所得連動返還型奨学金制度有識者会議(第10回) 議事録

1.日時

平成28年6月3日(金曜日) 13時~15時

2.場所

一橋大学一橋講堂 特別会議室101、102

東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター1階

3.議題

  1. 所得連動返還型奨学金制度について
  2. その他

4.出席者

委員

小林委員,赤井委員,島委員,濱中委員,樋口委員,不動委員,吉田委員

文部科学省

常磐高等局長,松尾大臣官房審議官,井上学生・留学生課長,川村学生・留学生課課長補佐,八島学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

髙橋理事長代理(日本学生支援機構),大木理事(日本学生支援機構),藤森奨学事業戦略部長(日本学生支援機構),宗野顧問弁護士(日本学生支援機構)

5.議事録

【小林主査】  それでは,定刻になりまして,皆様おそろいですので,ただいまから所得連動返還型奨学金制度に関する有識者会議第10回を開催したいと思います。皆様,御多忙中にもかかわらず御参集いただきまして,誠にありがとうございます。


なお,本日,阪本委員は欠席でございます。


それでは,早速ですが議事に入ります。議事概要の確認についてですが,資料1,第9回議事概要(案)の内容を御確認ください。修正意見等ございましたら,6月10日金曜日までに事務局まで御連絡願います。その後,私と事務局で修正内容を調整させていただいた上,議事概要として確定させ,文部科学省ウエブサイトに掲載させていただきたいと思います。


それでは,議事を進めます。前回の会議,第9回では,第1次まとめの中で,今後検討すべき事項について,皆様から自由に発言を頂き,多数の御意見を頂いたところです。


本日は,前回の議論を踏まえまして,個別の事項ごとにデータ等を事務局で準備いたしましたので,それに基づき引き続き議論を深めてまいりたいと思います。


それでは,事務局から本日の資料について御説明をよろしくお願いいたします。


【川村課長補佐】  それでは,資料2,それから資料3-1から7までに基づきまして御説明をさせていただきます。資料2にございます,今後検討すべき事項につきましては,先ほど主査から御説明ございましたとおり,第1次まとめで記載をされました,今後検討すべき事項について,それぞれ項目ごとに記載をしたものでございます。資料2の点線の枠内が第1次まとめの記載内容となっております。まず,マル1として,貸与総額の上限設定でございますけれども,これにつきましては検討事項といたしまして,現行の貸与制限に係る制度,また,貸与額・返還額を踏まえた上での上限設定をどうするかというという検討。また,社会人の学び直しや通信制の大学進学に当たっての観点からの検討が必要ということでございます。


前回の御意見等を,この太枠の中に記載をいたしております。まず,現行制度でございますが,無利子奨学金につきましては,異なる学校種について1回ずつ貸与を受けることができまして,加えて,いずれかの学校種で1回のみ貸与を受けることが可能となっております。前回会議では,まず奨学金制度全体に係る意見といたしまして,学び直しの場合,最初に貸与した後に再度入学するまで,ある程度返還がされているという中で,債務残高(元金)で制限を掛けることを検討すべきではないか。また,アメリカにおいては,累計の貸与総額は決まっており,この範囲で貸与ができる仕組みとなっているという御意見。また,イギリスとオーストラリアにつきましても,貸与総額が大きくなり回収ができないことが問題となっている。日本学生支援機構の奨学金は税金が入った形での補助・支援であり,無制限に貸与を認めるべきではない。何らかの制限を掛けるべきではないかという御意見がございました。


また,新所得連動返還型制度との関係につきましては,現在の貸与額を新所得連動型で返還した場合に,返還期間がどの程度掛かるのかというシミュレーションを踏まえて検討すべきという御意見がございました。


続きまして,次のページ,マル2でございますけれども,関連しますので引き続き御説明させていただきます。貸与年齢の制限でございます。これにつきましては,現在の貸与者の年齢別の人数,また,諸外国の状況を踏まえた上での制限の検討,また,現行制度におきましては上限が制限されておりませんので,中高年で貸与を受けた場合に,返還が終了しないケースが生じる可能性を踏まえて検討する必要があるということでございます。


前回の中では,現行制度として年齢による制限は行われていないということ。御意見といたしましては,例えば70代で奨学金を借りて,返還できるのかということについては疑問ではあるけれども,生涯に一度は高等教育を受ける機会を保障する観点からは,年齢ではなく,貸与総額や年数で制限を掛けるべきではないかという御意見。また,雇用保険制度においては年齢要件を外すことになっているので,公的な制度で年齢制限とすることは問題ではないかという御意見。さらに,高年齢の方の将来的な所得の獲得を目的としていない学習に対しては,奨学金をローンで貸与するということについては,返還可能性の観点から制限を掛けることも検討すべきではないかという御意見がございました。


これに基づきまして,資料の方を御覧いただければと思いますけれども,資料3-1から3-4までで関係するデータ等をまとめております。まず資料3-1でございますけれども,これは返還のシミュレーションということでございまして,大学の学部を22歳で卒業いたしまして,賃金構造統計調査に基づき,初年度年収271万から徐々にベースアップをした場合,どのような返還額,また,返還年数になるかというシミュレーションでございます。1年目,7,000円ぐらいから始まりまして,大体9年目か10年目ぐらいで1万4,000円程度になり,その後,16年目,2万円程度まで返還額が上がりまして,これで15.6年で完了するというのが,フルタイムで勤務をされている方の返還のモデルシミュレーションになるということでございます。


続きまして,資料3-2でございます。こちら少し字が細かくて恐縮でございますけれども,前回御意見の中で,学校種をまたいで奨学金の貸与を受けた場合に,返還総額がどの程度になるかということを考慮して検討すべきではないかという御意見がございました。この表につきましては,左のところに学部マル1,大学院というのがございます。これは,まず学部大学院に進学をした後,返還1年目,返還2年目ということで返還を開始していき,返還の6年目から再度,学部に入学をして,この学部のマル2というところでございますけれども,入学して4年間の奨学金の貸与を受けた場合に,どのような返還額となるのかというシミュレーションでございます。


まず,学部マル1と大学院合わせた返還額,また,返還残額でございますけれども,返還1年目が終わった時点で,おおむね438万円というような債務残高(元金)となってまいります。これが返還5年目まで参りまして,その後,入学をして,在学猶予がございますので返還10年目で学部マル1,大学院,それから学部マル2というそれぞれの返還を開始したということになってまいりますと,合計で返還月額は4万1,371円,返還残高が518万円余りというようなことになってまいります。これをずっと返還を行ってまいりますと,返還24年目で返し終わるというようなことでございます。これは定額返還型での返還例ということでございまして,新所得連動型で先ほどのモデルケースで参りますと,返還10年目のところでございますけれども,一番下の合計額のところ,580万円といった金額になってまいります。


貸与総額で上限を設けるといった場合には,この債務残高(元金)でどのような制限を掛けるかということが議論になってこようかと思われます。  続きまして,資料3-3でございます。資料3-3は中高年齢で貸与を受けた場合に,新所得連動返還型に基づきまして返還をした場合に,どのような返還額となってくるかという資料でございます。前提条件といたしまして,同じ収入が65歳まで続くと仮定いたしまして,65歳以降は最低返還月額の2,000円となったというモデルで試算をしております。


仮に,40歳で学部に入学をして4年間貸与を受けた場合でございますけれども,ケース1,年収が仮に300万円であった場合には,44歳から返還が開始いたします。定額返還の場合は,ここから15年で返し終わるということになりますので,59歳で返還が終わるという計算になりますけれども,新所得連動で年収300万円の場合には,返還月額が8,900円となってまいりますので,返還期間が長くなります。65歳以上は2,000円の返還月額であるといたしますと,79歳の時点で返還が終わるということで,おおむね20年程度,返還期間が長くなるという試算になってまいります。


仮に,年収114万円以下の非課税の場合には,44歳から開始したとしても85歳時点で,260万円借りた場合,返還残額が158万円ということで,これぐらいが返し終わらないということになってまいります。


その下が50歳から,また60歳から貸与を受けたケースでございますけれども,50歳から貸与を受けた場合には,年収300万円で85歳でも91万円の残額,114万円以下の場合には85歳で182万円の残額となってまいります。60歳では,85歳時点で198万円の残額,年収114万円以下でありますと200万円程度の残額ということで,260万円に対してこの程度の未返還金が生じるということでありまして,仮に死亡いたしました場合には,死亡免除ということで国費での負担となってまいります。


続きまして,資料3-4でございます。これは韓国の奨学金制度で,年齢要件を設定している例でございましたので,こちらの御説明をさせていただきます。韓国におきましても所得連動型の制度がございまして,学部生のみが対象となっておりまして,35歳以下の学生が申し込むことができるということになっております。また,所得連動ではない直接ローンにつきましては,55歳以下ということでございまして,韓国におきましては,いずれも年齢制限がございまして,特に所得連動型では厳しい年齢要件があるというような実態となっております。


それでは,資料を元にお戻りいただけますか。先ほどのマル2の貸与年齢の制限の下のところに,論点ということで,主査とも御相談の上,こちらの貸与年齢また貸与総額について,このような論点があるということを記載をさせていただいております。新所得連動返還型による返還を認めるに当たり,貸与開始時の年齢や,貸与額による制限を設ける必要はないかということで,先ほど御説明いたしましたとおり,中高年齢で返還を開始した場合には,新所得連動型による返還では貸与額の大部分が返還されないこととなる可能性がございますので,年齢による制限を掛ける必要があるのではないかという観点でございます。


その下の矢印のところは,複数の学校種で貸与を受けた場合の貸与総額の関係でございますけれども,新所得連動型の返還につきましては,債権ごとにそれぞれの返還額を設定することとなりますので,例えば学部と大学院で貸与を受けた場合の返還額,これは学部のみで貸与を受けた場合の2倍となってまいりますので,貸与総額の多寡は返還額には大きく影響はしないのではないかと考えられます。


また,新所得連動返還型のみならず,制度一般における貸与総額,また貸与年齢の制限につきましては,奨学金制度全体に掛かってまいります事柄でございますので,制度変更に伴う課題を踏まえた上で,引き続き文科省,日本学生支援機構において検討することが適当ではないかということで記載をさせていただいております。


続きまして,マル3の学生等への周知の方法・内容,こちらにつきましては,前回の会議での御意見の中で,高校の進路指導担当の先生への説明会,全都道府県での開催が必要ではないか。また,ホームページだけではなく,SNSの利用による広報,また,問合せの体制の充実,パンフレットでの伝え方については,インフレ,デフレ等の考慮についても工夫が必要であろうという御意見。また,新所得連動型の導入の考え方についても,十分な説明が必要ではないか。高校の先生への説明の資料として,返還のモデルケースを示してイメージをしてもらうことが重要ではないかという御意見がございました。


