高大接続システム改革会議(第12回) 議事録

1.日時

平成28年2月24日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 多面的な評価検討ワーキンググループの議論のまとめについて
  2. 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について
  3. 中央教育審議会大学分科会大学教育部会での検討状況について
  4. 個別大学の大学入学者選抜改革について
  5. その他

4.出席者

委員

(座長)安西祐一郎委員
(副座長)片峰 茂委員
(委員)浦野光人,岡本和夫,恩藏直人,金子元久,香山真一,佐藤東洋士,佐野元彦,長崎榮三,南風原 朝和,羽入佐和子,山極壽一,山本廣基の各委員
   

文部科学省

  (文部科学省)土屋事務次官,前川喜平文部科学審議官,藤原官房長,関政策評価審議官, 小松初等中等教育局長,常盤高等教育局長,伯井初等中等教育局審議官,義本高等教育局審議官,松尾高等教育局審議官,杉野私学部長,河村国立教育政策所研究所長,瀧本総務課長,小林国際教育課長,葛城英語教育改革プロジェクトマネージャー,今井初等中等教育局高校教育改革プロジェクトリーダー,新田高等教育局主任大学改革官,塩見大学振興課長,橋田大学入試室長,福澤専門官 他

5.議事録

(1)「多面的な評価検討ワーキンググループの議論のまとめ」について
資料1に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。


【安西座長】  時間でございますので,ただいまから第12回高大接続システム改革会議を開催させていただきます。
委員の皆様,御多用の中,お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
まず,事務局から配付資料について確認をお願いいたします。
【新田主任大学改革官】  はい。議事次第を御覧いただきますと,4のところに配付資料の一覧がございます。幾つか,資料1-1の次に別紙1が付いております。それから,1-2,1-3と来て,資料2の後ろには「たたき台」と書いた1枚物と参考資料が付いてございます。また,3-1,2,3,4,5,6,資料4ときていただきまして,資料4は4枚物の後ろに別紙1,2,また,参考資料1,2,3と付いたものがクリップ留めなしで付いております。最後に,参考資料「高大接続関係の調査データ」をお付けしております。落丁等ございましたら事務局まで合図していただければと思います。
以上でございます。
【安西座長】  よろしいでしょうか。
本日は,まず最初に,多面的な評価検討ワーキンググループの議論のまとめについて御報告を頂くようにいたします。次に,前回に引き続きまして,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の議論をしていただきます。それから,中央教育審議会の大学分科会大学教育部会での検討状況について御報告を頂くことになっております。最後に,個別大学における入学者選抜改革における論点について御議論いただければと思っております。
それでは,議事に沿って進行を進めさせていただきます。
まず,多面的な評価検討ワーキンググループ主査の荒瀬委員が,本日,所用のため御欠席でございますので,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。それでは,配付資料1-1,それから別添の別紙の資料,そして資料1-2,1-3と4点用意をさせていただいておりますが,メインの資料といたしましては別紙の資料,それから資料1-1を御覧いただけたらと存じます。
高大接続システム改革会議の下に多面的な評価検討ワーキンググループが昨年の秋に設置をされまして,これまで議論を重ねていただいてきたところであります。その一定の「議論のまとめ」がまとまりましたので,本日,御報告をさせていただいて,このシステム改革会議におきまして御議論いただけたらと存じます。
資料1-1の一番上を御覧いただけたらと存じますが,今回のワーキンググループでの議論の全体像でございます。こちらにございますように,ローマ数字1のところでは,高大接続システム改革における多面的な評価の充実の意義,それから,その適切な評価を行うための仕組みの構築の必要性について御議論を頂いてきたところでありました。
その上で,ローマ数字2でございますが,ワーキンググループでは大きく三つの観点で御議論を頂いております。一つは,1.にございますように,高等学校段階における評価の在り方でございます。そして二つ目が,大学入学者選抜等における評価の在り方についてでございます。そして三つ目でございますが,基盤整備に関しての指摘事項ということでございまして,大きくはこの3点で御議論いただいてきたところであります。
それでは,本文で御説明する形ではなく,大変恐縮でございますが,別紙1,色刷りの資料の方を御覧いただけたらと存じます。
別紙1でございますが,これはあくまでイメージ図でございますが,多様な学習活動,それから成果を適切に評価するための仕組みの構築ということで,高大接続の観点から整理をさせていただいたものであります。こちらの絵にございますように,これは昨年12月の高大接続システム改革会議でもお示ししておりますが,高校教育から大学,専門学校,就職と,この一連の流れの中でどのように評価の充実を図っていくのかということでございまして,ポイントはこの赤い字でそれぞれ書いてある点について,例えば下段の方の高等学校の中でございましたら,学習評価の在り方,多様な活動の評価の在り方,また,指導要録の在り方等々でございますし,その高等学校から上の大学,それから専門学校,就職につきましては,選抜段階の活用でございますとか,特に大学では進学後の活用の在り方,こういったところをトータルに見ていきながら議論が進められてきたところでありました。
続きまして,1枚おめくりいただきまして別紙2でございますが,そういった議論の中で,今回,議論の取りまとめについて整理をしたペーパーで御説明をさせていただきたいと存じます。こちらの別紙2のところは,まずは高等学校段階における評価の在り方でございます。
上の箱にございますように,黒ひし形にございますが,ポイントは,「学力の3要素」をバランスよく育成するための指導の在り方,それと一体となって評価の在り方を見直すという観点でございます。このため,生徒の資質・能力の多面的な評価を推進し,その指導の改善を図っていくということでございます。
なお,両括弧の中でございますように,特に高等学校段階における学習評価の在り方につきましては,中央教育審議会の教育課程部会におきまして,次期学習指導要領の検討の中で取り扱われている事項でもございます。今後,高大接続の観点も取り入れていただきながら,この具体的な検討は中央教育審議会の方で今後進んでいくということを前提としたことになっているということでございます。
その上で,中段からでございますが,今後の方向性についてでございます。
まず,高校段階における評価の在り方の一つのポイントは,青い字でありますが,「各教科等の学習評価の在り方で」ございまして,青い矢印の箱の中にございますように,一つ目の白丸にありますが,目標に準拠した観点別学習状況の評価の推進ということを進めていってはどうかということでございます。
また,三つ目の白丸にございますように,学習を通じて育成される資質・能力を的確に評価していくための方法,また,多様な学習活動に対応した評価の在り方の研究,開発など,そういった評価と指導方法の改善を一体的に推進していくということで進めていってはどうかということで,取りまとめの中で御指摘を頂いているところであります。
続きまして2点目は,下段にございます「多様な学習活動の評価の在り方」でございます。これは,特に青矢印の中の一つ目の丸にございますように,一つは,現段階でも高等学校で民間検定等々が非常に活用されております。こういった民間検定につきまして,学校の実態,生徒の状況に応じまして,学習の成果を多面的に評価していくツールの一つとして積極的に活用していくことを促していってはどうかということでございます。
また,二つ目の白丸にございますように,同様に,例えば専門学科の校長会で実施をしていただいている検定試験といったものもございまして,こういったものも,生徒がそれぞれの分野に応じて培ってきた資質・能力,それを評価していくツールの一つとして活用していくことを打ち出していってはどうかということでございました。
続きまして,1枚おめくりいただきまして,通しページ14ページを御覧いただけたらと存じます。そういった中で今後は,次期学習指導要領の議論とあわせて,「指導要録の改善」という観点では,多面的に行われた評価が適切に記録として蓄積され,指導改善,学びの接続に生かせるような要録の改善について検討していってはどうかということでの御指摘を頂いているところであります。
また,真ん中にございますように,「評価の妥当性や信頼性の向上」につきまして,三つ目の白丸にございますように,高大接続改革の好循環を生む観点から,そういった評価の妥当性・信頼性を上げることが期待されるということの御指摘を頂いているところであります。
また,14ページの下段には,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の扱いについて指摘を頂いております。これは一つ目の白丸でございますように,前回,この高大接続システム改革会議でも御指摘いただきましたように,学習指導要領に対応した基礎学力の定着度合いを確認するための目安とすることで,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を構築し,生徒の基礎学力の習得を促す。また,各学校がそれぞれの状況に応じて定める目標,これにあわせて目標準拠型の評価,こういったものをできるような形にすることで,より効果的な指導工夫・充実につなげるツールの一つとして活用が期待されるということで指摘を頂いておりまして,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」も,この多面的な評価の中での一つのツールとしてその位置付けを頂いているところであります。
ただ,四つ目の白丸にございますように,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきまして,その内容につきまして基礎学力の点に特に重点を置いておりますので,ある意味,生徒の資質・能力の一側面を捉えるものということでありますので,あくまで多面的な評価の中でのツールの一つということを前提に,今後,試行,準備期を通じまして,学習評価への活用について整理をしていってはどうかという御指摘を頂いているところでございます。
そして最後でございますが,15ページでございます。高等学校段階においての評価の最後でございますが,これは「生徒自身のキャリア実現に向けた検討」ということで,昨年12月にこの高大接続システム改革会議でも途中経過を御紹介したときに,是非生徒が将来のキャリア形成に向けて考えていく,そういった点を評価の中でもいろいろ議論ができないかという御指摘を頂いていたところであります。
そういった流れの中で,この青矢印一つ目の白丸でございますが,今回のワーキンググループの中でも,高校生自らが将来のために何に取り組んでいくべきかを考え,その取組を自覚的に振り返ることを通じて,主体的に学び合い,自発的なキャリア形成を促していくということが重要であるという観点が入ってございます。
二つ目の白丸にございますように,その段階で生徒自らが設定した将来の目標に向かい,どのような学びを重ねてきたのか,そこから何を学んだのかについて,高等学校入学から卒業までを通じて自覚的に振り返ること,そういったことが可能になるような形で,三つ目の白丸にございますように,例えばポートフォリオの手法を取り入れる,若しくはキャリア教育を充実する観点などから,生徒自身がキャリア実現に向けて取り組めるような具体的な方策を検討していってはどうかという御指摘を頂いているところでございます。
高等学校段階における評価の在り方については以上でございます。
【橋田大学入試室長】  引き続きまして,資料の16ページ目から大学入学者選抜等における評価の在り方についてということで説明させていただきます。
先ほど高等学校の学習評価の説明がございましたけれども,そういった状況も踏まえまして,大学入学者選抜においても,この「学力の3要素」を多面的・総合的に評価していくという観点から,丁寧な書類審査,面接の活用を含めて,大学入学前の学習や多様な活動の評価の充実を図っていくということが必要というところで,併せて,この評価の部分を大学教育にも生かしていくというところが重要になってくるというところでございます。
このために,調査書ですとか提出書類の在り方についても改善を図っていくという観点で,現行学習指導要領下で取り組むこと,また,より抜本的な見直しが必要なものについては,次期学習指導要領に基づく指導要録の見直しを踏まえて対応していく必要があるのではないかというところで整理させていただいております。
その上で,課題として指摘された事項と改善の方向性についてでございますけれども,まず,調査書や推薦書の見直しということで,一つには,今回,高校段階でも学習評価の観点別の評価という議論が出てきております。ここの部分につきましては,次期学習指導要領に基づく指導要録の見直しを踏まえて,調査書の様式を見直していきたいというところでございます。
続きまして,生徒の多様な活動履歴について適切に評価していくという観点で,現行の調査書の「指導上参考となる諸事項」の欄がございますけれども,その欄を拡充いたしまして,より多様で具体的な内容を記載させるようにすべきではないかという御指摘を頂いております。その中で,例えば,民間の団体あるいは専門高校の校長会が実施する各種検定試験の結果ですとか,各種大会・コンクールや顕彰の記録等々,そういった多様な活動をきちんと記載できるような形で対応すべきではないかという指摘を頂いております。
その際,一定の共通の留意事項を踏まえて記載されるように,「記入上の注意事項」を見直したりですとか,あるいは,教員によってどうしても記載される情報量等にばらつきがあるということで,欄ごとの評価の考え方あるいは多様な例文等を示すような仕組みも検討してはどうかという指摘を頂いております。
