京都大学としてはコンピテンシー絡みでいろいろと問題提起なさっている。日本では経営のプロではない、何か会社の力学によって社長になったような方々が安住しているわけですから、そこについて、このMBA教育というのを、あるいはMOT教育というのをどうやってPRしていくかが重要です。それこそがここの21ページに書いてありますけれど、ビジネススクール間のネットワーク、産業界との組織的連携ではないでしょうか。この組織的連携をどうするかということが重要だと思いますね。
 以上です。
【鈴木主査】  では、石井先生。
【石井委員】  池尾先生がおっしゃったことが大事だなと私は思っています。そこがはっきりしないと、1つ1つのカリキュラムの意味がはっきりしないので。コンピテンシーというのがふさわしいかということなのですけれど、答えとして、経験で言うと、コンピテンシーは企業でかなり育成させられるのですよね。若林さんは御存じだと思うのですが、マーケティングを学ぶときに名前の通った大学に行くよりも外資系のマーケティング・カンパニーと言われるところに入るって実践を媒介としながら学ぶ方が優秀なマーケターが育っているという傾向がうかがえます。
 だから、それを考えると、良いマーケターをつくるためにビジネススクールへ行くというのは、私は必ずしも正解とは言えないと思うのですよね。同じ意味で、生産管理や研究開発や営業もでもそうです。日本企業は、5年10年で立派なコンピテンシーを持った人間に育てるノウハウは持っていると思うのです。そこでビジネススクールへ改めて出していって、マーケターを育てます、生産管理者や営業責任者を育てますといわれても、どれだけのことが企業の側に受け入れてもらえるのかという気がしないでもありません。だから学ぶ必要はないということはないのですが、そういうことを学べない会社におる方のためにビジネススクールを開放するのだというのも一つの方法かもしれませんけれど。
 何より、私が思う課題の一つは、現場から問題を抽出することが難しいというところにあると思います。例えば、こんなケースです。海外に工場をつくったらいいとなった。じゃあ、そこでどんな工場をどんな規模で作るか、マーケットはどこで確保するかといった直接の課題があります。それは、ケーススタディーが得意とするところです。それなりにありそうな答えが出てくるのです。だけど、その会社としては、海外に工場をつくったら、例えば東北の工場を潰さないといけないという問題を同時に抱えるのですよ。東北の工場が潰せなければ海外の工場をつくれないのですよ。東北の工場を潰すのは難しいです。労務問題があります。さらには、地域経済のために役立っています。海外の工場の創設となると、同時にこれらの問題が同時的発生してきて、多元方程式を解くように解決しなければなりません。これが経営の難しいところで、これはいろいろな面で現れてくることだと思うのですよ。
 ここのところは、ケーススタディーでもこなせない。ケーススタディーは、問題は限定しましょう、この限定した問題の中で最適解を考えてみましょうということになるのですけれど、その手を打ったら、モグラたたきのように想定の出来事が、それも社内調整では収まらない仕事があっちからこっちから出てくるのですよ。だから、その相互依存性みたいなものをどう扱うかという、この辺りが私は経営のポイントではないかと思っているのです。
 何かその辺りをうまく経験させるなどのケースも一つの方法になるし、何かそんな形で、現場で困っていることをうまく組織立てて何かをつくり出していくという力を育てる必要があるのではないかなと、個人的にはそう思っています。それをコンピテンシーと絞ってしまうとどうなんでしょうか。
 何か問題をもうずらしてしまっているような気が、私はして仕方がない。
【永里委員】  すいません、いいですか。
 おっしゃるとおりなのですよ。それで、現実の問題というのが先にあって、授業の方が後で追い掛けてくるというのですけれど、この委員会というのは、だからMBA教育がどうあるべきかということを議論するので、問題提起として非常に重要なのですけれど、何か例えば東北の会社を潰して、シンガポールであるいはインドネシアの会社を興すというようなことについても一種のケーススタディーとして教えられないのかということは、どうなのでしょうか。難しいと思いますが。
【池尾委員】  いいですか。
 もともとのハーバード流のケーススタディーというのは、問題を限定した様々なケースを繰り返し繰り返しやって、考える力を身に付けさせます。ところが今、両委員がおっしゃったようなことに関しては、あらかじめ問題が設定されている従来のケーススタディーではなかなかカバーし切れない。そこで出てきたのがフィールドスタディーということだったと思います。ですから、ケーススタディーももちろん重要ですが、それと同時にフィールドスタディーもやって、現在進行形の問題について学ぶ必要があるわけです。ケースというのは、どんなケースも過去のものです。今、両委員がおっしゃった話というのは現在進行形の話で、それをカバーするためにフィールドスタディー力を入れる必要があるのだと思います。
【川嶋委員】  すいません、ちょっと簡単なことから。
 1点目は今も出てきましたけれど、MOTのMBAのところで、少し概念というか言葉を統一する必要があるかどうかということも含めてなんですけれど。コンピテンシーとか学習項目とか、少し調整をされた方がいいのかなと思います。
 それから2点目は、コンピテンシーにしろ、学習内容や項目にしろ、先ほどのメーガーの話ではないですが、目標はこれで定まったとして、学生の視点からは、それがやはり身に付いたか付かないか、獲得できたかできないかです。このスライドでは評価と書いてありますけれど、アセスメントの問題です。最後はどうやって学習すればいいのかという学習・教育方法のところがあるのですが、この事業自体はどこまでを今後追求されるのでしょうか。
 それから3点目は、とんでもないことを言うかもしれませんけれど、今、もともと前提として日本の国際的な競争性が下がっているというのは、それは人口減もあるし、1人当たりの生産性が下がっているとありました。そこを何とかするために、ビジネススクールを通じて生産性を高めて、日本の国力の維持あるいは更なる向上を目指そうということなのですけれど、例えば学生というか個人の側から見たら、日本の会社で働く必要はないと思います。
 先ほど組織の力を高めるとおっしゃっていましたけれども、MBAを取った人ってどの国のどの会社ということにはこだわらずに、自分が一番高く評価される、あるいは自分にとって一番やりがいのある組織を渡り歩きます。そういう意味でグローバル人材なのですけれども、そもそもの前提として、日本の企業の組織力をアップできるような人材を育成するという考え方でコアカリキュラムを作っていくことが妥当なのかどうかというところを、私は産業界とは全く関係ない立場なので、少しいろいろお話しさせていただきました。
【鈴木主査】  必ずしも日本の企業である必要はなくて、要は実際にある問題をきちんと枠組みとして捉えて、しかもそれに対して解決策をきちんと打ち出せる能力を育てたい。例として、例えば日本のというのはあると思うのですけれど。
【池尾委員】  日本の企業は給与体系において、MBAを優遇してくれませんからね。もともとも欧米系の企業に行く人がいたけれども、現在は中国と韓国の企業に行く人もいます。ただ、先ほど若林さんが言われたように、日本のビジネススクールとアメリカのビジネススクールは違う。実はヨーロッパも違うのですね。インシアードのように、ヨーロッパにアメリカのものとかなり近いものがありますが、ヨーロッパの大学のビジネススクールには、アメリカ流とも違うものが少なくない。
 したがって、日本のビジネススクールというものが、世界のビジネススクールの中でどのような立ち位置にあるか、そういうことを考える必要があるのではないかと思います。【永里委員】  石井委員のおっしゃることが産業界の本音なのです。ここに先ほど言ったビジネススクールで何を学ぶのか、育てている学生像がよく分からないというのは、こういう態度だから日本の経営者は後れていくと言いましたが、日本の経営者は、逆に言うとMBAをそれだけ評価していないということの裏返しなのです、これは。
 いや、アメリカ、あるいはヨーロッパの方でMBAを出た人はどんどん偉くなっていくではないかと。日本はそうではないと。では、なぜかといったら、私は日本のMBA教育が悪くてアメリカの方がいいということではないと、思っているのです。本音を言いますと、そうではなくて、アメリカは4年制大学を出る人はそれだけ。もうちょっと頭のいい人はMBAへ行くと。だから、もともと素質があるのですよ、MBAへ行く方が。だから、偉くなっていくのだと。私はそう思っています。MBAの方は給料がずっと高くなっていると、アメリカでは。
 そうなると、どうすればいいか。日本の場合には、工学系がそういう意味でいくと、修士を出なければ意味がないようなものになっていますけれど、それと同じように結局MBAを出なければいけないように持っていかないと、MBAの存在価値がないという理論になっていくのですね。
【天羽委員】  
 先ほど若林先生のお話で、コンピテンシーというのは何だろうと考えていました。ただ、コンピテンシーという言葉を十把一からげにしているから非常に話がややこしくなって、隣の池尾委員も石井委員も皆さんちょっとあれっと思うのでしょうけれど。例えば先ほど言った競争力を持つ組織というのは、企業の中で言えば非常にシンプルな5つのことなのです。1つは、マーケティングです。先ほどP&Gの議論を石井委員がしましたけれど、確かにP&Gというのは、BtoCで物は売れますが、でも彼らがやっているのはセールスマンですよね。マーケティングで必要なのは、やっぱり戦略なのです。大学では、マーケティングの戦略を作るためのコンピテンシーということを学べるといいわけです。
 先ほどもう一つ石井委員が言ったのは、今、現実問題として、工場を中国につくったら日本は潰さなきゃいかんと。これはつまり、キャパシティープラニングのことで、グローバル展開するとBtoBがいつもそういうところに立たされるわけです。そうすると何が重要になってくるかというと、End to End Deliveredというサプライチェーンなのです。そのときにキャパシティープラニングするコンピテンシーをつくればいいのです。
 3つ目はテクノロジーです。テクノロジーというのもやはり非常に重要です。そのときのコンピテンシーは、先端の物をつくるのか、あるいは今ある既存の物と自分の会社にある物を組み合わせて新しいモデルをつくるのか。そういうコンピテンシーという、考えを持たせればいいのです。4つ目に重要なのはインフラです。知的財産(レギュレーション)の問題です。そこでプロフェッショナルとコンピテンシーを4つにカットして、それを全て真ん中に持っていくのが組織と人なのですね。ですから、人をマネージするコンピテンシー、組織力をつくるコンピテンシーということをやっていけば、全体的に会社としては、先ほど池尾委員が一生懸命おっしゃるように世界中に行っても必ず通用するわけです。
 そういった形の中で学生さんを育てていく。そうすると企業に対しても、自分たちのコンピテンシーはこういうピースでそれぞれやっているのですよということをもっともっと産業の方にアピールできるのではないのかなと思います。 若林先生の仰っているのは、余り十把一からげにぱっと言うので、皆さんがコンフューズしているのかなと思います。でも、そういうピースに分けていくと、すごく良いのではないでしょうか。考え方について、私はもう少し具体的に進めていくといいのではないかなと思いますが。
【鈴木主査】  ありがとうございます。非常にいい議論ができているのですが、時間との関係で、質疑はこの辺にさせていただきます。
 1つ山口大と京都大にお願いしたいのは、3月の東京及び宇部におけるシンポジウムで、やはり産業界の人にきちんと来てもらって、一緒に対話をすることが重要なのだと思うのですね。永里委員、天羽委員や石井委員の協力も受けながら、是非産業界からきちっとしたある意味で組織的に来ていただかないと、来て個人の意見だけ言われてもそれをちゃんと産業界にフィードバックできるような形で対話ができるような会の設定をお願いしたいなと思います。よろしくお願いします。