続きまして,マル4でございますけれども,海外居住者の所得の把握・返還方法ということでございまして,こちらにつきましては,マイナンバー制度が,海外に移転した場合にこれを使って所得を把握することができない仕組みとなっております。このようなことを踏まえまして前回の会議では,返還者が海外に移住した場合には,基本的に定額返還での返還とすべきではないかという御意見がございました。


続きまして,有利子奨学金の導入に係る検討でございますけれども,こちらにつきましては資料といたしまして前回,貸与人数ですとか,財政構造,利子額のシミュレーション等をお示ししたところでございます。また,マル6のデフレ・インフレ等の経済情勢の変化に伴う見直しにつきましても併せて御意見がございましたので,こちらと併せて前回会議での御意見ということでございまして,奨学金制度全体に係る意見といたしまして,現在の有利子奨学金,名目金利による利子となっておりますが,インフレ・デフレによる影響を考慮し,実質金利を含め金利をどのように考えるか検討すべきではないかという御意見。


また,オーストラリアやイギリスでは返還額自体が物価スライドとなっている。アメリカでは物価スライドをしないという御指摘。また,日本学生支援機構の奨学金の返還額,これは現在物価スライドはしない仕組みでありますけれども,奨学金制度全体について,インフレ・デフレをどのように考慮するかということになってまいりますと,非常に大きな議論が必要であるという御指摘がございました。


続いてマル7の,既に返還を開始している者等への適用でございます。これにつきましては検討課題といたしまして,返還猶予また減額返還制度による救済措置との関係の整理,適用する場合の範囲,対象者,返還金の減額に伴う財源の確保,事務コストの増加,マイナンバーの取得方法等が検討課題として挙げられるということでございます。


次のページに参りまして,まず現行制度でございますけれども,現在でも減額返還制度等により,経済的理由により返還が困難な方に対しては,所得に応じて返還負担を軽減する措置が図られております。前回会議での御意見といたしまして,新所得連動返還型制度を導入いたしますと,返還金が減額することが見込まれますが,既に返還を開始している方に適用しますと,直近で返還額が減少してまいります。このため,新たな予算措置がなければ翌年度以降の無利子奨学金の貸与者を減少させざるを得ないという課題が生じるという御意見がございました。


また,現在在学している人については,さかのぼって適用できる仕組みを検討すべきではないかという御意見。さらに,既に返還している方,在学中の方に適用するとなってまいりますと,その業務量が増大することが予想され,現在の人件費等の制約の中で実施することは困難ではないか,無理に導入すると事故が発生するリスクが高まることが懸念されるというような御指摘がございました。これに基づきまして,資料3-5の方を御覧いただけますか。資料3-5につきましては,現在の返還者に新所得連動返還型制度を適用した場合に,どれだけ返還金が減額するかという試算でございます。現在,無利子奨学金の返還者155万人いらっしゃいますけれども,新所得連動返還型を適用いたしますと,返還月額が現在よりも下がる返還者が,このうち83万人いると推計をされます。これらの方々が全員,新所得連動返還型に移行したと仮定いたしますと,約600億から700億円程度の返還金の減額が単年度で見込まれると推計をされます。


この推計におきましては,賃金構造統計調査に基づき各年齢での推定所得を算出して設定しておりまして,この推計におきましては,返還者が被扶養者である場合,これは1次まとめで,被扶養者である場合は扶養者の年収,収入,所得に基づいて返還額を設定するということでございましたが,この推計の中では扶養者の所得に基づく返還額の算出は考慮いたしておりませんので,これを考慮いたしますと,ここから減額分は縮小すると思いますけれども,このようなシミュレーションで参りますと600億から700億円程度の返還金の減が見込まれるということでございます。


これを前提といたしまして,資料をお戻りいただきまして,この事項に係る論点といたしまして,既に返還を開始している方等に対する新所得連動返還型制度の適用につきましては,返還金の減額が見込まれますので,実施する場合には対象者の絞り込みや,他の返還負担軽減策と併せた検討が必要ではないかということでございます。


現在におきましても返還負担の軽減については,返還猶予制度,減額返還制度等により一定期間,所得に応じて返還額がゼロ円又は定額返還型の半額となる負担緩和策が講じられております。新所得連動返還型制度を既返還開始者等に適用するに当たっては,これらの負担緩和策措置を講じても,なお返還が困難な方を対象とすることが考えられないかということ。


また,減額返還制度が現在ございまして,2分の1に経済困難等の場合に減額する制度でございますが,この制度の活用によって現役世代の返還開始者の既返還開始者の負担緩和を図ることを検討することが考えられないかということがございます。


続きまして,その他ということでございまして,前回お示しした論点,事項以外での御意見ということで,今後少子化が進む中で,奨学金を必要とする学生数はどのように推移をしていくかというような資料。また,進学率が上がると,所得が低い方の進学が増えるので,奨学金の必要度も上がってくるのではないかという御意見がございました。


その中で有利子奨学金,これは希望者で基準に合う方は全員採用している一方で,無利子奨学金拡充をしてきておりまして,有利子は減少してきていますけれども,無利子の希望者で基準を満たしているにもかかわらず採用されていない方,残存適格者と呼んでいますが,そのような方が生じているという現状がございます。これに基づきましての資料でございますけれども,資料3-6を御覧いただけますか。こちらは18歳人口と高等教育機関への進学率の推移の資料でございます。現在,平成27年度までの進学の状況が出ておりまして,青の色が付いている部分でございますが,27年度で18歳人口が120万という数字でございます。この中で進学をしている方というのは,上の方で進学率1ということでございますが,大学,短大,高専,専門学校合わせて79.8%ということでございます。これは18歳人口に対する進学者の割合でございます。


18歳人口は今後一定期間横ばいになりますが,その後,減少を始めまして,平成43年度には99万人まで減少することが予測をされております。現在の120万人から99万人まで減少するという予測でございます。


また,資料3-7を御覧いただけますか。資料3-7は,これまでの奨学金の事業の予算額,また貸与割合の推移でございます。平成16年度以降のデータとしてお示しをいたしておりますけれども,貸与人数,無利子・有利子合わせた数といたしましては,16年からずっと増加傾向にございまして,平成25年度をピークといたしまして26年度以降は若干減少傾向にございます。


下の青いところが無利子でございまして,無利子の貸与者につきましては一貫して増加をいたしておりまして,これは有利子から無利子への流れの中で,無利子の拡充を図っているということでございます。


一方,有利子につきましては,希望者が減っているということもございまして,25年度の人数をピークといたしまして,28年度まで減少をしてきております。下のところに全学生数に対する貸与割合も併せてお示ししております。平成16年度におきましては,無利子が11.6%,有利子14.2%で,合計25.8%の学生が,この学生支援機構の奨学金の貸与を受けていたということでございまして,これが一貫して上昇してまいりましたが,おおむね平成24年度で37.4%となった後は横ばい傾向ではなかろうかと思われます。現在28年度は38%の学生が貸与を受けているということでございます。  したがいまして,今後この奨学金の貸与人数がどの程度となるかということにつきましては,18歳人口の減少がどうなるか,また,進学率がどうなるか,この貸与割合がどうなるかということが考慮すべき要因となってこようかと思います。


それでは,恐縮ですが,資料お戻りいただきまして,最後の論点でございます。1枚おめくりいただきまして,保証制度についてでございます。保証制度は原則として機関保証ということで,前回の昨年度末の1次まとめでお取りまとめいただいたところでございます。新所得連動返還型につきましては,所得が低い場合は返還期間が長期化いたしますので,人的保証である連帯保証人の返還能力が返還終了まで確保されないといったケースが増えることが懸念されます。


次の段落で,保証制度を機関保証とする場合には,このような懸念が解消されますとともに,政府の財政負担は軽減される一方で,毎月おおむね2,000円から3,000円程度の保証料を全ての学生が負担することに対する理解,また,機関保証による保証料の多寡に留意が必要である。その上で保証制度の在り方としては,原則として機関保証とする制度に移行することが望ましいということでございました。


また,この場合,新所得連動返還型のみならず,定額返還も含めて移行するかどうかということでございますけれども,仮に定額返還で人的保証を選択可能といたしますと,卒業時に新所得連動返還型に変更した場合に,一括して保証料を支払う必要が生じますので,このようなことから新所得連動返還型のみならず,定額返還型を含む無利子奨学金制度全体の保証制度について,原則として機関保証とすることを検討することが求められるということとなっておりました。その際,機関保証への加入を促進・導入する方策についても検討が必要であるということでございました。


そのようなことに基づきまして,次のページでございますけれども,検討課題といたしまして,直近の平成29年度の新規貸与者で,新所得連動返還型による返還方式を選択する場合の保証制度の取扱いが問題となってまいります。原則として機関保証とする方法,手続につきまして,予約採用,現在平成28年の6月でございますけれども,正に予約採用の申込みが行われているところでございます。この申込みの段階では人的保証又は機関保証のいずれかを選択することになっております。その上で,返還方式については現時点では定額又は新所得連動の選択はございません。


今年の10月に予約採用の候補者が決定いたしまして,決定通知が送付されます。来年の4月,進学した方については進学届が提出されまして,ここでいま一度人的保証又は機関保証のいずれかを選択するということと併せまして,定額返還型又は新所得連動返還型のいずれかを選択することとなります。その後,貸与が開始されまして,機関保証を選んだ方については毎月の貸与額から保証料を差し引いた額が振り込まれるということでございます。また,貸与終了時に定額返還型又は新所得連動返還型のいずれかを最終的に選択をするという流れとなってまいります。


ここで,平成29年4月の段階で新所得連動返還型を選択する方について,保証制度をどうするかということが問題となってまいります。案の1といたしまして,新所得連動型を選択する方については,機関保証を選択するよう促す注意文を記載した上で,機関保証と人的保証の選択制となるとするという案。これは機関保証の促進といえるかと思います。


案の2といたしましては,進学届提出時に新所得連動返還型を選択する方については,機関保証のみを選択できる取扱いとするということで,これは機関保証を義務化するというような案になろうかと思います。