続きまして,いわゆる受験科目として対象となることの少ない分野で高い学習成果を上げた生徒,そういった生徒を評価していくというところで,大学の指定する特定の分野において特にすぐれた学習成果を上げたことについて調査書で明示するといった方策を検討すべきではないかという御指摘も頂いております。
続いて17ページでございます。今回,「全体の評定平均値」の取扱いも議論になっております。これは全教科の評定を単純に平均したものになっておりますけれども,その値のみを評価することで,生徒の多様な能力・個性の評価を妨げている面があるのではないかということで,見直しが必要という指摘を頂いております。
ただ,この点につきましては,現行のAO入試,推薦入試において全体の評定平均値が出願要件等に用いられているというところもございます。そういったことについて留意しながら,今後の在り方を検討していくべきではないかという御指摘を頂いております。
また,現在,推薦書の取扱いについては,各大学に様式等委ねられておりますけれども,「学力の3要素」に関する評価,これを必ず求めることとするといったような形での見直しを検討してはどうかという議論も頂いております。
さらに,入学希望者本人が主体的に記載する提出書類の充実ということで,これについては改革会議の場でも御議論があったところでございますけれども,この大学入学希望者が記載する「活動報告書」,「大学入学希望理由書」,「学修計画書」,その提出ですとか,それに関するプレゼンテーションを求めていく,あるいは,これらを様々な選抜においてより積極的に活用するための方策について検討してはどうかというところの御指摘を頂いております。
さらに,高等学校での学習状況を大学に引き継いでいくという観点から,この効果的な初年次教育の実現に向けての調査書等の活用ですとか,あるいは,各学校が定める学校運営の方針等に関する情報についても,大学が必要に応じて提供を求めていくといったようなことも考えられるのではないかという御指摘も頂いております。
また,高等学校段階までの学びと大学の学びの履歴であるポートフォリオ,これを接続させていくということで,大学での学修での充実,キャリア,進路,そういったものにもつなげていく必要があるのではないかという御指摘を頂いております。
今後,この調査書,出願時提出書類の在り方につきましては,最終報告で基本的な方向をお出しいただきまして,また,中央教育審議会における指導要録の在り方の検討も踏まえながら,今後,高等学校,大学関係者等による協議の場において具体的な在り方を明確化していく必要があるというふうな形で御議論いただいております。
以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
ただいま事務局から説明のありました事項につきまして,御質問,御意見を頂ければと思います。どなたでも結構です。羽入委員,お願いいたします。
【羽入委員】  ありがとうございます。御説明いただいた中に既に含まれていたことでございますけれども,1点,希望といいますか,申し上げさせていただきたいと思います。
現在,新しい学習指導要領の内容について細かな議論がなされ,そして次第に取りまとめがなされてきている状況にございます。そのような中で,今回出ている資料では,例えば評価についても議論が今正にされている最中でございまして,そういったことを関連する部局と上手に連携をとりながら進めていただきたいと思います。
一つだけ申し上げておきたいのは,次の学習指導要領の議論では,教科間の連携あるいはカリキュラム・マネジメントという言葉も使って,全体を構造化することを基本的な指針にして,指導要領,そして指導要録が考えられておりますので,それを上手に反映させていただきたいと思います。希望です。よろしくお願いします。
【安西座長】  ありがとうございました。これは,文部科学省からお願いできますか。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  ただいまの御指摘は正にそのとおりでございまして,先ほども別紙2のところで御紹介いたしましたように,中央教育審議会教育課程部会におきまして,この学習評価の在り方,御議論が進むということの中で取組を進めていきたいと事務局としても考えているところでございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。中央教育審議会との連携は是非とっていただければと思います。
山極委員,お願いいたします。
【山極委員】  二つ質問させていただきます。
まず,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,これは基本的には生徒の成績評価を行うことは想定していないという文言がありまして,本日新たに御説明のあった15ページのところです,高校生個人の側から見て成績あるいは自分の能力というものをどのように伸ばしていくかということ,これは現行にある個性的な教育,そして多様性に富んだ教育ということにかなり沿った話だと思うのですが,これと「高等学校基礎学力テスト(仮称)」との兼ね合いで15ページと14ページの間の関連というのがもう一つ分かりにくかった。つまり,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は,生徒から見たら自分の能力改善のための一つの指標となり得るのか,あるいは別のキャリア・ノート等を作成することによって自分の能力を判定するのか,あくまで「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というのは教育の質改善という観点から高校側が利用する材料となるものなのか,その辺を少しお伺いしたいと思います。
もう1点は,「大学入学希望者評価テスト(仮称)」と「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の兼ね合いです。これは基本的には,基礎学力の方はボリュームゾーンというというものを一応想定して,質の底上げを狙うという意味で,比較的高等学校の低学年の段階からこれを複数回実施していくということが想定されていると思うのですけれども,「大学入学希望者評価テスト(仮称)」の場合には,複数回というよりも,むしろ入学試験に合った時期に行うということで,高校3年が予定されていると思うのです。これは一体どういう関連でやっていくのか。大学入学希望者にあっても,高等学校,大学双方がその資料を教育の質保証に使うということだと思うのです,そもそもの目的は。大学側の意見を言わせていただければ,「大学入学希望者評価テスト(仮称)」の内容によって大学側は教養教育をどう行うかということが決まってくるわけでありまして,正にアドミッション・ポリシーとカリキュラム・ポリシーとディプロマ・ポリシーが関連付けられることが期待されていると思うのです。高等学校の教育の質保証ということでは,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が一方ではあり,そして「大学入学希望者評価テスト(仮称)」が一方ではあり,その接続がどうなっているのかということを一つお聞きしたいと思います。
【安西座長】  文部科学省からよろしいですか。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。まず,二つ頂いた質問のうち一つ目について御説明させていただきたいと存じます。14ページ目に書いてございます「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の扱いというのは,基本的には,こちらにもございますように,生徒に学んで身に付けてもらうことを期待する基礎学力を確実に習得していただくためのツールの一つとして,今回,その導入ができないか。特に生徒の基礎学力の定着度の度合いを把握する,そしてその把握から日々の指導の工夫,それから充実につなげていただくと。やはりそういった目的を持っていくということで,前回の会議でも位置付けの更なる明確化で御説明させていただいたところでございました。
その上で,この15ページ目にあります「キャリア教育実現に向けた検討」の中で出てきたものとの関係でございますが,そういった意味で,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というのは指導要領に基づいて身に付けることが求められている内容がどの程度定着したかを見るものでございますが,一方,今回,ワーキンググループで出てまいりましたこの「キャリア実現に向けた検討」は,むしろそういったものではなくて,生徒が自分のキャリアパスを形成していくに当たりまして,将来,例えばどういう道に進んでいくのか,一体何を目指していこうとしているのか,そういったことを自らが考え,そしてそれを振り返れるようにポートフォリオの手法若しくはキャリア教育の充実の観点の中で位置付けていけないかということでございます。なので,将来,生徒たちが自ら考えたものを例えば何か評価する観点というよりは,むしろ,これはあくまでそういった学びを自分自身の中で内省してキャリア形成を考えていく機会のツールとして使えないかということで,考え方としては,そこは「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の考え方とこの「キャリア教育の実現に向けた」中で出てきている考え方はやはり分けて考えていくべきではないかというのは,ワーキンググループの中でも議論があったところでございます。
そして,二つ目のところでございますが,まず,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については,今御説明をさせていただきましたように,基本的には生徒の基礎学力の定着度合いを把握して,それを学校の高等学校の指導の工夫・充実に充てていく,そして生徒が基礎学力の習得意欲の向上につなげていく,そういったことを考えておりますので,正直申しまして,直ちに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」とつながっているというかどうかというのは,テストとの関係でいけば,そこは今のところはつながっていないのではないかと考えております。そういった意味で,今後,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を構築していく中で実践をしていく,それから実証データを得て関係者の声を聞きながら,最終的には平成31年から34年に予定をされております試行実施期の中でその検証をしていくということで考えていければというのが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」からの見方と考えているところであります。
【橋田大学入試室長】  「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の方の考え方でございますけれども,今回の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の考え方の一つとして,やはり高等学校の言語活動あるいは探究的な学習の成果をきちんとこの評価の中で見ていくという中で,高等学校の授業の改善を後押ししていくというところも狙いの一つとさせていただいております。その中でも統合的な思考力・表現力をより評価していこうということで,大学入学段階で求められる力,今後も評価していくというところでございますけれども,この難易度設定を含めて,作問の考え方も構造化を今後我々は図っていかなければいけないところでございますので,その中で「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の関係を含めて一定の整理ができるよう検討は進めていく必要があろうかと考えております。
【安西座長】  浦野委員,お願いいたします。
【浦野委員】  今の議論の流れの中で少し意見を言いたいと思うのですけれども,高等学校も実に多様な高等学校がありまして,専門学科の高等学校のことを考えると,この高大接続システム会議でもずっと議論されてきたように,基礎学力というのは高等学校の質保証をするための本当の基礎といいますか,そこができているかどうかということでこれが導入されるというふうに思っているわけですけれども,専門高校の場合には更にそれぞれの専門性の中で校長会等で検定試験等々やっています。そのことは,普通高校と大きく違うところは,日頃の共同学習といいますか,チーム学習みたいなものがあって,そこでそれぞれ生徒が多様性の中で自分が持っていない能力,相手が持っている能力等を交換し合いながら気付きを得ていくことができます。要は,高等学校の中で自らが自分を評価していくということができることが一番いいと思うのです。そういう意味では,この15ページの方のキャリア実現に向けたポートフォリオなり何なりということは,専門学科の方ではかなりの部分,私は進んでいると思うのです。そのことを普通高校の方でも,何のために大学に行くのかといったところをきちんとそれぞれが考えられるように,自らのキャリア実現に向けた取組を考えておく。そのためのポートフォリオ評価とかいろいろあると思うのですけれども,それは少し専門学科の方のことも反映しながら普通科も考えていっていただいたらと思っております。
【安西座長】  ありがとうございました。
佐野委員,お願いいたします。
【佐野委員】  はい,ありがとうございます。多面的評価の中に高校生たちの自己評価といいますか,それを取り入れるというのは大変重要なことだと思います。これは一般的に,私たちもそうですけれども,評価されたことに対しての納得度というのは,必ず評価というものに対しては反発があったり,言い訳があったりするわけで,一番評価の大切なところは,自分自身が下している評価と他者評価との差がどこで,そこをどういうふうに理解していくか,あるいは埋めていくかということが,まさしく能力を伸ばしていく上で非常に重要なポイントだと思いますので,自己評価の仕組みを取り入れていただくというのは大変重要なポイントだと思っております。
