法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用に関する調査研究協力者会議(第2回) 議事録

1.日時

平成28年8月3日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 法科大学院におけるICTを活用した教育の状況について
  2. 法科大学院におけるICTの活用状況に関する調査結果報告について
  3. 法科大学院におけるICTを活用した教育の本格的普及に向けた論点について
  4. その他

4.出席者

委員

朝田良作、石井徹哉、宇加治恭子、大石和彦、樫見由美子、土田伸也、恒川隆生、中川丈久、藤本亮、吉崎敦憲、米田憲市の各委員

文部科学省

浅野専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録

【樫見主査】  第2回法科大学院教育におけるICTの活用に関する調査研究協力者会議を開催いたします。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
まず,事務局に異動があったということですので,事務局より御報告をお願いいたします。


【真保専門教育課専門官】  平成28年6月21日付けで専門教育課長の北山浩士が文化庁国際課長へ異動となり,後任に浅野敦行が着任しております。


【浅野専門教育課長】  6月21日付けで専門教育課長を拝命いたしました浅野でございます。6年ぶりにこの法科大学院の世界に戻ってまいりました。あの当時,九州の連携のICTのシステム,それから香川,岡山,島根の連携のシステム,かなり多額のお金を投資させていただいたわけですけれども,結局,残念ながら多くのICTを使った教育を行っていたロースクールが募集停止をせざるを得なくなったという現状があるわけでございます。とても残念なことであると思いますし,是非その辺のかつての経験も踏まえながら,先生方の御知見を頂いて,いい方向に法科大学院のICTの活用を進めていければと思っておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。


【樫見主査】  それでは,続いて,事務局から配付資料の御確認をお願いいたします。


【真保専門教育課専門官】  配付資料については,お手元の議事次第にございますとおり,資料1から資料4でございます。資料2につきましては別紙を別に3種類御用意させていただいております。過不足等ございましたら,いつでも結構ですので,お知らせいただければと思います。
以上でございます。よろしくお願いいたします。


【樫見主査】  はい,ありがとうございます。
それでは,早速,議事に入りたいと思います。
前回に引き続き,法科大学院におけるICTの活用に関する先行事例を把握するということで,藤本委員に資料を御作成いただいております。本日は,最後の方で議論の時間を多くとりたいと思っておりますのて,15分程度で御説明いただければと思います。
それでは,藤本委員,御説明をお願いいたします。


【藤本委員】
名古屋大学の藤本でございます。それでは,資料1に従いまして,名古屋大学法科大学院でのICT利用の現状について説明させていただきます。 1枚めくっていただきます。最初のページはLMS(ラーニング・マネジメント・システム)の図でございます。ラーニング・マネジメント・システムは,各種のパッケージが各大学でいろいろと導入されております。昨年度までは名古屋大学法科大学院では独自開発したLMS,「NLSシラバスシステム」というのを用いておりましたけれども,昨今のネットワークのセキュリティ等の観点や教育上のニーズもありまして,このCANVAS LMSというシステムに2016年度より移行しております。これによりまして,学外からのアクセスにつきましても,全学の名古屋大学IDを用いる形で,よりセキュリティの高い形でのアクセスが可能となったというメリットがございますし,またもう1点は,これはメリット・デメリット両方あるんですが,独自IDを発行・管理する業務はこれでなくなったということになります。
次に,内容につきましては,その真ん中の図の直下に箇条書きしてあるものを見ていただければ分かると思いますが,LMSとしてそれほどとっぴなものではなく,標準的な内容がここに実装されているということになります。教員から受講生へのベクトルと,受講生から教員,それから多方向,これは受講生同士も含みます。また,これは多方向に代わるものでありますけれども,科目を超えた科目横断的な教員間のやりとりといったようなものも,可能となっております。これは運用でカバーしているという意味で,システム上ではありません。科目ごとに必要に応じ授業担当をしていない関連教員も登録しています。
その次ですが,最後の2行にお示ししているのが,今期前半での利用状況であります。,シラバスの配布,これは年度前に3月の当初には全科目について公表しておりますが,これにつきましては全科目が対応しております。シラバスについて印刷物は一切配布しません。それから,課題提示・回収利用は約半数の科目で実施されております。ディスカッション(BBSシステム),これは教員と個人学生・院生との間の1対1の連絡ではなく,掲示板システムでございますので,受講生全員がそこでの教員も含めたやりとりを見られるという意味での多方向のシステムでございます。これは約4分の3の科目で実施しております。ですので,これは授業時間だけでなく,授業の間,自習時間も含めて時間差を使ってコミュニケーションをとっているということでありまして,そういう意味では標準的なシステムを完備したものです。まだこれから,いろいろとこの潜在的な機能がたくさんありますので,それを活用する方向で進めていきたいと考えております。
次のスライドに移ります。これは「お助けくんノートシステム」と私どもは呼んでおりますが,機能的に申しますとインデックス付講義収録システムとなります。システム図解が載っておりますが,箇条書きの左下の1,2,3,4,これが収録に関わるシステムということになります。利用法といたしましては,教員がこの磁気カードリーダーに教員ごと・科目ごとに指定されたカードをかざすことによって全ての電源が入り,録画が自動的に開始されるという簡便なシステムとしております。これが,いろいろなシステムを通しまして4の収録装置でパソコンに収録されるわけです。この右の方に移りますと,サーバーの方でコンテンツを管理する。それに加えて配信サーバーがございます。この配信サーバーに学生は学内からアクセスすることによってオンデマンドで授業を受けることができる,こういうシステムでございます。一番システム管理が大変なのはこの収録システム,それからサーバーシステムということになります。
次のページ,御覧ください。この部分でどういうイメージか,インデックス付というのはどういうことなのかということを御説明いたします。左側は,受講時の学生のパソコン画面と受講時のカメラの映像の模式図でございます。ワードのアドインになっている専用のアプリケーションを,これを立ち上げますと,この講義ノートインデックスボタンが登場いたします。ですので,学生はパソコンでノートをとりながら,あ,ここ,非常によい表現で説明されていると思ったら,そこで幾つかマークがありますので,自分で決めたマークをしておく,インデックスを付けるということです。これはクリックでインデックスが付くようになっております。あとは普通にワープロソフトでノートをとる作業を繰り返すということになります。授業が終わった後,ノートを見返すわけでございますが,先ほど申しましたサーバーにアクセスしながらノートを見返しますと,このインデックスをクリックすることで動画再生画面が立ち上がりまして,そこでそのインデックスソートの部分にジャンプしまして再生が開始されます。ですので,90分の授業でございますが,90分をずっと見直すというのではなくて,自分が見直したいところを見るというような形で,時間の節約ができるシステムとなっております。
次のスライドに移ります。このインデックス付講義収録システムでございますが,運用方針という形でここではまとめさせていただきました。表は,講義収録システムで収録する講義の一覧でございます。左の丸数字が付いている1から8までがこの運用のルールということであります。1は目的外使用の禁止,それから,視聴ができるのは自分が受講登録をしている科目のみです。それから,登録クラスというのは,講義がA・Bに分かれて2クラスに分かれているようなリピートのクラスであっても,自分の受けているクラスのみということでございます。それから,個人使用の徹底であります。それから,学外者公開等の禁止。4番目が,画像・音声の無断複製は禁止ということであります。
この収録データの利用期間については在学期間は保障するという形にしておりますが,これは運用によって調整可能としています。試聴時には名古屋大学IDとパスワードの個人認証を行いまして,視聴可能場所は自習室のみとしております。ですので,学内全般ではなくて学習の自習室,キャレルですね,ここでしかアクセスができないということにしております。
それから,この録画をするかどうかということに関わりまして,5から8のルールを定めております。受講者の過半数の希望があれば利用すると。原則,利用希望があるという推定の下に,利用拒否があった場合にオプトアウトできるという形にしております。反対する人の肖像権につきましては,席をカメラから映らないところに移ってもらう,あるいはカメラアングルを調整する,あるいは学生の席は映さない,そういったような形で対応することにしています。7番目,利用拒否の申出はクラス委員を通じて教務学生係に,手続について定めたものであります。また,教員の側からですが,教員に対しては,利用希望がある場合には利用協力義務を負うというふうにしております。これまで,この5から7については申出・適用例は一切ありません。8については,過去に一例のみ,1科目のみ録画をしないという科目がございましたが,現在はここに挙げてあります科目については全部録画をしております。
では,これがどれくらい利用されているかというのが次のグラフでございます。これは延べ数でございますので,学生数を考慮していない折れ線グラフになっておりますので,少しラフなところがございますが,それでも数千件単位のアクセスが学期中に行われているということがこれで分かります。また,学期休みになりますとアクセスが少し下がるということは,当初の意図どおりに授業を受講する際の補助としてこの機能が最も使われているということを示していると考えております。
それでは,次のスライドに行きます。次は,動画映像による実技評価システムでございます。これは,文科省の法科大学院等専門職大学院形成支援プログラムで開発してまいりましたシステムを改良,またメンテナンスを行いまして,現在は「PSIMコンソーシアム(法実務技能教育教材研究開発コンソーシアム)」という,名古屋大学が主管校の32大学法科大学院によるコンソーシアムがサービス提供を行い,そこのスタッフが管理もしているということになります。一番最初に御紹介いたしますのは法廷教室における「DRS(Digital Recording Studio)」というものでございますが,これは普通に法廷をカメラ複数台で撮影をするものです。そのカメラごとの画像は独自に録画されますし,記録用にはこの右の写真で見ていただきますと,下に四つ横に並んでおりますが,5という数字が付されている画面に表示されるように,ここにこの四つのカメラの画像を全部まとめた画像にするシステムが加えられておりますので,その形で録画をすることもできます。また,カメラの切り替え,メーンの上の大きな画面に映し出す画面の切り替えにつきましては,音声連動式になっておりますので,発言者,発話者を映しているカメラがこのメーンの画面に映るというような形になっております。これについてはインデックスを付すこともできますので,例えば,指導担当の教員が模擬裁判の途中で「ここのところは後でコメントをしよう」というようなところには,インデックスを付したりすることもできるようになっております。
次をごらんください。次は「STICS」というものでございますが,これにつきましては実技評価のための一つの振り返りを促すための道具として開発をしてまいったものであります。画像,先ほどのDRS等で,あるいはビデオカメラで録画した模擬相談であるだとか,あるいは模擬裁判であるとかいう様子をサーバー上に置きまして,そのサーバーで視聴しながら,視聴者がいろいろインデックスを付けたり,コメントを付けたりすることができるというようなシステムであります。ですので,この左下に書いてありますが,コメント表示欄というのがございますけれども,これはビデオを視聴しながら複数の視聴者がコメントを付すことができるものです。このコメントのタイミングと動画のタイミングが同期されておりますので,コメントをクリックすれば,その動画の再生部分が見られると。ですので,実技科目等で実技指導する際にパフォーマンスを学生・院生にさせた後で,あ,ここの部分がよかった,悪かったという部分をこのコメントを使ってピックアップして,短時間で振り返ることができるというようなシステムでございます。
これはサーバーを用いますし,多くの人間,例えば受講生相互のコメントも入れることができるものでございますので,なかなか実際上の運用は大変で事後的なふり返りが中心となります。それに対して少し簡便なシステムが,その右のもう一つ次のスライドの「PSC」でございます。これはパソコンを単純に1台で,カメラを使いまして録画をしながら,同じくコメントを付していくと。当然これは1台でございますので,コメントを付すことができるのは1人ということになります。仕組みとしては同じでして,コメントをベースにして画像の,正確に言いますと,コメントをした瞬間から10秒ほど前にさかのぼって再生する。というような仕組みになっています。この動画映像システムは,現在,「刑事模擬裁判」,これは刑事実務基礎という科目の一部として夏休みに集中して実施しておりますが,その科目や「民事模擬裁判」,これは秋学期の2単位科目、それから,「法と心理学」,現在,集中講義で行っておりますが,これらの科目でこのシステムを利用した形で授業が行われております。それから,昨年度まで愛知県弁護士会が主催しております法科大学院の模擬裁判対抗戦というのがございましたが,ここでもこのシステムの一部を利用しております。それから,法実務教育の教材開発というプロジェクトの下でこの実技評価システムは動いておりますので,その関係もありまして,法実務教育教材開発と,それから継続法曹教育を兼ねたということで,愛知県弁護士会の関係部会と共同して実施しております若手弁護士を中心としました模擬法律相談研修,これは年に数回実施しておりますが,この一部においても,こちらはPSCの方が多いのですが,利用したりしているということでございます。
以上,簡単ではございますけど,名古屋大学でのICT利用の現状について御報告させていただきました。ありがとうございました。


