資料5 所得連動返還型奨学金制度に関する閣議決定・提言等の抜粋

所得連動返還型奨学金制度に関する閣議決定・提言等の抜粋


◇教育振興基本計画(平成25年6月14日 閣議決定)

3.学びのセーフティネットの構築
  成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)
基本施策17 教育費負担の軽減に向けた経済的支援り,安心して教育を受けられる環境を整備する。
 17-4 大学・専門学校等に係る教育費負担軽減
 ・意欲と能力のある学生等が経済的理由により修学を断念することなく安心して学べるよう,授業料減免や学生等に対する奨学金などにより,大学・短期大学生,高等専門学校生,専門学校生等に対する修学支援を推進する。学生等に対する奨学金については,平成24年度から導入した「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を着実に実施するとともに,無利子奨学金について,本人の所得の捕捉が可能となる環境の整備を前提に,現行の一定額を返還する制度から,卒業後の所得水準に応じて毎年の返還額を決める制度への移行や延滞金の賦課率の見直し等,学生等の経済的支援の在り方について検討し,奨学金制度の充実を図ることにより,安心して教育を受けられる環境を整備する。


◇学生への経済的支援の在り方について(中間まとめ)
(平成25年8月30日 学生への経済的支援の在り方に関する検討会)

3 各制度の改善方策
2.返還者の経済状況に応じた返還方法について
 (3)具体的な取組
より柔軟な「所得連動返還型奨学金」導入に向けた準備(これまでの返還の考え方を大きく変えることになることから、対象者の範囲や、対象となる奨学金の範囲、一定期間経過後の債務免除の仕組み等について検討を開始するとともに、システム開発の準備を同時並行的に進める。)


◇子供の貧困対策に関する大綱(平成26年8月29日 閣議決定)

第4 指標の改善に向けた当面の重点施策
1 教育の支援
(4)大学等進学に対する教育機会の提供
(高等教育の機会を保障するような奨学金制度等の経済的支援の充実)
 (略)また、奨学金の返還月額が卒業後の所得に連動する、より柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」の導入に関する検討を進める


◇学生への経済的支援の在り方について
(平成26年8月29日 学生への経済的支援の在り方に関する検討会)

第2章 学生等への経済的支援の意義と目指すべき方向性
2.将来的に目指すべき方向性
ア.奨学の観点
 意欲と能力があるにもかかわらず経済的な事情により進学が困難な学生等に対しては,進学の際や在学中に,必要な学資を確実に提供すること。その上で,卒業後の所得に応じた返還方式(所得連動返還型奨学金。所得に応じた返還が行われる。)を導入することより,将来の返還への不安を払拭すること。


第3章 各制度の改善の方向性等
2.各制度の改善方策
(1)貸与型支援の在り方について
(イ)取組の方向性
2)より柔軟な所得連動返還型奨学金について
 (略)他方,奨学金制度は教育の機会の保障を目的とするものであり,高等教育機関へ安心して進学できる環境を整備していくためには,貸与型奨学金の卒業後の返還の不安を軽減していくことが重要である。(略)
 諸外国においては,オーストラリアをはじめ,卒業後の所得に応じ返還額が変動するとともに,課税システムを通じて回収するといった所得連動返還型の奨学金制度を,既に導入している国があるが,我が国においても,このような柔軟な返還方式を導入することを目指した制度改善が必要である。
 そのためにも,返還月額が卒業後の所得に連動する,より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入に向けた準備を着実に進める必要がある。(略)
 今後,奨学金返還者に関するデータや,収入に関するデータなどを基にして,文部科学省,機構,及び学識経験者が共同で,より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の詳細な検討を進めていくことが重要である
 その際には,諸外国の例も参考にしつつ,我が国の状況にあった,独自の形での制度改善を行うべく,より多くの返還者に対して,使いやすく,収入に見合った形で適切に返還できるといった点に制度設計の主眼を置き,返還月額の設定,返還開始の閾値(いきち)の設定,財政的負荷の多寡等も含めて,幅広く検討していく必要がある

 

◇教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方について(第八次提言)
(平成27年7月8日 教育再生実行会議)

2.これからの時代に必要な教育投資
(1) 全ての子供に挑戦の機会が与えられる社会を実現する
<具体的な施策と試算の例>
○高等教育段階における教育費負担軽減          約0.7 兆円
 ・大学生等における奨学金の充実(有利子奨学金の完全無利子化、より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入等)


3.教育財源確保のための方策
(1) 民間資金の活用による財源確保
 公財政による教育投資を補完するものとして、民間資金の活用も重要です。教育活動への寄附や奨学金の支給を行いたいという個人や団体の志を最大限いかす観点から、以下のような取組を進めることが必要です。
 ○寄附金税制やふるさと納税等の措置については、これまでに様々な拡充が図られてきている。教育機関や地方公共団体、独立行政法人日本学生支援機構等は、こうした仕組みを一層活用し、特色ある教育活動や奨学金等による家計負担の軽減のために必要な財源の確保に積極的に取り組む。国は、これらの取組を促進するため、寄附募集の広報・周知や税制措置の普及啓発、先進事例の紹介等に取り組む。
また、大学においては、寄附金収入の拡大に向けて、専門スタッフの配置などの体制整備を図るとともに、国は、国立大学法人における個人からの寄附に係る所得控除と税額控除の選択制の導入など、寄附金税制の一層の拡充について検討する。
 ○教育活動や進学等費用の支援のため、資金を提供する個人や団体の取組を称えるとともに、社会に広く認知されるような仕組みの活用を推進していくことが重要である。例えば、公益財団法人日本国際教育支援協会は寄附者の名称等を冠した奨学金を設立しており、国、地方公共団体は、このような取組を積極的に広報・支援していく。
 ○大学における民間資金の導入拡大を図るため、国、大学は、民間企業との共同研究を促進するとともに、研究者等が大学や公的研究機関、民間企業等の間で、それぞれと雇用関係を持ち、各機関の下で業務を行うことができるクロスアポイントメント制度の導入を促進する。また、国立大学法人の資産運用の弾力化について検討する。

(2)税制の見直しと教育投資
 2.で述べた幼児教育や高等教育に係る家計負担の軽減策といった施策を進めることに加え、税制についても、将来の成長の担い手である若い世代に光を当て、夫婦共働きで子育てをする世帯にとっても、安心して子育てできる、また、格差が固定化せず、若者が意欲を持って働くことができ、持続的成長を担える社会の実現を目指す観点から、改革を進める必要があります。
 このため、「経済・財政再生計画」に盛り込まれた税制の構造改革について、特に、以下の取組を進めることが期待されます。
 ・成長の担い手である若い世代を含む低所得者層に対しては、勤労意欲を高め、心して子供を産み育てることができる生活基盤の確保を後押しする観点、女性の活躍推進・子供子育て支援の観点等も踏まえつつ、個人所得課税等の在り方を見直す。
 ・資産格差が次世代における教育等の機会格差につながることを避ける観点から、資産課税等の在り方を見直す。
 また、先進諸国では、公財政教育支出が高い水準にある国は租税負担率も高いという相関が見られます。歳出効率化の取り組みを継続しつつ、中長期的には、教育関係者のみならず幅広い国民の理解を得た上で、税を通じて広く社会全体で教育財源を負担することも検討すべきです。例えば、将来的に、消費税の見直しが検討されるのであれば、次世代に負担を先送りしている現状を転換し、受益と負担のバランスのとれた社会保障制度を構築した上で、税収の使途を年金・医療・介護・少子化対策に加え、「教育」にも広げることを検討することも考えられます。

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