第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会(第6回) 議事録

1.日時

平成27年2月16日(月曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 関係者からのヒアリング
  2. 討議
  3. その他

4.出席者

委員

須藤座長、有川座長代理、上山委員、海部委員、北山委員、熊平委員、小林委員、鈴木委員、橋本委員、日比谷委員、山本廣基委員、山本眞樹夫委員

文部科学省

德久総括審議官、岩瀬政策評価審議官、吉田高等教育局長、義本大臣官房審議官(高等教育担当)、常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興担当)、豊岡国立大学法人支援課長、木村学術機関課長、鈴木学術研究助成課長、吉田国立大学法人支援課企画官、瀬戸学術機関課学術研究調整官、手島大学病院支援室長

オブザーバー

稲永学長(ものつくり大学)

5.議事録

【須藤座長】  所定の時刻となりましたので、第6回第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙中にもかかわらず本検討会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
  本日は、大学共同利用機関法人の評価の在り方について御意見をお聞きすることとし、国立大学法人評価委員会大学共同利用機関法人分科会長でいらっしゃいます、ものつくり大学長の稲永忍先生にお越しいただいております。
  まず事務局から大学共同利用機関法人についての概要の説明を頂き、続きまして稲永先生に御発表いただいた上で、大学共同利用機関法人の運営費交付金の在り方について討議を行い、その後、予算配分に反映するための評価等について討論を行いたいと思います。
  それでは、議題に入りたいと思います。
  まず早速ですが、事務局から議題に関連して、大学共同利用機関法人等の概要につきまして資料の説明をお願いいたします。
【事務局】  それでは、資料1に基づきまして御説明を申し上げます。
  目次を御覧いただければと思います。これまで国立大学法人全体につきまして御議論いただいておりましたが、本日、大学共同利用機関法人の運営費交付金の在り方等について御議論いただくということから、まず、その概要について御説明させていただきます。最後の丸の運営費交付金の見直しの基本的方向性につきましては、後ほど御説明させていただきます。
  それでは2ページを御覧いただきたいと思いますが、国立大学法人法に基づいて設置される大学共同利用機関法人は、人文社会科学から自然科学の幅広い分野におきまして、人間文化研究機構、自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構及び情報・システム研究機構、この4法人が置かれておるところでございまして、その下に17の大学共同利用機関が設置されているというところでございます。
  また、国立大学法人の教育研究の基本組織といたしまして、附置研究所・研究センター等の一部を共同利用・共同研究拠点といたしまして文部科学大臣認定をしているというところでございます。
  これにつきまして、3ページ目にありますとおり、これら共同利用・共同研究体制といたしまして、個々の大学では整備できない大規模な施設・設備や大量のデータ、資料等を全国の研究者で共同利用いたしまして、国内外の大学の枠を超えた共同研究を促進するシステムとして機能しているところでございまして、個々の大学の枠を超えた研究力の強化を図っておりまして、大型プロジェクトも含めて運営費交付金で支援しているというところでございます。
  これらの内容につきましては、4ページのところでございます。運営費交付金等によります支援の状況は記載のとおりでございますが、大学共同利用機関法人につきましては人件費あるいは共同利用・共同研究に係る経費等の一般経費のほか、大型プロジェクトの経費等を支援するとともに、共同利用・共同研究拠点につきましても共同利用・共同研究のための基盤的な経費等を支援しているというところでございます。
  5ページ目のところでございます。大学共同利用機関法人の基本的な性格につきましては、大学における学術研究の発展に資するために設置される大学の共同利用の研究所といたしまして、国立大学と等質の学術研究を推進しているということから、研究者の自主性や自立性を尊重した制度設計がなされているところでございまして、組織運営につきましても基本的には国立大学と同じということになってございまして、研究者コミュニティの要望を踏まえた教育研究の推進を図る観点からは、経営協議会のみならず教育研究評議会におきましても外部有識者を加えた開かれた運営の仕組みとなっているところの違いはあるところでございます。
  6ページ目のところでございます。大学共同利用機関につきましては、日本学術会議の勧告といった研究者コミュニティの要望も踏まえまして、国立大学の研究所の改組等によって設置されたという経緯もございまして、各機関には教授会はございませんで外部の研究者がおよそ半数を占める運営会議が設置をされておりまして、人事を含めた運営全般に関与しているということで、研究者コミュニティ全体にとって最適な仕組みがビルトインされているところでございます。
  具体的な取組につきましては7ページ、8ページのところに記載をしておるところでございますが、世界最高水準の大型の加速器や光学赤外線望遠鏡などの大規模な設備、あるいは大量のデータといった研究資源を全国の大学の研究者に無償で提供するとともに、研究課題を公募いたしまして、全国の研究者との共同研究を実施しているところでございます。特に大学との様々な連携事業を通じまして、大学全体の研究活動を底上げし、共に発展する取組という事業も進めておるところでございます。
  また、基本的に当該分野の唯一のナショナルセンターといたしまして、国際学術協定等によりまして世界への窓口として機能するとともに、優れた研究環境を生かして総合研究大学院大学の専攻を設置するなど、大学院教育に積極的に貢献をしているところでございます。
  こういった大学共同利用機関の在り方につきましては、9ページのところでございますが、科学技術・学術審議会の研究環境基盤部会におきまして、これは国立大学改革プランの1年ほど前になりますが、報告をおまとめいただきまして、共同利用・共同研究を主たる目的とし、研究と教育を一体的に取り組んでいるということを自らの強みとして位置付けて特色化・個性化を図っていくことが必要であり、今後の機能強化に向けたビジョンを自ら具体化していくことが必要という御提言を頂いているところでございます。
  これにつきましては10ページにありますとおり、昨年の3月になりますが、各機構がミッションの再定義を行いまして、現在これらを踏まえた各法人の強み・特色を生かした機能強化に取り組んでいるというところでございます。
  また、11ページから13ページにかけてでございます。こちらは共同利用・共同研究拠点についてでございます。国立大学法人には特定の研究分野の研究を継続的に進める附置研究所等が設置されておるところでございますが、法人化後は各大学の判断で自由に設置改廃できるようになっておりまして、第2期中期目標期間におきましては、このうち個々の大学の枠を超えて設備、資料・データ等の共同利用や共同研究を行う当該分野の中核的な研究施設を共同利用・共同研究拠点といたしまして文部科学大臣が認定し、学部・研究科と並んで教育研究上の基本組織として中期目標別表に位置付けておるところでございます。
  こうした全国共同利用型の研究所の仕組みは平成20年に国公私立を通じた制度として導入してございまして、現在、全国で46の大学、95の拠点が認定されておりまして、我が国の学術研究の基盤強化ということに貢献しているところでございます。