【古川委員】  1点だけ。
 MOTでもMBAでもどちらもそうなのですが、やはり日本の教育システムとして高等専門学校があるし、それから私が全体をやっておりました厚生労働省の方の大学校も25校あります。それと今度は、一般の専門学校のところも大学化するという話になっています。そういうところにも少し連携を持つようにしないと、卒業生は単に技能・技術だけをやることになってしまうのだけれども、実際は多くの人は経営的なところにも入っていくわけですから、是非その辺のポリテク関係の技術・技能の視点も少し加えていただけたらよろしいかなと思います。
 先ほど山口大学さんの方で挙がりました、東南アジアの諸国との関係も若干ありますが、それは大変よろしいのですが、私自身タイとか中国だとか台湾だとかそういうところのアドバイザーをしております。この間もタイに行ってきましたが、そのときに現地の人のお話では、現地のポリテクの卒業生とそれから先ほどのような高度なMBA、MOTの修了生の間の全く連携がないので、そのことが企業経営上も問題になっているそうです。ですから、その辺を、日本もそうですし途上国もそうだと思いますが、是非そういう視点を少し加味していただけた方がよいのではないかなと思いました。
【石井委員】  最近MBAはグローバルでしかないと言われていたのですけれど、神戸大学の場合は、はっきり一線を引いています。どう引いたかというと、組織から来て組織に帰るということをうたいました。だから、キャリアアップのための人は、どんなに優秀でも採らない。だから、企業から来てその企業へ帰るということを前提に教育するし、会社もそのつもりで人を送ってほしいという形にしました。こうすると、根なし草のような人材を育てることにはならないと私は思っていまして。それは慶應の方針と神戸の方針の違いかもしれませんけれど。
【池尾委員】  いや、慶應は両方ですよ。
【石井委員】  両方。あり得ますということです。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 それでは時間がなくなってしまったので、フロアからの質問は省略させていただきます。
 ちょうど休憩の時間なのですが、時間がないので5分の休憩ということで、45分からスタートということでよろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【鈴木主査】  それでは再開したいと思います。後半は、競争力のある成長分野や産業界の関心が深い分野での教育モデルという、教育プログラムの開発ということで、最初に筑波大学からの説明をお願いしたいと思います。
【西尾様(筑波大学)】  ありがとうございます。筑波大学のビジネス科学研究科、研究科長の西尾でございます。ありがとうございます。
 先ほどの委員の先生方のお話を伺っていて、我々がこれから開発するプログラムは果たしてどんなコンピテンシーが適用できるのかと身の引き締まる思いで伺ってまいりましたが、現時点での中間報告、進捗状況について御説明させていただきたいと思います。
 お手元の資料4を御覧ください。本事業の狙いは、データサイエンティスト養成でございますが、その中でもビジネス分野、MBA教育としてデータサイエンティストをどうやって育てていくかというところに特化したプログラムを開発したいと思っております。実務や分野、データ、解析という4つの柱を置いております。これの必要性については、後ほど実際に市場調査というかそういうことも通じて、こういう領域を詰めていった方がいいということも含めてお話をさせていただきたいと思いますが、単にビッグデータが扱えますということではなくて、そういうものを総合的に体系的に学べるようなプログラムを開発したいと思っております。対象はもちろんのこと有職社会人でございます。
 5ページ目を御覧ください。事業の実施体制ですが、今回は私どものところにあるビジネススクール3つの協働という形で展開したいと思っております。私どものところは、専門職大学院である国際経営プロフェッショナル専攻以外に専門職大学院制度ができる前につくられました経営系の大学院として経営システム科学専攻というのがございます。それから後ほどお話をさせていただきますが、データサイエンティストを養成していく中で最も重要な柱となるであろう法律的な知識というのも大変重要でございますので、私どものところにある企業法学専攻と協働して、社会科学型データサイエンティスト教育プログラムというのを開発しようと思っております。そのときに、当然のことながら産業界との協働というのが不可欠でございますので、データサイエンティスト協会に再委託をお願いして、そこと共同で作っていくというプログラムを考えております。今、実際に動いております。
 内容としては、柱としては、非常に漠とした図でございますが、6ページにございますように、単にデータを集めてきて解析できて分析できて、それを情報としてフィードバックできるということではなくて、それがデータではなくて情報となるためには、きちっとした背後にある構造が分からなくてはいけない。かつ、その情報をきちっとマネジメントして具現化するためにマネタイズできるであるとか、ビジネスモデルの中で展開できるといったことも不可欠でございます。限られたプログラムではございますが、そういう領域も含めての、それを4つの領域というふうに置いております。そういうことができる、データや解析を高度に活用できるマネジメント人材、まさにマネジメントができるデータサイエンティストというようなところを育成したいと考えております。
 この考え方がメイクセンスであるかということを、まず企業の方々に調査いたしました。実際にはこれは第1報でございます。まず協力体制にあるデータサイエンティスト協会の会員企業の方々にも調査を今依頼しておりますが、そちらはどちらかというともともとデータサイエンスが重要だというような下で集まられているので、そうではない、相対的にデータから遠い企業の方々に対しても、特に管理職にある立場の人たちに対して、アンケートを取っております。本日はその結果についてのみ御紹介します。本日は御紹介しませんが、実際に今度はビジネスパーソン、有職社会人が個人で、もちろん企業から派遣というようなことだけではなくて個人で通えるかどうかというようなことも含めて、個人個人の社会人に対しての一般的な調査も現在進行中でございます。最終的には、最終報告書の中では、そういうことも含めてフィージブルかどうかということもお示ししたいと思います。
 まずは普通の企業のというか、データサイエンティスト協会に所属していない企業の方々の実態調査の結果について御報告させていただきます。時間が限られているので、一部かいつまんでではございますが、9ページ目をごらんください。企業のDS、データサイエンスを今DSと略させていただきますが、DSに関する現況として、当たり前ですが、普通の企業においても全く関係のないというところもあるわけですが、ほぼ多くのところが、データ処理関連業務は多くて、重要度も高くて、かつ経営戦略に生かしていきたい。あるいは生かすことが重要であるというふうに当然考えているわけでございます。それからデータサイエンス人材が著しく不足しているということです。ただし、大規模データというのは、どの企業にも一定数存在しているということが示されております。
 10ページ目を御覧ください。さて、そういうデータをきちっと戦略情報として活用する場面において、どんな知識が必要かというと、実際にはもちろんそのデータをきちっと扱えるという技術に関することで、機械学習であるとかAIであるとかということもあるのですが、重要なことは、実際には確率・統計というような手法を先に決めて、そこから構造を見いだしていこうというようなところに関するニーズが非常に高いということが分かっております。後ろの方に自由記述がございまして、それをごらんいただくとその辺のことも強調されております。
 そういうことからして、必要な技術としてどんなものかというのは、11ページでございますけれど、テキストマイニングやデータマイニングというようなことも重要なのですが、それ以上に分野知識として、それがどうマーケティングに使えるのか、あるいは、マーケティングでこんな問題が問題になっているから、こういうものが必要なのだというようなことが重要です。ここは集計してしまっていますけれど、会計やファイナンス、先ほど委員の先生方がおっしゃっていたようなことがちゃんと出てきております。それからもう一つ法律的な知識、天羽委員が最後に知財というようなことも必要なコンピテンシーだとおっしゃっていましたが、まさにこういったことについてのニーズというのも数字となって表れてきております。
 本当は、本日パワーポイントに映し出すことができたら、自由記述の中の主だった意見について御紹介したいと思っていたんですが、できないので、ちょっと読み上げさせていただきます。後ろの方に、自由記述データをもうベタで付けさせていただきました。要約すると、自由記述の中で、課題と必要なプログラムとしては、経営層も含めて必要性は理解しているが、一方で実際にそういうことを引き受ける業者も、ビッグデータ、AI業務を受注する外部業者は乱立しているが、実際の企業においては、やっぱり社外や国外へのデータの漏えい、あるいはモデルやノウハウが流出してしまう懸念がある。あるいはブラックボックスで解いてしまうことによって、品質やコストへの不透明さといったような懸念事項もあるのだとあります。
 そういうことからして、ある程度自前で養成したいということ。それから、単に大規模データを取り扱えるだけでは意味がなくて、やはりデータの背後にある構造やメカニズムを理解した上でマネタイズできるようなビジネスモデルが立案できる人材が必要だというようなことを企業人は言っております。それから、そうやって考えると、経営やマーケティング課題とデータマネジメント上の技術的課題の双方を理解し、課題解決も進められる人材が必要である。しかもそれはスタッフレベルではなくて、マネジャーや上級管理職という幾つかのレベルに分けても今後育成が必要であるということを言っています。現状ではOJTで対応しているが、それにも限界である。ゆえに、こういうデータサイエンスの実践と内製化に必要な統計やIT、マネジメント、法的知識やスキルを体系的に学べるプログラムが必要なのだということが出てきております。
 まさにそういうことからすると、我々が最初に掲げたようなことは、ある意味ニーズとは合っているのかなと思い、その辺のことを詰めて、プログラムを実際に今開発しております。
 具体的にどうするかというと、今回は、そうはいっても忙しい社会人で、実際には企業から派遣をしてもらう形で送り込んでもらって、ニーズのあるところに送り込んでもらって、無料で今回はプログラムを提案するというようなことを考えておりまして、13ページにございますように、実際には4回に分けて日中に教育をしたいと思っております。内容は、今のところ組んでいるプログラムはこんな形でというのが14ページから15ページにかけてあります。
 まず分野としてマーケティングや経営戦略といったようなものを学ぶと同時に、法律として個人情報保護法が必要です。これは私どものところにおる弁護士でもあってたくさん事例を持っている人間に話してもらい、あるいは法学系の知財の専門家について関連法を話してもらうということをします。それから、それ以外のところで、そうはいっても頭だけではいけないわけで、実際にデータを使って分析をするという意味で確率・統計的分野の方からのアプローチとデータマイニングや機械学習側からのアプローチと両方学んでいただいて、その両方についてのよさというのを体験してもらうというプログラムを考えております。
 以下、16ページからずっとどんな内容かというようなことについては概要だけを述べさせていただいておりますが、余り時間がないので、後で御覧いたければと思います。
