資料2_第9回会議発言要旨

国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議(第9回)
平成29年7月12日
(主な発言要旨:資料1 議論のまとめ案)
【全体について】
・教員需要の推計にあたり,3つの要因を設定している。毎年の定年退職者と定年前の退職者,将来の児童生徒数の増減状況,特別支援学級の数。児童生徒数と教員数の関係が過去16年間と同じ趨勢で将来も変化することを前提にしている。特別支援学級は,全国一律で毎年2.5%増加し,全学級の中で占める特別支援学級の割合が25%を超えた段階で毎年1%増加するとしている。推定した教員需要の値を各県別に示しているが,将来は不確定なところがあるので,大きな誤差があることをお断りしておく。
・附属学校では,「入学者選抜」ではなく「入学者選考」を用いているところが多いため,「入学者選考」で統一すべき。
・改革の内容を実行に移そうとしたときに,例えば課程認定について言えば,あえて複合科目を作ろうとすると審査を受ける必要があるなど,現実には何もしない方が通りやすい状況がある。が,国立の教員養成学部は,国立としてのミッションや責任を果たすべきことを考えると,積極的にカリキュラムの改定等にも取り組まなければいけない。そのような観点から,この報告書がどうやったら効果的になるのかという手立ても議論してほしい。

【国立教員養成大学・学部への期待について】
・P3の国立教員養成大学・学部が我が国の教員養成・研修を先導し,牽引してきたこと等の後に,突然,「国立教員養成大学・学部が内部改革を進め」とあるのはわかりにくい。地域や学校現場,教育委員会等の社会と連携して内部改革を進めるべきであり,「地域や学校現場や教育委員会等と連携して」とすべき。

【ポイントについて】
・P4の「長年にわたる教科専門科目…分離意識が,大学における教員養成の縦割りにつながっている」について,「意識」や「縦割り」はわかりにくいが重要なポイントなので,「長年にわたって教科専門科目,教科教育科目,教職科目の教育が分離して行われてきたため,大学・学部としての教員養成機能が組織的に連携してこなかった」とすべき。

【カリキュラムと学校現場で求められる資質能力とのギャップについて】
・P6は現職教員を対象にした調査であり学生時代のことを尋ねたものなので,現在形ではなく過去形で,「これまでは大学と学校現場との連携が十分でなかったことや,養成カリキュラムと学校現場で必要とされる資質能力との間にギャップがあったことがうかがえる」とすべき。

【PDCAサイクルやインスティテューショナル・リサーチ(IR)の不足について】
・P6~7インスティテューショナル・リサーチの役割に関して,大学という自律的な機関の質保証は内部質保証が第一義的に重要であるということを加えることにより,各大学の取組が一義的に重要というメッセージとして受け取ってもらえる。

【「教員養成」の学問分野の欠如について】
・P7は構成を変えるべき。1段落目は教員養成に期待されていること,2段落目に,しかしながらこういう実態なんだということ,3段落目に,その原因の一つが教科専門の問題であること,4段落目に,アンケートが示す教科専門と教科教育の協働が有効に機能していないこと,5段落目に,翻ってそもそも教員養成大学・学部は何なのか,教育と研究が有機的に関わりを持っていなくてはならないこと,6段落目に,教員養成学を構築しなければならないことを置くべき。

【教員就職率の引き上げについて】
・P13等の教員就職率は,地域や時期ごとに偏在があるとともに,教職に就かせたいと思う学生でも無理に教職に就かせることはできないことを考えれば,労働市場としての教職の魅力を高めることの大切さも前提としてあるなど,「いろんな議論があるが」という趣旨を加える方が,受け止める側にとっても理解しやすい。
・P13の教員就職率の引き上げについて,大学の外からは,教員志望者を育てていただきたいという要請は非常に強いので,現在のような書きぶりでいいと思うが,例えば入試を通じてなど,どのように教員志望が高い学生を入学させるのかを加えるべき。

