資料3_高等専門学校における教育改善状況等に関する調査結果について


【1.実施概要】

      目的:検討が必要な論点を踏まえた上で,各高専における教育の取組状況を把握するため,調査を実施し,
本会議における今後の調査研究に資するものとする。


    調査対象:全ての高等専門学校(全57校)〈回答率100%〉
    実施時期:平成27年8月5日~8月28日
    調査の対象期間:原則として平成26年度の状況を回答
                      ※一部調査項目においては過年度の状況等も徴取

【2.調査結果の概要】

※各高等専門学校の名称については,「工業高等専門学校」「高等専門学校」の表記を省略して記載している。
※香川高専は高松・詫間,熊本高専は熊本・八代のキャンパスごとに回答を頂いているので,調査項目の概要中,項目によっては割合を算出する際の母数を57校+2の59としている場合がある
※本調査結果の概要については,今後,計数の精査を行い,軽微な計数の異動が生じる場合もあり得る。また,様々な角度から分析等も行いつつ,内容によっては個別の校名等が特定されないよう配慮した上で,「高等専門学校の充実に関する調査研究協力者会議」における審議のまとめを行った際,参考資料として公表する予定である。


A.教育課程・進路について

  (A1)進路指導においては,ほぼすべての高専(56校)で担当教員の指導及び保護者との面談が行われているほか,30校においては更に就職支援センター等の教職員による指導がなされている。
  (A3)専攻科修了者(1,512名)のうち,99%(1,499名)が大学評価・学位授与機構に学位取得を申請し,98%(1,479名)が実際に学位を取得している。
  (A4)工業・商船以外の分野(例えば医療・ライフサイエンスなど)の教育についての取組は学校ごとに様々ではあるが,ビジネス・経営,医療,環境の分野に取り組む学校が多い。(18校)
  (A6)資格の取得を目的とする科目は40校で開設されており,情報関係(情報処理技術者),建築・建設系(CAD,建築士(2級),測量士(補))等が多くの高専で実施されている。また,商船高専では関連資格について取得(海技士1~3級,海上無線技師など)するための科目が実施されている。なお,ガス溶接技術者,第1級・2級陸上無線技師,防災士など,他の学校には見られない資格取得のための科目を設置する学校もある。


B.学生の確保に向けた取組

(B1)入学志願者確保に向けた広報について,HP・オープンキャンパスは全ての高専(57校)で実施。広報誌の作成・教職員による中学校訪問もほぼすべての高専で実施(56校)。進学塾へのアプローチ(9校),複数高専による合同学校説明会(3校)などの取組を実施する高専も見られた。各自治体の教育委員会との連携はほぼ全ての高専(56校)で取り組んでおり,地元中学校への出前授業・理科教室等を実施。
(B2)本科においては,全ての高専で推薦入試を実施している。4校ではAO入試を実施しているほか,社会人入試,7校では帰国子女を対象とする入試を実施している。
  (B3)新入生に対する補習授業・接続教育は37校で実施。入学前の事前指導及び入学直後の試験結果に応じた補習等が実施されている。留学生を含む編入学者に対しては,入学前の補習授業(10校),入学後の補習授業(14校),個別指導(19校)など,高校での学修と高専での学修の円滑な接続に一定の配慮がなされている。
  (B4)高校卒業者の編入学について,平成26年度は高専全体で162名(4年次158名,3年次4名)を受入れ。2校では,10名以上の編入学者を受け入れている。


C.専攻科について

  (C1)平成21年度以降,10校において専攻科改組を実施。いずれも,複合・融合領域の教育に対応することを目的に,複数の専攻を1ないし2に大括り化している。
  (C2)専攻科修了者(1,512名)のうち,就職者(949名)の90.7%(861名)が専門的・技術的職業従事者として従事。うち,62.3%(536名)が製造技術者。産業別では製造業が50.1%(475名),情報通信業が15.4%(146名),建設業が8.2%(78名),続いて公務,学術研究・専門技術サービス業となっている。就職先の地域としては,多い順に,関東392名(43.3 %),中部158名(17.5%),近畿133名(14.7%),中国69名(7.6%),九州64名(7.1%),東北40名(4.4%),四国36名(4.0%),北海道13名(1.4%)。進学先の地域としては,多い順に,関東139名(25.9 %),九州108名(20.1%),近畿104名(19.4%),中部87名(16.2%),東北42名(7.8%),北海道33名(6.2%),中国17名(3.2%),四国6名(1.1%)。


D.教育を支える基盤の確保について

  (D2)高専全体で,教員数は4,330名,職員数は2,483名(いずれも常勤のみ),学生数は55,865名。
  (D3)全ての高専においてFD活動を実施。教員相互の授業聴講(53校)や教育方法改善のための講習会の実施(48校)が中心。
  (D4)今後の改修・修繕・購入等が必要な施設・設備としては,図書館・学寮の改修や電気・給排水等のライフラインなど,学生の生活環境改善関係が多く挙げられている。
  (D5)ほぼすべての高専(54校)においてSD活動を実施。総務・財務など,業務に関連する研修(46校)を中心に実施されている。
  (D6)高専全体で,技術職員は659名(全教職員の9.7%)。延べ4,736科目を担当・補助している。
  (D7)本科では全高専で22,075科目が開設されている。そのうち,
    ・一般科目は6,901科目(全開設科目数の31.3%/1校あたり121科目,以下同じ),専門科目は15,174科目(68.7%/266科目)
    ・講座は18,828科目(85.3%/330科目),実験・実習は3,247科目(14.7%/57科目)
    ・履修単位※によるものは17,467科目(79.1%/306科目),学修単位※によるものは4,608科目(20.2%/81科目)
          ※履修単位…1単位を30単位時間(1単位時間は標準50分)の履修とするもの
            学修単位…大学と同様に,1単位を予習・復習を含む45時間の学修とするもの
  (D9-1)技術者としての教養という観点から,一般科目において技術者倫理(16校,製造物責任,環境問題等をテーマに技術者としての責任・行動規範について取り扱う科目),法学,経済・経営・流通等の科目(15校)が開設されているほか,その時々の社会問題を取り扱う科目(6校)や地域企業との連携による科目(4校,現役技術者による講話等)を開設している学校もある。
  (D9-2)英語科目については,各学校ごとに体系的な科目配置がなされている。
    ・1~3年次において文法・リーディング・ライティング等の基本的な英語力を修得し,4~5年次においてコミュニケーション・プレゼンテーションを重視した科目やTOEICのスコア獲得に向けた科目など実践的な英語力の獲得を意識した学修を実施(26校)
    ・1・2年次で基礎的な英語力を修得し,3年次以降に応用的・実践的な英語力獲得を目的とした科目を配置(9校)
    ・1~3年次において高等学校と同様の教科書を利用あるいは高等学校指導要領に準じた学習内容を実施(16校)
      また,科学技術や工業をはじめとする専門分野の英語を学修する科目(13校)や,大学編入学を意識した授業科目(3校)を配置する学校も見受けられる。
  (D10)技術科学大学とは共同研究や教員の研修,また高専における科目を共同で開講するなど,教育・研究両面での連携が行われている(28校)。
  (D11)全高専合計で2,062の課外活動のクラブが開設されており,44,050名(78.9%)の学生が所属している。担当顧問は延べ6,221名。1校当たりの平均は,クラブ数36,所属学生は773名,担当顧問は116名となる。
  (D12)全高専合計で,授業料減免は延べ5,702名(5.5億円),入学料減免は延べ424名(4,628万円)に対して実施している。また,13校においては各学校独自の奨学金が設定されている。
  (D13)退学者は,全高専(本科・専攻科)合計で1,442名(全学生の2.6%)。退学の理由は進学(高校・大学等,858名),就職(163名),けが・病気療養(41名),家庭の事情(経済的自由含む,11名)など。また,留年は,全高専合計で2,079名(全学生の3.7%)。理由としては,単位不足(1,660名),病気療養等(168名)・留学(100名)のための休学など。


