高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議(第8回) 議事要旨

1.日時

日時:平成28年2月18日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

場所:文部科学省5階5F5会議室

3.議題

  1. 文科省より関連事項の報告
  2. 高等専門学校の充実について(骨子(案))
  3. その他

4.出席者

委員

三島座長,天羽委員,石鍋委員,内田委員,鎌土委員,輿委員,谷口委員,田原委員

文部科学省

松尾審議官,北山専門教育課長,関企画官,土生木視学官,山路課長補佐

5.議事要旨

(委員:○,事務局:△)

議題(1)「文科省より関連事項の報告」について
資料1に基づき,事務局から中央教育審議会実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会の審議経過報告【素案】について,説明があった。

議題(2)「高等専門学校の充実について(骨子(案))」について
資料2-1,資料2-2に基づき,事務局から「高等専門学校の充実について(骨子(案))」について説明があり,意見交換がなされた。
委員の意見は以下の通り。

○:資料2-2,p4の周知方策について,ロボコンは広くよく知られているので,デザインやプログラミングなど,その他のコンテストも記載をしておくと広がりが感じられてよい。ロボコンのみの記載だと,ロボコンしかないような印象を与えてしまうのではないか。また,p4の専攻科の充実について,「専門教育を深めたり,融合・複合領域へ展開させたり」と並列に記載されているが,「専門性を基盤としながら融合・複合領域へ展開させる」といった記載の方がいい。専門分野での自信をもち,他分野へ広がっていくことが高専生の強みであり,新たな高等教育機関との違いも見えてくるのかなと思う。
○:同じ場所に,グローバルについても追記した方がいい。
△:p2~p3にかけての記述も同様なので,変更したい。
○:専門と融合の両方ができると記載することで,学生の力を示すことができる。
○:本科と専攻科の「連続性」という記述があるが,これが必要。本科と専攻科の連続性の中では,本科5年のみの課程とは違った5年間の組立てが必要なのではないか。
○:私大等の大学の数が増えて大学進学者の数が著しく増加したこと,また大学院へ進学する者の数が増えて高学歴化が高まったことで,高専の位置づけが低下し埋没していることが問題であると考えている。また,工業高校自体が減ってきており,高専が工業高校と同じくくりにされて社会の認識も工業高校化してしまうのではないかと危惧される。これを「取り巻く環境」に入れるべきである。また,そのため,制度としての7年生,学位授与や専攻科の実質化などが必要になってくる。高専の高度化や教育の改善のために制度をどうするのか,という観点の記述を入れるべきである。
○:制度に関係する議論もあるのだが,今日は高専教育そのものをどう充実するのか,ということを議論したい。
○:資料1の新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会の審議経過報告では,「生産・サービス現場の人材」と記載されている。新たな高等教育機関は,まだよくわからない部分があるが,高専がどういう教育を行い,どういう人材を育てるのかを明確にしておくべきである。
○:新たな高等教育機関の議論では,工業系分野は20%くらいを見込んでおり,生産の分野に重きを置いていない。高専で行う教育は工学が基本であり,理論の学習が必要である。その違いは書いた方がいい。
△:高専で育てていく人材については,「1.高等専門学校を取り巻く状況」に,本文を作成していく段階で具体的に盛り込んでいければと考えている。
○:高専生だから工業分野,ものづくりである必要はない。なぜ農業ではいけないのか。例えば,グリーンハウスなどは日本でもかなり広がっているが,理系の知識が入っている。理系の知識を使って産業を興していくのが高専。埋没しないため,差別化のために地域産業界との連携を行い,地域とマッチアップするような大学にない仕組みがつくれないか。中小企業などは簡単にインターンなんてできない。また,高専側も一つの高専だけではなくて,グループを作ってマッチング専任の人を置いて,地域の産業界と話を持つ,これを絶対にやるべき。
○:同感である。ただし,農学と工学とでは体質が違う。したがって,単に高専に農学的な学科を新設するのではなく,工学の概念を使って農学と融合することが重要。
○:コーディネーターをおいて産業界と連携している高専は既にある程度あり,プログラムも事例がある。
○:地域との連携で,大学との明確な違いを出していけるようなつながりを持てればよいと思う。中学校や,保護者等にもわかるよう,ブロックの特徴などをはっきりと書けるといい。
○:その意味では,地域連携については幾らでも書きようがある。
○:高専からの情報発信についても書かれているが,確かにもっと強調して説明しないといけない。
○:高専は発信が足りない。メディアにでも載ると世間の反応が全然違う。