【日本型教育の海外展開について」
・P13の「世界に冠たる教員養成」は唐突感がある。「日本型教育の海外展開」や倉敷宣言等に触れられているが,なぜ日本の教員養成が世界に冠たるとまで言うのかはもう少し説明が必要。
・P13の日本型教育の海外展開について,去る6月22日に中教審に対して学校における働き方改革に関する総合的な方策について諮問がなされており,我が国の学校教育が高い成果を上げてきている一方で,学習指導,生徒指導,部活動,保護者や地域との連携など学校や教員に対する多様な期待は長時間勤務という形で既に表れてきており,看過できない深刻な状況とされている。P14の教員の働き方改革との関連も含めて,このような面もある日本型教育を,途上国等,外国における教育の向上にも貢献する一つの教育のスタイルとして発信するという整理が問題ないか確認したい。

【教員養成課程カリキュラムの評価について】
・P15の質の保証,評価における各大学出身者の就職状況等の把握等について,教育委員会との連携が足りなかったことが書き込まれたが,大学から教育委員会に連携しようというだけでなく,教育委員会に対しても,大学に対して協力をしてほしいと書けないか。

【実践的な活動の評価・促進について】
・P17の「海外の大学でEd.D.(教職博士)を…」の部分で,「海外の大学で」に限る必要はないので削除すべき。

【教職大学院の新たな役割について】
・学校現場の者としては,P18の新たな役割という項目に大変魅力を感じる。特に,実際に学校が抱える課題を教職大学院の特色である理論と実践の往還の手法を活用して解決するなどの学校現場の質を向上させる役割,これが実現できればすばらしい。

【学び続ける教員の支援について】
・P20~21の入学後も学校現場を離れずに1年間で学べる仕組みが実現すれば,より柔軟に教員を派遣することができる。その前提として,学びの質と利便性が重要。学び続ける教員の支援を打ち出す以上,現職教員が学びやすい環境を作るべきで,可能な範囲で利便性にも配慮すべき。

【実務家教員の範囲について】
・P22の実務家教員の範囲について,冒頭の「「元実務家」の大学教員等を実務家教員として採用する場合」を修正して,教職大学院の教員全体を対象とした書き方にすべき。研究者教員にも実務家教員にも,学術研究,実務業績の業績を積み,学び続けることの大切さを求めるべき。

【多様な選考方法について】
・P23で本有識者会議から「多様な児童生徒を受け入れられるよう選考方法を改めるべき」との提言が検討されていることは衝撃的だが,だからこそ附属学校改革の鍵になる。入学者選考の見直しが各附属学校の存続を左右する大きな要因になり,そこで,その附属学校の真の学校力や,地域に必要とされているかが問われる。
・以前から慣例として多くの附属学校にある幼稚園から小学校,小学校から中学校への連絡進学,連絡入学の制度についても,公平性・公共性の面から見直すべき。
・全ての附属学校が入学者選考を画一的に多様な子供を受け入れる仕組みにするかどうかは,これまでの実績やこれから求められる役割から判断すべき。このため,例えば「原則として」多様な子供たちが入学できる選考方法に改める等の表現にしてはどうか。
・P23の附属学校の点について,分かりやすく踏み込んで書かれていると思うが,「貧困等の困難を抱える児童生徒の積極的な受け入れ」について,特に「貧困等の」といった場合にどのように受け入れるのか疑問に感じるし,物理的にも難しいので,具体的な実践例があるとよい。また,例えば入学対象者の地域をこれまで以上に制限することは,多様な子供を受け入れる一つの方策だと思う。
・貧困のところ,「積極的な受け入れ」は,一定の枠を設けないと積極的に受け入れる方向にはならず,なかなか難しい。多様な児童生徒を普通の選考方法の中で入れることに含まれるので,それでいいと思われ,あえて強調する必要はない。
・現代的な教育課題のうち,貧困については,本年6月に学芸大学の附属学校である仕組みを公表し,社会にはインパクトを与えている例があり,やり方がないことはない。可能であれば次回に資料をお出ししたい。


