大学等における社会人の実践的・専門的な学び直しプログラムに関する検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成27年3月19日(木曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 社会人の学び直しの現状等について
  2. その他

4.出席者

委員

荻上座長,小杉座長代理,乾委員,岩立委員,菅野委員,小林委員,新谷委員,杉谷委員,田宮委員,堀切川委員

文部科学省

吉田高等教育局長,佐野大臣官房審議官(高等教育担当),牛尾専門教育課長,牧野専門教育課長補佐

5.議事録

【牛尾専門教育課長】  失礼いたします。所定の時刻になりまして先生方お揃いですので,会を始めさせていただきたいと思います。本日,第1回「大学等における社会人の実践的・専門的な学び直しプログラムに関する検討会」に御参画いただきましてありがとうございます。本日初回でございますので,冒頭のみ私の方で進行させていただきたいと思います。専門教育課長の牛尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに,本検討会に御参画いただきました委員の皆様でございますけれども,時間の都合上,資料1の2枚目に名簿を付させていただいております。こちらを御覧いただくことで御紹介に代えさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それから名簿に記載のとおり,今回の座長につきましては荻上委員,座長代理につきましては小杉委員にお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それから,本日,後ほど肥後銀行の取組を岩立委員から御紹介いただくことを予定しております。そのため岩立委員に加えまして,本日は肥後銀行の人事部人材育成グループ長の坂本様にもお越しいただいておりますので,御紹介させていただきます。本日は御多忙の中ありがとうございます。
 それでは続きまして,まず本検討会の議事の公開についてお諮りをさせていただきたいと思います。恐縮でございますが資料2を御覧いただければと思います。事務局としまして公開についての考え方の案を御用意させていただいております。基本的には本会つきまして,議事は原則公開ということでよろしいかと思っておりますけれども,万が一機微にわたるような内容を取り扱うような場合に公開することがよくないと判断されるような場合には非公開にするという形にしてはいかがかと思っております。
 それから会議資料,議事録についても同じような考え方で整理をさせていただきまして,議事録については,非公開の場合には場合によっては議事要旨を作るといったことも考えているという形で整理をさせていただいてはどうかと思います。
 このような形でよろしいでしょうか。
                              (「はい」の声あり)
【牛尾専門教育課長】  ありがとうございます。それでは資料2のような形で本会の公開については取り扱わせていただきたいと思います。
 それでは,早速でございますけれども,多数の傍聴希望の方が来ていらっしゃいますので,これから公開という形で御入室していただきたいと思っておりますのでよろしくお願いします。それから御入室が済みましたら,荻上座長に御挨拶をお願いするとともに,以後の進行につきましては座長の方にお願いしたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
 それでは傍聴の方が入られるまで,しばらくお待ちいただければと思います。
                                (傍聴者入室)
【牛尾専門教育課長】  よろしくお願いいたします。
【荻上座長】  それでは,「大学等における社会人の実践的・専門的な学び直しプログラムに関する検討会」を開催するに当たりまして,一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 急速な経済社会の変化によって,職業に必要な知識や技術が絶えず変化するとともに,働き方も多様化しており,社会人の学び直しに対するニーズが高まっております。そのような中で,今月4日に取りまとめられた教育再生実行会議の第6次提言では,大学等が社会人等のニーズに応じた実践的・専門的な教育プログラムの提供を推進するとともに,国がそのような実践的・専門的な教育プログラムを認定・奨励する仕組みを構築する旨,提言されたところです。本検討会では国が大学等における実践的・専門的な教育プログラムを認定する仕組みを構築していくに当たり,社会人の学び直しに資するプログラムの具体的な内容について検討ができればと考えております。大学関係,産業界,労働界など幅広い分野からお集まりいただいた委員の皆様方の御協力を得ながら検討を進めていきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 カメラの撮影はよろしいでしょうか。それでは,カメラの撮影はここまでとさせてください。
 それでは,まず事務局より配付資料の確認等をお願いいたします。
【牧野専門教育課長補佐】  専門教育課長補佐の牧野と申します。よろしくお願いします。
 まず資料の確認をさせていただきます。資料1として,先ほども御紹介しましたけれども,検討会の設置紙と,委員名簿を配付させていただいております。また資料2は公開規則,資料3は社会人の学び直しに関する現状等について,資料4は本検討会における主な検討事項,資料5は本日肥後銀行様から御紹介いただきます熊本大学と連携した当行の教育プログラムについて,資料6は今後のスケジュールについて,を御用意しております。皆様,お手元に全ての資料がおそろいでしょうか。
【荻上座長】  よろしいでしょうか。
 それでは早速,議題に入りたいと思いますが,本日用意されている議題は社会人の学び直しの現状等についてということでございます。それでは,まず事務局より社会人の学び直しに関する現状及び本検討会における検討事項について,資料の3と4に基づいて説明をお願いいたします。
【牧野専門教育課長補佐】  それでは資料3の社会人の学び直しに関する現状等についてという資料について説明させていただきます。
 まず1ページ目でございますけれども,高等教育機関において学び直しを行っている社会人数でございます。大学や大学院,短期大学,専修学校における正規課程や履修証明プログラムなどを合わせまして,平成27年3月時点の集計で十一万千人の社会人が学び直しを行っております。
 2ページ目でございます。大学等における社会人受入れの推進に関する仕組みでございます。社会人の特別入試や昼夜開講制,長期履修制度など社会人が大学等に通いやすいように様々な仕組みが整備されております。
 次のページに参りまして,大学院における社会人学び直しへの取組状況でございます。右側の表をごらんいただきますと,例えば丸1の社会人対象の学位取得コースの設置については,経年で見ると徐々に増えていることが分かります。平成24年では約半数近くが取り組んでおります。一方で丸2の社会人対象の学位以外の修了証を与えるプログラムの実施,企業等と連携した社会人教育プログラムの実施の丸2,丸3をごらんいただきますと,経年で見ても横ばいでございまして,数としても少ないことがお分かりいただけます。
 4ページ目に参りまして,履修証明制度に関するデータでございます。履修証明制度とは学校教育法に規定する制度でございまして,大学や高等専門学校において,総時間数120時間以上の授業科目を体系的に編成した特別の課程を設定し,修了時に大学から履修証明書を交付する仕組みです。平成19年に設けられた制度でございまして,ここでは大学のデータのみ紹介しておりますが,履修証明プログラムを開設している大学数は横ばいであり,受講者数をごらんいただくと減少していることが分かります。
 5ページ目に参りまして,高等教育機関への25歳以上の入学者の割合の国際比較でございます。右側の表をごらんいただくと,OECD各国比較の平均をごらんいただきますと18.1%であるのに対し,日本は1.9%と国際的に見て社会人の学び直しの比率が低い状況です。これはあくまでも正規課程への入学者の割合ですので,1ページ目でごらんいただいたような履修証明プログラムや科目等履修で学んでいる社会人は入っておりません。
 次,6ページから8ページまでは,大学院,大学,短期大学の社会人入学者数の推移でございます。機関別で見ていただきましても,近年,社会人入学者数は増えていないことが分かります。
 次,9ページ目を開けていただければと思います。少しデータは古いのですけれども,社会人二千人にアンケートをとりましたところ,左側の表で見ていただくと,約9割が学び直しに関心を持っていること,右側を見ますと,約7割が大学や大学院において学び直しを行いたいと考えていることが分かります。
 次のページに行きまして,左の表ですけれども,社会人に聞きますと,勤務時間が長くて十分な時間がない,費用が高い,職場の理解が得られないなどが大学進学の主な障害となっていること。右側の表を見ますと,在職したまま大学院で勉強する条件としては,土曜,夏休み,夜間の開講,便利な場所での授業,そのようなフレキシブルな授業形態が求められていることが分かります。
 次のページに行きまして,こちらは社会人が大学等で学び直したいと考えている内容として,どのようなものがあるかということでございます。仕事に必要な専門的知識や,現在の仕事を支える広い視野など,現在の仕事などに使える力というものについて能力を修得したいと考えていることが分かります。
 次の12ページ,13ページは,それぞれ左側が社会人学生,右側は大学院に対してアンケートをとったものでございます。まず12ページ目ですけれども,カリキュラム内容で重視する点について,社会人学生に聞きますと,赤枠の最先端にテーマを置いた内容や,研究推進力を身に付ける内容を重視しているのに対して,大学院は,優先順位としてはそこまで重視していないことが分かります。
 次に13ページですけれども,重視する教育方法について,社会人学生は事例研究やケーススタディー,実務経験のある教員や講師による指導を重視しているのに対し,大学院は,優先順位としてはそこまで重視していないということが分かります。
 次は企業側の内容を見ていきますと,14ページですけれども,左の表は,企業は半数近くが職員の大学院就学を認めていないことが分かります。右側の表の上ですけれども,実際に過去3年間に大学院へ職員を送り出しているところは約1割で,その下が,ほとんどが自己負担で社会人学生は通っているということが分かります。