○:地域連携のコーディネーターは,高専を退職して再雇用された方がやっている印象。また,地元の市や県とタイアップするのが有効ではないか。
○:産業界の人材であったり,再雇用の者であったりと,多様である。
○:中学校の教員の立場から。発信力について3つのポイントがある。1つ目は,何を発信するか。高専の教育内容,教育方法,進路,特に進学が4割いること,進学先としての専攻科,実践力というキーワードなど,中学校の校長,教員はほとんど知らない。2つ目は,誰に対して発信するのか。管理職,一般教員,保護者と生徒はもちろん,市区町村の教育委員会に対して行うのも効果的。3つ目は,いつ発信するか。中学校での進路指導を含め他キャリア教育は中学校1年生のときから始めているので,できる限り早い段階でPRを行うことが大事。
○:市区町村の教育委員会に相談したとして,受けていただけるのか。教育委員会に反対されたという話も聞いたことがある。
○:受ける。都立高校・私立高校などはパンフレットを持って中学校を訪問している。
○:中学校卒業者に対して高校は一種の競合相手になっているという雰囲気もある。
○:東京で言えば高校がたくさんあって,高校同士で取り合いになる。そこで,高校の教員は中学校に行ってPRするのが常。基本はどこの中学校へ訪問しても問題ないと思う。
○:都立産技高専では,東京都の約600の中学校のうち200校くらいに学校訪問している。しかし,中学校側からすると,高専への進学者は数年に1人程度なので,進路指導の教員はその一人のために聞いてくれる時間もとれないし,結局パンフレットを置いていくのみになってしまっている。一方,東京と地方では学校数も違うので,対応などが違うと思うので,一つ一つの高専が戦略を立てて広報する必要がある。
○:大きな市より,むしろ,地元の方が出前授業などを一緒にやってくれる。人口が多いところと少ないところで受け取るニュアンスが違うのではないか。高専によっては,中学校への出前授業などをしているところもある。
○:地元の中学校に行くと歓迎され,実際に多くの中学校を訪問している。教育委員会が相手のときは,高校が競合相手となっているので高専側が気を遣っているところもある。
○:文科省から教育委員会に推奨するといったことができるだろうか。
△:教育委員会の方でも高専を全く知らない人もいるが,お願いすれば受けてもらえるのではないか。
○:p2の「高等専門学校の規模・配置についての考え方」は国立高専について増やせないと記載されている一方,p5で新たな公私立高専の設置については情報提供等の対応と書かれている。今回もっと前向きに記載できないか。議連では全県配置との話もあると聞いているし,公私への支援も必要。平成20年の答申ではもっと前向きだったはずで,今回の協力者会議でも,平成20年の答申を踏まえたものにできればと思う。
○:少子化の中ではあるが,規模を増やすのは難しいのか。
○:需要があればいい。分野によるかもしれない。
○:社会が変わる中でのような人材が求められるかということか。
○:魅力ある専攻科にするために,本科でしっかり基礎を押さえた上で,専攻科の2年で幅広い視野を獲得する」という案を議論してきたと思う。専攻科の出口では魅力のある高専生を社会に送り出すということを書いておきたい。「◯◯をした上で,□□をしてはどうか」など,(本科に加えて専攻科でやるべきことが)わかりやすい表現にしてはどうか。
○:専攻科の定員の在り方について,「適正な環境」とある。専攻科には学生定員はあるが教員定員はないはずだが。
△:専攻科の定員は1,000名程度のところ,実際は1,500人近くが入学している。これを課題として認識している。専攻科には設置基準がなく,所属する教員もいないので,教員の負担があるのではと認識している。
○:適正なところはどこなのか。学生と教員を規定するなどはできるか。専攻科を魅力的にすることと関連が深い。
○:大学と同じようにすることには反対。高専のいいところを強調したい。
○:専攻科をどうするかということが,高専の差別化になる。専攻科には縦の深みは既にある,あとは横に何をする,ということがカギではないか。
○:まずは教育の内容をどうするかを決めた上で,制度について考えなければならない。
○:内容が決まれば教員・規模など制度の面もはっきり決まる。
○:教育に一貫性があるかないかでカリキュラムに大きな違いがでる。制度には現状でも問題があり,どこまで変えることができるのか。
○:専攻科の教員についても考えるべきことがある。一人の教員が2校をかけもちすることはできるか。
○:できると思う。
○:近くに所在する高専では,高専を統合するのではなくて,お互いに連携できるようにするとよい。一緒になるとかならないとかではなく,学生のためになることをやればいい。
○:高専間でエゴがあるものだろうか。
○:教育は基本体系の中でやるので共通部分も多く,連携できる。この点で教員の特徴は出にくいが,一方で,研究であれば教員の特徴が出て競合も連携も考えられる。
○:近隣の高専間で教員を取り合っているという実態があるとすれば望ましくない。良い事例の横展開としてベストプラクティスの共有ができればよい。個別の高専だけ進化するのでなく,ベストプラクティスの共有を通じて,高専全体が前に進んでいると言えれば,社会や中学生に対する発信力も高まる。高専同士の横のつながりをもっと打ち出してはどうか。