【樫見主査】  藤本委員,どうもありがとうございました。
それでは,ただいまの御説明につきまして,皆様の方から御意見,御質問等があればお願いいたします。どうぞ。


【土田委員】  いろいろと注目すべき取組がされていると思いまして,非常に参考になりました。ありがとうございました。
それで,お伺いしたいのは,教育効果の検証というのをされているのかどうか。されているとすれば,その結果がどういったものであったか御教示いただけると大変有り難いと思います。


【藤本委員】  このお助けくんノートシステムにつきましては,毎年,このような統計データをとりまして,どれくらいの利用頻度があるのかというようなことの検証をしております。それを踏まえまして,学生の学修のスタイルといったものを間接的に認知するというような形をしております。個別の授業の達成度ですね,教育目標の達成度についてのこのシステムを用いたことによる直接的な効果というのは,計量的な形では測定はしておりません。基本的に,このお助けくんノートシステムを稼働しましたのも,法科大学院が開設されましてから2年目,3年目の段階で開設しておりますので,それ以前と比較するというのはまたちょっと難しいところもありますので,していないというのが率直なところでございますので。


【樫見主査】  ほか,いかがでしょうか。ないようでしたら,私の方からちょっとお聞きしたいのですが,個別の特に模擬裁判ですとかで利用されているシステムで,授業評価アンケートなんかには何か学生からの記載等あるんでしょうか。


【藤本委員】  先ほど申しました統合画面ですね,これの部分をDVDに焼きまして,終了後に渡しておりますので,院生たちから見ますと,やはり後から自分のものを見る機会に、いかにたどたどしかったといいますか,思ったよりも上手にできてないということがよく分かるというような感想は来ております。


【樫見主査】  ありがとうございます。
ほか,いかがでしょうか。どうぞ。


【米田委員】  LMSを変更されたということなんですが,まだ半年なので,実感というか,違いについてまだお調べになってないかもしれませんけれども,違い等,具体的に使用感とか使用頻度の変化などあれば教えていただきたいんですけど。


【藤本委員】   このLMSに変えまして,利用頻度は非常に増えています。特に教員側が資料配付に使ったり,あるいは課題を提出させたりするという機能の利用率は高まっています。この高まっている一つの理由として考えられるのは,やはりセキュリティのシステムの大幅な変更ということになると思います。一つは,従前のシラバス配布,LMSシステムですと,独自IDでございまして,なおかつ他科目の教員間のコミュニケーションという点は非常にすぐれていた点でもあるのですけれども,他科目でどういう課題を出しているか,どういう資料を出しているか,全て教員のプリビレッジで全部見られるというような状況がございましたので,教員間の中で多少そういう点に対する抵抗感がありました。利用しないというわけではないですけれども,資料配付,課題提出等に使う頻度というのは少し遠慮ぎみのところがあったかなと思っております。現在は2段階になっております。つまり,IDなしで世界中に配信されるシラバスの部分と,それから授業受講生限定の資料配付等の部分というところになっておりますので。また,関連科目等につきましては教員として担当していない教員も,例えば「民法」の授業でしたら「民法」で,その授業は担当してないけど,「民法」の同僚はアクセスできるようにしていおりますけれども,全科目の全教員が全ての科目を見られるようにはしていないということが利用を促したことにつながったのではないかなと考えております。


【樫見主査】  ありがとうございます。どうぞ。


【中川委員】  神戸大学でもLMSはあり,最近は使う方が多くいらっしゃいます。しかしそもともとはうちはもっと本当に原始的な方法をやっていました。教員・受講生の連絡というか情報の流し,それから教員間でお互いの授業の様子を見ることができるように,「LSオール」という法科大学院生全員,1年生から3年生全員と,それから担当教員全員に強制的に回るメーリングシステムを使うということをやってきました。次回の授業の課題なんかはそれで出すという人が多いです。LMSでも出せますが,そちらだとわざわざこちらから見に行かないとほかの教員が何やっているか分からないんですが,メーリングシステムだと回ってくるんですね。例えば私は行政法が専門ですので,行政法だったらわざわざLMSでほかの先生の出している課題を見に行こうかなと思うんですが,民訴の先生とか,私の分野に近いところの先生がLSオールというか,そのメーリングリストで送っていると,やっぱり気付くんですね。「この前の授業はちょっとここを間違ったので,こういうふうに説明し直します」って書いてあると,私の分野じゃないんですが,興味がわいてちょっと見てみようかなという形で,教員間が見やすくなっているところがございまして,ほかの先生がどんな授業に大変で間に合わないか,来週はこれ飛ばすぞなんていう感じも全部メールで見られるんですね。そういった意味で,原始的ですけど,メーリングリストというのは非常に教員間の情報の共有ができるのかなという気がしております。LMSも使っていますけれども,必ずしも多数派ではなくて,いまだにやっぱりメーリングリストという非常に簡単なのがいいと。それがロースクールの一体感を生むというふうな感覚を持っております。なので,そこは,LMSを使うのと,それからメーリングリストという非常に原始的な方法を使うのとで,どれぐらい違うんだろうかというのが一つ今考えていたところです。
もう1点のインデックス付講義収録システム,うちはとてもこんなことできてないんですけれども,学生がそれぞれ授業を録音するという方法で事実上彼らはやっているんだと思います。分からなかったところは,「何時何分ぐらいのところがわからない」ってノートにメモして,後でそこら辺にぱっと戻っていって聞き直せば,デジタル・レコーディングですから簡単にできるという意味では,同じことが安くできる。ただ,こちらがすぐれているなと思ったのは,むしろ教員の方の観点です。先ほどおっしゃったような,映像で見ると自分の授業がいま一つ大したことないなという意味でのファカルティ・ディベロップメントには非常になると思うんですけれども,学生の授業を助けるという意味では録音でも十分かなというので,やっぱりそこは録音だけでなく録画もある方がよりいい点があるんだということがあれば,是非そこを教えていただきたいなと思いました。


【藤本委員】  最初の方のメーリングリストとの関係で言いますと,これもやっぱりケース・バイ・ケースだと思いますけれども,名古屋大学では,課題調整ですね,科目間の課題の締切りが集中したりしないように,定期的に課題の提出につきましては教務の方で取りまとめたものをメーリングリストで全教員に流すというような形で,やはり併用はしております。
2点目の画像の方がいいかどうかということでありますが,これはやっぱり一長一短だろうと思います。非常にいろいろ制約,先ほど御紹介しましたように自習室からしか見られないとかいうような形での制約がどうしてもついてまいりますので,その点でのデメリットもあるかなというふうには思いますし,音声で代替できる部分というのも少なからずあるだろうというふうには考えております。


【米田委員】  補足してちょっと今の点について。私もLMS等使ってやっている部分があって,これを見ると,多分,Digital CANVASはもともとの名古屋のシステムを改変してバージョンアップしたものだと思うんですけど,何がいいかというと,記録が確実に科目ごとに全部残るということなんですね。認証評価のときにシラバスも残っているし,授業で何を配ったかも全部そこに残っているので,それをばーっとプリントアウトしてファイルすればどんどん整理されていくと。そういった意味で授業記録は圧倒的にマネジメントシステムはすぐれていると思います。
映像の方は,正に記録性という意味でもやはり意味あるんですが,管理の問題って非常に重たくて,サーバーをずっと保持しなければいけないし,そのバックアップも維持しなければいけないという意味では,そういう負担の方が少し大きいのかなと思います。


【藤本委員】  もう一つよろしいですか。一つ簡単に補足いたしますと,その記録という点ですけれども,認証評価のときに科目の資料をだーっと出すわけですが,シラバスシステムでも、LMSシステムもそうですけれども,資料やいろんなものをアップロードした際に,学生に非公開というのは必ず機能として付いているんですね。そういった点でも,行政的な管理をするという観点でも機能的には十分に役に立つというものであるということは,今,米田委員の御発言に加えて言わせていただきたいと思います。


【樫見主査】  あとお一方ほど,どなたか。よろしいですか。はい,ありがとうございます。
藤本委員,どうもありがとうございます。
それでは,続きまして,前回,事務局の方から御提案がありました法科大学院におけるICTの活用状況に関する調査について,各法科大学院からの回答の取りまとめが既に行われましたので,事務局より御報告をお願いいたします。