 次のページに行きまして,企業における教育訓練費やOFF-JTの実施状況のデータを記載しております。こちらを見ていただきますと近年横ばいとなっていることが分かります。
 次のページに参りまして,左の表ですけれども,こちらは企業が行っている教育訓練の実施方法で,右側が実際にOFF-JTで使った教育訓練機関の種類でございます。左側をごらんいただくと,ほとんどが社内教育を行っていて,アウトソーシングは4割ぐらい,その内,右側で大学,大学院,高専に対してアウトソーシングしたというのが1.9%であるということが分かります。
 次のページでございます。企業が従業員を大学院へ送り出しやすい環境としては,経済的な優遇があることや,所在地などの学習環境,開講時間帯や履修期間・履修形態などの通学環境に工夫があること,教育内容や方法が充実していることを求めていることが分かります。
 次のページに参りまして,社会人向け教育プログラムへの期待について,左側が企業,右側が大学院に聞いた内容を掲載しております。企業側を見てみますと,赤枠ですけれども,実践的な教育プログラムの充実,知財やMBAなどのビジネスに直結する高度専門的分野の教育の充実,実務の最先端の人の講義などを重視しているのに対し,大学院側は,優先順位としては余り重視していないことが分かります。
 19ページをおめくりいただければと思います。これまで御説明したデータを踏まえまして,職業に必要な能力や知識を習得・更新・向上するため,大学や大学院等において学び直しをしたいと考える社会人は多く,また先端的な専門知識や現在の仕事を支える広い視野など,仕事に使える能力の習得を求めていることが分かります。しかしながら実際に大学等で学び直している社会人は少ないのが現状です。その要因としては,赤字で書いております職場の理解が得られない,勤務時間が長くて時間が確保できない,社会人や企業のニーズに合ったカリキュラムや教育方法が提供されていない,受講料の負担が大きいなどが障害となっていることが考えられます。これらの課題を解決し,社会人が職業に必要な能力や知識を高める機会を拡大する方策を検討する必要があります。
 20ページをごらんください。教育再生実行会議の第2分科会において,社会人の学び直しの質・量の充実について検討がなされまして,21ページをごらんいただきますと,今月の4日に提言が出されております。内容としましては,一部抜粋ですけれども,国は大学等における実戦的・専門的なプログラムを認定し,奨励する仕組みを構築すると書かれているところです。
 22ページですけれども,文部科学省としましても,実行会議の提言を踏まえまして,大学や短期大学,大学院,高等専門学校において,社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的な教育プログラムを提供する場合に,当該プログラムを文科省が認定する制度,ここでは仮称として職業実践教育プログラム認定制度と記載しておりますけれども,この認定の仕組みを創設したいと考えております。文部科学省が認定することにより,学び直す選択肢の見える化,大学等におけるプログラムの魅力向上,企業等の職員の学び直しに対する理解の増進を図りたいと考えておりまして,本検討会の委員の皆様の御知見を頂きながら,この認定制度の検討を行っていきたいと考えております。
 次の23ページ以降は参考資料でございます。簡単に御紹介いたしますと,24ページは18歳人口の将来推計,25ページと26ページは高等教育の学校数,あと学生数になります。27ページについては科目等履修生制度について記載しております。また28ページになりますと専門職大学院制度の概要,29ページから32ページまでは社会人学び直し関係の授業と,その採択校を掲載しております。33ページは,今回,専修学校は本検討会で御議論いただく対象には入れておりませんけれども,専修学校の専門課程について,職業実践専門課程として大臣認定をする仕組みがございますので,その概要を参考として入れております。34ページは厚労省の仕組みでございますが,雇用保険の被保険者等が厚労大臣が指定する教育訓練を受ける場合に,費用の一定割合の給付を受けられるようにするというものです。本検討会で御議論いただく認定制度が労働行政を担当する厚労省や産業界,労働関係者の皆様から,厚労大臣が指定する教育訓練としてふさわしいものだと評価していただけますよう作り上げてまいりたいと文科省としては思っております。
 次に資料4の説明をさせていただきます。資料4については,本検討会において主に御議論いただきたいと考えている事項を挙げさせていただいております。本検討会においては,総じて職業実践教育プログラム(仮称)として認定すべき社会人の学び直しに資する実践的・専門的な教育プログラムとは,具体的にはどのような内容であるべきかという点について御議論いただきたいと思っております。例えば丸1,大学等において実務に関する知識や技術などを育成するには体系的な教育を行う必要があることから,修了に必要な授業時数や単位数には一定以上の時間が必要ではないか,や,丸2,社会人の学び直しに資する実践的・専門的な教育とはどのような教育なのか。例えば,そこで例に挙げさせていただけますけれども,実務家教員による授業やインターンシップ,PBL,企業などと連携した授業など。丸3,実務に生かすことができる実践的・専門的な授業が総授業時数の一定割合を占めるべきではないか。丸4,社会人が通いやすくするためにはどのような方策が考えられるか。例えば週末開講や夜間開講,IT活用など。丸5,産業界との協働をどう確保すべきか。丸6,質をどのように担保することが考えられるか。例えば当該プログラムの自己点検・評価の公表など。などの事項について御議論を賜れればと考えております。以上でございます。
【荻上座長】  ありがとうございました。いろいろ御質問等おありかと思いますが,後ほど質疑の時間を十分とっておりますので,質疑に入る前に,肥後銀行における大学と連携した取組の実践例を御紹介していただいて,併せて質疑をしていただくというふうにしたいと思います。
 それでは,恐れ入りますが岩立委員から御発表をお願いいたします。
【岩立委員】  肥後銀行の岩立でございます。弊行で熊本大学様と連携した当行の教育プログラムについてということで発表させていただきます。
 本日,肥後銀行という銀行について,皆さん御存じない方も多いと思いますので,恐縮ではございますが,簡単に手前どもの銀行の御説明をさせていただきます。熊本県を中心に,122か店で営業しております地方銀行でございます。1925年創立でございまして,昨年の11月に隣県の鹿児島銀行と経営統合を基本合意しておりまして,この3月に最終契約を予定しております。持ち株会社を10月に設立し,2行の行名はそのままで,私ども肥後銀行はそのまま肥後銀行として継続することになります。企業理念はごらんのとおりでございます。
 まず,熊本大学と教育プロジェクトを進めるに至った背景について御説明いたします。弊行の経営戦略はお客様へのコンサルティング,課題解決を行う経営技術支援ビジネスモデルを標榜(ひょうぼう)し展開してまいりました。その経営技術支援を実行するために必要な知識・スキルを当行ではICATと,これは造語でございますが,ICATと定義をしております。ICATについては次に詳しく説明させていただきます。今後の環境変化を考えますと,人口減少に伴い地域経済縮小が予想される中,ビジネスモデルはこれまでの金利競争を中心とした同質競争から,付加価値で差別化する異質競争への時代へと転換していくものが想定されます。地方銀行の当行といたしましては,ICATをベースとし,地方創生につながる知識集約型ビジネスモデルを目指しており,このベースとなるICATについて熊本大学より知見を提供いただきたいというのが背景としてございました。
 次,お願いします。ICATでございますが,経営技術支援を行うためのベースとして考えております。簡単に言いますと,デザイン力ということで表現をしております。Information TechnologyのIT,これはコンピューターネットワークを中心としたシステム設計,Communication TechnologyのCTは,組織運営に欠かせないコミュニケーション設計,それとATは,Account・Analysis&Accountabilityといった会計・分析力・説明力,この三つを合わせまして論理設計ということで定義をしております。このIT,CT,ATを駆使して経営技術支援を行っていくというのが弊行の経営技術支援ビジネスモデルでございます。
 具体的には経営技術支援による課題解決といいますのは,お客様の企業に対してのライフステージに合わせて,成長段階に合ったコンサルティングを行い,課題解決を支援するといったものです。具体的な熊本大学との取組事例についてお話しします。熊大・肥銀ビジネスアカデミーと銘打ちまして,まず本プラグラムの提案について,弊行から熊本大学様の方へ御提案差し上げました。熊本大学の知見を地域企業人へ提供していただき,専門性を開発し,ひいては地域の活性化につなげるということで,弊行で実験をしていただき,熊本地域企業への展開可能性を探っていただく形に試金石的位置付けとして御提案をさせていただきました。熊本大学様への要望事項としまして,先ほど申し上げましたICATについての必要な知見,情報システム教育,市場ファイナンス教育,確率・統計,金融工学教育,それとグローバルコミュニケーション教育をカリキュラムとしてお願いをさせていただきました。
 プログラムの策定・実施までの経緯でございますが,熊本大学様へ御提案した後,弊行にてキックオフ・ミーティングを開きました。25年の5月にプロジェクトメンバーが組成され,弊行のトップ頭取より今回のプロジェクトの主旨説明があり,それから熊本大学様の両角副学長,弊行の人事担当役員をはじめとする第1回合同協議会を開きまして,具体的な講義イメージについて話合いを行いました。7月より個別カリキュラムの検討を開始し,8月に担当教授も決定し,5か月で開講の準備を整わせ,平成25年10月,実務者編でのスタートをいたしました。6か月後に管理職編というものもスタートしております。
 具体的なプログラムの概要について御説明いたします。受講者は40歳未満の実務者コースと管理職のコースを設定し,基礎コース6か月,アドバンスコース6か月,トータル1年の期間といたしました。基礎コースにて統計基礎,法律,システム,グローバルコミュニケーションとしての英語,これを学び,アドバンスコースでは,その応用としてデータマイニング,プロジェクトマネジメントを取り入れました。市場部門の担当者については数理ファイナンスを専門分野として追加したコースにいたしました。
