資料4 問われる国立大学附属学校の存在意義(松木委員資料)

問われる国立大学附属学校の存在意義

はじめに
医学部の附属病院が廃止等で取りざたされることはない。高度専門職業人の育成に欠かせないからである。ところがどうだろう。国立の教育学部の附属学校については、縮小や廃止の論議が出てくる。これは、教育学部が職業人教育としての教育研究をしていないからであり、附属学校が職業人教育としての役割を果たしていないからではないか。

1.附属学校批判と現状
現在、附属学校に対する批判と現状がどのようなものがあるか主な例を挙げてみよう。
1)教育実習校に対する疑義】
少子化に伴い国立の教育学部の縮小化が進みつつあるが、教育実習校である附属学校も縮小していいのではないか。そもそも、教育実習は公立学校でもやれるのではないか。
2)【研究開発校に対する疑義】
附属学校では、公立学校ではやれないような教育研究開発をしているというが、公立学校で役立つ研究開発をしているのか。附属学校のみに通用する研究ではないか,誰も読まない紀要の発刊をしていないか。
3)【地域貢献に対する疑義】
優秀な子どもを集めて行う進学受験校であるならば、あえて国立で行わなくても私学でできるのではないか。
4)【教員研修学校に関する疑義】
附属学校の教育研究が公立学校をリードするという文化が薄れ、附属学校に異動するインセンティブが見えなくなり、代わりに附属学校での負担だけが目に付くようになり、異動希望者が減少していないか。
5)【大学との連携に対する疑義】
附属学校と教育学部の連携協働が、教育内容に関しても、また教師教育に関してもあまり見られない。教育学部教員の中には附属学校に行ったこともない教員がいるのではないか。附属学校の教育研究テーマは,教育学部教員との協働で論議されたテーマになっているか。教育実習以外に教師教育としての連携はあるのか。

2.附属学校の改革の方向性
1)【教員研修学校として機能強化】
附属学校を教師になる前4年間の教育実習校から職能成長を支える教員研修学校に転換する。国立の教職大学院が全国に配置される中で、大学における現職教員の研修機能が重要になってきている。こういった中で次にあげるような役割も検討すべきである。
●大学との連携はもとより、各都道府県とも連携して育成指標に示された研修の役割を果たす。(大学と協力して、附属学校への異動が同時に同研修受講と同等の扱いを受けるシステムの構築)
●大学と連携をして附属学校に勤務中に、必要な免許状の取得をできるようなシステムを構築する。(義務教育学校に向けての免許状や、特別支援学校免許状など)
●附属学校勤務期間中に教職大学院への進学のインセンティブを明確に位置付ける。(入学金・授業料等の配慮を大学が行う)
●都道府県教育員会等との人事交流を促進させ、附属学校に異動して教員研修を深めるような研修内容を大学と連携して準備することで,教員研修機能を高める。
2)【教育研究開発校としての機能強化】
●公立学校では行うことが難しいような研究開発に取り組む。小1プロブレム・中1ギャップやインクルーシブ教育など、校種間をまたぐ研究や,時代の要請や発達課題に応える研究開発を行う。(幼保小接続に関する研究・小中連携に関する研究・中高連携に関する研究・特別支援学校と連携したインクルーシブ教育の研究等の校種間を超えた研究、ダイバーシティ社会を前提に異世代交流・異年齢交流を通した学びの研究、主体的で対話的で深い学びの研究)
●上記を実現するため、附属学校では附属学校を統括する組織を構築する。
3)【地域貢献機能の強化】
●男女共同参画社会を実現すべく、共働き家族が入学できる附属学校へ環境整備を促進させる。(放課後児童クラブや附属幼稚園の延長保育の実施)
●コミュニティスクールへの転換を促進させる。
4)【大学との連携強化】
●大学の教員ポストを用いて、附属学校と大学の兼担教員を増やす。
●附属学校で行われる大学の授業(授業づくり、教育実習やインターンシップ)を増やすとともに、共同で行われるように附属学校に大学教員の居場所を設置する。
5)【附属学校のグローバル機能強化】
●グローバル化を念頭に、海外の現職教員の研修受け入れを推進し、子どもたちとの授業を通しての交流を拡大する。
●外国人子女及び帰国子女の入学を促進する。

3.教育学部を持たない附属学校の扱い
大学教育と連動・連携して、教員研修学校・教育研究開発学校・教育に関する地域貢献に特色を持つ学校については存続させる。

松木健一

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-- 登録:平成28年12月 --