 今後の予定としては、今、これ以外のところで、いわゆる実際に顧客層として、企業ではなくて顧客側の立場としての社会人向けのアンケートを実施しておりますので、その結果について集計し、どのぐらいの規模感の人がどのぐらいの金額だったら来てくれるかというような話と、それからデータサイエンティスト協会の方で、実際にはDS協会に委託しているのは、DS協会が中で持っているデータサイエンティストが身に付けるべきスキルチェックリストというのがあるのですね。そういうものを提供していただいて、我々のプログラムがそれに適切かどうかというようなことも最後に評価したいと思っております。
 それから、12月中旬から下旬で受講者を募集して、1月の末から実際に実行し、そこから先、具体的にチェックリスト等々も含めて的確かどうかというような評価を有識者委員会で判断していただいて、最終的に評価を付けて報告書を出させていただくという状況でございます。
 以上、大変雑ぱくな説明でございますが、以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは、委員の方々から御意見ありませんか。
【永里委員】  企業にとってデータサイエンスというのは非常に重要です。データサイエンティストが不足していて、それを必要とするというのは、もう全くそのとおりで、そういうニーズを聞くと、そのためには統計学なんかをよく勉強してほしいとか、ここに書いてあるとおりなのです。
 ですが、実際は、データサイエンティストになる前に、自分の専門分野に対する課題意識がないと、全然有能なデータサイエンティストになれないはずなのです。だから、一番やるべきことは、専門分野、自分のビジネス分野でどうやって課題意識を持たせるのかということです。そういう意味では、データサイエンティストのその前のMBA、MOTの教育の仕方とも関連してくるのですけれど、そういうことがない限り、幾らスキル、統計学を教えても数学を教えても、生かされないデータサイエンティストになるのではないかと思いますね。
【西尾様(筑波大学)】  お答えしていいですか。
 ありがとうございます。まさにそうだと思うのですね。大学等々のときには必要性が分からないで学んでいるから、いつまでたってもちゃんとしたことが学べなかったと思うので、おっしゃるとおりだと思うのです。
 ただ、今回のプログラムの中でそれをどう生かすかというと、1つ、唯一生かせるとすると、最初の授業のときに、まさに今、委員がおっしゃってくださったような自分の専門分野というか、皆さんは企業をしょってこられたと思うので、その領域における課題や意識というのを最初に少し書いてもらうなり、出してもらうなりして、少しそれを理解してもらった上で受けてもらって、最終的にどうだったかという形で、最低限このプログラムを評価させていただければなと思っています。今いいアイデアを頂いたので。最初の授業をどうしようかなと思っておりました。多分そういうところをまず活用させていただければなと思います。
 ただし、これだけですので、今おっしゃっているのは深い意味のことについて、とてもではないですけれど対応できませんが、少なくともそういうところはちょっとさせていただけたらなと思っております。
【池尾委員】  いいですか。
 これはノウハウとしては教えやすいと思います。ただ、今、永里委員がおっしゃったことと関係するのですが、経営者の人、意思決定者の人というのは、わけの分からないものは信じないですよね。ですので、コミュニケーション力というのが非常に重要です。幾らすばらしい部下であっても、その人の話をブラックボックスとして信じて意思決定をするというのは、ほとんどあり得ないでしょう。ですので、これがすばらしいものであればあるほど、多分永里委員の話とも絡むのですけれど。コミュニケーション力というのを、是非考えていただきたい。
 それからもう一つは、実務の方からアンケートを取ってニーズを聞くのは結構なのですが、やはり最先端の分野であるならば、実務を引っ張るような。こういうことを知りたいのではなくて、こういうことを知らなくちゃいけないみたいな、そういったリーダーシップを持って、進めていただければと思います。
 以上です。
【西尾様(筑波大学)】  ありがとうございます。
【天羽委員】  いいですか。今の意見、私もそのとおりに思います。
 ただ、そのとき、事前に有識者、社会人からいろいろフィードバックをもらうのであれば、やろうとしていることをもう少し明確に書くことで、例えばあなたはこれをやってマッターホルンに登ろうとしているのか、それとも八王子の高尾山に登ろうとしているのか。それとも富士山に行って、何となくチャレンジングにやろうとしているのかを自覚させるべきです。要するにもう少し明確に質問して、どうしても富士山に登るのであれば、じゃあ、北から登るの、南から登るの。それとも春夏秋冬いつ登るのですかと。登るときによって装備が全然違うので、そういったことを考える必要があります。
 ですから、できるだけ具体的な質問を受講者の人にして、何をやりたいのだろうな、というときに、もう少しそういう具体的な質問をしていくことで、非常にチャレンジングでスペシフィックなものになり、どんどん受講者もモチベーションが湧いていくのではないのかなと思います。
【佐藤様(筑波大学)】  ありがとうございます。
 今、委員の先生方のおっしゃっていることは、全くごもっともの話なのですね。一方で、今の日本の現状というのが、この領域の現状というのがどうなっているのかということなのですが、砂時計型の構造になっていると言われているのですね。すなわち、トップはすばらしい技術を持っていて、非常に世界的に見ても競争力のある人たちである。一方で、こういったようなことを使いたい人たちというのも非常に多い。ただ、それを真ん中でマネジメントしたり、下に対してどうしていったらいいのかということを教育できるような人たちというのが著しく少ないという状況があるのですね。
 そうすると、もちろんニーズサイドでどうしていったらいいのか。どういうものが知りたいのかということに加えて、教える側の理念として、その真ん中の今著しく欠けているという部分に対して、一体何ができるのかというような形で考えていきたいというところが、このプログラム自体の背景にはあるのだというところを御理解いただければと考えております。
 ありがとうございます。
【西尾様(筑波大学)】  すいません。ちゃんと書いてなくて、申し訳ございませんが、そういうつもりでおります。
【鈴木主査】  今回は4日間のコースですよね。だから、4日間のコースでできること、更にこれの発展形として、上方向へ行く、あるいはもうちょっと裾野を広げる方向、いろいろあるのだろうと思いますので、今回はこの4日間でできるというのは、その中でどこを狙っているんでしょうか。
【佐藤様(筑波大学)】  壮大な思想としては、今お話ししたような話なのですが、このプログラム自体はイントロダクトリーな部分もかなりあります。イントロダクトリーというのは、データサイエンスは必要だというふうに考えているが、そもそもそれに見合うような技術を有していないような、どちらかというと初学者プラス、企業の中で少し何年かやって自身が抱えている課題にデータを使って何がしかのソリューションをできないかなんていうことを考えているようなレベルのところを少し刺激するという、そんな感じを絵姿としては考えているといった状況です。
【鈴木主査】  ほかにいかがでしょう。
【川嶋委員】  すみません、1点だけ。ちょっと口を出させていただきます。最後に、またこれもとんでもない質問かもしれません。
 大学にお勤めであれば御承知だと思うのですけれど、今大学でもインスティチューショナル・リサーチといってデータベースで大学の経営判断をしていくということが非常に強く求められておりまして、今回のこの受講対象者というのは、大学関係者も想定されているんでしょうか。
【佐藤様(筑波大学)】  もちろんそれを除外する意図というのは全くないのですが、これ自身は、そもそも大きな想定というのは、大学も含めて実務という領域の中にある課題に対してデータから接近するということなのですね。ただ、とはいっても先ほど委員の方からもお話が出ていたように、その現場において、ある課題ということによって使うべきアプローチとか使うべきデータというのは変わってくるという話があるということを前提にして、今回は、どちらかというとマーケティングという領域に対してというところを念頭にやっていきたい。
 そういった意味では、将来的にはファイナンスのプログラムであったり、はたまたもっと別の領域を題材としたようなデータサイエンスの在り方という形の方に発展できたらいいなと考えているところです。
【鈴木主査】  あと受講者をどういうふうに集めますか。公募しないとなっていたのですが、これはどういう意図で、しかもどういうルートで集めようとされているのですか。
【佐藤様(筑波大学)】  いろいろな理由があるのですけれど、過去に無料で公募をして人を集めるということをすると、様々な方が来ることで、プログラム自体がうまくワークしなくなるようなことがあって、そういった意味では、ある程度スクリーニングを掛け得るような状況で人を集めていきたいと考えています。そうった意味の中で、我々のところは完全に有職社会人を対象にしている大学院ですので、その方のネットワークを使いながら人を集めるということが可能だと考えておりまして、そういった形で人を集めてプログラムを執行していきたいと考えているところです。
【鈴木主査】  ほかに。一、二分余裕があるので、では、会場の方でどなたかいらっしゃれば。
 なければ結構です。
 それでは次の話に行きたいと思います。次は、東京工業大学より御説明をお願いいたします。
【藤村様(東京工業大学)】  東京工業大学の藤村でございます。
 ちょっと本題の説明の前に、冒頭のお話も少しカバーさせていただきたいのですが。最初に池尾先生からおっしゃった話というのは、私もMOTのコアカリキュラムの委員でありましたが、5年前にした議論でありまして、それを解決するためにMOTコアカリキュラムの方では、先ほどのプロジェクトとか総合領域ということを設けています。
 それで私どもだけの例をとりますと、基本的に私どもがこれを主にしますよということは、入学の前からはっきり言っておりまして、主な学生のほとんどが要するに自らの問題を自らデータを集めてその理論を見つけてくださいということをやっています。ですからアカデミックな研究というよりも、プラクティカルな研究、はっきり言うと、自分の問題を実証するということです。自分の問題意識を実証するということを研究するということを主にやっていて、それで本学としては500番台、600番台という名前になっていますが、500番台というのは割と一般的な形の知っておくべき内容にして、600番台はそれに等しく自分の目的に合ったかなり深く突っ込まなければいけない内容に対して、講義を用意しているということになっています。
 さらに、先ほど言いました天羽先生からもいろいろ必要なことをおっしゃっていただいたのですが、その中で1点欠けていると我々考えているものがございまして、つまりそれは経営において必要なことは、一番大事なこととして社会の重要性の問題です。講義は一杯並べても、学生もチョイスしますから全部は取れませんし、先ほど言いましたように、学生も全てが経営者、もう経営層というわけではありませんから、いろいろな当面においての問題で必要なところというのはあります。したがって、最初に自分の問題をまず実証するということがまず第1段階であって、その中で必要なものをチョイスできるような形はそろえておくということが大事で、更に今言ったように経営だけではなくて、最近では社会の重要性、つまり倫理を含めた社会の重要性をどう考えるのか。国際性も含みますけれど、そういったこともあるので、私どもでは少し政策面の基本を学んでもらえるようなプログラムを用意したり、コミュニケーションデザインを入れたりとか、そういうことをしています。
 本題ですが、基本的には採択後提出しました事業計画を用意しました。コアだけ言いますと、この8ページの絵を見てください。まず自然現象から始まって、それを科学知に置き換える。あるいは更に応用して技術原理に置き換えるといった研究は主に大体理学部系みたいなところで行われております。そして、更に科学知を技術原理にし、更にシステム化、あるいは更に製品に至るところでの生産性とか品質を扱うと。ここは大体工学部というところで行われています。