 これが具体的なスケジュールでございますが,隔週水曜日15時から18時2こまという形で,場所は弊行の研修施設を利用しました。基礎コース,アドバンスコース,分野別コースはごらんのとおりでございます。1年間の運営にはコース設計者,これは弊行の市場金融部長でございますが,それと企画者,これが隣におります人材育成グループ長,坂本でございますけれども,毎回この講義に参加させていただき,ファシリテーションを担当しました。一つ一つの講義の目的・意義を解説し,講義時間中の理解を促進することを行ってまいりました。
 カリキュラムにつきましては,実施7講座について示しております。統計,それと数理ファイナンス,データマイニング,システム,プロジェクトマネジメント,法務,グローバルコミュニケーションとしての英語ということでございます。グローバルコミュニケーションについては外国人留学生と共同で,インターネット等からの情報収集,それとディスカッションを行い,プレゼンテーションを行うというようなカリキュラムの中で英語でのコミュニケーションを養う内容といたしました。
 今回のプログラムについて,1年間を総括しますと,当初の目的,定量分析かつグローバルな人材の育成については一定のレベルまで達したと言えると思っております。その理由として,統計では基礎的な解析技術の習得,ビッグデータの最新情報の入手,システム関係もプログラミング,プロジェクトマネジメントのベースは修得できたと思っております。グローバルコミュニケーションにつきましても,外国人留学生も含めた共同作業を通じて,肌感覚で学ぶことができました。
 一方で浮き彫りとなった課題もございます。一つ目に,トライ・アンド・エラーでスタートしたために,目標設定が事後設定となった点が挙げられます。二つ目はビジョンの説明者かつ講義時間中の解釈促進者,いわゆるファシリテーター,これが必要だなということでございます。三つ目は実務者コース,管理職コースの二本立てとして運営したために,教授のスケジュールの調整が難航し,大学側に大きな負担を掛けてしまったということでございます。最後に個別科目の授業内容について,講師との事前調整が十分にできない部分があったこと,また熊本大学には経済学部,経営学部がないために,科目設定に制限があったことが本プラグラムの課題として弊行としては考えております。
 今後の展開における課題という部分では,当行で実験をしてみて,今後地域展開を図っていく際の課題については大きく三つ考えられます。まず弊行向けのプログラムが広く通用するかどうかという点でございます。特に地方においての地域中小企業向けとして,そのまま適用するのは難しいかもしれません。
 次に,一般的には民間教育会社が提供するプログラムと本件の差異についてです。既に民間教育事業会社が社会人向けに様々なプログラムを提供している中で,大学にしかできない特色をどう打ち出していくかという課題だと思っております。今回のプログラムの内容につきましては,民間教育会社でできない内容であったということで,今回の件につきましては理解をしております。
 最後に,熊本という地方の地域で考えた場合,地域中小企業における真の企業人の教育ニーズというものをどう把握していくかということにも課題があると考えております。
 弊行においては今後もこのプログラムをよりよいものにするため,それと個別科目の事前練り合わせを入念に行っていきたいと考えております。また今後は熊本大学の高度な知見を医学部とほかの学部の領域まで活用拡大していきたいと考えております。
 大学の知見の活用の広がりについてでございますが,冒頭申し上げました今後のビジネス環境変化を考慮した場合,人口減少・少子高齢化の時代に金利等の同質競争から脱却し,ソリューションを中心とした異質競争に対応していくためには,知識集約型ビジネスモデルの転換が必要と考えております。大学の高度な知見や外部の有識者のお力を借りて,事業分野を科学的に分析し,新たな発想から付加価値の提供につなげていき,地方創生の支援を行っていくことが地方銀行のビジネスモデルだと考えております。これまでの商品提供中心の仕事からソリューション提供への転換をするためには,事業性の評価や目利き力の向上が地方銀行として不可欠となります。事業の周辺を科学していくためには,ごらんいただいていますような多くの学術的知識・知見が必要だと考えております。
 今回のプログラム以外でも,熊本大学様の知見を活用させていただいている事例がございます。御紹介します二つの例でございますが,まずは教育分野でございまして,教授システム学専攻鈴木教授のインストラクショナル・デザインについて,現在,当行の教育研修部門についていろいろなサジェスチョンを頂いております。それと医療分野につきましては,脳科学の分野につきまして,認知症,鬱病等の知見を高齢者対応,従業員ヘルスケアの分野で生かしていきたいと考えております。
 インストラクショナル・デザインについて一つ御紹介させていただきますと,インストラクショナル・デザインは教育体制,教育体系をシステム的なアプローチとして行う学問でございます。鈴木教授はアプローチとしてeラーニングの手法でこの大学院講座自体を運営されておりまして,全国に社会人受講生が存在しているという形でされております。実際にeラーニングの画面を拝見させていただきますと,従来のeラーニングと違い,双方向性や議論活性化,興味の継続等作り込みが斬新で,自宅や職場で働きながら学習したい社会人教育の手法としては参考になる事例だと考えておりまして,今回御紹介させていただきました。
 弊行における熊本大学様との教育プログラムについての発表は以上でございます。ありがとうございました。
【荻上座長】  どうもありがとうございました。
 それでは,先ほど事務局から資料3と4に基づいて御説明をしていただいた内容並びに,ただいま資料5に基づいて肥後銀行の岩立委員から御紹介いただいた内容につきまして,委員の皆様から御自由に御質問,御意見等を頂きたいと思います。1時間少々時間がございますので,どうぞたっぷりとお願いいたします。
 どうぞ。
【菅野委員】  最初に確認ですが,この検討会のスコープですが,これ大学,大学院,短大という理解でよろしいですか。
【牧野専門教育課長補佐】  あと高等専門学校も対象に考えてございます。
【菅野委員】  分かりました。あともう一つ,「学び直しプログラム」の定義ですが,頂いた資料の論点の例を見ると,今の大学の枠内でそのプログラムをどうしようかという論点ですよね。肥後銀行さんの例は,これは大学の外ですよね。肥後銀行の中で肥後銀行が作った企業向けのカスタマイズ・プログラムですよね。そちらもスコープに入れて議論していいのでしょうか。そちらになるともうカスタムメイドですから,肥後銀行さんが満足すれば単位数がどうのこうのってもう関係ないわけですよね。ところが大学の枠内でやるとオープン・エンロールメントですから,ある大学でこの資格を取ったと世間に言うためには一定のクオリティが必要であると。だから単位数が幾つ要るとかルールが必要になってくるわけですよね。クローズドのカスタマイズの場合はそういう概念すらそもそもないので,基準すら要らなくなるという話になります。そこもスコープに入っているのか入っていないのかですね。
【荻上座長】  お願いします。
【牧野専門教育課長補佐】  そういった対1企業に対するプログラムというものも今後広げていければと思いますけれども,今回認定制度の対象と考えておりますのは,あくまでも社会人が自分のこういった能力を伸ばしたいというときに,どこの大学のどのプログラムが自分の伸ばしたい能力を伸ばせるのかということが分かるようにしたいという趣旨もありますので,そういった意味では一つの企業のみにならず,一つの企業の意見を踏まえたものであったとしてもほかの方も受けられるような仕組みになっているプログラムというものを対象にしたいと思っております。
【菅野委員】  そういう意味では大学等が提供するオープン・エンロールメント・プログラムがメーンのフォーカスだという理解でよろしいですね。
【牧野専門教育課長補佐】  おっしゃるとおりでございます。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 どうぞ。
【小杉座長代理】  今と同じスコープの議論ですが,社会人って誰でしょうかということです。ここで使われたデータはほとんどが企業に在職している正社員を対象にした調査を基にしていますが,在職正社員を主に考えてのプログラムを考えていらっしゃるのか,あるいは非正規の方とか,専業主婦でこれから仕事をしたい人とか,様々な社会人がいると思うのですが,それはどの辺までをターゲットに考えているのでしょうか。
【荻上座長】  事務局,お願いします。
【牧野専門教育課長補佐】  やはり将来的には,今現在在職の方も正規・非正規に限らず対象としたいと思いますし,あとは例えば一度主婦になって,今は職業を持っていないけれども,その次のキャリアでは仕事に就きたいとか,そういった方がそれぞれ職業に就くのに必要な力を伸ばせるようなプログラムというものを対象にしたいと思います。
【小杉座長代理】  いいですか。
【荻上座長】  どうぞ。
【小杉座長代理】  としますと,課題のところもちょっと変わってきて,例えば生涯学習の中についての世論調査の中で,職業についての生涯学習というのを聞いたときに,若い層なんかでは,何を勉強したらいいのか分からないという意見が結構大きいですね。そうするとここでの議論を超えるのかもしれませんが,課題としてはそちらもかなり大きいということ認識する必要があると思います。
【荻上座長】  ありがとうございます。
 どうぞ。
【乾委員】  同じく確認ですが,資料3に,学び直したいという社会人は多いのにもかかわらず,実際に大学,大学院を利用されている方が少ないことが示されています。これは,自分の職業能力を上げるために民間のほかの教育機関など多様な学び方を使われていると思われます。この場はその現状を,より大学というものを利用してもらおうと,大学の活用者を増やそうということを主目的に考える場なのでしょうか。若しくは純粋に社会人教育,社会人が学び直しをするということ自体を増やすということが目的なのか,どちらになりますでしょうか。
【荻上座長】  事務局,お願いします。
【牧野専門教育課長補佐】  今,社会人で学び直しを全く行っていないですとか,あとは企業内での職員研修もなかなかアウトソーシングはしないで中でやっているとか,そういった場合もあると思いますので,そういったところの潜在的な需要を引き出せるような教育プログラムを認定していきたいと思っておりますし,既存の,例えば民間教育機関とかで今やられている研修などもあると思いますけれども,そういったもので民間の研修では足りないようなところで,特に大学であればこういった能力を伸ばせるのにという部分があるのであればそういったものも,今の大学ではなかなか提供できていない部分とか,そういったところを拡大していければと思います。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。
