所得連動返還型奨学金制度有識者会議(第5回) 議事録

1.日時

平成28年1月22日(金曜日)14時30分~16時30分

2.場所

一橋大学一橋講堂 会議室201~203

(東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階)

3.議題

  1. 所得連動返還型奨学金制度について
  2. その他

4.出席者

委員

小林委員,赤井委員,島委員,濱中委員,樋口委員,不動委員,吉田委員

文部科学省

常盤高等教育局長,松尾大臣官房審議官,井上学生・留学生課長,川村学生・留学生課課長補佐,八島学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

高橋理事長代理(日本学生支援機構),甲野理事(日本学生支援機構),宗野顧問弁護士(日本学生支援機構),藤森奨学事業戦略部長(日本学生支援機構)

5.議事録

【小林主査】  それでは,ただいまから所得連動返還型奨学金制度有識者会議第5回を開催いたします。皆様には,御多忙中にかかわらず御参集いただきまして,まことにありがとうございます。本日,阪本委員の方が欠席になっております。

 事務局に異動がございましたので,御紹介いたします。

 1月1日付けで,佐野審議官が異動になりまして,後任に松尾審議官が着任しております。松尾審議官,一言御挨拶をよろしくお願いします。


【松尾大臣官房審議官】  ただいま御紹介いただきました松尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私は,2年半前まで学生・留学生課長をしておりましたので,何人かの先生には既にお世話になっておりますけれども,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


【小林主査】  松尾審議官は,元の,平成24年度の所得連動型返還制度の産みの親でございますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 それから,同じく1月1日で渡辺課長が異動になりまして,後任に井上課長が着任しております。井上課長も一言,御挨拶をよろしくお願いします。


【井上学生・留学生課長】  井上でございます。私自身はこの分野は初めてでございますけれども,実際大学生の子供が2人おりますので,我がことのように思って打ち込むつもりでございますので,どうぞよろしくお願いいたします。


【小林主査】  どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは,議事に入ります。

 まず,議事概要の確認についてですが,資料1,第4回議事概要の案をごらんください。修正等,意見がございましたら,1月29日金曜日までに事務局に御連絡をお願いいたします。その後,私と事務局で修正内容を調整させていただいた上,議事概要として確定させ,文部科学省ウエブサイトに掲載させていただきます。

 それでは,次の議事に進めます。昨年の前回の会議,第4回で,新しい所得連動返還型奨学金制度を導入した際の回収金予測のシミュレーションを実施いたしまして,いろいろ御議論していただいたところです。条件設定について更に皆さんから御意見を頂きましたので,それに基づき,改めて回収金予測のシミュレーションを実施いたしました。さらに,これまでの議論に沿いながら,本会議としての中間まとめ検討素案ということでありまして,そのたたき台を本日,私と事務局の方で作成いたしましたので,これについても事務局から御説明をよろしくお願いいたします。


【川村課長補佐】  それでは,御説明をいたします。

 まず,資料の2をごらんください。前回お配りした新所得連動返還型制度の創設について,検討素案に修正を加えたものでございます。現行では,平成24年度から導入された所得連動返還型無利子奨学金制度,こちらにつきましては,申込時に家計支持者の年収が300万円以下の場合に自動的に対象となります。本人の年収が300万円以下の場合には,申請により返還猶予が期間の制限なく適用可能となっております。これとは別に,通常の定額返還型ということもございます。これが新制度におきましては,まず新所得連動型,無利子奨学金から先行的に導入するという御議論となっております。制度の中身といたしまして,青い実線のところが返還の金額で,横軸の年収に対応して,縦軸の毎月の返還月額が変わってくるという制度でございます。仮に初任給281万円ということで,ベースアップをした場合の最終的な返還の月額は2万1,800円,15.6年で返還完了となるというものでございます。これにつきましては,300万円以下の場合の返還猶予,これは通算10年ということでこれまで御議論いただいておりまして,あわせて,申込時に家計支持者の年収が300万円以下の場合は現行と同じく返還猶予の期間制限なしとしてはどうかということについても,本日御議論いただければと思っております。返還月額につきましても2,000円から3,000円ということで,後ほど御説明いたしますが,御議論いただければと思っております。これと併せて,定額返還型につきましては現行と同じ制度を残しまして,学生が申込時に返還方法を選択すると,こういった概要ということで,現在のところ案としては示しているものでございます。

 続きまして,資料3をごらんください。資料3につきましては,本会議の中間まとめということで,主査とも御相談いたしまして,たたき台として作成をいたしました検討素案でございます。これまでお示ししたデータ,またこれまでの御議論をまとめたという内容でございます。

 最初の方はデータ等でございますので簡略して御説明いたしますが,まず「はじめに」のところでは,憲法,教育基本法に定める教育の機会均等,学生支援機構が行う大学奨学金事業の目的,さらには同機構の奨学金事業の成り立ち,また約4割が利用するという制度の広がりの観点,OECDの調査による公財政支出の低さ,このことによる国際的に見た高い学費水準といった点。さらには,我が国の状況として,子供の貧困,また平均給与の減少傾向,学生生活費における家庭からの給付の減少,非正規雇用の割合が若年層で上昇傾向が続いてきたという点を記載しております。

続きまして,2ページでございます。こうした状況の中ということで,奨学金の役割の重要性について,さらに,この制度の改善・充実を図る必要があるという観点。また,社会保障・税番号制度,マイナンバー制度の導入により,所得を把握する事務コストの低減により返還額が所得に応じた形での方式となる環境が整備されてきた点,この返還方式が,改善・充実のための画期的な方策であるという点。さらに,本会議につきましては,新所得連動制度について導入を行うために設置されて,議論を重ねてきたということで,この中間まとめについては新制度の枠組みに係る基本的な制度の方向性を示すものであるということを記載いたしております。

 2点目につきましては,検討の背景とこれまでの経緯ということで,まず背景といたしまして,学生の置かれた経済的状況,家庭からの給付が減少しているということ,一方で,奨学金による収入が増えている,また奨学金の貸与を受ける学生の割合も増加しているという点。学生の保護者の収入に関しては,家計収入が減少傾向にあるというデータ,保護者に対する調査として,返還が必要な奨学金は負担となるので借りたくないと回答する割合が半数以上であるというデータ。さらに,東京とその周辺の地域大学に通う学生のうち,奨学金の希望者の中で実際に申請した方が64.3%であり,希望していても申請を断念している学生がいるというようなデータでございます。

 2,返還者を取り巻く雇用状況,また返還に係る実態ということで,非正規雇用の増加,さらには,いわゆる不本意非正規と呼ばれる方々が若年層において高くなっていることから,安定的な収入を得ることが困難な方が増加している傾向について指摘をしております。また,これまでお示ししたデータの中で無利子奨学金返還者の収入の状況ということで,25歳から29歳の64.2%が年収300万円未満といった,年収300万円未満の経済的困難者が半数以上に上っているというデータ。さらには,平成26年度末の延滞につきまして,延滞期間三月以上の方が17.3万人おりまして,割合としては減少傾向にございますが,この延滞者数自体は横ばいで推移しているという点。また,3か月以上の延滞者80.2%が年収300万円未満ということで,延滞者の方が年収が低い傾向があるというデータ。続きまして4ページでございますが,延滞者の80.9%,無延滞者でも37.4%が返還が負担になっているというアンケート結果でございます。

 3は,諸外国における所得連動返還型の導入事例ということで,複数の国々で導入されてきており,主に7つの要素ということで,所得に応じた返還額や,一定所得以下での返還猶予,また返還免除となる仕組み,利子補給,源泉徴収といった回収方法,貸与総額,これを組み合わせて設計されているということ。例えばイギリスでは年収2万1,000ポンド,約378万円を超える部分の9%が徴収されるということ,また2012年度の時点で約3兆というような赤字額が発生するということ。さらに,オーストラリアにつきましても同様に導入されており,卒業後の課税所得が約507万円を超えた時点で,所得に応じて4%から8%の返還率により返還額が決定されるという仕組みであり,2013年6月時点で7,000億円の赤字が発生するという調査結果,推計がございます。両国とも元々授業料は全額公費負担,無償にしておりましたので,この点については留意が必要でございます。また返還方法についても,両国,これは税務署を通じて返還,徴収を行っております。一方,アメリカにおきましてもこの所得連動型が導入されておりますが,金利が高水準でございまして,返還が長期にわたると利子の支払が多くなるということから利用者が低く,1割程度の利用にとどまっているという点を記載いたしております。

 続きましてこれまでの経緯でございますが,各種決定,教育振興基本計画等,様々な閣議決定等において,その検討,導入が求められているということ,また,学生への経済的支援の在り方の検討会におきましては,より柔軟な所得連動型の導入に向けて,この検討を進めることが重要であると指摘されて,これを受ける形で本会議が設置されたということでございます。

 続きまして6ページでございますが,マイナンバー制度の導入につきまして記載いたしております。マイナンバー制度は平成25年に関連法が成立いたしまして,27年10月から国民に通知が開始され,28年1月から順次,様々な制度で必要となってまいります。大学等の奨学金事業におきましては,関係法令におきまして日本学生支援機構による学資の貸与に係る事務についてはマイナンバーを利用できると定められており,これが可能となっているということ。さらに,この制度におきましては29年7月の地方自治体との情報連携後に活用することが可能となり,一人一人の所得を把握し,それに応じた返還月額の設定によって返還負担の軽減を図るということでございます。あわせて,この導入につきましてはシステム整備のための経費が必要となってまいりますが,26年度,27年度予算においてその経費が措置,計上されているという点を記載いたしております。

 3点目は,現行の奨学金制度,それから改善の方向性でございますが,まず現行の奨学金制度概要を記載いたしております。このあたりは基本的なデータでございますが,無利子46万人,有利子87万7,000人ということで,合計133万7,000人,事業費総額1兆1,000億円という事業でございまして,無利子奨学金の財源につきましては一般会計からの政府貸付け,有利子については財政融資資金等で運用されているということでございます。奨学金は事業規模を急速に拡大してきておりまして,平成10年と比べて3.5倍に増加いたしております。これは主に有利子の拡充により行われてまいりましたが,近年は有利子から無利子へということで,無利子奨学金の充実を図っております。

 同機構の奨学金は保証制度の選択が必要になってまいります。人的保証と機関保証がございまして,人的保証は連帯保証人と保証人による保証,機関保証は保証機関による連帯保証となっております。機関保証の場合は保証料が必要になりまして,例えば貸与月額4万5,000円の場合には,1,782円の保証料を毎月その金額から差し引いた形で振り込まれるということでございます。選択割合は,人的保証が53%,機関保証が46%ということでございます。返還につきましては,現在,最長20年の範囲で返還月額と回数が定められており,学部におきましては9,230円から1万4,400円の範囲で定額の返還となっており,繰上げ返済については随時可能となっているということを記載しております。

 2,返還負担軽減のための制度ということで,返還困難者に対する軽減の措置,充実を図ってきておりまして,まず返還猶予制度につきましては,大学・大学院に在学中の在学猶予,それから病気や傷病,生活保護受給,経済困難等による返還困難の場合の一般猶予がございます。一般猶予につきましては,この期間が2パターンございまして,災害,傷病,生活保護等につきましては期間の定めがございません。その期間中,猶予が可能でございます。経済困難等につきましては通算10年が原則として限度となります。給与所得者の場合,この経済困難の認定に当たっては300万円以下というのがこの基準となっております。給与所得者以外は200万円でございます。この10年という上限につきましては,平成26年度に5年から10年に延長したところでございます。また,減額返還制度ということで,経済的理由等により困難になった場合には,一定期間,返還月額を2分の1に減額する制度もございます。これは最長10年にわたって活用することが可能でございまして,23年1月に創設されております。延滞金の賦課率につきましても,平成26年3月以前は10%であったものを5%に引き下げております。