  これらの共同利用・共同研究体制の強化に向けて、14ページになりますが、先日、科学技術・学術審議会の研究環境基盤部会の方から提言がまとめられたところでございます。各機関が意義やミッションの確認を行った上で、大学改革の流れを踏まえましてIR機能の強化、トップマネジメント強化といった自己改革を進める。さらに産学連携のネットワークの強化でございますとか、クロスアポイントメント制度の活用等による人事制度の改革などに取り組むこととされておるところでございます。
  特に運営費交付金に関しましては、多様な観点からの財政支援といたしまして、共同利用・共同研究体制の形成強化のための必要な経費を確実に措置するとともに各法人の機能強化に資する取組と評価結果に応じためり張りある支援を行うということが必要と御提言を頂いておるところでございます。
  16ページのところにつきましては、運営体制を図示したものでございます。大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点とも研究者コミュニティに存立基盤を置く運営体制がとられておるところでございますが、大学共同利用機関が大学を飛び出して直接研究者コミュニティによる運営が行われているものに対しまして、共同利用・共同研究拠点につきましては大学の中に置かれ、当該大学の強み・特色を研究面で強化するという役割も担っておるところでございます。
  大学共同利用機関の研究水準に関しましては、18ページにありますとおり、被引用回数の多いトップ10%の論文数の割合などを見ましても、国立大学など国内の平均より高い水準にございまして、全世界の水準も上回っておるところでございます。
  また、大学共同利用機関の主要な役割として人材育成への貢献という点、大きい点がございますが、それにつきましては20ページから23ページになります。大学と協定を結んで学生の研究指導を行う連携大学院や総合研究大学院大学の基盤機関として専攻を設けて大学院教育に寄与しているところでございまして、総合研究大学院大学の学生として440名を受け入れてございますし、多くの卒業生が研究者などの道に進むということになってございますし、総合研究大学院大学以外からも300名の学生を受け入れている状況になっておるところでございます。
  このほか、24ページ目でございますが、民間企業を対象とした研究者、技術者養成の講座の開設、あるいは大学の学部学生を対象とした研修、研究実習を行うサマースクールの開催とともに、海外の大学や研究機関と連携をいたしまして外国人学生の受入れ、海外の研究機関への派遣といったことも行っているところでございます。
  研究者の受入れといたしましても、こちらは25ページになっておるところでございますが、86の国立大学法人全てから研究者を受け入れることとしておりまして、国公私立を問わず幅広く研究者を受け入れて共同研究を行うと同時に研究者育成にも貢献をしておるところでございます。
  また人材育成のハブ機能あるいは人材流動性を促進する機能といたしまして、分子科学研究所の事例を26ページにお示しをしておるところでございます。准教授、助教の内部昇格を制限することで、現在まで約500人の研究者を大学等に輩出しておるところでございまして、全国規模での大きな人材の流れを作り出す原動力ということになっておるところでございます。
  また28ページ目から31ページ目までは、各機関の具体的な研究成果を記載しておるところでございます。お時間の都合もありまして全て御紹介できませんが、例えば炭素14年代測定を考古資料に導入することによって、弥生時代が通説よりも500年早いことを明らかにして、教科書の記述も反映されたような異分野融合の成果ということや、あるいは世界最高水準の衝突性能を持つ大型加速器を用いて、物質と反物質の性質の違いを実験で明らかにし、2008年の小林・益川両博士のノーベル物理学賞の受賞に貢献した高エネルギー加速器研究機構の事例といったことなど、優れた研究成果を生み出しておるところでございます。
  また、大型プロジェクトを推進する上で数千社にも及ぶ地域の中堅企業等とも連携も図っておるところでございまして、その過程で新たな技術開発に応用されるなど産業界にも貢献をしているというところでございます。
  さらには、例えば大学や研究機関、産業界とも連携し、自治体の総合特区において研究拠点を形成し、地域の産業化と人材育成を一体的に推進するなど、地域活性化にも寄与している事例もあるところでございます。
  共同利用・共同研究体制の下で進められます学術研究の大型プロジェクトについてでございますが、こちらにつきましては33から35ページにかけてでございます。世界の学術研究を先導する画期的な成果を上げる一方で、長期にわたって多額の投資を必要とするということから、透明性の高い評価の下で戦略的・計画的に推進していくことが必要となっております。このため、日本学術会議や全分野の研究者コミュニティの意見を取りまとめて作成いたしました大型研究計画のマスタープランを踏まえまして、科学技術・学術審議会の作業部会において優先度を明らかにする観点から評価したロードマップを作成し、事前評価を行った上で大規模学術フロンティア促進事業として予算化をしているところでございます。
27年度は800以上の機関、200万人の研究者、学生に活用されております学術情報ネットワークのSINET、これを本事業に位置付けまして、高度化を図るなど、大学共同利用機関等が実施主体となります10事業を推進しているところでございます。
  36ページ目以降の運営費交付金の見直しの基本的方向性については、後ほど御説明させていただきたいと思います。
  以上でございます。
【須藤座長】  どうもありがとうございました。ただいまの説明に対する御質問を含めまして後ほど時間を十分とってありますので、この場は引き続きまして稲永様の御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【稲永学長】  ものつくり大学の稲永です。今日はお招きいただき、ありがとうございます。
  私は現在、国立大学法人評価委員会大学共同利用機関法人分科会の会長の任を仰せつかっています。過去を振り返るのは余り好きではないのですが、私は、表紙に示すように、大学共同利用機関にはこれまで一度も職を得たことはありません。それ以外はいろいろなところを、落ち着きがないものですから、転々としています。本日は、こうした経験からみた、共同利用・共同研究体制の重要性について考えを述べたいと思います。
  まず1枚目のシートを御覧ください。視点として一番大事なのは、我が国では今後、少子高齢化が進み、財政状態も非常に厳しくなっていく中で、どのようにして学術研究の分野が世界に打ち勝っていくかということだと思います。それには、ここに示してある大学共同利用機関法人と国公私立大学の共同利用・共同研究拠点から成る共同利用・共同研究体制の仕組みが非常に重要だと思います。
  この体制の大きな役割としては、1番目には大型研究設備などの、我が国の学術研究基盤の構築・運営を効果的・効率的に推進する機能で、これは先ほど事務局からも御紹介ありましたように、我が国の研究システムの仕組みや、個々の大学の強みや特色となる研究力の向上に寄与しています。
  例えば、私がかつて勤めていた共同利用・共同研究拠点の鳥取大学乾燥地研究センターには特色ある研究設備が数多くあり、広く共同研究に用いられています。このセンターは、もともとは海岸砂丘地からの飛砂が近隣の畑や民家、道路を覆い尽くしてしまう問題の解決に当たることから出発しました。鳥取は乾燥地ではないのですが、砂という特質から見ると、世界の乾燥地で大きな問題となっている砂漠化に関係するところが多くあります。そこで世界に出て行き、砂漠化問題に対して日本としてどのようなことができるか考えつつ、研究に取り組んでいるところです。その活動は鳥取大学の特色化や我が国の国際貢献に寄与しています。ほかの共同利用・共同研究拠点についても、それぞれの歴史を持っており、地方区から全国区・世界区へと活動を広げています。大学共同利用機関法人はまさしく世界区でトップレベルの競争をしているところです。我が国の研究人材や研究資金には限りがありますので、それらをどう効率的に使うかということが重要です。学術研究の推進にとっては、共同利用・共同研究体制に研究資金を重点的に配分して、個々の国公私立大学とウイン・ウインの関係を築くことが効率的・効果的ではないかと思っています。共同利用・共同研究体制の2番目の役割として、国内外との連携構築があります。私の経験では、大学で講座の先生が退職等でいなくなると、その先生が集めていた貴重な資料が散逸し、海外との人的なネットワークが断絶するということがありました。大変もったいないと思います。この点、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点は、研究により重点を置いていますので、世界への窓口としての役割や、国内外との連携構築に継続して当たれます。