【新谷委員】  連合の新谷と申します。今,この検討会で,どこまでを検討するのかという射程の話になっていますが,資料3の33ページに,専門学校の「職業実践専門課程」の状況をお示しいただいています。先ほど事務局からはこの検討会の射程は大学,大学院,高等専門学校であるとの説明がありましたが,文部科学省の中でも,局ごとに所管が違うので別の枠組みを検討するということになっているのだと思いますが,受講者側から見ると,教育機関の類型自体には特にこだわりはないです。つまり,自分の職業能力を高めるためにどの教育機関を選ぶかという観点からすれば,まさしくユーザー目線で考えれば,この二つの仕組みを統合していろいろなメニューが選択できることが一番適当であると思います。今回の検討は,検討の目線が文部科学省の立場,つまりは,大学や大学院といった教育機関の立場を中心となっているのではないかと思います。現に本日の資料も少子化の中で学生が減っていくということが示されています。少子化の中で大学経営が厳しい言い現実があるために,社会人の受入れを進めたいという意図がどうしても見えてしまうのです。また先ほど小杉委員も指摘をしていましたが,社会人とは誰なのかという問題もあります。日本は就業者訳六千三百万人の内,約五千五百万人が雇用関係で働く労働者であり,雇用関係が中心の社会です。そうした意味で,この社会人の大半が雇用労働者であるという前提に立つべきです。働きながら職業能力を高めていく,あるいは失業していて職に就きたい方がどういった能力を付ければ就職に役立つか,あるいは失職しないかという目線で考えるべきで,そのためには多様な学びのメニューが整備されていることこそが適当であると思っています。この検討会は高等教育局所管ですので,大学や大学院を中心に検討することになると思いますが,労働者目線に立てば,多様なバリエーションの中で教育機関を選ぶことができる,ということが必要であると思います。この点を冒頭に申し上げておきます。以上です。
【荻上座長】  そのあたりのことについては,事務局の方,課長からお答えいただくのがいいのか。
【牛尾専門教育課長】  おっしゃることは私どももそのとおりだと思っておりまして,ただ現実の問題として専門学校については今御紹介いただいたような実践課程を認定するような仕組みがあるにも関わらず,大学や大学院,高等専門学校については,御紹介した資料のように潜在的なニーズはあるのですけれども,大学はきちんとこたえられないという,まさに課題が大学や短大,高専にあるので,ここは特にそこにスコープを当てて新しい仕組みを作ろうということでございますので,我々として,省全体としてはもちろんいろいろな学びの場を奨励するというのが我々の基本的な立場ですので,それを前提とした上で,特に今大学などにおいて課題があるのでこういう仕組みを作りたいと御理解いただければと思います。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 新谷委員,よろしいでしょうか。そんな考えで。
【新谷委員】  はい。
【荻上座長】  どうぞ。
【新谷委員】  先ほど,具体的な事例として,肥後銀行様から熊本大学とのプログラムを御紹介いただきました。地元の有力な大学と組まれて,行員の方々の能力アップにつながるプログラムを開発している現状を,大変興味深く拝聴しておりました。
 私がお聞きしたいのは,プログラムの対象者をどのように選ばれたかということです。資料10ページの受講者のイメージに公募と指名のケースがあると記載いただいています。このうち実務担当者の方は公募,管理職の方は指名によってそれぞれ対象者を選抜しているとのことです。この費用負担はどうなっているのでしょうか。指名の方は当然企業の指名であるため受講費用などは全額企業が負担するものと思いますが,公募の方はどのような費用負担となっているのか。労働者の負担があるのかも含めお聞かせいただきたいと思います。
それはなぜかといいますと,文部科学省の資料に,厚生労働省が所管している専門実践教育を含む教育訓練給付制度の紹介があり,先ほど事務局から,できれば専門実践教育訓練制度に認定してほしいとの説明がありました。この34ページにあります教育訓練給付制度は飽くまで自己啓発を支援する制度であって,ベースは全額労働者が負担してそれを経済的に支援する,という仕組みなのです。つまり,企業が自社の従業員のスキルアップのために教育する,いわゆる教育投資の部分と,この労働者の自己啓発は考え方が全く違うのです。この区分をして検討を進めるべきです。最初から教育訓練給付の対象にしてほしいという観点から検討を進めるのは違うのではないか。教育訓練給付については別途厚労省で検討することになりますが,もともと制度の成り立ちが違うのです。この点は念頭に置いて検討すべきであると思い,肥後銀行さんにお聞きしたい,ということです。
【荻上座長】  お願いいたします。
【岩立委員】  費用につきましては,全て企業負担でございます。
【荻上座長】  全て企業負担ということで。
 どうぞ。
【田宮委員】  すみません,そこに関連してなんですが,いろいろな企業がそれぞれのコーポレート・ユニバーシティみたいな形で企業内教育の機関はたくさん持っているわけですが,肥後銀行さんがあえて熊大さんとこういう形でやられたというのは,自前のそういう教育機関が特になくて,こういう教育ニーズがあったから大学とコラボしているということなのでしょうか。
【岩立委員】  手前ども教育機関,内部的な部分がございますけれども,外部の教育機関の利用も半分以上行っております。ただ,そこの中にもないカリキュラムといいますか,今回のICATと先ほど御紹介させていただきましたが,この部分につきましては熊本大学さんに知見があるということでお願いをしてやった次第でございます。まずは手前どもで実験をしていただき,試金石としてほかの企業に展開できるようなカリキュラムということで御提案をさせていただきました。実際には経済同友会という地域の企業団体の方にもそういった講義をしていただいている部分もございます。
【荻上座長】  どうも。
 どうぞ。
【小杉座長代理】  いいですか。
【荻上座長】  順番にどうぞ。
【小杉座長代理】  すみません,肥後銀行さんに,これ大変すごいいい取組だと思って,それで更に教えてほしいのですが,二つです。一つは,大学側はどうだったのか。教育プログラム,肥後銀行さんはICATという,こういうことを学ばせたいといいますか,出来上がり像を持っていて,それに向かって大学側から力を引き出そうとされたわけですけれども,大学の教員というのはやっぱり自分の持ってきたディシプリンに沿って自分で教えたいことを教えたいわけなのですが,その部分との葛藤ですね。産業界が求める力と,大学が育成してきた力のそこでぶつかり合いがあったのではないかと思うのですが,その辺の経過はどうだったのか。かなり何回もやりとりをしながら作ってきたプログラムなのかということをまずお聞きしたいです。1番目です。
 2番目は,むしろ地方の金融機関として,まさに地場の企業さんのことをよく知っていらっしゃると思いますが,その目から見て,地方の大学が地場の中小企業さんに役に立つようなプログラムっていうのを展開していけるのでしょうか。
 以上です。
【荻上座長】  じゃあ,お願いいたします。
【岩立委員】  まず初めの御質問ですが,今回のプログラムについては大学の地域連携ユニット様の方をカウントパーティになっていただきまして,スタートも学長と手前どもの頭取から話を始めて,副学長様がこのプロジェクトの責任者になっていただくということで,全学的な御対応をしていただきました。そういう意味ではスムーズにいった部分はあるかと思います。ただ個別の,やはりカリキュラムですとか,内容を決めて,その御理解をそれぞれの教授様にしていただく部分,それと私どもがしていただきたい内容と先生方が御講義をされる内容という部分のすり合わせは苦労した部分もあります。
 2番目の中小企業に対してという部分がございますが,これはいろいろやはり分野分野ではあると私どもは考えております。特に工学部系の知見につきましては,非常に地方の企業といいましてもレベルの高いところは多いので,その辺はニーズとして高いのではないかなと思います。具体的には,これまでもいろいろな中小企業さん,私もお取引した中で,筑波大学さんとか中央の大学さんと連携して研究開発されているところもございますし,そういう部分も含めましてベースとなる知識という意味では,ニーズはあるのではないかなと考えております。
【小杉座長代理】  ありがとうございます。
【菅野委員】  関連して。
【荻上座長】  順番にどうぞ。
【菅野委員】  今の議論に対して,逆に提供している大学の側(がわ)から申し上げます。私のいる学科がいわゆるビジネススクールで,まさに肥後銀行さんのような企業向けカスタマイズ・プログラムを,多分年間20社ぐらい10年以上やっています。そこの経験からいいますと,もう単純です。民間ビジネスと同じように動くことですね。お客様のニーズに合ったプログラムを作ることです。お客様は企業の人事部ですから,我々大学が提供するサービスと民間の研修会社のサービスをてんびんに掛けられます。つまらない先生がつまらないことをやったら,もうはっきりと,あの先生は来年から外してくださいと言われますので,それを繰り返していくとニーズに合った先生だけが生き残るとか,あるいは,ずれている先生も自分のやり方を変えるとかということで単純に競争原理で生き残っていくということだと思います。ところが,そういう個別企業向けカスタマイズ・プログラムは今回のスコープ外ですよね。そうだとするとむしろ難しいのは,オープン・エンロールメントなので,不特定多数の人を相手にある一定のマス,これだったら四十人来るなというニーズをうまく見付けて,そういうプログラムを大学が提供できるかですね。個別カスタマイズはある意味易しいですよ。誰の言うことを聞けばいいか分かりますから。すみません,以上です。
【荻上座長】  どうもありがとうございました。
 どうぞ。
【乾委員】  すみません,肥後銀行のプログラムの中で,御行の内部の方々,部長さん方がそれぞれの授業に対してファシリテーターとして入っておられたということなのですが,今振り返ってみられて,こちらの教育効果の中でファシリテーション側の部分と,そもそもの授業の内容の部分と,どちらの方が大きく寄与したとお感じになりますでしょうか。大学の授業をそのまま受けたというような場合と,こういうファシリテーションがされていたという場合とでは大きな違いがあったのではと感じたものですから。
【岩立委員】  受講者の行員の方も,この学びがどういうつながりでビジネスにつながるのかとか,何のために自分はここに来ているのかというカリキュラムごとの理解というのをファシリテーションという形で伝えることで教育効果が高まるのではないかということでスタートした次第で,これはやはり効果的であったと考えております。ただ内容自体ももちろんすばらしいカリキュラムを作っていただきましたので,効果はすごく上がっていると。