○:競合はしていない。むしろ大学との競合が激しくて,優秀な教員が大学に引き抜かれたりする
○:教員は引き抜かれるくらいの方が良いと考えている。それだけ優秀な人が高専にいたという評価,そして抜けた後,その分優秀な教員を雇うことができる。教員を抱え込んでいては良くない。
○:高校との受験生の競合ということはあるか。卒業見込み者への求人が17倍だから,高専の教育内容について理解していただけ,どの高専でもおなじことが言えれば中学生にアピールできる。
○:ある程度は理解していただいていると思う。しかし,とりあえず高校に進学するというのが一般的であるため,相当の良さを感じないと高専を選んでくれない。高専もオープンキャンパスや中学校訪問など多くの努力をしているが,本当の良さは容易にはわかっていただけない。入学動機は親が高専卒業生であったり,兄弟が高専生であったりといったことで良さを実感している場合が多い。
○:先ほど御紹介があったようにユニークなイベントを実施しているのだから,その取り組みの発信も効果的と思う。
○:アクションとアカウンタビリティが分かりにくい。改善していくために高専機構の中で何をやるか,決めることができるか。例えば理事会などで話したことを地域ブロックで取り組んでいる,といったことを明確に,具体的にできれば,高専の進む道が見えてくるのではないか。
○:各ブロックで話をしているところ。JABEEの導入や専攻科の設置などこれまで多大な自己努力を行ってきた。しかし制度の枠組みの中で行うことには限界がある。今回の高専の高度化は,制度改正と一緒に行うことが不可欠である。
○:高専と技科大との三機関でテレビ会議システムはつながっており,システム上で一部授業や会議も行っているところ。相互交流だけではなく教育にもうまく利用していけば教員の負担軽減になる。
○:機構として,例えば平成29年度までに◯◯をするなど,具体的なことをとりまとめに書くことはできるのか。
○:制度についてはまだ,7年制も含めた議論中。まとまって書くことができるのか。
○:議論の方向性としては5年+2年ということになっていたと思う。その中で専攻科の魅力を発信していくということではないか。
○:高専機構や各高専の中で行っている将来の高専の高度化の議論と方向性が少し違う。本骨子案は今の制度下でもやれる内容をまとめているが,制度を変えることなく教育を改善するということであれば,高専で既にやっていることや,近々にやろうとしていることと一致している。しかし,高専の将来を考えると更なる高度化が必要であり,それには制度の変更が不可欠である。
△:修業年限については5年を維持すべきということでコンセンサスが取れていたかと思う。高専には指導要領もない中で,5年+2年の課程を自由に編成できると考えている。それでも,7年にしなければできないことが何か,本科5年と専攻科2年の枠組みの中でできないことがあるのか,それらを具体的にクリアにしていかないと難しい。
○:5年+2年の場合でも,2年を正式な制度に位置付けることが重要。専攻科2年はあくまでオプションなのか,それとも正式な制度化が可能なのか。
△:可能性としては両方ある。
○:制度化できれば大きなモチベーションになる。学位につながり,国際的な評価も得られるようになる。
△:学位については,国際的な理解の上でも大学が授与することとなっている。大学の機能,すなわち,研究の機能があることと,学位を審査する教授会があることが前提で,基準である。一方で,高専は学校教育法上に研究も教授会も規定されていない。これらを高専に置くということは,高専を大学に移行するのか,そこでどのような人材を養成するのか,という大きな議論になる。
○:職業教育の新たな高等教育機関はまさにそれをやろうとしており,それと連動して高専についても変えることができればと思う。高専は15歳からの早期教育ということが強みとなっており,新たな高等教育機関は高等学校卒業程度の学生を受け入れることとしているが,高専がこの制度に入ることも考えられるのか。
△:高専が新たな高等教育機関になるのか,という議論になる。つまり,新たな高等教育機関としての制度要件を満たす,ということになる。
○:可能性はあるということか。
○:根本的な議論をすることになるのでは。
○:新たな高等教育機関の後期2年は,専攻科と重複する。新たな高等教育機関と高専との役割分担や,編入学ができるかなど,横も含めた制度設計はどこで議論するのか。
○:高専の5年+2年の課程でしかできないこと,専攻科をどのように魅力的な課程にするのかについて,この会議で議論する。新たな高等教育機関とつなげるといったことについて,議論をする場ではないと思う。
△:編入学の仕組みについては,新たな高等教育機関のとりまとめでも記載されている。
○:新たな高等教育機関の後期課程のみを置くことができるのか。
△:今のところ検討されていない。新たな高等教育機関の議論は並行して行われているのであって,これを踏まえ,高専について現行の枠組みでの教育改善の方向性を検討する必要がある。
○:新たな高等教育機関の議論の動向も踏まえながら,高専の改善を考える必要があるということ。