  共同利用・共同研究体制の3番目の役割ですが、新たな学問領域の創成をするということがあります。そもそも大学共同利用機関等は、新たな学問領域の創出や特定研究分野の推進に当たるため、大学や学部という枠からはみ出てきたものだと思います。より壁の低いところへ研究者が集まり、それが組織化されたものともいえます。ですから今後も、分野間の壁が低い大学共同利用機関法人等が新たな学問分野の創出をリードできると期待しています。
  次に3ページを御覧ください。ここからは特に大学共同利用機関法人に焦点を当てます。ここに示す4つの大学共同利用機関法人では、それらを構成する17全ての研究機関で共同利用・共同研究を推進しています。大型施設・設備を用いた共同利用・共同研究、ビッグデータ等を用いた共同利用・共同研究、それから学術研究の基本を国内外で支える学術情報のネットワーク基盤の整備などです。
  学術情報のネットワーク、SINETについては、その詳細が4ページに示してあります。SINETは国公私立大学の研究環境の共通基盤を提供するとともに、教育についてもMOOCなどに活用されています。情報・システム研究機構が作成した資料によりますと、SINETは全国で800以上の大学・研究機関、200万人以上の方々が利用する情報通信ネットワークとなっています。国際競争力のある研究の促進、それから大学教育の高度化に大きな貢献をしています。
  次の5ページを御覧ください。冒頭にも触れましたように、大型の施設や設備は高価なため、各大学に設置できるものではありません。そのため、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点に、そうした施設設備等を整備し、それをオールジャパンで利用するという体制ができています。
  その1例として、国立天文台の大型光学赤外線望遠鏡「すばる」を掲げてあります。ハワイにございます。「すばる」が、東京大学、東北大学、広島大学の独自の装置を搭載するなどして、それぞれの大学の機能強化に貢献をしているという例です。
  次の6ページを御覧ください。これについても先ほど事務局から御紹介いただいたところですが、大学共同利用機関の利用者は非常に多い、という特徴を指摘できます。大学共同利用機関法人が別途作成した資料の1ページ目ですが、利用機関別に見ますと、国立大学法人と大学共同利用機関法人を合わせて105機関、公立大学が54、私立大学が324、その他の公的な研究機関等が556、外国の機関が822とかなりの数に上っています。また、学術研究の大型のプロジェクトについて見ますと、外国人の共同研究者の参加割合が46%と非常に高いのが特色で、国際的にも共同利用・共同研究が活発に行われています。
  機構別に海外籍の研究者がどれだけ共同利用・共同研究に参加しているかをみますと、ヨーロッパ、アメリカが多いですが、中国、韓国、インドなども目につきます。
  次の7ページを御覧ください。大学共同利用機関を通じた国際化、世界トップレベルの研究の世界への窓口に関する資料です。大学共同利用機関法人4法人を構成する17機関が、非常に多くの機関、しかも世界のトップクラスと協定を結び、実際にその協定に基づいた共同利用・共同研究を推進していることが分かります。研究にも継続ということが非常に大事です。大学等では協定を結んでいても、ほとんど活動していない例も見られますが、大学共同利用機関の場合は、大部分の協定が活動中といえると思います。
  8ページを御覧ください。この先、グローバル化が一層求められていますが、大学共同利用機関法人においては、外国人研究教育職員数、赤字で下に書いてありますが、7%です。 参考までに国公私立の外国人の教員は4%台です。また、大学共同利用機関法人の外国人留学生割合は30%台、外国人共同利用研究者は18%台というふうに、非常に外国人の受入れを行っています。
  次の9ページを御覧ください。これは、大学共同利用機関法人4法人が、組織の中にとどまっておらず、積極的に国立大学、公立大学、私立大学等と連携して研究の推進を図っている例を示したものです。例えば人間文化研究機構では地域研究の推進を図っていますが、連携大学には、赤字で示した東大や京大などの大学があります。自然科学研究機構においても光・赤外線天文学教育研究拠点のネットワークを構築し、赤字で示した北大や東大などの大学と連携して事業を推進しています。高エネルギー加速器研究機構においても同じですし、情報・システム研究機構についても多くの大学等とNetwork Of Excellenceを形成して、リスク科学、次世代シミュレーション、調査科学等の研究を行っています。それから、日本が世界中心の第3極として取り組んでいる事業例として、この情報・システム研究機構のDDBJ、すなわち日本DNAデータバンク事業を上げることができます。欧州、アメリカともう一つ、この日本に世界のDNAデータバンクが設立されて、アジアを中心とした利用に供されているということです。
  それから、共同利用・共同研究体制の3番目の役割である新たな学問分野の創出についての例が、10ページに、大学共同利用機関としては1つ掲げてあります。自然科学研究機構本部が、その構成する大学共同利用機関を束ねて、「宇宙における生命(アストロバイオロジー)」という研究分野を立ち上げています。宇宙物理学と生命科学の知見を基に、世界の最先端をリードする新分野の研究を推進しています。また、大学附置の研究所等でも、そうした動きが強まっています。
  11ページを御覧ください。大学共同利用機関や、国公私立大学の共同利用・共同研究拠点を中核とする共同利用・共同研究体制による研究については、機関や大学の枠にとどまらない、特有の評価システムが構築されています。国際協力を通じた大型プロジェクト等として推進する世界トップレベル級、あるいは個別の大学の枠を越えた研究組織間のネットワーク連携として推進するオールジャパン級の取組であるか、という観点に基づく評価が非常に重要であると位置付けられており、12ページに示すような外部評価が絶えず行われています。その特徴は、研究面、運営面に対する外国人を含む評価委員からの多様かつ厳しい意見を組織運営や事業推進の改善に反映させるシステムを充実させていることにあります。
  最後の13ページを御覧ください。以上御紹介しましたように、我が国の学術研究の中核的システムとしての共同利用・共同研究体制は、個々の国公私立大学の機能強化と相補的であり、合理的かつ効率的・効果的なシステムです。特に、第3期に向けては、世界トップレベルあるいはオールジャパンの観点からの研究評価軸を有する本体制は、大学の枠を越えた、国立大学全体を俯瞰(ふかん)する合理的な評価の仕組みを国立大学全体に誘導するものと考えられます。したがって、第3期においては共同利用・共同研究体制の財政面を含めた、一層の充実・強化が必要だと思います。なお当然ことですが、共同利用・共同研究拠点や大学共同利用機関については一層厳格な評価を行い、その機能を十分発揮していないところについては場合によっては退場いただくというような議論も先の研究環境基盤部会で行われたことを申し添えます。