E.地域企業・自治体との産学連携事業

  (E1)高専全体で,受託研究は199件(4.9億円),受託事業は904件(2.0億円),共同研究は706件(5.3億円)を実施。1校当たり平均では,受託研究862万円,受託事業351万円,共同研究926万円。
        ※国立の工業系単科大学(室蘭工業,北見工業,電気通信,名古屋工業,京都工芸繊維,九州工業)の平均(平成25年度)は,受託研究4.1億円,受託事業1.5千万円,共同研究2.1億円。
  (E2)インターンシップはすべての高専で実施。インターンシップに参加した学生数は,本科7,507名(うち4年次が7,451名),専攻科1,091名(うち1年次が1,009名)。ほとんどが短期(1か月未満)のもので,長期(1か月以上)は全体の3%(259名)程度。短期では7,224名,長期では251名が単位として認定されるインターンシップに参加している。なお,いわゆる日当(食費・交通費等相当額)の支給を受けているケース(10校),報酬の支給を受けているケース(7校)を含む学校もある。
  (E3)企業等の技術者から指導等を受けている科目としては49校で328科目(全開設科目の1.5%)が開設されている。
  (E4)公立高専のうち2校は地域入学枠を設定している。なお,1校は学力試験対象者264名のうち県外枠を40名設定している。
  (E5)広報活動(入学志願者確保の取組以外のもの)については,広報誌(56校),HP(51校),マスコミを通じた広報(44校)等が実施されている。その他,メールマガジンの発行(3校),交通広告(4校)を実施している高専もある。
  (E6-1)地域企業向けの技術教育・指導は35校で390件を実施。企業からの技術相談は48校で2,469件を受けている。技術教育・指導では32校,技術相談では47校が,無償で実施している。
  (E7)小中学生向けの理科教育は,全高専合計で981件(1校当たり17件)実施し,述べ47,825名(同839名)の参加を得ている。その他,地域と連携した取組として,地域企業と協働して実施する高専卒業生向けU・Iターン事業,近隣大学とコンソーシアム等を構成(3校)などがある。


F.高専におけるグローバル化に向けた取組

  (F1)高専全体で,留学先となっている国は43か国・留学生数は1,368名となっている。国別の人数では,シンガポールが288名(21.1%),次いでアメリカ合衆国が154名(11.3%),ニュージーランドが136名(9.9%),台湾が97名(7.1%),中華人民共和国が91名(6.7%)となっている。留学期間としては1か月未満が一番多く74.6%を占め,次いで長期留学となる6か月以上が13.0%,1か月以上3か月未満が10.4%,3か月以上6か月未満は2.0%となっており,留学時期は夏季休暇中が約半数の43.7%を占めており,春季休暇中が27.8%となっている。学年次別では,本科3年次が一番多く33.2%,次いで4年次が27.3%,専攻科1年次が14.7%となっている。留学目的としては,語学留学とインターンシップが主となっており,大学やポリテク,日系企業などにおいて異文化体験・交流,研究室での研究や工場見学を行っている。全高専のうち,27高専で単位認定の制度が整備されており,うち23高専で実際に単位認定が行われている。また,2高専で単位認定の制度を整備する予定としている。
  (F2-1,2)正式の授業科目で実施している海外インターンシップについて,必修科目として開設しているのは12校,必修科目以外の授業科目として開設しているのは21校であった。当該科目に付与する単位数については1単位が最も多く(9校),その他については実習時間数に応じて単位数に幅を持たせている(1単位~12単位)状況である。
  (F2-3,4)正式の授業科目で実施している海外インターンシップについて,その受講者を学年別にみると,専攻科1年が最も多く146名(67.3%),次いで本科4年生が50名(23.0%)となっている。また,必修科目として受講している者は,専攻科1年が88名(82.2%),本科4年生が10名(9.3%)となっている。
  (F2-5)正式の授業科目で実施している海外インターンシップについて,実習期間(実際に就業体験を行う期間)としては1か月未満が一番多く75.8%を占め,次いで1か月以上3か月未満が22.7%,3か月以上6か月未満は1.5%,長期留学となる6か月以上は該当がなかった。
  (F3-1)教員の海外派遣について,全高専での海外派遣人数は1,080名となっており,派遣人数が多い学校は,104名(9.6%),次いで71名(6.5%),57名(5.3%)となっている。派遣人数がゼロと回答の学校が8校だった。
  (F3-2)教員の海外派遣先国は43か国であり,国別の派遣人数では,アメリカ合衆国が35名(10.1%),シンガポールが27名(7.8%),中華人民共和国が25名(7.2%),マレーシアが23名(6.6%),大韓民国が22名(6.4%)となっている。
  (F3-3,4)教員の派遣先機関は大学が最も多く(48校),次いでポリテク(26校),企業(19校)となっており,主な派遣目的は教育目的が17校,研究目的が48校となっている。
  (F3-5)海外からの研修員等の受入状況について,全高専での受入人数は54名となっており,受入人数が多い学校は,9名(16.7%),次いで8名(14.8%),4名(7.4%),2名(3.7%),その他2名を受け入れている高専が5校,1名受け入れている高専が8校となっている。受入人数がゼロと回答した学校が40校だった。国別では13か国であり,タイから4名,ベトナム,モンゴル,中華人民共和国から2名,その他の国(アメリカ,イギリス,インドなど)からは各1名となっている。その受入目的としては,研究目的が最も多く,その他に共同での教材開発,専攻科授業の講師としての受入れ,国際交流コーディネーターとしての招聘など。
  (F4-1)JICA等を通じた国際協力について,留学生受入や教師海外研修事業,青年研修事業,発展途上国技術者研修などに協力しているほか,国際協力専門部会などに校長や教員が委員として委嘱され途上国の技術者養成に協力しているとの回答もあった。
  (F4-2)高専独自で行っている国際協力について,モンゴルの高専の創設支援やベトナムに対するIT関係学部の教材開発,モンゴル国遊牧民のために風力発電機を設計し,同国へ設置する運動のほか,県内外の家庭等から寄贈された古く壊れた足踏みミシンを分解・修理し,東南アジア諸国の貧困層などに贈呈する学生参加型の国際ボランティア活動を行っているなどという回答があった
  (F5)グローバル化の取組みとして,留学生の派遣・受入,海外インターンシップを始め,各高専で様々な取組が積極的に行われている。
    (例)・日本人教員のもとで「聞く」,「話す」,「読む」,「書く」の4技能の基礎を総合的に学習する授業と,外国人教員のもとで口頭でのコミュニケーションを中心に学習する授業の両方を各学年で並行して実施。
          ・学生派遣研修の際に教職員派遣研修を併せて行うことで,国際理解やグローバル人材教育の推進に対応できる教職員の拡大に努めている。
          ・海外語学研修,海外インターンシップ研修の企画と実施,個人留学(長期・短期)の相談,JASSO奨学金の申請,トビタテ留学JAPANへの申請,英語学習教材の貸出や予約制英会話レッスンの仲介などを行う支援組織を学内に設置。


G.学科改組の状況(別紙1)※下記記載


H.学科大括り化※後の状況

※ 学科の大括り化:複数の学科を1学科にまとめることで機械・電気電子・情報などの各分野を横断・融合する学びの実施を目指すほか,例えば,1,2年次は混合学級制とし,学生が自らの適性等を見極めた上で3年次に専門コース(分野)を選択させる学科構
  (H1)学科大括り化の目的として,回答対象である産業技術・府立大学・近畿大学の3校中3校が「新分野・融合領域教育の取組」,「学生の進路選択」,「教員の分野を横断した協力」と回答,3校中2校が「各分野の基礎を学ぶことによる汎用的能力の獲得」,3校中1校が「学生が分野を超えた活動をすることによる能力の獲得」との回答であった。
  (H2)学科大括り化の実施状況・成果として,「3年生からのコース選択や全学年にわたるキャリアデザイン支援や教員間連携,学生指導に活かされている」や「入学後2年間で自分の適性や将来の進路をじっくり検討し,専門コースを選択できる」などの回答があった。
  (H3)今後の課題・検討すべき事項としてとして,「低学年クラスへの専門コースの関わりの一層の強化」,「専門コースを何年生で選択するのがベターか検討が必要」などの回答があった。



 
I.今後の学科改組に当たっての考え方

    各学校において,今後学科改組を行う場合,「広く日本社会・産業界全体の技術ニーズへの対応」という視点について,28校(47.5%)がとても重視する,23校(39.0%)が重視するとしている。
    「地域の産業・経済を支える人材の輩出」という視点については,36校(61.0%)がとても重視する,14校(23.7%)が重視するとしている。
    「学校の特色や強みのある分野を生かした教育課程の編成」という視点については,33校(55.9%)がとても重視する,16校(27.1%)が重視するとしている。
    「グローバルに活躍する技術者の育成」という視点については,23校(39.0%)がとても重視する,27校(45.8%)が重視するとしている。