【乾委員】  それぞれの内容についての,一授業一授業のファシリテーターは先生方がされていた。
【岩立委員】  先生方に講義を頂くのですが,一つ一つにも入ってやっておりました。スタートということもございまして,よりよいカリキュラムを作っていきたいというところもありましてやりました。
【荻上座長】  どうぞ。
【小林委員】  先ほどからの質問にみんな関係していることかもしれないのですが,まず熊本大学さんがこのようなハンズオンのプログラムに取り組まれたということがちょっと驚きだったのですけれども,よくこんなことをされたなと思いました。それで,ただこの問題は,フォーカスの問題があるのですが,大学の能力ということと非常に関係していると思いまして,通常は,大学はベーシカル教育を行う場で,余り現代社会の最先端を追い掛けて,そこの実務教育を行うようなことは不得手なところがほとんどだと思いますので,そこにこのようなプログラムをお頼みになったということの経緯は何だったのかなというのがあって,つまり恐らくこういったことであれば,先ほど菅野先生が言われたようにビジネススクールにお願いされるとか,ないしはこういうことを非常に得意としているコンサルは山のようにあると思いますね。そういうコンサルにお願いすれば,きょう具合が悪ければあしたプログラムを変えてくれるし,時代の最先端のノウハウをどんどん入れてくるし,ただ多大な金が掛かると思いますけれども,そうだと思うのです。そうすると,今回ここで4点教育の趣旨を作っておられますが,これはひょっとしたらベーシカル教育を目されてやられているのかなと。だとすると大学の得意分野とかぶってきますので,大学でも当然やっていくことは可能だと思いますが,であるとすると,恐らく肥後銀行さんの中での現場とは相当かい離があったのではないかと思います。そこはどうされたかなと。ちょっと先ほど触れられていましたけれども,どうされたかなと。それから,そのかい離があるということでなくてベーシックな教育を,人格みたいなベーシックな教育を行うことに主眼があるのであれば,余りそのような問題は発生しないかもしれませんが,これは今後大学が取り組むときに,企業とのニーズのギャップという意味からすると,非常にチャレンジングな試金石であったのではないかなと思ってお伺いするのですがいかがでしょう。
【荻上座長】  お願いします。
【岩立委員】  おっしゃいますとおり,やはりベーシックな部分に期待している部分がございます。弊行としましては。特に地方という部分が大きい部分があると思いますが,MBAプログラム等ございまして,社会人,企業人が通うに当たりまして,土曜とか夜間ということになりますと,東京地区が中心になります。関東がですね。熊本におきまして,そういうところに土曜日に通うというのは非常に困難でして,そういう部分が通常のMBAプログラム等でもございます。今回の熊本大学さんとのプログラムにつきましては,銀行という部分ですぐMBAという形になりますけれども,そうではなくて,いわゆるICATという定義をしているのですが,この統計的な部分,システム的な部分を特に強化したいという,そのベースとなる知識として今回のカリキュラムをお願いし,この部分が中小企業さんも含めまして会社の経営に全部つながるベーシックな考え方だということでカリキュラムとしてお願いし,作っていただいた分で,これは展開ができると,難易度の問題がありますけれども展開ができると考えております。
【荻上座長】  どうぞ。
【杉谷委員】  二つほどあります。一つ目は,今まで出てきた質問と重なるのですが,熊本大学で経済学部や経営学部がないというのがあらかじめ分かっている中で,何とか対応されたということですけれども,こういうふうなプログラムを依頼されたその経緯についてお伺いしたいというのが一つです。
 もう一つは,事前に送られてきた資料を拝見したところ,その中にコストに関する部分が結構含まれていたかと思うのですが,今回の資料にはそこの部分が削除されていたかと思います。何か大学側の価格設定と,それから肥後銀行さんからの出された価格設定の間にちょっと当初ずれがあったような記述があったと記憶しているのですが,そこら辺に関する調整について,お差し支えない範囲で教えていただきたいと思います。
【岩立委員】  まず費用の方ですけれども,教授のこま当たりということで設定をさせていただきました,弊行の方は。大学様の方はプログラムとしての価格としての御提示があったのですが,まずスタートもしていなくて,実績も,どういうカリキュラムになるか分からない部分もありましたので,実験,試金石という形でそういう形での設定をさせていただいたということでございます。今後はまた,そのプログラムが確定すればきちっとしたことができると考えております。
 それと学部の部分につきましては,今回の手前どもの考えがそういうMBAを習得したいというようなカリキュラムではございませんでしたので,それについては問題はなかったのですが,今後MBAプログラムを熊本大学さんでもやっていただければ,もっと地域企業にとっては身近に通えるという部分はあると思います。ほかの大学さんとの協調とか,そういった部分も熊本大学さんの方からはいろいろお話を頂いております。
【荻上座長】  どうぞ。
【堀切川委員】  資料3について,ちょっと文科省の方に質問的な意見的なものです。12ページ目で,社会人のニーズをきちっと知らないとこういうのは,最初ちゃんと知っておかないと方向が決まらないなと思って興味を持って聞いておりましたが,社会人の学生と大学院のミスマッチしているところがこの多分赤枠で囲ったところということなのですけれども,下の11番の研究推進能力を身に付ける内容という社会人の希望に対して,大学院の方の回答が極端に少ないというのは,多分それぞれの教員の研究室の中で修士論文とか博士論文の研究を進めていく中でやっているはずだというのが大学院側の回答という意味で,重要視していないわけじゃないけれども,用意しているカリキュラムのメニューにはそういう意識が入っていないということかなと思いました。ただ,これを見ますと,社会人の方ではカリキュラムを通じても研究推進能力を身に付けたいという希望が実はあるのだなということでいきますと,ここの本質は教えている先生の能力に,授業内容にあるということなので,いいことを知ったなという感じがいたします。
 あと上の方の最先端にテーマを置いた内容というのも,多分大学院の方の回答としては,授業のメニューは何年間かは大体同じに乗せなきゃいけないので,毎回その中で内容を変えていくという意識がちょっと薄いという大学院側の事情があるのかなと思いました。
 後ろの方です。同じ資料の後ろの方に,30ページです。何か先導的取組の事例なのかなと思ったのですが,30ページを見ていましたら,一番上に環境エネルギーで福島大学さんが載っていまして,じっと見ていたら,ああ,やらされたというのを思い出しました。過去2年間,私このカリキュラムの一番最後,山ほど長い時間しゃべる係を頼まれて,やらされていたので,そのときの感想だけ述べたいと思います。最終回,長い時間,私,授業させていただいて,受講生の人に修了証明書というか,気分を盛り上げるための修了証みたいなのをプレゼントするところも立ち会ったのですけれども,猛烈に山ほどカリキュラム,ほとんど全部取っておられる社会人の人も結構おられて,あとは実質出たかったんですけれども,会社の仕事の都合でなかなか出られなかったというので少ない科目で終わった人もいます。この福島大学さんの場合ですと,基本的には週末開講,ある数か月間で週末開講していて,地元の産業界の人が多いので,通うには非常に便利だったと思うのですが,それでもやっぱり週末も仕事が入る人がおられたかなと思いました。社会人の皆さんの修了証をもらったときの表情が抜群によくて,特に単位をたくさん取った人は一言あってもらうので,ちょっといい気分に浸るのかなと思いましたが,福島大学の学長の名前で修了証明が出ていまして,やっぱりああいう,結構きちっとした紙で,なくても本来いいのでしょうけれども,そういうのをお渡しするというのは,頑張った人たちの満足感というのは結構あるなという感じがしました。その後ノンアルコールで交流会をやっていまして,皆さん頑張りましたという。大学さん企画でやっていましたが,ほとんどの人はノンアルコールの交流会はこんなに長い時間要らないという感じで,さっさとグループで飲み屋さんに消えていくパターンだったので,ノンアルコールの交流会は要らないかなという感じがしましたけれども,やっぱりその修了認定証みたいなのまでこぎ着けるというときの社会人側の人の満足感は高いので,どんな形になるか分からないですけれども,やっぱりそういうのがもらえるところまで頑張るぞというのは非常に大事かなと思いました。
【荻上座長】  どうもありがとうございました。
【小杉座長代理】  いいですか。
【荻上座長】  はい,どうぞ。
【小杉座長代理】  今この30ページのプログラムは既に終わっているというようなことをお聞きしまして,ということはこれに対する評価はできているのでしょうかということなのです。特に中核的な人材養成で企業さんから在職の方が来られていた。その方々がこのプログラムを今,修了証をもらったときに感激したのはいいのですが,その後,その成果というのはどれだけ生かされているのかということ,もしその後フォローアップで調査されているなら,今回のものを考えるためにも大変いい参考になるので,情報があればと思います。
 それからあわせて,その上の専門学校の方のプログラムですが,これも1年前から走っていますので,そろそろそれなりに専門学校のプログラム,次のページでしたっけ,実践的専門課程ですか,このプログラムについてどのような今評価,自己評価でもあるのか,その辺を教えていただけると今回の仕組みをどうするかという話の中でも大事な参考になるのではないかと思いますので,もしある程度情報があるなら教えていただきたいなと思います。
【荻上座長】  事務局,お願いします。
【牧野専門教育課長補佐】  先ほど堀切川先生から御紹介いただいた福島大学の件につきましては,まだ授業としては終了しているわけではございませんで,まだちょっと委託している段階なので,まだ評価というところまでは至っていないかと思います。
 専門学校の部分につきましては,ちょっとまた確認をさせていただきまして御報告させていただければと思います。
【荻上座長】  この30ページのプログラムは,これ何年間の支援プログラムですか。
【牧野専門教育課長補佐】  28年度までのプログラムでございます。
【荻上座長】  28年度まで。
【牧野専門教育課長補佐】  はい。
【荻上座長】  始まったのは?