また,こうした場合に,貸与終了時になってまいりますと,案の1の場合には進学届提出時に定額返還型を選択して,終了時に新所得連動返還型に変更を希望する場合,これは保証制度の変更は生じませんけれども,案の2で進学届を提出した場合に,人的保証かつ定額返還型を選択をして,貸与終了時に新所得連動への変更を希望する場合には,保証料を一括して支払い,機関保証に加入した上で変更を可能とする取扱いとなってまいります。


さらに,定額返還型を含む無利子奨学金制度全体について,原則として機関保証とするということにつきましては,奨学金制度全体の保証制度に係る事柄でございますので,また,制度変更に伴う課題を踏まえた上で,引き続き文科省及び日本学生支援機構において検討することが適当ではないかということで記載をさせていただいております。


説明は以上でございます。


【小林主査】  ありがとうございました。


いずれも前回いろいろな御意見を頂いたところなのですけれど,今日改めて幾つかシミュレーション等のデータを示しましたので,もう一度,最初から検討していきたいと思います。特に,最初の1番と2番はかなり関連しております。1番の場合,貸与総額の上限設定ということなのですけれど,この場合,二つ意味がありまして,一つは検討事項の2番目にありますように,社会人の学び直しや通信制に進学に当たっての経済的支援の必要性ということがあるわけですけれど,これが特に2番目の年齢の問題とかなり関わってきているわけです。


それからもう一つは,複数の奨学金を借りた場合にどうするかというような問題です。ですから,1番と2番併せて御検討いただきたいと思いますけれど,まず,その前に,特に資料等で御質問等ございませんか。よろしいですか。また後で戻っていただいても結構です。


論点といたしましては,特にシミュレーションでも示されましたように,かなり高年齢で借りた場合に,返済できない,返還できないというようなことがシミュレーション上は出てくるわけでありますけれど,そのような年齢制限を設けることが適当かどうかということが2番目の一番大きな重要な問題です。


もう一つの考え方といたしましては,年齢制限そのものではなくて,1番の貸与総額の方で調整を取るというようなことを考えてはどうかという御意見があったかと思います。私も全部調べ切れたわけではないのですが,基本的には,諸外国の例を見ますと,韓国の例ではこのような形で年齢制限を掛けておりますけれど,余り年齢制限を掛けているという例はないようです。正確に調べたわけではありませんので,飽くまで推測です。


それから国によっては,年齢によって確かに貸与総額のある程度の制限を掛けているということはあるような,今まで調べた範囲では,そのようなこともありましたので,それらを参考にしていただければと思います。


いかがですか。


【濱中委員】  ここで,議論しなければいけないのは,所得連動返還型を選択できるか,できないかについて年齢の制限をするという点に限った方がよろしいのですか。奨学金は現行では年齢に関係なく貸与しているわけですから,定額返還型であれば現行どおり年齢に関係なく貸与が受けられるという点は変更せずに,今回は所得連動返還の適用に限って議論するという理解でよろしいですか。


【小林主査】  そこは難しい論点です。そこまで議論を拡大することが,この検討会議で求められているかどうかという問題だと思いますけれど,そのあたりは事務局はいかがですか。


【井上学生・留学生課長】  基本的には,まずは所得連動についてということで,基本的にお考えいただければと思います。


【小林主査】  確かに,ほかの論点も後で奨学金制度全体に関わる論点がかなり出てくるのですけれど,今回のこの会議においては,そこまでは検討課題ではない。ただ,そのような課題があるということは,この会議で指摘しておくことは必要だろうと思います。


いかがですか。


【宗野顧問弁護士】  今,定額では考慮しないというお話だったのですけれども,返還方法の話なので,最後に例えば定額か所得連動かを選択するとした場合に,それまでに貸した総額が,例えば所得連動の場合は制限するとした場合,定額になったらどうするのだと,所得連動を選ぶことで貸与総額が変わるとなると,両方同じようにしておかないと,定額の場合は年齢制限を設けないけれど,所得連動は設けるとなった場合に齟齬(そご)が出てしまうので,そこは余り無視はできないのかなと今,思いました。


【小林主査】  もし年齢ないし貸与総額で制限を掛けるのでしたら,定額の場合も同様にすべきだということですね。


【宗野顧問弁護士】  はい。


【小林主査】  そうしますと,必然的にその問題を考えなければいけないということになるのですが,それも含めて御意見いかがですか。


【樋口委員】  今,年齢制限を設けるかどうかといったときの考え方というのは,中高年になって借りては,返せなくなるリスクが高いからということだと思いますが,そのほかの理由というのは何かあるのですか。やり方としては,例えばリスクが高いのであれば保証料のところで割引,保証料に差をつけるというような方法もあったりするわけですが,片方で年齢によって切るということは,ある意味では年齢差別という可能性が出てきて,それを今まで奨学金の方は一般の奨学金の方でやってこなかったということで,ここで改めてやるという何か強い根拠があればよろしいかと思いますが,どうも今の方法を覆すだけの,変えるだけの根拠というものが,今のリスクの問題以外にないのかなと。そうすると,必然的に方向は決まってくるのではないかと思います。


【小林主査】  もう一つのケースとして考えられるのは,最初の方にありますけれど,異なる学校種で,例えば,引き続きこの場合,学部の場合というケースでシミュレーションを出していますけれど,これは別に年齢とは関係なく起きることなので,そうすると貸与総額が非常に大きくなってしまう,返し切れるのかということで,これは年齢がある程度若ければ返せるというシミュレーションになっているわけですけれど,そうしますと,その問題は一応置いておける。そうすると,今,樋口先生がおっしゃったように,問題は年齢制限を設けることが果たして妥当かということになるかと思いますが,御意見いかがですか。


【不動委員】  実際に今,奨学金を借りていらっしゃる方で,年齢構成別に,実際高齢の方がどのくらい借りていらっしゃるかというのは分かるのですか。ほとんどが18歳の方ではないかと思うのですが。


【小林主査】  それは資料がございますので,事務局の方から御回答お願いいたします。


【川村課長補佐】  済みません,こちらの主要事項とございます参考資料がございます。その一番後ろに,前回の配布資料を添付させていただいております。一番後ろの方に付いております資料3-2というものがございます。A4縦の一番後ろのところに入れております資料3-2というものでございますけれども,そこで平成26年度の新規採用者の年代別の件数というものがございます。第一種,第二種それぞれございますけれども,基本的には10歳から19歳という枠の中の方が多くおりまして,20歳から29歳という方も多く,40歳以上の方につきましては,数字としては504名が26年度に新規で貸与を開始されております。二種につきましては743名が貸与開始しておりまして,この中には50代,60代,70代の方もいらっしゃるということでございます。


【赤井委員】  追加で,実際,死亡時に返せなくなった人が何人かと,その合計で税金で埋めた額を教えてください。


【小林主査】  今の点は,すぐ分かりますか。


【赤井委員】  分からないですか。また次回までに分かれば,教えてください。


【小林主査】  次回までに事務局の方でよろしくお願いいたします。


【赤井委員】  いろいろ論点が出たと思うのですけれど,実際借りた分は自己責任で返すというところを,どこまで徹底するのかということと,あとは,死亡したという,しようがないというか,努力していたけれども死亡してしまったような人のときに,返せなかったという事実をどう見るのか。


それからもう一つは,財政的なところの負担になると思うので,それをどこまで財政で負担すべきと見るのかという,そこのバランスを考えないといけないと思うのですけれども,そこのところはそれぞれで考え方が違うと思うのです。


あと,樋口先生がおっしゃったように,保証料で差をつけるとか,あとは資産を見るのはなかなか難しいのかもしれないのですけれど,死亡したときには相続税のようなもので資産把握はある程度するわけなので,例えばそのときに資産を持っているような人からは,相続税と同じような形で,これは大きな改正になるから難しいかもしれないのですけれど,ある程度そこから返してもらうというようなことをすると,お金持ちの人がお金を持って子供には残せるけれど,国には返さずに税金で埋めるようなところの違和感のようなものは,もう少し幅広く考えると調整できるのかなと思いました。  以上です。


【小林主査】  ありがとうございました。今日,お二人から新しい提案として,保証料をもう少し考えた方がいいということと,資産から返還ができるのではないかというようなことが挙げられたわけですが,ほかの委員の方はいかがですか。


【川村課長補佐】  済みません,死亡免除と,それから心身障害の場合の免除の人数と合計額でありますけれども,無利子貸与者につきましては平成26年度実績で703名の件数,それから額といたしましては8億7,000万円程度ということでございまして,現在は返還期間が15年又は20年というような形で決まっておりますので,それが新所得連動になって返還期間が長くなってまいりますと,返還し切れない方が生じて,この金額は上がってくることが予想されます。


【小林主査】  ありがとうございました。


御意見いかがですか。いずれにいたしましても,諸外国の例を見ても,韓国は年齢制限を掛けているといいますか,年齢によって使えるローンが違うようですけれど,それ以外は余り年齢制限を掛けている例はないようなので,先ほど申しましたが,イギリスで貸与総額に制限を掛けている程度なので,多分年齢で制限を掛けるということはいろいろ問題があるのではないかという意見だと,私の方では理解いたしましたが,2番目の貸与年齢の制限ということについては,いかがですか。


【樋口委員】  1点目のお話と関連するのですが,年齢という個人の持つ属性に応じて,その制度を利用できるか,できないかということを決めることは,今,年齢ということが問題になっていますが,例えば男女の問題についても生存率は明らかに違うとか,家督能力,その後,違ってくるという形で,貸倒れになるリスクというのは違っていると思うのです。そうなってきたときに,外見的な特性を持つことによって差をつけるということは,ゲイリー・ベッカーのいう統計的差別理論ということなので,個々の主体としては,貸手としては合理的なのですが,今度それを社会としての合理性から考えると,これは差別であるというような統計的にあって,要するに平均値に基づいて寿命であるとか,あるいは貸倒れのリスクであるとか,そのようなものによって判断していくというのは社会的に差別なのです。


ですから,企業とか,あるいは融資する側(がわ)からすれば,これは合理的であっても,社会的にはそれは認められないというような展開が論理的には成立してくる可能性があるわけで,ここでそれを議論してしまうと,年齢によってそれだけ差があるから,それは駄目なのですと,一定の年齢を超えたら借りられませんとやるのは社会規範としてどうなのかという問題も出てくると私は思います。


個別の金融機関に対しても,たしかそのようなところについての指導をしているはずでして,それは問題が起こるのではないかと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。確かに教育機会が属性によって差別されないというのは,そもそも大前提ですので,そのための奨学金ですから,その意味では確かに年齢による制限というのは原則的には好ましくないと思いますが,いかがですか。