それからもう1点,評価というところに関係するのですが,実は高等学校のPTAの様々な会等で高校生の特に保護者の方たちにこの「学力の3要素」のお話をしますと,実際に自分たちが生きてきた中で,これは父親も母親もそうですけれども,確かに知識・技能の定着も重要だけれども,実は思考力・判断力・表現力だとか主体性・多様性・協働性だとか,あるいは最近よく言われる非認知能力だとか,そちらが実は生きてきた中で非常に重要だということは自分たちは経験としてよく分かると。したがって,ここを多面的・総合的に評価をするというのであれば,あらゆる場面でその評価が行われているという実績を作っていただいて,実感が社会全体に出てくることが非常に重要なポイントだという話が,保護者の方たちとのディスカッションの中で出てまいります。そういう意味で,本日この中にありました,推薦書を求めるときに,推薦書の中に「学力の3要素」についての記述を高等学校側に求めるというようなことも大変重要なポイントだと思いますので,是非前向きに進めていただければと考えております。
【安西座長】  ありがとうございました。
金子委員,それから香山委員,お願いいたします。
【金子委員】  ありがとうございます。このレポートについては大変共感するところが多いのですが,ただ,一つ,このワーキンググループでやるべきことなのか,あるいはほかのこの委員会自体でやるべきことなのかは少し分かりませんが,多角的な評価を行うというのは入試にとっては非常に大きなコストが掛かるというのは,これ,大学側にとってはこれから非常に大きな問題になってくるのではないかと思います。入試に掛けるコストというのは今でも実はかなり大きいのは大きいのです。私,概算しましたら,入試の種類をざっと数えて2万件ぐらい毎年行われていて,これは大学によって800くらい,1大学で入試の種類があるというところもあります。様々な入試がいろんな形で行われて,ここにすごい大きな努力と時間が傾倒されていて,他方で,AO入試などでも相当な大きな時間が掛かっているところは掛かっているわけで,これを今のままのAO入試,非常に手の掛かるAO入試をそのまま拡大するというのは非常に難しいということもいろいろと指摘されています。よくアメリカの大学が多面的な入試というふうに言われますが,有名大学で大体1年間の授業料くらい掛かっているのではないかという話もありまして,大体3万ドルとかそれくらい掛かっているといいます。これは表には出ていませんが,やはり相当大きなコストを掛けていなければ,多面的な入試は考えてみれば難しい。これは当たり前だと思います。機械的な正答が分かっている答えの採点をするよりもはるかにコストが掛かる。今掛かっているコストの掛け方と,新しい多面的な入試をするときの掛け方が変わってくると思います。それ,必ずしも大学にとっては負担ばかりではなくて,今までだって分からないところで非常に大きな負担が掛かっているものが,セーブされて,それが新しい入試体制の中で別のところに移動していかなければいけないという問題になっていくのではないかと思うのですが,そういった意味で,私は,接続テストとか標準テストを採用すること自体も非常に重要になってくる,それとの組合せでないと多面的な入試はできないと思うのですけれども,ただ,もう一つの問題は,多面的な入試をするときにどのようにしたらコストを縮小できるかということは,かなり真剣に考えなければいけないのではないか。例えば推薦書なども,一定の部分は共通フォーマット化して電子申請できるようにするとかいうのもやはり一つの考え方で,アメリカは州立の大学については全く共通のフォーマットで推薦書を入れることになっていますが,いろいろな意味で大学の側も使いやすい,高等学校の側も記入しやすい,しかもかなりコストが掛からないといいますか,効率的にできるというような方法を考えるということも極めて必要だと思います。内容として非常にいろんな議論があるのは重要ですが,ただ,フィージビリティーもやはり今の段階ではそろそろいろいろな意味で考えなければいけないので,大学にとっての負担を実質的に大きく増さないような方法を考えるということも是非この会議でやっていただきたいと思います。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。
香山委員,お願いいたします。
【香山委員】  今,金子委員がおっしゃったことともつながることですが,2点お尋ねいたします。
1点は,数値化できない能力を測っていくという観点でのポートフォリオ評価の可能性についてです。従来,ペーパーテストで暗記・再生できる知識を尋ねてきた中で,ポートフォリオ評価で見えない力を測っていくという改革は非常に期待しているところが大きいです。ただ,今,金子委員がおっしゃったように,労力であるとか,入試日程を考えた場合の時間であるとか,そういった問題がありますので,現実的にどこに落とし込んでいくのかということが非常に気になるところです。それについての見通しがあれば教えていただきたいと思います。
それからもう一つ,ポートフォリオに関して,17ページの最後の丸ですけれども,生徒自らが学びの履歴,学びの報告書を書いて大学へ持っていき,そして大学での学修の充実やその後のキャリアや進路というふうに大学の出口の部分まで言及されているわけです。となれば,産業界も入社試験にそういったポートフォリオ評価をどんどん取り入れていくといったような後押しも是非していただいて,幼・保・小・中・高,そして社会にわたってポートフォリオをしっかり作っていく。そのことによってキャリアステップを自ら促していくといったような国総掛かりでの教育の仕組みを一つ作っていただけたらなと思うのですが,その点についての見通し,浦野委員辺りにお聞きしたいと思います。
それからもう1点,付け加えて,数値化する学力について少し懸念しておりますのが,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」等は,全国学力・学習状況調査で尋ねてきているコンピテンシーをしっかり問うていこうという,コンピテンシーベースの設計になっているわけですけれども,多面的評価の一部として指摘されている従来の民間の検定が果たしてそうなっているのかと。これについては,13ページにしっかりと「各種検定試験等が,『学力の3要素』のうち,知識・技能のみならず,思考力・判断力・表現力等との関連を明確にしていくことになれば」というふうに条件を付けてくださっておりますので,各種検定等の主体者に対する呼び掛けになっていると思うのですが,呼び掛けに応えてくれないと,それを果たして評価として見ていいのかという問題も少し気になるところでありまして,その点についても,もしお聞きできたらと思います。
【橋田大学入試室長】  まず1点目の御指摘の入試日程のところですけれども,この後,個別選抜改革の部分で少し選抜の実施時期の件にも触れさせていただきますので,その点で御説明させていただければと思います。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。最後の御質問のところでございますが,13ページのところに,正に御指摘いただきましたように,基本的な,今のままでいいかどうかということは別といたしまして,質的な充実が図られるということ,また,そういった関係性が明確になるということであればというのは,正にワーキンググループでも議論になったところであります。特に民間検定につきましては,現在,中央教育審議会の生涯学習分科会の方でも民間検定の質の保証についての議論が進められておりますので,そういったものとセットで議論をしていくということは大事なのではないかということはワーキンググループでも議論がありましたので,御報告をさせていただきたいと存じます。
【安西座長】  ありがとうございました。今の企業等のことがありましたので,浦野委員にコメントを頂いて,それから佐野委員にお願いして,一応,今のテーマはそこまでにさせていただいて,次に移らせていただきます。
【浦野委員】  今ちょうど,規制改革会議とか産業力競争会議の中で就業の入り口みたいなところの議論をかなりやっているわけです。その中では,やはり産業界からの反省として一番大きいのは大学で学んだことを尊重してないということです。今,大学の方も変わろうとしていて,昔,我々のときのような優・良・可ではなくて,少なくともGPAがあったり,あるいはルーブリックとかそういう形でコンピテンシー評価のこともやっている大学もあるわけですから,そういう大学からは,是非そういうことを産業界にアピールして,うちはこういう評価をしているのだということを言っていただきたいというのが一つです。我々も,そういう評価が今,大学で進行しているということを今の経営レベルの人ってあまり知らないので,そういったことを勉強しながら今後は学んだことを尊重していきたいというのが一つです。
その上で,これ,文部科学省にも是非聞いていただきたいですけど,インターンシップの在り方です。これがやはり今後,鍵を握るだろうと。ここで言う多面的な評価というのは,インターンシップをやればかなりのことが分かるわけです。ところが,これが一応公式には就職とつなげてはいけないみたいな文章がありますし,そういったところも今後変えていければなということで,産業界としては,大学で学んだことを尊重する採用。それから,採用時期については大変御迷惑かけていますけれども,これも大学と話しながら採用時期を通年採用にしていきたいということ。その上で,インターンシップということをいい意味で進化させていってほしいと思っています。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,佐野委員,お願いいたします。
【佐野委員】  失礼しました。先ほど言い忘れたことが1点ありまして,ちょうど今お話が出ていた17ページのところのポートフォリオですとか,あるいは15ページのキャリア・ノートという言葉が出ていますけれども,中央教育審議会の生涯学習分科会のところで出てきている生涯学習パスポートという,どちらかというと今,デジタルデータみたいなものが想定されているようですけれども,やはりその仕組みをうまく先々,すぐにここ3年,4年ではできないかもしれませんけれども,その仕組みと融合させる,一体化させるというようなところを是非考慮に入れていただければ有り難いと。同じようなものが二つ別々にあるのではなくて,同じ一つのものの中にまとめていくという,そういう発想でお願いできればと思っております。
【安西座長】  ありがとうございました。大変貴重な御意見を頂いてまいりまして,社会・企業との関係も私もそのとおりだと思っておりますが,ほかにも,今のテーマだけでも,高等学校を卒業して必ずしも大学に行く生徒ばかりではありませんで,そこまで全体含めての高等学校における多面的な評価の問題もここで議論していただいておりますので,一方で大学に行く,進学を希望している生徒さんもおられるわけで,そういう中で,今のここでやっている議論がどういうこととどう関連しているのかということは,是非頭にいろいろ思い浮かべていただきながら進めていければと思っております。

(2)「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について
資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西座長】  それでは,引き続きまして,前回の続きでございますけれども,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について議論いただければと思います。
まず,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたします。それでは,事務局より資料2に基づいて御説明したいと存じます。
資料2には,本体の資料と,それから別紙として「出題の方向性(たたき台)」と付した資料,それから,前回の会議で御議論いただきました「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の全体イメージの横紙の資料,そしてその際の活用方法のイメージ,こういった資料を本日御用意させていただいております。
まず,本日御説明させていただきたい事項は,前回,その位置付けの更なる明確化,それから全体スキームについて御審議を頂いたところでございます。その上で本日は,その中で「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題について,資料2にございますように,その位置づけの明確化,実施スキームを前提に,来年度以降,更に「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題の収集・作成・精査・蓄積に関する方針を策定していくということになってまいります。その際の基本的な考え方を整理させていただいたのがこの資料2ということでございます。
まず,資料2の1ページ目の中段から始まりますように,基本的な考え方につきましては,前回御審議を頂きましたA3の「高等学校基礎学力テスト(仮称)の位置付けの確認」,それをそのまま基本的に入れさせていただいております。
真ん中二つ目の白丸にございますように,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,複数レベルの問題から学校が選んで受検し,生徒の基礎学力の定着度合いに応じた目標準拠型の評価,これを段階表示で結果提供できるということを目指していきたいということであります。
そして2.でございますが,そういったテストを作っていくための「作問に関する基本的な仕組み」についてでございます。
2.の一つ目の白丸,2行目からでございますが,CBT方式での実施を前提としたテストとして,以下に掲げる収集・作成・精査・蓄積というこの作業の中で,アイテムバンクに蓄積された大量の問題群の中から問題セットを構築して,各学校が求める複数のレベルに応じて適切に選んでいただける,そういった受検ができる仕組みを考えていきたいということであります。