【真保専門教育課専門官】  資料2のシリーズをごらんください。構成といたしましては,資料2が調査の概要となっておりまして,別紙にフリーアンサーの詳細などを設けさせていただいております。別紙は,資料2の別紙1及び別紙2-1,2-2と3種類ございますので,こちらを用いて説明をさせていただければと思います。
まず初めに,法科大学院の皆様方におかれては,短期間での意見照会であったにも関わらず,かなり膨大な調査を回答していただきました。この場をかりてお礼を申し上げたいと思います。
そういった調査でもあったことから,そのまままとめるとかなり膨大な量になってしまうということで,資料2の方は概要という形で,フリーアンサーも我々の方でできる限りカテゴライズをさせていただきましてまとめたものでございます。時間も限られていますので,こちらの概要を中心に説明をさせていただければと思います。
調査については,遠隔授業の実施状況という部分について調査をしたのが一つ。もう一つは,今,藤本委員から御紹介がありましたようなラーニング・マネジメント・システムを中心とした学修支援でICTをどう活用しているかという部分を,もう一つの調査の主題として調査をさせていただいたということでございます。
まず,遠隔授業の実施状況というところでございますが,全体といたしまして募集停止校も含む全ての法科大学院に調査をしておりますところ,現在実施しているという法科大学院が10校,これは28年度後期から始めるというところも含まれております。過去に実施していたけれども,今は実施していないというところが5校,残りの実施したことがないというところが53校ということでございます。
2ですけれども,以下はしばらく,現在実施している若しくは過去に実施していた大学に対して質問させていただいたということでございます。実施の方法ですけれども,テレビ会議システムを用いて,同じ大学内の他のキャンパス,これは社会人などを対象としているということだと思いますが,例えば都心にサテライトキャンパスを設けたりというような形で,利便性の高い形で授業を実施するというところで遠隔授業を使っているということ。あとは,大学間連携の中でテレビ会議システムを用いて遠隔授業を実施したということが12校。あとは,タブレット端末を用いて,外出先などから学生が授業に参加するというスタイルをとっているというところが1校。重複もありますので,15校で17の回答が出てきているということでございます。
遠隔授業の目的や理由ということでございますが,こちらについては予想どおりといいますか,遠隔地に所在する法科大学院との大学間連携を効果的に進めていくというところが多くの回答でございました。その次に有職社会人の利便性向上というところが出てきているということでございます。
資料2の別紙2-1と2-2でございますが,どういった授業方法を行っているかということに併せて詳細はどうなのかということも聞かせていただきましたので,そちらを簡単にまとめたものでございます。詳細に回答していただいていますので,単位認定を伴わない,いわば実験的な遠隔授業についても回答していただいています。資料2の別紙2-1の方が単位認定を伴う遠隔授業ということでまとめてさせていただいたものでございます。
最初にあるのは,同一大学内のいわゆるサテライトキャンパスなどとの間で授業を実施しているというところが以下に挙げた4大学でございます。特に成蹊大学や過去に実施していた桐蔭横浜大学などを中心に,かなりの科目でやられているということが把握できたということでございます。社会人を対象にというところが多いので,夜間開講科目でやっているということ。あとは,受講条件などについても,仕事の関係でやむを得ざる事情によりということで成蹊大学は回答いただいていますが,条件を切って一部の者について認めているというような事例があったということでございます。
裏面以降については,大学間連携の中で行っているということでございまして,今お集まりいただいている委員の皆様方が御所属されている大学が中心になっているということでございまして,こちらは十分御存じのところもありますので,御紹介だけにとどめさせていただきます。
資料別紙2-2の方でございますけれども,こちら,単位認定を伴わない遠隔授業ということで,いわば今後のために実験的に行っているというところも御回答いただいております。ここについても,今お集まりの先生方の御所属されている大学の方でやられていることがメーンということになっておりますし,過去にやられていた大学さんもあったということで回答を頂いているということでございます。
資料2の方に戻らせていただきます。めくっていただいて2ページ目でございますけれども,補助教職員の配置についてということでございます。こちらにつきましては,現在やっている又は過去にやっていた15校の中で,補助教職員を「配置している」と「配置していない」で3対2ぐらいに回答が分かれたということでございます。
配置している大学におかれましては,全ての科目に配置しているという大学さんの方が多かったということと,どういう方が補助教職員としてやられているかということは,事務職員の方が一番多かったということでございます。
その下に(4)で補助教職員の役割ということがありますが,こちらについては,機材の使用補助や障害発生時の対応ということが主でございましたので,こちらから読み取れるのは,一緒になって教えるということではなくて,機材面などの授業補助というところがメーンの役割として想定されているんだろうということがうかがい知れるというところでございます。
教職員を配置していない理由といたしましても,3分の1ぐらいは配置しなくても対応できるというところもありましたが,そういうことではなく,予算の問題とか人的な余裕がないということで配置していないという回答の方が多かったということでございます。
3ページ目でございますが,遠隔授業に用いるシステム・機材という部分についても御回答を頂いております。こちらについては,多くの大学が専用のシステムを持っており,法科大学院で自由に使用できるというシステムを所有していると回答いただいております。
(3)でございますが,システムに詳しい者が誰かということも聞かせていただいたんですけれども,多くは事務職員という想定していた回答が出てきていますが,教員と回答した大学も一定程度あったという部分は注目に値すべき点かなと思っております。
6以降は具体的なフリーアンサーに入っていきますけれども,面接授業に相当する教育効果を創出するための工夫ということを聞かせていただいております。こちらの主な内容としては,配信先の学生の態度に目を配るといった,授業の進め方に配慮するということ。やはり遠隔地にありますので,授業終了後の質疑応答等のフォローを充実させるということや,あとは,ラーニング・マネジメント・システムの活用などありますが,受講者の理解の促進を工夫するというような意見がございました。
7でございますが,教育効果などをどう検証しているかということでございますが,実施しているというような回答を頂いた大学さんの主な内容としては,やはり授業アンケートなどで評価を把握するというところが主でございました。それを合同FDなどの機会も利用して聴取をしたりというようなこともやられているというような話がございました。
8でございますけれども,遠隔授業に関するFD若しくはスタッフ・ディベロップメント(SD)なども含めてどういうことをやられているかというようなこともお聞きしましたところ,先ほどとかぶりますけれども,授業アンケートの実施,そういったことに加えて,授業方法とか機器の操作に関する情報共有を行うといったこと。あとは,先生方が非常に忙しいので,ICTを活用して授業参観といったことも考えられないかというような回答も出てきているということでございます。
9の遠隔教育の利点ということでございますけれども,こちらは,やはり多かったのは大学間連携においてお互いの強みを共有するということや,専門の教員の調達が困難な科目についても学生に提供できるといったような利点を挙げられた大学さんが多かったということでございます。あとは,ICTの活用で経費が削減できるといったことで,先ほども教員の招聘(しょうへい)といったようなことがありましたけれども,こういった部分で遠隔教育を行うと出張回数や経費などが削減できたりといったような実務的な観点を挙げられている大学もありました。あとは,有職社会人における利便性の向上といったような意見も出てきております。
10の遠隔教育の問題点・課題ということでございますが,まず,想定どおり挙げられたのは,イニシャルコストやランニングコスト,両面でやはり課題が大きいということ。あとは,対象科目や授業手法ということですが,演習形式の授業はなじみにくいんじゃないかといったようなことや,配信先の教室の雰囲気を把握することがなかなか難しいといったような意見も出てきていたということでございます。直接の対面授業を補完するための工夫ということで,今申し上げたようなことを補うための工夫が必要なのではないかということ。具体的な手法として,遠隔授業の受講生用にオフィスアワーをどう設けるかといったことや,ラーニング・マネジメント・システムなどを活用して,今御紹介いただいたようなさまざまな機能を用いてフォローを行うといったようなことも必要ではないかという話がございました。あとは以下のとおりのさまざまな意見が出てきているということでございます。
5ページ目でございますけれども,遠隔授業の実施をやめた理由ということでございますが,こちらは,受講希望者がいなくなったということ,減ってきたということに加えまして,費用が高額であるというようなことが意見として出てきているということでございます。
12以降は,現在実施していない大学も含めて,全ての大学に回答をしていただいたものでございます。今後の遠隔授業の実施についてどのように考えているかということでございますけれども,現在実施していない大学のうち,実施を予定している又は実施を検討したいというような大学が合わせて15校あったということでございます。
遠隔授業の実施について,13の方で他大学との連携の可能性についても伺わせていただきました。こちらについても,現在連携していない大学のうち,今後連携したい,若しくはほかの大学院から話があれば連携を検討したいと回答を頂いた大学が合わせて22校あったということで,一定の興味は示されているのかなということがうかがい知れたということでございます。
最後,14でございますけれども,普及のためにどういったことが必要と考えますかというような回答を任意回答で頂いております。これは教員と職員で分けさせていただいて意見を伺っております。まとめ方として,遠隔授業を実施している大学,今後実施を予定している大学,その他の大学と分けてここにはカテゴライズして載せさせていただいております。
現在実施している大学からは,主に実務面の費用に関する意見ですとか機器の汎用性や通信環境といったこと,あとは,教職員のスキル,そういったことに関する意見が主に出てきている一方,今後,遠隔教育の実施を予定している大学につきましては,授業の教育効果ですとか授業運営といったようなことについても併せて意見が出てきているということでございます。こちらで例として御紹介いたしますと,遠隔授業の有効性の実証的調査,要は通常の対面式授業との比較実証調査というような御意見が出てきているということや,時間割の調整や成績評価基準の統一などが必要なのではないか,出欠の本人確認,小テスト・期末試験の実施体制など,評価の在り方や授業の進め方,あとは授業の効果といったものに対して,漠然とした不安が抱かれているのかなといったような印象を持ったところでございます。
その他の法科大学院からの意見ということでございますが,こちらについてはやはり通信環境についての御意見が多かったということでございます。そういったことに加えまして,あとは授業運営といったところに関する意見もあったということでございます。あと1点,その他で,こちらは詳細な部分には記載はされてはいないんですが,法曹志願者の増加という部分とリンクしてくるのではないかといったような意見もあったところでございます。
次のページに行きまして,職員からの意見ということでまとめさせていただいておりますけれども,こちら,全ての法科大学院に共通していたこととして一つ申し上げたいのは,やはり職員の皆様ですので,専任の職員を配置する必要があるんだろうというようなこと。やはり機材のトラブルとか様々なサポートが必要になると想定されますので,ほかの業務と兼務しながらそれをやるというのはなかなか厳しいのではないかということが,全てのカテゴリーの大学から共通して上がってきた意見ではないかと思っているところでございます。特に,今後,遠隔授業の実施を予定している大学というところでは,機器や通信環境といったことで,とにかく安定しているシステムが入ることが必要なんだろうといった意見がございました。
その他の法科大学院というところでは,やはり教職員の話が多かったということではあるんですが,費用面や機器のことを心配されている大学も多かったということに加えて,遠隔授業の需要という部分で書かせていただきましたが,志願者数が下げ止まりとなって,一定数の需要が継続的に得られることが必要なんだといった意見や,必要資金を回収できる程度の受講利用者が必要なんだといったような意見みたいな部分で,その他として費用対効果の観点から導入効果を検討することが必要じゃないかといったような御意見もございました。
8ページ以降については,ICTを活用した学修支援等々ということでもう一つ調査をさせていただいたものの概要でございます。欠席フォローの関係でオンデマンド配信のためのシステムをどう保有しているかというところを調査させていただきましたところ,法科大学院自身で保有しているのが15校,大学の他部門が保有しているのが23校という結果でございまして,現在実施している大学も14校存在したということでございます。法科大学院としてシステムを持っているが,現在やっていないというところも15校中5校あったということでございます。
オンデマンド配信の目的・理由といった部分は,以下のとおりで,授業の予習・復習,欠席フォローというところは想定できたところなんですが,未修者や修了者等への学修支援,これはいわば先取り学修といったような部分にも効果が発揮できるのではないかといったことや,修了生が司法試験受験対策などを行って行くに当たっての学修支援というところにも使えるのではないかといったような話もございました。
あとは,オンデマンドの利点ということでありますけれども,こちらもある程度想定したどおりで,授業の補完といったところや欠席フォロー,各自の環境に合わせた学修が可能となるといったような回答がございました。
オンデマンドの問題点や課題といったところでございますが,メンテナンス費用などの問題はあると思いますし,あとは,欠席フォローであるとしても,同時性,双方向・多方向の欠如で理解の誤定着が生まれるのではないかといったような話や,授業を録画する際に受講生が映り込まないようにするとか,様々な工夫が必要になってくるといったような御意見もございました。
オンデマンド配信をやめてしまった大学について理由をお伺いしたところ,予算の拠出が困難であることや,なかなか利用が広まらなかったということ。あとは,そもそも実施していない大学についてその理由をお伺いしたいところ,やはり対面授業を重視しているので必要性を感じていないということ。この回答の内容としては,少人数の教育を実践しているので,授業後の質問とかオフィスアワーの機会を利用して疑問点を解消することができるといったこと。小規模なので,教員が学生個々の能力や特性を把握して指導することが可能になっているといった意見。双方向・多方向の授業を重視してきたので,欠席等の授業録画のオンデマンドの利用に議論が向かわなかったということ。こういったことが主に挙げられているということでございます。
2のラーニング・マネジメント・システムでございますけれども,こちらは多くの大学が導入しているという回答でございました。10ページでございますけれども,どういったシステムを導入しているかということでお伺いしたいところでございますけれども,法科大学院単独で利用している40校のうち8割方,TKCのシステムを利用しているということでございました。こちらの丸2の方のラーニング・マネジメント・システムの機能ということでございますが,こちらも想定がある程度できたとおりで,以下に掲げているような使用がされているというような回答が出てきているということでございます。
11ページでございますが,ラーニング・マネジメント・システムを導入する利点ということでございますけれども,こちらについては授業の補助ということもありますので,授業運営に関する利便性が向上するといったことや,学生の自学自習の効率向上に生きるという点が多くの回答を占めたということでございます。一つ,授業外における教員・学生間の双方的な指導が可能ということも5校ございましたけれども,授業やオフィスアワーの時間以外においても,セキュリティが確保された中で授業の進行に合わせた情報交換・課題提出・文書作成指導,こういったことができるんだということを利点として挙げられている大学もありました。
あとは,導入していない理由については,以下のとおり2校の回答があったということでございます。
12ページでございますけれども,その他というところで,オンデマンド配信やラーニング・マネジメント・システム以外のICTを活用した学修支援についてということで任意回答で聞いてみたところ,以下のような回答が挙げられているということでございます。
あと,(2)について,遠隔授業や学修支援以外のICTの取組としてどういうことが挙げられるか,こちらについては志願者確保や就職支援,あとは特徴的なものとしてはFD活動,継続・リカレント教育,こういったものに使われているかということが把握できたということでございます。
法科大学院以外についても,把握していれば,どういうところでやられているか教えてくださいということで,遠隔授業の実施ということで,学部や法学研究科などでも行われているということが参考までに聞き取れたということが挙げられるということでございます。
ちょっと長くなってしまいましたけれども,説明は以上になります。【樫見主査】  ありがとうございます。
それでは,ただいまの調査結果の概要につきまして,何か御意見,御質問があればお願いいたします。もしもないようでしたら,次の3番目の議題におきまして,調査結果を踏まえた上で論点を整理した議題が設けてございます。そこで調査結果も含めて御質問あるいは御意見を頂くという形にさせていただければ,そのまま次の議題に移らせていただきますが,いかがでしょうか。
それでは,3番目の議題,法科大学院におけるICTを活用した教育の本格的普及に向けた論点についてということで,既に事務局より論点を整理していただいておりますので,この点の御説明をお願いいたします。