J.高専高度化再編後の状況について

  (J1)再編の効果・影響については,「スケールメリットを活かし,効率的な学校の管理・運営が可能となった」,「統合した予算の弾力的かつ柔軟な運用が可能となった」,「資産の有効活用や事務の効率化と経費削減が図られた」などの回答があり,当該校においては,管理・運営事務の効率化が図られたことが伺える。
        教員の教育負担の軽減としては,「高度化再編による学科数の減により,教員の平均授業時間の減など教育負担は軽減した」との回答があった一方で,「学科の再編に伴う新しい教育カリキュラムへの対応が必要になり,新学科の完成年度までは教員の負担感の軽減には繋がらなかった」との回答もあった。
        教育資源の共有については,「教育機器の共有はもとより,一人の教員が両キャンパスの授業を担当する等,教員の専門知識を有効活用することができた」等の回答があった。
        新たに対応が必要となった課題としては,「キャンパス間の移動時間のロスや情報共有や意思疎通が課題」,「両キャンパスでの始業時間やネットワーク環境,諸規則等の整合化にかかる時間と労力」等の回答があった。
        その他,「ひとつの高専として全県をカバーした活動が可能になり,広域に社会貢献活動を展開するとともに,高専の知名度アップを図っている」等の回答があった。
 
  (J2)「高度化再編は,人的並びに物的資源の高度活用にメリットが多いと思う。学校運営に困難は感じないし,デメリットがあるとは思わない」との回答がある一方で,「高度化再編と同じタイミングで教員定員削減が進められたことで,退職者の十分な補充を行うことができず,教科担当者数,並びに学科教員数においてアンバランスが起こりつつある。今後,学科移動を含めた教員の再配置や,他キャンパスでの授業担当等を検討し,アンバランスの是正に対処する必要がある」といった回答があった。

K.高等専門学校の今後の展望について(校長アンケート)
 
    本アンケートについては,校長に対し,他の学校種にはない高等専門学校教育特有の強みや特色は何か,問題点や高専が本来のミッションを遂行するのに不足していることは何か,それを踏まえた上で,今後高等専門学校がどうあるべきか,どのような役割を果たしていくべきか,改善すべきことは何かなどの意見を自由記述(800字以内)で求めたものであり,主な回答内容については,以下のとおりである。
 
  1.高等専門学校教育特有の強みや特色について


      《複数の学校から得られた回答のまとめ》
          高等専門学校教育は,技術者を目指す目的意識の高い優秀な中学卒業生を受け入れ,15歳から5年間(専攻科を含めると7年間)にわたり,高校の学習指導要領の制約や大学受験の影響を受けず,教育課程編成における裁量の余地も大きい中で,一般教育と専門教育を並行して行う「くさび型教育手法」により,無理なく深い専門知識と技術を習得させるという,普通科高校,大学といったメインストリームとは一線を画した教育制度であり,世界で類のない実践的技術者教育である。
        教育環境は,機械・電気・情報等,産業界からのニーズが特に高い分野を中心とした学科構成の下,博士号を持つ専門教員が深い専門知識と高い技術力を持って,少人数教育によるきめ細かな教育を実施している
        自主性・主体性を重んじた学生生活,学寮生活,課外活動(ロボコン等)等を通じて,リーダーシップやコミュニケーション能力といった,人間性の涵養や人間関係の構築に優れている学生を輩出している。
        就職,高専から大学への編入学,専攻科から大学院への進学,起業と,多様な進路を学生自らの能力・適性・希望などにより選択することが可能であり,求人倍率の高さに表れているとおり産業界や社会からの評価は高く,また,進学(大学編入学)する学生に対する大学関係者からの評価も高い上に,開発途上国を中心に海外からも注目されている。
 
    《その他の回答》
      ・ 高校・大学との編入学など,双方向の進路選択が可能な開かれた日本のシステムである。
      ・ 情報分野等,(企業側が)22歳や24歳を受け入れても年齢的に遅すぎる分野があり,大卒に匹敵する能力を有し,20歳で卒業する高専生は最適な人材である。
      ・ クラス担任を中心に学科教員が連携して,達成度の低い学生に徹底した補講をする等,きめ細かな指導を実施している。
      ・ 大学生より早い段階で卒業研究やインターンシップを経験し,校外の各種コンテストへの参加や公的資格試験の挑戦も多く,実践的創造的技術者となる上で大きな力となっている。 
      ・ 高度な分析機器や計測装置を,学生は自分専用の装置のように利用できる。
      ・ オペレータがいないので学生自身が操作しなければならず,計測技術や重要な計測結果を見逃さない発見力が身につく。
      ・ 研究上の指導者である教員を少ない学生で独占できる。
      ・ 小規模な学校のゆえ,教員間の連携は緊密で,学生指導面・研究面での異分野協力が容易である。
      ・ 2年間の専攻科では,時間的な余裕もあることから海外インターシップを含め,産業界との綿密な協同教育が可能である。
      ・ 授業料が低廉で低所得者層の学生の高等教育機関への進学の受け皿となっている。
      ・ 中学卒業生を受け入れるがゆえ,一般の国立大理工系学部と異なり学生の殆(ほとん)どを地元出身者が占めており,多くの卒業生が地域産業界でも活躍しており,地域からの密着度,期待度はかなり高い。
      ・ 8割の国立高専が県庁所在地以外にあり,高等教育の就学機会の都市・地方を問わない普遍的普及に国立大学と国立高専が別都市で努力しており,県内の地理的配置に配慮して就学機会を保障することで初めて,高等教育の幅広い普及,偏りない教育機会の国民への提供ができていると言える。
      ・ 地域の中学卒業生を受入れ,地域に人材を輩出し,地元企業と長年に渡り強い連携体制を構築している。
      ・ 本科で卒業研究,専攻科で特別研究を経験していることも,社会から高く評価されている一因である
      ・ 進学先の大学から,その学習意欲の高さに既存学生のカンフル剤として好評を得ている。
      ・ 高専卒業生の約50%が大学3年次編入学をしているが,異なる技術教育を受けてきた高専生が,大学や大学院で普通科高校からの学生達(たち)とともに学ぶことが,相互に刺激し合い非常に良い相乗効果を生み出している。
 
 
  2.問題点や高専が本来のミッションを遂行するのに不足していることは何かについて
 
    《複数の学校から得られた回答のまとめ》
        科学技術の急速な進歩に伴う産業構造の変化,技術の高度化,グローバル化の進展などといった,新たな課題に対応できる科学技術人材の養成が求められるとともに,地方創生のための地域に密着した技術者の育成も求められており,現行の教育内容・手法では,その要請に応えることが困難になりつつある。
        教員は講義・実験演習に加え,厚生補導,課外活動,学生寮指導等まで多岐にわたり多忙を極めており,十分な研究時間の確保が困難であることと併せて,給与水準等処遇が十分ではなく,大学へ転任する者も後を絶たない一方で,新たな優秀な人材の確保にも苦慮している。
        少子高齢化に伴う中学生人口の減少とともに地方の過疎化,学力低下,理科離れなどの現状に加えて,変わらぬ高学歴志向の中,50年前から中学生とその保護者の意識も変わり,優秀な学生確保が近年困難になってきている。
        卒業生を実際に受け入れている企業等や進学先の大学・大学院からは,一定の評価を得られているが,高専への進学者は中学卒業生の一割程度であること,また工学系の専門教育機関ということもあって,社会的認知度は未だに低い。
        一定の評価が得られている一方で,企業等は優秀な人材を安価に雇用できるなど,待遇・昇進で不利益を被っていると感じている。
        変わらぬ学歴偏重の社会で,本科卒業生の約4割が専攻科や大学に進学する状況となり,また,専攻科修了者に対して高専自ら学位を授与できず,高等教育機関でありながら「大学ではない」中途半端な位置づけとなってしまっている。
        国立高専は平成16年度の独立行政法人化以降,教育研究活動の財政基盤を支える運営費交付金が毎年度削減されており,高専教育の高度化はもとより,設備の陳腐化や施設の老朽化,教員の教育研究活動の縮小を招き,高専教育の特長を維持することも困難な状況である。教育活動の比重が大きく,人件費比率も高い中で,効率化や自己増収の余地の極めて少ない高専が,独立行政法人として一律に予算削減が行われ,効率化などの経営努力も限界を超えている。
 