【濱中委員】  その点については,おっしゃるとおりです。最初に質問したのは,定額返還の形であればこれまで通り貸与を受けられるわけで,その分は残した上で,所得連動型についてのみ,返還が終わらないだろうという人に制限を掛けるかどうかに限るのかを確認したかったからです。貸している側の責任のようなものを問われるとすれば,制限を設けることもしようがないかなとは思います。


今のところ,資産を全く考慮していないので,リタイアした方が奨学金を借りて,定期的な収入が年金しかないような状態だと,非常に返還額が安くなってしまいます。もちろん授業料を払えるだけの余裕はなければいけないわけですけれど,奨学金を受けてずっと学び続けて,あとは2,000円ずつ返還するような仕組みになってしまって大丈夫なのかというところは少し気になります。貸与しないということではないですけれど,所得連動を選べるかどうかについては,制限を掛けるのは仕方がないところもあるかなとは思います。


【小林主査】  そのような御意見なのですが,いかがですか。


【島委員】  規範の話でいえば,樋口先生のおっしゃるとおりだと思うのですけれども,その規範に従った場合に,財政的な負担が恐らく増えるであろう。そのことについて,国民として了解可能なのかどうかというような,両方の観点から議論しないと,規範であるが故に年齢というものを考えるのはまずいという片方だけになると,ある意味,責任感のない議論になってしまうのではないかという気がいたします。


【樋口委員】  社会的コストを,今の意味で機会の均等を与えるということによって軽減するというようなことですから,それに伴うコストの部分というか,実際の負担の部分というのは,この社会が負わなければいけないということで,この場合は個々の負担者ではないと思います。


そこからは当然国庫による負担というものが,その分発生するというような,そのやり方しか方法としては考えられないのではないかと思います。


【小林主査】  ほかに御意見ございませんか。


【赤井委員】  樋口先生のおっしゃるとおりなのですけれど,国庫の負担がどのぐらいの,国民が負担できるものなのか,そのような年齢問わず学ぶ機会を与えることのコストを,どこまで負うのかというところは一つあって,それがみんなが納得できるレベルであればいいと思うのですけれど,そこが難しいのと,先ほども議論に出たように,多くの資産を持っていて,幾らでも自分の学校の授業料も払っていけるような人が,今,所得がないので奨学金をもらってというような,一種のモラルハザード的なことが生じる制度は何とかできないのかなという気持ちはあって,そこは資産を把握するしかないと思うのですけれど,先ほど言ったように,死亡時であればある程度ほかの部署で把握しているのであれば,そことの連動というような可能性はないのかという気はします。


以上です。


【小林主査】  ありがとうございました。


ほかに御意見ございませんか。


【不動委員】  先ほど数字を頂きまして,40歳以上の方は全体の0.3%だというところでもありますし,そこだけを排除するというのも,99.7%の方は普通に返すわけですから,ですから年齢のところは排除しないにしても,40歳以上の方であれば上限を決めるとか,余りにもたくさん貸しても,多分返せない,若しくは返さないという方が現れてくる可能性もありますので,貸出しの上限を決めるとか,そのような対応ができるのではないかと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。


いかがですか。これは今までも,この会議で盛んに出てきた議論で,要するに,できるだけ機会を広げるという話と,国庫の負担をどのあたりで折り合いをつけるかという問題になってきております。


原則的に年齢の制限を付けないということでは,各委員それについては特に反対はなかったと思いますけれど,ただ,現実の問題といたしまして,そうすると回収コストが下がってしまうということになりますので,そこをどうするかということなのですけれど,これは今日,保証料を上げるとか,あるいは貸与総額について制限を設ける,あるいは資産まで含めて考えてみたらどうかというような御意見を頂きましたので,引き続きこの問題は,こればかりやっているわけにもいきませんので,このあたりで今日は議論を終了させたいのです。


【赤井委員】  一つだけ。先ほど樋口先生がおっしゃっていた規範というか,あるべき姿のようなものは,年齢に応じて貸与総額に制限を設けるというところはオーケーなのですか。年齢で渡す,渡さないは問題だから,できるだけそれはやめようという話ですけれど,その論理で展開していくと,年齢に応じて制限するとか,年齢の保証料も差別といえば差別になるのですか。


【樋口委員】  そこのところは制度設計をどうするのかと,実は後の保証料のところをどのように考えているのかと,むしろ後で質問しようかと思っていたのですが,この制度だけで保証を決めていくのか,一般のほかの奨学金も含めて全体で保証料というものを決めていくのかどうかというようなところ。そして,それぞれの返せなくリスクというものは個別に違ってくるわけです。そのときに個別に保証料というものを決めてくるのかというところと関連してくると思います。


そこのところについては,正に貸倒れのリスクをどこに反映させるのかというところで,もし全員同じ保証料ですということであれば,その部分については貸倒れのリスクが高まる部分というのは,国庫から取るしかないだろうということになると思います。


【赤井委員】  でも,明らかに年齢とリスクは相関します。


【樋口委員】  年齢とリスクは相関しますが,その相関というものがどの程度であるか。若い人は貸倒れのリスクはそれほど低いのかということを,我々はまだ見ていないわけです。そこのところについては,どうなのですか。


【赤井委員】  でも,年齢とリスクに相関があるときに,リスクに応じて保証料を取ると,結局年齢について差別しているという見解になってしまうのであれば,またそちらも厳しくなります。


【樋口委員】  だからリスクをきちんと反映した形になっているか,外見で年齢というものによって一律ぽんと決めてしまうのかというようなところだろうと思います。


【赤井委員】  では,年齢とリスクがそこで相関はあって,リスクに応じて保証料を上げるのはオーケーなのですか。年齢に応じて。


【樋口委員】  基本的な考え方は,そこは個人のリスクに応じてです。


【赤井委員】  社会の平均値ではなくて,個人のリスクということですか。


【樋口委員】  それは正に統計的差別理論の基本ですから,統計ですから,そこで平均というものを出してくるわけです。


【赤井委員】  個人の中身をチェックするということですか。分かりました。


【小林主査】  ありがとうございました。


それにつきましては,先ほど基本的な数字を出してもらいましたけれど,年齢によって変化がどのようになっているかとか,そのあたりのことを次回までに調べておきたいと思いますので,時間の関係で,また保証料のところでもこの議論が問題になるということでもありますので,今日のところは,このあたりにしておきたいと思います。


全体といたしまして,次の問題で学生等への周知方法についてですが,これは前回いろいろ御意見を頂いたのですが,これについてはいかがですか。何か付け加えるべきような御意見はございませんか。


これは私の個人的な見解になるかもしれませんけれど,この間も様々な形で情報のギャップというものが,思いのほか大きいということが私の実感です。これは是非新しい制度を導入するに当たっては,引き続き十分な周知を行っていただきたいということで要望したいと思います。それから,もし必要でありましたら,それに対して予算措置とか手当てをすることも考えていただければと思います。


よろしいですか。


それから,次の問題もなかなか難しいわけで,これは海外でも問題になっているわけで,検討事項としては,海外居住者からマイナンバーによる所得の把握はできないわけですから,どうしても所得連動返還型をしたいということになれば,その方の所得を出してもらうしか方法がないということになりますけれど,それも非常に面倒なことなので,定額返還型でどうかということが前回のときの議論だったのですが,これについてはいかがですか。


【赤井委員】  前回の議論で思ったのですけれど,海外に移住したというのは,短期も長期もですか。行ったり来たりするということはどうですか。


【小林主査】  いろいろなケースが考えられるわけで,例えば口座は日本にあるようなケースも,リレー口座をそのまま残しているような方もいらっしゃいますし,完全に海外移住してしまっているというケースも当然ありますので,様々だと思いますけれど,それらを含めて検討していただければということです。


【赤井委員】  だから,途中でまたスイッチと考えると,定額と所得連動が途中でまた変わったときにも,うまく制度がスムーズになるように,まさに先ほど言っていた制度のすり合わせが大事です。


【小林主査】  現在のところは,定額から所得連動という変更は認めないということで進んでいますので,ですから,どちらかを選んでもらうということにはなると思うのです。もし,所得連動型を選べるとしても,変更は認められないということになるかと思います。


むしろ,これは日本学生支援機構の方にお伺いしたいのですが,例えばマイナンバーによる把握はできなくても,本人が所得を申告すれば,証明を出せば,所得連動を選択することは事務的に可能なのですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  国によっては,為替の相場とか,そのようなものを反映した計算をされているケースもあるやには聞いておりますけれども,単純に言って事務的な負荷は相当なものは必要になるだろうと思います。


【小林主査】  日本円で所得を計算することが非常に難しいこともあり得るということですね。


【濱中委員】  それ以前に,全ての所得を申告していることの保証が全く得られないので,所得連動型の適用はかなり厳しいと思います。ですから海外移住者の方は,定額に移行してもらうということしかないかなと思います。


ただ,海外に行った場合にも所得が低くて猶予の申請をすることは現在,可能なのですか。その点はどうなっているのでしょうか。おそらく,建前としては所得を把握するすべがあることになっていると思うのですけれど,参考までに。


【藤森奨学事業戦略部長】  可能な限り,そのような状況というのは斟酌(しんしゃく)して,個々のケースですので,ケースも数も少ないので,そのときの為替等も見ながら認めているケースはあるはずです。


【赤井委員】  海外の大学に留学したとかいうのも,移住になるのですね。もう一つは,海外に行って戻ってきた場合も,定額を1回選んでしまうと,所得連動には戻らないということですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  それは制度としてどうするかということですか。


【赤井委員】  だから,もし行くと定額,帰ると所得のように行ったり来たりするのであれば,行ったり来たりしたときに問題がない制度にしておかないといけない。そこはどうなのですか。


【小林主査】  ですから,基本的にはどちらかしか選べないということになると,定額しかないと思います。


【赤井委員】  定額しかないというのは,所得連動を始めたときには,海外に行くかどうかは分からない。だから選べないということは,1回海外に行って定額であれば,帰ってきてもずっと定額ということなのですね。


【小林主査】  そこまではまだ議論していなかったので,済みません,検討させてください。


【赤井委員】  でも,その辺までは議論しておかないと,この制度の話になります。


【松尾大臣官房審議官】  そこは逆に言うと,決めの問題だと思いますので,例えば,そこは少しスキップするとか,戻れるようにするとか,そこは正に決めではないかと思うのですけれど。