この点につきましては,先ほど御紹介した参考資料のうち,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の全体イメージのたたき台,その2ページ目をおめくりいただけたらと存じますが,試験問題の作成・収集等の仕組みでございます。ここにございますように,収集につきましては,全国の教育委員会・高等学校・関係団体から,例えば定期考査若しくは実力テストなど,そういった問題の提供を頂くとともに,場合によっては民間からの御協力も頂きながら,各方面から全国的に既存の問題の収集を行っていくということを考えていってはどうかということでございます。
そして,次は作成でございますが,この資料の下段の方にありますように,既存の問題収集以外にも,高等学校・教育委員会,また民間事業者等の有識者によって構成された検討の組織の中で,例えば良質な幾つかの出題パターンを基に,数値・語彙を変えた類似の問題を作成していくという観点,若しくは,生徒の学習意欲や学校での指導へのメッセージ性の高い新たな問題を作成していくということが,作成のところで考えられるところではないかということであります。
そして,そういった既存若しくは新作問題を,青い箱のところにございますように,集められた問題を精査していく。その内容や難易度等を確認し,場合によっては,大事な作業といたしましてはプレテスト・プレ試験もやはりやっていかなければいけないと考えています。そのような試行などを通じた得られたデータ,こういったものを考えながら,更に問題の難易度,内容について修正をしていく,そういった精査の作業というものが必要になってくると考えております。
そして,その精査された問題について,最終的には実施主体の下にアイテムバンクに登録し,各高等学校が希望する科目・実施時期に合わせて問題セットを提供していくということが,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」での大きな枠組みになろうかと考えているところでございます。
こういった形で実際に実施されるということを念頭に問題を作っていくということであります。
そして,今度は資料2をもう一度御覧いただきますと,2ページ目でございますが,あわせて,3.にございますように,「定着度合いを把握するための評価の規準の整備」ということを考えております。これは,先ほど御説明をさせていただきましたように,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が目標準拠型の評価で,段階表示で結果提供を行えるようにするということを目指しておりますので,今後,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題の正誤の状況に応じまして,生徒の基礎学力の定着度を把握できるようにするための評価の規準,この考え方を整理し,試行を通じて検討・精査を進めていくことを考えていきたいということでございます。
大きな基本的な事項は以上でございまして,2ページ目の下段以降は具体的な実施事項のイメージでして,出題の方向性等でございます。
1.の「出題の方向性」の中に,一つ目の白丸にございますように,そのような「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の中で問題を精選し,実際に実施をしていくという中で,どの程度,学習指導要領に定められて指導された内容が身に付いているかという観点からは,基礎的な知識・技能を問う問題を中心としながらも,思考力・判断力・表現力の問題がバランスよく取り入れられて,基礎学力の定着度合いが把握できるということを目指していきたいということであります。
その際の参考としては,例えば,既に全国学力・学習状況調査で行われているような基本理念なども参考にしながら問題を作成していく,若しくは収集をしていくということではないかと考えております。
また,最後の丸にございますように,高校生の多様性を踏まえますと,幅広く基礎学力の定着度合いを把握していくという仕組みとしては,例えば,義務教育段階の学習内容で構成される問題のセットであったり,若しくは高等学校の学習内容で構成される問題のセット,場合によってはその両方を取り入れていくといった形で,各学校が生徒の状況に応じてそういった問題のレベルが選べるような,そういった仕組みで考えていけないかということであります。
続きまして3ページ目でございますが,一番上から一つ目,二つ目,三つ目にございますように,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題につきましては,生徒の学習意欲を高める,若しくは試験問題のこれまで抱えていた課題を克服できるような問題を考えていきたいということであります。
また,二つ目の白丸にございますように,生徒のレベルに応じまして適切な問題文の構成・分量などの留意,また,素材につきましても,その受検者がその後,日常的に目にする素材から取り扱ってはどうかということ。
さらには,三つ目の白丸にございますように,前回の高大接続システム改革会議でも御紹介いたしましたが,その活用のイメージとして,特に高校生が「高等学校基礎学力テスト(仮称)」に取り組むことで自らの学びの質の向上に取り組めるようにする。そのためには,参考の中にございますように,自らの強み・弱みを理解できるような試験であったり,若しくは,二つ目黒ポツにございますように,社会で自立するために必要な学力とはどういうものかを認識してもらうということ,さらには,三つ目にございますように,義務段階の学び直しからその成果を実感して達成感を感じていただく,そして学習意欲を喚起させる,こういった活用に資するような問題を考えていってはどうかということであります。
この点につきましては,別紙の縦紙の資料でございますが,「等学校基礎学力テスト(仮称)」の位置付けや目的等を踏まえた出題の方向性(たたき台)を御覧いただけたらと存じます。
この資料には,例えば,「出題のねらい」として一番上でございますが,一つ目の白丸,「社会で自立し,社会に参画・貢献していくために必要な力」として,様々な場面で生かされることを想定し,出題することを目指すということで,例えば場面の一例といたしましては,国語,数学,英語でそれぞれ,ニュース,演説,社会で用いられている問題から要点を的確に捉えて書き出す,若しくは概要をまとめる。また,会議や打合せにおけるような場面を設定して,必要となる情報を収集,そして提案する内容,また表現の工夫,根拠を持って説明する,そういったことができるようなことをイメージした出題を考えていってはどうかということ。また,数学につきましても,例えば商品の売上げに関するグラフなどから情報を読み取ることができる,若しくは利率やコストなどの条件を比較して将来的な見通しを立てることができるといったことが出題の中で考えられないかということ。また,英語につきましては,Eメールや手紙など,求められている情報を読み取り,適切に書いて伝えることができるかどうか。また,英語の掲示や取扱説明書などから必要とする情報を取り出して,そこから目的を達成することができるか。こういった点をイメージしながら出題を考えていってはどうかということであります。
また,「出題の工夫」といたしましては,生徒の学習意欲を高めるために,日常的に触れる機会の多い素材,これを問題に取り入れる。また,進学後の学習若しくは就職後の社会生活の場面を意識させる問題設定を行うということを考えていってはどうかということであります。
また,三つ目の箱にありますように,当然,「学習指導要領との関連」というものは意識して出題をしていくということと同時に,最後でございますが,「指導内容や指導・評価方法へのメッセージ」といたしまして,例えば国語であれば,複数の問題を多角的な観点から解釈して自らの考えを形成して,根拠に基づいて論述・議論できるという,そういったことを目指した授業に生かしていく。若しくは,数学であれば,実生活と結び付いた設定の中から数学的手法を用いて意思決定をしていく,そういったことを念頭に置いた授業に結び付けていく。さらには,英語につきましては,生徒同士での双方向のやりとりなども含めて,四技能を統合的に活用していく授業に生かしていく。こういったことをつなげていけるような出題の方向性というのを考えていってはどうかということでございます。
そして,何度も飛びまして恐縮でございます。資料2にお戻りいただきまして,3ページ目の下段でありますが,二つ目の「出題の方法等」でございます。ここには主立ったものをとりあえず書いておりますが,出題の教科・科目,時間,出題方法,それから問題の分類であります。特にこの出題の方法につきましては,出題の方法として選択式も当然でございますが,例えば短答式若しくは設問が求める条件に沿って数十字程度で解答する記述の問題,また,英語におきましては四技能,こういったことの導入を目指していきたいと考えております。その際,記述式,英語の四技能につきましては,採点方法,人員の確保など,やはり課題が多うございますので,そういったものを一つ一つ検証しながら導入に結び付けていく,そういった検討を更に行っていきたいというところでございます。
以上が収集・作成・精査・確定に関しての方針の策定に向けた基本的な考え方でございます。
なお,本日,机上に赤いファイルを置かせていただいております。これは実は,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題につきまして関係各省から情報を頂いたものの中のうち,有識者の中で良質な問題ではないかということで選んでいただいた問題でございます。こちら,それぞれ国語,数学,英語でそれを選んでいただいております。この点,例えばまず一番上にございますように,イメージとしては,選んだ問題の解説,例えば学習指導要領の項目,選んだ問題のポイント,そして出典などが書いてあるような表が付いておりますが,今後はこういったものも作りながら,その後ろにある問題を精査していくということであります。
そして,例示として少し御紹介させていただくと,例えば通し番号J-15,16のところでございますが,これは二つの実用的な問題を比較しながらその問いを進めていくということで,その実用性であること,また,二つの問題を文章を読み比べながら解答していくということでございます。
また,通しページJ-25にございますように,私どもとしては義務教育段階の学び直しも考えております。そういった観点からは,例えば全国学力・学習状況調査の問題なども引き戻してきて,これは記述の問題でございますけれども,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の中に埋め込んでいくということも考えていってはどうかということを検討しているところでございます。
また,数学の関係では,例えば通し番号M-9,10を御覧いただけたらと存じますが,これはある県の高等学校の入試問題,それを解題したイメージでございますが,こちらにございますように,その一次不等式を使うような問題として出すのであればM-10のような形になりますが,これを入試の段階ですと一次不等式を使わない形で問われているという状況がございます。なので,こういったものをそれぞれ難易度に応じてため込んでいくということが考えられるのではないかということであります。
また,M-17にございますように,一方で,こちらにございますように基本的な問題としては,例えば因数分解の問題,(3)のところ,若しくは一次不等式の問題なども出すということで,やはり基本的な問題も問うていく。そういったことをどういった形で出題していくのかを更に磨いていくことを議論しているような状況でもございます。
そして英語でございますが,英語につきましては,ともかくそれぞれ後ろにありますように四技能を何とか問うていきたいということであります。スピーキング,ライティング,そしてリーディング等々でございます。この中で例えばでございますが,通し番号E-36の辺りには話すことを問題として一つ入れておりますが,これも基本的には正に前回御説明をしましたように,英語についての四技能を「高等学校基礎学力テスト(仮称)」でどう実施するかと非常にリンクしておりますので,どういう実施方法があるのか更に検証していきたいと考えておりますが,我々としては,例えばCEFRのA1ぐらいの問題について,何とかスピーキングの問題が出せないかと考えているところでもあります。
また,E-45にございますように,例えば非常に難しい文章を読んでいただくだけではなくて,日常的な生活の場面でこういった情報からそのシチュエーションを読み取っていく,そういったことも問えるのではないかということでございまして,難易度,問題の質については,まだまだ磨く必要があろうかと思います。ただ,私どもとしては,こういった問題を集めてくる,精選をしていく,それを蓄積していく中で難易度を付けて,その段階で定着度の把握ができる,そういったテストに構築していくためのある意味一つのイメージとして,本日,赤いファイルを置かせていただいたところであります。
大変長くなりましたが,御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,ただいま事務局から説明のありましたことにつきまして,御意見,御質問を頂ければと思います。山極委員,それから恩藏委員,お願いいたします。
【山極委員】  ありがとうございました。この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の使い方ですけど,これは「全国的な視点から自校の生徒の基礎学力の定着度合いを把握し,指導を充実する」ということが書いてありますけれども,これは任意な時期,任意な選択で各高等学校が実施することが可能なわけです。そうすると,全国的な標準とか比較とかいうことはできにくくなると思いますけれど,それはどうやってやるのかということと,それから,達成度を測って各高校生の学習意欲を向上させると御説明がありましたけど,この達成度というのは各高等学校が定めるのか,あるいは個人個人が定めるのか,あるいは全国の標準というようなものをある程度目標にして定めるのか,その辺りのことをどう考えていらっしゃるのかお聞きしたいと思います。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。一つ目の点につきましては,基本的には,正にこういった全体的なイメージを持ちながら,この4月以降,やはり準備時期を通じて取り組んでいく必要があると考えています。それは,こういった形で問題を集めてアイテムバンクを作るだけではなくて,実は一番大事なのは,実際に集まってきた問題を学校現場の中で取り入れていただく,その中で生徒の反応を見ていくということも必要だと考えています。なので,例えば先行事例である医学部教養試験などでは,やはり4年間ぐらい掛けて問題を集めて精選し,難易度をイメージしながら学生に解いてもらう。ただし,その中でもいろんな反応を示したり,その難易度の難しさ,易しさなども,実際にテストをしてみると思ったとおりの反応がないということもあるということで,そのプレテストを通じながらかなり情報を蓄積していくという作業が必要だと考えています。