    《その他の回答》
      ・ 教育機関の中では少数派,専門学校との名称の類似性等により社会一般の理解と正当な評価得られていない。 
      ・ 教員数が専攻科設置前からの増員はなく,教員の負担増となっており,高専教育の特徴である,少人数教育,高品質の技術教育が手薄になっている面が否めない。
      ・ 現在の学位授与の仕組みは効率的とは言い難く,ダブルディグリーの導入にも支障を来している。
      ・ 5年間で取得すべき単位数が167単位と多い 
      ・ 高専卒業生の2割を越える人々が海外での勤務を経験しているグローバル時代に,これにふさわしい語学を含む異文化交流の教育・実体験が十分ではない。 
      ・ 研究活動は,教育と同様な重みをもつ基本的使命の一つとして位置づけられ,地域共同テクノセンターを中心に地域の企業等との共同研究等が行われ,科研費を始めとする外部研究資金の獲得も推奨されている中,学校教育法において,高専の目的には「研究」が明示されていないため,教員の動機付け,外部研究資金提供機関における高専の取り扱い,研究業務を含めたエフォート管理の観点から矛盾や悪影響が散見され,これを解消する必要がある。 
      ・ 恵まれた教育下での5年間以上の成長過程は冗長で,受け身人間を育成しがちとなり,高専教育の強みや特色に依りかかってしまう傾向も強く,卒業後も次の戦略を生み出しにくい環境にあると思われる。
      ・ 国立高専51校が一つの組織にまとめられている現状は,常に全体を総括することや地域の特性に即応していくことには無理があると思える。
 
 
  3.今後,高等専門学校がどうあるべきか,どのような役割を果たしていくべきかについて


      (1) 修業年限の見直しについて
          13高専が修業年限を5年から7年にすることに積極的な回答があった。この際,現行の5年(本科)+2年(専攻科)のまま,教育カリキュラムを7年一貫して構築することも含んでいることも考えられる。主な回答は以下のとおり。
      ・ 高校・大学(15~22歳)一貫教育,7年課程の導入による大学修士レベルの人材育成を目指す。
      ・ これからの技術者には,自ら課題を発見し,それを自ら解決できる力が求められているが,5年で途切れることのない7年一貫の学士カリキュラムを構成できれば,PBL教育の充実や,社会実装教育,また,長期インターンシップも実践できるなど多くの特色を持たせることができる。
      ・ 外部資金獲得にも繋がるであろう。7年一貫の学校の存在は,高等教育機関の少ない地方では今後強く求められるようになると思える。
      ・ 社会を支える科学技術の急速な進歩に伴う専門教育の高度化が避けられず,15歳からの5年間では,学修年限の制約によりこれまでのように社会が求める技術レベルの技術者を世に送ることが難しくなってきたことなどから,15歳からの7年一貫教育が問題点解決の枠組みを与える。
      ・ ソフトとハードの両面を理解できる高度な技術者の養成には7年程度の系統的な専門教育が必要と考える。7年間の実践的な専門教育を実施すれば,年齢的には大卒段階で博士前期課程レベルを超える上級技術者の養成も可能である。
      ・ 高専の教育力を更に洗練するとともに,そのプレゼンスと知名度を向上させるためには,名称変更を行った上で7年一貫制の国立大学法人に近い(準ずる)体制への移行することが望ましい。
      ・ 高大一貫教育は,現行の学校制度では大学入試を避けることができず,限界がある。日本の発展には,「高校+大学」にとらわれない,高度で効率的な教育を行う機関が必要。唯一,高専の制度が大学入試を回避できる。高専の制度を借用し,全く別種の「革新的な高度技術者を育成する7年一貫の教育機関」を誕生させる。フランスのグランゼコールのように,大学と併存する高大一貫のエリート校とし,東大京大をしのぐ理系人材を育成する。従来の高専の役割は,地域大学が担う。
      ・ 新たな高等教育機関制度(高大一貫教育:7年制)として,全国の5つのブロックに所属する国立高専をそれぞれ統合して,5つの国立工科大学法人(仮称)を設置することにより,現在の国立高専は経営の基盤を固め,高大一貫7年制度の,地域貢献に柔軟に対応できできる理工系人材育成の高等教育機関として更に発展できるものと考える。
        修業年限7年のコースとともに,現行の5年のコースも残すことが望ましいとの回答が6高専からあった。主な回答は以下のとおり。
      ・ 7年一貫教育について,地域の産業界の要望もあり5年間で就職できるコースの設置も不可欠である。
      ・ これまでの5年間の本科では,教育時間が不足している。したがって,高専は従前の5年制を維持しつつ,7年制の長期一貫教育が可能な教育組織へと変換すべきであると考えられる。
      ・ 専攻科の定員拡充と7年一貫教育の制度化(5年一貫教育と併存する形での制度設計が必要(例えば,入学後の3年間は5年一貫教育と7年一貫教育は共通とし,3年終わった段階で残り2年か4年を選択することなど),7年一貫教育の卒業生には,高専自身で大学と同様のアカデミックな学位「学士」を出せるようにすること)などである。一方で,慎重な検討を求める以下のような回答もあった。
      ・ 修業年限を7年とする制度改革案が議論されているが,大学学部卒より2年早く,実践的技術を身に付けた技術者を輩出することが高く評価されている面がある。企業や入学者・保護者の意向等社会のニーズ,さらには5年制と7年制の併存に伴う課題等を踏まえた慎重な検討を要するのではないか。
 
    (2) 学位授与の在り方(高専が自ら学位授与権を有することについて)
          高専自らが学位授与権を有するようにする必要がある,との回答が10高専からあった。主な回答は以下のとおり。
      ・ 「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」との関係や,グローバル化の進展に伴う海外の大学等との連携推進等を考慮すれば,高専が独自に学位授与権を有することが重要になる。
      ・ 今後の高専の在り方として,研究の高度化により,学位授与が出せる資格を備えるとともに,技術革新力と国際力,教養力を身に付けるための教育課程を重視する。
      ・ 高専で現在実施されている大学評価・学位授与機構からの学位認定を見直し,(高専機構を改組した)国立工科大学法人(仮称)が独自に学位を授与できるようにしてはどうか。
      ・ 中央教育審議会では「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化」を検討中であるが,まさに「高専の強みを有し,学位を授与できる新しい高等教育機関」を作ろうとしているではないか。5年制のメリットを残し,短大・4年制大学と同等の学位(本科卒業生には準学士,専攻科卒には学士)を取得できる学校にすること。
        このほか,学位授与の在り方については,以下のような回答もあった。
      ・ 全国高専の専攻科を,技科大のサテライトキャンパス化することで学位問題を解決するとともに,技術者教育の真の複線化を実現してはどうか。
 
    (3) 専攻科の充実や位置づけの明確化
          専攻科の充実について7高専から回答があり,本科との7年一貫教育により充実を目指すべきとの意見や専攻科の定員の見直しを求める意見などがあった。主な回答は以下のとおり。
      ・ 最先端の研究や開発に携わることのできる高度な専門性を有する技術者の育成のために,7年一貫教育としての専攻科の充実を行うべきだ。具体的には専攻科の定員を約2倍に増員し,7年間で完結する体系的な教育を実施する。
      ・ 高専においても5年間では不十分で,今後専攻科の充実を図り,大学院生より2年若くかつ専門の技術・知識,実践力・実現力が,それを凌駕する修了生を輩出できるような学校を目指すべきである。
      ・ 専攻科の位置づけが曖昧な点が否めず,入学定員がほぼ一律に本科入学定員の10%程度とされている点も見直しが必要と考える。
      ・ 高度技術社会にふさわしい内容に専攻科を充実していく必要があると考えますが,それも基本には5年間のしっかりとした,高専らしい実践的な教育が必須です。このほか,専攻科に関して,以下のような回答もあった。
      ・ 高専教員の処遇改善のため専攻科指導手当を創設すべき。
      ・ 新たな職業教育大学に専攻科だけでなることを期待する。プロフェッショナル教育をアカデミック教育に勝るとも劣らないレベルまで持ちあげる波を作ってそこに加わるべきと考える。
 