 問題は、実際はそうやってできた製品がそのまま社会で売れるかといったら、必ずしもそんなことはなくて、社会に対してそれを社会適合化していかなくてはいけない。ここは、大学では基本的には教えていなくて、カバーもしていなくて、ほとんどが企業で行われていて、それは、しかしながら企業の方も今までの経験とかセンスとかノウハウというような非常に属人的な形で扱われていることが多い。つまり、ここは形式知化されていなくて、体系化されていない。
 その結果何が起こるかというと、先ほどの我が国が弱いというところもそうですが、つまりどんどん技術とか製品は高次システム化、つまりより複雑でより高度なシステム化をするわけですが、そして、つまりこの製品技術を別の製品技術と合体させるみたいな話になってくるわけです。
 つまり、ここの総合のときのコアというのは、結局この社会化するところの問題をどう扱うかということが共通言語で記述されていないと、より高次システム化ができないわけです。したがって、この社会化工学と書いてありますが、ここを我々東工大MOTとしてはもっと工学と一緒になって、経営の問題だけではなくて、工学と一緒になって、ここをより形式知化して体系化していくような、そうした新たな学問分野を創っていこうと思っています。ここの知識は、日本にはあらゆる分野で技術トップの企業が一杯ありますから、そうした企業は中にあるそうしたノウハウや経験知というものをもう少し体系化してくださいと言うわけです。ここには書きませんけれど、学内ではそういった新たな博士号もということも今検討しております。そうした活動の中の一環として、今回のものを一つ提案いたしました。
 その後は10ページを見ていただきたいのですが、具体的に行ったことです。委員会を通じて。まず1つ目は、先ほどのある程度経験をした若手、あるいは少し分野外の方を対象とします。今回は、我々のところは環境・社会理工学院ということになっておりますので、MOTと建築土木系というのが一緒になっておりますから、まずそこから始めてみようと考えています。建て付けとしては、この後、工学や電気や電子やあるいは機械、生命科学といったものに広げられるだろうと思います。位置付けとしては、これは広く、きちっと名前を付ければいいですね。専門技術経営というような分野が必要になるのではないかと考えています。つまり若手として、専門の中にある程度技術系的な社会性を持った知識を持っている人を対象にやるということです。それは、現実的に会社様の方から、専門の異なる分野とか学部から入ってきた人に修士レベルのことを教えたいのだという希望が幾つかあったのですが、現実の修士に入っていただいても時間的な問題もあるし、それ自体がそもそも必要かということもありますので、将来は社会人向けの修士課程というようなものも含みを持って、多少考えています。
 そのために今回は、先ほどの話ではないですが、まずある程度少し自社で専門性を持った人に対して、自分がこれから成長していくために、ここでは建築土木産業ですが、その周辺あるいはその中にどのようなほかの技術があるのかということを俯瞰してもらいます。自分の位置付を知ってもらうということを目的としたこれはノンディグリープログラムです。
 そして、スケジュールを見ていただければ分かりますが、実際上もう公募してパンフレットを出しました。現在もう既に申込みが終わったところで、8社8名ですね。それからあと今検討していただいているというところが幾つかありますので、何とか10人程度集められるかなと。赤字にならなくて済むかなと思っておりますが、その中で、カリキュラムとして、先ほどコミュニケーションという話が出ましたけれど、最初にコミュニケーションデザインを入れています。これはグループ学習なんかもしていく予定です。また、これから社内に戻ってこうしたことを広めていただく上でも、これは欠かせないというので、まず冒頭にコミュニケーションの演習も含めたことを行っています。その上で、現実の企業の方から事例の問題を出していただいて、最後にそれに対する講義を学んでいる間に、グループでそれに対する回答をずっと考えていただくということにしています。
 それで、最初は建築系、次は土木環境系になっていますが、各先生、これは東工大の建築土木系のかなりの有名な人をオールスターで集めたのですが、いずれも何々学とか何々論というのはやめてくれと、お願いしています。専門性がもっと必要だったら科目履修でも何でも取ってくださいと。つまり、どういうことが分からなければいけないの。どういうことを、特に社会とのつながりを意識して、こういう強いて何々論的なものというのは避けて、こういうことを学ぶために必要なのですよという講義が並んでいます。ですから、これは何か専門性が分かるということではないわけです。先ほど申したように俯瞰すると、最後にそれをビジネスに展開する上でDo Jobとしてクラウドワークとかサービス化というのが言われていますから、これの概要を付け加える。最後に最初の課題を発表していただいて、チェックして終了という講義を考えています。
 もう検討は終わりましたが、今本当は、土木系は時期がものすごく悪いのですが、何とか集まっていただいて、ちょっと延びますが、1月からすぐスタートするということにしています。
 もう一方は、今度は先ほどの博士も考えていると言いましたが、先ほどの社会化工学のところをもう少し形式知化・文章化しようということで、これはこれに協賛していただいています日本工営様の方と協議を何回か繰り返しまして、その中の事例を。今1点、ほかにももう一つ進めている候補があるのですが、これが今進んでいて、担当の者がやっています。これは面白い事例で、下水道に関する技術で、ここにざっと書いてありますけれど、オイルボールを除去するものと技術です。公衆衛生上の環境問題技術となっていますけれど、最初これは98年かな。最初こういうのが必要ですよということで、当時の建設省で公募があったのですけれど、このときにこの技術というのは採択されていないのです。認可されていないのです。これは非常に簡単な構造なので、要するに定量的な数値がなかなか出しにくいということがあって、当時これよりもはるかに、もう10倍以上の値段がする高い輸入の物が採択されているのですね。しかしそれは電気が要るとか工事が要るとか。モーターでゲートを動かすようなことをしますので、電気が要るとかスペースが要るとか、実際上はほとんどうまく使えなかった。
 これは東京都が、とにかく時間がないし、この方が10分の1のコストで安いということで、国の認可なしに東京都が採択してくれました。その後追い掛けて国が認可して、現在は1,700か所ぐらいに流通しています。これを思い付いた人も開発した人も実は下水道局に勤められて、いつもマンホールを見ていたという非常にローカルイノベーションの典型のようなものなのですね。
 これがどうしてこういうことが可能で、かつそれが実際上は公式的な知識としては採択されなかったのかというようなところというのは、かなりこの社会化工学的な意味で、非常に面白い事例ではないかなと。ということで、今これを文章化して、将来的にはこれ自身もうまくすれば既存のジャーナルにも投稿できるのですが、こうしたことをちゃんと形式化したことに対してドクターの要件として考えています。新たなこうした実務的なものと、それだけではドクターは出ないのですけれど、更にアカデミックなものと合わせた形での博士を出したいということを、東工大として考えています。
 こうした全体の中での一つの要素として本プログラムを実行しているということであります。以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 スケジュール感について御質問したいというよりは、何とかしてくださいと言いたいのですが、この事業はあくまでも3月31日までなのですね。ですから、そこまでにきちんと成果を出して報告書をまとめていただかなければいけない。ところがこの受講スケジュールだと、5月31日にならないと講義が終わらないと、どういうふうに報告書をまとめるつもりなのでしょうか。狙いは分かりましたが。
【藤村様(東京工業大学)】  とにかく始めて、途中段階ででも、とにかく、これをまとめるしかありません。まず報告書というのは何かという、先ほどの受講者の意見が全部出るということまでが必要かということに限らないと思います。
【鈴木主査】  あくまでもこれはビジネススクールの機能強化促進事業なので、単に東工大でこういう授業をやってみましたではなくて、ここの中のエッセンスの部分なり、こういう物の考え方がよそのビジネススクールの強化にも使えるよと。その知見を見いだしてくださらないと。こんな事業やってみましたという事例を報告されてもしょうがないので。
【藤村様(東京工業大学)】  違います。もちろんそうです。
 だからといって、これを四、五回で終わらすというわけにはいきませんので。これは要するに教育ですから、必要なことは教育しなければいけないので、もちろんこの報告書としては3月一杯でまとめるつもりです。つまり、ここまでである程度受講者の方に最初に説明いたします意図が伝わっているかどうかというのは確認できるはずですので、その意味では3月中で本事業として目的としている範囲のことは、十分答えられるのではないかなと考えております。
【鈴木主査】  それはきちんとやってくださいということと、この事業は、8月か9月から動いているんだと思うのですが、本日までほとんど動いていないというのが実際のところなのでしょうか。
【藤村様(東京工業大学)】  いやいや、結局ですね。いや、そんなことないですよ。まずカリキュラムを作らなければいけないのと、それとこれ、公募して出したら1週間以内に人が集まるというわけではないですから。各会社さんに案内を出して、それで各企業さんも、中でお金を出せるかどうかを聞いたのです。最初に、これは11月ぐらいから可能ですかということで日本工営さんとかほかの方にも聞いて、企業はとても今この1か月やそこらではまず無理ですと回答されました。中で検討するのに時間が必要ですと。期間もですね。それでぎりぎりに1月にしようと、しょうがないので延ばしたと。これでも短いです。本当は半年前に言ってくれというのもあったのですが。これは現実問題としては、このぐらいで早いと思います。
 ですから、すぐ1か月、2か月で出したとしても、どこの企業も今度は人を出せません。社内で周知できない間に始まってしまうということになりますので、その点は何もしていなかったというのではなくて、これ、かなり個別の先生方の都合も入れていますし、かなりの内容も詰めております。本日は付けませんでしたが、全部シラバスも作っておりますので、ちょっと何もしなかったと言われると非常に心外なのです。これ以上早くできるところがあったら、やってくれと言いたいぐらいですが。
【鈴木主査】  繰り返しますけれど、公開講座のようなプログラムを1回やればいいという話ではないということは、もう一度確認をしてください。
【藤村様(東京工業大学)】  ですから、繰り返しですけれど、ですからこれは真ん中を変えれば、例えば電気とか機械とか生命理工とかにも変えられるような建て付けにしてありますし、それから時期として先ほど言いましたように、これは公共工事が始まるので土木建築は非常に今具合が悪いのですが、それも本当は聞いていますと、大体5月から始まって11月ぐらいに終わるようにしてほしいというのが一番希望としては多いところなのですが。ですから、これが終わってからすぐというわけにいかないでしょうから、この土木建築系に関しては再来年ということになるでしょうが、それでやる訳にはいきません。
 今回予算でいろいろ計上したのですが、都合上教室確保とか、実験を実際上やってみせるというのが1回ぐらいしか取れなかったというのが残念なところです。これもやると決めてすぐできるわけではありませんので、そういう意味では、先ほど言いましたよう、そもそもこれ全体が1年しかなく、というか現実的にはお金が出たのが9月、10月ですから半年ですから、半年周知が要る中で、半年でプログラムを作って、3回も周知しているのですから。そこは御了解いただきたいなと思っております。
