資料3 基本的な考え方

平成27年10月7日

基本的な考え方(たたき台)

(1)大学の機能強化の推進
 今日,社会が直面する変化及び未来に対する不安とそれに伴う閉塞感を打破し,我が国が学術・科学技術,産業・経済の面での国際的な役割をより積極的に果たしていくため,イノベーションの礎となる知とそれを担う人材育成をさらに一段と強化することが求められている。「日本再興戦略」(平成25年6月)においては,「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上を入れる」ことを目標としており,我が国の大学の国際的研究・人材養成拠点としての整備・強化が求められている。このため,国公私立を通じて卓越した研究教育拠点を整備するため,基盤的経費の確保とともに,研究大学強化促進事業,スーパーグローバル大学等事業「スーパーグローバル大学創成支援」,博士課程教育リーディングプログラム,あるいは卓越大学院(仮称),卓越研究員制度など現在構想中の施策を含めて,大学の機能強化を総合的に進めていかなければならない。
 また,国立大学については,各国立大学の分野ごとの「ミッションの再定義」を経て,「国立大学改革プラン」(平成25年11月)に基づき,改革のための諸施策が講じられてきている。「特定研究大学(仮称)」は,こうした国立大学改革の一環として,未来の産業・社会を支えるフロンティアの形成という観点から,「日本再興戦略改訂2015」(平成27年6月)「国立大学経営力戦略」(平成27年6月)において,その創設が示されているところである。
 これらのことをふまえて,以下に,国際的な研究・人材育成拠点の形成,目指すべき「特定研究大学(仮称)」*のイメージについての基本的な考え方を示めす。

(2)国際的な研究・人材育成の拠点形成
 我が国の大学は,例えば,グローバル化を含む社会経済の急速な変革を踏まえた人材育成の強化,世界の有力大学と比較した際の研究論文の質及び量の充実,質の高い教育研究活動を進める上で必要なガバナンス及び財務基盤の確立,教員の意欲と能力を評価する人事評価の仕組みを含む学内評価の枠組みの構築等に課題があり,国際的な大学間競争において遅れをとりつつある。
 一方,世界の有力大学は,優秀な人材を引きつける魅力ある教育研究環境を有し,国際的な研究・人材育成拠点として卓越した教育研究活動を展開しているが,それらの大学は,以下の4つ観点で,それぞれの強みを発揮できる条件を備えているものと考えられる。

 1卓越した教育研究活動の質の向上を目指す目標設定,
  →国際的な研究・人材育成の拠点としての卓越した教育研究目標の設定
 2ガバナンスの強化,
  →卓越した教育研究活動を実現するための,組織・ガバナンス体制の構築,人事給与システム改革
 3厳格な評価システムの確立による教育研究活動の不断の改善,
  →厳格な教育研究活動の評価とその恒常的な改革との結合
 4教育研究活動における大学の自律性を高めるための環境整備
  →1から3を実行していくために必要な環境整備(財務基盤の強化等)

 こうした状況のなか,国立大学においては,これまでも国の関与の下で大規模基礎研究や先導的研究教育等を実施する役割を担ってきたことから,国際的な研究・人材育成の拠点の形成についても先導的な役割を果たしていくべきことが急務とされている。このため,「国立大学経営力戦略」で示されたところに従い,これまでの研究・人材育成の実績を踏まえたうえで,上記の4つの観点において国際的な拠点形成に向けての組織的取組を進めていく大学について新たな仕組み(「特定研究大学(仮称)」)を設けて改革を促進していくことが必要である。
  「特定研究大学(仮称)」については,今後,必要な制度整備を進めながら,大学の申請により,文部科学大臣の指定を行うこととする。指定された国立大学は,これまでの国立大学法人制度と国立大学法人評価とは別の枠組みの中で支援・評価を行い,高い目標設定と高い自由度・自律性の中で,教育研究活動の充実を図り,世界の有力大学の中での研究・人材育成面での拠点性を高めていくこととする。

(3)目指すべき「特定研究大学(仮称)」のイメージ

1卓越した教育研究活動の質の向上を目指す目標設定

 「特定研究大学(仮称)」となる国立大学は,新たな学問分野の開拓や,ベンチャー創業等のイノベーションの創出等の「知の創出機能」やそれらを担う「人材育成機能」を発揮するため,大学自らが伍していこうとする海外大学を目標としてベンチマークをすることや,データ等のエビデンスを明確化した上で,教育研究活動や産学連携等において,明確かつ意欲的な達成すべき目標を設定する。
<目標の例>(検討素案) 
目指すべき教育内容や研究内容の具体的計画や数値目標等を海外大学の状況等も踏まえ設定。

【大学全体】
・大学全体としての国際的な評価指標の向上(例えば,世界ランキングで○位以内を目指す)
・10年後に社会(海外を含む)の変革の担い手として活躍している卒業生の割合○%を目指す ほか

【研究分野】
・国際的に卓越した研究の推進(論文数,論文引用数等の目標設定)
・分野融合・新領域の開拓に向けた目標設定
・国際展開(海外の有力大学との連携,国際研究拠点化などの目標設定)
・経済・社会・文化・政策等へのインパクト(社会貢献)の観点から,強みを活かした研究戦略,具体的な計画に基づく目標設定(人文社会系を含む) ほか