【赤井委員】  難しいところです。行った人が帰ってくるのか,ずっといないのかでは違います。


【小林主査】  それに関連して思い出したので,付け加えておきたいのですが,海外に留学している方で,なかなか連絡が取りにくいというケースが多いのは,返還の問題だけではなくて,例えば猶予申請を出すなどを本人が忘れてしまったりすると,もうどうしようもないわけです。そのようなことで,留学ですから在学猶予に本来当たるはずなのですけれど,それができなかったとか,そのようなケースも聞いていますので,そのあたりを含めて,先ほどの周知の問題なのですけれど,まだ周知の方法を考えるべきだとは思います。


済みません,それは確かに決めの問題なのですが,基本的には定額しか,今のお話ですと制度としては海外の場合は取り得ないという理解でよろしいですか。帰ってきたときどうするかというのは,少し検討させてください。


それから,次の大きな問題なのですけれど,有利子型に導入できないかということで,今現在は有利子の方が圧倒的に貸与者の数は多いわけですから,それができるかどうかということは非常に大きな問題になるのですが,これはなかなか現在の段階では利子の問題でありますとか,そのようなこともありますので,これから少し考えていかなければいけないというところで止まっているということなのですが,これも将来の検討課題ということで,無利子で新所得連動型を始めて,その様子も見ながらというようなことになるかと思います。


それから6番目のデフレの問題も非常に大きな問題なのですけれど,これは事務局からの説明にもありましたように,そもそも物価スライド制のようなものを今までは全然入れていないわけでありますし,そうすると多分これも単なる所得連動型だけの問題ではなくて,奨学金制度全体をどのように設計するかという非常に大きな問題になりますので,ここでは,このような問題があるということだけ指摘して,新たな検討課題ということにしたいと思うのですが,いかがですか。


【島委員】  デフレ・インフレの問題は,とても大きな問題だと思います。それに対する一つの取り得る手段が,ここに書いてある感じだと連動してスライドさせるというやり方が案にあるわけですけれども,もともとの我々の報告書のときのイメージは,何年かごとに見直しをするというイメージだったかと思うので,そのようなオプションもあるということを確認,共有させていただければと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。確かに細かな調整はこれから実際に新しい制度で動かしていきながら,どうしてもしなければいけない部分というのは出てくると思いますので,そのあたりを含めまして将来の検討課題と置いておきたいのですが,いかがですか。よろしいですか。


それから7番目が,これも非常に大きな問題なのですが,既に返還を開始している者に,この制度が適用できないかということなのですが,これについては幾つか問題があるということが今日示されたわけであります。特に若年層の場合には所得が低いことから,返還額が非常に少なくなりますので,そのまま行きますと非常に大きな負担が生じるおそれがあるというような,資料3-5による説明でありますけれど,一つ考えられるのは,そこで全員に適用するのではなくて対象を絞るとか,そのようなことができるのではないかというようなことであったと思います。


ですから,もう一つ,それに合わせまして減額返還という仕組みが現在もありますので,減額返還をもう少し適用できるようにする,あるいは適用の方法を少し変えたらどうかというような御意見だったと思いますが,これについてはいかがですか。


【島委員】  せっかくこのような形で制度設計をしているわけで,たしか議事録を読んで濱中委員の意見であったと思うのですけれども,現在在学中の学生には当てはめることができないのではないかというお話をされていたように思うのですけれども,これまでの趣旨の機構の制度変更で,ある種さかのぼって適用という形の制度変更ということは経験はあるのですか。何か制度を変更したときに,制度変更した年以降の人たちに,当然,普通は制度変更は及ぶわけですけれども,そうではなくて,過去の経験上ルールを変えた,このルールではなかった,それ以前の人たちに対しても,そのルールを当てはめたというような業務上の経験があるのかどうなのかということをお聞きしたいのです。


【小林主査】  いかがですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  基本的には,例えば複雑な変更のときに,その人がいつ採用されたかというようなことがデータ上分かると,採用されるかどうかということがはっきりするというようなことが必要なケースにおいては,採用年度で分けることもあります。


ただ,直近でいいますと,例えば延滞金の率を変えたりしたときには,過去に採用した方でも一定の時期から以降発生するものについては率を下げますとか,それから,最近の猶予の期間を5年から10年に変えたりしたときについても,これは既に返還している方たちについても適用するというようなことはやっております。


【島委員】  ありがとうございます。


【小林主査】  よろしいですか。


今まで出てきた議論の中では返還年限,これは所得連動型ではない定額型の方ですけれど,返還の年限と割賦額についても見直しを長い間していないので,これについても併せて検討する必要があるのではないかというような意見もあったかと思いますので,これも新所得連動型だけではなくて,全部の奨学金全体に関わる設計も,この際見直すべきではないかというようなことであったと思います。それも併せてここで御議論いただければと思うのです。


どうぞ,島委員。


【島委員】  今回企図しているような形で,ある種さかのぼっての適用をしたときに,新たな予算措置が必要になってくる。これはとても大事なことだと思うのです。ただ,これは一時的に入ってくるお金が減って,減るけれども,後から入ってこないわけではないと単純に考えたときには,予算措置というものは,ある種,真水のものを突っ込むということではなくて,一時的に立て替えるという考え方が正しいのであれば,たしか600億とか700億という話だったかと思うのですけれども,それが真水の600億,700億の負担になるわけではないと考えれば,予算措置の部分も減ってくると考えられ得るのかどうかということを,事務方に説明いただければと思います。


【小林主査】  どうぞ。


【井上学生・留学生課長】  要するに,一時的で将来的には返ってくるというのは,全くそのとおりなのですけれども,ただ,当面,将来的に返ってくるまでの期間も長くなりますので,当面のキャッシュフローを見ると,当初に非常に返還金が下がります。そうすると,基本的には返還金で運営しておりますので,事業規模に非常に大きな影響を及ぼすことになると考えられます。


【小林主査】  これは第一種ですから,国庫です。そうすると予算的に国庫から支出してもらうしかないということになります。


【赤井委員】  運営上のお金の問題はあると思うのですけれど,長期で考えてどうかというところが一番。一方で,資料3-5でしたか,所得が高いところの人は所得連動に移らないという仮定です。移ってくれれば,またそこからも入りますけれど,結局下がる人しか所得連動に移らないから,減らないといけないということです。


確かに,今,減って,運営の問題はあるかもしれません。それは長期的に考えて,幾らコストが更に掛かるのかというところの議論もしておいた方がいいと思います。


【小林主査】  ほかに御意見ございませんか。


【不動委員】  資料3-5で600億から700億の返還金の減となっているのですけれども,どのくらいの方がというのが83万人と書いているのですけれど,実際には今,社会的な問題になっているのは奨学金の返済がしんどいという問題が非常にあって,そのような人たちについては既存の方についても新しい返還制度を認めてあげて,困っていない人については認めないとか,そのようにすれば,ここまでも行かないような気もするのですけれども,どうなのですか。年収的に厳しい方だけに適用しても,このぐらい返還額が減ってしまうという試算なのですか。


【小林主査】  どうぞ。


【川村課長補佐】  この試算につきましては,例えばこの表で参りますと,1万4,400円という金額を定額の方へ返還する場合に,それより新所得連動に移行した場合に返還額が下がる方ですので,例えばこの金額でいいますと,年収410万円ぐらい以下の方になります。このような方々が全て新所得連動に移行したとするという前提でございますので,不動委員がおっしゃる,もう少し厳しい方ですとか,それから猶予を申請をするような方ですとか,年収によって限定すれば,ここまでの金額には行かないというようなことになってまいります。


【不動委員】  ですから,本当にお困りの方というか,返済がしんどいという方であれば,ここまでは行かない,この10分の1ぐらいで済むのではないか。それであれば検討できるのではないかと思いますので,既に返還されている方でも,新しい返還制度というものを認めてあげてもいいような気もします。


【小林主査】  今の議論でいいますと,もう少し精密な推計が必要だということであろうと思いますので,それは次回までにお願いしたいと思います。  それから,先ほど出ました,在学者について適用するということになりますと,これは将来の所得見込みになるわけですけれど,当然年齢が低いですから,かなり最初のうちは低いことが予想されますので,例えば在学者だけに絞った場合に,どの程度の負担になるかというようなことも,併せてシミュレーションを出していただければと思います。


【赤井委員】  超越的ですけれど,新所得連動に全部1本化したらいいのではないですか。できないから,こうなっているのですが,例えば,いきなり無理かもしれないのですけれど,10年ぐらいのスパンを置きながら,新所得連動に1本化していって,10年後は全員というようにしていくと,最後はすっきりするのではないですか。それは先の話ですが。


【小林主査】  まさしく,そうです。選択制にしていくから非常に分かりにくいというところもあります。


【赤井委員】  だから過去の人にも,後で制度を変えるのは法律上どうか分かりませんけれど,10年ぐらいの移行期間を経ながら,10年後にはこちらの方で1本化するとなれば,下がる人もいれば,上がる人もいるということになってくると思うのです。


以上です。


【小林主査】  比較的年齢層が上がっている方は,逆に,全部新所得連動にすれば,返し額も多くなるということはいえるわけですけれど,なかなかそこまでできるのか。


【赤井委員】  上がるのは駄目なのですか。決めてしまっているから,法律上はどうなのですか。


【宗野顧問弁護士】  もともと契約に基づいて返すという約束になっているわけなので,それを一方的に,今のお話ですと,所得の高い方は不利な契約の変更になるわけです。機構側が一方的に周知期間を置いたからといって変更,それはできないので,合意による変更しかできないのです。有利な方では,こちらから言わなくても,やりたいと言ってくると思うのです。ただ,不利になる方向を一方的にというのは,契約で決まっている以上は難しい。


だから,先生がおっしゃるように,周知期間を置いて,将来的に全部,新しい人はみんな所得連動ですというのは可能だと思うのですけれども,過去の分にさかのぼって不利になる人もいるけれども,みんなならせば一緒だというのは乱暴かなと思います。


【赤井委員】  30年ぐらい掛かるということですか。


【宗野顧問弁護士】  統一化するということでしたら。そこは制度次第だとは思います。


【赤井委員】  分かりました。


【小林主査】  ほかに御意見ございませんか。


【島委員】  先ほどの質問は,必ずしもさかのぼって全ての人に適用することが望ましい,そうしてほしいということを言っているわけではなくて,考え方として,このようなことが考えられますという話をしているということを一つ確認です。


もう一つ,仮にさかのぼってやるという話になったときに,現行制度の四つ目の丸,事務作業量が,恐らくとんでもないことになるということは,これは本当に十二分に理解しておかなければいけないし,そのようなものに対する財政的な手当というものが必要になる。