 返還免除制度,現在は,死亡又は身体障害等により返還不能となった場合に全部又は一部を免除する制度がございます。さらに,現行の所得連動返還型につきましては平成24年度から導入いたしまして,申請時に年収300万円以下の世帯の学生を対象といたしまして,本人の年収が300万円を超えるまでは返還を猶予する制度として導入しております。これについて3で若干詳しく説明いたしておりまして,この制度は無利子奨学金貸与者の30%に適用されております。26年度におきましては4万5,340名が対象となっておりまして,300万円を超えるまでは期間の定めなく猶予が可能でございますが,300万円を超えると,年収によらず定額での返還が求められます。このため,年収300万から400万といった返還者のボリュームゾーンにおきまして返還負担が重くなるという課題がございます。また,奨学金申請時の家計支持者の年収を判断基準としておりますので,進学時に低所得世帯に対する対応策としては機能いたしますが,実際に返還するのは御本人でありますので,本人の収入に応じた返還額といった今回の制度が必要であるという観点でございます。現行の制度は24年度に導入されておりますが,マイナンバー制度の導入によりまして収入の把握が容易になりますので,制度の改善が図られるということが必要ではないかということでございます。

 (2)は新制度の考え方及び改善の方向性でございます。丸の1つ目として,現在学生が置かれている経済的状況,家庭からの給付が減少し,実際に奨学金を希望しても申請しない学生がいるという中で,経済状況に応じて高等教育への進学を断念することがないよう,将来の奨学金の返還については極力不安を取り除くことが重要であるという観点。2つ目の丸といたしまして,返還者を取り巻く状況として,非正規雇用の増加,また返還者層で,年収300万円以下の世帯の割合が五,六割となっている点や,延滞者の年収が低い,また無延滞でも返還負担を感じている方々が多いという点から,特に低所得者層について現行制度よりも返還負担が軽減される制度とすることが必要であるという観点を記載しております。

 3つ目の丸として,諸外国においては返還額が所得に連動する制度が導入されておりますが,未回収額が多額に上ることが問題となっております。新制度は一定の公的補助が必要となってまいりますが,我が国の奨学金制度は返還金を次の世代の,学生への奨学金の原資とする循環的制度となっておりますので,奨学金制度全体を安定的に運用していくためにも,返還額が確保される制度とすることが必要であるという観点でございます。

 4つ目の丸は,新制度は返還者にとって優しい制度とすることが望ましい一方で,そうした制度とすることで,例えば収入の増加を抑えることによって返還を免れるといったモラルハザードを生まないような,制度的なインセンティブ構造を考慮する必要があるという点を記載いたしております。

 4点目以降が実際の制度設計の観点,これまで御議論いただいておりました論点につきまして記載したものでございます。実線の枠囲みにつきましては前回までに方向性が示された事項,点線及び網掛けの部分につきましては今回御議論いただく事項を示しております。

 (1)対象の学校種でございますが,これはこれまでの御議論の中で,大学院についても対象とするということで方向性をお示しいただいております。

 (2)奨学金の種類につきましては,無利子奨学金から先行的に導入するということで,有利子奨学金については,その運用状況を見つつ,将来的に導入を検討してはどうかということでございます。無利子奨学金,有利子奨学金両方に導入することが望ましいが,ただしということで,有利子奨学金については返還期間が長期化することで利子負担が大きくなるといった課題がございますので,より慎重な検討が必要ということで,無利子を先行するということで記載をいたしております。

 (3)奨学金申請時の家計支持者の所得要件でございますが,これは所得要件を設けず,全員に適用するということで方向性をお示しいただいております。より多くの返還者に対して新制度を適用する観点から,現在300万円以下ということがございますが,全員に適用可能としてはどうかということでございます。

 (4)貸与の開始年度でございます。できる限り速やかな導入ということで,これから募集が開始される方々については,平成29年度新規貸与者になりますので,その方々から適用を開始すべきであるということでございます。

 (5)返還を開始する最低所得金額,いわゆるいき値でございます。これは年収ゼロ円から返還開始してはどうかということで御議論いただきました。年収ゼロ円と年収300万円それぞれ条件を設定して,回収金の予測を行いましたが,年収300万円からとした条件では回収金が著しく低減することが予測されましたので,制度全体維持の観点からも年収ゼロ円からが適当であると,現行制度においても開始の金額は年収ゼロ円となっております。

 (6)最低返還月額でございます。これにつきましては2,000円から3,000円ということで,返還の負担を緩和しつつ回収金を確保する観点から金額を検討することが必要であるということでございます。

 この新制度におきましては,年収が低い場合には所得がゼロに近くなりますので,最低の返還月額につきまして幾らとするかということが論点となっておりましたが,契約関係が継続していることを確認し,返還者の奨学金返還に対する意識を継続させるということで一定額の返還を求めることが望ましいという御議論がございました。このため,シミュレーションでは2,000円と5,000円ということで条件を設定いたしました。その結果,若干の差が見られるものの,制度趣旨に鑑みますと5,000円は高額であるという御意見がございました。前々回の会議では3,000円,5,000円,7,000円ということで選択肢を示して御議論いただいており,その中で前回は2,000円と5,000円ということで条件設定をいたしましたけれども,現在無利子奨学金の貸与区分のうち返還月額が最も低いものが3,666円でございますので,これを上回らない範囲で,これまで御議論いただいた選択肢の中から,返還負担を緩和しつつ回収額を確保するということで,2,000円から3,000円で検討してはどうかということでお示しをさせていただいております。

 (7)返還猶予の申請可能所得と年数でございます。申請可能所得は年収300万円以下,申請可能年数は通算10年,ただし生活保護等の場合は無制限ということでございます。また,奨学金申請時に家計支持者の年収が300万円以下の方については,返還負担が緩和されるように,申請可能年数を期間制限なしとすることについても検討していただくということで記載いたしております。この猶予制度は返還者の経済状況の急変に対応する措置とすることで,申請可能とすることが望ましいということ,また現行制度においても300万円以下ということが基準でございますので,それを合わせる形の設定が適当であるという御議論でございました。また,この年数につきましては制限を設けないという条件と,10年を上限ということで試算を行いましたが,期限を設けないとした場合,回収割合が相対的に落ち込むことが予測されましたので,奨学金制度全体を維持することを鑑みますと10年とすることが適当ではないかということでございます。なお,現行制度と同じく,災害,生活保護等の場合に期間の制限を設けないということについては同様の適用が必要であるということでございます。

 ただしということで,奨学金申請時に家計支持者の年収が300万円以下の方については,返還時に保護者等からの支援を望むことが困難でございまして,低所得者世帯への対応の観点から申請可能年数については現行制度と同じく期間の制限を設けないとすることについて,御検討いただければということで記載いたしております。

 (8)返還率でございますが,前回の会議で1から4までのパターンでシミュレーションするということで御指摘ございましたので,これは後ほど御説明させていただきます。この設定に当たりましては,現在,定額返還の中での,学部の奨学金の返還月額の最低価格が9,230円でございますので,これとの比較といった観点や,課税対象所得を算出するための所得控除といった観点を踏まえて御検討いただく必要があるかということで記載いたしております。

 (9)返還期間でございます。これは,これまでのシミュレーションの中で,シミュレーションの限界もございましたので,35年又は65歳ということで期限を区切ってシミュレーションいたしておりましたけれども,3として現行どおりということについても併せてお示しさせていただいておりました。このそれぞれの考え方につきまして,米印のところでございますが,35年につきましては,通常20年の上限設定でございますけれども,返還猶予が10年使え,また減額返還で5年間返還期間が延長されるということで,これを加えまして35年ということで仮に設定していたものでございます。65歳につきましては,現在の年金の受給開始年齢でございます。現行どおりということにつきましては,現行制度では,1のような形で最長の返還期間が設定されておりますけれども,期間終了時に返還が終わっていない場合には返還免除をされるものではございません.返還期間としては返還完了まで,又は本人が死亡等による返還不能となるまでということとなっておりますので,こういったことで現行どおりということで記載いたしております。

 (10)所得の算出方法については,課税対象所得ということで御議論いただいておりました。この課税対象所得,後ほど御説明いたしますが,マイナンバーによる取得が可能であるのは住民税の課税対象所得のみとなっておりまして,所得税の課税対象所得は取得ができない制度となっております。このため,住民税の課税対象所得を用いることについて検討してはどうかということで記載いたしております。

 (11)個人主義又は家族主義につきましては,前回の御議論までで,返還者が被扶養者になった場合につきまして,扶養者のマイナンバーの提出を求めて,提出があり,かつ返還者と扶養者の収入の合計が一定額を超えない場合のみ新所得連動返還型による返還を認める制度としてはどうかという御議論でございました。この返還額を決定する際の収入の考え方は,個人主義,家族主義がございますけれども,返還者が被扶養者の場合につきましては,返還能力がないという状況を自ら作り出すといったモラルハザードが生じないようにするという観点から個人主義とすることは適当ではないということで御議論がございまして,家族主義ということで記載をいたしております。

 次のページにその大まかな流れを書いておりますけれども,契約につきましては返還者本人のみしか拘束いたしませんので,扶養者につきましてマイナンバー等の提出を義務付けることはできませんけれども,1から4のような形で,返還者が被扶養者となった時点で,新所得連動型での返還を希望する場合には扶養者のマイナンバーの提出を求めまして,収入の状況を確認し,その合計金額が一定以下の場合には新所得連動での返還を認めるということ,一定額を超えている場合には定額の方に移っていただく,また提出がない場合にも定額の方に移っていただく制度としてはどうかということで検討を頂きました。

 (12)保証制度でございます。保証制度は現在,1の人的保証と機関保証の選択制になっております。また,2として機関保証のみということで,論点として挙げさせていただいております。新所得連動型制度におきましては,所得が低い返還者につきましては返還期間が長期化いたします。このため,人的保証である連帯保証人の場合には返還能力が終了まで確保されないケースが増えることが懸念されます。また,この場合,現在より高齢となった連帯保証人・保証人に保証を求めるということになりますので,過度な保証を強いるというおそれもございます。保証制度を機関保証のみとする場合には,機関保証に係る業務が増大するといった観点,また保証料率についての精巧な検討が必要になってまいりますが,保証制度の在り方として,奨学生全体で保証を分担するという互助会的な仕組みとする観点から,機関保証のみとする制度に移行することについて検討が必要ということで記載いたしております。

 (13)返還方式につきましては,新所得連動と定額返還いずれの方式とするか入学時に学生が選択し,卒業まで変更可能とするということについて検討していただければと思っております。

 5点目,今後検討すべき事項ということで,第1回の会議でお示しさせていただいておりました観点を含め記載いたしております。貸与総額の上限,貸与年齢の制限,学生への周知方法,海外居住者の所得の把握につきまして,さらには有利子奨学金への導入に係る検討,デフレ,インフレ等の経済情勢の変化に伴う詳細な制度設計の見直しといった観点が,この新所得連動については必要となってこようかということでございます。奨学金制度全般につきましても,割賦月額,また返還期間の検討,返還金回収における徴収方法,授業料減免,給付型奨学金,予約型返還免除に関する検討,民間奨学金事業団体との連携,返還終了者や民間企業による寄附の促進といった観点でございます。