    (4) 国立高等専門学校における法人体系の在り方(独立行政法人以外の法人体系への移行)
          国立高専の法人体系の在り方に関して16高専から見直しを行うべきとする回答があった。そのうち運営費交付金予算の減少を理由とするところが8高専であった。主な回答は以下のとおり。
 
      ※ (独)国立高等専門学校機構の運営費交付金算定に当たっては,一般管理費に対する効率化係数3%の対象が物件費相当額のみに限定していることや,国立大学法人と同様に設置基準上の必置教員の人件費相当額が効率化の対象外としているなど,他の独立行政法人と全く同様のルールが適用されている訳ではなく,教育機関であることへの一定の配慮がなされている。回答の中には,このような違いがあることを前提としていないものも見られる。
 
      ・ 柔軟な学校運営を行うため,国立大学法人と類似の学校法人化を望む。
      ・ 高専教育の特長を維持できる最低限の財政的安定性の確保が必要である。効率化や自己増収の余地の極めて少ない高専が,独立行政法人として一律に予算削減が行われ,法人化後10年を経て,経営努力は限界を超えている。英語教育の充実や海外体験プログラムなど特色ある教育のために戦略的に配分してきた裁量的経費も機能不全に陥っている。基盤的な予算の削減停止と高専の特性に合致した競争的資金の充実が必要である。
      ・ 国立高専は,平成16年度に独立行政法人の設置・運営する学校となり,毎年度運営費交付金が削減される状況にある。教育活動の比重が大きく,人件費比率も高い高専の経営努力には限界があり,教育研究環境の低下への懸念が現実のものになりつつある。
      ・ 独立行政法人の体制では,予算の削減率も大学法人と比較して大きい。したがって,独立行政法人体制は,予算縮小の現状に適切に対応し難い体制であり,新たな法人体制へと転換すべきと考えられる。
      ・ 国立高専は現在,独立行政法人の形態となっているが,これは,教育研究を使命とする高専の場合,国立大学法人と比較しても,同じ教育研究を使命としているとは思えないほど,不利益な立場となっている。研究開発法人も独立行政法人から脱却した折,高専についても,本来の使命を十分に全うできる法的な形態に変えるべきである。
      ・ 今後は「成熟型経済」の中で国際競争力の強化と地方産業の立て直しを主目的とした技術者・産業人養成機関となる必要がある。そのためには,学術研究を主とする「大学」とは異なり,複線化を一層推し進めたプロフェッショナル養成を目的とする高等教育機関(国立大学とは異なる法人)への移行が必要である。海外において複線化が確立されている優れた例としては,フランスの「グランゼコール」などがある。
      ・ 評価の高い高専が,独立行政法人を理由に毎年予算削減されることには疑問を持たざるを得ない。元来,教育は人材育成への投資であり,我が国の行く末を負って立つ若者のためである。したがって,教育に効率や経営概念を持ち込むことはなじまないと考える。
      ・ 高専教育の内容については,実際に高専卒業生を受け入れている産業界や大学を中心に,優れた特色を持つものとして高く評価されているところであるが,全国の高専の大部分を占める国立の高専に対する財政措置に目を向けると,その運営に係る経費の基本は,制度上,設置主体である独立行政法人への運営費交付金の形で行われており,現在に至るその継続的な削減措置への対応が,もはや限界に達しているのが現状である。
 
    (5) 地方創生に向け果たすべき役割等
        政府が重要施策として「地方創生」を掲げる中,地域との関わり方などについて,多くの高専から回答があり,地方における高等教育を受ける機会の提供や地域のニーズを踏まえた新産業創出,地域の技術者OBの教育活用などの意見があった。主な回答は以下のとおり。
      ・ ロボットやICT技術が進歩発展する時代にあっても,実験・実習・演習を重視した実学教育こそが高専教育の神髄であり,この教育方針を貫くことが日本の産業界や地域活性化を支えるものと確信する。
      ・ 今後も格差が広がる地域において,高等教育を受ける機会を提供することは,地方創成を目指す社会においても重要な役割を担っていると考える。
      ・ 地方創生の中核的存在として,当初使命である地域産業振興は元より,高専シーズと地域の強みやニーズと融合した新規産業創出がこれからの役割である。
      ・ 国立大学理工系と比較して多くの人材を地域に輩出しているが,首都圏への就職の方がまだ多いため,今後,地域創成を目指して改善を図り,研究を通じた強い連携で地域企業発展に貢献する。
      ・ 地域の課題への対応である。これまで高専は,地域に根付いて発展してきた。今,地方創生の必要性が指摘されている中,高専が果たすべき課題は多い。高専が立地する地域の課題を的確に見極め,それを解決できる人材を養成するための,教育内容や体制を早急に構築する必要がある。
      ・ 高専卒業生は,一般の価値観(大企業指向など)に捉われず,自らやりたいことに向かって行動する目的志向性が強いことから,主な活躍の場は起業による新規産業創出と地域活性化であり十分な実績もある。地域活性化では,単に地域で働くことではなく地域の企業を大きく発展させる人材である(当然,国際感覚・対応能力は必要)。
      ・ 高専は全国のほぼ各都道府県に設置されており,それぞれの地域の産業界との連携を更に強化する。
      ・ 技術者育成機関としてだけでなく,持続可能な社会を構築していく核となり,周辺市町と学都を形成する等,今後も地方創生に貢献する。
      ・ 産業界との協働教育を中心とした社会人の再教育システムなどの機能も盛り込んでいき,地域産業に人材を還元できる機能を高めるべきと考える。
      ・ 地方創生を後押しする観点から,熟練企業技術者(OB)の特命教授としての受入れを前提とした寄附講座「地方創生講座(仮称)」を地元自治体,地域産業団体等からの拠出により開設することを可能とし,同講座への学生配属は地元就職希望者を優先することなども考えられる。
      ・ 高専は今後とも企業等が求める人材供給ニーズに的確に応えるとともに,地域振興の拠点としての役割を果たしていく必要がある。
      ・ これまでも「深く専門の学芸を教授し,職業に必要な能力を育成」してきた高専であるが,産官学民の連携により各地域に適合した産業技術の開発や地域に貢献できる実用的なイノベーションの事業化を実現し,物的・人的に地域を活性化し,地方創生に寄与することが重要である。
 
    (6) その他の回答
          その他の回答として,今後も高専の強みである大学とは異なる早期からの実践的な教育を維持することや地域のニーズの変化に対応した学科の改組,グローバルに活躍できる人材の養成,中堅技術者育成という原点の見つめ直しを求めるなど,様々な意見があった。
 