  以上をもって私の共同利用・共同研究体制の充実・強化に向けての説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【須藤座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、ただいまの御説明と関連すると思いますけれども、大学共同利用機関の一つである国立天文台の運営に当たられておりました海部委員から、補足を含めて御発言等をお願いいたします。
【海部委員】  ありがとうございます。既に事務局と稲永先生から詳細な御説明がありました。私としては付け加えることはほとんどないですが、机上資料3の1枚物としてまとめておいたものを御紹介したいと思います。
  今までの御説明とかぶるところがもちろんあるわけですが、まず第1に、大学共同利用機関が果たしている基本的な役割として、私は四つだけ、ここに挙げさせていただいている。大学共同利用機関というものは、実は非常に知られていないのです。国立天文台とか高エネルギー加速器研究所というと、皆さん御存じですが、「大学共同利用機関?えっ、何それ」と。実は大学においてすら、なかなか認知されていないというのは非常に大きな問題と思います。これは我々の努力不足もありますけれども、是非ここでは、その審議を頂く上で四つは押さえていただきたいなと思うことを、ここに書きました。
  第1に、これは既に言われているように、個々の大学に属さない「大学の共同利用の研究所」と明確に規定されているのは、これは我が国独特のものなのです。ほかの国には例がありません。なぜこういうものが生まれたかというと、そもそもは湯川さん、朝永さんのノーベル賞ですね。湯川さんのノーベル賞を基にして京都大学に作られました基礎科学研究所を生み出した共同利用の精神がずっと発展してきたものです。大学共同利用機関は、それを更に制度化するという形で実現したものであります。コミュニティあるいは大学の共同の運営で作るものであるという大学共同利用機関の規定が生まれたわけです。それが第1です。
  それから第2に、各研究分野の中核として国際的先端研究の構築と大学等への全国的支援を効率的に実現したということです。まさに稲永先生に御説明いただきましたが、これがなければ、戦後の遅れてしまった日本の基礎科学分野が現在、世界でここまで大きな役割を果たすまでになったということは恐らくあり得ないと思います。ですから、この制度自体、あるいはこのシステムは、非常に日本にとって大きな役割を果たしてきたということを申し上げたい。
  第3に、新しい分野の構築・育成への大きな貢献。これも稲永先生がおっしゃいましたが、例えば大型計画や国際プロジェクト、そういうものを通して国際的に活躍する若手が非常にたくさん育成されています。もちろん大学院生の流動性。新しい研究環境を求めて全国から大学院生が集まると、そういう環境になっているということだと思います。ただ、こういう特性も、例えばヨーロッパなどでは、現在EU単位での大型計画の検討、実施が進んでいるのです。そういうことと比べると、安閑としては決していられない状況もあるということを申し上げておきたいと思います。
  というわけで、3番と4番を間違えました。3番は分野の話でした。4番の話をしてしまいました。新しい分野の育成につきましては、もちろんそういうことです。
  例えば、一つの例は既に挙がっておりますが、国文学研究資料館では、日本語典籍のデータベース化という大規模研究を始めておられます。これは人文系としては、恐らく日本で初めての大型研究と位置付けられておりまして、大変期待しています。つまり、こういうことは、ある個々の大学や個々の研究所の視野に閉じこもっていては決してできない。日本全体のインフラを、学問あるいは将来のためのインフラを整備していくと、そういう視点について大学共同利用機関には責任も課せられているということであります。
  それで、それに関連して、2の運営費交付金の考え方に関して、これからの議論が進むわけですから、十分に私の考えが固まっているわけでは決してないのですが、今申し上げたような、いわゆる全国的に学術研究を発展させるという視点を、是非とも今後の運営費交付金の配分、あるいはその基礎となる評価基準に反映していただきたいということであります。
  マル1ですけれども、一つには、運営費交付金といえども、運営費交付金の中で大学との計画的連携とか先進的装置の開発導入など新しい分野形成等に大きな役割を果たしていくことに十分に配慮していただきたい。それがなくなるようなことにはならないだろうとは思いますけれども、その機能を更に今後強化しなければいけないのだということを是非配慮していただきたい。これが一つのポイントです。
  第2のポイントは、これが主でありますけれども、当該分野における全国的な発展への寄与、あるいは共同利用の実質的な効果、大学との連携強化、他研究機関との連携等についての十分な評価基準を設定する。具体的には、これは後でもまた事務局からも御説明があるようですけれども。例えば共同利用に関する評価のためのデータ構築が重要だと私は思っております。大学との連携についてのデータをしっかりと作っていく、あるいは大型計画の実施を含めた当該分野において果たしている全体的な役割をどう評価するかということですね。こういうことをしっかり評価しなければいけない。
  先ほどありましたように、大学共同利用機関や主な中核的機関の拠点では、外国人を含めた、大体3日から4日かけて、じっくりオンサイトで評価をしてもらうというピアレビュー評価というのが、普通なのです。それをなくしては、我々は成り立たない。お互いにこれについて世界中統合、一緒にしているわけです。私も今三つ、そういう委員会の委員長をしています。
  研究に関しては、そういう評価が本当の評価だと我々は思っている。ですから、そういうものをどう評価に取り入れるかという視点も重要だと思います。ただ単に表面的な数字だけで評価をするというのは非常に危険です。その辺は是非今後お考えいただきたい点です。
  ということで、大学に設置される共同利用・共同研究拠点に関する評価軸と併せて、大学共同利用機関についても同様に、現行の法人評価の評価項目も参照しながら適切な具体案の検討を行ってほしいということが書かれてございます。
  そして最後に、私は、これは大事なポイントと思いますが、評価をする場合に大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点だけをそういう視点で評価しているのでは、やはり極めて不十分で、そういう貢献を受ける側、それによってメリットを受ける側の大学自体が共同利用にどのように参画しているのかという視点も非常に大事ではないか。それがないと、また「大学共同利用機関とは何だ」という話になるわけです。私は現状そうだろうと思っているのです。ですから、国立大学自体も、もっと全国的な視野を持って共同利用に関心を持ち参画し、あるいは推進するという視点を持ってほしい。そうした意味でマル3を加えてはどうかということを申し上げたいと思います。
  以上でございます。どうもありがとうございました。
【須藤座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、先ほど資料1が途中でしたので、今の御説明を踏まえまして、引き続き資料1の説明をお願いしたいと思います。事務局からお願いいたします。
【事務局】  それでは運営費交付金の見直しの方向性についてということで、資料1に戻って御説明をさせていただきたいと思います。36ページからのところでございます。
  さらに1枚めくっていただきまして37ページ目にありますとおり、第3期に向けた大学共同利用機関法人の運営費交付金の見直しの基本的な方向性についてということでございます。基本的な枠組みにつきましては、国立大学法人と同様の方向性で検討ということでございますが、具体的な配分の仕組みに当たりましては、大学共同利用機関法人には、例えば病院収入、授業料収入といったものがなく運営費交付金を主な収入源とする財政構造の違いがあるといったことや、共同利用・共同研究を行う大規模な設備等を安定的、継続的に運営する必要があるといったこと、そういった大学共同利用機関法人の特性にも配慮しながら、具体的な仕組みについては今後更に検討するということでございます。