【鈴木主査】  ほかにいかがでしょう。
【池尾委員】  
 今、建築土木のところを電気に変えればうんぬんという話がありましたが、こういうインフラ系の議論をする場合のカリキュラムと例えば何か電気製品をつくるときのプログラムは、前後の建て付けは同じで構わないものなのですか。
【藤村様(東京工業大学)】  いや、違うと思います。前後の建て付けは電気系とかそういうのになりますと、もう少し変更が必要です。インフラ系ですのでこうしたクラウドソースのサービスとか入っていますが、電気になりますともう少し、例えば科学技術論みたいなものを入れないといけないとは思います。ですから、そこの要素に関しては、MOTとかいろいろ持っていますので、併せて提供できるということになります。
【池尾委員】  例えば電気に関して、このプログラムを出ると、アイフォンXをつくれるような技術者ができるとするならば、もうちょっと何か広がりが必要なような気がするのですが。
【藤村様(東京工業大学)】  かなりビジネス的ということでしょうか。
【池尾委員】  そういう意味です。
【藤村様(東京工業大学)】  そういうところまで行くと、今、実はノンディグリープログラムがほかにあるのですね。基本的にビジネスの基本のことを学んでくださいというのは、我々のところではCUMOTというのがありまして、それの売上げが年間で2,000万円ぐらい。もう1年ぐらい待ちが出ちゃっているのですが、そうしたプログラムがあります。その中で、先ほどのマーケティングとかを教えています。そこも大体36回とか24回の両方のコースがあるのですが、言っていますことは、これで何かの専門家やビジネスができるようになるかといったら、なりませんとはっきり言っています。これは、要するにビジネスとしてどういう要素があるかということが分かることなので、皆さんがここでできて学んで帰ることは、MBAなりMOTを出た人が学んでいることは何かということを知ってほしいと。だから、そういう人を使えるようになってくださいというのが目的です。
 ですから、そこのプロセスから本科のMOTに入学を希望される方も毎年何人もいらっしゃいます。それがあるので、そこを受ける方は大体30代後半から、本科もそうですけれど40代ぐらいの方が多いのですが、これはもう少し若年層、まず自分の専門性をもうちょっと多角的に見られるようにする必要があるというところの層を対象にしていますので、ビジネス的なことというのは、少しここでは言わない。
【池尾委員】  分かりました。
【石井委員】  私、この分野をよく分からないのですけれど、社会化工学というのは非常にお話を聞く限り魅力的だなと思っていますね。これ、技術経営とおっしゃいましたけれど、1つのニーズに応える技術はいろいろあり得るということを、それを知るということですよね。
【藤村様(東京工業大学)】  そういうことです。例えば土木系で言うと、橋を造るといっても、今まででしたらこういうところにこういう橋を架けてくれという注文があると、地形を調べて、適切な材料とか工法を選んで設計して、造ったわけです。それはそういう外部環境が全部整っているからです。ですから、そこはそれに合わせますよというノウハウ、知識でよかったのです。
 ところが最近増えているのは、要するにODAなんかでやりますと、周辺の地域全体を開発してくれと。つまり両側の都市空間を全部やってくれという話になると、結局、同時決定的になるわけですね。橋ができると両側の発達に影響が出るし、周りの都市ができると、またそれによってニーズが高まると。非線形にはなるのですけれど、そういう累乗的に効くので、そういう意味で、少なくとも周りのこと、都市はどうなのということを知っておかなくちゃいけないはずなのです。
 そういう意味で、今自分がやっている範囲はここだけれど、それに対する周辺のことも少し知っておいてくださいというのがこれの趣旨ですね。社会工学というのは、まさにそういうところを言っています。
【石井委員】  マーケティングのイメージは、この技術を生かすどんな市場、ニーズがあるのかという問いが多いのですよね。今の話は逆ですよね。両方シーズも変わり、ニーズも変わる。どうマッチングするのかという話になってくるのです。私は非常に面白い試みではないかなと。こういうふうに頭を少し緩めると、なるほどというのが一杯出てきそうな気がいたしますね。
【永里委員】  まさしく今、企業が置かれているところです、そういうところは。社会化の需要の問題ですね。社会化「問題」。そういうことだと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。会場から何か御質問ありますか。
【傍聴者】   若林先生のところで御指導いただいて、ホスピタルマネジメントの寄附講座を京都大学経営管理大学院に開かせていただいているのですが、これから新しいジャンル、インダストリー4.0とかでどんどん新しいのが出てくるときに、新しいビジネスモデルというのをつくっていくときに、やっぱり現場にある問題点というのをどう解決していくかというのはすごく重要だと考えていまして。
 私は寄附講座だということもあって、現場の中にどんどん研究者が入っていって、そこの問題点をつかんで、それを解決していくということがすごく重要なのではないかなと思っています。それに対して、産業側と大学側が連携して、本当に現場の中にある落とし穴みたいのを拾っていって、その落とし穴を、こういう落とし穴があるのでこういうふうに行きなさいというふうに指導しながら、様々な技術をやっていくことが重要なんではないかと思っているんですが、その点についてちょっと御見識をお伺いしたいと思っています。
【藤村様(東京工業大学)】  研究者が現場に入っていって問題点を洗い出すということは、基本的には適切にはできないと思っています。なぜかといいますと、そこでの歴史とかノウハウとか、つまり形式化された知識が個々でありますし、主に経験とかそこの実行している人たちがそうはいっても信じていないとそのとおり実行してくれないので。一番いいことは、したがって我々のところで、現場の知っている人が自分のものの位置付けを知る、体系化してもらう、自分のものを自分が問題だと感じていることを実証してもらうと、良いのです。つまりある程度抽象化しないと。研究者のいいところは、抽象化された知識を知っているということです。
 ですから、その抽象化された知識を今度はスペシフィックな現場に落とすためには、そこの境界条件が、山ほどある境界条件を全部知らなければできないのですよ。そんなことは、全ての個々のものに研究者はできないです。ですから、そこは一番そこの個々の環境を知っている方が自分の問題を、どういうレベルまで行くか分からないけれど、ある程度抽象化してもらうということが基本的に大事だし、そうしないと企業の中ではほかの部門との話もできない。経営に資することもできない。
 だから、大事なことは、研究者が入っていってここは解決できますよということで解決策を示すことではなくて、その企業が解決できるようにしてあげなければいけないので、そのためにまず自分の問題点を抽象化して実証するという能力が先にあるべきだと我々は考えています。
【天羽委員】  いいですか。
【鈴木主査】  天羽さん。
【天羽委員】  余り理解できないのですけれど。今、リサーチャーのことを言っているのか、アプライドサイエンスのことを言っているのかというのがよく分かりません。研究者は本当に基礎研究だけと言っていたら、会社は潰れてしまいますが。でも少なくとも研究者というのは、あるしっかりとした形のテーマの中でどうあるべきか考えるというのが研究者であって。
【藤村様(東京工業大学)】  今のは、経営の研究者のことではないですか。
【傍聴者】  大変失礼しました。アクションリサーチのことです。私、もともと医学部を出ました医者でして、そこからMITに行きまして日本に帰ってきまして、そこから医療法人を立ち上げまして12年間、結構、どぶ板をさらってやってまいりました。いろいろな問題点とか分かっていて、アメリカでは先生方御存じのとおり、大学がビジネスにも入っていっていまして、ジョン・ホプキンスの医学部でも私が今やっているようなことを現場でやりながらどんどんやっていて、ですから問題点がすぐ分かってくると。
 日本はそれが非常にアカデミックな面とビジネスのものでかなり乖離しているなという問題点を非常に感じていまして。いろいろな立場からやらせていただきたいということで、このたび医学部の教授もやっていたのですけれど辞めまして、若林先生の御指導の下、新しいことをやらせていただいていますが、ここで一番問題なのはやっぱりアクションリサーチというのをどのようにやっていくかということです。
 それが我が国にはすごく足りないのではないかと思います。それから、これからインダストリー4.0で新しい技術がどんどん入ってくるので、中小のベンチャーみたいなのをどんどん育てていくというのが大事なのではないかなと。今、東工大の先生がおっしゃったみたいなやり方では、大企業ならできますけれど、中小ではとてもそんな人材はいませんし、マンパワーはないですし、お金もない。そういう中でどういうふうにやっていくかといったら、やっぱりいろいろな方々、産業界の方々もアカデミックの方々も現場に行ってリサーチするということが重要なのではないかなと考えています。
【藤村様(東京工業大学)】  ちょっと話が混同しているのは、科学技術研究の在り方の問題と、もうこれ教育の在り方の話であって、リサーチャーとしての態度としてはもちろんそれは重要なことであって、多くの研究者は現実に即さない研究成果を出してもほとんど、アメリカもそうですけれど、インパクトないですから。そういう意味では、それは個々の研究者としてやることは当たり前のことだと考えます。東工大の我々もそういうことは十分やっております。
 それと、今ここでは、一般の社会人、あるいは企業にお勤めの方、それからこれから何か起業を考えておられる方も含めて、その方たちに対してどういう教育を行うかというのが、ここの場でのプログラムでありまして。例えば、建築系のコンサルティングのやり方とかです。実は、今回申し込んでこられた中に監査法人の方がおられたりするのですよ。今度、土木系の会社を自分は立て直しをやらなければいけないけれど、さっぱり分からんということで、じゃあ、概観を知ろうと。その業界の中の技術を概観するということが必要だということで申し込んでこられているのですね。
 ですから、そういう意味では、ベンチャーの方も自分が持っている技術だけがいいから、これを信じてボーンと行くと大体潰れてしまいますので。つまりその技術が活かせる周りの状況というのをちゃんと俯瞰しておかなくてはいけない。そのときにビジネスの基本を知っておかなければいけないということで、こういうプログラムを作っております。ですから、これは決して研究者としての在り方とか研究者を育てるわけではありませんので、そこはちょっと議論として御理解いただきたいなと思います。
【鈴木主査】  それでは、どうもありがとうございました。
 続きまして、関西学院大学、お願いします。
【山本様(関西学院大学)】  少し時間が短いので、巻きぎみで進めたいと思います。申し訳ありません。
 前回のおさらいですが、関西学院大学の今回のプロジェクトは、インバウンド需要の取り込みと、それから地域観光、それからMICEを実行できる人材の育成が大きな目標です。
 ここにありますように、おさらいですが、インバウンド需要には日本の地域間で大きな偏りがあって、これを解決するということは、日本の観光それから会議も含めた需要を考えると非常に重要なことだと思っています。それから地方におけるMICE人材と地域観光を支えるマネジメント人材、この2本立てで現在カリキュラムの作り込みをしているところでございます。