【真保専門教育課専門官】  資料3及び資料4を用いまして説明をさせていただきたいと思っております。
論点に入る前に,資料3でございますけれども,前回の会議における自由討議の中で先生方から頂きました主な御意見をまとめさせていただいております。こちら,議事録はまだ精査中の段階ですので,事務局の責任において概要をまとめさせていただいたものと御理解を頂ければと思います。
内容といたしましては,メディア告示との関係について,現在のメディア告示が,遠隔授業が面接授業に最初から劣っているというような前提で記載があるように見えるけれども,そういった評価が現状あるのかどうかという点についての御意見があったということでございます。
一方で,三つ目の丸でございますが,授業形態に応じてメリット・デメリットは異なるということ。メディア告示についても,同時・双方向である場合とそうでない場合を区別して要件を規定しているということが大事だと思うので,それぞれの要件を前提に調査を行って議論を進めていく必要があると思うといった御意見もございました。
加えまして,ICTを活用した授業というのがまだまだ新しい試みであって,教育上のあらゆる論点が試されてしまうと。こうしたことが議論のマイナスに作用していかないようにしていきたいといったような御意見もございました。
授業以外へのICTの活用といったようなことでございますが,一つは,志願者の掘り起こしといったようなことにも活用ができるのではないかといったような意見があったということでございます。
加えまして,異なる場所にいる学生同士の交流,教員間の交流の促進,こういった新たなメリットを併せて打ち出していった方がいいのではないかというような御意見もございました。
2ページ目でございますけれども,今後の議論の進め方ということでございますが,こちらは,複数の法科大学院がこれまで遠隔授業などを実施してきたけれども,活用頻度に差が生じているという点を踏まえて,今後の普及方策を検討するに当たり,その要因を把握していくことが重要ではないかといった意見がございました。
加えまして,法科大学院教育に限らず,これまでの大学通信教育で培われてきた蓄積を踏まえた上で議論を行うことが必要であると。今後,論点を詰めていく段階において,設備面を含めた通信教育の有効性,問題点などについて,専門家からヒアリングを行っていくことも必要ではないかといったような意見もございました。
その他といたしましては,地方在住者という用語が何を意味するのかといったことに関する御意見がございました。
また,地方在住者に潜在的な法曹志願者がどの程度いるのかといったようなことに関する御意見もございました。
こうしたことを踏まえまして,資料4でございますけれども,前回のペーパーに肉付けをするような形で論点を再整理させていただいてございます。
1のICTを活用した教育を普及させる目的ということでございますが,前回は非常に漠然とした記載になっておりましたので,こちらについて,地方在住者や有職社会人の学習機会の確保,学修支援ということに加えて,FD活動や修了生支援,継続教育などの取組の活用方策も検討できるのではないかといったような記載をさせていただいてございます。
二つ目といたしまして,ICTを活用した説明会の開催など,地方に在住する潜在的志願者を掘り起こしていく方策,こういったものも併せて検討してはどうかといったようなことを記載させていただいてございます。
2のICTを活用した遠隔授業の実施ということでございますが,こちらについての記載の内容については前回と変更はございませんので,説明は割愛させていただきます。
3のICTを活用した教育を実施する際の法令面の整理,こちらについては,前回,論点に明確に記載がございませんでしたので,追記をさせていただいてございます。既にこれは委員の皆様方多くに共通する問題意識だとは思いますけれども,専門職大学院設置基準第8条第2項における「教育効果要件」,専門職大学院においては,メディア授業が,「十分な教育効果が得られる専攻分野に関して,当該効果が認められる授業」において行うことができるとされておることでございますけれども,その適合性についてどのように考えるかということについては,今後,検討が必要になってくるだろうということでございます。
2ページ目でございますが,現在のメディア告示,これも前回御紹介をさせていただきましたが,1号か2号のいずれかの要件を満たした上で,大学において,面接授業に相当する教育効果を有するということが要件となっておりますけれども,法科大学院における遠隔授業に関し,「面接授業に相当する教育効果」というものがどのようなものなのかということについては一つテーマになってくるだろうというふうなことで,ここに記載をさせていただいてございます。こちらについては,前回説明をさせていただいたところではございますが,資料4の別添1というところで遠隔授業が認められるための要件というような資料がございますが,こちらの2ページにおきまして,専門職大学院設置基準第8条第2項というところがございまして,専門職大学院設置基準が制定された際の施行の通知において,実習が主体となるような授業についてはメディアによる授業を行うことが通常想定されないということ。あとは,米書きにおいて考え方の記載をさせていただいているということでございます。こちらは参考でございます。
また,3ページにつきまして,「面接授業に相当する教育効果」という点でございますが,こちら,1号要件が初めてできたのが平成10年ということでございますので,こちらの施行通知を抜粋させていただいたものが点線の枠囲いでございますが,その3段落目でございますけれども,面接授業に近い環境で行うことがメディア授業も必要であって,各大学において以下のような事項について配慮することが望ましいということで,要件を挙げさせていただいているということでございますが,平成10年と現在を比較して,情報通信技術の進展やインターネットが大衆化しているというようなことを踏まえて,どういう議論ができるかということではないかと思っております。
4のICTを活用した教育を実施する際に必要となる要件,こちらについても前回記載をさせていただいたものと同様でございますので,説明は割愛いたします。
5の認証評価についても同様でございます。
あと,6については,委員から前回御意見がありましたように,今後,論点を詰めていく際に,必要に応じて,大学通信教育における研究成果なども参考にしていく必要があるのではないかということを記載させていただいております。
説明は以上でございます。