だから,そのような意味でいうと,そのような手当てをするのであれば,実を言うと財源的な負担が掛かるということです。そのようなことも考えなければいけないと思います。


【小林主査】  どうぞ。


【吉田委員】  すみません,論点のところに出ている一つ目のところで,「既に返還猶予制度や減額返還制度で一定期間所得に応じて」という部分です。つまり,現在返還している人たちの中で,このような制度を使っていて,その期限が切れて,なお返還が苦しいというような方たちはどれぐらいいると予想されるのか。その方たちに限っては,このような新所得連動を特例として適用するというようなことも考えることができるのではないか。そうすれば,今,島委員がおっしゃったような事務負担的なものは軽減されるような気もいたします。


それについてはいかがですか。


【小林主査】  猶予が,10年になって,どのぐらいの方が適用しているかというのは,以前のこの会議でも出したと思いますけれど,減額返還についても,どのくらいの方が適用しているかということですね。


【川村課長補佐】  減額返還について,申し訳ございません,数字はございませんけれども,猶予につきましては,前回机上資料でも配布させていただいておりますけれども,例えば今,年数が10年というような上限になっておりますけれども,現時点で10年ほぼ使い切った方というのは,一種奨学金では200件程度でございます。


従来5年以内でございましたので,5年程度使っている方というのは2万人程度ということでございます。


【小林主査】  併せまして,減額返還の対象者,次回まででもいいと思います。分かりますか。どうぞ。


【藤森奨学事業戦略部長】  今,実績で申しますと,減額返還の適用といいますか,申請のあったケース,処理したケースは直近で平成26年度で大体5,500件,27年度で6,000件ぐらい。これが第一種のみでございます。


【小林主査】  一種のみですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  はい。一方で,今,手元に一種,二種別はないのですけれども,猶予というのはもっと桁が多くて,全体で15万件ぐらい,要するに経済困難で15万件ぐらいやっています。年収300万円以下で返しにくいと言っている方が,そのぐらいおられるので,もし既返還者に制度を開放すると,かなりの人数は希望されてくる可能性がある。要件にもよると思いますけれども,そういえると思います。


1年更新ですので,大体400万件弱の人たちの中から,そのような方たちが毎年希望者として出るということです。


【小林主査】  申請ベースだということですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  処理ベースです。猶予を認めた方です。


【小林主査】  申請して,猶予を認めた方について。


【藤森奨学事業戦略部長】  1年ごとの猶予になります。


【小林主査】  猶予自体はかなり件数が多いのですが,それに比べると,減額返還については,今お聞きした範囲では6,000件程度ということで,かなり少ないのですが,これはまだ制度が新しくて周知されていないということもあるのではないかと思うのです。


【藤森奨学事業戦略部長】  現に件数は毎年着実に増えてきてはいるところです。


【小林主査】  ですから,先に申し上げましたけれど,この制度を適用することで,かなりさかのぼって新所得連動型にしなくても,かなりの方については負担は減らせるのではないかということなのです。


【松尾大臣官房審議官】  今,小林先生からもございましたように,どれくらいの規模で本当に真(しん)に困っている方で,現行制度でも使い切って本当に困っている方がどれくらいいるのか,よく精査をした上で,更にここに書いてございますのは,減額返還制度は今,半額になっているのですけれども,例えば所得連動でいいますと,最低金額が2,000円とかそれくらいでございますので,例えばその辺をもう少し柔軟にやることによって,更に既返還者の方についての緩和ということも検討することで,いろいろミックスでもって考えて,今,返還していただいている方への負担感がどの程度減らせるかということは検討するとともに,はっきり申し上げますと,マイナンバーを使うことになりますので,もう1点,今大学に行っておられる方にどう適用できるかというのは,多分時間的な問題も相当考えたら,29年度新しく入る方にマイナンバーを適用して,卒業のときの返還ということになっています。そうすると,タイムディレーがどれくらいあるのかよく技術的に精査をした上で,どのように適用できるか多分検討していかなければいけないと思いますので,技術的な部分と現状と,よく精査をした上で,また御検討いただければと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。確かに状況,エビデンスで見ていくことが非常に重要で,これまでいろいろ頂いた数字というのは,全部延べ数といいますか,一人の方がどうなっているか,例えば猶予を使い切って減額にしているのかとか,その辺のことは細かくは分からないわけですから,両方使っても,なおかつ返せないというような人がどれくらいいるかは,なかなかつかみにくいのですけれど,そのあたりのことをもう少し精査してというお話だったと思います。


ただ,私が確認したいのは,マイナンバーは新所得連動型を採用した方については,当然使えるわけですが,定額返還者については使えないのではないですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  今,これは所得連動返還型の奨学金制度とは別に,それ以前に私どもの奨学金制度においてマイナンバーを使うことができるという,法律でそのように定められております。ですから,それ以外の方たちからもマイナンバーを頂くことになるということで,今,準備しています。


【小林主査】  マイナンバーを使って,例えば所得の把握とかはできるということでよろしいのですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  まだ制度が始まっていないのですが,今の状況でいいますと,例えば採用時の親御さんの所得というものも一応想定はしておりますし,それから猶予の申請などについても,今は紙を出していただいているものを,マイナンバーを使って情報を頂くということもあり得るということで準備をしております。


【小林主査】  分かりました。ありがとうございました。


【島委員】  先ほど,猶予制度を5年使い切った方が何人とおっしゃいましたか。10年が何人という話でしたか。


【川村課長補佐】  5年は,かつての制度でございますが,無利子のみで2万人程度,10年程度まで行かれている方は現時点では200人程度。


【島委員】  これなのですけれども,制度がそもそも10年を認めるという制度が,比較的最近できた制度だったと思うので,その影響に基づいて,まだ200人という話なのか,本当に200人しかいないのかで大分違うと思うのですけれども,5年が2万人で,10年が200人しかいないというのは,単純に制度の問題なのではないかという気がするので,もし,そうだとするならば,ここで10年猶予する人はそれほどいないのだというような,もし誤解が生じているとするならば,そこのところは確認だけはしておきたい。


【井上学生・留学生課長】  恐らく10年に引き上げたのは26年からなので,そうしますと,まだ今28年度なので,10年に引き上げて2年なのです。だから,そういう意味で,おっしゃるとおりで,10年まで使い切っていない人の方が大部分である。ですから,5年が今,2万人だとすると,そのうち2万人と同じぐらいのボリュームが10年のところまで来る可能性は非常に高いのではないかと思います。


【島委員】  ありがとうございました。


【小林主査】  ありがとうございました。この議論も,いろいろまだ精査する必要があるということなので,引き続き事務局で資料等をよろしくお願いいたします。


時間がかなり押してきていますので,どうぞ。


【濱中委員】  その際に留意しなければならないのは,新所得連動型と定額返還型の選択制という形をとるという点です。新たに猶予の仕組み等を変えたときに,今後定額返還を選んだ人にも適用可能にしてしまうと,せっかく考えた所得連動型のメリットが,どんどん減っていくことになります。例えば,先ほど出てきた減額返還をもっときめ細かくすると,目いっぱいきめ細かくした状態が所得連動ですから,より柔軟な減額返還を可能にした上での選択制にすると,初めは定額返還型を選ぶのが良いことになってしまいます。今考えている所得連動型は,ある一定の所得を超えると返還額がむしろ高くなってしまうわけですから,猶予や減額返還を拡張すると、最初に所得連動型を選ぶ人がいなくなってしまうと思うのです。


ですから,今度新しくできる制度との不公平感を解消するためだけに,特例的に過去に返還している人に対して適用する分には構わないと思うのですけれど,それを定額返還の新しい仕組みとして全部残してしまうと,今までの議論はほとんど意味がなくなる可能性がある。そこは注意していただきたいと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。過去にさかのぼって適用するということですが,新しい方には適用しないということですね。


【赤井委員】  2本で行くことは確定したのですね。


【小林主査】  確定したというか。


【赤井委員】  新しく来年からでしたか,今度新しい制度は両方で行くというのは確定なのですか。それも1本化したいです。来年から両方で行くということは,ずっと両方で1本化するのは,先ほどの話ですけれど,今年契約した人は何十年先までそれを確保しないといけないということですね。


【小林主査】  次に進ませていただきます。その他につきましては,意見というか,決めなければいけないというよりも,基礎的なデータを確認したいということなので,これで特に御意見を頂かなくてもよろしいのではないかと思います。  次の大きな問題として,保証制度の問題です。これも,先ほども少しありましたけれど,人的保証と機関保証の両方が現在もあるわけでありますが,原則として機関保証にするということを,第1次まとめ案では出したわけですが,その場合に,現実の問題として二つ考え方があるということで,一つは,できるだけ機関保証を促進するという形で選択していただく。それに対して,基本的には機関保証のみで義務化するという考え方と,二通りあるということでしたが,これについてはいかがですか。


【樋口委員】  質問で,ページ数がないので,四角に書いてある,原則として機関保証というコラムのところです。真ん中2段目に,毎月おおむね2,000円から3,000円程度の保証料と書いてあるのですが,この2,000円から3,000円という根拠というか,どのような計算でこうなったのか。要は,どのような制度を,この保証制度について想定しているのかというところを教えていただけますか。


【小林主査】  これはどちらになりますか。事務局,JASSOですか。保証料を決めたときの根拠ですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  済みません,一般論というか,仕組みのお話ですけれども,機構の回収の状況を踏まえて,一応将来にわたるリスクの計算をしてという,済みません,私も直接の担当ではないので,細かいところは説明が難しいのですけれども,保証料率というものを決めて,それで今のケースですと,貸与総額によって返還の期間が決まってきますので,その期間に応じて計算をしているということで,簡単に貸与月額に対して一律何パーセントというやり方はとっておりません。ただ,先ほど樋口先生がおっしゃった御質問の中身に即して言うならば,いろいろなケースがあるとしても,基本は1本の保証料率というか,そのような数字を使って,あとは総額に基づく期間に応じた保証料という形で計算をしている。


済みません,お答えになっているかどうか。


【樋口委員】  お尋ねしたかったのは,新所得連動型返還になったときに,返せないリスクが高まるのだろうというようなことを想定した場合に,今までの計算だろうと思うのですが,全体として特別会計で個別にやるわけではなくて,新連動返還型でリスクをどう考えるかということではなくて,全体でやっているような感じがしたわけで,その方式で今ここはやっているという理解でよろしいですか。


【濱中委員】  恐らく質問の趣旨は,現行の定額返還の保証料は2,000円から3,000円で,所得連動の場合には本来変えるべきだ,変える必要があるだろうということかと思うのですが。