 開けていただいたところに実施体制がありますが、現在ホテルマネジメントプログラムという、これは正規の科目とそれからここで開発します正規でない科目の組合せで、履修証明プログラムを考えておりますが、資料にあるようなプログラムを構想しておりまして、そのための企画それから調査を現在進めております。実施体制は、ここに挙がっているとおりです。肩書は省略していますが、本学の教員とそれから他大学の先生方、それから実務界の方ですね。その方たちの組合せで出来上がっております。
 委員会の開催は、8月以降何回か進めておりまして、途中経過も含めて、この間に何回も予備の会議を進めています。現在シラバスとそれからケースの作成を進めているところでございまして、パイロット講義を今週開催する予定にしております。今後、余りもう時間がありませんので、パイロット講義とそれからインターンシップの実施というのが今年度大きな目標になっておりますので、それをした後、全体としてどういうカリキュラムが必要とされているかということを報告の中では書いていこうと思っています。
 10月に全国のこういった実務に携わっている方々に対するアンケート調査を一回やってみようと考え、これを基にしながら実際に働いておられる方々にインタビューをしていくという形で、どこが問題なのかということを少しお話していっております。300名で人口50万以上の都市で、一定規模の宿泊施設を持っておられる、そういう施設にお勤めの方を対象に、調査をしております。見ていただくと分かるように、ほぼ首都圏と関西県の方の回答になっておりますが、次のページを開けていただきますと、国際会議の実施状況を見てみますと、やはり東京23区は圧倒的に比率が高くて、あと大阪、京都というところが大きな比率を占めている。これは大体予想どおりですね。
 それから国際会議の実施経験のある回答者は、専門人材の育成が必要だということについて、かなり肯定的な意見を出していただいています。これは、今まで実務家の方にヒアリングをしたりお話をしたりしている中でも、国際会議を開いていくとなると、単純にホテルのことが分かるとか、それからその地域のことをよく知っているとか、そういうのでは難しいですよというお話をされていました。
 それからもう一つは、そういったことも含めて、そもそもこの業界での人材育成の状況ということについて、少し回答していただきました。やはり離職率は高いと思うというふうに回答されている4番、5番の回答部分で、全体の70%です。ですから、ホテルの人材の流動性というのは非常に高いというのは大体分かっているのですが、今回の大きな施設でもなかなかずっと長くお勤めいただくというわけにはいかないということです。
 それから、比較的大きな施設の調査でしたので、外部・内部の研修の成果は比較的あるというふうにお答えを頂いておりますが、ただ、十分受けているという方は3分の2程度で、この程度の規模の施設でも、3分の1では十分な研修が得られていないと言っておられます。
 それから次のページですが、こういうことを特に国際会議の実施を考えたときには、圧倒的に自治体との連携が大事だという回答が多くて。これは今回ケースの中心になっていますポートピアホテルの実践例を見ても、この自治体との連携を日本全国でどうやって高めていくかということが課題です。そのための人材の育成がどうしても必要だということです。
 それから今回はMICEの部分で、1つ今仮説として挙がっている問題で、これもどう高めるかは非常に大事な部分なのですが、一般的にホテルでこういったことを実施される方の意識としては、参加者、来ていただいた方の満足の重要性は大体理解しているのだが、なかなか主催者満足が理解されていません。主催をする側の満足、収益も含めて、その会の主催者側の満足を高める施策については、頭がなかなか回らないというお話をされていました。これは、今回の調査でも、大体そのとおりかなと思います。ですから、主催者満足の重要性が非常に高いというのは、やはり実施回数が多いところになっていまして、この辺りはやはり少しカリキュラムの中にどう取り組んでいくか。単純にそうなのですよという話では駄目なので、これを実現できる仕組みを考えましょうということです。
 現在予算の中で6本のケースの作成中でして、先ほどお話をしたポートピアホテルのケースの事例を進めているところでございます。経営革新とMICE対応という2つのケースをポートピアホテルを題材に作成しているところですが、先日もこれに関して東京で講演を私がしたところ、やっぱりかなり質問もしていだたきました。これは関西経営品質賞への応募のお話とそれから神戸コンベンションコンソーシアムのお話ですね。コンベンションコンソーシアムというものをつくって、神戸ポートピアホテルがホテルとしては国際会議開催件数で日本一になっているということの、そこまでの道筋についてのケースと2つ用意しようとしています。
 これの肝になっているのは何かと言いますと、ホテルの中で一番大きな問題は、部門別に意思決定が分かれてしまっているというところです。宿泊は宿泊、会議は会議という仕組みで動いてしまっているので、これをどうやって一本化するかという、その仕組みづくりを考えるというのが一つ。このケース2、それからケース1の中では重要なことになっているということです。もう一つは複合施設の運営をどうやって一体化を行っているのかという仕組みとやり方ですね。この辺りを学んでいただくというのが、もう一つのポイントになってくるということです。
 それから地域観光に関しては、この四万十ドラマ、これは非常に有名なケースなのですが、四国でやられているこのケースについて一つ、今つくろうとしておりまして。物販を中心として村おこしをしながら、セミナーや研修を通じて定住者を探していこうという、地域観光の出口を考えた非常に息の長い戦略を考えておられるところで。これもほぼケースがつくり上がってきているので、これを一応パイロット講義としてこの後少し考えてみたいと思っています。
 そのほかのケースの作成状況は、次のページに挙がっているとおりでございます。モンサンミッシェルは御存じのように世界遺産のケースですね。それから吉野町のケースは限界集落を含めた地域での観光の可能性。これは、社会資本に関わるようなお話というのが中心になってくると思います。山陰合同のDMOは、この12月に会長さんにインタビューすることが決まっていまして、これでケースが作成できるだろうと考えています。
 国としては、グローバルな戦略都市というのを選定して、産業としてはつくり上げようとは考えているのですが、例えばソウルとか上海といった都市に比べると、日本はどこをとってもやはりこの産業に関しては劣位な状況というのは余り変わっておりません。ですから、こういう産業を例えば観光を含めて、日本の基幹産業として本当に成立させていくための人材育成の道筋というものを最終的には提案できればなと思っています。
 パイロット講義が12月、先ほど言いましたように旅行者行動に関するものを13日に開催する予定で、ちょっと大きな教室が取れなかったのですが22名程度で実施できると思います。キャンセル待ちになってしまって案内した方には申し訳なかったなと思っているのですが、1月の方で少し大きな教室が取れていますのでそちらに回っていただきました。ニーズとしては十分あるのだということはホテルの方もおっしゃっておられましたので、プログラムは成立していくと思います。
 ただ、一番、今、腐心しておりますのは、インターンシップを実行していくに当たって、日本コンベンション協会さんとの連携も含めて、日程調整を今やっているところで、これが終われば本年度の、今計画しているところは終了という形になると考えています。その後は、来年度以降この企画をどういうふうにブラッシュアップするかということになるだろうと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 御意見ございますか。
【池尾委員】  これはニーズがあるのはよく分かるのですが、先ほどちょっと言われていたみたいに、競争力に問題があるわけですよね。日本のホテル業とグローバルなホテル業界チェーンとを比べればやはり競争力が劣る。それはなぜか、キャッチアップするためにはどのような工夫が必要かといったものを、もうちょっと前面に出していただく必要があるのではないかと思ういます。
【山本様(関西学院大学)】  今お話ししたように、1つはマネジメント自体が大きな問題があるというのは、ここの議論でよく出てきました。専門職なのですね、皆さん。やっぱり客室は客室、宴会は宴会。そこで小さな最適をつくってしまうので。RCEPの話を実はケースの中に入れないといけないのですが。今年の春に外務省から、日本でRCEPをやるという話がありました。これはテロの問題で日本にいきなりこれが回ってきたのですけれど、やれるところを探してくれと言われたときに、ポートピアホテルしか手を挙げるところがなくて、結局そこでやることになったんですが、その話を聞いていると、そういう会議開催ノウハウ自体が、どうも日本のホテルには欠けていました。
【池尾委員】  オペレーションの話も非常に大事だと思います。日本のホテルがグローバル・ホテルチェーンに経営を委託しなければならないような状況、インバウンドがどんどん増えると外資ホテルが増えるという状況はやはり気にかかる。オーナーシップとオペレーションは別なのでしょうが、オペレーションにおける競争力強化のためにどうするか、マーケティングをどうするか、その辺りをもっと強調していただく必要があるのではないかと思います。
【山本様(関西学院大学)】  もちろん今日の話の中で、ホテルマネジメント全般のコースの話はできなかったのですが、これのカリキュラムの中ではやっぱりマーケティングが一番重要かなと思っているので、ここは官民一体のマーケティングなので、神戸市が一体何をやっているかというところがやっぱりこの話の中で出てくると思います。
 日本では、東京のような街の中でホテル業というのは非常に重要な産業で、問題は基幹産業として成立するための整備が必要だということです。それはやっぱりどこかから手を掛けなければ良いかなというふうには思っています。
【池尾委員】  日本の誇るべきものに「おもてなし」と「食」があります。ところがグローバルに見ると、このどちらもビジネスとして競争力が余りない。是非その辺り、このプログラムに期待します。インバウンドのツートップはおもてなしと食でしょう。これらにビジネスとしてのグローバルな競争力を持たせることは喫緊の課題です。その辺り是非御工夫いただけるとよろしいのではないかと思います。
【鈴木主査】  ほかに。
【天羽委員】  1つ、いいですか。
 産業界の方からいろいろお話を伺ったことがあるのですが、例えばこれだけ今隣の方が日本を駄目だ、駄目だと言いながら、でも良品計画さんなんていうのは、今ホテル業をやっているわけです。今回もそういうようなアクションで、良品計画や星野リゾートの社長等に、例えばどういうノウハウで、どういう形でやるかというのを聞くというのも、一つは重要なのではないかなと思うのですよね。
  話をきいてみると、彼らがやっているやり方は戦略が非常にクリアですよ。やはり日本あった独自の戦略作り等を聞くということを、カリキュラムの中に取り入れていくというのも大事なのかなという感じはします。決して僕は負けているばかりとは思っていないのですけれどね。いいところもあるので。ですから、いいところから聞くということも重要なのかなという感じがします。
【山本様(関西学院大学)】  星野さんは海外にも出ていってらっしゃいますので、成功もされている部分もあるので、お話を聞きたいと思います。
【鈴木主査】  ほかにいかがでしょう。
【永里委員】  単なる質問なのですが。資料に対する質問ではなくて、Booking.comとかエクスペディアとかかいろいろあるではないですか。ああいうのは、一体これとどう絡むのですか。
【山本様(関西学院大学)】  この中で言うと、サービスマネジメントの方に少し入ってくるだろうと思います。科目を幾つか用意しているのですが、インターネットの中での取引ですよね。そこのところは、うちの全体カリキュラムの中にもちろん流通システムみたいな授業もありますので、ホテルマネジメントの中では当然マーケティングの一単元として出てきますが、もっと幅広い問題なので。プラットフォームの話ですね。それはほかの科目でもうちょっと扱いたいと思っております。