 以上が資料3の御説明でございます。

 あわせまして,長くなりまして恐縮ですが,資料4をごらんいただければと思います。資料4は,前回御指摘のあったシミュレーションの追加分の説明資料でございます。

 下のグラフのところでございますが,まず現行制度の方でございまして,前回のシミュレーションにおいて定額返還型と所得連動型,左側のオレンジのバー2つでございまして,これは前回お示ししたものと同じでございますけれども,これを7・3の割合でミックスした白いバーを見ますと,93.3%が本人から回収され,4.8%が本人以外からの回収というデータでございました。新所得連動制度におきましても,本人以外からの回収の分が同じ割合になると仮に設定いたしまして,こうしますと保証料率等につきましても現行と同じ程度になってまいりますが,そう設定した場合には全体として95.1%の回収になるという予測でございます。本人からが90.2,本人以外からが4.9という制度となります。

 これをベースといたしまして,次のページでございます。下のグラフのところで,返還率と返還猶予の申請可能年数につきまして,それぞれパターンを分けたものでお示しをしております。真ん中の返還率,赤いバーのところでございますけれども,左から2本目のbと書かれておりますバーが返還率が9%,先ほどのモデル95.1%のものでございます。ここから左,返還率8%にすると94.3%,返還率を10,12と上げると95.7%,96.6%ということで,シミュレーション試算がなされております。また,右側の申請可能年数につきましては,返還猶予5年,10年,15年ということでございましたので,それぞれについて回収割合をお示ししております。

 続きまして,資料5をごらんいただければと思います。先ほどと関連でございますけれども,返還率をそれぞれ8%から12%までした場合の返還月額がどうなるかというシミュレーションでございます。一番下の水色のバーが8%,一番上の濃い青が12%でございますけれども,300万円のところをごらんいただきますと,これまで仮に置いておりました9%のところが8,500円でございますが,8%にすると7,600円,10%で9,500円,12%で1万1,400円という数字となります。それぞれ返還完了年数を右の四角で書いておりますけれども,8%から12%にするに従って返還完了年数が早くなるという傾向がございます。

 この説明資料は以上でございます。

 最後に,資料6でございます。控除につきまして前回御指摘がありましたので,資料にまとめてまいりました。実はこの控除,所得税と住民税で控除となる額が変わってまいります。所得税は国税,住民税は地方税でございますけれども,所得税,住民税でこれまで試算として用いておりましたのは上から3つ,給与所得控除,社会保険料控除,基礎控除でございまして,これにつきまして,給与と社会保険料につきましては同じでありますけれども,基礎控除は所得税では38万,住民税が33万ということで,控除額が住民税の方が5万円安いということでございます。

 以下様々な控除がございますけれども,生命保険料控除から下の方,地震,障害者,寡婦,勤労学生,配偶者,配偶者特別,扶養控除につきましては,全て住民税の方が控除額が低いということでございます。差額につきましては右に書いているところでございます。

 2枚目になりますけれども,これでモデルを立てて,どれぐらいの控除額になるかということで,返還月額まで計算したものでございます。本人の年収が300万円の場合,(1)でございますけれども,これは扶養等がございませんので,シミュレーションで用いていた上の3つだけの控除になりますけれども,給与所得控除は108万円,社会保険料控除は40万円,基礎控除は所得税で38万,住民税で33万ということで,ずっと下に参りまして控除の合計額が186万円と181万円ということで,課税対象所得は,所得税で114万円,住民税で119万円といった数字になります。返還月額は,住民税を用いた場合の方が若干高くなって,8,900円という金額になります。

 (2)本人の年収が600万,妻が専業主婦,ここに大学生とありますが,済みません,ちょっと記載が間違っていまして高校生でございます。高校生の子供が1人いる場合ということで,生命保険料控除ありという試算でございますが,この場合,給与所得控除が174,社会保険料が80,その下の方で生命保険料というところですとか配偶者控除,扶養控除というのが入ってまいりまして,控除の合計が,住民税の方で参りますと360万になります。課税対象額が240万になりまして,返還月額は1万8,000円という数字となります。

 御説明は以上でございます。


【小林主査】  どうもありがとうございました。いろいろ資料を丁寧に説明していただきました。資料がたくさんありますので,まず全体として今の御説明に対する質問等がございましたら,それからやっていきたいと思いますが,いかがでしょうか。どの資料のどの問題でも構いませんが,資料3については後ほど詳しく検討していきますので,特にそれ以外のところで御質問等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 またこの検討の中で質問が出てくることもあると思いますので,そのときでも結構です。そうしましたら,きょうは主に資料3を中心に,これが最終的な検討の,中間まとめの素案になっておりますので,ここを中心に議論していきたいと思います。先ほど特に後半にありました幾つか残されている検討課題を中心に議論していきたいと思いますが,一応ひとわたり見ていきたいと思います。

 最初の「はじめに」,それから,検討の背景とこれまでの経緯というところで,これは事実関係のところですが,ここまでで御質問はございませんでしょうか。あるいは,こういう項目について付け加えた方がいいとか,御意見でも結構ですが,6ページのところまでです。何かございますでしょうか。

これもまた後で付け加えるということもあるかもしれませんし,修正とかもまた出てくるかもしれませんので,そのときでも結構です。

 では,次に進めさせていただきますが,3番の現行の奨学金制度及び改善の方向性というところではいかがでしょうか。これもほとんど事実関係が1番目のところ,2番目に新制度の考え方及び改善の方向性というところで4点ほど書かれておりますが,これについてはいかがでしょうか。特に新制度の考え方のところですが,これもこれまで議論してきたことなので,余り御異論はないのかもしれませんが,ここが新しい考え方ということで出しているところなので,丁寧に見ていただければと思います。

 私の方で一言だけ付け加えますと,3番目,諸外国の所得連動型の奨学金制度についてですが,日本ではこういった原資として,奨学金を返還してもらって,それをまた次の原資にするという,一種のリボリビングという制度ですけれども,これは実は国際的にはかなり珍しい制度です。アメリカのパーキンス・ローンの一部でこの採用がされていますけれども,それ以外には,こういう考え方をとっていないということです。ですから,そこのところが少し日本独自の制度になっているということがあるかと思います。

 よろしいでしょうか。

 では次に,4番,新たな所得連動返還型奨学金制度の設計についてというところで,1番についてはもう既に御議論いただいたところで,これで問題ないかと思います。奨学金の種類についても,前回まで御議論ありましたけれども,無利子から先行的に行うと,将来的には有利子についても考えますということです。3番,申請時の家計支持者の所得要件は,全員に適用可能とするということですが,これについても特に御異論はなかったと思います。無利子について全員に適用するということです。4番,平成29年度新規貸与者から適用するという点についても前回までに検討済みであります。それから,返還を開始する最低所得金額ですけれども,これは前回のシミュレーションで,年収300万円からということでやりますと7割まで回収率が達しないということでありましたので,もう少し下げるということで検討したわけで,前回までで,年収ゼロからという形になったかと思います。ですからこれについても,特に御意見がなければ,このまま進めさせていただきたいと思います。ただ,前から申し上げていますけれども,相互に関連していますので,その過程の中でまた少し議論があるかもしれませんけれども,そのときには戻りたいと思います。

 最低返還月額ですけれども,これは2,000円から3,000円ということでありまして,これについても様々な意見が委員からございました。これについては,負担感というのは人によってかなり違いますので,2,000円でも高いと思う人もいれば,5,000円でも安いという人もいるわけでありますので,なかなかどのあたりが適切なラインかというのは難しい議論かと思いますけれども,現行の御提案では,3,666円が現在の最低返還月額ですので,それを下回る程度ということになると2,000円か3,000円程度であろうということになっているわけであります。これは新しい論点でありますので少し御議論いただければというふうに思いますが,いかがでしょうか。特に代案はございませんか。


【島委員】  要するに2,000円から3,000円の幅でどこにするかという議論が求められているんだと思うんですけれども,その一つ先にある年収ゼロ円から返還開始という形になっていることも考え合わせて,この2,000円を3,000円にすることによって,その回収率がどのぐらいドラスティックに変わるのかということを。そういう情報があればですけれども,それにさほど大きな差が出ないのであるならば,返還開始がゼロから始まるということだとか,昨今の経済状況を考え合わせて,2,000円にするというのは一つの考え方なのではないかというふうに思います。


【小林主査】  ありがとうございました。2,000円あたりが適当ではないかという御意見だと思いますが,ほかに御意見はございませんでしょうか。


【濱中委員】  ここで最低額に2,000円から3,000円という幅をもたせているのは,3,000円を選ぶとしたら,それは回収の金額が少しでも大きくなるだろうということで3,000円という設定をしているのだと思います。ただ,猶予の制度を基本的に残すということなので,逆に最低の設定額を高くすると,猶予を申請しようとする人が今度は増えるということになり,そうなると結局トータルでは回収金額は実は増えないのかもしれないということも起こり得るわけでして,私個人的にはなるべく低い額の方が望ましいかと思います。現状で,延滞の状態にならない人については,回収に要するコストも限りなくゼロに近いというか,かなり低い額だというふうに伺っていますので,最低額はなるべく低い額で設定する方がよいのではないかというふうには思います。


【小林主査】  ありがとうございました。低い方が望ましいという意見が続いたわけですが,いかがでしょうか。


【赤井委員】  ほかの制度,今おっしゃったように猶予がどうなるかとか,100万,200万になったときにどうなるかというのと,いろいろなところと併せながら考えた方がいいと思うんですけれども,例えば,これはまだ今検討するんですよね,この通算10年で猶予すると。ただ,もう2,000円というのに低くしてしまえば,猶予を余りしなくてもいいかもしれないし,もっと低くて1,000円だったら,もう猶予なしにしてもいいかもしれないし,ちょっと分かっていないことがあるかもしれないですけれども,資料2を見ていると,100万を超えたぐらいから上がり出すんですか,このグラフでは。そういう予定なんですか。


【小林主査】  先ほどの最低課税所得からです。


【赤井委員】  どこからまたこれが上がり出すかにもよると思うんですけれども,もっと早くから上がり出すというような仕組みにできるのであれば,ゼロ円のところは2,000円でもいいかもしれないし,それがずっとある程度,100万を超えても続くのだったら,初めからある程度高くしておかないと,財政的なところもあるので。だからそのあたりとの兼ね合いで,もし3,000円にするなら猶予のところは長くしてもいいかもしれないけれども,猶予を短くするんだったら,払うところを小さくするとか,もう究極的にはもっと少ない額でも払えるようにしてしまうように,例えば1,000円とかにするのであれば,もう猶予なしにもできるかもしれないし。このシミュレーションを見ていると,余りこの猶予のところの差が額に響いていないみたいなので,そこが分からないですけれども,そこのところの全てを考えながらベストなところを探すのがいいのではないかと思います。