  まず、配分の仕組みといたしましては、現行の大学共同利用機関法人も対象となっております大学改革促進係数、こちらを改めまして機能強化や政策課題に応じた重点配分を行うための係数Aと機構長のリーダーシップにより法人の下に置かれた各機関の枠を超えた自律的な資源配分を促進するための係数Bを設けるということとしてございます。基本的な考え方につきましては、国立大学法人と同様でございます。
  38ページのところでございますが、重点支援の枠組みといたしまして、オールジャパンさらには国際的な研究動向を見据えて国立大学全体を俯瞰(ふかん)した研究力の向上に資する取組を推進するという大学共同利用機関に、国立大学全体の機能強化の観点を取り入れた重点支援を行う枠組みを構築するものでございます。これは国立大学法人の重点支援の3つの枠組みの目指す方向とも合致するものといたしまして、共同利用・共同研究体制による国立大学全体を俯瞰(ふかん)するシステム強化を目指す大学共同利用機関法人を重点支援するための枠組みを別途設けるもので、評価の観点、あるいはその指標といたしましても、国立大学全体の先導的なモデルとなる研究システムの貢献といった観点や、国立大学からの受入れ、研究者、大学院生数といった国立大学への貢献度、国際共著論文などの当該分野における貢献度といった指標を現時点で想定をしているところでございます。
  39ページのところでございます。これも国立大学法人と同様でございますが、機構長の裁量経費を新設いたしまして、機構ごとに予算配分をすることで、機構長がリーダーシップを発揮しながら教育研究組織や機構内の資源配分の見直しを不断に行う仕組みを導入しようということでございます。
  最後の40ページ目も国立大学法人と同様となっておりますが、評価と配分への反映の方法につきましては、機能強化の方向性に応じた重点支援は年度ごと、ないし一部複数年度ごとに評価をいたしまして予算に反映をするということでありまして、また機構長の裁量による経費につきましては、6年間の中期目標期間全体の機構のビジョンや取組状況を反映し、期の途中で中間評価を行うことも含め検討ではございますが、評価結果を予算に反映をさせていくこととしているところでございます。具体的な評価体制につきましては引き続き検討ということとしてございます。
  以上でございます。
【須藤座長】  ありがとうございました。
  それでは、ただいまの事務局からの提起も踏まえながら、大学共同利用機関法人の運営費交付金の見直し、あるいは基本的な方向性につきまして、委員の皆様から御質問、御意見を頂きたいと思います。北山委員、お願いします。
【北山委員】  先ほど、大学共同利用機関法人については、授業料収入がないといった理由から、収入の大部分を運営費交付金が占めているという御説明がありました。国立大学においては、収入における運営費交付金の割合は、86の法人で随分と異なります。大学共同利用機関法人は4つですが、それぞれ収入に占める運営費交付金や、共同研究等による収入の割合はどの程度なのか、また、支出に占める固定費のウエイトがどれくらいなのか。こうした点について、国立大学と比較してどのようなイメージか教えていただけますか。
【須藤座長】  事務局の方で分かりますか。
【事務局】  全体の収入につきましては、運営費交付金が805億円、補助金も入れまして866億円となってございます。これは27年度の予算でございますが、雑収入につきましては8億円になってございまして、そういう意味で大部分が運営費交付金収入によっているという状況でございます。これは、国立大学と比べますと、授業料収入が、90法人全体でございますが、3,000億円以上あったり、あるいは附属病院収入が9,000億以上あったりということに比べると、やはり運営費交付金の占める割合が非常に高くなるという状況でございます。
【須藤座長】  4機構とも同じような傾向でよろしいですね。
【事務局】  そのとおりでございます。
【須藤座長】  はい。北山委員、よろしいでしょうか。
【北山委員】  つまり、科研費のような外部資金は少なく、収入の大半が運営費交付金だということでしょうか。
【事務局】  失礼いたしました。今、手元にデータはございませんが、当然ながら競争的資金、科研費も含めた収入でございます。また民間企業からの共同研究、あるいは受託研究等の実施収入、これも当然ございます。こちらは雑収入と別でございます。
【須藤座長】  その比率というのは分からないですか。
【橋本委員】  研究者個人に入るか、研究組織に入るかの違いです。今、組織に入る経費のことを言われていて、科研費というのは個人に入っている研究費です。
【須藤座長】  個人ですね。はい。
【橋本委員】  別サイドなので、同じには議論できない。
【山本(廣)委員】  いやいや、個人といったって機関経費ですから。
【橋本委員】  もちろん、そうですけど。
【山本(廣)委員】  運営費交付金に対して、外部資金としてどれぐらいあるかということ。そういうことを今、お聞きしておられると思います。
【須藤座長】  そうですね。トータルで結果としてどれぐらい入っているかというデータは、今お持ちではないですか。
【事務局】  一つの目安といたしまして、受託研究につきまして、民間からの収入につきまして45億円、46億円弱と、共同研究の受入れとして10億円というような収入は、機関としても受け入れているところでございます。
【事務局】  国立大学の財政構造という観点で、機関として受け止めている収入と、その中での運営費交付金の割合、それから科研費のように個人が取得をしているものがどういう形になっているかということを整理して、改めてお示しいたします。
【須藤座長】  そうですね。それが国立大学法人とこの機構で差があるのか、ないのかという御質問だと思いますので。
【事務局】  質問の趣旨は了解いたしました。
【須藤座長】  では、また分かりましたらお願いいたします。
  ほかに。では、橋本委員、お願いします。
【橋本委員】  最初に個人的なことで断っておきますと、私自身、大学共同利用研究機関である岡崎の分子科学研究所に10年弱ずっとおりました。それから大学の附置研究所も10年弱おりまして、そこでは責任者もやっておりましたので、両方に対して、平均的な大学人よりはかなりシンパシーがある人間であります。それをまず申し上げた上で、意見を述べさせていただきます。
  最初に、この共同利用研究機関の役割ですけれども、これは海部先生がおっしゃったように極めて重要なものがあって、全くそのとおりだと思います。それから稲永先生に御説明いただいたように、運営費交付金全体が減っていく中で、どうやって有効に使っていくかという視点も極めて重要だと思います。
  そういう観点で考えますと、やはり、今、北山委員がおっしゃったように、共同利用研究機関といっても、実は種類が随分違います。それで、私のイメージとしては大きく二つに分けることができると思います。一つは非常に大型の機器がある、例えば国立天文台は全くそうだと思いますが、世界最先端の装置をみんなで使っていくようなところ。もう一つは私がおりました岡崎の分子科学研究所のように、大型装置というよりは世界最先端の比較的小さな装置、例えばレーザーなどについて常に新しいものを持ってきて、それを使うようなところです。文系の研究所も、どちらかというと、そちらの方に分けて良いのかなと思います。すなわち、非常に大きな装置があってそれを核として動くところと、それ以外のところと、こういうふうに大きく分けると、やはりこれは我が国全体の大学の共同利用研究機関としての位置付け、役割も随分違うのではないかと思うわけです。
  今、国立大学法人の86大学を三つに分けて、その役割の違いをある程度認めながらその中で最適化を図ろうというのと同じ意味において、この共同利用機関の方も、一つの枠組みで議論するというのではなく、やはり形態に合わせたきめ細かな議論が必要な時代に来ているのではないかなと私は思っております。