【樋口委員】  変える必要があるのか,2,000円,3,000円で全部一括という方式でやっているわけですが。


【濱中委員】  新所得連動の方では幾らにすればいいのか,全然根拠がないので,同じ額にしようということで挙がっているのが,この2,000円から3,000円ということだと私は理解しています。


【小林主査】  今までの議論ですと,確かにリスクは個別に違います。その問題が一つです。もう一つは,原則として機関保証にしますので,保証加入者が多くなりますので,そういう意味では,保証料が下がる要素もあるのです。ですから,その両方勘案すると,保証料が上がるのか下がるのかというのは,実は今の段階では予想がつかない。それで,とにかく現行どおりでやってみましょうというような議論の流れだったと思います。


【樋口委員】  厳密にこうやればいいということではないと思うのですが,どのような機関保証制度を考えるのかというところなのです。その議論なしに,2,000円から3,000円というのを前提に議論しているのだろうと思うのですが,一方においてモラルハザードの問題というようなことを考えていったときに,制度間によってリスクが違うにもかかわらず,同じ保証料とする制度にするのか,それともそれは個別に考えていくというような制度にするのかによって,保証料の金額は大きく変わってくるのだろう。変わってきて,今のところは2,000円からら3,000円を保証料として強制的に取るか,それとも選択制にするかというような議論をしているかと思うのですが,根本的な,どのような保証制度にするのですかというようなところを聞きたいということだったのです。


【小林主査】  それについては,そこまでまだ議論をしていないというのが,この会議としては答えだと思いますが,例えば,アメリカの連邦政府ローンでいいますと一律だと思いますが,民間ローンの場合には当然リスクによって変わるというような仕組みをとっております。


ですから,そのあたりのことは,むしろ問題提起として受け止めておきたいと思いますけれど,繰り返しになりますけれど,先ほど根拠がないということなのですが,これまで持っているエビデンスでは,結局そこのところが詰められないということなのです。やってみないと分からないという,無責任な言い方になりますけれど,今のところ,それしかお答えようがないということだと思います。


【樋口委員】  奨学金については起こっていない問題かもしれないのですが,一般の金融機関の保証協会の問題というのが非常に社会的に大きな問題であるわけです。例えば保証料を取った,足りない部分をどうするかというような話で出てくるわけで,そこのところ設定をきちんとしておかないと,後々想定したものと違いましたというようなことが起こってこないか。それによって強制にするのか,どうするのかというのが違ってくるのかなと思ったので,御質問させていただきました。


【小林主査】  ありがとうございました。


【宗野顧問弁護士】  現行の保証制度の話にはなるのですけれども,現行の保証料というのはこちらの参考資料6の方で書いておりますけれども,現行の保証料は1ページ目で利益の0.693%という利率になっております。こちらの利率に関しては機構と保証協会でやっております機関保証制度検証委員会というところで,毎年保証料率が適切かどうかというのを,返還状況に応じて将来の制度維持を踏まえて,制度維持が可能かどうかという点で毎年検証して確認しているというところになりますので,今回,所得連動型の奨学金を設けた場合も,返還状況だとか,そのようなリスクを踏まえて料率を見直すような形で,制度を維持していくような形で考えざるを得ないのかなと思います。


あとは,現行の方式で行きますと,リスクがどれぐらいあるのかというのは,小さく切り分けていくと非常に大きくあって,例えば大学と大学院,短大,専門学校それぞれ一種,二種によっても破たんのリスクは違っているのですけれども,それは一つの大きなバスケットに入れて0.693%となっていますけれども,今回所得連動にした場合の破たんのリスクというのが,そのような学種などによるものと比べて大きいのか小さいのかも分からないというところがありますので,現行においてリスクを把握するのが非常に難しい場合は,最終的には保証協会側の設定する保証料率に基づく形でやるしかないのではないかとは思います。


ただ,それを将来にわたってという場合には,そこは保証機関側で保証料率を見直すような形で対応していくので,そのような形で料率に関して,その後の方がとるという形です。今の保証料率というのは0.693%ですけれども,将来の期間と貸した額に加えて,それを見積もった上で前取り,返済しながら保証料も払うというわけではなくて,最初に貸し付けるときに天引きで保証料を引いていくという形になっていますので,保証料自体の取りはぐれはないという形で設計はしています。それが妥当かどうか。貸している額からすると保証料が高い印象があるのですけれど,前取りという形をとっている点もありますので,それも踏まえた上で,それが妥当かどうかというのは,今後検討される課題だと思いますけれども,現行はそのような形でやっているので,このような金額になっているということを御理解いただければと思います。


【樋口委員】  現行は,機関保証では単年度で考えると黒字が出ているのですか。


【宗野顧問弁護士】  そうです。


【樋口委員】  これは難しいので,今のところは単年度でやるしかないと思うのですが,かなり貸倒れというか,返せない人が増えている中で,その中でも黒字がまだ出るように2,000円から3,000円と設定しているということでよろしいですか。


【赤井委員】  収支均衡ですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  今,赤井先生がおっしゃったように,収支均衡の保証制度というものが一応大原則であるのですが,ただ,まだ平成16年度から始まった制度で比較的新しい制度でございます。ですから,もうそろそろ10年ぐらいということで,今,まだ将来のリスク分が,ある程度積み上がっているというように理解できるかなと思っています。


【赤井委員】  幾つか確認ですけれど,まず,財政的なところは収支均衡だから,国税が入る,入らないには,この制度の議論は影響ないという理解でいいですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  これについては保証料で賄える。


【赤井委員】  調整する。だから,いろいろ返す人が影響を受けたとしても,保証料で調整するので,収支均衡なので税金のところは関係ない。ということは,国民のところをまず切り離す。そう考えると,次は,個人の行動が全く変わらないとすれば,結局のところは所得分配というか,人的保証の人も取り込んでどう回すか,誰が負担するのかというお金だけの話なります。そこが一つ。


もう一つは,お聞きしたいのは,制度が変わることでモラルハザードとか何か人の行動はどのような感じに変わるのかとか,あとは,人的保証はやめて機関保証になるということですが,そうすると人的保証の貸倒れを,全部機関保証のところで調整すると,人的保証の貸倒れと,機関保証の貸倒れのバランスが,今どうなっているのかにもよりますけれど,そこのところはどう変わるのかとか,そこのところを議論していく必要があるのかと思うのですけれど,まずはモラルハザード的なところがどう変わるのかというようなところは,どうなのですか。


【濱中委員】  普通の金融ローンとはかなり違っていて,所得連動型のローンというのは多分世の中にはほとんどないと思うのです。かなり低い所得になったときの返還額は2,000円から始まって3,000円とか4,000円ですから,基本的には返還不能のリスクが下がるように設計しているので,保証料を下げなければいけないのではないかという議論は当然あり得ると思います。


ただ,今回これを見て思うのは,もし機関保証と人的保証の選択制にすると、所得連動型では人的保証を選ぶ人が増えるだろうというのが,私の読みです。所得が厳しいときには返す額が低くなるので,それぐらいであれば何とかなるだろうと思う人が増える可能性が高いし,多分,連帯保証人になる親も,その程度の返還月額であれば月に3,000円も保証料を取られるくらいなら人的保証にしておこうという選択が起こる可能性が高いのではないかと思っています。


ただ,奨学金はもともと家計の所得が厳しい方に貸しているわけで,連帯保証人となる親も低所得だということです、したがって連帯保証人に返還を求めてもやはり返せないだろうということは,大分前に行われた返還促進の委員会のときから,そのような議論になっていました。ですから,今回の所得連動型の導入といった機会がないと,なかなか機関保証の方への移行は促せないと思うので,なるべく機関保証に移行するような方向で考えた方がいい。そのときに,保証料をどうするかということは,更に考えなければいけないと私は思っています。


【小林主査】  案の1と案の2と,どちらかということだったのですが,それ以前にかなりまだ検討しなければいけない問題があるということが今日の御意見だと思いますが,一つ資料としては,これはそれほど難しい資料ではないと思いますが,機関保証と人的保証で,未返還がどうなっているかということです。どれぐらい違うのかということは,すぐ出ると思いますので,それはよろしくお願いします。


ほかに御意見ございませんか。


【樋口委員】  教えてほしいのですが,今のお話で,まだ頭がクリアになっていないのですけれど,保証料は収支バランスに応じて変動するのですか。それは単年度で変えていく。例えば,雇用保険の場合には何パーセントから何パーセントまでという上限,下限が決まっていまして,それを下回る場合は法律改正しなくてはならないのです。それで今回法律改正を3月にやって,下限を更に下げたということで,保険料率の引下げをやったわけです。今,そのような制度になっているということでよろしいのですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  制度としては,先ほど宗野先生からお話ししましたように,毎年検証をして,それでその料率でいいかどうかということを毎年検証はしています。ただ,ここのところ変えてはいないというようなことにはなっています。


【赤井委員】  契約も変わると書いてあるのですね。


【小林主査】  ギャップとか上限,下限というものはどうなのですか。


【藤森奨学事業戦略部長】  一応保証料率で0.7%を上限にと,国の方からもそのような御指導を頂いてはおりますので,その範囲内でやろうということは,そこは努力目標です。


ただ,もちろん御存じのように,将来リスクを見積もった上ですので,今のところは変えずに,もう少し状況を継続していこうということで,きてはいます。


【宗野顧問弁護士】  保証料の取り方が,毎年の返還額の中から保証料を取るのではなくて,最初にこの金額について保証する額というものをパーセントで決めて前取りをしてしまっているので,1回契約をしてしまうと,多分契約が変わらなくて,今までのものだと破綻する,例えば料率を上げるとなった場合には,その契約をされた方から料率が上がっていくという形になるので,恐らく取り過ぎた場合,大丈夫だという場合に返金するかどうか,私もそこは確認していませんけれども,基本的には既存の契約の方は,契約時の保証料率を払っていただく。新しい契約になって保証料率が変われば,その方から料率が変わって徴収するという形の仕組みになっているかと思います。


済みません,私も詳細には確認はしていないのですけれども,恐らく今までのやり方からすると,そうではないかと思います。もし,違った場合は,次回訂正させていただきます。