【牧野専門教育課長補佐】  平成25年度からになります。
【荻上座長】  4年間。
【牧野専門教育課長補佐】  はい。
【荻上座長】  そうですか。中間評価というのは行われていないのですね。
【牧野専門教育課長補佐】  評価自体はまだしていないところですけれども,一応年間契約になっているので報告書などは出ている部分もあるかと思います。
【荻上座長】  どうぞ。
【杉谷委員】  同じく資料3のことでお伺いしたいんですけれども,4ページ目のところの履修証明制度の件です。これ,真ん中のグラフでいくと,平成21年度が非常に多くて,その後減少しているというお話だったのですが,逆に言えば平成21年度が例外的に非常に多かったと見るべきなのか,その減少の要因に関してどう分析されているのかというのをお伺いしたいと思います。ちなみに,証明書の交付者数に関しては安定的に2,000ぐらいで続いていると思いますが,このあたりに関してもどう分析されているのかを教えてください。
【荻上座長】  事務局,何かありますか。
【牧野専門教育課長補佐】  平成21年度の受講者数が突出しているという部分に関しましてですけれども,あくまでも想像の世界になってしまうところがあるのですが,平成21年,22年あたりに関しては,社会全体として再チャレンジという話が政府としても上がっていた時期でございますので,そのあたり,ある程度文科省としても事業を展開しておりましたし,大学さんとしてもその履修証明プログラムというものを展開するきっかけとなって増やしていったときなのかなと推察いたします。全体的に証明者交付者数がこの2,000あたりというところに関しましては,特段分析などはしておりません。申し訳ありません。
【乾委員】  よろしいですか。
【荻上座長】  はい,どうぞ。
【乾委員】  すみません。こちらの履修証明プログラムですけれども,現在136ということですが,それぞれ実際実施してみてどういう効果があったのかを振り返るような,全体像をまとめた資料はありますでしょうか。
【牧野専門教育課長補佐】  履修証明プログラムに関しましては,各大学において履修証明プログラムとして展開されているものですが,それに関して特段文科省として全体プログラム136をまとめた資料というものは持っておりません。申し訳ありません。
【乾委員】  資料3の4ページ右側にはプログラム例というふうに入っていますけれども,全体の資料はなかったとしても,個別の事例を幾つかまとめた資料などはございますか。
【牧野専門教育課長補佐】  全て,全プログラムを網羅しているものではないのですけれども,幾つか御紹介できる履修証明プログラムはあるかと思いますので,それに関してはまた御用意させていただきます。
【乾委員】  よろしくお願いします。
【荻上座長】  それじゃあ分かる範囲で次回にでも用意していただければと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。
【堀切川委員】  少し思い出したのですが,先ほどの福島大学のプログラムの仕事をさせられたときの教員側の気持ちについて申し上げたいと思います。結構重要です。あそこの大学の上の偉い人が先輩だったので断れなかったのですが,引き受けた後で,実は授業の中身をきちっとした教科書でまとめて用意したいという話があって,担当の教員全員に授業用のオリジナルの作文をさせられました。通常のふだんの授業ではそういった準備,1回ずつ全部作文するなんてあり得ないのですけれども,そういう意味では準備は非常に大変だったんですが,初年度作ってしまえば,後はそれの継続をできるというのと,受講生の人たちにノンアルコール交流会で伺ったところによると,それがあるので事前に読んで,この先生が来たらこれを聞いてやろうとか,多分そういう準備ができたんですね。そのテキストが,執筆者が全員毎回のように担当者が変わりますので,バラエティショーだったんですけれども,多分受講生にとっては,あれは非常に財産で,これは捨てませんとおっしゃっていましたから,作る方は大変でしたが,受講生としてはやっぱりそういう後々振り返られるものを作って受けるという方がいいのかなという感じがいたしました。
 あとは教員側の感想です。アンケート調査も多分これからやられるんでしょうけれども,受講生の一人が再生可能エネルギー関連の自社アイデア商品開発で難航しているんで助けてくれと言って今ボランティア共同研究中でございます。ということでちょっと宿題が付いちゃったんですが,意欲のある受講生で,ずっと相談相手を見付けていたと言われたので,その授業きっかけでその企業さんが新分野に進出する背中を押さなきゃいけないかなと思いましたので,多分受講生側からするといい成果で,教員側からするとちょっとしんどい仕事が増えたというような形でしたので,社会人相手の授業というのは面白いなと思った次第です。
 以上です。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 どうぞ。
【新谷委員】  資料4に検討事項が記載されていますが,この資料との関係で,本件当会の検討対象がまだ判然としません。例えば資料3の19ページの「社会人の学び直しに関する現状」というスライドには,赤字で「社会人の学び直しの障害」が幾つか書かれてあります。これを見ると,「職場の理解が得られない」「勤務時間が長い」といった課題が書かれてあります。この「社会人の学び直しの障害」を見ると,社会人って誰のことなのかという疑問が解消できないのです。
例えば27ページの科目等履修生制度の受講者の内訳が書いてあります。この右下にその受講者の内訳が記されており,平成24年では「就業者」の受講者数が約七千百人であるのに対して,「その他(主婦,高齢者等で職業に従事していない)」方も約五千六百人が受講をしています。平成21年の受講者数は,「就業者」と「その他(主婦,高齢者等で職業に従事していない)」でおおむね同数の方が受講されています。こうした「その他(主婦,高齢者等で職業に従事していない)」の方々は職場の理解,勤務時間が長いといった要因は関係ないはずです。こうした方々も含めての「社会人」を検討対象とするのか,それとも先ほど私が申し上げたように約六千三百万人の就業者,その中でも中心となる雇用関係で働いている者,勤務という概念が出てくる者をフォーカスするのか。そうではなく社会人全部であるという整理をすることもあると思いますが,改めて,本検討会でフォーカスする対象を教えていただきたいと思います。
【荻上座長】  じゃあ。
【牛尾専門教育課長】  基本的には先ほども牧野の方から申し上げたように,現に就業していらっしゃる方,若しくは就職を今していないけれども,これから就業しようとする方と捉えておりまして,そういう意味ではある程度広く考えていただければいいんではないかと。その際の課題はおっしゃるように,就業している方にとっては確かに職場の理解というのが非常に大きな課題でしょうし,あるいはそうでない方には共通に,例えば金銭的な面は共通する課題かもしれませんしということで,課題に軽重があるのはそのとおりとは思いますけれども,ここで対象にしたいと思っておりますのは,そういう意味ではある意味広い意味の社会人の方をと考えております。
【荻上座長】  どうぞ。
【菅野委員】  私の理解ですと,やっぱり働くということでスコープを限定していると理解しているんですが,いや,今,主婦でもいいんですよ。ただ働きたいと。一生主婦でいるつもりの人は多分今回の検討会の対象外だと私は理解しているんです。それでよろしいですよね。今働いているか,働いていないかではなくて,働きたい,それがスコープだという理解でよろしいですね。
【牛尾専門教育課長】  それは私どももそういう理解です。
【菅野委員】  分かりました。
【新谷委員】  関連してよいですか。
【荻上座長】  どうぞ。
【新谷委員】  社会人の中でも,現に働いている,若しくは,今後働きたいと考えている方にフォーカスするとなれば,社会人一般ではなく労働者という視点で考えるべきです。今我が国の雇用者は約五千五百万人いますが,このうち約二千万人が非正規労働者なのです。この点,厚生労働省が実施している能力開発基本調査の結果を見ても明らかなように,非正規労働者については,自己啓発への支援や,企業の教育投資が,正規雇用に比べて6割程度しかないのです。そうした中で,多くの非正規労働者の方は,本検討会の対象である大学院や大学の学び直しプログラムはほとんど使えないのではないか。もっと言えば,関心がない方も多いのではないか。専門学校等も検討の射程に入れて,本当は多様なメニューの中で労働者が選択できる仕組みがあれば良いと思いますが,この大学や大学院の学び直しプログラムを考えていくに当たっては,肥後銀行様の事例のように,在職中の正規労働者を対象とせざるを得ないと思います。このプログラムの打ち出し方として,広く社会人一般向けというのではなく,現実的にごく限られた層を対象にせざるを得ないという認識を持つ必要があるのではないか,と思います。社会人一般の大学教育のプログラムであると言われていると,本当に非正規労働者の方々が受講できるのかという目線にもなりますので,目配りしていただきたいと思います。以上です。
【荻上座長】  どうぞ。
【菅野委員】  逆にそこも議論の対象にしていいんじゃないですかね。例えば民間でもこういう教育機関はあるわけですから,大学なりの差別化は何かというのが一つのポイントですが,例えばあえて極論を言いますよ。大学の差別化のポイントはコストだと。民間企業はもうけなきゃいけないと。我々はもうけなくていいと。だからばか安で提供できますよと。パートやバイトの方,高い学費が払えない方,そういう方にサービスを提供して,彼らをスキルアップして,より彼らがグレードアップするという学び直しプログラムも大学が提供するというのも解としてあり得ると思うんですね。だとしたらそういうのもスコープに入れておいていいんじゃないですかね。あえて一例ですが。
【荻上座長】  順番にどうぞ。
【乾委員】  先ほどの新谷先生のお話と関連しますが,これまでの議論では,大学を活用するという意味で大きく二つ議論が分かれていると思います。片方では肥後銀行さんの事例や,菅野先生が逆にやりやすいと言っておられた個別の企業ごとのカスタマイズのような,企業が教育研修のアウトソース先として大学を活用する事例。もう一方では,先ほどの福島大学の事例のように,個人が自分のスキルアップ,自己啓発のために,自費で,自己負担で大学を利用する事例。この二つの利用目的,かなり違っている内容だと思います。今回の議論の中で,これは先ほど菅野先生もおっしゃったように,どちらもやるんだと,どちらも検討するんだということになるのか,どちらかをフォーカスしていくべきなのか。あるいはそれも議論の対象になるのか。
【菅野委員】  すみません,私の理解では特定企業向けカスタマイズ・プログラムは今回の検討会の対象外であると理解したんですが。したがって不特定のオープン・エンロールメント・プログラムであると。ただその対象は,今働いている人である必要はないと。これから働きたい人でもいいと。今おっしゃった企業側がお金を払うのと個人がお金を払うのと二つの違う議論があるということですが,前者は今回対象外と理解したんですが違いましたか?