  それで、先ほどの文部科学省からの御説明にありましたけれども、今年の1月28日に科学技術・学術審議会から審議のまとめで出てきたものがあり、これがベースになると思います。率直に申しまして、これは今までの組織をベースにしてそれを効率的にしましょうというか、今あるものをまず認めた上で、いろいろ強みなり何なりを伸ばしていこうと、こういうふうになっていると思います。それはそれで極めて重要だとは思うのですが、やはり国立大学の方も大きく見直そうという中で、この共同利用機関の方もしっかり見直す必要があるのではないでしょうか。先ほどのこの文部科学省の説明資料の38ページには、国立大学の方が大きく三つに分かれるけれども、大学共同利用機関は結局全部につながって一つの枠になっています。それに対しての特段の検討が見えるのか見えないのか分からないのですが、そういうことに対応した見方が必要なのではないかなという気がしております。
  あわせて、附置研究所ですけれども、大学において附置研究所のある大学というのは限られておりますけれども、例えば、現在私の所属しております東京大学においては附置研究所のリソースは極めて大きいです。大学改革をやっていく中において、この附置研究所をどのように位置付けるのかということはすごく重要なことだと思います。以前に附置研究所の責任者を経験したことのある立場からいうと、そんなこと言わないで黙っておいてほしいという気持ちもあります。でも、大学全体で考えますと、これはそういうわけにはいかなくて、大学としてのリソースをどのように最適化するかという意味で、もうこれは踏み込まざるを得ないところにあると思います。やはり、そういうことにまで踏み込んだ議論をする必要があるのではないかなと思います。
  以上です。
【須藤座長】  ありがとうございました。山本委員、お願いします。
【山本(廣)委員】  先ほどの財政構造の話に関連するのですが。機構全体でいうと、機関法人全体でいうと、先ほどの事務局が言われたような話だと思うのですが、ただ、この4機構があって、その中にそれぞれ研究所があります。天文台があったり、岡崎にあったりとか。そういう、この17でしたか、それぞれの、先ほど常盤局長から整理しますというお話が出ましたですけれども、大体一緒なのか。今の橋本先生言われたような話ですね。性格が違うところがあるので、その辺の運営費交付金と、いわゆる外部資金、科研費も含めた、そういうものとの比率がどのぐらいなのかということが簡単に整理できるようだったら、また見せていただいたら有り難いなと思います。
【須藤座長】  恐らく、すぐには出ないと思います。前の橋本委員の御意見と関連すると思いますので、分けてやった方がいいのか、あるいは一緒でいいのかを含めて、是非その辺のデータを事務局から出していただきたいと思います。
  小林委員、お願いします。
【小林委員】  財政について少し確認ですが。今日の文部科学省資料の7ページ一番初めのところに、具体的な取組内容として大学の研究者に無償で提供ということが書かれていて、これはかなり重要なことだろうと思います。私の経験では、例えば計算機やコンピューターなどを使ったときに使用料を取られたと思いますが、本当に無償でしょうか。それによって、かなり議論は違ってくると思いますし、海部委員が言われたように、もし、無償で提供しているということになると、大学としては非常に恩恵を被っているわけで、その辺どう考えるかということにもつながりますので、その辺は確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
【須藤座長】  事務局の方で分かりますか。
【事務局】  やはり学術研究を進めていく上で、共同研究を進めていく上で、経費を負担できるかどうかによって大きな差異を設けないということから、基本的には、こういう研究者に無償で提供するということをしているところでございますが、今まさしく御指摘いただいたように、一部、計算機資源の活用のときに使用料を取ったりとか、あるいは設備を個別に利用させていただくときに、その使用料を一部取ったりという実例はあるところでございます。御指摘のとおりでございます。
【海部委員】  少しよろしいでしょうか。
【須藤座長】  海部委員、お願いします。
【海部委員】  少なくとも大型の望遠鏡とか加速器のような大型のものについては一切無償です。それは、はっきり申し上げておきたい。そういうのをいちいち取ると、結局、貧乏同士でお互い金をむしり合うという結果にしかならない。これは、実は中国で実例があります。そうやって有償にした途端に、非常にモラルが荒れました。
  大学共同利用機関の場合いろいろ方針がありますが、例えば国立天文台がやってきたのは、国立天文台の大型装置、共同利用装置に応募してもらい、国際的な審査があります。これは非常に厳しい競争です。審査に通って利用時間を獲得した場合には、最低限ですが旅費を出す。大学ではそれを出せないところが非常に多いので。
  それから、国際的にも使われます。自然に3分の1くらい国際的に優れた計画が利用時間を獲得しますが、その場合、旅費はもちろん出さない。しかし、望遠鏡時間についての費用は無償です。これは国際的に紳士協定でやる。我々が海外のものを同じように使う場合も無償なのです。旅費は自分で出します。これはお互いに、そういうことは確立した一種の習慣というふうにお考えいただければ有り難いと思います。
【須藤座長】  では橋本委員、分子科学研究所の話ですね。
【橋本委員】  今の海部先生のお話は全くそのとおりでして、大型の装置に関しては、そこでしっかり公募して厳しいセレクションをして、全国あるいは全世界から来ていただく。その場合に、旅費も滞在費も出すということは、私は極めて重要だと思っています。私がいた分子科学研究所のようなところも、実はそういう使い方が大変重要だと思っておりまして、すなわち大型の装置ではなくても、最先端の装置を幾つもそろえているところもそういった使い方を進めるべきではないかと思います。今は各大学、各研究室が自分のところで最先端の装置を持とうとしていますが、共同利用研究所の装置を使うことで、経費の有効利用という面だけではなくて、そこにいろいろな分野の人がいろいろな装置を使いに来て、交流の場が生まれるという側面もあります。私は、分子科学研究所に若い時代10年間いましたけど、そのおかげでいろいろな人とのネットワークができて、いろいろな分野の人と共同研究ができたという自身の経験もあって、この良さをとても感じております。
  共同利用研究所というのは、まさにそういうふうに使うべきだと思っております。更にもう一つ、先ほど申し上げた関連で言いますと、今後、各大学の強みを生かしてという方向に行きますね。そうすると各大学で、その大学の強みの分野じゃないところにも優秀な研究者はいるわけです。そういう方にどうやって活躍していただくかというと、やはり今のような共同利用研究所の設備を利用する。大学の附置研究所もそういう役割をするべきだと思っています。その場合に、利用者がお金を持っていなければ、共同利用機関が公募して、その厳しいセレクションをして良い課題を選ぶという、そういうシステムにしないと、これは回らないのです。
  今後、86国立大学の強みを更に強めていくという政策の中で、それ以外の分野で活躍している人たちをどう活用するかというのは極めて重要で、その中において共同利用研究機関と附置研究所のリソースを使うというのはものすごく重要だと思っているんです。
  そういう意味で、もう一歩踏み込んだ形で、この提言が必要じゃないかなと申し上げた次第です。是非とも御検討いただければと思います。
【須藤座長】  ありがとうございました。上山委員、お願いします。
【上山委員】  今のお話をずっと聞いていて、私もよく分からないなと思っていたことが少し理解できたように思います。それはこの大学共同利用機関のことで、いみじくも今、海部先生が我が国独特の制度だとおっしゃってきたように、これは諸外国の制度と少し違うだろうなということを前から思っていました。改めて、いい機会ですので教えていただければと思います。特に橋本先生も、この制度に関わっておられたと思うのですけれども。