【樫見主査】  はい,ありがとうございます。
それでは,今回につきましては,時間,終了時まで十分にとってございますので,皆様からの自由な御議論を頂きたいと思っております。いかがでしょうか。


【中川委員】  最初に,ICTを活用した教育として何を取り上げるかというので,いわゆる遠隔地授業というパターンと,それからLMSのようなものも入ってくるんだと思うんですけれども,さらに授業録画と,それぞれ多分三つぐらいあるんでしょうかね。そのどれをどこで議論するのかというのは整理した方がわかりやすいかなと思ったんですが,いかがでしょうか。


【樫見主査】  はい,ありがとうございます。今回は自由に御討議いただいて,議論の仕方といいますか,順番も含めてここで御意見を頂ければ,そのように今後整理させていただきますので,今挙げられましたのは三つですか,LMS,それから録画,そしてライブのものですね。


【中川委員】  はい。


【樫見主査】  この点について何か御意見ございますでしょうか。


【石井委員】  今の点ですけど,授業形態をどうするかという話と,それから,どういう目的で使うのかと。例えば有職者とか地方とかありますね,それはマトリックスの関係になっていて,多分,縦軸と横軸はないけれども,そういう関係があるんじゃないかと思いますので,どういう形で整理すればいいか分かりませんけれども,教育目的をどうするかとか普及目的をどうするかという軸と,どういう手段を使うのかという軸と,それぞれを関連させながらやらないとちょっと議論としては深まらないかなという気はしているんですけれど。


【樫見主査】  今回のアンケート調査結果では,大学内でキャンパス内で離れた遠隔授業を実施する場合と,それから遠く離れた別々の大学間の大学連携等を通してやる場合,大きく分けると二つあったかと思うのですが,それぞれについてやはり教育目的はちょっと違ってまいりますので,その点も縦軸なり横軸に絡めてということになろうかと思います。この点,何かモデルケースといいますか,履修コース的な,そんな御発案等ございましたら,何か御意見いかがでしょう。


【米田委員】  今回の調査でも明らかになったとおり,かなりの大学,半分ぐらいの大学でそれなりに何か遠隔講義システムを使ったりする取組というのはされてきているという意味では,ICT自体は,経験値的なものというのは浅く,広く,ある程度は広がりがあるだろうということは確認できたと思うんですけれども,これを教育課程としてきちんと位置付けていくということが大事で,そうすると,小さいところで単位認定をするためにはどの条件が満たされていればいいのか。もう一つは,それは学位を与えるというレベルで考えたときに,例えばどれぐらいの数の単位,どのような種類のものであれば遠隔で授業を受けてよくて,単位が取得できて,なおかつ,駄目なもの,フィールドワークを含むもの,リーガルクリニックのようなものは遠隔ではできない部分もありますので,そういったものについては,具体的に,サテライトみたいなところに行ったり,弁護士会に協力を得たりして現場で授業を受けるということは必要だというような,そういったどちらかというと授業の形態とかよりも単位を与えるとかいう制度的な形の中でどういう形で望ましいのかということを織り込んでいった方が,議論は具体化できるんじゃないかと。これまでは,有用性がある,つまり,遠いところにあることによって,お互いの長所を交換することができるとか又は弱点を補完し合えるというところで集中的に行われてきたように見えるんですけれども,これが教育課程として一つの形を基準を示すということによって,より普及が進む可能性がありますし,特に,我々が地方在住者という観点からいきますと,どういう条件を満たせばどういう法科大学院で勉強できるのかとか,そこに対する法科大学院の側からの新しい取組というものが発展する基準のようなものですね,それが示されることが重要なのではないかと思います。


【樫見主査】  はい,ありがとうございます。
いかがでしょうか。縦軸,横軸にする論点が様々に出てまいりまして,なかなか整理するのが大変なんですけれども,恐らく単位化をするということになりますと授業科目の関係もございます。どのような授業科目が適するのかということもございますし,それから,ツールの問題ですよね。先ほど申し上げました二つ,録画,オンデマンドあるいはライブの場合,それぞれについてかなり個別具体的になりますでしょうか。一括してこれというのではなくて,基本方針はあるかとは思いますけれども,恐らく,授業形態,単位を修得する場合の適合する授業科目の選定ですとか,かなり細かく見て,類型的な考察とでも申しましょうか,それが必要になろうかと思います。
ほか,いかがでしょうか。そのほかに考慮すべき点ですとか。名古屋大学は非常にすぐれたシステムをお使いなんですが,これは名古屋大学だけでやっていらっしゃるシステムですよね。特にLMSですか,そちらの方,授業配信等は他校にするということはお考えではないですか?


【藤本委員】  LMSはパッケージですね。それから,授業録画,インデックス付の録画システムというのは,先ほど申しました運用ポリシーといたしまして学内視聴のみなどの制約をかけております。もちろん,システムとしてのいろんな活用可能性はあると思いますけれども,現在のところは,そういう可能性は含みつつも,具体的に計画をしているということはありません。


【樫見主査】  もう一つの論点としてコストの面があろうかと思いますが,その点で何か御意見いかがでしょう。


【石井委員】  いや,費用といいますか,多分,名古屋大学のものは10年以上ですので,恐らくもうシステムとしては古くなり過ぎているのかなと思います。だから,こういうシステムを導入するとしても,恐らく5年とか6年周期では更新するんだということをある程度組み込んでやらないと継続性はないわけでして,そうすると,いろんな形態ありますけれども,基本的には費用が継続的にずっとあるんだと,それをどうやってサポートするかというのも実はこれを普及する上で障害になっているんじゃないかと思います。ですので,法令上の要件もあろうかと思いますけれども,やはり維持費含めた上での費用をどうしていくのかという問題が恐らく二の足を踏ませるところも多いかなと私は思っていまして,その辺はここでの議論ではないのかもわかりませんけれども,やっぱり考えていく必要はあるわけでして,あと,できれば,テレビ会議みたいにもう共通性のあるやつはいいんですけれども,そうじゃないものに関しましてはある程度何か本当はパッケージがあった方が導入はしやすいんだろうなということはちょっと思ったところでございます。


【樫見主査】  ほか,いかがでしょうか。


【米田委員】  今,石井委員がおっしゃったとおり,我々の経験でも,設置当初からシステムを導入してやっているわけですが,構築したシステム自体が例えばWindowsのXPで最初立てたものが,もうXPは学内で基本的に使用禁止になっているわけですから,それを更新しなければいけないというと,プログラムから全部書き直しということになる。そうすると,費用的には莫大な費用が掛かるので,このままのシステムを今後使用し続けることは,あと数年内にはやめなければいけないというのははっきりしているわけですね。そうすると,どの程度のものをコストとして織り込むことが可能であって,その更新可能な形のサービスというものを我々は獲得していくなり,開発していくなり,毎回きちんと財源的に確保していけるようなものというのを持たないといけない。その部分はどうやっても,ICTを使ってやるということはコストが掛かってくるということが前提になるわけで,そうすると,どの程度の負荷を掛けるべきなのかということは重要なポイントかなと思います。
例えば,さっき浅野課長もおっしゃいましたが,法科大学院ができた当初の大きな補助金を頂いた形で開発したものというのは,やはりそのとき限りであって,その次の更新をどうするかということを考えなければいけなくて,その基準まで下げたときに,下げてぎりぎりのところでどのレベルの条件が満たされていれば遠隔講義システムを使った授業として認めることができるのかと。さらに,その遠隔講義システムだけではなくて,幾つかのLMSをかませたものとか,その組み合わせがきちんとできているかどうかとかということが単位として認定する基準であったり,カリキュラムとして全部にそれが装備されていて,管理されていて,記録が提出できるということが基準になるとか,そういった形の議論をするのが,展開していくのかなというふうにちょっと想定してはいたところです。
技術的な進歩というのは,やはりどうしても付いてきてしまって,古いものはセキュリティの問題等でどんどん使えなくなっていって,物理的にも部品がなくて交換ができないということになってくると。そこのところをやはり織り込んで考えていかなければいけない。これまでその部分に対するケアは石井委員がおっしゃるとおり非常に薄くて,様々な取組をしても継続できていないというのは,その部分の考慮というか,対応が足りなかったからだろうと思います。


【中川委員】  ちょっと初歩的な質問で。


【樫見主査】  はい,どうぞ。


【中川委員】  そこで言うシステムって具体的に何を指すのかよく分からないんですけど,LMSだったら,これは全学でどっちにしても作っていますよね,共通のものは。そこでロースクールに固有の機能が付加できればさらによいですが,そんなにたくさん必要な機能があるような気もしないんですけれども。また,先ほど私が言ったようなメーリングリストでもいいんじゃないかとかですね。それから,映像を録るというのは録ればいいだけで,あとはどこに保管するかの問題がありますが,システムとしてはローテクですよね。あと,最後の遠隔授業ですけど,これは我々も普通にテレビ会議システムを入れておりまして,1台70万円くらいですね。あれ,5年,10年ぐらいもつんでしょうね。70万円の投資で5年,10年もちゃいいかなと思っているんですけれども,そんなに高いものでも,高いメンテナンスが要るものでもないので,そんなにシステムにお金が掛かるというふうな印象を私は持っていなかったんです。独自に作ればもちろんおっしゃったようなコストになるんですけれども,わざわざ作らなくてもいいんじゃないかという気もしているんです。


【藤本委員】  コストの問題でイニシャルコストの問題とメンテナンスコストの問題というのはやはり分けて考える必要があるだろうと思います。一つは,例えば,今,例に挙げられましたテレビカメラでありましても,それは経費削減のために多くの大学では保証契約あるいはメンテナンス契約というのはかなり絞っていると思います。また,そういったような保証契約というのは,例えば名古屋大学で運用しておりますシステム規模になりますと年間数百万に達します。これは機械ではありません。いわゆる保証契約の費用ですね。また,先ほどから出てまいります補助スタッフ等,こういった技術スタッフあるいはそういった機器のメンテナンスについての業者とのやりとりをしたりするような窓口となる専用スタッフというのは,いろんな形で継続して雇用はしておりますので,そういった人件費まで含めますと,単に機械が古くなって,それをリプレースする費用というだけにはとどまらない費用が毎年発生しているというのが現状でございます。