(主な発言要旨:資料2 「組織・体制について」のこれまでの意見や状況の整理)
【1.教員養成機能の強化と効率化のための組織・体制について】
・平成33年度末までに一定の結論をまとめるべきという部分について,33年度まで待つからそれまでに考えなさいという意味ではなくて,できるものは何かをはっきりさせて,すぐにできるものは即,取り掛かる,中期的なものはこのくらいの時間をかけて考える,更にもう少し時間かかるものは33年度までにやる,というめり張りをつけて,外に対してもしっかりと改革を進めている姿勢を見せられる形にすべき。
・今回の論議の前提は,少子化という現状を踏まえた上で,教員養成の機能を強化し,効率化をどのように進めるかである。相手のあることなので,一定程度の期限や目標を定めて行動することがどうしても必要。
・教員養成の強化と効率化の方向性として,二つの方向がある。一つは水平方向の機能強化と効率化,つまり各大学が手を結ぶ,あるいは連合するという,横につながる方法。一つは垂直方向とも言うべき,臨床的に実際に関わりながら教育研究を進めること。例えば附属学校と大学が,附属病院と医学部の関係のようになること。附属学校の教員が大学の教員を兼ねてもいいくらいの質の向上をさせていく,それができないところは退場していただくくらいの密接さの中で進めるという方向も十分あり得る。
・この有識者会議の設置の根本的な理由は,教員養成系は医学部に次ぐほどの教員数が必要と言い張ってきたことが財政的にいよいよ危ない状況になったことであると思う。附属学校も,幼小中1校ずつ程度で,4億5,000万から5億の経費が掛かっている。法人化後の国立の教員養成大学・学部の在り方は,ミッションの再定義や教職大学院の制度拡大等がありながら,底流には必ず大学全体の中での財政負担率の問題が言われてきた。附属学校も,問題が生じると,一生懸命やります,御指摘のとおり変えてみます,ということが,その瞬間に出てくるだけで,何も変わらない。現在の資料は,その出発点の確認にすぎず,要するにまた頑張りましょうと書いてあるだけ。P1の丸1~丸3を,平成33年までに各大学でお考えくださいという提言は,在り方懇より後退である。
・在り方懇から後退したと言われると複雑な思いがあるが,在り方懇は必ずしも実行の面で進んだとは言えない。この報告書が出たら,今度は必ず実行・実現するところが重要だと思うし,そこを注目していきたい。
・国立大学の将来像について議論しているのは本有識者会議以外にもある中で,自分たちの問題に踏み込んだ内容をしっかりと書いて,自己改革能力を示すことは大事。
・教育学部と単科の教育大学が地域等に応じて抱えている課題は相当違う。「広域の地域共同体」とあるが,これからの国立大学は,それぞれ尖っていっていい。地域事情やそれぞれの状況に応じて,尖った形で改革をすることが含まれる書きぶりがいい。
・何らかの形では教職大学院や現職教員の研修機能は地域に残ると思うが,その運営主体が今までどおり独立した44大学ではなくもっと効率化されることはあり,それは外せない。
・平成33年度までに,ということが明記されることは,それなりの大きな役割を果たす。
・P1丸1~丸3には,何をすべきかをもっと具体的に書き込むべき。また,「各大学は,広域の地域共同体としての教員養成機能の強化と効率化」とあるが,関西にある4つの単科大学の連携・統合も遅々として進んでおらず,「広域の地域共同体」という表現で何とかなると考えるのは無理。法人化後の教員養成系の大学・学部の逼迫した状況をしっかり記述することが,組織体制の在り方を考える上で根本的な原因究明になる。附属学校はすべて公立学校化して県に回すことで大きな経済効果を生んで,教員の多忙化にも一定程度貢献できる教員数が都道府県に流れていくと思うが,なぜやろうとしないのか。
・教員を増やすには,スクラップが必要。附属学校の削減を,教員の働き方改革や多忙化解消に大きな意味を持つ今こそやるべき。10年計画ぐらいで附属学校を県立移管することによって,その3倍の財政効果が生まれ,教員数の適正配分ができる。
・国立教員養成大学・学部の中心的な役割は二つある。全教科の指導ができる小学校の教員養成,教員の研修をはじめ教育行政に大きな貢献をしていること。戦後以来,教員の養成と供給や教育行政は各都道府県単位で行われており,これは今後も続く。