  日本のこの大学共同利用機関というものは、どちらかというと基礎研究的な、学術研究中心のものが発展してきたと考えていいと思います。アメリカにもフェルミの加速器研究所みたいな大型のところがあって、あれはエネルギー省の下にある、割と共同利用機関みたいなところですが、海部先生が今おっしゃったように、これは我が国のものとはかなり違うと思います。我が国のこの制度は独特な形で進化してきたという特徴があるとすると、このような形が、例えば海外の研究者の中からどのように受け止められているのだろうかということについて前から少し関心を持っていました。つまり、それは非常にメリットが高いものとして受け止められているのか、あるいはそうではないのかということです。前からお聞きしたいなと思っていたことですので御意見をお願いします。それと、もう一方で、こういうふうに共同的なもの、特に基礎研究というものを大学の外に出す、共同的にやるということは、一方で個々の大学の基礎研究の独自性とか、あるいは基盤みたいなものに、ある種のマイナスダメージを与えないのかということも、実は前から考えてきたのです。それはどのようにお考えでしょうか。もちろん研究者は大学も超えて、いろいろなところでネットワークを作ってする方が、大学という組織にとらわれない形の学術の基礎的なものを考えるのは非常に便利だと思うのですが、一方で個別の大学が持っている基礎研究の方向性ということに、それはどういう影響を持っているのだろうかということも、実は前から不思議だなと思って考えてきました。
  やはり大学も基礎研究というものを基盤として、とても重要な役割をしていると考えると、こういうものが発展していくことが研究者の中でどのように受け止められているのか。特に自然科学系のですね。
  今日の橋本先生のお話を聞いていると、これは非常にネットワーク的に大きな意味を持っているし、あるいは逆にいうと、このような共有の制度が良いものであるなら、大学の中には附置研究所そのものも外部に開放するような形で共同利用していく方がいいのではないかなと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。このことが大学とアカデミアの力をどのように、ひょっとすると減退させることはないでしょうけれども、そこにどのような関係があるかということを、これは自然科学系一線のフロンティアの先生方はどのように考えているかということの2点ですね。
  海外の方がどういうふうに、こういう独自性について思っておられるかということと、現場の中にいる方たちが、こういう基礎研究そのものの在り方について、これが日本の中でどのように受け止められているかと、少し御意見を賜れればと思うのですが、いかがでしょうか。
【須藤座長】  今の2点につきまして、海部委員と橋本委員からお願いします。
【海部委員】  分野によって、違いもありましょうから、橋本先生から別にお答えいただくといいと思います。
  まず海外からどのように受け止められているかですけれども、私は、これは日本独自と申しましたが、ある面では独自でない部分があります。それはどういうことか。例えば、アメリカなどでは大学連合というのがあります。大きな望遠鏡を大学連合で作るというやり方が幾つかあります。それは要するに大学同士のコンソーシアムで合意書を取り交わしまして、それで大きな望遠鏡を作る。ただし、望遠鏡のお金はどこから出るかというと、政府から出る。州の大学は、例えば、それの多少の運営費を出すところもありますが、全然出さない場合も結構ある。しかし、それは大学が一緒になって運営するという形を一応はとっています。そういう場合は、中では自由にお互いに使わせる。だけど、外から来る場合は、いろいろ制限を加えて、場合によっては全然使わせないというケースもあります。ですが、日本の場合は、それを全国的に、全ての大学をインボルブする形でやっているというところは非常にユニークです。
  それで、海外からそれがどう受け止められているかという面についていうと、日本が戦後、特に幾つかの分野で驚異的な発展を遂げたということは、やはり、こういう制度にあると言われていると思います。天文学の場合は、確かにそういう評価を受けております。
  この辺は分野によって多少の違いはある。つまり天文学は、恐らく日本の天文学の中の半分ぐらいは国立天文台の研究と関連する形でされております。高エネルギーの場合も、一大学で高エネルギーの実験というのは全くできないわけですから。天文台の場合ですと、まだ各大学である程度の望遠鏡を作るということはできますし、実は天文台は、大学連携の形で、それも応援しています。今度、京都大学で新しく作られます。東大との連携とか、いろいろなことをやって、大学の独自の研究はそれなりにやっているつもりでいるわけです。先ほどそういう御質問がありましたが、中核研究所としては、そういうものも支援していくことは非常に大事であるということは、これは大学共同利用機関みんなの共通認識です。ですから、それが2番目の質問に関わることです。
  基礎研究の独自性に対するダメージについて、私の答えは二つです。
  一つは、大型の装置を作る場合には、日本では間違いなくドミナントなものになります。ですから、どういうものを作るかに関してでも徹底的なコミュニティでの議論をするわけです。それがなくして大型計画は成り立たないです。コミュニティ全体が望むものを何とか実現していこうというのが基本的な立場でして、上から降ってきて国立天文台が決めたものをやろうというのでは決してありません。それが第1で、それから第2は、今申し上げたように、そうは言いながら、各大学で小さな装置を持って独自のことをやりたいというのは当然のことですから、それは支援していまして、幾つかの大学連携で、例えば、ある大学で電波天文学をやりたいグループがあれば、どこかからアンテナを探してきて、それを天文台と折半で、これはマッチングファンドで大学に設置して、そうすると実際にたくさん学生も来るとか、そういうやり方は随分しております。もちろん限りがありますけれども、それも大学共同利用機関の重要な役割だと私は思っております。
【須藤座長】  ありがとうございます。すみません。この後、橋本委員から御発言いただこうと思うのですが、鈴木委員が、あと5分ほどで退席されますので、この話題じゃなくても結構ですので、御意見をお願いします。
【鈴木委員】  御配慮いただきましてありがとうございます。次回も出席できないものですから。この共同利用機関について、意見、質問はありません。資料3の後に説明していただく評価のことについて少し申し上げさせていただければと思います。
  基本的には、特に2ページ目のところからの評価指標に関連しまして、大学独自に指標を設定できるということとか、あるいは例示ではありますけれどもインターンシップについて盛り込んでいただいていることとか、またその例示のところに私がプレゼンで出させていただいたものを盛り込んでいただいていることとか、あるいは学長裁量の評価の部分についてもステークホルダーのニーズについて記載されていることとか、非常に御配慮いただいておりまして、全般として私は評価したいと思っています。
  その上で2点、意見を申し上げさせていただきます。まず、特に「地域活性化の重点支援を行う大学」については、取組構想の策定とか、あるいは独自指標の設定に当たっては、広くステークホルダーのニーズを取り入れるために、最終的には努力義務みたいなものでもいいのですが、外部委員会を設置して、そのステークホルダーのニーズを取り入れるということとか、あるいはできれば、私がプレゼンのときに申し上げたような都道府県知事の意見表明みたいな努力義務とか、できる規程みたいなものもあると有り難いなというのが1点です。これは世界、グローバルなものとは少し違うかもしれない。地域活性化においてはというものでも構わないですけれども、そういうことが一つ目です。
  二つ目は、これも特に地域活性化関係のカテゴリーのところですけれども、その評価に当たって、「共通指標と独自指標により評価をする」となっているのですが、その重み付けについてです。この項目数で列挙して、仮に共通指標がたくさんあり、そちらに重み付けされていくと、地域活性化というのと少し違うのかなと思っています。地域の実情も異なりますし、多様性ということが重要だと思いますので、地域活性化のカテゴリーのところは、できれば独自指標のところに少し重みがあるような形の配分にしていただくと有り難いなと思っています。