【樫見主査】  どうぞ。


【石井委員】  例えば,オンデマンドで映像を配信しようということを考えた場合ですけれども,昔ですと多分,古いのはいろいろあるんですけれども,今ですと恐らく著作権を配慮するのでダウンロードできない,あるいは保存できない仕組みがあるわけですね。そういうのが今使われているとか,タブレットが普及しますから,昔のやつですとタブレットは配信できないんだけれども,今のやつはできるようになったりするとか,そういうのがあるわけです。その中でも,要するに保存してそれがコピーされないようにするような配慮も要るだろうと。そういうのがだんだん発達しますので,それに対応するシステムにしなきゃいけないだろうというのがまず一つ。
それからもう一つは,システムといいましても,機材,撮影する方に関しましてはやっぱりアップデートはあるわけでして,例えばよく使っているポリコムのシステムですけれども,ちょっと古いやつですと乗っ取られてしまって悪用されてしまうことがよくあったわけでして,そうすると,そういうのに対応しなきゃいけないけど,ポリコムは一切してくれないと。あるいは,壊れたら保証契約なかったら全部買い換えなさいと言われたりすると。そういう状況は実はあるわけでして,その辺に対する対応はやっぱり要るわけだろうと思います。
それから,多分,鹿児島大学なんかのシステムだと,撮影自体とか同時・双方向の遠隔授業の場合においてもシステム開発をしたのはうまくやられているわけでして,それを何かコンピューターシステムを使ってやりますと,そのシステム自体の更新と,それから上物の更新と両方やっていかなきゃいけないという問題もあるわけでして,単にメンテナンスだけじゃなくて,やっぱり時代状況に応じたアップデートは要るんだろうということは常に頭に入れておかなきゃいけないと思っております。
それから,全然話を変えますけれども,今,大学でいろいろな情報関係の責任者をやっていますので気付いたんですけれども,国立大学の場合ですと,インターネットはSINETを通じて接続するわけです。千葉大学の場合は,すぐそばに大きなSINETのポイントがあるので,安く,かつ太い回線がぽんとつながる。ところが,地方の大学ですと,SINETのポイントまですごく遠いので,やっぱり予算の関係で細い回線しかつなげられないと。1個前のときだと,ある大学はADSLぐらいの活動しか使えなかったと,お金がなくて。そういうところもあるわけです。ところが,やっぱり動画配信とか双方向のテレビ会議をしますと帯域を食いますので,そうすると,大学自体が持っている回線自体に対する面というのも実はもしかしたら出てくる可能性もあり得るということも考えなきゃいけない。特に私立大学の場合,全然大学も対応違いますから,その辺を含めて特に小規模の大学がもしそれに関わる場合には,そこに対するケアも恐らく出てくるんだろうと思います。


【朝田委員】  山陰法科大学院の朝田です。 結構経費の面やら技術的な面の話にも入ってきているんですが,それ自体も検討しなきゃならない重要な課題だと思うんですけれども,きょうの議事次第に従って議論をちょっと整理しながらやっていただきたいなと思います。
まずは調査結果ですけれども,先ほど事務局の方からいろいろ調査の結果をまとめた内容でやられましたが,このICTを活用した授業等々又は試行等々やっておられるところがあるようですよね。その中から客観的に正確なデータとして教育効果が出たかどうかというところまではまだよく分かりませんけれども,これだけの数字おやりになっているということは,何らかの必要性,また効果,これははっきりまだ分かってないけれども,あると思うんですね。そういうことで,ちょっと漠然とした言い方ですけれども,ICTを活用した遠隔授業等々にしてもやっておられるということを踏まえて,じゃあ更にどういう課題があるのか,それがきょうの論点ですよね。そこのところの整理をきょうの論点の資料4の項目に従ってやっていただければなと思います。 その中で私が一番,きょうの事務局の方の御報告で共感して感じるのは,実は,きょう浅野課長が来られていますけど,お久しぶりです。


【浅野専門教育課長】  お久しぶりです。


【朝田委員】  岡山と四国ロースクールと山陰法科大学院で連携・連合でICTを活用したようなものも取り込んでやろうということを議論した経験があるんですけれども,やはりそこで一番の問題は教育効果,対面授業との差や違いをどういうふうに考えるのかというのが本当にずっと議論でありました。その当時と今とは違うと思うんですけれども,実際に最近,中央大学やらほかの大学とICTを使った遠隔授業などをやってみると,結構使い勝手がいいなと。教育効果も,受講生に聞いたらあるような,これは実感的なもので,客観データ的なものじゃありませんけれども,感じております。きょうの事務局のレジュメにも書かれていますけれども,各法科大学院からの意見として,遠隔授業を実施している法科大学院やら,これから実施しようと,検討しようというようなところ,様々ですが,遠隔授業に対する偏見,イメージ,そういうものがやっぱりまだあるように感じておられるような,そういう報告のレジュメになっていますよね。ここのところは我々は本当に,いろんな大学でも試みておられる現状やら,また,ここで議論しているようなものも含めて,発信していかなきゃならないんじゃないかなと思いますけれども,その中で今後,前回のこの会議の場でこのICTを活用した法科大学院教育をするのであれば平成30年度からということになっている,そういうタイムスケジュールですよね。だから,片方でそういう方向性に行くのであれば,そういうものの情報発信もこの会議体の議事録やらいろんな資料が出ると思うんですけれども,やはり広く公表し,議論する中で,そちらに向けて行くのであればここの会議体での資料も出されたらどうか。
こういうことをやっていくと,もう一つの論点としてつながっていくのは,こういうICTを活用したことでやれば,地方在住者やら社会人も,法科大学院の制度になっていけば自分たちも受けてみようかなという需要の掘り起こしにも片方でつながっていく,そういうようなことにもちょっと思うんですけど。
ちょっと話が長くなりましたけど,返りますけれども,それぞれの論点の項目,これでいいのかどうか。調査報告の内容を受けて,意見を出し合って次の会議につなげていけるようにしていただければと思います。


【樫見主査】  はい,どうも貴重な意見ありがとうございます。もともとこの会議の目的といいますか,方向性,ICTを活用する教育の必要性ですとか有用性は広く言われているところではありますけれども,やはり双方向的な授業を特にうたわれております法科大学院教育においては,ICTの活用についてはほかの教育分野に比べてかなりハードルが高いというところあろうかと思います。その点をこの会議の中で積極的な方向付けといいますか,普及をさせるためにはどういう問題点があり,特に先生がお話しになられましたけれども,教育効果要件,そこら辺のところをどうハードルをクリアすればいいのかというところをこちらで議論するというのが,この会議体における主要な論点であろうかと思います。
先生おっしゃったように,順番どおり議論するということは事務局の方もお考えかと思いますが,前回,それから今回につきましては,一応こんな問題点があるんだというところでアトランダムに挙げていただき,どのような形で一つ一つ順を追ってハードルをクリアするような提言,問題点の提示,それから,それをどうしたらクリアできるのかということをここで1回1回詰めながら積み上げていき,最終的にはいわばツールの問題といいますか,ICTの活用と,それから教育的な授業の中身の方ですよね,単位化する,大きく分けると恐らく二つだと思うのですが,普及をするというためにはこの二つの要件,抽象的な文言の提示ではなくて,どうすれば,あるいはどのような授業をすればとか,あるいはどのようなシステムを提示できれば,活用の道が開けるのか,具体的な提言を行わなければいけないということですので,今回のところまではいろんな形で御意見を頂いて,そして,事務局におかれましては,資料4におきますように1から差し当たりは5番くらいまで大きく分けていただいたのですが,これをどのところから一つ一つ論点を詰めていけば具体的な提言につながるのかということを議論させていただきたい。恐らく,本日の論点はこのような整理の形になっておりますが,きょう皆様から頂いた議論を含めて,例えばですけれども,次回は,教育的な効果の面についてハードルのあるところを,どのような知見をもって克服すれば,場合によっては専門家の方の御意見を聞いて教育的な効果のところをどうクリアすればいいのか。やはりここは法科大学院でありますから,法科大学院の現実を踏まえた上で,こういう具体案を出せば当該の法科大学院で採用できるといいますか,そこへ持っていくような結論をここで提言していきたいということでございます。
どの論点から次回以降詰めて議論するかというのは,本日の皆様からの御意見をいろいろ聞いた上で整理をさせていただきたいと思っております。順番についても御意見を頂きましたので。
それと,ちょっと話がずれますが,前回議論いただいた「地方在住者」,そのまま論点が書いてありますが,これ,何かいい御提案でもございますでしょうか。やはり何かちょっと言葉としては,定義も含めて,よりアピールするような言葉があれば,あるいはもっと分かりやすい言葉があれば。やはりこれは法科大学院教育を広く一般にアピールするという意味合いもあろうかと思いますので,何か御提案があれば。差し当たり順番で行きますと1番の論点になりますけれども,いかがでしょうか。


【米田委員】  この会議自体が設けられるきっかけになっているのは,やはり去年の6月30日に出ている政府の見解だと思うんですね。その中でICTをどのようにと言われているかというと,地方在住者,有職社会人,社会人に対する教育にICTを普及させるということが書かれていますので,やはりこの二つを焦点にして,そこに有用になるような形で結論を導くということがこの会議の役割かなと。それから,地方在住者については,特に地域適正配置という法科大学院の設置のときの理念がありまして,それをどのようにして,この現状においても法科大学院がその場になかったとしても,やはり法曹を目指す人たちへの道筋を付けるということが法曹養成制度の具備すべき条件であると考えられていることから,こういった文言が入ったんだと思うんですね。表現自体は,言い方を変えるということは非常に重要というか,もう少しキャッチーな方がいいというのはおっしゃるとおりだと思うんですけれども,理念的にはやはりその部分というのを十分に踏まえた上で議論するべきかなと思っているところです。
今,皆さんの御意見を伺っていて,最初の政府決定で求められているものと,それから法科大学院の授業自体を改善する,ICTを使ってよりよいものにするということと,二つ焦点が入ってしまっていると。ICTを使うことによって両方可能なんですけれども,一応,政府見解に基づいてこういった会議が設けられているということを考えると,今のところ,法科大学院の中の一般的な授業の改善の中でのICTの活用というよりは,やはり地方在住者とか社会人の方々がより学びやすい環境,法曹を目指しやすい環境にするということを大前提というか,大きなテーマとして据えて,その上で議論を展開すると。その中にはもちろん,普通の法科大学院の授業でもよりそれは改善されるようなテーマは一杯出てくるので,それは付言的に,こういったものは一般の授業でも使われることが望ましいというようなことが触れられていけば,有効な結論になっていくんじゃないかと思います。
この会議自体の役割をどこに置くかということになるんですけど,ただ単にICTを普及させるということではなくて,その前に付いていた地方在住者,有職社会人というか,直接の政府の決定の文言はちょっと忘れたんですけれども,その文言を余り動かさずに考えた方がいいのではないかと思うところもあります。