なので,今この段階で全国的な比較云々につきましては,我々としてはそういった方向を目指して更に準備をしていくということでありますが,多分,一番肝になりますのは,二つ目の御質問と重なると思いますが,資料2の2ページ目の真ん中にございます定着度合いを把握するための評価の規準をどう整えていくかだと考えております。基本的には,テスト問題を磨いて選抜をしていくというテストではないと考えております。むしろ,このテストを受けたときに,自らが一体どこまで到達できているのかを見るためには,やはりここに書いてあります定着度合いが把握できるようにする評価の規準をしっかりと持ちながらその問題を位置付けていくことが必要だろうと考えております。なので,こういったものの整備,それから問題を集めてくる,それを試行を通じてプレテストなどの中で様々な試行錯誤をしていく。そういった中で何とか,今,委員から御指摘いただいたような形のものを整えていく。そういう作業を,時間が掛かる部分があろうかとは思いますが,進めていけないかというふうに事務局としては考えているところでございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
【伯井初等中等教育局審議官】  補足いたしますが,今,今井が申し上げたとおりでございますけれども,このテストは,複数レベルの問題を提示し,なおかつ,その結果を各学校における目標に応じて複数段階で結果表示していくということですので,義務でやっている全国学力・学習状況調査なんかは平均正答値で横串でやっています。ただ,逆に,その達成状況が経年で見られるものじゃないという課題もあるのですが,この調査については,平均正答値は出せないですけれども,今,今井が申し上げました2の3のところで見るところの基礎学力の定着度合いを把握するための問題レベル,さらには,問題レベルに応じて結果を段階的に表示するための評価の規準のようなものをしっかり学習指導要領に即して実施する教科ごとに作ることによって,あるいは縦軸を何か通すような作業になると思いますが,それが一つ要になってきて,それによって学習意欲改善を促すようなものにしていきたいと考えています。
【山極委員】  今のお答えに関連して,今でも民間業者がやっている全国模試というのは結構たくさんあって,高校生個人が自分の能力の向上度を測る場合に,そういった模試を受けて自分が何番になるかとか,いろいろなやり方があるわけです。そういうものをむしろ減らすために,きちんと標準を設けて,高校生がある一定の基準をもって達成度を測れるような仕組み,しかも,そういう模試を受けなかった人たちもきちんと能力を測れるような,より量的な指標が可能になるような仕組みだろうと私は思っていますが,その辺りのことはどうお考えでいらっしゃるのでしょう。
【伯井初等中等教育局審議官】  なくても対応できるという点ではそのようなものを目指す必要があると思いますが,民間で今,高等学校現場は,これまた義務と違いまして,様々な診断型のもの,あるいはICTを使ったもの,いろいろ現に定着しつつありますので,それとむしろ相まって,この国レベルの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と民間のものが両方絡まりながら,相まって,日々の学習活動を促進するようなものにしていかなければならないと思っております。具体的には,例えば高等学校において,これは使い方はいろいろありますけれども,年に一度程度あるいは二度程度,学校によっていろいろですが,実力テストみたいなもの,現場の教師の作成によるテストでやっています。例えば,これはそうしろと言っているわけではなくて,活用の仕方の一例ですけれども,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」をそれに代えて,それで一度,全体的な定着度合いをそれぞれ見るということをしながら,その他様々なテスト,学校における指導改善の工夫とタイアップしながら指導改善を進めていくというやり方とか,これはほかにもいろいろやり方はあると思いますが,そんなものを目指せればと考えております。
【安西座長】  ありがとうございました。
恩藏委員,お願いいたします。
【恩藏委員】  今の議論と多少絡んでいると思いますが,作問とか出題とかアイテムバンクなどについての整理はよく進んでいるので,本日聞かせていただいて十分理解しました。その一方で,例えば問題とか分量がレベルに応じていろいろ用意されていて,しかも高等学校で選ぶわけです。そして,段階表示で結果を提示するということになると,これって,今,様々な高等学校で行っている中間,期末あるいは統一試験,先ほど少し出ましたけど,予備校がやっているような模試だとか,あと実力テストも高等学校でやっている。それと何が違うのだという気がしてきました。多分,各高等学校では達成感とか学習意欲を高めるような工夫をされていると思います。それに対して,今回,我々がこういうテストを導入したときに,今までと決定的に違うって一体何だったのだろうってやはり改めて考えていかないと,ただただ今までの高等学校がやっている試験を置き換えるような,そんな気がしてならないのです。
そもそも今回の問題意識というのは,やはり日本の今の高等学校の教育レベルが非常に下がっている。それを少しでも底上げして,そして国のためにという,そのような問題意識があったように思うのです。けれども,途中からどちらかというと学習意欲だけに変わってきて,学習意欲だったら今だって各高等学校やっているじゃないかと,そんな気がします。ですので,今現在の高等学校が取り組んでいる試験と何が決定的に違うのか。この試験が導入されると,日本にとって何がプラスになるのかというところを是非確認しておきたいと思います。
【安西座長】  文部科学省,お願いいたします。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  失礼いたしました。御質問ありがとうございます。やはり一番大きいポイントは,定着度合いを把握する仕組みとして考えていく際に,今回の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を受検いただいた結果,一体どの程度,何が身に付いたのか,若しくはそういったようなものが分かるような形でお示しできないかというのがやはり一番大きいと思います。今,委員より御指摘いただいた高等学校現場でも,確かに目の前の子供たちに対してかなりきめ細やかにテストを実施されていると考えております。ただ,それはあくまでその学校の中で目の前にいる若しくは預かられた生徒に対してどういった形で問題を問うかということになりますので,それが実際に求められている規準,定着度合いというものを全国的に見たときに,一体どこまで引き上げられたのかというのはやはりまた別なのではないかと考えておりますので,学校現場で作っていただいている問題等については,その定着度合いまで見られているかどうかについては,やはり全国的な視点でそこを磨いた上でそれを提供するというのも意味があるのではないかと考えているところでございます。
【恩藏委員】  そうすると,以前に議論したのですけれども,レベルがたくさんあって,しかも高等学校がいろいろそれを選べて,なおかつ段階表示というのがどうもすっきりこない。大分前に,パスしたか,しなかったかとか,そういう結果表示でもいいかもしれないって,私,申し上げたと思うのですけれども,ある水準をきちんと日本の高校生であれば達したかどうかということが狙いなのだということを考えると,もう少しシンプルな方がいいのではないかなと思うのです。いかがでしょうか。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。基本的にこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」につきましては,定着度合いを把握し,その伸びとか,度合いがどういうふうに伸びてきたのかを見ていくということが念頭に置かれているテストだと思っておりますので,このテストで合否を判定する,若しくはこれ以上がいい,これ以下が駄目だということを示すようなテストではないと考えておるところでございますが,基本的に,では定着度合いをどういうふうに段階的にやるかにつきましては,どうしても一定程度様々な難易度の問題を集めてきて,その中で生徒たちがどういうふうに問題に対しての正答率が出てくるのかどうか,そういった難易度を見ながら中身を詰めていく必要があろうとは考えているところでございます。
【安西座長】  一応,私からも申し上げておければと思いますけれども,先ほどの高等学校での多角的な評価とも非常に大きく関連することでございまして,高等学校の多様化,設置形態等もいろいろ違う高等学校があって,それぞれに頑張っていると。そういうところで学んでいる生徒たちそれぞれがやはり浮かばれるようにしてあげていきたいというのが念にあると思います。ただ一律に,例えば本当にいわゆる普通高校向けの問題を出して,ここまでできなければ駄目だとか,そういうことを一律に言っているということではなくて,日本で学ぶ高等学校の生徒,いろいろな高等学校がありますけれども,そういう高校の生徒たちそれぞれが浮かばれていくようにしたいと。そのための仕組みをどう作ったらいいのかと。その中でこのテストについては,ある程度全国的に通したそういう仕組みが一方では必要だと考えられますし,一方では多角的な評価をそれぞれの学校が主体になってやっていっていただくと,それぞれの先生方が評価をしていっていただくということも必要だと。それをどのくらい,どういうふうに組み合わせられるかということをここで議論していただいているということだと認識しております。
【浦野委員】  今の議論を聞いていて思うのですけれども,私,是非,このCBT方式でアイテムバンクというか,IRTというか,そういう中でレベルを選んだときに,それが実際はどういう地図なのだということがはっきり示せるレベルまで行ってほしいと思います。これ,例え話で言うと,各個人が地図上で現在位置がどこにあるのだということを知ることができます。現在位置が分からなかったら,どこへ行こうかって地図を使おうと思ったらできないじゃないですか。その地図がどのレベルの地図なのだということが,これだけたくさん作問すれば分かってきます。高等学校での実力テストとか何とかって,もちろん先生方一生懸命やられるのですけれども,それはそういう意味では,100万人の高校生に対して有効な地図ではないと思うのです。かなり特殊な地図だと思うのです,各学校で使うのは。そういう意味で,これは国の基本地図,2万5,000分の1の地図の中に自分が今どこにいるということを知るということです。そういう意味では,高校生の方々に現在位置を知ることの大切さとか,あるいは企業で言うとSWOT分析みたいなものがありますけれども,そういったことをやはり自己評価として高校生のときからやっていくという意味の主眼では,この「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というのは非常にいいと思っています。
【安西座長】  ありがとうございました。
南風原委員,お願いいたします。
【南風原委員】  今出たような高等学校それぞれでやっているテストというのはかなりやっぱり有効で,それぞれに最適化されているわけです。それぞれの学校で必要なことを問うて,必要なレベルにあって,それでフィードバックをして次につなげると。で,すぐ採点もできますので,小回りが利いて,評価として非常に良く機能しているわけです。ですから,先ほど恩藏委員からあったようにそういったもの,あるいは山極委員からあったように民間の今使われているようなテスト,それを超えてどういう情報を提供することができるのかということがポイントだと思います。やる意義があるかどうか。そういう点で,目標準拠という言葉と,それから全国的な視点という言葉が出てきたのですが,これ,どちらも非常に難しいことで,いろいろ曖昧な言葉,たとえば学校が設定する目標とか少し分からないですけれども,要するに,IRTでということになれば,これは「非常によく達成している」から「全然達成していない」まで一次元に並べる。そして,どのレベルの道具を使っても,今,浦野委員からあったように,結果としてこの地図あるいはスケールの中のどこに今おり,翌年はどこにいるということが位置付けられる。要するに,一次元の一本の序列化されたスケールの,これを精密に見ていく。精密に見ていく手段として,複数のレベル,その生徒に合ったレベルでやっていくということだと思うのです。まず一つ確認は,複数のレベルを選ぶのですが,どのレベルを選んでも今申し上げたような共通のスケールに位置付けられる,そういう情報を提供するということを目指しているのかということを一つ確認です。
目標準拠というのは言葉では難しいですけれども,私の理解では,このテストで何点をとったら何ができるということが分かることだと思います。何点なので何ができて,何ができない,どこまで到達して,どこまでは到達していないということが言葉で言えるというのが目標準拠だと思うのです。目標が80点なので,それに到達したかどうかというのは,これは目標準拠じゃないです。例えば一次方程式についてはもう大丈夫であるとか,そういうような内容だと思うのです。だから,そういったことが今の全体で一次元に並べるということとどう整合するのか。僅か60分のテストでそういった目標準拠,言葉に換えられるような解釈というのは生まれるのかどうか,どういう仕組みで生まれるのかということが難しいところです。