【荻上座長】  お願いします。
【牛尾専門教育課長】  特定企業向けのカスタマイズ・プログラムのようなものは検討対象外と考えております。今回まさに認定プログラムで見える化しようとしているということは,まさに一般の方向けであるので,その対象がよく分からないのを分かるようにしようという趣旨でございますので,そういう意味では特定企業向けはもう目的がはっきりしていますので,そこは対象外です。
【菅野委員】  そういう意味では厳密に言うと,例えば特定企業さんが,人事部さんが金を出して,この大学のこのプログラムに個人として行ってこいというのは対象内ですよね。ですからそれはカスタマイズじゃないですから。
【小杉座長代理】  いいですか。
【荻上座長】  はい,どうぞ。
【小杉座長代理】  非正規あるいはこれから仕事をしたい人を対象にすると,最初に私が申し上げましたが,というと課題は変わるんですね。彼らはまず何を勉強したら自分は仕事ができるのか,あるいはよりよい仕事に就けるのかということから分からない。ここがもし認証するとなれば,この認証プログラムを受ければ仕事に就けますよという認証のように受け取られますよね。そこまで労働市場を読み込んだ需要にきちんとマッチしたプログラムを認証していくというおつもりなんでしょうかということなんです。
【荻上座長】  課長,お願いします。
【牛尾専門教育課長】  もちろん対象として,これから仕事を探そうとされているような方も含まれるというのはそのとおりなんですけれども,おっしゃっているような意味で,このプログラムを受ければこの職業に就けるとかいうところまでは今の段階では考えておりませんし,もちろん議論の行方によってそういうこともできるんだということがはっきりすれば,もちろんそれを否定するものではありませんが,現時点で事務局としては,そこまでのものはちょっとなかなか我々の方の認証のスコープの範囲として作るのは難しいかなと思っております。
【小杉座長代理】  いいですか。
【荻上座長】  はい。
【小杉座長代理】  仕事に就けるんだとまでは言いませんけれども,要するに労働力需要のある,この地域で就職口のある仕事なんだということとの連携というのは必ず必要じゃないかと思うんですね。少なくともやって,もう何の役にも立たないプログラムではなくて,これから仕事に就きたい人がやると,少なくともこの地域にある需要に対しては対応しているんだと。そういう意味で労働力需要をどれだけ取り込んだプログラムにするかというのは,かなり決定的なことじゃないかと思います。
【荻上座長】  課長。
【牛尾専門教育課長】  そこはまた,よく御議論させていただければと思うんですけれども,それをこのプログラムだけでやるのか,そこはハローワークとかちょっと別の仕組みも活用してやるのかというところは,ちょっと整理した上で議論した方がいいかなという気はいたします。
【荻上座長】  どうぞ。
【新谷委員】  小杉先生の御指摘で疑問点が大分明らかとなったと思いますが,例えばこのプログラムの類似のものとして,既存の仕組みとしては,科目等履修生制度があります。この科目等履修制度が労働市場との関係でどのように認知をされているのか。例えば新卒の就職活動や,あるいは社会人の転職活動,あるいは求職活動を行う際に,この科目等履修証明制度を修了したことが,どれほど労働市場において通用するものなのか。この点について,統計データ等があれば今後の検討に役立つと思いますので,データがあれば提示いただきたいと思います。以上です。
【荻上座長】  事務局,そういうデータはありますか。
【牛尾専門教育課長】  少なくとも科目等履修生については,そのような使われ方をしている例はほとんどないんではないかなと思います。というのはまさに科目ですので,1科目とかいうレベルの話になりますので。ただ履修証明プログラムになりますと,最低120時間というようなプログラムになってきますので,物によっては教養的なものもあれば,相当職業を意識したものもありますので,ちょっとそこは調べてみて,そういう整理ができるかどうか確認してみたいと思います。
【乾委員】  すみません。
【荻上座長】  どうぞ。
【乾委員】  そういう意味ではお答えできるかもしれません。私の方で編集しております『社会人&学生のための大学・大学院選び』という情報誌において,大学・大学院に入学された社会人の方々をこれまで二千人ぐらい取り上げてまいりました。これらの事例においては,科目等履修についても履修証明プログラムであっても,あるいは大学院の修士課程についても,修了したことをそのまま直接職業に転換,そのまま転職・就職のために活用できるかというと,そこはノーだと思います。実際には修了という事実に加えて,これまでの職務経験などをプラスして有機的なストーリーを語って初めて活用ができる。取材対象になるぐらいの御活躍の方々ですと,取材の際は御自分で組み上げたそのストーリーを語っていただけますので,成功例として紹介できるのですが,一方で,何も役に立てていない状態でそのまま眠らせていらっしゃる方も多くいらっしゃいます。データというわけではありませんので直接のお答えになっていませんが,現場での実態値です。
【荻上座長】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。
【菅野委員】  この検定会のスコープの話にこだわってですが,Whatの答えを出すのか,Howの答えを出すのかというのをずっと話を聞きながら悩んでいまして,例えば先ほどのピラミッドの上の人を対象にするのかとか,下の人を対象にするのかとか,というのはWhatですよね。ただ実際,大学の側(がわ)にいて,社会人相手に教えているので,むしろ私の問題意識は,それは個々の大学にやらせればいいと。例えばある大学はスキルのないパートの方をターゲットに非常に格安なプログラムを提供して,彼らがスキルアップして正社員になることができるように支援して,うまくいくかもしれません。一方,別の大学は高給取りの金融マン相手に世界最先端の金融理論を教えるプログラムを提供して,彼らが更に高給取りになる支援をして,うまくいくかもしれません。その場合は高額の授業料を取る。要するにWhatは無数にあると思うと思うので,各大学が工夫して様々なトライアルをやればよい。ただ,それができるようなHowというか仕組みをどう作るかということの方が重要な気がしまして,例えば実際大学でやっている身から見ると,一番難しいのは,例えば新しいことにトライするときに定員というのを決めなければいけないとかですね。定員二十人なのに二人しか応募してこないと文科省さんにどやされるとか。でもそれはトライアルだから,最初の5年はトライアルということで大めに見てよとか。そういう何か冒険ができるような仕組みを作ってあげるとかいうこととか。
 あとはインセンティブとかですね。これは正直言って一部の大学の教員から見ると,迷惑千万なんですよ。何か好きな研究をやっていればいいのに,社会人相手に教えろと,余計なプログラムをやれと言われる。そのような人たちにどうやってインセンティブを与えるか。一番分かりやすいのは,例えば金です。プログラムで教えた人にはちゃんと何かお小遣いがもらえるような仕組みを作るとか。多分我々もよく分からないまま,「社会人の学び直しプログラム」という新しいトライアルをしようとしているので,Whatはいろいろあると思います。でも何か新しいトライアルがやりやすいような,大学側としてそういうことをやってみようという気になるような仕組みづくりが重要だと思います。そもそもやってみようという気になる大学が少ないというのが現実と思うんですよ。正直言って大学にとって目先のメリットはないですから。やっぱり研究をやりたいから集まっている集団なんで,社会人に教えたいから集まっている集団じゃないわけですよね。何かインセンティブを与えないといけないですね。文科省としては何か仕組みをうまく作って,あとはどんどんやってくださいと。多分,30ぐらいやって,半分ぐらいこけるかもしれませんが,それも実験だという割り切り。何かそのようなHow,すなわち仕組みの提言がこの検討会の出口のような気がします。すみません,第1回から出口の話をしちゃいけないんですが,何かそんな気がしているんですけれどもね。 すみません,感想です。
【小杉座長代理】  仕組みの議論ってもうそろそろしてもいい。確かにそう思います。私は仕組みとしては,やっぱり労働力需要を反映させるような仕組みの作り込みは是非してほしいなと思っています。一つの私はモデルになるのは,やっぱり職業実践専門課程,去年から始まった仕組みというのは,基本的に教育プログラムを作るところから企業に入ってもらって,企業人に対して,教員としても企業の方に入ってもらうようなある程度の範囲があって,それからその後のPDCAのチェックですね。チェックのところでも産業界からのチェックが入るような仕組みを作り上げたといいますか,完璧だとは言いませんけれども,ある程度作り上げていて,だからその辺がうまくいっているのかというのは大変,そこで特にこの経過が知りたいということなんですが,そうした認証するプログラムで実践的で社会人として学び直しの役に立つんだと言えるためには,一つその仕組みのところで担保するというのは考え方ではないかと思います。
【荻上座長】  ありがとうございます。
 どうぞ。
【堀切川委員】  仕組みを考えるときに知っておきたい質問を文科省にさせてください。これ,具体的にこの学び直しのプログラムを文科省として認定する方法としては,どんな方法なんですか。いわゆる従来の応募書類に書いて,採択されたらやっていいですよ的なものなのか,別のシステムかを教えてください。
【荻上座長】  課長。
【牛尾専門教育課長】  今,想定しておりますのは,今,小杉先生からもおっしゃっていただきましたような専修学校の事例なども参考にしながら,一定のある種外形的な要件,例えば時間数であったり,産業界との連携の仕組みであったりとか,それがどういう形で入っているかとか,幾つかのチェックポイントを設けさせていただいて,それに合致するものということで私どもで何らかの形で公にするというようなことを想定しておりまして,次回以降更に御議論いただきたいと思っていますのは,どういうチェックポイントを我々の方で見たら,これが社会人向けの実践的なプログラムなのかということを判定できるのかといったあたりを更に今後,次回以降も含めて御議論いただければ有り難いなと思っております。
【堀切川委員】  だとすると何ですけれども,どちらかというと大学等の方がこれならやれるというものを出してきそうな気がするんですが,これ,どう見てもニーズ・オリエンテッドでないとうまくいかないので,ある程度,文科省さんの方で産業界の方にアンケート調査か何かされて,どういうプログラムをしてほしいんですかというのがあった方が多分いいと思います。そこの部分で大学の人間だけでやれるはずがない話について企業さんから講師に来てもらうとかということを考えればいいので,幾つかやっぱり重点項目というかそういうのを,どちらかというと頭で考えるよりは,私はニーズを聞いた方がいいと思います。そのときに,全国どこでも似たようなニーズ,一般性のあるものと,地域性があるものがあるので,物によっては地域で聞いていかないとまずいかなという感じもします。被災地側でアンケート調査されれば,原発の廃炉に向けた技術教育というのを立ち上げたら,多分,企業側が金を出してでもエンジニアをどんどん出してきます。ただ大学としては一番やりたくないところ,専門家を集めるのも大変で,実際のところが分からないところがいっぱいあるというようなことなんですけれども,そういう意味で地域性のあるものと一般性があるものをうまく聞いてもらって,こういうプログラムを立ち上げるのが大事だということを大学の方にアナウンスして始めるのが一番有効かなと個人的には思います。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 どうぞ。