【教育分野】
大学院:卓越大学院(仮称)の形成に資する分野の強化(海外の大学や企業の提携等を含めた目標設定)
     専門職大学院の強化(高度専門職業人養成の具体的な目標設定,分野別評価指標の向上)
     博士号取得者の育成に関する目標設定(多様なキャリアパスの確保とそのための能力の育成等) ほか
学部  :学生の主体的な学習を通じた社会経済の仕組みや課題を深く学ぶカリキュラム,授業方法の開発と推進による教養
            教育の強化
     社会変革をもたらす起業家教育・デザイン教育の充実
     課題解決型学習,中長期インターンシップや海外留学の充実などによる多様な学習経験
     これらを踏まえ,学生の学習経験,成果の体系的な把握に基づく目標設定と海外の専門家を含めた評価 ほか

【産学連携】
 経済団体や企業等との産学連携のための協定締結の件数の増加
 外部との共創,評価の現れとして,外部資金の獲得や人材の流動化を拡大するための目標設定
 大学発ベンチャーの件数等の目標設定 ほか

【管理運営体制】
 教育,研究,社会貢献の機能強化を図るための体制整備(運営にあたって,各ステークホルダーとの議論を通じ,そのニーズを考慮する仕組みの構築)
 学長のリーダーシップ等ガバナンス体制の確立
 人事給与システム改革 ほか

2ガバナンスの強化

 国際的な研究・人材育成拠点たる大学の形成のためには,その大学がもてる力を最大限発揮するとともに,学内外からの信頼を得て,優秀な人材や多様な資源を惹きつけていけるよう,強力なリーダーシップの下,組織としてガバナンスを確立する。
 また,学内にどのようなリソースがあるかをIR等により把握・分析し,教育研究活動の卓越性強化のためのマネジメント戦略の策定と,学内の最適な資源配分,組織見直しを実現する。
<検討例>
○経営を担う人材,経営を支える専門人材の育成
○人材の流動化や外部人材の活用等(研究支援者のキャリアパスも含む)
○財務情報も含めた,必要な情報の可視化 ほか

3厳格な評価システムの確立による教育研究活動の不断の改善

 国立大学法人の評価に関しては,国立大学法人法において,国立大学法人評価委員会が設置されている。国立大学法人評価委員会は,国立大学法人等の各事業年度に係る業務実績に関する評価及び中期目標に係る業務に関する評価を行う。また,文部科学大臣は,中期目標の設定や中期計画の認可など法律で定められた事項について,国立大学法人評価委員会の意見を聴くこととなっている。
 また,国立大学評価委員会が,国立大学法人等の中期目標に係る業務の実績を評価するに当たっては,ピアレビューとしての大学の教育評価及び研究評価を行ってきた実績を有する独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に教育研究評価の実施を要請し,その結果を尊重することとなっている。
 なお,学校教育法第109条においては,大学の行う自己点検・評価に加え,大学の教育研究等の総合的な状況について政令で定める期間ごとに,文部科学大臣の認証を受けた者による評価を受けなければならないとされている。

 世界に伍していこうとする大学に関しては,教育研究活動の卓越性をさらに追求していくために必要な大学の運営の在り方について,海外大学の実情も踏まえながら,より公正な評価を行うことによって,強化していくことが必要である。
<検討例>
○大学自らが伍していこうとする海外大学を目標とすることにより,大学が達成すべき基準を設定し,それを元に学内で第三者の参画を得た公正な評価を実施する。
○研究戦略を策定した分野について学外や専門家の参画を得た研究評価を行う。
○国立大学法人評価においては,外国人委員を任命し,この公正な学内評価を活用して評価を行う。
○教員業績(教育業績,研究業績,社会貢献業績等や,教育,研究,社会貢献におけるエフォートの配分)の可視化を行う。
  ほか

4教育研究活動における大学の自律性を高めるための環境整備

 上記1から3の取組を通じて,国際的研究・人材育成拠点としての国立大学の機能強化を行うに当たっては,国際的に遜色のない形で,大学が持てる資源を最大限に活用できる環境を整備することが必要である。

 法人化以前の国立大学は,国立学校として文部科学省の行政組織の一部と位置付けられてきた。そのため,国の予算制度や国家公務員法制の下で文部科学大臣の広範な指揮監督下におかれていた。平成16年度の法人化にあたって,1各大学に独立した法人格を付与するとともに,2各大学の目標,計画を策定し,これに基づいて運営すること,3予算,組織等の規制は大幅に縮小し,大学の責任で決定すること,4能力・業績に応じた給与システムを各大学の責任で導入すること,4自己収入拡大など経営努力にインセンティブを付与することなど,大学の自律性が確保される仕組みに基づき制度が構築された。

 自律性が確保された中で,各大学は,経営努力を重ね,特に財源の多元化を図ることにより,財務基盤を強化してきているが,意欲的な目標達成のためにさらに強化していく必要がある。
 他方で,現在の国立大学法人に関する法制度上の制約等を見直し,より大学が自ら改革を進めやすい環境を整備する必要がある。具体的には,大学の有するリソースを活用し,教育研究活動に必要な資金を自らの努力で更に獲得できるような環境整備を,制度改正を含め,進めていくこととする。
<検討例>
○出資範囲の拡大(現在は,TLO,VCに限定)
○自己資金等の運用の拡大
○収益事業の実施 
 また,高い能力を有する役職員に対して,高い給与を支給できるよう,あわせて制度改正を行うことも検討する。


* 「特定研究大学(仮称)」の名称については、今後ふさわしい名称を検討。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課

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電話番号:03-5253-4111(代表)
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(高等教育局国立大学法人支援課)