・教員養成課程の入学定員が100人を切っている大学・学部が相当あり,中高の全教科の教員養成も一つの大学・学部で担うのが困難になっている状況がある。大きな需要が将来も見込めないならば,広域的に他大学との連携で地域の教員需要を満たすという形の連携と協力はやむを得ないし,各県単位で全てやるのが難しいことは認めざるを得ない。
・ミッションの再定義によって,大学のタイプによって目的・目標が違っており,教員の就職率で設定した大学もあれば,県内での教員のシェアで設定した大学もある。この有識者会議でも,このような目標に照らして今後の在り方を考えることを前提にして議論すべきことを提言すべき。
・教員養成単科大学は,各大学での改革が総合大学に比べて難しい現状もあり,その在り方についても何らかの言及が必要。
・P1の近隣地域の大学間の連携・連合をここに盛り込むことは重要。盛り込むことによって,単科の教育大学だけの問題ではなくて,国立大学全体の問題という意識を高めることにつながるし,この有識者会議で1年かけて議論した価値としても重要。
・P1丸1は,教員養成系大学・学部は依然として採用者予測によって増やせ・減らせと言っているが,本当にそうなのか疑問はあるし,「各大学が強みや特色を持つ教科などの養成機能を分担する」は,持って回った言い方だが,要は統廃合と言えばいい。
・P1丸2は,単科大学が旧帝大に入れてもらうという話だが,その議論をちゃんとやるつもりなのか。単科同士の統合は,京阪奈はいつまでたっても統合しないが,やるならやる,やらないならやらないと言えばいい。平成33年まで待っても,待つだけは何もできない。
・P1丸3の専門職大学制度の活用の部分が気になる。教員を養成するに当たり,卒業要件の中でできるだけ多くの学問に触れさせて,それを深めさせたいし,それを実践に応用して,限界も知ることも大事。さらに大事なのは,新たな課題が生まれたときに,学んだ専門的な知識をベースにしながら柔軟な思考力でそれに挑む体力を付けなければいけないこと。単に訓練的な要素が高まる制度はいかがなものか。
・P1丸3の専門職大学制度の活用をここに例示として挙げることに疑問。平成24年8月の中教審答申で,教員養成を修士レベル化して,高度専門職業人として位置付けていくために,教職大学院の拡充や修士課程の見直しをしてきたが,ここで学部レベルの専門職大学制度が例示されることによって,その旗印を下ろしたのかという受け止め方をされかねない。
・P1丸3「専門職大学制度の活用も含め」は,こういう方法もあるということをどこかに書くくらいならいいが,ここに書くのはおかしいと思う。
・P1丸3専門職大学制度の部分は唐突であり,独り歩きすると問題なので,外すべき。
・P2の一人の教員を複数の大学で専任教員としてカウントできる設置基準の改正はすばらしい。この会議で,あるいはそれ以前からも,教職大学院の教員は学術研究と教育実践の業績の両方を持つ教員が望ましいと言われており,そのような教員を複数の大学でシェアして教員養成を質的に向上させる道を開くことにつながる。ただし,特定の教員に負担が集中することも予想され,何らかのインセンティブの記述も重要。
・P2の一人の教員を複数の大学が専任教員としてカウントできることについて,現在,クロスアポイントで3日A大学に勤めて,2日B大学に勤めて,給与を3対2で負担することがあるが,これを私立大学も含めて2大学で専任教員がカウントできるとなると,クロスアポイントとは違う意味になる。5日いて専任教員だと思うが,2日でも専任教員になることが制度として可能なのか。

【2.国立大学附属学校の機能強化のための組織・体制について】
・附属学校に優秀な教員が採用できるよう,各大学には,教職大学院への道を開くことや,附属学校教員になることへのインセンティブの付与を求めたい。併せて,附属学校教員が大学で活躍できる機会を増やすことも求めたい。本人のモチベーションを高め,キャリアアップにつながることはもちろんだが,これまで欠けていた大学との一体感,連帯感,大学への帰属意識等も高くなり,大学の授業等も充実する。このような趣旨を,P5の国立大学附属学校の機能強化のための組織体制に組み入れてほしい。


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