 以上です。


【小林主査】  ありがとうございました。これは前から議論になっている点ですけれども,現在の青いラインがどの形で引かれているかということですけれども,先ほど最後にありました課税対象所得です。それがゼロになっている点がスタートラインになっていると考えていただければと思います。幾ら何でも課税対象所得がゼロの人からは取れないだろうと。ただし,それに対して少し手数料,あるいは返してもらうということを継続をしてもらうために2,000円なり3,000円なりを取るというのが一つの考え方だったわけです。ですから,確かに赤井委員がおっしゃるように,全部関連しているわけです。ですからこの問題は難しいのですけれども。


【赤井委員】  こっちが年収で,課税所得でなくて。この上がり始めるところが,いわゆる課税所得で,課税……。


【小林主査】  そうです,ゼロ。


【赤井委員】  になるということですね。分かりました。


【樋口委員】  よろしいですか。


【小林主査】  どうぞ。


【樋口委員】  2つの視点があって,これは返還する方の視点からは,濱中委員の言うように低い額から選択を増やした方がいいと。今度は返還される方のフィックストコストがあるわけですよね。例えばこれを送金で返還すると,銀行振り込みですというようなことになったときに,それは免除,振り込む方はされるんですが,銀行側にとってはコストが掛かってくる。そうすると,1円からでもいいですというようなことになると,その手数料というのは実質的に機会費用という形で銀行側の負担になってくるだろうというふうに思うので,少なくともその額は上回らないと,フィックストコストばかり銀行側が背負いましたという結果になる可能性があるのかなというふうに思います。そのバランスをどう考えるかというところだと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。それについては先ほど言われたと思うのですけれども,手数料的なことはむしろ日本学生支援機構からお答えいただいた方がいいかもしれませんけれども,実際1件についてどれくらい回収コストが掛かっているかということです。


【藤森奨学事業戦略部長】  現行では銀行から口座引き落としを毎月行いますが,1件いくらという支払をしており、通常より安価で行ってもらっています。


【樋口委員】  支援機構の方が払うんですね。


【藤森奨学事業戦略部長】  ええ,そうです。これは国から交付金を頂いておりまして,それで支援機構から銀行に手数料を支払っています。


【樋口委員】  銀行はそれでペイしているんですかという話。


【藤森奨学事業戦略部長】  財政的な裏付けを頂くまでは,ちょっと値上げは勘弁していただいている状況でございます。


【小林主査】  一応そういうことで,それ以外にももちろん,例えば機構としての人件費でありますとか,いわゆる事務コストというのもあるかと思いますので。ただ,そのあたりを含めても1,000円いかないというふうにお聞きしているのですけれども,それでよろしいんでしょうか。


【藤森奨学事業戦略部長】  全体の中でのコストで申しますと,今,委員長がおっしゃったように,1,000円に満たない金額で全体のコストは運営されております。


【小林主査】  どうぞ。


【樋口委員】  ついでにというか,これは後で出てくる課税対象所得といったときに,住民税というのが今回出てきていますね。住民税というと,1年前の所得に対して住民税の方は払う,所得税だとそのときの所得ということになるわけですが,時間的なラグという,その遅れというのはどうなってくるのかなというのがちょっと想像できないんですね。これは赤井委員の方がよく知っているんだろうと思いますけど,例えば国税というか,所得税であれば,確定申告をもって所得が決定するということでしょうから,次年度の,3月には確定するということだろうと思うんですが,それが今度,各自治体の方に情報として行くわけですよね。そうすると,どれぐらいの時間が掛かるのかで実は,前年のいつ,所得を基準にこの減免制度が適用されるのか,ちょっとそこら辺がまだ理解できていないので,どういう時間のずれが発生するんでしょうかと。だから本当に苦しくて,もう失業して所得がゼロになりましたという年には,多分これはそのまま,所得額が確定していないですから適用されないのかなという,ちょっとその感覚といいますか,どんなことになるんだろうというのを少し,この提案を教えていただくと有り難いのですが。


【小林主査】  事務局からお返事ありますでしょうか。


【川村課長補佐】  詳細な資料はございませんけれども,だいたい確定申告で所得税の方は確定すると思いますが,いずれにしても所得税につきましてはマイナンバーでは取得ができないこととなっております。その後,地方税の方で課税対象者とか,計算されて出てくるのは年度が明けてからということになると思いますので,その金額に応じて,どういうスケジュールで返還額を決定するかという運用のことも併せて考える必要があるかと思います。


【樋口委員】  だから考え方としては,例えば所得がゼロになったときには,当面は今までの蓄えから奨学金を返してくださいよと,ただ,底をつくでしょうと,どれぐらいの期間でつくかは人によって違うと思いますけど,そこでむしろ,次の年の6月ぐらいになるんですかね,実際にこれができるということになると。という,そこから認定をして,この制度が適用されるというずれなんですかね。


【赤井委員】  ちょっと確認なんですけれども,所得を捕捉するというのと,税金は幾らかという話とあると思うんですけど,現在のこの所得連動は,300万の上か下かというのは把握されてやっているんでしたかね。申請のときに見るということですけれども,年が終わって申請が来るんですよね。ということは,職がなくなって,今年は年収がなかった年は,まだ申請していないから払い続けているということなんですか。


【小林主査】  どうぞ,機構の方からお答えください。


【藤森奨学事業戦略部長】  現状ですと,前年の収入が,大体市区町村役場で証明書が出てくるのが6月頃になります。そこから前年の収入が出てくるということがまず一つございます。それから,急に収入がなくなった,例えば失業したとかというときには別途,例えばハローワークの離職票とか,そういった証明を頂くことで経済困難を認定できるようになっております。今ではです。


【赤井委員】  それを提出することで,毎月のが止まることになる。


【藤森奨学事業戦略部長】  はい。ですから今回も,ここで猶予ということが出ているのは,そういった場合,家計が急変したときには猶予という申請をしていただくというようなことが想定されているように御説明を伺っておりましたが。


【赤井委員】  そういうのが既にあるんですね,いざとなったら。


【樋口委員】  いざとなったら,緊急の場合は,この所得とは,年間所得とは関係ないといったらあれだけど,連動しないで適用するものがあると。


【藤森奨学事業戦略部長】  何らかの証明を頂いて,そういうことで。


【赤井委員】  でも,また急に職が決まって,急に稼ぎ出したらどうなるんですかね。でも,その猶予したのは猶予したとみなして,またそこから復活していくということですよね。だからそこはそれでやるということで,遅れるだけ。


【小林主査】  返還するというのが原則ですので,急に所得がなくなったときに確かに困るという問題はあるわけですけれど,諸外国の場合で所得連動型の場合にはその辺が,逆に言うと日本ほど柔軟ではない。つまり所得しか見ないというのが大原則でありまして,いろいろな事情を勘案し出すと切りがないというような考え方が強い。ただ,日本の場合は,そういう意味では日本の学生支援機構奨学金というのは,非常にある意味では返還者に対して寛大な制度でありまして,猶予期間が10年あるわけですから,そこでそれを使っていけば少なくとも10年間は何とかなるというようなことでありまして,しかも家計急変のようなことも認めるということになっているわけで,これは逆に言いますと,この制度を残すかどうかということをここで議論していただければといいかと思いますけれども。


【赤井委員】  例えば現行と新制度を見ていただいたら,現行の場合は,もう猶予しないと1万4,400円ですか,どんと掛かるわけですね。だからそれは払えないだろうということで猶予しましょうという話になるんですけど,今回新制度になると,職がなくなると大変なんですけれども,でも最低は払えるぐらいまで初めは抑えましょうという趣旨なので,せっかくここを下げているのに,猶予が期間制限なしから10年に変わるんでしょうけれども,せっかく下げているということは,猶予しなくても払える範囲まで落としてあげましょうという趣旨なのかというふうに思うので,この猶予が残っているというのはちょっと説明が,この変えた意味的には厳しいのかなと見ていたんですけれども,何か別の流れがあれば教えていただいたらと思います。


【小林主査】  猶予制度を残すということについて何か理由があるのかというような御質問だったと思いますけれども,ちょっと分けなければいけないのは,申請時の所得300万円以下の人に残っているというのは低所得者層対策で,現行の制度もそうなっているのですけれど,それを全員に対して適用を広げたときに猶予制度を残すということについての是非ということだという御質問だと思いますけれども,それについてはいかがでしょうか。

では,濱中委員からお願いします。


【濱中委員】  先ほど前回の議事録を読んでいましたら,同じ議論をしていまして,私も猶予の10年は長いのではないかということを申し上げたのですが,先ほど樋口先生がおっしゃったように,家計が急変したときに,そのタイムラグ分,1年分をやはり見なければいけないので,猶予を全くなくすというのはどうも現実的ではないだろうということで,少なくとも猶予は残そうと。そのときに,では何年にすればいいのかというと,現行が10年なので,短くすると改悪したというか,制度を厳しくしたように社会的には受け止められるので,当面10年でいかざるを得ないのではないかというのが10年の猶予期間の根拠ということになろうかと思います。

 今,小林先生がおっしゃった,進学時に保護者の収入が300万円以下のいわゆる低所得層出身の方に対しては,将来の返還負担を進学時点でなくすというために無期限の猶予を認めましょうという制度で始めているわけですが,これについては,小林先生がおっしゃったように,低所得者層,幾ら将来所得に応じて返しやすくなるとはいえ,基本的には低所得者層に対する,ある種給付的な部分もありますので,これも完全にやめてしまうと現行より後退しているというふうに捉えられるのは余りよろしくないかなと思えば存続させると,そういうことでよろしいのではないかと思います。


【小林主査】  ありがとうございました。

 どうぞ。


【島委員】  今(7)の話の方になっていると思うので,こちらについて僕もちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず,奨学金申請時に家計支持者の年収が300万円以下の者についてというところです。これは現行の制度との整合性という観点からはまず理解できるし,低所得者層に対する配慮ということでも理解はできます。ただ,大学生の親の年齢が,例えば50歳とか,もう少し上だとかというふうに仮定したら,猶予を10年間した後は,もうその人たちはリタイアしているような年代になっているので,借りたときの年収で家庭の状況を把握することにどれだけ正当性があるのかというのがまず1点あるような気がします。

 もう一つ,先ほどから2,000円なり3,000円なりと減らすのだからという話がありますが,もちろんそれは収入がかなりある人にとって,例えば299万円ある人にとっての2,000円とかそういうふうな話と,本当にゼロに近い人の2,000円では全然違う話になってきていて,実際問題,今,減額返還制度や返還猶予制度がある中で,それでも返すことがうまくいかずに,個人信用情報に登録される人の数というのは年々増えているといった状況があります。しかもシミュレーションが15年の場合どのくらい返還率が落ちるかといった場合に,そんなに変わらないんですね。そういうふうなことを考えたときに,僕は逆に,今回のこの所得連動型奨学金制度というものが教育機会の均等の理念に向けて,当然返せる人からは返してもらうのだが,返すことをおびえることによって進学機会,借りることそのものに対するブレーキが掛からないようにするという意味においては,本当に返せない状況にあるということが分かる人たちに関して10年を仮に15年にするという考え方だってあるのではないかというふうに思います。そのときに,この300万円以下の人については無条件で免除というものと併せて考えなければいけないとは思うんですけれども。


【小林主査】  議論になっているように,相互に関連しておりますので,6,7,それから返還期間の問題もそれに後から関係してきますし,保証の問題も関わって,非常に多くの項目が連動していますので,なかなか分けて議論するというのは難しいわけですけれど,事務局の方で何かありますか。特によろしいでしょうか。