      ・ 学校種としての高等専門学校は依然として健全であり,今後とも社会のニーズに合った人材を輩出し続けるよう,広く社会と意思疎通を図りながら,教育内容・手法を不断に改善していくことが重要であると考えられる。
      ・ 今後の高専は,本来の目的である実践的技術者を排出すると同時に,5年終了後の進路を多様化に対応できるより高度な教育システムを確立し,それが社会に認知されるようにして,技術者養成の社会的役割を担っていくことが求められている。
      ・ 大学との違いを明確にし,高度人材育成を目指す教育,サイエンスの成果に基づく社会実装に向けた実用化研究を活性化すること
      ・ 高専のあるべき姿としては,大学の後追いをするのではなく,地域産業界と協働することによって,これまでの実践的な高専教育の特長を活かしつつ,創造性を養い,積極的なグローバルに活躍できる人材の育成を行うことができる高等教育機関を目指すべきである。
      ・ 高専は大学と一線を画し,社会ニーズの高い人材を育成する機関であり続けるべきである。
      ・ 本科における早期からの専門教育の成果を発展させるためにも,より高度な学修を行うことのできる環境を充実すべきである。今後とも,高専は,高等学校→大学等といった進路とは異なる選択肢を中学校卒業者に提供し,「高専らしい」人材を育成することで,課題解決に必要とされる主体性を持った個人相互の協働や集団における多様性の確保に貢献してゆくことが求められるものと考える。
      ・ 高校・大学の教育コースとは異なり,中学卒業後の早い年齢から講義・実技による専門教育と課外活動・寄宿舎生活などによる人間力の育成を行い,創造力ある実践的な人材育成を行う高専の役割を今後も維持する。
      ・ 高専機構本部に十分な管理運営能力を付与するか,あるいは廃止して各高専の改革意欲・能力に基づく競争原理を導入すべきである。
      ・ 校長の人事を公募制にするなど,学術の展開,産業構造の変化に敏感な人材獲得に注力すべきである。
      ・ ティーンエイジは考えが柔軟だから高専は進路変更や編入学を活発化すべきだ。基礎研究に興味をもったら3年で中退し研究大学に入学し博士号取得。企業の研究職を狙うならば本科卒後に大学編入し大学院進学修士号取得。地域企業との共同開発や商品化に教員とともに取り組むには高専専攻科進学,一足先に仕事に就くには本科卒で就職,と学生が選択できることが重要だ。
      ・ 20倍近い求人倍率が示す通り,高専卒へのニーズは大きい。企業に20歳の技術者を供給し続けるという高専の基本的なミッションを続け,これらのニーズに応えたい。
      ・ 少子化が進み,また情報化技術が著しく進化し,更にまたエネルギー環境も変化する中で,今後,我が国の持続的発展を維持するためには,関連技術の進化や環境変化に順応し,より生産性の高い製品や技術を開発する能力に長けた科学技術者を育成する必要がある。そのためにも,これまでの高専教育の特性を活かし,全国高専の連携した教育研究のメリットを引出す努力が必要である。
      ・ 今後の高専は,これまで積み上げてきた地域に根ざした15歳からの実践的な一貫教育による創造的人材育成という特長を堅持した上で,教育の更なる質的充実,グローバル化への対応,地域との連携の強化を図っていくことが重要である。
      ・ 将来に向けて,社会の諸課題に対して合理的に考え抜く力や適応力を持った人材を輩出するためには,これまでの高専教育の特色である実験・実習などを通して直接ものに触れる実践教育を更に推進するとともに,その基盤となる確かな基礎科学力や専門力を強固にする必要がある。
      ・ 今後の高専は,産業構造の変化や社会・地域ニーズに応えうる学科・コースを設置し幅広い知識・技術を融合でき,社会の各分野において自らの力で課題解決及びデザインできるグローバルな人材の育成を目指すことが肝要であると考える。
      ・ 高専は今後も,専攻科を軸として中学の卒業生を受け入れ早期技術者教育を実施し,社会が要請する技術者像を把握し,それに対応した人材育成を担う教育機関として存続する必要がある。
      ・ 「ものづくり」の分野で大きな役割を果たす中堅技術者を,実践的な教育により育成するという,高専制度設立の原点を,もう一度しっかりと見つめ直す必要があると考えます。
      ・ 科学の発展に伴い,「ものづくり」技術も高度化しているのは事実ですが,それを無理に追い求めるのではなく,専門科目だけではなく一般教養科目も含めて,技術者として最低限必要な基本的知識の修得に,高専教育は徹するべきと考えます。
      ・ 大学進学を希望する学生の数も多く,企業の要望に十分に応えきれていないのも事実である。高専創設の目的に照らし合わせるならば,本科卒業と同時に企業で働くことを希望する学生の数を増やすことに力を入れる必要がある。
 
 
 
 