【小林委員】  どこをフォーカスするかとか,どなたをフォーカスするかというのはなかなか最後までクリアにできないなと思うんですけれども,資料3の19ページ,赤字でハイライトされているところですが,先ほどここに関しても,これ恐らく一部の人たちだけの対象ではないかということだったんですけれども,先ほど五千五百万人とおっしゃいましたでしたっけ。五千五百万人の方,これを該当するだろうと。このような事情があるだろうと。じゃあ今お仕事を持っていないけれども働きたいという希望の方がおられたときには,これ全部は該当しないけれども,例えば受講料の負担が大きいとか,こういったことについて,自分のニーズに合ったカリキュラムがないとかということは,この中に該当する項目ですので,ちょっとフォーカスのことをさておいて恐縮ですが,こういったことは言ってみれば環境設定がなされていないということですから,この環境設定を改善していくための議論を始めないといけないなという気がしています。
 それで,なかなか今,私が感じているのは,企業に今ニーズを聞かれたらどうかっていうこともあるんですが,いろいろなところからいろいろなニーズを聞かれて困っていまして,なかなか書けないんですね,それが。商社ですから,私ども。特に漠としていますので,特に書けないんだと思うんですが,なかなか特定しづらいものがあって,その一つの大きな理由としては,勉強しようとか学ぼうとか学び直そうという人たちの自由度がすごく高くなっていまして,つまりここの統計にも出てこない,自分で勝手にどこかの勉強に行っている人たちもたくさんおられるし,特に若い人たちは勉強しようという意欲が非常に強いんですけれど,会社が用意したものなんかやろうというモチベーションは余りないわけですね。そうすると自分で,ITが非常に発達していますので,スマホか何かで,全く私なんかわけ分からないやり方をやって勉強している人たちがたくさんいて,しかもただですよね。そうすると,例えばアメリカの大学であればいろいろな授業を公開してただですよね。そうすると自分のそのときの瞬時のニーズに合ったものをただで受講できるシステムが既にあると。それから先般,私,東大の講義が公開されていますので,拝見したら,ビルゲイツさん御夫妻が来られていて,その討議の内容が公開されていて,私,それは無償のネットで見て非常にためになったんですけれども,ゲイツさんだけじゃなくていろいろな方が来られてやっておられるんですね。そういうものをただで公開していて,自分のニーズに直ちに見合うものを取捨選択して,ないしは検索して,見て,アクセスして勉強していくことができるんですね。そうするとそこに,何を勉強させたらいいかということを入れても,個人の自由度が非常に高いものですから,ミートなかなかしないなという現実があるなと。そこに,その人たちのそういったアクティビティは,私は助長されるべきだと思いますので,この人たちが自由意志に従って勉強しようと思えば,それを後押ししてやるシステムが要ると思うんですね。そこに高等教育が何の貢献ができるかというようなことを,ここに来る前に少し考えていまして,この赤字でハイライトしたところは環境設定ですので,やり方がかなり違うと。例えば長時間労働を削減しましょうというようなことはやり方が全然違うと。ここで議論するような代物でも恐らくないだろうと。そうするとちょっとそんなところをやっても余り生産性に乏しいかなという気がしています。
 個人もそうですし,自由度が高いですし,そうなっちゃうと大学もやることが限られていますし,企業側もやることが限られちゃうということになってくるんですが,まだまだ大学は,それでも可能性としては集客する力がありますし,それから先ほどのビルゲイツさん御夫妻じゃないけれども,産官の超大物を呼んでくる力がありますし,それからオーソリティを付与する力がありますし,幾つもあるので,そういうことを使って自由度が高くなったモチベーションの高い人たちに寄与していくということは可能じゃないかなと。何か雑感みたいになっちゃいましたけれども,そんなふうに思っています。
【荻上座長】  ありがとうございました。
【乾委員】  私自身,昨年,ある大学でこの履修証明プログラムを受講しましたが,まさに今小林委員が言われたように,個人として,会社とは全く関係ないところでの自費での受講です。人事の方にも報告してはおりませんし,把握もされていないと思います。そういう自費での受講の場合,先ほど紹介されていました無料のJMOOCの活用を始め,多くの手段がある中で,大学ならではの特徴は,実際にリアルの場を活用した学びであることです。今回の目的に資するため,そのような他の期間と差別化したプログラムを大学が作っていくことをどうすれば促進していけるのか。そうした議論をここで行うことができればいいのではないかと感じております。
【小杉座長代理】  いいですか。
【荻上座長】  はい,どうぞ。
【小杉座長代理】  私は意識が高くて,それこそ放っておいても自分でどんどん勉強していく人たちとは,私はここで議論をしなくていいと思っているんですね。むしろそうではない,何していいか分かんない,でもどうにかしなくちゃいけないけれども何していいか分かんないと思っている人とか,企業がお金を出して大学院に派遣してくれるような人ではない人たちですね。そういう人たちが,日本のボトムアップということになりますが,そういうところに高等教育の力をもっと生かせないかという発想の方が,私としてはそういう発想で来たので,放っておいてできる人たちがよりよい環境を作ってくる。それはそれで大事なことだと思うんですが,それは多分民間ベースでできるんじゃないか。国の税金を使ってやるのは何なんだろうと思います。
【小林委員】  先生,そういった方々たちも,そういった方たちなりのモチベーションというのはないでしょうか。つまり高等教育を受けた人たちで,非常に企業で処遇されている人たちはそれなりのモチベーションですとか昇進意欲というのはあると思うんですが,例えば仕事を今探しておられるような方も,誰かから言われてやりなさいということもそうなんですけれども,その人自身が何か自分はこういったところが弱いので,それを勉強したらいいというようなモチベーションです。本人が望むモチベーションというのはないでしょうか。
【小杉座長代理】  それはもちろんあると思います。特に若い人なら何とかしなきゃならない,何かになりたいと思っているんですが,その何かが分からない,何をしたらいいか分からない。周りにそれこそモデルがいて,こういうふうにすればこうなるんだって。仕事をしているとそういうモデルに出会うことが多いんですね。やっぱり職場でかっこいい先輩に会ったりすると,それに向かって努力できるんですが,なかなかそういうのに,例えば非正規で働いて,いろいろなところを転々としていたりしていた人たちというのはなかなかそういうモデルにも会えなくて,何とかしなきゃならないけれども,どうしたらいいか分からないという人たちに対して,何だか学ぶことによって人生を開いていくというステップを見せられる場所ができないかなと思っているんです。
【小林委員】  分かりました。
【荻上座長】  ありがとうございました。大変活発な。
 どうぞ。
【堀切川委員】  実際の社会人の大学院生って現実としては理工系が圧倒的に多いわけなんですけれども,きょう私,数少ない理工系側なので,参ったなと思って,一言だけです。アンケート調査で研究推進能力を身に付けたいという気持ちがあるという人たちで余裕があるところだと大学院生できちっと入ってきますけれども,それ以外で研究推進能力を,特に若手の社員に上げさせたいというのはいっぱいありまして,私のところ,今何十社と共同研究をやっているんですが,企業さんの実際に研究担当する若い人を,そいつを育てることも研究開発の製品開発とともに目的ですってほとんどの企業の上司の人がおっしゃいます。こういうプログラムではないので,逆に言うとお互いにタイミングが合う日に設定して一日とるということができるので,多分理工系の,特に技術系の研究開発人材育成というのは実践的テーマを通さないと能力が上がらないですよ。それで正規の大学院のコースと別にこれが今回設定されるということですので,分野にもよるんでしょうけれども,個人的には,特に理工系の場合だと実践的な研究研修みたいなのを入れ込んだ方が多分いいと思います。実験でも理論でも計算でもいいんですが。そういう実践研究を体験するのを大学に来てやってもらう。あるいは企業さんの方でやったものをブラッシュアップして,修士論文,博士論文とかああいう面倒な評価システムではなくてもいいんですけども,多分それを入れるのは,少なくとも理工系にとっては最も役に立つと個人的には思いますので検討していただければ有り難いと思います。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 大変たくさん御意見を頂きました。事務局の方でこれをしっかり受け止めていただいて,次回以降の議論の進め方に生かしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは最後に,吉田高等教育局長から一言いただければと思います。
【吉田高等教育局長】  きょうも熱心な御議論を頂きましてありがとうございます。という前に,まずはこの検討会の委員として御参加いただいております。厚く御礼申し上げます。またきょうは肥後銀行の方から岩立さんをはじめとして発表していただきましてありがとうございます。私も後半ずっとお話を聞いておりまして,様々な論点,課題,そういったものが今回の会議でも相当浮き彫りになってきたかと思います。資料4で主な検討事項として事務局で用意したものは若干技術的なところに偏ったものだったのかなという感じもいたします。きょういろいろと本質的な御議論も頂きましたので,そのあたりも踏まえた上で,次回また引き続き御議論いただきたいと思いますが,これからどうぞよろしくお願いいたします。
【荻上座長】  どうもありがとうございました。
 それでは,次回の日程等について事務局からお願いいたします。
【牧野専門教育課長補佐】  次回の日程につきまして,資料6をごらんいただければと思います。次回第2回につきましては3月31日の10時より,関係者からのヒアリングということで大学若しくは委員の先生方からヒアリングさせていただければと思います。第3回につきましては4月14日の17時から,認定の仕組みの方向性という形で開催させていただければと思います。第4回は4月22日の10時からでございまして,こちらで一定の議論のまとめをしていただければと思います。場所はいずれも調整中でございますけれども,正式な開催案内は別途お送りさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【荻上座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日はこれで終了としたいと思います。どうも活発な御意見を頂きましてありがとうございました。

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