【島委員】  ちなみに,事実確認として,個人信用情報機関への登録の新規件数は年々増えていると,26年度で1万7,000件になっているかと思うんですけれども,一方で,猶予制度を26年度に5年から10年に延長したというふうに書いてありますが,これは26年度は25年度と比べて4,000件ぐらい増えているんですけど,この変化をしたにもかかわらず増えているというふうに理解してよろしいんでしょうか。5年から10年に返還猶予期間を延ばしたにもかかわらず,25年と26年で比較して,ちょっと手元のデータなんですけれども,4,000人程度,登録件数が増えているというふうに理解してよろしいんでしょうか。


【小林主査】  機構の方,御回答ありますか。


【藤森奨学事業戦略部長】  ちょっと今,先生が冒頭に言われました資料等が手元にないのであれですが,まず,これまで5年間が上限で,それ以上猶予できないということだったので,新たな制度ができると,これまで例えば半額ずつ返していて無理をしていた人たちの中から,やっぱりもう少し猶予してほしいという方たちが出てきて,6年目,7年目の人たちがまず申請をしてきたということがございます。それからあわせて,新しい制度の中で,一定の条件の下に,延滞がある方についても猶予をするというようなことも認めておりますので,そういったこともあって,間口を広げて申請件数が増えたというふうに理解しておりますけれども,お答えになりますでしょうか。


【島委員】  はい。


【小林主査】  よろしいですか。ほかに御意見。先ほどから申し上げていますように,6,7,8はちょっと違いますけど,9あたりまで,もう議論になっていますけれど,そのあたりのことで何かございますか。

 どうぞ。


【吉田委員】  新所得連動型の年収300万円以下の場合にも返還猶予が申請可能という点についてなんですけれども,返還者に対して制度が寛大であるにこしたことはないんですが,やや複雑になるかなという気もいたします。資料5を見ますと,例えば8%で掛けた場合に,300万ですと最低7,600円,年収300万円の時点で返すわけですが,この7,600円を返すのが嫌だと,返せるかもしれないけれども返したくないという人がもしいた場合にも猶予申請が可能になるということですよね。それだと所得連動型の制度が,制度として新しく充実させようとしていることがちょっとぼやけてしまうような気もいたします。ですので,余り複雑にならない,分かりやすい制度であるということも必要であると思いますし,この猶予制度を新所得連動に入れるというのもちょっと検討が必要なのではないかなという気もいたしますが,いかがでしょうか。


【小林主査】  猶予10年ということについては,先ほど赤井委員の方からも,なしということも考えられるのではないかという御意見があったかと思いますけれど,そのあたり一つの焦点になっておるようですが,いかがでしょうか。これは先ほど,逆に現行が10年ということで,これは平成26年に5年から10年になったということで,そういう制度ができたわけでありますので,それが後退した印象になるのはよろしくないという意見と両方あったと思いますが,それについていかがでしょうか。なかなか難しい問題ではあると思いますが。


【赤井委員】  確かにそこの部分が後退したというか,改悪みたいになるかもしれませんけど,これまで1万4,000円だったのがぐっと下がっていますから,その部分で優しくなった部分もあるので,全体でどうかという話。


【島委員】  それに関しては少し気を付けなければいけないのは,もちろん1万4,000円というのが基準としてありますけれども,そうした状況で返せない人たちに対して,例えば減額返還制度とかがある形になっているので,恐らく今議論していることは,1万4,000円を返せている人と単純に比較してはちょっとまずいのではないでしょうか。減額返還制度を受けて今必死に返している人たちを想定しながら議論しなければいけないのではないでしょうか。


【赤井委員】  それは確かにそれぞれ個別の人にとって,影響は異なると思います。全員がどうかというのは,もちろん。


【小林主査】  資料5で見ますと,この1万4,400円ということに対して,8%だと300万円で返還額が7,600円と,大体半額ですね。ですからまさしく減額返還を適用したというような形に近くなったわけですけれども,先ほど,このパーセントの問題,返還率の問題は別だというふうに申し上げましたけれども,これも実はやはりそういう形で関連しておりますので,考え方としてはどこの負担を減らして返しやすい制度にするかということと,できるだけ回収を見込むということの両方を,一番良い制度を作るということでずっと進めてきているわけですので,そのあたりについてもう少し御意見を頂けたらと思いますが,いかがでしょうか。


【赤井委員】  資料4の2枚目で,総回収額の表を見ているんですけれども,今の1万4,400円,現行所得連動返還型の場合はマイナス223億円ですかね,総回収額の減で。新しい図,返還猶予が10年で2,000円の場合はマイナス173.9億円ですか,下から2つ目,この赤のところは。ということは,今の猶予10年でも,昔のものよりも回収は高まるということになるんですね,そういう理解でいいんですね。


【小林主査】  はい。


【赤井委員】  だからまあまあ,余計に取っているから,それをまた改悪と,改善と言うのかどうか分かりませんけれども,この額で見ればより取っているということなので,払える人に払ってもらおうというところは。これはもう期間制限がなくなったことの効果が大きいということですよね。


【小林主査】  それと,この200万,300万のあたりというのは結構ボリュームゾーンの人たちです。


【赤井委員】  だからその人もゼロにしていたのを取るようになったからということですね,10年以後はということですよね。だから前よりかは取るようになっているというところはあるので,あとは返還猶予を,どこまで認めるのかというところが一つのポイントなのかなと思いますけれども。

 でも,余りここのところは差はないですよね,例えば返還猶予が5年,10年,15年というのがありますけど,下で見てもどれくらいですか,オーダーが分かりませんけれども,3ポイントぐらいしか変わらないので。ただ,15年になるとちょっと変わるか。でも,そんなに変わっていないですね。


【小林主査】  どうぞ。


【濱中委員】  私は比較的楽観的に見ているんですけど,10年の猶予を残したとしても,現行でも300万円以下で猶予の申請ができる,資格と言ったら変ですけれども,猶予の申請が可能な年収の方で実際に猶予している人の割合は物すごく低いんですね。考えてみると,猶予の申請自体かなり手続が面倒ですし,一遍にできるのは12か月まででしたかね。だから少なくとも12か月に1回は自ら役所に行って書類をとり,なおかつ事情書と呼ばれるものを作文して提出して,それでも書類が不備で返ってきたりして何度もやりとりをして,やっと認められるような状態で,結構ハードルが高いんですよね。

 逆に言うと,今回はやはり最初から減額返還に近いような,かなり低い額に返還額が変わるので,今まで以上に,たとえ300万円以下の年収であっても猶予を申請する人の数というのは大きく減ると思うんですよ。だからそういう意味では,猶予期間を10年のまま設定するのは仕方ないけれども,それでは10年に設定したから,みんなそれで猶予を目いっぱい使うかといったら,多分そんなことはない。現在でも大学で卒業前とかにきちんと指導されるんでしょうけど,猶予したからといって別に返還総額が減るわけではないですから,むしろ,30歳を過ぎて子供ができたりして,ほかでお金が掛かるときに猶予期間を全部使い果たして,返還が開始されましたみたいなことにならないように,やはり返せるときにきちんと返していくような指導をお願いする。今回,返還月額も低くなりますし,繰上げ返還についてもJASSOはここでも寛大で,手数料無料で繰上げ返還をしていただいているそうですから,そういう仕組みの存在も含めて返還の仕方について,大学を卒業するときに指導というか,そういうことをきちんとやっていただくことがより重要かなというふうに思います。


【小林主査】  ありがとうございました。返還猶予期間についてはそういうような,いろいろな説明があったわけですが,いかがでしょうか。確かにこれはシミュレーション自体もかなり,どうしても条件設定で,実際にはもっと,返還猶予が掛かるような条件であっても返している人がいるということも事実なので,確かにそういった面も考慮する必要があると思います。


【赤井委員】  それほど変わらないということになるのであれば,できるだけ大変な人に猶予を持たせてあげるというのもいいかと思うんですけれども,質問ですが,この数字は単位はどうなるんですか。例えば,総額的に,財政的には10年と5年でどのぐらい変わってくるんですか。財務省的な発想から言うと。


【小林主査】  事務局,御説明をお願いします。


【川村課長補佐】  単位は億円になりますので。


【赤井委員】  億円だと,3億円というオーダーですか。例えば10年と5年の9%,2,000円の場合。


【川村課長補佐】  はい,そうです。


【赤井委員】  だとどうなんですかね,説得はできるような気が。むしろ逆の,この返還率のところの方が,パーセントで大きく変わるので,こちらとの兼ね合い。こちらを10年にするんだったら返還率のところをもうちょっと頑張るというか,何か考えるとか,そちらとの兼ね合いで。返還率の方が圧倒的に動きが大きいので,感想的には。財務省的な感想ですけど。返還率の話はどうしましょう。


【小林主査】  返還率については資料5を見ていただくのがやはり一番分かります。今の資料4は返還,回収見込みと,この実際の金額の形を見ていただくのが一番分かりやすいと思いますが,前回議論になったように,9%がどういう根拠かと言われると,イギリスがやっているということと,それ以外に,アメリカが10%ですけれど,そのあたりが負担としては妥当であろうという以外には明確な根拠があるわけではないですね。オーストラリアのHECSの場合には,だんだん所得に応じてパーセントが上がっていくというような累進的な構造を持っていますので,ただ,そういうことをやっても,前回シミュレーションで見たときにそれほど変わらないという話だったので,今回改めてそれを出していただいたわけで,それが資料4のところに出ているわけであります。

 どうぞ。


【赤井委員】  資料4の見方のところですけれども,どうおっしゃいましたか。今の定額の人が連動に移るというのも入っているんでしたか,これは。今実際の負担額は幾らなんですか。67.7億円なんですね。


【川村課長補佐】  はい。最終的には。


【赤井委員】  これは7対3の割合で今分布していて,この返還,このシミュレーションはそれが何対何になるという判断ですか。


【川村課長補佐】100%。


【赤井委員】  100%所得連動に移動した場合という理解なんですかね。


【川村課長補佐】  はい。


【赤井委員】  財政負担的にこの67億円が170億円ぐらいになるということで,100億円ぐらい増えるという理解でよろしいですか。


【川村課長補佐】  はい,そうです。


【赤井委員】  財政負担的には。だから多分議論のポイントとしては,海外を見れば9%ということになると思うんですけれども,財政的に100億円増えるということになるので,この低所得者に優しくする政策が100億円の価値のある政策というか,100億円を出してでも行うべき政策になっているのかどうかというようなところで一つは議論になるかと思います。ただ,返還率の差でこれだけ大きく出てくるということは,基本的にはこの返還率を変えても,低所得者層のところはそれほど影響を受けていないですよね。一部,資料5で見ると200万と300万あたりのところが少し多めに払うというところで影響は受けていると思うんですけど,より大きくお金を吸い上げているのは500万,600万のところという理解になりますよね。ということになると,本来の目的が低所得ということになってくると,これはちょっと財務省的かもしれませんけど,返還率を上げても低所得のところは余り変わらずに財政負担は減らすことができるというようなことになってくるので,それを考えると,9%が妥当なのかというのは,このお金の負担の関係からもう少し考える余地はあるのかなという気はします。


【小林主査】  確かに,先ほど申し上げましたように9%というのは一つの考え方としてやったわけですから,今回初めて8%から12%まで全部出していただいて,これだけ変わるということですが,ただ注意していただきたいのは,これは所得連動型を全て採用した場合にこうなるということなので,実際はどの程度の人が所得連動型,定額型ではないものを採用するかというのは分からないので,定額型を採用する人がもう少し多いとまた回収率は変わってきますけれど,そのところは少し注意していただきたいと思います。