【樋口委員】  分かりました。


【小林主査】  例えば,契約関係で保証料が変化することはあり得るのですか。そのような契約を結べば,あり得るのですか。


【宗野顧問弁護士】  例えば,前取りでなく,何年かによって,その状況によって変えるという契約になっていれば,保証料もそのような利息の見直し方式のようなものをとれば,それはあり得るとは思うのですけれども,現行は前取りという形で,最初に,決め打ちではないですけれども,これぐらいの今の規定でという形で計算したものを請求する形になっているので,保証契約をもう一度確認しますけれども,そこで何か変動するというような約定がなければ,基本,最初にとったものが,もう既に徴収済みになっていますので,保証料率が後で変わっても,後から取られたりすることは基本的にはないという形ではないかと思います。


【小林主査】  その点につきまして,確認はよろしくお願いします。


【宗野顧問弁護士】  もう一度確認いたします。


【小林主査】  ただ,この問題は,そこのチャートにありますように,進学届の提出の際に,つまり来年の4月までには決着しておかなければいけない問題でありますので,今日,確かにいろいろ検討すべき課題があるということは,そのとおりだと思いますが,次回,あるいは,もう1回やるかどうかということはありますけれど,遅くても最後までには決めておかなければいけませんので,この辺,もう少し事務局とも相談いたしまして,次回どちらかの案の1か2,委員の方で御意見を頂きまして決定するというような形にしたいと思います。


【島委員】  保証制度は,原則として機関保証である,更に文中にあるように,所得連動返還型のみならず,定額返還型を含む無利子奨学金制度の保証制度について原則としての機関保証とするということで,方向性としては,定額を含めて機関保証にするというベクトルなわけです。だからこそ原則なのかもしれないのですけれども,ここに出てくる案というのが,どちらかというと人的保証も残ることが前提となっているような案に読める気がするのですけれど,それはそれでよろしいのですか。若しくは,現実的に難しいということなのですか。


【小林主査】  その前のページを見ていただきたいのですが,衆議院の附帯決議というところで,人的保証を残すということが書いておりますので,これをどのくらい見るかという問題だろうと思います。  ですから,この問題も非常に大きな問題なのですが,ここでもさらなる検討が必要であるということで終わっているわけでありまして,今回は全く新しい制度になりますので,そのあたりをどのように検討するかという問題です。


【赤井委員】  もう1回確認です。平成15年の決議の人的保証を残すというのは,どのような論理か,もう1回教えてもらえますか。


【小林主査】  事務局いかがですか。


【赤井委員】  ないのですか。ないなら,僕は政治は分からないのですけれど,やめてしまえばいい。


【井上学生・留学生課長】  これは附帯決議なので,当時のそこの国会の審議を,詳細に今この場で本来は確認しなければいけないのだと思うのですけれど,恐らくこれは機関保証に義務化するということに対する,保証料も要りますので,これは人的保証というオプションも残しておくべきではないかという御議論であったと思っております。


【赤井委員】  大分それからたっています。この解釈は正しいですか。人的保証を残すべきというのは,親の所得も高くて十分保証もでき,子供も将来稼げるだろうし,きちんと返せるだろうし,残しておいてもらったら,将来払わずにすみ,コストが少ないのでという感じですか。


【井上学生・留学生課長】  恐らく,基本的に非常に経済的に厳しい状況の場合は,保証料というものもそれなりに負担感が,肌感覚は皆さん違うでしょうけれども,あるという中,完全に機関保証を義務化するということに対して,そこは選択の自由を残すべきではないかというお話だと思っております。


【樋口委員】  2003年ですから,この当時は。


【島委員】  僕も基本はその方向なのですけれども,恐らく,保証料を払うぐらいだったら奨学金を借りるのをやめようという人が仮にいるとするならば,機会均等という奨学金の理念の根本に問題を生じさせるという考え方はあるような気がします。


それは本当にリアリティーのある話なのか,あと,それがどのくらいの規模なのか,実際に1本化したことの社会的なメリットとデメリットを比べたときに,残すことがいいのかというところは,当然議論の余地はあると思うのです。


【吉田委員】  すみません,参考資料6の中に,以前も配布されたかと思いますが,機関保証制度の推移というところの6のスライドですけれども,平成16年からスタートしてかなり安定的に推移しており,保証制度としては1,200億円以上の徴収保証料累積額もあるわけです。先ほど濱中委員からも御発言がありましたけれども,所得連動型になるのでリスクも減るわけですから,恐らくこちらに全部移行したとしても,ひどくならないのではないかと思うのですけれども。それに赤井委員がおっしゃったように,人的保証を選択していた残り半分の人たちをここに入れた場合に,どの程度これが将来的に推移するのか。それほどリスクがないということであれば,こちらに全面的に移行することで説得性があるのではないかと思うのです。


【赤井委員】  多分,先ほどの人的保証の方の貸倒率と,こちらの機関保証の貸倒率の関係になるとは思います。


それと,島委員のおっしゃったように,保証料を払うからやめたいという人はどのぐらいいるのかという話と,返せるのだけれども入っていたような人は,保証料払うぐらいであればやめてしまうという人は出るかもしれないのですけれど,そのような人はもともと,別に借りなくてもやっていけるという人ですから,このような人がやめても,別に社会的に問題はないだろうし,その人がやめても,こちらの負担にもならないです。無利子でやっているから,それは別の人がまた,無利子で借りられることになるから,枠が空(あ)くから,それはいいということになる。


【濱中委員】  もう一つ関連してくるのは,これも赤井先生が先ほど言ったように,二つ残すからいけないのだという話につながるのですけれど,機関保証と人的保証のどちらでもいいとなると,機関保証の保証料を嫌がって所得連動型を選ばないという方が一定数発生してしまい,そもそもこの制度を作ったことの意義が問われてしまうわけです。私の理解では定額返還型の方が返還不能になるリスクが大きいと思うので,なるべく所得連動を選んでいただきたい,ついては所得連動型のみ機関保証を必須とすると,それが所得連動を選ぶか選ばないかに反映されてしまうので,本来は全部機関保証としないとまずいだろうと考えます。


【樋口委員】  所得連動にすることによって,デフォルト率は下がるのです。ただ,年々のこちらへの返還額の総額は変動する。そこが単年度で考えていくのか,もう少しロングランで考えていくのかというところのリスクの問題ということだと思うのです。


【濱中委員】  ある一定期間というか,死亡までに残った残額は機関保証で補うのではなくて,死亡免除の形で補うという制度設計になっているので,きちんと払ってさえくれれば,残ったとしても,それは保証制度とは関係がないというか。


【樋口委員】  それは正にデフォルト率が下がるということで,先ほど単年度主義ですかと僕が質問したのは,そのような意味で,収支バランスを長期的に考えるのか,それとも単年度で考えていくのかによって,この制度設計は全然変わってくるのです。


【藤森奨学事業戦略部長】  今のシミュレーションでは長期的に見てということです。長期にわたって,要するに収支相償のバランスが崩れないという計算が成り立つということです。


ですから,ある意味では,長期間にわたるのでデフォルトのリスクというのは期間が延びた分だけは一方で増える要素もあるといえばあるのかということもあります。


【赤井委員】  全部やってしまいましょう。今,ずっと整理していると,結局全部を原則として機関保証,所得連動も定額も全部に応用できないという唯一の理由が,この10年前の決議だけしかないようで,だからここを論理展開でしっかりとすれば,論理を作れるような気がします。あとはお任せします。


【小林主査】  ありがとうございました。それでは,付帯決議がどのような経緯でできたかということもありそうですので,その辺も事務局に調べておいていただいて,今日頂いた意見は案の2の方に近い御意見が多かったと思いますが,ほかに検討すべき課題もありますので,今日ここで決定ということではなくて,次回には決めたいと思います。


済みません,時間が押してしまいました。


【島委員】  済みません,最後に。機関保証1本化という話がありました。実を言うと,それよりも大胆な発言が赤井さんから,所得連動1本化というのが出ました。実を言うと,僕などは従来の制度に新しい所得連動を足すという発想だったので,そのようなことを,恥ずかしながら十分考え切れていなかったのですけれども,タイムスケジュールの関係から,今議論している部分で1本化にするというのは,多分現実的にかなり厳しいと思うのですけれども,長期的に本当に1本化をするという発想を頭に入れておいて,決して悪いことではない。逆に言えば,1本化するとまずい,何か決定的な理由があるならば,そのことはきちんと確認,理解しておきたいというのがありますので,最後一つだけお話しさせていただきます。


以上です。


【小林主査】  ありがとうございました。  実は,もう一つ,議題ではないのですが,報告事項がありまして,もう時間が来ているのですが,済みません,事務局の方で,ごく簡単で結構ですので,御説明お願いいたします。


【井上学生・留学生課長】  資料4-1を御覧ください。実は,報道等でも,皆さん御案内かもしれませんけれども,昨日,ニッポン一億総活躍プランというものが閣議決定をされました。そこに奨学金の関係でいろいろと記述がありますので,御紹介させていただきます。


1枚めくっていただきまして,最後,ニッポン一億総活躍プランの抜粋でございます。奨学金制度の拡充ということでありまして,最初のパラグラフは,家庭の経済事情に関係なく,希望すれば誰もが大学や専修学校等に進学できるよう,安定財源を確保しつつ,以下のように拡充を図るということで,無利子,有利子,給付型,あと所得連動返還型等々の記述があり,無利子については,残存適格者の解消,低所得世帯の子供に係る成績規準を大幅緩和することにより,必要とする全ての子供たちが受給できるようにする。有利子は,現在の低金利の恩恵がしっかり行き渡るような仕組みを検討する。給付型については,世代内の公平性や財源などの課題を踏まえ,創設に向けて検討を進め,本当に厳しい状況にある子供たちへの給付型支援の拡充を図る。


特に給付型については,もともとの素案が出たときには,創設に向けてという文言はなかったのですけれども,最終的には様々な与党等の意見も踏まえて,創設に向けてという,創設の方向性が明示されたということでございました。


それと,最後に返還について,所得連動返還型を平成29年度の進学者から速やかに導入することで,大幅な負担軽減を図るということでございます。


以上でございます。


【小林主査】  ありがとうございました。


樋口先生,何か。


【樋口委員】  済みません,最後まで,「創設」なのか,「拡充」なのかというところがもめて,政治決着ということで,「創設」というものが入ってよかったと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。


質問もあるかと思いますが,時間が来ておりますので,ここで締めたいと思います。


最後に,次回の会議日程について,事務局から御説明よろしくお願いいたします。


【八島課長補佐】  次回,11回目につきましては,6月末若しくは7月で調整させていただきたいと思います。


以上でございます。


【小林主査】  ありがとうございました。


以上で,所得連動返還型奨学金制度有識者会議第10回を閉めたいと思います。皆さん,御協力どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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高等教育局学生・留学生課