【樫見主査】  はい,ありがとうございます。もともとのこの会議の設置の段階でこの文言が使われておりますので,もしほかに適切な言葉がないのであれば,逆に,地方在住者とはどのようなものかということの定義付けを明確に入れた上で使うと。本日の資料の中で前回の御議論でありました資料3ですか,資料3のところで,その他,ここに書いてありますが,「恐らく遠隔地にいて,周囲に法科大学院がない者」というような定義付けがあります。これをもう少し定義文言にふさわしいものに変えて,定義付けをある程度明確にした上でこのまま文言を使うという形で整理させていただいてよろしいでしょうか。いや,もっとほかにいい言葉があるというのであればあれですが。はい,どうぞ。


【石井委員】  今,確認しましたら,法曹養成制度改革推進会議の報告書の中で「地理的・時間的制約がある地方在住者や社会人等に対するICT」と書かれてので,多分そこのやつをこのまま使われていたと思いますけど,ここの文言では。なので,やっぱり地理的制約とかというぐらいが考えられる一つの言葉じゃないかなと思います。


【樫見主査】  距離の問題だけではなくて,実は時間,交通機関の関係もありますので,地理的・時間的制約があってとか,そういったのをまた,事務局にお考えいただいて,次回からはこの「地方在住者」という文言はそのまま使って定義を明確にしておくという辺りで整理させていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは,この点について,1番目の普及させる目的のところでありますけれども,ここはおおむねこのような趣旨になろうかと思います。
はい,どうぞ。


【中川委員】  今回の資料4の1と2の関係を少しお尋ねしようと思っていたんですが,1が目的で,2が手段ということになるんでしょうか。2の方の遠隔授業は,恐らくは基本は法科大学院の教育レベルといいますか,その確保というところが比較的多いのかなと思ったんですけれども,今の1の書きぶりだとそこは必ずしもはっきり出されてないように思うんですね。隠れているという感じなんですけれども,「FD活動や修了生支援,継続教育」というよりも,恐らく喫緊の課題というのが法科大学院の水準維持ということだと思うんです。恐らく2はそれがメーンだと思うんですけど,一番肝心なところが出てない気がします。他方で,先ほどの推進会議決定は,必ずしもよく分からないんですけれども,地方在住者や社会人が法科大学院で学ぶ機会を適切に確保するということと法科大学院の水準を維持するというのは,関係するのか,しないのかというところが非常に微妙な感じもします。


【浅野専門教育課長】  この文言については,こちらに出席されている先生方の学校も,地方のロースクールがどんどん募集停止をせざるを得なくなってきている状況の中で,そういった地方の方々がきちっと法曹を目指すためにはどうしても大都市圏に出てこなきゃいけなくなってしまっている状況になりつつあると。そこをしっかりとサポートするような形でのシステムがとれないかということだと思います。そういう意味では,中川先生御指摘のように,やっぱりまずは継続教育とかそういうことではなくて,法曹になりたいと思っている人たちが,地元に最近までロースクールがあったにもかかわらずなくなってしまって,遠くまで行かないと法曹の資格を取れない状態になっているということを解消するということが,まず第一の目的だと思います。やっぱりそこはしっかりと見据えるべきだと思いますし,朝田先生からもお話がありましたように,いろいろ遠隔の連携もやったわけですけど,システムが悪くて教育効果が上がってなかったのか,それともコンテンツの問題で,地方の場合は法律基本科目のいい先生を全部そろえるというのはなかなか難しいということなのか。そうするとやっぱり科目の抜け穴ができてしまうし,そこがなかなか合格しないという状況にあるということで,コンテンツの方にも問題があるということであれば,そのコンテンツの中身をどういうふうに共有したり配信していくかということも考えなきゃいけないと思いますし,正にシステムとコンテンツの教育効果についてきちっと法曹になれるような教育を提供していけるかという観点から,是非御検討いただければと思っております。


【樫見主査】  ありがとうございます。 そうしますと,このICTを活用した教育を普及させる目的の中には,表題に「法科大学院教育」というのが書いてあるので,ここのところは抜けたかと思いますけれども,今御指摘ありましたように,法科大学院教育における,地理的・時間的において法科大学院教育を受けることができない地方在住者あるいは有職社会人の学習機会の確保,かつ,今御指摘ありましたように,学習機会を確保するだけではなくて,与えられる教育内容そのものの質も確保した上でICTを活用した教育を普及させると。恐らくこの2点が目的に入ってくるかと思いますが,このようなことでよろしいでしょうか。文言につきましてはまた,事務局の方にお任せいたしますけれども,ただ単に機会を確保するだけではなくて,面接授業に匹敵しうべき,正にそこが一番問題かとは思いますが,そのような教育をICTの活用で可能なんだと。どうすれば可能なんだということが次に出てくるわけですが,それがやはり目的の中に入っているということで。では,ICTを活用した教育を普及させる目的のところは,このような2点に絞った形でまとめさせていただくと。また,こういう点もというのであれば,次回以降,もう一度きちんと詰めて議論させていただくと。方向性はこのような形でよろしいでしょうか。 はい,どうぞ。


【宇加治委員】  宇加治です。今,整理されたところで非常に明確になってきたんじゃないかと思っています。
一つ強調しておきたいことは,私は日弁連推薦委員という立場でこの会議に来ていますけれども,私自身は福岡で弁護士をしています。福岡県には法科大学院があり,九弁連管内にも法科大学院があるわけなんですけれども,全国各地を見ると,自分の所属する弁護士会や弁連の管内地域に法科大学院が1校しかないとか,なくなるというところが現に出てきているんですよね。法科大学院は法曹養成のための教育機関であり,法曹界は要請された人材を受け入れる側です。受け入れ先である法曹界が法科大学院を支えようという気持ちを失うと,この制度は基本的にもたないと考えています。そして,弁護士は全国各地で活動していますので,各地域の法科大学院がきちんと教育機能を果たしつつ,地域の法曹基盤の整備に寄与ができなければ,弁護士会として法科大学院を支えていきましょうという方向性が維持できなくなるおそれもあると思っています。ここにいらっしゃる委員の皆さんは,その点はしっかり意識はあると思いますけれども,きちんと確認をしたいと思います。
そしてまた,例えば社会人など,いろんな事情で時間の制約がある中で夜間の法科大学院に行きたいとか,社会人をしっかり受け入れてくれる法科大学院に行きたいという方たちもいるはずだと思うんですよね。そういう人たちを法科大学院できちんと教育して送り出すことが,多様な人材を法曹界に送り出す意味でも非常に大切なことだと思うので,当たり前のことなんですけど,そこをしっかり確認をしていただいた形で先の議論を進めていければなと思いました。


【樫見主査】  ありがとうございます。先生のお話の中には,例えば地方に法科大学院があるところはそこで学んだとか,あるいは場合によっては弁護士会とか連携をして,弁護士会のFDといいますか,研修とか,そういうことも含まれているという趣旨に考えてよろしいんでしょうか。


【宇加治委員】  本質的には学生をきちんと教育して,法曹として送り出していくための教育機関というのがまずベースにあると思います。ただ,それだけでなく,法曹養成の教育機関が地域にあること自体が,その地域の法曹基盤を支える一つの柱になるはずだと私は考えておりまして,その意味では,例えば地域の弁護士会であったり,裁判所であったり,検察庁であったりにも,法科大学院でしっかり教育をしながら研究もできているんだねということを認知してもらうことができるし,また,実務家と法科大学院が交流をすることによって,法科大学院での教育活動や研究活動にもいい形でフィードバックができていくといいかなと。法科大学院と法曹界との相互理解があることが,法科大学院の地域での信頼性を増すことになると思うので,それは付随的にできるといいなと思っていますし,現状,九州はそういうことをやっています。


【樫見主査】  ありがとうございます。今おっしゃられたところは,恐らく地方在住者や有職社会人の学習機会の確保というのは,大きな枠で言えば,地方における人材養成ですよね。つまり,法曹養成という人材養成の拠点を確保するという点をおっしゃっておられると理解してよろしいですか。


【宇加治委員】  結構です。


【樫見主査】  そういった視点も少し文章の中に入れ込む。もちろん,ここに入っていると。学習機会の確保というのは当然それが入っているのですが,地方における法曹養成といいますか,人材養成の拠点を確保すると。全国,地域配置の問題ございますけれども,そういった趣旨のものが入ることが望ましいと,こういう御意見かと思いますが,その点いかがでしょうか。はい,どうぞ。


【中川委員】  先ほどの目的,どこら辺まで考えるかなんですが,ロースクールの教育の質の確保ということであれば,ロースクール間で遠隔授業をやる,それをいかにきちっとやるかなんですけれども,ロースクールがなくなった地域の人にロースクールの授業をということになると,例えば法学部と,例えばどこかの大学の法学部の場所を借りて神戸大学のロースクールの授業をやるということは,多分全部の科目をやらなきゃいけないという非常に壮大な話になりかねないんですけれども,そこまで考えるのか。それとも,差し当たりロースクールが遠いかもしれないけれども,ある程度の範囲に1校あるだろうと。そこに来てもらえれば教育は確保できるんだというところに収めるのか,それはどちらなんでしょう。どこまで大きなことを考えなきゃいけないかということなんですけど。


【樫見主査】  どうぞ。


【宇加治委員】  私がイメージしているのは,今まで法科大学院がなかったところに新たに作れというのはなかなか難しいと思うんですけれども,少なくとも,募集停止はしたけれども,まだ法科大学院としては残っている,教育はしているところがきちんと教育拠点として機能すれば,かなり地域の支えにはなるんじゃないかと思っています。ですから,募集停止にした法科大学院が,「募集停止になりました,もう入学者はいません,在校生もいません,閉めますね」ではなくて,せっかくそこで作った教育資産をどうやって維持できるのか,回復できるのかということを,検討すべきではないかと思っています。九州ですと,今,九州・沖縄と言っていますけれども,福岡と沖縄にしか学生募集している法科大学院はなくて,熊本と鹿児島は募集停止してしまいました。それでは果たして九州の法曹養成機関は「いや,福岡と沖縄にあるから大丈夫ですよ」という話なのかというと,それは多分違うだろうと私自身は思っています。そういうことを考えると,例えば島根であるとか,そういうところも,やはり何らかの拠点として残ってもらいたいと思っています。多分に私の希望が入っていますけれども。