【赤井委員】  財政負担が減るということですね。


【小林主査】  財政的には,定額型の方がフラットですから,回収率は上がるはずです。

どうぞ。


【濱中委員】  今のシミュレーションの話について,ここに出ている数字は恐らく35年後の回収状況ですよね。


【川村課長補佐】  はい。


【濱中委員】  基本的にこれは,定額を2,000円にするか3,000円にするかはともかくとして,35年後にまだ御存命であれば,当然2,000から3,000円ずつ返還していくので,最終的な回収率はもう少し高くなるというふうに理解していいわけですよね。逆に,このシミュレーションの限界だと思うんですけど,今は12%まで結果を出していますけど,回収率だけに着目してしまうと,所得に対する返還率をものすごく高くして,例えば20%とか30%にすると,恐らく早く延滞になるので,早期に代位弁済に入る方が増えて,結果的に回収率が上がるという,ちょっと変なシミュレーションになるはずです。恐らく回収率だけに着目してこのシミュレーション結果に基づいた議論をするのはもうこの辺が限界で,どうも回収率この辺に収れんするということは確かなので,ここでこちらの方が何%回収率が高いという議論をしても,余り意味がないのかなという気がするんですけど,どうでしょうか。


【小林主査】  意味がないというのは,どういう意味ですか。


【濱中委員】  だから回収率は大体この辺に落ち着くので,1%ぐらいの差を見てこちらの方が有効だというのは,現実本当にそうなるかというのはかなり怪しいんじゃないかなというふうに私は考えていますけど。


【赤井委員】  今のがちょっと理解できなかったんですけど,代位弁済でこの額が変わるということでしたか。もうちょっと明確に,きちんとシミュレーションすると,実際は,例えば9%のときに総回収額の減,ここに出ている額がもっと,要するに財政負担がもっと減るということですか。財政負担が,例えば1%変わると,20億から30億変わるということですよね。だけど,そんなに変わらないという意味ですか。


【濱中委員】  代位弁済の問題は抜きにして,恐らくそこまで正確には推計できていないのではないかと思うんです,この1%というのは。そもそもこのシミュレーションではかなり仮定を置いて計算していますし,回収率は返還原資をどうやって計算するかにかなり依存するわけですが,それ自体はマクロ統計からとってきて,ここに当てはめるということをかなりやっているので,もうこれ以上精度の高い推計というのは難しいかなと。だから1%の差で何十億変わるといっても,多分誤差がやはり何十億の範囲であるような推計になっているのではないかと思うんですけどね。


【小林主査】  ですから,このシミュレーションだけで回収を予測するというのはかなり難しいということもありますし,前回御指摘がありましたように,そもそも30年先の話が本当に予測できるのかという問題もありますので,これだけに頼るというのは確かに問題かもしれませんけれども,逆に言うと材料としてはこれしかありませんので。


【赤井委員】  確かに将来のことで分からないということもありますけれども,財務省としても,説明をしないといけないし,予算もある程度考えてこれは制度設計をしないといけないので,誤差はあるにしても,どこだというのはある程度の数字を見ながら決めないといけなくなるし,どうなんでしょう。財務省的にはもっと,10%とか12%を目指したいんだと思いますけれども。そこは別に,財務省はそうですけれども,それが社会にとっていいかどうか分からないので,世間的にこの数字,誤差はあるとしてもこの数字が正しいとした場合に,これだけ負担が増えたとしても,それは結局,国民全員でこの制度を守るのか,実際借りた人からの返済で制度を運営するのかというだけの違いだと思うので,そこは国民としてどう考えるのかというところになっていくんだと思いますけどね。でも,そこはある程度ストーリーを作っておかないと,なかなか財政当局の説得は難しいのかなという気がします。


【小林主査】  財政的な御説明は今のとおりだと思いますが,ほかの委員の方はいかがでしょうか。確かに20億,30億ぐらい,年間ですからそんなに小さい金額ではないわけですけれど,それだけ違うことについてどういう判断をするかという,これはかなり複雑な問題ですけれど,いかがでしょうか。


【赤井委員】  もう一ついいですか。これで終わりにしますけれども,この所得連動という言葉の響きから,まず世間一般の人が聞くと,所得連動なんだから所得の低い人はできるだけ低く,上がった人は高くというようなイメージを持っていると思うので,本当に所得の低い人のために制度はどれがいいですかと選ぶというところだと,できるだけ負担の低いものにということになってきますけれども,今のこのパーセントの大きな差が,ある程度所得を持った人との間でなされているとすると,その中でも一番低い8%を選ぶべきだというところは,財政的になかなか説得が厳しいのかなというところがあります。もちろん皆さんの意見は違うかもしれませんが。

 以上です。


【小林主査】  ありがとうございました。

 それからもう一つ,これも既に御説明ありましたけれども,資料5を見ていただくときに少し注意していただかなければいけないのは,例えば12%にすると月額3万円というようなことになってしまうわけですけれども,ここに至るまでには,もうほとんどの人は返し終わっているわけです。突然年収が600万円ぐらいになった人は3万円返さなければいけないのですけれども,実際には,モデル的なケースでいうと,それ以前に,13年でもう返還が終わっていますので,若干猶予期間とかを付けたとしても,ここまで上がるということは現実の問題としては余りないと,そういう図だというふうに理解していただきたいと思います。

 ほかにいかがでしょうか。今,特に返還率のことが議論になっていますが,これも先ほど来出ていますように,全部関係しているので,なかなか議論が難しいわけですが,財政的にはもちろん返還率が高い方が望ましいという御意見だったと思いますが,いかがでしょうか。

 先ほど,当初の議論で2,000円か3,000円かということもこれに関連しているということがあったのですが,確かにこれについてはシミュレーションをまだやっていないと思います。2,000円と3,000円がどれぐらい違うかということについては。5,000円というのはやりましたけど,3,000円というのはやっていないので,これは次回までにシミュレーションをやってみて,どれくらい金額が変わるかと,回収金額がどれくらい変わるかということは少しやってみる必要があるかなと思います。その上で,返還率のこともありますので,両方が連動しているということは御指摘のとおりなので,そういう形でシミュレーションを少しやり直すということは一つ,私たちの方で考えてみたいと思いますが,それ以外にいかがでしょうか。


【島委員】  赤井委員がおっしゃるように,先ほど僕は教育機会均等の理念という話をさせていただきましたけれども,理念を支える制度がサステーナブルでないと,やはり当然まずいわけで,そういう観点から考えたときに,たしか前回か前々回,この8%というのが,現行の支払の額と,年収を一定の額に想定したときに,余り変わらないので8%という話だったかと思うんですけれども,この率を上げることによって返還のスピードが変わるということなわけですよね。そうすることによって,より回収スピードが上がって,制度が安定化していくというのであるならば,やはりそこは,比較的低い所得の人に対する配慮を考えるのと同じように,健全な形で返せる人で,奨学金制度の安定化に貢献できる人たちに対する協力の求め方というのはやはり考えるべきだと思うんですけれども,この8%,9%,10%,12%といったときにマクロでどのくらい回収額が増えるという観点ではなくて,個人で考えたときに,どのくらいまでなら上げられるというふうな形での議論というのはできないんでしょうか。なかなか難しいとは思うんですけれども。


【小林主査】  どのくらいというのは,負担に耐えられるかとか,そういう意味ですか。


【島委員】  そういうことです。


【小林主査】  それは一応,このシミュレーション上では収入と支出を見て,払えるかどうかということを決めているわけですが,それを更に補正しているのは,収入と支出を考えると払えないですけれども,現行はそれでも払っていると,それは何らかの,家族なりほかの方が補助しているからそういうことができているのではないかという仮定で補正をしてシミュレーションをやっているわけです。ですから現実的で,ただ,先ほど濱中委員が言われたように,シミュレーションというのはそういういろいろな仮定を置いてやっていますので,これ以上突き詰めるのはかなり難しいわけです。

 もう一つは,先ほど少し申し上げましたけれども,オーストラリアの仕組みは返還率が累進的に上がっていく仕組みです。ですから,これは所得の低い人にとっては更に低く,高い人にとっては更に高くなるという,そういう仕組みですが,前にやったときにはそれほど回収が変わらないというたしかシミュレーションだったので,この案は採用しなかったと思うのですが,それはもう一回,今のような議論を経ていると,考えてもいいのかなというような気はするんですが,いかがでしょうか。


【濱中委員】  今の所得に応じて返還率を変えるというのは,ちょっと複雑になり過ぎるので僕は余り勧めません。一方でちょっと考えなければいけないのは,今回の新制度では,現行と同じ定額返還の制度と併存させるということが一応決まっているわけですよね。そうすると,これも大分前の会議のときに言いましたけれども,資料5の青い線で書いてあるものが1万4,400円とどこで交わるかということが重要で,これは返還率を上げると左側にどんどん寄っていくわけです。そうすると,これが余りに低いところで,例えば12%の場合350万ですから,350万を超えてしまうと現行よりも高い額を返さなければいけないことになってしまうんですね。それが将来の賃金プロファイルの予想の中でいつ訪れるか,これが余り早い時期に350万に達するような返還率だと,所得連動型を選ばない方がいいんじゃないかと思う人がかなり出てくるわけです。そうすると,やはり400万とかその辺で交わるのが良いのではないか,400万以下という人はかなり数多いですから。どこで交わるかというのは,単に返せるか返せないかというよりも,選ぶという観点からいえば,いつ頃交点の所得に到達するのか,言いかえれば現行よりも高い月額を返さなければいけないのが何年後に来るかという,そこがかなり重要だと思うんですね。そういう意味で,やはりこの9%とか10%あたりがちょうどいいラインなのかなというのが私の理解です。


【小林主査】  どうぞ。


【川村課長補佐】  補足させていただきますと,1万4,400円という数字につきましては,返還額の中で最も高い数字でございまして,報告書の中でも9,230円というのが最も低い返還額となっております。9,230円から1万4,400円の中に,定額の返還の中に今分布がございますので,その額とそれぞれ比較するということが必要であろうかと思います。


【小林主査】  今の説明をもう一回,明確にしたいんですけれども,そうしますと1万4,400円というのが一番高いということになりますと,9,230円という一番低い額の場合には,今,濱中委員が言われたのが,ますますクロスするのが早く来るということになります。


【濱中委員】  それは余り関係ないんじゃないですか。


【小林主査】  いや,ただそうしますとクロスポイントが左側に寄るわけですね。


【濱中委員】  そうではなくて,9,230円というのは国公立の自宅生の4年制の場合ですか,それとも。


【川村課長補佐】  月額3万円。


【濱中委員】  月額3万円の場合が9,230円ですか。今回の所得連動の場合は,確かに,所得の何%ですから,もしかしたら現行よりも高くなってしまう可能性があるわけですよね。現行だったら9,230円ずつ返せばいいのに,所得に応じるがために,早くというか,最初の段階でもしかしたら高くなってしまう人が出る可能性があるということですか,300万の線で。