それからもう一つは,集団準拠というのがあって,全国の視点からというときには,やはり自分の学校だけ見ていると分からない。全体としてアップしているかのようだけど,実は全体としてはそんなにアップしてないというようなことで,全国レベルの比較というのもやはりこれは意味がある。全国レベルというのはその意味で意味があるわけですが,先ほど山極委員から,任意のときにやって,そういうので比較できるのかということを言われましたが,任意でもあるし,要するに,参加者の集合が,この子たち何なのかということが分からないです。全国悉皆であるか,無作為抽出であれば,基準が分かるわけです。しかし,無作為抽出よりは数は多いでしょうけれども,自由参加なので,その自由参加のサンプル,グループというのは何を意味するのかということが分からないので,そこでの平均は意味を持たないし,それをノームとした偏差値も意味を持たないし,あと上層部が抜けているのであれば,それも全国的な規模,全国的な視点という意味では妨げになります。というようなことで,幾つかまだまだ解決すべき問題はあるかなということは思いました。
あと1点,質問ですけど,CBTを前提にということは,これはそうですか。CBT以外ではやらないということになりますか。
すみません,幾つか挙げましたが。
【伯井初等中等教育局審議官】  まず,先ほど安西座長もおっしゃっていましたように,これを高等学校現場に円滑に導入する前提といたしまして,高等学校教育は高等学校入試を経て非常に多様化している現状があるというのは義務教育と違うので,このテストの導入を集団準拠,相対評価をすることによって,再び高等学校をレッテル張りのようなことをして,むしろエンカレッジに逆行してしまうということにならないような制度設計をどうするかということにまず配慮いたしまして,そこで前回説明いたしましたように,生徒の基礎学力の定着度合いに応じた目標準拠型の評価と。これは,今御指摘いただきましたように,例えば英語における民間検定で何ができるのかという指標をそれぞれ設けて,段階表示をするということを現に行われておりますけれども,それは試験の問題が違ってもランキングの表示が一定決まっているというものがございますので,そういうものを目指しつつ,したがいまして,目標準拠型の評価を段階表示で結果提供するというのは,そこは一本筋が通った内容のものを考え,問題が違ってもです。結果別な表示についてはある意味一次元のものを考えていかなくてはならないと考えております。そこが相当,今後,労力を要するというか,大変なことも十分認識しておりますが,それをやらないとなかなかうまいものにならないだろうと考えているところでございます。
あと,CBTにつきましては,更に詳しく説明して,一応,CBTを念頭に置きつつも,実施できにくい学校,例えば現実の学校現場,高等学校現場の現状で言うと,CBTだと全学年一斉というのはなかなか難しいということもありますし,学級ごとでないと受検できないというようなこともありますし,現実のやり方ということも考えると,CBTと紙方式というのも当初は同時並行で進めていかなきゃならないと思っております。
【安西座長】  ありがとうございました。
誠に申し訳ありませんが,5時には終わらないと思いますので,5時少し過ぎることになると思いますが,大事な議論でございますのでお許しください。
金子委員,それから長崎委員,香山委員にお願いいたしまして,一応この件についてはそこまでにさせていただければと思います。
【金子委員】  今の議論ですが,確かに,学習目標を決めたテストという厳格な部分ですれば様々に問題はあるのだろうと思います。ただ,この議論のもともとの始まりは,私,2年くらい前の中央教育審議会高校教育部会に参加しておりまして,そのときに感じましたのは,やはり日本の高等学校教育は1990年代から非常に多様化政策をとり,それから実際に今度は格差もできているという中で,高等学校の間でどこまでの基礎的な学力を獲得させなければいけないかということについては余り合意がないというのを非常に強く感じました。高等学校の校長先生の団体などの代表の先生方の話を伺っても,やはりそこら辺については非常に多様な考え方があって,はっきり言って,高校生をきちんと授業中座らせておくこと自体が非常に大きな課題であるというところも率直に言ってあるわけで,そこで何をするのかということについては余り了解がない。ただ,その中で一つ印象に残りましたのは,中学校の校長会の代表の方は,学力を保証できてなくてこのまま出しているのをどうするのかということを考えなくていいのかということはかなり強くおっしゃっていて,私はそれは非常に強く印象を受けました。そういう意味では,日本の教育は中学までは義務教育ですから,卒業しないということはあり得ないわけですが,相当学力格差ができているということは事実で,PISAの結果を見ましても日本は比較的いいと言いますが,これは,諸外国はやっぱり人種問題とか様々な問題に絡めて大きな足を引っ張る要因があるので,それよりは高いのは高いかもしれませんが,日本も相当幅はあって,PISAの調査を見ても下から二,三割は相当低いわけで,この二,三割のところの高校生に対して何を勉強すべきなのかという目標をとにかく与える。これは二,三割と言いましたけれども,言ってみればもう少し広い範囲の学生について,一定のところ,一定の段階のところでとにかくきちんと獲得してもらいたいというのは,やはり日本の高等学校教育を考える上では非常に重要なのではないかと思います。
その上で,今のお話にありましたように,多少曖昧といえば曖昧ですが,高等学校が自分で目標設定する,高等学校に応じた目標を設定する,それに応じた評価をするということも考え得るのではないか。これはさらに,そういった基本的な課題からして何が必要かという形で考えていくということが重要なのではないかと思います。
それからもう一つ付け加えますと,今,高等学校教育も大学教育も参加型の教育,アクティブ・ラーニングというのは非常に言われているわけですが,もう一方で,基礎的なものについてはやはり自分でとにかく具体的なもの,これだけは獲得するというのを,一人で頑張って勉強して獲得するといったこともやはり必要な過程なので,アクティブ・ラーニングと,そういう基礎的なものを獲得するという両方の側面がないといけないと思います。そういう意味では,接続テストもやはり両面があるということは必要ではないかと思います。
以上です。
【安西座長】  ありがとうございました。
長崎委員,お願いいたします。
【長崎委員】  「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の出題科目に関してです。今の話にも関わってきますけれども,このテストの出題科目は,共通に履修する科目ということになっております。そこで数学Ⅰが挙がっております。国際学力調査に携わると分かるのですが,高等学校で数学Ⅰなどの理数系の科目を必修にしているというのは先進国ではまれなことです。高等学校の数学はレベルが高いので,ほとんどの先進国では習熟度に応じるということで選択です。そのような高い内容をここまでできなければならないとなったとき,生徒にとっても,学校にとっても大きな負担になってしまうのではないでしょうか。日本は,高等学校の進学率が高くなっても,全員が完全にできるということは少し置いておいて,全員が国民として同じような高い知識に触れておいて欲しいということでやってきました。例えば中学校3年から高校1年の数学の内容は高いレベルにありますが,日本の生徒は全員誰でも一応履修して知っているわけです。ところが,イギリスなどはそれらをできる生徒しか,その内容には進めないわけです。このような日本のようなやり方は履修主義とでも言っていたのでしょうか。ところが,今月の議論を聞いていると,どうもイギリスのような修得主義になってしまうのではないかと。ここまで身に付けてなければいけないという修得主義ですと,先進国のほかの国のように内容レベルをもっと下げないと,共通して履修するのは不可能になってしまいます。全員が高い内容に触れておいて欲しい,必要な時にきちんと学べるようにという意味で,理数系の科目や社会科学系の科目を高校1年で必修にしていると思います。共通教養の可能性を高くしておきたいということ日本の高等学校教育の大きな特徴だと思っています。その特徴を生かすためには,全員がこれをできなければとか,君はここまでできているということで内容を限定してしまう修得主義よりも,このような高い内容までにも出会ったという履修主義という考え方が高等学校では大事ではないかと思っています。全員にとっての基礎としていますが,内容レベルは国際的に高いということに留意する必要があると思います。
そのことに関連して,一つだけ簡単な質問ですが,このテストをやっていったとき,テストの結果と指導要録の成績との整合性はどういうふうにとられていくのでしょうか。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。今の段階ではまだこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の詳細なところまでができておりませんので,現段階で指導要録が記載されている成績の評価とこの「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の出てきた成績の関係についてはデータがないという段階で,そこをリンクさせて考えるということは今は考えている状況ではございません。今後,試行,研究の中でその辺りを整理していくことになろうかと考えております。
【安西座長】  ありがとうございました。
香山委員,お願いいたします。
【香山委員】  民間の模擬テストとの違いについて,一つは,南風原委員が御専門の,IRTで実施する模試であること。これは,民間に余り見られない模試ではないかと思います。そして,そのことによって何度でも受検してエンカレッジできる仕組みがあるということ。それから2点目は,オーセンティックであること。実際の生活や社会や環境の中で持っている知識をどう活用できるのかというところを問うていること。これも今までの模試には余りなかった傾向ではないかと思います。それから3点目は,それに関連することですが,そこで必要とされる汎用的な能力が目標準拠の目標になっていること,そういった認識でよかったのかということをまずお尋ねしたいと思います。
それからもう1点は,高等学校の定期考査等を集めてアイテムバンクに入れるということですが,高等学校の実情は,高校入試まではA問題,B問題といったような問題ができていますけれども,高等学校の現場の定期考査では教えられた知識を再生するような定期考査が多くて,今,全国的にそれを反省して,思考力・判断力・表現力等を尋ねる問題を定期考査でも尋ねようといった県も増えてきてはいるのですが,まだまだ少ないという点では,国の方からも定期考査の在り方等についても教育課程の改革と同時にやっていただけたらというふうに思います。これは提案です。
【今井高校教育改革プロジェクトチームリーダー】  御質問ありがとうございます。前段の御質問については,是非私どももそうなるようにと考えております。ただ,やはり今の段階ではまだまだ紙の上議論でございますので,その試行なり準備期などを通じて研究を深めていきたいと考えているところでございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
【伯井初等中等教育局審議官】  補足で,よろしいでしょうか。
【安西座長】  はい,伯井審議官,お願いいたします。
【伯井初等中等教育局審議官】  おっしゃったのにプラスして,このテストは設置者にも戻すというところが,校長先生方といろいろ話していると民間のものとは違う特徴であると。設置者に返すことによってPDCAサイクルを設置者の観点から促していくということがありますし,あと,問題収集は,今,正に先生おっしゃったような方向で,良問の作成を促進していくという効果もあるだろうと考えています。

(3)「中央教育審議会大学分科会大学教育部会での検討状況」について
資料3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西座長】  ありがとうございました。
いろいろ御意見を頂きましたけれども,3番目に移らせていただきたいと思います。中央教育審議会大学分科会大学教育部会での検討状況について御報告を頂いて,御意見,御質問を頂ければと思います。
まず,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【塩見大学振興課長】  失礼いたします。資料3-1からの資料を御覧いただければと思います。中央教育審議会の大学分科会におきましては,本高大接続システム改革会議の中間まとめにおきまして,「三つのポリシーに基づく大学教育の実現のための方策」,それから「認証評価制度の改革」について,具体的な検討を進めるようにというふうなことで御要請いただいているということを踏まえて,これまで検討をしてきております。本日は,事務局といたしましてその状況について御報告をさせていただきます。
まず1点目でございますけれども,「三つのポリシーに基づく大学教育の実現のための方策」という点でございますが,この点に関しましては大きく3点ございまして,まず1点目でございますけれども,各大学において,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー,この三つのポリシーを一貫性のあるものとして策定し,また,公表するという点に関しまして,中央教育審議会大学教育部会での議論を踏まえまして,現在,学校教育法施行規則に規定するという方向で議論いただいております。その概要につきましては資料3-2にございます。内容については割愛させていただきますけれども,この一体的な策定と公表ということにつきましての省令改正を検討している状況ということでございます。