○:グローバル化の項についてはどうか。これまで議論してきた語学についても記載がなされているが。
○:グローバル化については避けては通れない。当たり前,当然のこととして考えなければならない。外とかかわらないと立ち行かない。10年後,20年後に学生が活躍できる素地を作るのが教育の責任。英語の授業も留学生の受入れもやればいい。一方で,日本人としての自分のアイデンティティを持つことも大事。
○:海外には日系企業がたくさんある。そういう企業と連携して専攻科での海外インターンなどをやればいい。大学ではなかなかできないが高専なら簡単にできる。
○:専攻科に3か月の留学等を入れると,2年で修了できなくなることもある。本科との連続性を考えることが重要。
○:単位の認定も含めて考えることが必要。
○:単位にすることは必須。
○:海外では適切な相手と連携できることが必要。高専の海外での連携先になるのは,職業教育学校のようなvocationalな学校になっている。
○:高専機構がしっかりと交渉しなければならない。
○:高専機構や各高専が努力はしているところであるが,相手となる海外の学生や教育機関からすれば,高専が大学でないことや学士を出せないことに抵抗がある。
○:モンゴルは教育大臣が日本の高専を卒業し,その後技術科学大学に編入学していることもあり,高専の内容をよく理解されている。
○:日本の政府が保証している学位であるということを良く説明しなくてはならない。説明が足りないのではないか。
△:相手国政府に文科省が説明することで解決できるのではないか。
○:例えばマレーシアには政府派遣の留学制度があるが,学位授与機関でないことを理由に専攻科に進学する学生に奨学金を出さないとしていた。高専がJABEEに認定されているということを説明し,数年がかりで交渉してようやく認められた。
△:マレーシアと日本では大学入学に必要な教育年数に差があり,その補正が必要だった,と聞いている。
○:大学編入学者には奨学金を出しているので,これについては教育年数の問題ではないと思う。
○: 高専とvocationalな学校とは,異なる。
△:制度の摺合わせを行えばいいということか。政府も協力して対応できればと思う。
○:海外と制度上の摺合わせを行う,ということについても,取りまとめに入れた方がいいかもしれない。
○:大学と高専がセットで教育・研究を行っていると説明すると,海外でも理解してもらいやすい。メキシコでは技科大と高専のセットで行った結果,高専のすばらしさを理解してもらうことができ,高専と同様の学校ができた。
○:高専では,長期留学にどのくらいの規模の学生を出しているのか。
○:本校では10人から20人くらいではないか。フィンランドの応用化学大学やフランスなどに行っている。企業とはその中で連携している。
○:インターンシップで外国の企業にも出すと良い。私と話した日系企業はみんな,高専生を受け入れると言ってくれる。
○:企業との連携に関連して,私自身が大学院生のころは,教授に連れられて大企業の社長室などを定期的に訪問した。しかし,今の大学は企業と遠くなってしまった。高専の高度化ではこの問題も解決しようと考えている。
○:専攻科の中でできれば良い。
○:公立大学法人首都大学東京の3機関のグループで,シンガポールにおいて,課題解決型学習を実践している。しかし,専攻科の場合,学位が出せないので,学位授与機構からもらわざるを得ず,学位の申請のために専攻科は海外で長期の取組を行うことは難しい。しかし,本科と専攻科が接続していれば,その中で工夫ができる。制度を変えないと対応できない。
○:企業も学生を受け入れるのに大変な努力をしている。高専側でもそのような問題を自ら解決するための努力が必要なのではないか。
○:工夫すればうまくやれる。長岡技科大では毎年400人くらいを国内外の実務訓練に送り出しているが,受入先の寮を活用するなどの工夫をすれば,経済的にも何とか赤字にならない。取組の成果がでれば,相手にも受け入れてもらえるようになる,そのあたりのノウハウは幾らでも提供できる。
○:学位授与機構とは調整をした方がいい。
○:制度に関係する話は次回以降,3月に議論したい。
(以上)

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