【小林主査】  いや,だからこのラインでしょう。


【濱中委員】  そうか。横に,9,000円のところに線を引けばいいのか。


【小林主査】  だから,そうしたらもっと左に寄ります。


【濱中委員】  もっと左に寄りますよね。そうすると,多分3万円の人とかは,そもそも最初から所得連動の方を選ばない可能性が高いんですかね。


【小林主査】  そうだと思いますね。これはモデルケースでやっていますからそういう形になっていますけれども,所得連動の方は,今御指摘あったように,借りた額に関係なく所得に応じて返すわけですから,このラインが固定しているわけですけれど,貸与総額の方が変わってくると割賦額が変わってきますから,そのことも考慮しなければいけないということになります。

 議論の最適解というのがどうもなさそうな感じがしてきたのですけれども,そもそもトレードオフのことを議論しているので。


【赤井委員】  財政的に言えば,新制度というか,所得連動を厳しくして,定額返還にみんな行ってしまうと財政的にはいいわけですね。だけど,そもそもの趣旨が,そういう新所得連動で貧しい人を救ってあげましょうということの趣旨からすると,ある程度の人は新所得連動に行ってもらわないといけないということもありますから,そこのところは難しくて,一番面白いというか,議論しやすいシミュレーションとしては,このスイッチングが8%から12%に変えることでどう変わっていくのかというシミュレーションができれば。今は全部移ったというので議論していますけれども,何らかの仮定を置いてもいいので,何%のときぐらいだとこれだけ移るとか,そういうのがあれば,もうちょっと正確な財政負担というのが出るのではないですか。


【小林主査】  それは……。


【赤井委員】  内生化できないんですか,このどちらを選ぶかの割合を。この率によって。


【小林主査】  ただ,それは仮定として。現行は3割ですけれども,それがゼロから100まで当然ありえます。それ自体はそんなに難しいシミュレーションではないですから。


【赤井委員】  仮定すれば。


【小林主査】  仮定すれば。ただ,そのどこに落ち着くかはもちろん分からないですけれども,それはやってみる価値は,そんなに難しい話ではないので,あるかと思いますが。


【赤井委員】  先ほどの濱中理論に基づけば,ここでスイッチするという理論がありましたから,それに基づくとどれだというのがある程度出てくるかもしれないです。


【小林主査】  いかがですか。


【濱中委員】  それは相当難しい,やろうと思っても。一つあり得るのは,現行の奨学生にアンケートか何かとって,これぐらいのときだったらどっちを選びますかという形で調べるわけですよね。多分それしかないと思うんですね,やり方としては。だとすれば,かなり厳しいし,そもそも返す人が,そんなにきちんと分かって返しているかというと,それもかなり怪しいので,難しいんじゃないですかね。要するに返還率が何%だったらどちらを選ぶという関数を出そうという話ですよね。


【小林主査】  個人単位で選ぶという話と,総額として,この新所得連動を選ぶ人がどのくらい,定額を選ぶ人がどのくらいかというのは,それは簡単な話なので。


【濱中委員】  いや,要するに返還率と選択率の掛け算でマトリックスを作るとなると,物すごい数を計算することになるので,余り現実的でないような気がするんですけどね。


【小林主査】  そこまで複雑な,いろいろなことを考えると。


【赤井委員】  だから返還率で。


【小林主査】  ええ,返還率を固定した上でということになるかと思います。


【赤井委員】  それぞれ3パターンとか4パターンやれば,そんなには。


【小林主査】  分かりました。

どうぞ。


【樋口委員】  白熱している議論の中に少し水を差すような議論で申し訳ないんですが,今後検討すべき事項というところに実は物価の話が入っているんですよね,例えばデフレ,インフレ。それで,完全な経済人であって,お金を借りて,無利子ですといったときに,今議論しているのは,どのタイミングで返還するのが合理的であるだろうかというようなことを考えると,利子が発生すれば実質利子がどうなのかとかという話が出てくるんですが,これは利子がないですから,もう物価だけなんです。物価によって価値がどう変わるかという話になってきて,実は物価がすごく,一番重要な要因になってくるんだろうというふうに思うんです。

 例えばデフレの下で,例えば返還時期が先送りされますということになれば,実質的な返還しなければならないものというのは重くなるんですよね。だから一見,10年間猶予されたというふうに見えるんだけれど,猶予されたというよりも,重い荷物を将来に背負わされたという,デフレの下ではなってしまう。インフレだと逆ということで,今までまさにずっと,この失われた20年は別として,インフレだったから,金を借りても結局返すときには実質的に返すものが少なくて済んだという。

結局は物価というのがすごく影響を及ぼす話で,今の議論というのは何となくスタティックな議論になっているので,ここのところが,今後検討すべきというところにすごく重さがあるなと,これ次第,というところになってくる。今後インフレになるでしょうか,デフレになるんでしょうかというのが実はこの議論にすごく重要なポイントになってくるというのが,ホモ・エコノミストとしては考えるでしょうね。


【小林主査】  おっしゃるとおりでありまして,それと,樋口先生に申し上げるのは釈迦に説法ですけど,結局所得がどう動くかということですよね。所得プロファイルがどういうふうに動くかということで,これは所得連動ですから当然変わってきてしまうわけで,その2つの,物価水準と所得の将来予測というので動くわけで,これは両方が連関してまた動いていますから,非常にややこしい話です。イギリスでは,それで回収率の予測が大きく変わってしまうということが起きています。


【樋口委員】  所得については,多分,名目所得,実質所得の話ですから,物価の変動による影響というのは。そこは今,ここでの想定は要するに物価変動はゼロというふうに考えている。


【小林主査】  そうですね。


【樋口委員】  だから名目も実質も同じですというふうに言って,やってきたんだけれど,どのタイミングで返すのがいいんですかというときには,物価がすごく重要になってくる。だから,免除されて10年間よかったですねと思ったら,物価の方は実は半分に下がっていたといったら,10年後から2倍,実質的には返還していかなくてはいけないという重荷を背負うという話なんですよね。返そうと思っている人の話ですけど。


【小林主査】  そこは今さらっと書いてありますけれど,将来的にその問題はかなり,おっしゃるとおりに大きな問題なので,もう少しその将来課題のところに今のようなことが問題であるということは書き込んでいただいて,ただ,ここではこれ以上この問題を議論するのは難しいと思いますので,まだこの会議はどうも続くらしいので,また検討するということにさせていただければと思います。

 いろいろ御議論いただきましたけれども,きょう100%決めるというのは難しい議論だと思いますので,2,000円,3,000円問題も両方の御意見がございましたし,それから今の返還率についても高い方がいい,低い方がいいという両方の意見がございましたので,このあたりは,先ほど言いましたシミュレーションも含めて,私の方で少し,もう一回,議論を次回までに整理して,またお示ししたいと思います。


【赤井委員】  是非2つの制度の,どういう比率でとかが。何か情報があった方が。


【小林主査】  確かに両方あった方が分かりやすいと思います,おっしゃるとおり。

あと,もう15分程度しか時間がないのですが,議論していないのは返還の期間の話と所得の算出方法,さらには保証の話ですけれど,全部は議論できないかと思いますが,返還期間については,これはシミュレーション上は,もうどこかで区切らなければいけないとうことがありましたけれども,当然のことながら,これも回収額で言いますと,長ければ長いほど回収はもちろん進むわけでありますが,これについてはいかがでしょうか。

 これについてもいろいろな考え方がありまして,イギリスの場合30年というようなことが一つ,元々は25年だったのですけれども,30年ということにしましたし,オーストラリアの場合は本人が死亡するまでということでありまして,いろいろな考え方があるところですけれど,いかがでしょうか。


【島委員】  要するにこういう返還に関わる管理のコストとかということを考えたときに,死亡するまでというふうな形で延々と追い続けるというのはやはりいろいろ難しい問題があるのではないかというのはお話ししたかと思います。一方で,65歳までということになると,最近生涯学習という形で,年齢が上になった人たちが奨学金を借りた場合に,あっという間に返還期間が終わってしまうという問題がこれから想像されるということがありました。あと,35年については,これは前回濱中委員がおっしゃったことなんですけれども,実際問題まだ働いているのに,35年たったから,収入もあるけどもう返さなくていいよという形になるのはどうなのかという話がありました。

 それを考えると,これは私個人の意見ですけれども,3がなくなったときに,1と2をミックスさせるということはできないんでしょうか。つまり,65歳になる前に35歳になった人は65歳まで払ってもらうし,比較的遅い年齢段階で奨学金を借りて,返還期間が極めて短いことが想定されるような人に関しては35年というふうな形で,ミックスするというのが単純には考えやすいのではないかと思います。


【小林主査】  それは新しい提案ですが,よくあるやり方ですね,どちらかを選択するということになるわけですね。いかがでしょうか,今そのような御提案も出たんですが。


【宗野顧問弁護士】  今の話を簡単に言えば,要は30歳までに借りた方は65歳までと,30歳以降に借りた方は35年は返してもらいますよという形に,整理するとなると思いますので,そうすると,先日ありました,高齢の方で学び直しの方についてそういう条件を設定しなくても,少なくとも皆さん,最低限35年は返してくださいよという形で枠を組めば,そこ以外の部分で差を設けなくても不利益はないし,一般の方は大体35年で返してもらうというのが現行の制度になっていますので,それが若い方だと65歳までというのは長い,負担が重くなるのではないかというふうに思われるかもしれないですけれども,実際のところは猶予とかがあっても,その期間で完済できるので,それは要は本当に少ない方は最後の方までこの2,000円とかで頑張ってくださいよと,それが65歳ですよという趣旨でいけば,別に特段違和感はないと思います。


【樋口委員】  この3の現行どおりではまずいんですか。何ゆえにこの議論が起こっているんですかね,35年あるいは65歳という1,2の方が新たに提言に出てきたわけですが,これは議論しなければ3になるんでしょう。


【小林主査】  現行は3ですが,これは別の委員の方から,年金の支給年齢というのが適当ではないかという意見があったというのが一つです。それが2です。1については,そこにありますように,現在の最長が35年だからということで一応選択肢として出してあると,そういうことですけれど。


【樋口委員】  これは何で年金だと,年金から返済してはいけない。年金にも課税するべきだという。


【濱中委員】  恐らくこれは最初の頃と少し議論の情勢が変わっていて,当初は,100万円以下の収入であればもうゼロ円の返還ということがあり得るだろうと,最低月額を2,000円とか3,000円に設定せずに,ゼロにする。そうすると,全く返さないのに名義上だけ債権が残っていて,それを管理するにはコストが掛かるだろうと,だからどこかで打ち切るんだという議論だったと思うんです。もう一つあり得るのは,イギリス,アメリカではやはり一定年数が来たら免除にするという仕組みがあるので,それに倣ったらどうかという考え方です。ただ,2,000円,3,000円の定額をもし設定するのであれば,樋口先生がおっしゃるように,現行どおりずっと取り続けるというのが一つの考え方としてはあり得ると思いますけどね。


【小林主査】  これも先ほど申し上げましたように,回収額自体はもちろん長い方が上がるわけですけれど,いかがでしょうか。異なる意見がこれも出ておるので,きょう全て決着するというわけにはいかないかもしれませんが,現行どおりということと,どちらか選択制にするというのが今出てきた意見ですが,いかがでしょうか。


【島委員】  例えば,実際現状で65歳よりも年齢がたっていて,多分恐らくそもそもそういう人はかなり少ないのではないかと思われるんですけれども,そうした状況の中で更に返還の状況みたいものを考えたときに,まさに,65歳以降も追跡するコストと実際の回収によるベネフィットみたいなのを考えたときに,余りそれをやることが有効ではないというふうな考え方はないんでしょうか,現状を踏まえて考えたときに。