それから併せまして,それぞれのポリシーにつきまして策定と運用の参考にしていただくためのガイドラインを作成してはどうかという点に関しまして,この点につきましても,現在,議論を行っていただいている段階でございまして,その現状につきましては資料3-3の方にガイドラインの素案ということで本日御用意しておりますけれども,こういった形で現在検討いただいております。このガイドラインにつきましては中央教育審議会の大学分科会大学教育部会のクレジットということで,各大学においてこうしたポリシーを策定し,また,運用いただく際にこれを参考にしていただきながら,各大学の自主性・自律性を踏まえて,それぞれの大学教育を組織的・体系的に実施していただくというふうなことに資するようにということで,今,作成の検討を進めていただいているという状況でございます。その中には,中間まとめで御指摘いただきましたような事項についてもかなりの形で盛り込む形で現在検討いただいております。
それから3点目でございますけれども,スタッフ・ディベロップメントについてでございます。この点につきましては資料3-4にございますけれども,大学教育改革をはじめとする大学運営の充実ということを図っていくためには,教員を含めた大学職員の能力の向上ということが非常に重要であるという観点から,こうした職員の能力の向上のためのスタッフ・ディベロップメントを義務付けてはどうかという点についてでございます。この点につきましては大学設置基準において省令として規定してはどうかということで,現在,御議論いただいているという状況でございます。既に教育内容等の改善のための組織的な研修でありますファカルティ・ディベロップメントにつきましては,大学設置基準において義務付けされているということを踏まえまして,このSDにつきましても大学設置基準において位置付けてはどうかということになってございます。
【伊藤高等教育企画課高等教育政策室長】  引き続きまして,(2)にございます認証評価制度の改革について御報告申し上げます。
この認証評価制度といいますのは,大学の教育研究活動を文部科学大臣の認証を受けた第三者の評価機関が定期的に評価をする制度でございます。この認証評価制度に関しましては,今般,三つのポリシーに関する評価,そして大学の自律的な改革サイクルとしての内部質保証を重視した評価,これはどの認証評価機関においても共通して評価していただくなど,高大接続改革の指摘を踏まえた評価項目の充実,そして方法への転換ということで,現在,中央教育審議会大学分科会下の部会において御審議いただいているところでございます。詳細につきましては本日お配りしております資料3-5でございます。時間の関係上,説明は割愛させていただきます。
また,この御審議を踏まえまして,現在,資料3-6にございますとおり,各認証評価機関を大臣が認証する際の必要な細目を定める省令におきましても,ただいま申し上げましたような内部質保証に関する評価,そして三つのポリシーに関する評価,これを共通して評価していただくということをはじめとした改正案につきましても現在,パブリックコメントの準備を進めているところでございます。この認証評価制度の改革につきましても,中央教育審議会大学分科会におきましては今年度中に審議のお取りまとめをしていただくべく,議論の最終段階に来ているという状況でございます。
状況報告に関しましては以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
ただいまの事務局からの説明につきまして,御質問,御意見を頂ければと思います。中央教育審議会大学分科会大学教育部会での検討の状況の御報告ということでございましたけれども,何か御質問,御意見ありますでしょうか。佐藤委員,お願いいたします。
【佐藤委員】  細かい質問ですが,認証評価制度の改革についてということで,今,それぞれの評価機関は多分第2サイクルの中途にあると思います。第3サイクル,どのような評価基準にまとめていくかということを議論しているわけですが,27年度中の省令改正を予定しているということは,それ以降,現在進めているサイクルの評価の途中でこの項目については評価に入れていかないといけないと理解していますが,それでよろしいでしょうか。
【伊藤高等教育企画課高等教育政策室長】  御質問ありがとうございます。説明を割愛させていただいた中で十分御説明ができず,大変失礼しました。その点に関しましては資料3-6を御覧いただければと思います。現在,御指摘いただきました省令改正に関しましては今年度中の改正を目指しておりますけれども,施行に関しましては平成30年度からの施行ということを予定しておりまして,この間,今御指摘いただきましたとおり,第3サイクルに向けまして各評価機関が新しい評価基準を改訂する準備であるとか,新規基準の各大学への周知,そして各大学の自己点検・評価の準備をしていただく準備期間を設けたいと思っております。
以上です。
【安西座長】  よろしいでしょうか。
【佐藤委員】  はい。
【安西座長】  ほかにはいかがでしょうか。よろしゅうございますか。3ポリシーについての件と,それから認証評価制度の件,両方とももちろんリンクしておりますので,御報告いただいた次第でございます。

(4)「個別大学の大学入学者選抜改革」について
資料4に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【安西座長】  それでは,よろしければ,4番目に参ります。個別大学の大学入学者選抜につきまして御議論いただければと思います。
まず,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【橋田大学入試室長】  それでは,資料4に基づきまして,「個別大学の大学入学者選抜改革について(論点メモ)(案)」のポイントの部分だけ御説明させていただきます。
今後,この入学者選抜改革を促していくという観点で次のような基本的な方向に沿って検討を進めてはどうかというところで,まず一つ目でございますけれども,先ほど大学教育部会の議論の状況の紹介がありましたけれども,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーを踏まえ策定されるアドミッション・ポリシーに基づきまして,「学力の3要素」を多面的・総合的に評価していく入学者選抜への改善が必要であるということを整理させていただいております。
2.の「個別選抜改革を推進するために求められる方策」の中で,一つ目といたしまして,入学者選抜の実施に係る新たなルールについて説明させていただきます。
現行のルールにつきましては,大学関係者,高等学校関係者の協議を踏まえまして,「大学入学者選抜実施要項」を策定して,毎年度,局長通知で大学に周知しているというところでございます。今回の高大接続改革の趣旨を踏まえまして,この新たなルールについては次のような方向で検討してはどうかというところでございますけれども,まず,現状と課題の部分にございますように,現行のAO入試,推薦入試につきましては,大学によって,知識・技能,思考力・判断力・表現力の評価が十分になされてないとの指摘があるというところでございます。一方で,一般入試につきましては,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度の評価が課題であるといったような指摘もなされているというところでございます。
今後の改善の方向性といたしましては,各大学において,アドミッション・ポリシーに基づいてどのような評価方法を採用し,どのような比重を置いて評価を行うのかを決定していく必要があると。その際,全ての入学者選抜において「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するという観点での改善が求められているというところでございます。
2ページ目の改善すべき具体的事項でございますけれども,まず丸1にございますように,この現行のAO入試,推薦入試,一般入試の在り方の見直しということで,現行の要項の中ではこの三つの区分がございまして,それぞれについて定義・要件が示されているというところでございます。ただ,各区分の選抜につきましては先ほどのような課題があるという中で,この改善の方向性を踏まえまして,バランスよくきめ細かな入学者選抜を行っていくという観点で現行の区分の在り方を見直しまして,新たなルールを構築することが必要ではないか。その際,多様な入学者を受け入れるための入学者選抜方法の多元化の取組が進められるということも併せて重要というところでお示しさせていただいております。
丸2でございます。この各選抜の特性を生かしながら,「学力の3要素」を適切に把握するための取組の促進ということで,大学入学者選抜全体につきまして,先ほどのような「学力の3要素」をきちんと評価していくというところでお示しさせていただいておりますけれども,3ページ目にございますように,あわせて,高等学校時代の多様な学習活動の履歴,これを適切に評価するということで,先ほど多面的な評価検討ワーキンググループの審議まとめにございましたような調査書等の活用を促していくというところもポイントになってこようかと思っております。
その上で,現行のAO入試,推薦入試の課題の部分でございますけれども,現在,要項におきましては,AO入試では「知識・技能の修得状況に過度に重点を置いた選抜基準とせず」と。あるいは,推薦入試におきましては,「原則として学力検査を免除し」といった記載がなされております。こういった部分が学力を問わなくていいのではないかという一部誤解等々もございますので,この新たなルールにおいてはこうした記載も削除してはどうかというところで整理させていただいております。また,具体的な教科・科目の履修を前提としない。例えば,小論文,プレゼンテーション形式の検査,これは2月1日より前に実施可能であることを明確化してはどうかということでお示しさせていただいております。さらに,推薦書については,「学力の3要素」を評価するということを必須化するといったことも必要ではないかというところでございます。
続きまして,現行の一般入試の課題でございますけれども,主体性等をより適切に評価するという観点で,調査書等の資料を積極的に活用するという方策を検討すべきではないかといったようなところ。また,現状においては,大学によっては選択式問題が中心で,記述式問題を実施していない場合があることですとか,この記述式を実施する場合でも,必ずしも統合的な思考力・表現力を評価するような出題となっていないというケースも見受けられるというところでございます。そういった観点で,各大学で出題の実態に関する課題分析をしていただいたり,また,作問の改善を図りながら,例えば解答の自由度の高い記述式,小論文等の導入・充実を図るべきではないかというところで整理させていただいております。
丸3でございます。選抜の実施時期に関するルールづくりでございます。先ほど香山委員からも御指摘があった部分と関わるところでございますけれども,この新たなルールにおきましても,選抜の実施時期につきましては,高等学校への影響等を考慮しつつ,円滑な選抜が実施できるように一定の基準が必要ではないかと考えております。例えば,個別面接を含む選抜については8月から,推薦書の提出を含む選抜は11月から,各教科・科目に係る知識,思考力等を評価するテストについては2月からといったような形で,具体的な評価方法ごとに基準日を設けるといったことが考えられるかと思っております。その際に,選抜のいたずらな早期化・複雑化を招かないようにするための方策も検討することが必要ではないかと考えております。
以上の論点も含めまして,新たなルールにつきましては,本会議の最終報告で基本的な方向をお示しいただきまして,また,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の検討も見据えながら,原則として32年度から実施される入学者選抜から適用していくということを念頭に,大学関係者,高等学校関係者の協議の場において具体的な在り方を検討してはどうかというところで,その点のスケジュールを別紙1のところにお示しさせていただいております。
続きまして,4ページの(2)のところでございますけれども,この点については,大学入学前の多様な学習や活動の評価,それを踏まえた大学教育の改善を審議のまとめ等に盛り込まれているところも検討しながら進めていくといったようなこと。
(3)にございますように,個別選抜改革を推進するための支援につきましては,28年度予算案にも計上させていただいておりますけれども,効果的な財政支援を行っていくこと。また,入学者選抜の課題を分析したり,重要と考えられるテーマに関する調査研究を進めていきたいというところで整理させていただいております。
以上でございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,ただいまの事務局から説明のありました事項につきまして議論をしていただければと思います。御質問,御意見,どなたでも結構です。南風原委員,お願いいたします。
【南風原委員】  新たなルールを最終まとめに示して,その上で大学関係者の意見ということですけれども,これ,順番が逆じゃないかと思います。大学関係者の声がどれだけこの会議に反映されているか。様々な大学がある中で,私も何人かいろいろな大学の人たちの話を聞いていますけれども,1枚目にあるような改善の方向性で,全ての入学者選抜において以下のものを評価するということで,丸1,丸2,丸3とある。このようなことを見ると,全ての大学で大学に合格する者は知識・技能があって,思考力があって,主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を持っている者で,そうでない者は不合格となるというふうに思うわけですが,現実はそうではなくて,いろんな大学に聞いてみると,まず落とす人がいないと。落とすことができない。全員入れても,なお定員割れをするような現状の中で,非常に劣っている者,これを入れるかどうかというところが選抜の審議のポイントであるというようなところが少なくないです。そういった中で,どの層の大学を考えてこういうことを言っていくのかという,やはり大学がかなり多様なので,その多様性を十分踏まえたきめ細かいルールづくりというか,検討が必要ではないかということを思いました。
【安西座長】  ありがとうございました。
山極委員,お願いいたします。