【樫見主査】  はい,ありがとうございます。


【朝田委員】  島根の話が出たので,どうもありがとうございます。先ほどいろんな御意見やら,浅野課長もおっしゃっていましたけれども,確かに,募集停止になった以降,地方での法曹教育について,地元の方々からも大変いろんな意見が出てまいりました。単に弁護士会だけじゃなくて,経済界も含め,自治体も含め,なくなることについては本当に地元の方々,大衝撃で,それで,その後,我々が議論したのは,大変厳しくなる中で,そのまま復活できるのかどうかということで考えると復活できない場合が考えられますよね。そうしたときに,実質的に法曹養成の場を残す,そういう方向性,何かないかなということでいろいろ考えたというのが正直なところなんですね。そうした場合,これまで司法制度改革の審議会のところでも法科大学院制度でいろいろ議論されている中で,通信制のことも議論していることがあったように記憶しているんですけれども,正にそういう話を浅野課長からも教えてもらったような時期がありましたよね。であるならば,何らかの形で通信制,遠隔的なものを使いながら,島根大学としてどういうふうに関わりながら実質的に法曹養成の場を残すか,そういうのを議論しようかなということで,文部科学省の専門教育課の方々にもそういう意見を言いながら,それで立ち上がったセンターがあるんですね。それが山陰法実務教育研究センターというセンターで,そのセンターを利用して文科省の方からも2か年度予算をもらって,どういう方向で考えたらいいかというので検討してきたのは事実です。ただ,結構大きな問題であるので,1大学ではいかんともしがたいので,地方国立大学を中心として募集停止になってしまったそれぞれのところ,募集停止になってない琉球大学もおられましたけれども,地方国立大学の法科大学院が抱えている悩みですね。そこのところで議論してきたのは間違いのない事実です。
そういうところの背景がいろいろあって,多分そういう我々の募集停止になったところの法科大学院の議論,それをいろんな形でいろんなところから見られていたんじゃないかなと,ちょっと自慢めいた話になりますけれども,そういうこともあって,こういうことが更に検討されるようになったんじゃないかなと思うんですね。だから,正に先ほど浅野課長がおっしゃった,本来,私の方からそういう経過説明等しなきゃならなかったと思うんですけれども,だから,そういうこととの関連でこの目的であるというところだろうと思うんですね。あとは,それを本当にこのICTを使って遠隔授業で,先ほど主査がおっしゃられましたように具体的な論点を詰めていく,もうそこまで来ているのかなと。それが先生がおっしゃった問題とも関連して,理念的な話にもつながってきますけれども,話になるのかなと思いますけれども。

【樫見主査】  ありがとうございます。
この点については,結局,ICTをどのような形で活用する,例えばそれに手を挙げるかどうかという問題も係ってくるかと思います。なので,当然,背景,この会議の手段という背後には,今,朝田委員とか宇加治委員がおっしゃられたような観点があろうかと思いますけれども,目的のところは余り具体的なところには踏み込まずに,正に一般的な形で,地理的・時間的に障害があって法科大学院教育を受けられない方,それから有職社会人の学習機会の確保ですとか,あるいは法科大学院教育に匹敵する教育を受けられるようにするためにはどうすればいいのか,そういうことを考えるという辺りで目的のところは少し一般化させていただければなと思っております。
我々がこの会議体で提示する問題について,あ,こういう形でできるんだということで,もしかすると募集停止をされた大学が,こういう形なら自分たちも手を挙げることができそうだと。これ,やはり資金面ですとか大学自体の組織の問題もございますので,目的を決定してしまいますと逆になかなか手を挙げられないという場合もあろうかと思いますので,目的のところは少し広めにさせていただければと思いますが,中川先生,いかがでしょうか。


【中川委員】  目的が広いのはもちろん賛成です。今,朝田委員や宇加治委員がおっしゃったのは,簡単に言うと,もう放送大学の法科大学院を創るということですよね。それが一番簡単な方法じゃないですか。


【浅野専門教育課長】  正に中川委員がおっしゃられたように,じゃあ,どういう形であれば,質を担保しながらこのICTを活用して地方の――私は,地方のロースクール,別に募集停止を再考するとかそういう話をしているわけじゃなくて,地方の学生,法曹を希望する方が,どういう形であれば質を担保して法曹になっていけるのかということが,どの程度このICTで実現できるのかということを是非御検討いただきたいと思っているんです。というのは,私も6年前に先生方の法科大学院はほとんど見て回りました。いわゆる第3ワーキングという,ちょっと悪名高いワーキング・グループでございましたが,そのおかげで,各大学で頑張っている姿を見ながらも,やはり教員の先生方の授業の質や,それから学生の答案や試験問題も全部拝見させていただきまして,今,新司法試験が成功しているところは,旧司法試験と違って予備校に行っても新司法試験には受からない。法科大学院の授業との関連性が非常に高いということが言われています。そういう意味では,やはり質の高い授業を提供しない限りは法科大学院の学生が司法試験に受からないという仕組みになっているので,これをどうやって,ICTというものを活用してどの程度までだったらそういうことが実現できるのかということを是非お考えいただきたいなと思っております。また結局,ICTを活用してそれに入ったはいいけれども,授業料も払って司法試験に受からなかったら元も子もない話なので,是非その点,御検討いただければと思っております。


【樫見主査】  はい,どうぞ。


【恒川委員】  私も御意見を伺っていてだんだんイメージが湧いてきたような気はするんですけど,以前,二つ以上の法科大学院同士で連携とか連合すれば,修了に必要な単位全部を遠隔授業でやるということもできたかもしれないですけれども,もう既に募集停止をしているところに対して法科大学院の方から授業を配信していただくというふうになりますと,先ほど中川委員が言われたように,全部は到底無理だろうと思います。そうすると,例えば1年次の基礎科目とか一定の法律基本科目の単位数を設定して,そこは地元で,地方で遠隔で授業を受けられると。しかし,2年次,3年次は必ずどこかの法科大学院に行って,そこで対面授業を受けて修了しなさいとか,そういうような仕組みというふうなものを考えた方が,導入の可能性は高まるんじゃないかと思うんですね。高等教育に必要な要素を全部遠隔で肩代わりできます,教育効果十分ありますというふうに言うのは,ちょっと冒険的なところが出ざるを得ないと。
ただ,そうすると,目的としてそれじゃ不十分だという考え方もありますけれども,今回,資料4の1で文章化されているICT活用の教育目的は,非常に過不足というか,過剰な書き方が避けられていて,「教育を普及させる」とか「学習機会の確保」,「学生に対する学修支援」という言い方にとどめておられるので,そういうものであれば,今言ったような形の方が現実的なのかなというふうには思います。ただ,経験を重ねていって,もう少し,例えば3年課程であれば2年とか1年半とか,そういうふうに地方で遠隔で受けられる授業の範囲とか単位数というものを加減していくということは,将来的にはあるかもしれないけれども,そういう折衷的な形と言うとあれですけれども,そういうものの方が具体化のイメージはしやすいのかなというふうには思います。
以上です。


【樫見主査】  ありがとうございます。
時間も迫ってまいりましたけれども,あとお一方ほど,もし……はい,どうぞ。
【藤本委員】  ちょっと今,目的のところに集中した感じがありますが,少しほかの部分も含めての発言になりますけれども,一つ最初の方で議論になっていました対面授業と,それから遠隔授業あるいはオンデマンド授業というものの対比ですね,私はこの対比自体がかなり乱暴だと思うところがあります。例えばソクラティック・メソッドを個別取り上げたとしても,大学によって,また教員個人個人のやり方によって,多人数が参加する会話形式で進められる方もいらっしゃれば,一問一答形式で順番に当てられる方まで,いろいろなバラエティーがあるわけですね。そういう多様性も考えて行く必要があります。また,もう一つ例を挙げれば,例えば授業後の質問ということについても,授業が終わった後に15分,20分,壇上で1人ずつ答える方もいらっしゃれば,それに関してはメールでやってくださいという人もいれば,オフィスアワーの時間に来てくださいと言って,とっとと帰る方もいらっしゃる。これもやはりいろんなバラエティーがあるわけです。その点から設置基準ということを考えていきますと,この設置基準というのはかなり外形的なところに着目したものになっています。
それを踏まえて,遠隔だとかオンデマンド授業ということを考えた場合に,この設置基準がまずクリアであることが大切かと思いますが、私個人は,事務局で準備していただいた資料等から見ましてもこれはかなりクリアできるだろうと思います。これはたとえ遠隔授業であっても,その場で,これはもう先ほど石井委員がおっしゃったように技術の進歩もありますので,同時・多方向的にコミュニケーションがとれる技術があり,無料で使えるものもあります。その無料で使えるようなクラウドサービスを使うことが先ほど言った設置基準に合致するのかどうかといったようなことをやはりきちんと考えていく。具体的にこういうやり方がありますよということを提案していくのは,やはりここの限られた時間の中での審議では難しいだろうと思いますし,各法科大学院が個別にいろいろ工夫もされてきた蓄積もあって,それを生かす形で促進をしていくといったような視点がやはり大事だろうと思います。ですから、単に対面授業等に対応するのであれば,その外形的なところで,これはきちんと設置基準その他の告示をクリアするのですよと示す。そのクリアするための最低限のシステムというか,こういうのがありますよということは言ってもいいかと思いますが,それを超えたところで実質的なところで議論を始めてしまうとなかなか,画一的な形でやらなければ遠隔授業を認めませんよというような議論になってしまいかねないので,ちょっと最後に発言させていただきました。


【樫見主査】  ありがとうございます。
いろいろ御意見賜りまして,有意義な議論ができたかと思います。次回以降につきましては,どのような形で皆様から御意見を頂くのか,あるいは論点ごとに詰めていくのかということにつきましては,また事務局において議論を整理していただくように作業をお願いしたいと思います。
それでは,最後に,事務局から次回の会議の予定等について御説明をお願いいたします。


【真保専門教育課専門官】  次回の会議の日程については,先生方の御予定を調整させていただきまして,事務局よりまた改めて御案内させていただきたいと思います。


【樫見主査】  本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係)