 
(別紙1)
高等専門学校における教育改善状況等に関する調査に対する各学校からの回答
              ~ F.高専におけるグローバル化に向けた取組 ~



5.その他特色ある取組

    高専教育の国際化に向けた取組について,特筆すべき事例がありましたら記述してください


      ・  世界で活躍できるグローバル・エンジニア育成に向け,「グローバル・シチズンシップ(国際的視野,異文化理解,英語基礎力,コミュニケーション力)の涵養」を本校の国際教育のコンセプトとして展開することにより,社会が求めるグローバルに活躍できる人材の育成を図っている。主な取り組みは,以下のとおり。
        ・  15歳からのグローバル・エンジニア育成である。海外の複数の教育機関と協定を締結して,本科1年生から専攻科2年生まで参加できる複数のプログラムを継続的に実施している。
        ・  海外派遣プログラムは,本科生を対象とした約2週間の海外研修(派遣国:シンガポール,マレーシア,アメリカなど)や専攻科生と本科5年生を対象とした2か月から3か月の海外インターンシップ(派遣国:フランス,フィンランド,タイ)である。
        ・  海外からの学生受入プログラムは,フランス,シンガポール,マレーシア,香港から1週間から3か月の期間で受け入れている。近隣にあるエドグレン高等学校(アメリカ)との交流も本科低学年生対象に継続的に実施している。
        ・  15歳から22歳まで一貫した国際交流を実施することにより,グローバル・エンジニア及びグローバル・リーダーの育成を図っている。
        ・  グローバル・エンジニア及びグローバル・リーダーを育成できる教職員の育成にも力を入れている。
      ・  従来から,フィンランド,フランス等の協定校において派遣・受入れ相互の長期間(3~5か月間)にわたる研究従事型の海外インターンシップを継続して実施しており,定着していると考えている。また,海外派遣を経験した学生は,多くの学生が大学院に進学したり,就職して海外勤務を経験するなど多様な活動を展開している。
      ・  学生への英会話学習の支援(NOVAお茶の間留学を無償で受講させた)
      ・  トビタテ!留学JAPANへの応募指導(1期生1名,高校生コース7名合格)
      ・  トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム 地域人材コースに応募・採択
      ・  国際交流室の設置(フランス,オーストラリア等の海外インターンシップの充実を図っている)
      ・  本校独自の海外インターンシップ支援基金を設立し,海外インターンシップ学生の予算面での支援を行っている。
      ・  本校とフィンランド,ヘルシンキ・メトロポーリア応用科学大学との国際交流の一環として,先方の短期留学生の受入を行っている。
      ・  北アイルランド,ハンガリー,アメリカ,中国,韓国,タイ,シンガポール等,世界各国の大学,並びにカレッジと連携し,教員,学生の相互交流を実施している。本校キャンパスの国際化を強力に推進している。
      ・  海外インターンシップについては,独自のルートにより派遣先の開拓を進める等学生側からの需要に併せ,実施している。"
      ・  4年生を対象に実施する研修旅行を海外にも展開し,段階的に海外研修旅行を実施する学科を増やしていたが,平成27年度からは全学科で海外研修旅行を実施することとした。(H27年度の実施時期等:10月上旬,期間:4日間,渡航先:タイ,台湾,ベトナム)
      ・  学内の国際交流基金を活用し,インターンシップや語学研修などを目的とした海外派遣学生に対して助成(上限8万円)を行っている。
      ・  本校図書館に英語多読用図書約3万冊,多聴用リスニングCD約2千部を所蔵し,授業内外にて活用している。
      ・  英語CALL教室にも同様の英語多読用教材を多数所蔵し,本科1,2年生の英語授業中45分間にて活用している。
      ・  本科2年~専攻科2年までの6年間に英語多読を授業に追加導入した学科の専攻科2年生の平成26年度TOEIC平均得点は約581点(3年間の移動平均,英語圏への留学経験者を除く)となり,理・工・農学系大学4年生の同平均432点(2014年TOEIC DATA & ANALYSIS)を大きく上回った。
      ・  本校では,様々な国籍の教員による授業を行っており,現在,カナダ人専任教員の他に,非常勤講師として,アメリカ人,イラン系カナダ人,インド人等を任用している。以前は中国出身の専任教員の他,韓国,英国やオーストラリア出身の非常勤講師もいた。
      ・  短期留学生の受入れを行っており,3年生以上の学年に在籍する長期留学生に加え,毎年,タイのキングモンクット工科大学から1か月間,短期留学生を受け入れ,サマー・トレーニングと呼ばれるインターンシップを実施し,日本人学生との交流を図っている。
      ・  教育の一環として,毎年11月に,4年生全員を対象に,海外研修旅行を実施している。それにより,学生は,海外渡航の手続きを覚え,海外協定校の学生と交流し,外国の文化を肌で感じ,現地の日系企業を見学し,海外で働く日本人技術者の経験談を聴くことができる。帰国後,多くの学生が,英語学習への意欲が高まったと言っている。
      ・  毎年,数名の学生を選抜し,海外の日系企業や協定校でインターンシップを実施している。帰国後は,研修先の評価,学生の報告書と発表に基づき,単位を認定している。対象は本科5年生と専攻科1年生である。
      ・  高専機構が海外の包括交流協定校と共催して開催する国際会議ISTS(International Symposium on Technology for Sustainability)や,その他の学生を対象とする国際会議に選抜学生(本科5年生及び専攻科生)を派遣し,海外の学生と交流する機会を提供している。
      ・  日本海沿岸の5高専で,中部日本海高専国際化推進委員会を組織し,高専教育の国際化について話し合い,また,連携してタイのキングモンクット工科大学生を受け入れたり,海外インターンシップ先の共同開拓を行ったりしている。同様に,中部日本海高専国際交流学生会議も組織し,各校から選出された日本人学生と留学生を委員とし,学生同士の話合いの場を設け,学生の意見を聴いたり,学生を対象とする講演会を開催したりしている。
      ・  豊橋技術科学大学国際教育センター主催の教員グローバル人材育成力強化プログラムに参加するため,電気情報工学科の教員1名を4月から6月まで豊橋技術科学大学,7月から12月までニューヨーク市立大学クイーンズ校に派遣している。
      ・  本科5年間を通し,日本人教員のもとで「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能の基礎を総合的に学習する授業と,外国人教員のもとで口頭でのコミュニケーションを中心に学習する授業の両方を各学年で並行して受講できるようにしています。それぞれの授業の配置は次の通りです。3年生に対しては,日本人教員と外国人教員が週1回ずつ分担する2単位の授業を前期と後期に行っています。
      ・  日本人教員による授業として,総合英語ⅠA・ⅠB(1年前・後期,各2単位),総合英語ⅡA・ⅡB(2年前・後期,各2単位),総合英語ⅣB(4年後期1単位),総合英語ⅤA(5年前期1単位)開設している。
      ・  外国人教員による授業として,英会話ⅠA・ⅠB(1年前・後期,各1単位),英会話ⅡA・ⅡB(2年前・後期,各1単位),総合英語ⅣA(4年前期,1単位),実践英会話Ⅰ(4年後期,1単位),実践英会話Ⅱ(4年前期,1単位),総合英語ⅤB(5年後期,1単位)開設している。
      ・  日本人教員と外国人教員による授業として,総合英語ⅢA・B(3年前・後期,各2単位)を開設している
      ・  3年生以上では,総合英語ⅢA・ⅢB,総合英語ⅣB,総合英語ⅤAを習熟度別クラスとし,学生の理解度に応じた授業を行っています。
      ・  「グローバルテラス」 というオフィスを設置し,本校海外語学研修の企画と実施,本校海外インターンシップ研修の企画と実施,個人留学(長期・短期),JASSO奨学金申請,トビタテ留学JAPAN申請,インターンシップ留学生受入れ,外国人ゲストを招いてのワークショップ,英語学習教材貸出,予約制英会話レッスンなどのサポートを行っている。
      ・  学生派遣研修の際に教職員派遣研修を併せて行うことで,国際理解やグローバル人材教育の推進に対応できる教職員の拡大に努めている。
      ・  留学生の受入促進,高専機構や中国地区高専コンソーシアム,その他,文部科学省などの催す国際交流事業への学生の積極的参加の促し,本校独自の学術協定を海外の大学と結び,本校の学生を語学研修に送り出し,また相手校の学生を招聘するなど,国際交流活動の推進している。
      ・  定期試験に際して全ての科目で必ず1問は英語の問題を出題する。
      ・  学校の施設のネームプレートに英語表記を添えている。
      ・  在校生が英語に直接触れる機会を作る「イングリッシュカフェ」の開催,英語授業の取り入れ
      ・  国際交流協定校間で双方から学生を派遣し,交流や英語による研究内容等の発表を行っている。
      ・  ISTS(International Symposium on Technology for Sustainability)等の国際シンポジウムへの参加,留学生の派遣・受入れ,海外インターンシップの実施を行っている。
      ・ 文部科学省補助事業に採択され,九州・沖縄地区9高専が連携して,海外の高等教育機関との交流協定の締結,海外インターンシップ,学生交流,英語力向上に向けた取組等を実施している。
      ・  平成25年の創立50周年の寄附金を基に,グローバル人材育成・学生支援基金を創設し,国際交流事業(海外インターンシップ,海外での研究発表,海外協定校への学生の派遣等)に参加する学生に対して助成を行っている。
      ・  九州沖縄地区9高専連携事業を通じて,タイ,マレーシア,ベトナム,インドネシア,モンゴル,中国,台湾の10大学との間で協定を締結している。また,英語キャンプに学生を派遣し交流を進めた。
      ・  専攻科の授業(専攻科特論)で地元外国人講師による英語専門授業を実施
      ・  4年生の工場見学旅行を全学科とも海外で実施している。
      ・  海外の大学(アモイ理工学院,など)と国際交流を実施している。
      ・  昨年度から,学生参加の英語体験学習(外国人コーチ指導のグループ学習)を実施している。
      ・  テクニカルチャレンジ,プログラミングチャレンジ,英語キャンプなど海外協定校との間で,活発な学生交流活動を展開している。また,教員.学生の英語力強化に向けて,フィリピンの語学学校に派遣するなど様々な取り組みを実施している。
      ・  モンゴル科学技術大学と平成7年に学術交流を締結し,積極的に交流している。平成26年度より本校独自の短期海外学生派遣の取組をスタートした。
      ・  文部科学省補助事業に採択され,平成24年度から平成28年度まで事業を推進し,昨年度まで以下の取組みを推進した。
        ・  アジアを中心とした9大学と九州沖縄地区の9高専がMOUを締結したが,その締結までのコーディネートを行い,調印した。
        ・  MOU締結に基づき,平成26年度は九州沖縄地区で,学生76名,教員30名の総計106名がアジア地区の海外大学,企業へ派遣された。
        ・  タイのカセサート大学,キングモンクット工科大学ラカバン校,ノースバンコク校から25名の学生が九州沖縄地区の6高専に6月~7月の2か月間短期留学し,本校にも3名の学生が来校した。
      ・  平成26年9月に,スウェーデンのストックホルムに2週間ホームステイしながら,現地の高校と交流を行った。
      ・  平成26年9月に,シンガポールのテマセクポリテクを訪問し,学生交流と英語研修を行った。
      ・  香港のVTC/IVE校から1名の学生が3月~5月まで本校で短期留学を行い,研究プロジェクトを実施した。
      ・  英会話力を向上させるため,教員と学生向けにネイティブスピーカーによる英会話講座を,放課後に10回ほど開催した。
      ・  モンゴルの高専に教員を派遣
      ・  海外インターンシップの充実
      ・  提携校であるオタゴポリテクニック(NZ)へ,「専門科目を英語で学ぶ」高専らしい短期留学を実施している。
      ・  シンガポールやインドネシアの学生とともに,インドネシアの村でのフィールドワークを通して,現地の課題発見・解決提案を行うSNSプロジェクト「ラーニングエクスプレス」を行った。
      ・  工学教育改革を推進する世界的な組織「CDIO」の活動に参加し,教育改善に努めた。
      ・  海外の大学等からインターンシップ学生を受け入れた。また,シンガポールポールポリテクニクの短期研修(第25回MILEプログラム)参加学生を受け入れた。
      ・  第4回技術系グローバル人材開発セミナーを開催し,教育関係者,企業の経営者及び技術者との意見交換を行った。
      ・  4年生のほぼ全員が第33回シンガポール修学旅行に参加し,1週間にわたり異国の文化に触れるとともに,シンガポールポリテクニク学生との国際交流活動を行った。
      ・  修学旅行中の英語研修(グアム・サイパン)を行っている(H27年度まで)。来年度からは海外集中英語研修(1週間程度)を計画中である。また,イギリスの協定校との相互交流(10日間程度であるが日本から訪問したり,イギリスからの訪問受入れ)を行っている。    
 


 




(別紙2)
高等専門学校における教育改善状況等に関する調査に対する各学校からの回答
                  ~ J.高専高度化再編後の状況について ~