【山極委員】  これは日本人向けだと思います。今,現状としては,例えば国立大学の学部生で外国人の留学生が占める割合って非常に低いのですが,それを向上させようという目標をどの大学も持っております。私立大学は,大学によっては非常にたくさんの外国人留学生を持っている。それに対してどういうような基準を設けるかということに関して,例えば高等教育局長から各大学に示される参考資料2です,この8ページにありますように,「外国人を対象とした入試」という項目がまだ非常に雑ぱくであるという気がしてならないです。例えば,外国人留学生をどういう形で受け入れるか,内数とするか,外数とするかというようなこともまだ議論の対象になるでしょうし,それをどの時期にどういうふうな入試の仕方をして受け入れるのか,これは現状ではかなりばらばらだと思います。それをこの第3期中期目標期間中に倍増するとすれば,やはり一定の基準,一定の方式というものが必要になってくると思いますけれども,その辺りは議論の対象になっているのでしょうか,少しお聞きしたいと思うのですが。
【橋田大学入試室長】  外国人を対象とする入学者選抜の取扱い,今の要項の中ではなかなかこれだけで十分なのかどうなのかというところの議論がございますので,新たなルールの検討の中では,この外国人の取扱いを含めて多様な学生の受入れの部分をどういうふうにしていくかというところも意識しながら検討は進めていきたいと考えております。
【安西座長】  片峰委員,お願いいたします。
【片峰委員】  今,国立大学を中心に,各大学多様な人材を,多様な方法,多様な入試で選抜するということに結構本気で腰を据えて取り組んでいます。そういった意味では,今回の新しいルールでそういった努力とか取組の継続性がどう担保されるのか,最大の懸念のポイントだったと思うのです。そういった意味では,今回は,様々まだ議論するポイントはありますけれども,実現性がかなり高い形で記載されているということで,基本的には国立大学はウェルカムだと思います。
だけど,最終報告に向けて是非お願いしたいのは,やはりこのルールの改訂の必要性とか意味とか,そういったものをきっちりと記載していただきたいし,今回の高大接続システム全体の改革の中で,この新ルールがどういう位置付けで,どういう意味を持つのかというポイントです。一部は,明確に「学力の3要素」をバランスよく評価するというところで今回の新しい書きぶりになっていると思いますけれども,それはそれでいい。ただ,先ほど山極委員もおっしゃいましたけど,もう少し長期的に見ますと,留学生の問題,バカロレアの問題あるいはハンディキャップを抱えた受験生の問題等々,多様化へのプレッシャーというのはもっともっと恐らく強まると思います。ところが,一方,もう一つ大きな問題は,入試が多様化すれば多様化するほど大学は忙しくなるわけです。もう夏から3月までずっと入試に関わっているという状況があるわけで,それは高等学校教育への影響の問題もありますし,大学の教育研究に対する影響という観点からも,将来的には,複雑化あるいは多様化と逆ですけど,単純化する,あるいは簡素化するという必要性も一方ではあるわけです。そういったことも含めまして,先ほど申しましたけど,このルール改訂の必要性の問題,きちんと書いていただきたいことと,もう一つ,長期的にこれは新しいルールでどこを目指すのかという点,そこにもある程度触れていただくというのがいいのではないかと思います。
【義本高等教育局審議官】  御指摘の点についてはしっかり最終報告に盛り込む方向で,特におっしゃるように学力の3要素の問題だけではなくて,新しい時代に対応したような,あるいは多様性の話も含めて,少し丁寧な書きぶりを考えさせていただきたいと存じます。
それから,片峰委員御指摘のとおり,「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と検討と相まってという書き方をしておりますけれども,今後,新しいルールが導入され,あるいは将来的には,中間まとめでも触れておりますけれども,CBTを含めて考えていけば,入試の在り方も相当変わってまいりますので,そういうふうな動きと連動させながら変えていくということは必要でありますので,その辺の段階観も含めて少し整理させていただきたいと存じます。
それから,南風原委員がお話しいただいた点でございますけれども,これは中間まとめでも御議論いただいているところでございますけれども,どういう水準でそれぞれの三つの要素を求めるかについては,大学の多様性あるいは考え方を反映した形でのアドミッション・ポリシーを作っていただきたいという形で整理いただいていますので,その範囲の中での各大学の多様性の中での検討だと理解しております。
【安西座長】  ありがとうございました。
私の方も一言申し上げられればと思いますけれども,個人的な見解でございますけれども,AO入試,推薦入試,一般入試と定義がかなりはっきり分かれていると。これを新しいルールにしていくときには,むしろ多様性というのでしょうか,それが広がっていくと。入り口のいろいろな学生が入学してくるというのは,推薦入試,AO入試,一般入試と分かれているよりも,もっと多様な学生が,いろいろなことに励んできた多様な学生が入学してくるのではないか。そうすると,問われるのはむしろ大学教育の場であろうかと。大学教育の場においてそういう多様な学生を受け入れて,それぞれが伸びていくような,そういうカリキュラム・ポリシー,あるいはもちろんディプロマ・ポリシーの下でそういうポリシーが作られていくと思いますけれども,それがやはり大学に問われていくのではないかと見ているところでございます。
ほかにはいかがでしょうか。岡本委員,お願いいたします。
【岡本委員】  山極委員の御指摘と少し矛盾することではないのですけど,入試の制度は,まず日本の高等学校,日本の高校生に対してやはり明快な答えをしておかないといけないと思います。だからそういう意味では,ここの最終報告なんかでもしも変更点であるとすれば,そこは明快に述べるべきだと思います。一方において,今の多様性の議論なんかで,例えば具体的に推薦入試をどういうふうにするかとかいうのは,やはり国立大学だったら国立大学協会の入試委員会で相当密に議論しないと決まってこない,日とかそこまでは。だから是非そういう方向でやっていただきたいですが,ただ,そのときに,最終報告で今度余りぎちぎちにしてしまうと,ここから先は山極委員と同じ内容になるのだけれども,ぎちぎちにしてしまうと今度は動きがとれなくなってしまうので,少しその辺のバランスを考えて書いていったらいいのではないかと。その一言だけです。
【安西座長】  ありがとうございました。
金子委員,お願いいたします。
【金子委員】  この資料4の(案)の性格ですけれども,一つは,今の入試の在り方について問題点を考えるという点の性格だと思うのですが,今度新しく接続テストができた場合にどういうふうにこの枠組みといいますか,このメモがつながっていくのかというのが少し読みにくい。これは,接続テストができる前の間,個別大学の選抜についてどのようにすべきだということを考えるという性格のものなのか,あるいは,さらに,接続テストができたときにはどういうふうな方向にそれを持っていくことが可能であるのかということを論ずるために書いているのかということなどを,少し性格を明らかにしていただきたいと思います。
それから,AO入試,推薦入試,一般入試という区別自体が,新しい接続テストができてくると相当変わってくると思うので,それについてもどのようにどの時点で議論するのかということも同時に教えていただきたいと思います。
もう一つ,最後ですけど,一般入試の問題点について主体性について試さないという,要するに「学力の3要素」を軸として,批判をするのでその部分が出てくるのですが,私は非常に重要だと思います。やはり教科の問題です。教科の学力の問題。今の一般入試のほとんどは2科目,あるいは1科目くらいしかテストしてない。高等学校の学習のほとんどを反映していない。ほとんどというか,高等学校で非常に局部的な学習を導いている状況は私は非常に大きな問題点だろうと思うので,それはやはり指摘することはとても重要だと思います。
以上です。
【橋田大学入試室長】  お手元の資料4の別紙1にスケジュールの方を示させていただいておりますけれども,この新しい区分の見直しの議論と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入は一体的に進められるものと捉えております。高大接続システム改革会議の場におきましては,この区分の見直しの方向性を御提示いただきまして,28年度間においてはこの区分の見直しの具体的な内容についての高等学校・大学関係者による協議を進めていただくというところでございますけれども,一方で,29年度初頭にかけては,新しいテストの実施方針も固めていく必要がございます。それと足並みをそろえる形で区分の見直しに係る予告通知させていただくということで,実際,その適用がなされる部分は32年度に実施される入学者選抜,33年度大学入学者に係る選抜というところで適用されるようにということで,そこは足並みをそろえながら検討していたいと考えております。
また,先ほど,推薦入試,AO入試,また一般入試に係る課題の部分,御指摘ございましたので,最終報告に向けてはそこの整理の仕方,データ的なところを含めて整理していきたいと思いますし,今後,具体的な要項上の取扱いを見直す際にも,そこの課題点を押さえた上でここの整理を進めていきたいと考えております。
【安西座長】  ありがとうございました。
佐野委員,お願いいたします。
【佐野委員】  ありがとうございます。実は先ほどの評価のところでも今までずっと気になっていたのですけど,総合的評価って,何か総合的というのが私自身は分かったようで分からないという,いわゆる満遍なくということなのか,様々な多角的な評価点であってでこぼこがあるけど,それを全部足したものなのかと。そういう意味で,総合的という言葉が入ってくることが逆に分かりづらくなっているのではないかと。そういう意味では,多面的だとか多角的というような言葉だけの方が分かりやすくて,本日もこの中に出てきた,その中でどこに比重を我が大学は置くのだというようなところをアドミッション・ポリシーで明確に出すというところは,非常に分かりやすい表し方だろうと感じます。
【安西座長】  それはよろしいでしょうか。
【橋田大学入試室長】  この評価手法についてはいろいろな評価手法がございますけれども,様々な評価手法を「学力の3要素」に照らして組み合わせていくと。また,それを各大学のアドミッション・ポリシーに基づく比重に基づいて判断するというところでございますけれども,最終的にはそれをきちんとトータルに見て判断していただくということで,ここのところは多面的・総合的というところできちんと大学で見ていただきたいというところで,従来よりこの点は使用させていただいておりますし,中間まとめ等でもそういう形で整理させていただいているところでございます。
【安西座長】  ありがとうございました。
佐藤委員,お願いいたします。
【佐藤委員】  つまらない話ですが,何回も申し上げていて,本日,この参考資料2で局長からの通知にも出ているのですが,いつも,AO入試,アドミッション・オフィス入試というのが言葉として本当にこれなのという気持ちはあるのです。例えば,外国の大学人から見れば,本当はアドミッション・オフィスは一般も推薦も全部やるのがアドミッションですから,AO入試だけを取り上げて違うように言うというのは,よく分からないのではないでしょうか。それで,大分前からそういう議論はあるはずですが,なかなか先に進まないので,是非今度,新しい入学者選抜改革のときに一度考えてみたらどうかと思うのです。特にアドミッション・ポリシーと言って入学者選抜のポリシーをはっきり決めるということを要求しているのでしたら,そこでアドミッションと言って,アドミッション・オフィス(AO)と言うのは何かよく分からないような感じはしています。ただ単なるコメントで,返事は要りません。
【安西座長】  ありがとうございました。
ほかにはよろしいでしょうか。岡本委員,お願いいたします。
【岡本委員】  すみません,佐野委員の御意見ですけど,総合的という言葉,これ,確かに分かりにくいですけれども,多面的と総合的というのは私の感覚でいうと違っていて,評価なんかするときに,評価って教育の質保証とかやるときに,大体,多面的というのはいろいろな方向から見るということですけど,総合的に見るというのはどんなときに使うかというと,例えば,平たく言うと,いいところがあったら取り上げてあげようということです。つまり,多面的というと,この方向で一次元的に順番付けるのではなくて,いいところがあったら取り上げてあげることができるようにしておこうという意味で使うので,私はそういう意味ではあんまり違和感がないです。
【佐野委員】  私は,それも多角的評価だと思います。この人は社会性ないけど,物理学の仮説の立て方は一流だとかって,それも多面とか多角的な評価だろうというふうに思うのです。
【岡本委員】  いや,言葉の問題ですからいいですけど,ただ,個人に対してはそれでいいですけど,大学に対して言うときには分からないわけです。要するにそういうことです。
【佐野委員】  なるほど。
【岡本委員】  こっちも見る,こっちも見る,こっちも見るという,単にそれだけになります。
【安西座長】  ありがとうございました。
それでは,よろしければこの辺りまでにさせていただければと思います。
本日も大変貴重な御意見を頂きました。改めて感謝を申し上げたいと思います。
本日頂いた御意見等を踏まえまして,次回は最終報告に向けて審議を深めていければと思っております。委員の皆様,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,その他の事項につきまして事務局から説明をお願いします。
【新田主任大学改革官】  本日,御議論いただきましてありがとうございました。
次回日程につきましては,調整の上,追って連絡をさせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【安西座長】  それでは,会議はここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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