【鈴木主査】  これは当面修士課程というよりは履修証明プログラムとして動く。今日御紹介の3つぐらいの講義ではなくて、このホテルマネジメントプログラム全体としてですね。
【山本様(関西学院大学)】  12単位取るのが恐らく今のホテルの方の就業状況から見るとぎりぎりかなと思います。
【鈴木主査】  そうすると同じ経営戦略といっても、一般的なビジネススクールの経営戦略の講義を聞きなさいでは済まない部分も出てくるのではないですか。もうちょっとホテルマネジメントに特化したような経営戦略とかマーケティングとか、そういう内容に少し一部を変えていかないと、受講生が食い付いてこないのではないでしょうか。
【山本様(関西学院大学)】  ここで挙がっている経営戦略の科目は1単位になっているのでお分かりと思いますが、正規の科目ではないのです。正直言って大学レベルです。ですから、彼らにまず学部レベルのところからスタートして少し積み上げていっていただきたいなというふうには思っております。
【鈴木主査】  ほかによろしいですか。すいません、時間がないので、最後のところでフロアから質問もしあれば受けたいと思います。
 続きまして香川大学、お願いします。最後になりました。
【原様(香川大学)】  それでは香川大学地域マネジメント研究科の研究科長の原でございます。よろしくお願いします。
 私どもは、テーマとして地方創生推進のための経営系専門職大学院機能強化事業ということで、そのテーマにサブになります4つの柱を軸に取り組んでおります。
 私どもの研究科はビジネススクールでありますが、2004年の設立時から地域に沿ったユニークな特徴を持つビジネススクールとして取り組んできております。これまで13年の間に、この3枚目のスライドにありますようないろいろな実績も挙げてきておりますが、右の方にありますような残された課題や要望と地域からの効果的な情報発信であるとか、国際化、そして修了生の活動支援などといったようなことがございます。それに対応していくために4枚目のスライドにありますような4つのプログラムということに取り組もうということでございました。
 それでは、それぞれについての進捗状況の御報告をさせていただきますが、まず最も進んでいるものから申し上げますと、国際ビジネス研修プログラムです。5ページ目のところにありますが、これまで私どもは特に地域に焦点を当ててきましたので、そういうグローバルなところというものは、我々は国際化のための国際化ではないというスタンスでしたが、昨今の地域活性化の課題はやはり国際的な視野がどうしても必要になってきているといったところで、そういったものを強化しようということでございました。
 具体的にはイタリアの方を標的としまして、イタリアの大学そして民間企業の協力を得て、実験的に今回は研究科内の学生に対して公募を行って、5名の方を想定していましたが、ちょうどその定員どおり5名の方が希望、手を挙げてくれたということで、実際9月末から10月にかけて約10日間の研修を実施してまいりました。
 その内容が6ページからのところにございますが、これは私どもが予想していた以上に非常に充実したものになって、参加した学生からもかなり評価が高く、よかったという反応で、来年やるなら是非また参加したい、あるいは今回は周知から締切りまで非常に短くて、なかなかスケジュール調整が付かなかったが、その評判を聞いて来年するのなら是非出ますから、先生、絶対来年もしてくださいねというふうな声も聞いております。
 特にこのイタリアを採用した理由は、イタリアというところは、今までも第三のイタリアといったような話の中で、中小企業が非常に個性的な付加価値を付けるような取組をしているということで有名なところで、そうしたものを現場でいろいろなものを見るということで、刺激を与えるということを考えたわけです。対象としては、特にミラノ周辺とフィレンツェ周辺です。
 ミラノ周辺ではファッション産業を中心としたもので、日本のある中小企業、ここにもマツオインターナショナルというところですが、そことも関係を持っている縫製工場や、そしてこのマツオインターナショナル自体がミラノで出店をしてブランドショップを経営しているので、そうしたところの現場の話を聞きました。
 そして、フィレンツェ周辺のところではワインツーリズムを中心としたところで、農家が観光関係のことをしている。それもやはりファミリービジネス的に家族経営的に面白い試みをしているということで取り上げました。こういったところは、香川県においてもさぬきワイナリーというものがありまして、それが若干沈滞しているということから、実際私どものところに関係先から、これを何とかしたいがいろいろとアドバイスをしてもらえないかと、ちょうどそういう要望が来ていました。また、それをプロジェクト研究で2年生が取り上げるということをしていまして、そのうちの1人が参加するということで、じゃあ、このワインというものに特にプログラムを、今回は焦点を当てようじゃないかということで、やってまいりました。
 実際この結果としては、レポートは提出してもらいましたが、最終的な報告は少しオープンに、年を明けた1月、2月辺りに報告会をしようと考えていて、そこでいろいろな反応を収集できると思っております。既に出ている結果としては、今回参加した人が岡山の方のビジネスコンペ、岡山イノベーションコンテストに出しておりまして、この成果も踏まえてプレゼンをしたところ大賞100万円とシリコンバレーへの旅行というものを取ったということで、そういったところにも今回のものが非常に充実した内容であったということが反映されているのかなと考えております。
 続きまして10ページ、四国型地域マネジメント・ケースメソッド教育でございます。日本においては慶應を中心としてケースメソッドの教育が盛んに取り組まれてきているわけですが、地域に関するケースがなかなかそれほどの広がりはどうも見せていないようだということで、その部分をてこ入れしようということで取り組んでおります。
 実際、具体的には、慶應の御出身でケースメソッドの教授法の御専門の竹内先生が徳島の文理大学におられまして、その先生に来ていただいて、そしてこちらは既に4回もう実施をしています。11ページのところにその内容はありますが、修了生に声を掛けて。この竹内先生の御要望として、単にケースをつくるだけではつまらないと。そのつくられたケースを使って実際に何らかのビジネスや地域活性化の取組をやってくれるような人に一緒になってつくってもらって、それを活用してもらいたいというような御希望がありまして、修了生を中心としたワークショップを開催しました。
 この中で、特に四国をフィールドにして地域というもの、地域マネジメントということに焦点を当てたケースはどんなものだろうかということもこの中で同時にディスカッションしながら、ユニークな特徴を出していこうとしています。12ページのところに議論してきているポイントが少し出ております。この地域マネジメントというケースはどういうことがあるだろうか。我々の研究科が取り組んできていたものがうまく見えるようなケースになればいいよねというような話もしていただいて。そしてその中の薄緑色で囲っているところで、じゃあ、地域マネジメントというのは通常の企業経営の場合のそれとは何が違うのかといったポイントについても、このワークショップの中で御議論をしてくれました。
 これは、参加者、修了生がそれぞれ終了後もいろいろなことに仕事上取り組んでいて、それをケースにしたいということで、まずは一人一人がケース案を考えてもらいました。授業としては、それの全てを授業の中ではこなし切れないので4つの案を選んで、そして4チームに分かれて作業するということを今までしております。4回分の予定が終わったのですが、やはり個々の方々のケースをつくってもらうということもフォローアップした方がいいよねということになりまして、延長戦として2回、今後12月、1月に継続して行う予定にしております。
 この2つが最も進捗状況は進んでいますが、あとの2つについて簡単に申し上げますと、まずポストMBAプログラム。これは、実際、修了生が修了後も何らかの活動を継続していきたいのだが、それを研究科と協力する形で何かできないかという相談が来ていましたので、それを仮にポストMBAプログラムと。博士課程というのは研究者養成がメインでありますし、我々の修了生のニーズにはちょっと合っていないだろうということで、それに代わるプログラムとして、仮の名称を与えてこれを試験的に実行するということであります。これは教員を通じた公募というものをしまして、14ページにありますが8月21日締切りで公募し、6件を採択して、これについては今随時取り組んでいただいているということになります。テーマも福祉関係からお酒のビジネスといったところ、ネット関係のものまで、幅広いものが採択されております。
 最後に4つ目のメディア・コンテンツ活用人材教育プログラムですが、これはこれから講演会、ワークショップをしていく予定ですが、地方創生のためにやはり地域の方にいろいろと魅力あるものがあってもなかなかそれがうまく伝わっていないという部分です。実は香川県はうどん県のCMは結構日本的にも評判がよかったりしますが、ああいうものをもっともっと、そして地元の人の手によってそういうことをどんどんやっていく必要があるのではないかと。あるいはロケツーリズムにしても、東京の方で映画の企画をつくるのではなくて、地元の人だったらもっといろいろなことが分かるでしょうと。それをストーリーにしていくというような、地域とコンテンツをつなぐような人材を地域の方で育成するということを狙いとしています。しかし、こういった産業はやはり地方においては非常に集積が弱いですので、その中心である東京やロサンゼルスから最先端の取組をしている方々に来ていただいてのプログラムを考えるということを、これも試行的に行おうと、16ページのところに挙げているような予定で進めることにしております。もちろんノンディグリーですが、これについてはある程度公開の形で一般の方にも参加してもらい、そしてこういった意識を持っていただくというようなことで実験的に試行したいと考えております。
 最終的には、こうした4つのプログラムを構築していくことを通じて、地方創生に貢献するような人材育成を強化したいということでございます。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 原先生、前回のキックオフのときにも言ったかもしれませんが、香川大学の大学院、地域マネジメント研究科を強化するための予算ではないと。あくまでもそこは一例として、まずは地域マネジメント研究科を強化していただくのは結構なのですが、そこで得られた知見がきちんとほかのビジネススクールに対しても役に立つような、こういうやり方なり、こういうカリキュラム、こういう教材なら、ほかでも使って地域創生を行えるでしょと。それをちゃんと打ち出していただかないと。香川大のためだけに差し上げた予算ではないということを意識していただきたい。
【原様(香川大学)】  もちろんそうだと思います。そういった意味で、うちの場合に、特に香川や四国だけのための地域活性化をしているというふうには考えていなくて、ここではそういう何らかの地域に焦点を当てた取組としてこういうことがポイントになっているという意味で、それを試験的にしているという意味で考えています。
【鈴木主査】  ですから、こんなことやりましたではなくて、ですね。そこで出てきた知見をきちんと報告書の方には打ち出していただきたいということです。
【原様(香川大学)】  そうですね。そういった意味では、本日お話しした中で言うと、ケースメソッドの場合に、この地域マネジメントとは何かといったところで議論している内容は、必ずしも香川や四国だけに当てはまるものではなくて、それをいろいろなところでの地域にも当てはまるための普遍的な議論に結び付けるための要素を入れているという位置付けになるかなと考えております。
【池尾委員】  いいですか。