1.再編の効果
    再編の効果・影響について,以下の観点から記述してください

      1  管理・運営事務の効率化
        ・  校長及び事務部長のもと,管理・運営事務の一元化が行われ,スケールメリットを活かすことができた。
        ・  両キャンパスの教職員が協力体制を維持することによって,効率的な学校の管理・運営が可能となった。
        ・  施設,財務関連業務は一体化が図られ,効果的な資源配分が可能となった。
        ・  キャンパス間での教職員の人事交流を行うことで,統一した運営に不可欠な共通理解を深めさせ,互いに特長的な取り組みを取り入れるなど,運営の効率化を図っている。
        ・  各役務契約を両キャンパス分まとめて1契約とすることをはじめとして,統合した予算の弾力的かつ柔軟な運用を行い,事務の効率化と経費削減が図られた。
        ・  両キャンパスの建物清掃業務等を一括契約にすることや施設・実験設備・スクールバス等の共用化を進めることで,資産の有効活用を図り,経費を削減している。

      2  教員の教育負担の軽減
        ・  高度化再編により1学科を減じたため,教員の平均授業時間は軽減された。
        ・  新たに複合融合3学科に再編したため,新しい教育カリキュラムへの対応が必要になり,新学科の完成年度(平成26年度)までは教員の負担感の軽減には繋がらなかったと思われる。
        ・  教員の負担軽減が高度化再編の目的ではないため,軽減について意識したことはない。
        ・  再編時,複合・融合制の選択科目を増やした新カリキュラムをスタートさせたが,4学科から3学科への削減効果があり,授業等の個々の教員の教育負担は軽減した。
        ・  それまで雇用していた非常勤教員数を減らしたため,教育負担はそれほど変化していない一方,センター等の業務は再編統合前より増大している。

      3  教育資源の共有
        ・  旧4学科を完全に解体して,3学科に再編したため,教員間の連携が進み,それに伴いキャンパス内での教育資源の共有化も促進された。
        ・  キャンパス間の資源の共有については,両キャンパス間の物理的な距離の問題があり,それほど進んでいるとは言えないが,共同で教育改革のFDを開催する,あるいは体育の教員が両キャンパスで授業を担当する等,共有化に努めている。
        ・  研究においては,両キャンパスの教員がグループを形成して共同研究を行っている事例があり,それぞれのキャンパスに設置された実験機器を共有して有効に利用している。
        ・  実験,観察用装置,並びに工場等の設備資源を両キャンパスで共有することができた。
        ・  特定科目において,同じ教員が両キャンパスの授業を担当する等,教員の専門知識を有効活用することができた。
        ・  特別講演のTV配信を積極的に行っているだけでなく,両キャンパス同時の遠隔TV配信講義を今年度から新たに開始した。
        ・  教科によっては,同じ教員が両キャンパスで授業を行っている。
        ・  共用サーバの拡充やグループウエアの導入によって,デジタルデータを主体とした教育資源の公開・共有(授業用パワーポイント,シラバス,学生による授業アンケート結果及び改善報告等)が進んだ。

      4  新たに対応が必要となった課題
        ・  統合により両キャンパス合同会議の移動時間のロスが生じたが,その後TV会議を導入して効率化を図った。
        ・  両キャンパスが物理的に離れているため,情報共有や意思疎通が迅速に進まない場合もあり,今後継続的な検討が必要である。
        ・  合同授業の科目や両キャンパスの授業を担当する教員の配置をしたが,移動に要する時間ロスが多かったため一部はTV会議を使用した授業に切り替えた。
        ・  統合前の両高専で賞罰規則や始業時間等,様々な相違が存在していたため,それらを統合するのに多大な努力を必要とした。現在は,両キャンパス間での整合性がかなりとれているものと考える。
        ・  両キャンパス合同で開催する会議の際は,キャンパス間の移動のための時間的な負荷(車での往復で約1時間半)が大きい。これは,テレビ会議システムの活用によりその軽減を図っているところである。
        ・  各キャンパスでは学科減となり,学生数が減ったために,活発な課外活動の維持が難しい。特に運動部では,部員数不足で大会に参加できない部が出てきているので,両キャンパスの部活の統合も検討しているが,限られた放課後の時間で移動に多く費やされるので,両キャンパス間の交流は難しい。
        ・  入試制度の統一,及び教務関係,学生関係の規則等の統一化,両キャンパスのネットワーク環境の統一を図る必要があったために,かなりの時間と労力がかかった。
        ・  高度化再編以前は,各キャンパスの始業時間,講義時間と休憩時間の割り振り等が異なっていたため,これを統一する必要が生じた。バスのダイヤと始業時間を合わせていたため,始業時間の変更に伴い,バスのダイヤ変更をお願いすることになった。
        ・  TV会議システムを積極的に活用しているものの,直接会った形での会議が好ましい場合もある。
        ・  公共交通機関を利用してのキャンパス移動には,片道3時間要する。公用車があるものの,利用頻度が高く,飽和状態である。
        ・  キャンパス間の距離が離れており,公共交通機関を利用すると2時間を越え利便性が悪く,教職員・学生の日常的な交流が極めて困難な状況である。
        ・  会議の開催や行事日程の作成においても制約を受ける場合がある。
        ・  高速道路を利用して公用車,スクールバスで移動しているが,時間と経費及び人的負担が大きくなっている。
        ・  平成26年度,教員定員削減(11名),センター定員吸い上げ,加えてセンター予算削減の指示があり,再編時の基本構想・人員配置等を見直す必要がある。

      5  その他
        ・  スケールメリットによる効果として,各キャンパスが各地域の拠点となることで,ひとつの高専として全県をカバーした活動が可能になり,広域に社会貢献活動を展開するとともに,高専の知名度アップを図っている。
        ・  統合再編により学科数が削減されたが,最近まで教員定員数は維持された。そのため,統合前に比し,よりきめ細やかな学習指導及び研究指導を行うことができた。
        ・  研究,産学連携,地域貢献,国際交流等の活動を活性化でき,これらの成果を他高専へ広げることにより,高度化再編による波及効果も上げることができた。
        ・  地域の拠点校として,アクティブラーニングや産学連携活動の実施などの支援・取りまとめにおいて再編統合による規模拡大のメリットを活かせた。
        ・  学生募集のための中学校訪問のノウハウを学校全体で共有するとともに,各中学校を各キャンパスの教員が一緒に訪問している。
        ・  入学式,卒業式,球技大会など合同で行っている。さらに,合同FD研修,全教員会議を実施している。また,テレビ会議システムを活用して,両キャンパスの会議を円滑に行うようにしている。
        ・  2つの高専が一体となることで,地域を代表する高専としての認知度は上がり,県(行政)や企業団体等との連携は強くなった。


2.高度化再編の実績と課題を踏まえ,今後検討が必要な事項があれば記述してください。

  ・  距離的に離れた両キャンパスの教育活動や運営管理の連携をより合理化するために,TV会議システムをより整備する等,両キャンパス間のネットワーク強化を進める必要がある。
  ・  地域創生の重要性に拍車がかかった。それを担う人材の養成のため,多様なコース制導入とアクティブラーニングを活用した新カリキュラムの導入等,新たな教育体制を構築する必要がある。
  ・  現在の2キャンパス6学科ではなく,1キャンパス6学科の方が管理・運営及び教育・研究を行う上でベストである。統合校では,最近の教員定員削減に伴い,退職者の十分な補充を行うことができず,教科担当者数,並びに学科教員数においてアンバランスが起こりつつある。今後,学科移動を含めた教員の再配置や,他キャンパスでの授業担当等を検討し,アンバランスの是正に対処する必要がある。
  ・  地場産業の支援や理科学教育支援に資するセンターを設置し力を注いできた。産業界だけでなく,金融業界とも連携協定を締結する等,関係強化に努め,成果が出始めた段階であり,今後更に強力に進めたい。
  ・  両キャンパス間での教員の交流も行われているが,今後さらに,積極的な資源の共有を図る必要がある。
  ・  高度化再編は,人的並びに物的資源の高度活用にメリットが多いと思う。学校運営に困難は感じないし,デメリットがあるとは思わない。
  ・  再編時に,地域の広域拠点センターとしての役割を担った3つのセンターを設置して,コーディネータ等の活躍もあって,それぞれの分野で地域の拠点校としての役割を果たしてきたが,定員の吸上げや予算カット等の措置によって,活動の見直しを余儀なくされている
  ・  高度化再編して5年が経過し,一つの高専での運営もある程度スムーズになってきているため,教職員の負担軽減を図る観点から,会議や委員会の削減など,会議体の見直しや運営組織体制の見直しを検討している。

お問合せ先

高等教育局専門教育課

高等専門学校係
電話番号:03-5253-4111(内線3347)

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。

(高等教育局専門教育課高等専門学校係)