【小林主査】  機構の方でそのあたりのことはお分かりでしょうか。


【藤森奨学事業戦略部長】  現行の制度ですと,元々約定は20年間ということがあります。それで猶予とか減額返還とかをフルに使っても,最大でも35年ということで,実際にはもっと若い人たちが多い。それ以前,それより延びてしまうと,言ってみれば延滞になってしまっていて,それで督促の対象とか,別の次元になってしまう。ですから今の新しい制度ですと,ちゃんと返していても,35年たってもまだ全体の何分の一しか返せていない人たちというのが出てくるということを前提にすると,ちょっと今やっている長期の方の管理とは少し次元が違うぐらいの状況になるのではないかというふうに考えられます。


【小林主査】  管理コストがというお話がありましたが,あるいは回収コストがという話がありましたが,それについては,確かに現行と同じとは言えないと思いますけれども,御参考までに現行ではどうなっているかということがあれば,教えていただきたいのですが。


【藤森奨学事業戦略部長】  きちんきちんと返していただいている方については振り替えがずっと続いていきますから,仮に2,000円でもずっと返していっても,そんなに大きなコストは掛からないということにはなると思いますが,ただ年齢が上がっていきますと,やはり本人の状況がいろいろ複雑になってくる。中には気が付かないうちに亡くなってしまう方とかもあるかもしれませんし,そういったことをどういうふうに整理していくかというのはちょっとまだ難しい部分でもあるし,恐らく相当な,時間が延びる分だけ累積的に人数が増えてきますので,現在400万人ぐらい返還者がおりますけれども,これがもっと増えてしまうというふうに想定されるかなと思いますが。

済みません,そのぐらいで。


【小林主査】  ありがとうございました。具体的な数字というのはなかなか出せないというのはおっしゃるとおりだと思いますし,先ほど来出ていますとおり,かなり長期にわたる問題ですから,インフレ,デフレみたいなことも予想が付かないということになってくると,なかなか言いにくいということはあるかと思います。

 あと残っているのが,これもきょう,無理にここで選択するということでもないと思いますので,こういう問題があるということを押さえていただいて,所得の算出方法ですけれども,これは,一つは技術的に,所得証明書がとれるのは住民税の方だけだということになりますので,所得税でやる場合には改めて機構側で算出式を作って,それに基づいてやるというようなことが必要になってくるわけですけれども,これもきょう決めなくてもいいことだと思いますが,それについてはいかがでしょうか。

 もう一つの論点は,資料6にありますように,現在のシミュレーションでやっているものは基礎控除までしか含んでいない形でやっているのですけれども,これに家族の控除のようなものを入れるかどうかということです。そのあたりが論点だろうと思いますけれども,いかがでしょうか。


【濱中委員】  基本的には課税対象所得を用いずに,JASSOで独自の計算式を作って控除額を決めて,返還金を決定するために所得を計算するというのは余り現実的ではないと思います。やはりきちんと公的に,役所から得られる書類に基づいて行うというのがよいかと思います。その場合,恐らく控除がもう掛かったものでしか証明をとれない可能性が高いと思われるので,当然控除があればその分を考慮した上で,それに一定率を掛けて返還額を出せばよいと思います。

 むしろ,ちょっと気になるのは,社会保険料控除です。ここでは300万のときに40万と仮定していますが,たしかに会社勤めをしていればこうなるはずですけど,実際,先ほどから問題となっている低所得者,アルバイトみたいな形で働いていて,年収が100万ぐらいの人で,本当にきちんと国民年金とかを払っているのかと。そうでなければ,社会保険控除分が減らされて,実は今シミュレーション上想定している額よりも,100万とか150万ぐらいのアルバイトみたいな人の返還額が少し高くなることをちょっと前から危惧しています。それはここで言ってもしようがないんですけれども,そういう問題が控除に絡んではあるかなというふうに思います。


【小林主査】  どうぞ。


【赤井委員】  税のところは本当にややこしいですし,住民税の仕組みとかも住民税ならではで,地域によっても異なる可能性もあるので,今後詰めていくことになると思いますけれども,どういうふうに考えていくのか。実際サラリーマンばかりではなくて,クロヨンの問題もありますし,所得はほとんどないけれども裕福に暮らしているような人も,そんなことを言い出すと切りがないと思いますけど,だからもとの所得をベースにある程度の式で計算するか,もちろんマイナンバーでこの所得をベースにするということはいいと思うんですけれども,だからそこのところはいろいろ考える余地があるのかなという気はしますけどね。

 ちょっと質問ですけれども,このマイナンバーで得られるのは課税対象所得のみと書いていますが,計算されるもとになるものも分からないということですね。全部引かれた後しか分からないということですか。


【川村課長補佐】  収入は。


【赤井委員】  収入は分かるんですね。だから幾ら引く前というのは分かるんですね。だからもとのを出して,こちらで仮想計算して,控除は決まった額を全員に適用するということは可能ですね。


【川村課長補佐】  はい。


【赤井委員】  その方が多分いいのかなという気はしますけど,特に大きいのはサラリーマンと,その辺の自営業の違いというところは影響するんだと思います。


【小林主査】  確かにおっしゃるように,その問題もありますので,ここで今その問題は全く議論していなかったわけです。ですから,この問題はもう少し議論する必要があると思いますけれど,きょう,もうそろそろ時間になりましたが,大体制度の骨格,方向性は出てきたと思います。あと具体的な数値を,2,000円にするのか3,000円にするのか,あるいは8%なのか12%なのかというような問題が出てきておりますし,幾つか解決しなければいけない問題があるということも事実なんですけれども,制度の骨格としては大体固まったのではないかというふうに私としては思っております。

 あと,保証制度の問題はきょう全く議論しておりませんので,この問題も,どういう形になるかというほかの問題と併せて考えなければいけないということもありますので,次回以降の課題ということになるかと思います。

 13についてだけ確定したいのですが,これは特に異論はないかと思いますけれど,2つの制度のどちらかを選択制にして,大学に入るときに学生が選択して。ただ,そうは言っても,それこそ定額の方がいいと思う人もいるかもしれないし,所得連動型にしたいという人もいるかもしれませんから,卒業するときにはもう一回選び直しが可能になると,そういうような制度にしたいというふうに原案としては考えていますけれども,これについては特に異論がないかと思うんですが,いかがでしょうか。

 どうぞ。


【吉田委員】  特に異論はないんですが,入学時に選択するというのは現実的には難しいかと思いますので,卒業時に恐らく選択をすることに実際なると思いますが,シミュレーターが必要ではないかなと思います。つまり,ウエブ上でもいいんですが,自分が就職が決まっていて,どれぐらいの年収があるかとか,そういう基本的なデータを入れると,どちらが,所得連動がよいのか,それとも定額返還がよいのかというのが比較して出てくるようなシミュレーターがやはりないと選択が難しいかと思いますので,その点については準備が必要かと思います。


【小林主査】  現在もJASSOのシミュレーションがあるわけですけれど,これをもっと,所得連動型は複雑になりますから,どういうシミュレーションを作るかという,これも検討課題だと思いますけれども,いずれにしてもそれが必要だということは御指摘のとおりだと思いますので,これは今後の課題というところに少し入れさせていただきたいと思います。

 どうぞ。


【樋口委員】  さっきの返還期間のところで65歳という話ですけれども,これは,現在の年金の受給開始年齢は基礎年金の話ですよね。それで,雇用保険法が今度改正されて,今までは65歳までが雇用保険の対象,これが外されるんですよね。年齢制限なしという形で,65歳過ぎても雇用保険に入れるし,逆に必要とすれば給付を受けられるというふうに,まさに生涯現役という形をとっていこうということの中で,65歳というのを上限にすることの合理性というのが,ちょっとやはり検討なさった方がいいのではないかというふうに思います。


【小林主査】  ありがとうございました。それについては確かに,年金支給年齢も変わるかもしれないという議論もたしか前回あったかと思いますので,これについてはまた,今の点含めて少し事務局と協議して,次回,もう少しそのあたりを整理したものを出したいと思います。

随分複雑な問題を御議論していただいていますので,なかなか時間どおりに進まないようなところもありまして,きょう全部が決着できなかったのですけれど,次回もありますので,そのあたりはまたもう一回,事務局とも相談して,案を出していきたいと思います。

 では,事務局から次回の予定について,よろしくお願いいたします。

 どうぞ。済みません,ちょっと待ってください。


【吉田委員】  済みません,ちょっと最後に1つだけ確認なんですが,平成29年から開始ということで確認があったかと思うんですけれども,28年に予約採用,候補者の選考を行う必要があると思います。間に合いそうなんでしょうか。いつ頃からそういった募集を掛けたり,また資料を配付したり,まだ決まっていない制度もあるんですけれども,その点についてどのような御準備をされていらっしゃるのかということだけ,確認のためにお聞きします。


【小林主査】  どうぞ。


【松尾大臣官房審議官】  今先生からありましたように,29年度の学生からということになりますと,28年の4月くらいにはある程度大まかな方向というのを示す必要がございます。恐らく細かな数字はまだ先でもいいと思うんですけれども,大体こんなイメージというのは,それくらい,この春くらいには示したいと思っております。それで,次回また開いていただくに当たって,今回一つ一つのタームでもっていろいろ御議論いただきましたけれども,多分いろいろなものが複雑に絡まっていますので,ある一定のバウンダリーコンディションを置いて,また次回,案を示して,例えば2,000円,3,000円,あるいは9%,8%というのはいろいろあるかもしれませんけれども,そこの数字を,ある程度仮定を置いて,これくらいのイメージということで,学生さん,あるいは親御さんにはお示しをして,そして詳細なスケジュール,詳細な数字は,例えば夏とか,そこで選んでもらうというようなこともあろうかと思いますので,そんなスケジュール感でさせていただければ有り難いなというふうに思っております。

 次回については,一つ一つ今回御議論いただいたものが全部絡み合っていますので,例えば現行制度との比較において,恐らく学生さん,あるいは親御さんが勉学を選ぶときには,やはりそのハードルが低くなるように,今の制度よりもやはり後退したイメージが出ないであるとか,あるいは開始しやすくて,低額所得者には優しくて,高額所得者には少し頑張ってもらうというようなイメージを出すような,ちょっとワンパッケージのセットでもって幾つか案を,座長と御相談をしてお示しをして,そしてそれを選んでもらうと。きょう頂いたのは全てパッケージの議論でありますので,そういった形で御議論いただけるような案を作って御提示したいと思うんですけれども,そんなイメージでよろしゅうございますでしょうか。


【小林主査】  ありがとうございました。次回についてはそういうことで進めさせていただきます。

 では,次回の予定だけ,事務局からよろしくお願いいたします。


【八島課長補佐】  次回6回目については,2月の初旬を予定しております。日時,場所等については,決定次第,またお知らせいたします。

なお,この後,隣の会場で,本日の会議内容につきまして,小林主査と井上課長の方からブリーフィングをさせていただきますので,御希望の記者の方は隣の部屋の方に御参集いただければと思います。

 以上でございます。


【小林主査】  どうもありがとうございました。

 それでは,これをもちまして所得連動返還型奨学金制度有識者会議第5回を閉じさせていただきます。皆さん,どうも長時間ありがとうございました。

 

―― 了 ――

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