 地域創成・活性化のケースは十分でないとおっしゃっていますが、これは事実認識の問題ですが、地域ブランドに関するケースは、かなりあるように思います。ですから、そういうのとの関連付けみたいなのもちょっとお考えになるとよろしいと思います。また、先ほどの観光の話とも関わりますけれど、DMOのケースみたいなのもありますので、うまくそういうものも融合していただくとよろしいかと思います。
【原様(香川大学)】  そうですね。もちろん慶應の方でもかつて観光の取組やDMOがあるのですが、そういった意味では、そうしたものをもちろん地域のケースとして位置付けられるようです。が、今この地域マネジメントのケースで、じゃあ、その特徴は何かといった場合に、出てきた要素としては、絶対的な最終意思決定のパワーを持つ存在がないという状況があるのではないかと思います。
 DMOというふうな、ある一つの主体に特化した場合には、そこにもあるというふうに設定できますが、地域活性化という場合には、要するに県知事がこういうふうにやればいいと言えばそれが実現するわけでもないというところで、相互のコミュニケーションでのコンセンサスというものが必要になってきます。そういったことが地域ということのケースの本質ではないのかと思います。そういうことを十分に扱ったものがない、十分ではないという認識があるということになりますので、おっしゃるように地域の個々の要素のケースはあるとしても、それだけではまだ地域活性化のための本当の問題を議論する上では十分ではないのかなというふうに、今、問題意識を持っているということになります。
【池尾委員】  その問題意識は正しいと思います。だから、地域ブランドのケースで重要なのは、いわゆるインナーブランディング、つまり、いかに中の人たちを動機付けるかです。それはお隣の先生が専門でいらっしゃると思いますので、私がとやかく言うのも何ですが、サービス業一般にもちろんインナーは重要ですが、地域の場合は民間ボランティアまでかかわるわけで、権限関係が希薄です。ですから、いかに中の人たちの共感を得るかが大切です。だからそういう認識でやられるというのは、極めて正しいことだと思います。
【原様(香川大学)】  ありがとうございます。
【古川委員】  ちょっとよろしいですか。
 ポストMBAプログラムと書かれていますが、これは博士課程に代わる新たなプログラムだと書いてありますが、学生の学費負担はどうなっているのですか。
【原様(香川大学)】  その辺りは、今の状況では何も徴収せずに実験をしているというところですね。ですので、これもこういうものをつくった場合に、幾らだったら出す意思があるだろうかということも検証していかないといけないと考えております。
【古川委員】  そうすると最初は無料なのですね。
【原様(香川大学)】  そうですね。現状は無料でやっているということになります。無料というより、むしろこの頂いている事業のお金で、助成金といいますか研究助成金を与えて、それで動いてもらっているというようなことをしております。ですので、これを本当に一人立ちしていくためには、じゃあ、幾らの参加費だったら回っていけるのかといったことまでを検討しなければならないということになります。
【鈴木主査】  ほかによろしいですか。
 それでは、ちょっと押していますので、全体討論を5分、10分。ぎりぎり10分やりたいと思いますが。途中で余りフロアから質問を受けられなかった関西学院大学と香川大学に対する質問も含めて、全体的に何か御意見ございますか。フロアの方も含めて。
【傍聴者】  この委員会は、そもそもビジネススクールが定員をきちんと充足できていなくて、広がりを見せていないということがスタートだと思うのですけれど、今回のこういった試験的なプログラムなんかもどれぐらい実際受講生が集まったのかということも結果に入れていただければと思うんですが。
 その中で一つ東京工大の藤村先生の御説明があったところで、プログラムは先生の御説明を聞いてすごく面白いプログラムと思ったのですけれど、多分このパンフレットだけ見ると、若手の技術者の方にどれぐらいアピール力があるのかなと思っていまして。そういったお客さんというか来る方にとって魅力的な伝え方みたいなことも含めてあるのかなと思いました。
 すいません。以上です。
【藤村様(東京工業大学)】  先ほど遅いと言われましたが、今回は、プログラム自体は大慌てて1か月でとにかく何とか作って、その後プロモーションもやっているんですけれど。書いてありますけれど、2回説明会をして、そこで、本日は出しませんでしたが、そのような資料を作って出しています。また、ホームページにもそれは公開するとか。また、ポスターをいろいろなところに出したおかげで、通りすがりの方で興味あるからということで大手の企業の方が来られたりはしています。
 また、東京工大では幸いにしてほかにノンディグリープログラムがありまして、人集めという意味ですと、そちらは年間100人ぐらい受けているわけですけれど、今ビジネスの方ですと1年ぐらい待ちが出ている状況ですし、それから本科の方はこの12月ですと、今2.8倍の倍率、夏も2倍ですから、私のところはおかげさまで非常にそういう意味で人集めは苦労していないといいますか、生意気ですが、それはあります。
 今、そういったOB会も含めて、こうしたものは流しております。今回は、とにかく先ほどもありましたが、最初のときからお金を取ると。つまりそれなりの想定した金額を取らないと、正しい評価は戻ってこないので、それは取ると。ちなみにおかげさまで、この助成金が続かない4月、5月の分は、その講義費、受講料で賄えるだけの参加者はどうやら集まりそうだということになっております。ですから、教育機関でありますけれど、授業計画全体をフォローしていないと、ちょっとなかなかそういうふうにはできないと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 ほかにいかがでしょう。
 東京工業大学だけじゃなくて、ほかのところも受講生の集め方がどういう集め方だったか、うまくいったか。しかもどのくらい集まったか。そういうことまで含めて報告書にきちんと入れていただくということでよろしいですか。
 ほかに御質問、実施事業体同士でもコメントがあればどうぞ。
【藤村様(東京工業大学)】  1つ、先ほどからマーケティングとかインバウンドの話のとき、マーケティングという話が出てきましたが、我々のところもそうなのですけれど、基本的に日本では遅れているというのはそのとおりなのですけれど、なぜかというと背景となるサービスサイエンスとそれから応用心理学のところです。特に応用心理学に関して、日本はめちゃくちゃ遅れているわけです。
 サービスサイエンスの方は、基本的にはインフォメーションデリバリーと、それから使えるコンテンツをどういうふうに構造化するかという認知科学のような分野になります。これは、コミュニケーションデザインという形でできるのですが、特に最初の食べ物とおっしゃっていたそのホスピタリティーの部分に関しては、かなり心理学的なところが多いのですね。我々のところも教員を採用するときも、これからそれをどうやって強化していくかということを日々議論しているのですけれど、特にマーケティングと一緒になった応用心理学の部分がやはりなかなか人材もいない難しいと。これは文科省の方にも是非そういった取組に関しては強化をしていただきたいなと思っています。
【鈴木主査】  山本先生、何か御意見がありますか、今の発言に関して。
【山本様(関西学院大学)】  いや、特にあるわけじゃないのですが、マーケティングの方ですと、消費者行動の研究者とか日本にも結構たくさんおられますので、どういう観点でお選びになるかということだろうと思います。東京工大さんのスペック、必要な技量とか技術とかスキルとか論文の内容とか、きっとあると思いますので、少しいろいろな学会を探していただければ、きっと何人かおられるのではないかと思います。
【鈴木主査】  他にどなたか。
【永里委員】  関西学院大学の先生に質問なのですけれど、先ほど池尾先生から食事とおもてなしの話が出てきましたが、実はデービッド・アトキンソンの『新・観光立国論』というのをお読みになりました?
【山本様(関西学院大学)】  いえ。
【永里委員】  それによりますと、日本は観光としては全く後進国である。なぜならば、タイとかがずっと進んでいると、彼は具体的な数値を示しています。まず、おもてなしなんていうことに関して、今のマーケティングの話ではないですけれど、ホスピタリティーの問題に関しても、日本人はひとりよがりに勝手に日本的なおもてなしがいいと思っているけれど、外国人から見たら、そういうものでもないと。そういう意味で、食事とか気候とか自然とか文化とか、その辺の日本の強みを生かしていかなければ駄目。だから、マーケティングが重要ですよという話なのですけれど。そういうことをちょっと御紹介します。
【山本様(関西学院大学)】  ありがとうございます。
【池尾委員】  まさに今そのことを内閣府のクールジャパンの会議で議論しています。食の問題とホスピタリティーの問題、その特にビジネスとしての競争力の向上を議論しています。そういう問題意識を持ってらっしゃる方は多分たくさんいらっしゃるのではないかと思います。
【永里委員】  分かりました。
【天羽委員】  いいですか。
 こういうふうになってくると、私の考え方も全然違うかもしれませんけれど。基本は、先ほど藤村先生がマーケティングは心理学でしょと言ったけれど、心理学というのではなくて、僕は社会学と両方だと思っているのです。要するに世界中に出ていくときに、世界中の人をいろいろな形で受け入れるときに、それぞれの人のいろいろな文化等を理解しておかないと、なかなかマーケティングって、先ほどから私が言っている戦略って、出てこないですね。だから、ここで議論しても仕方ないのですけれど、是非そういういい形で、インバウンドの仕方をどういうふうにやるかというのを考えてほしい。観光立国にする場合には、もう少し視野を大きくしていって、いろいろな観点からやっていくというのをやられた方がいいのではないかなと思います。
 そうすると香川大学だけではなくて、四国ブロックでもうまくリンクできれば、九州も、山口地方も中国地方全部に行くのではないですかね。でも、やはり九州へ行くと、九州は全く違う観光のGIを持っていますしね。そういうのがどんどん出てくると面白いかもしれませんね。
【山本様(関西学院大学)】  そうですね。やっぱり中国地方は広島という非常に大きなキラーコンテンツがあって、大阪に泊まって、日帰りで広島へ行って戻ってくるので、神戸は飛ばされてしょうがないのですよ。やっぱり広島のコンテンツとその中味、それから街全体の取組というのも非常に意味がありまして、それは今回の山陰の合同DMOも。来年はJRさんのディスティネーションキャンペーンの対象が山陰なのですね。それが決定してくるまでのプロセスとかいうのをケースにしてみようかなと思っております。
【鈴木主査】  よろしいでしょうか。
 じゃあ、時間が来ていますので、本日は活発な御議論ありがとうございました。実施主体の皆様におかれましては、本日の議論を踏まえて、内容を更にいいものにして、ポリッシュアップしていただければと思います。あと年度末のシンポジウム、3月3日と17日に向けて、事業を進めていただければと思います。
 それでは、今後のスケジュールについて、事務局から報告をお願いいたします。
【川﨑専門職大学院室室長補佐】  今後のスケジュールにつきましては、今、鈴木先生がお話しされたとおり、3月3日に東京、それから3月17日に山口でシンポジウムの予定になっております。
 なお、本日机上配付させていただいた回収資料については、机上の方に置いていっていただくか、事務局までお渡しいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  それでは、本日はどうもありがとうございました。これで本日の議事は終了したいと思います。事業実施主体の方々は引き続き良い成果を出していただければと思います。どうもありがとうございました。

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