  ちなみに私の方は、自分のプレゼンの中で4対6という話をさせていただきましたけれども、特に地域活性化のカテゴリーについては、そのように考えます。
  全般的には、いろいろ盛り込んでいただいていましたので、評価できる内容となっていると思いますが、以上2点、申し上げさせていただきました。以上です。ありがとうございました。
【須藤座長】  ありがとうございました。突然、御指名してすみません。それでは先に橋本委員の方から、先ほどの御回答を含めて発言をお願いします。
【橋本委員】  まず、海外からどのように見られているかということですが、これは、基礎研究の共同利用研究所が珍しいという話です。応用研究ですと、例えば電池開発とか何々というと、これは大体グループでやることになっていますけれども、おっしゃるように基礎研究の共同利用研究所みたいなものは余りないのではないかなと思います。
  ただ私も分かっているところが限られておりますので、私の経験した分子科学研究所の話を申し上げますと、高価な装置、例えば一番分かりやすいのがレーザーですけれども、一研究室ではとても買えない、非常に買いづらいような最高性能のものを分子科学研究所は幾つも用意していたのです。そういうのはアメリカだったらどうだったかというと、やはり研究所に一つ持っていたり、あるいは研究室に持っていたりするわけです。それが我が国において、やはり戦後の復興の中で、各研究室では持てないものをどこかに集中的に持ってそこで使おうと、こういう戦略だったのだと思います。それがうまく機能していたので、実は各国からも随分使いに来ていました。そういう意味において、大変うまく回っていたと思っております。
  それで、これは今後の参考になるので是非申し上げたいのですが、今はどちらかというとレーザーですと各研究室が持つような時代になっております。しかしこれは、やはり本当に最高級なものをどこかに持たせておいて、そこが旅費も研究費も出して全国に公募して利用者を集めるという方が、私は良いと思っています。それは経費の効率化の話と、それから融合研究等々を誘導するという意味において意味があると思っています。それは海外からも、分子科学研究所はその分野において非常に高い評価を受けていたということを思いますと、うまく機能するのではないかなと思います。
  それから、基礎研究の独自性ということで申し上げますと、これは基礎研究というのは頭の中に入っておりますので、そこでやるのは装置を利用するということです。ですので、装置を利用するイコール研究活動全てがそこに行くわけでは全くありません。そういう装置を定期的に、1か月とかそれぐらい使って、また大学の方に戻って研究活動しているわけですので、基礎研究において各大学の独自性が失われるということは決してないと思います。
【須藤座長】  稲永先生お願いします。
【稲永学長】  本日は大学共同利用機関がメインテーマなので控えていましたが、国公私立大学にあります共同利用・共同研究拠点は、先ほどの文部科学省の資料1の13ページにありますように、国公私立大学合わせて46大学95拠点あります。拠点となっている附置研究所や研究センターは、まさしく大学共同利用機関と同じような活動をしています。大型研究設備等により共同研究を展開しているところや、極端なことを言いますと頭脳のみで共同研究を展開している京都大学の基礎物理学研究所、数理解析研究所などがあります。後者では、全国から基礎物理学や数学の研究者が集まって、一緒に議論することで、非常に高いレベルの研究成果を上げています。他の共同利用・共同研究拠点も世界的に高い評価を受けていることを強調したいと思います。
【橋本委員】  全くそのとおりで、先ほど申し上げましたように、大学も附置研究所も同じように考えていくべきだと思っております。
【須藤座長】  ありがとうございました。上山委員、よろしいでしょうか。
【上山委員】  いや、本当に今の御説明、よく分かります。あくまでも本当にそのとおりだなと思ったということを前提に、結局こういう大学の共同の研究施設とそれぞれの大学の関係はどのようになっているのか、少し疑問に思っています。大型の共通機関に各全国の基礎研究所の研究者が短期的に参集して、そしてそこで成果を上げて自分の大学に持って帰る。そして基礎研究の成果を上げていく。一方で、その研究者があげた成果というのは、例えば東京大学は東京大学の大学ランキングに反映される訳です。そういった研究者たちが書いている論文の大きさみたいなことが判定されていく。このシステムが全体のアカデミアの力を高めていくには、大学間の人材移動が激しく行われている、かつ、それが完全にオープンになっているということが前提の話だと思うのです。そこのところは多分そうなっているとは思いますけど、そこがまず非常に面白いというか、うまくいくのかなと思いました。
  それから、今お話にありましたように、実は大学の中にはいろいろな研究機関があって、これはこの大学の中にそういう研究機関が行かなければならない。それが、やはり同じように、もし知識の参集するような拠点であるとすれば、それがどれぐらい全国に開かれているかもちょっと考えていかないといけないということだろうなと感想を持ちました。
【須藤座長】  ありがとうございました。当初予定した時間をオーバーしていますので、この議論はこの辺にしたいと思います。御提案のありました共同利用機関、本当に一つに一括して評価していいのかということも検討の余地あると思いますし、附置研究所についてももう少し突っ込んだ検討が必要かもしれないという議論がありましたので、その辺踏まえまして次回に反映していきたいと思います。
  それでは、次の話題に移りたいと思います。前回の検討会で出たお話ですけれども、国立大学法人の評価委員会における評価についてしっかり説明してほしいという意見がございました。それについて、まず事務局から10分ぐらいで説明していただきますが、この委員会の委員長、北山委員の発言を少し聞きたいと思いますので、北山委員の帰られる17時半より前に終わるように説明をお願いします。
【事務局】  失礼いたします。参考資料を本日お配りしております。国立大学法人評価における教育研究評価の観点についてというタイトルにさせていただいております。
  最初の1は、国立大学法人評価の基本的な考え方が書いてあるものでございます。各法人に定められております中期目標・中期計画の達成状況について調査・分析を行う。それは各法人が自己点検評価をしたものについて、その自己点検評価は適切なのかどうか、中期目標を適切に達成しているのかどうかという観点で評価を行うことになっておりまして、特に教育研究に係る部分については大学評価・学位授与機構に専門的な観点から評価の実施を要請しているということになります。したがいまして、各法人に定められた中期目標の達成状況ということでございますので、法人間を相対比較する趣旨ではないという位置付けになってございます。
  その大学評価・学位授与機構に実施を依頼する教育研究に係る評価というのが1ページ目の半分より下のところから書いてございます。まず(1)といたしまして、教育研究に係る実績報告書の構成としておりまして、大きく二つの書類を各法人には作成をしていただいて、評価委員会に出していただく。教育研究については大学評価・学位授与機構に出していただくということになります。
  まず一つは学部・研究科ごとの現況調査表というもの、それから二つ目は中期目標の達成状況の報告書というものをお作りいただくことになります。そのうち一つ目の学部・研究科等の現況調査表というのは教育に係るもの、それから研究に係るものの二つに分かれます。また、その研究に係るものにつきましては、組織を代表する優れた研究業績を記載しました「研究業績説明書」も併せて提出をしていただくことになっています。
  2ページを御覧いただきますと、それぞれにつきまして、どういったものを書いていくのかということが書いてございます。2ページは学部・研究科ごとの現況調査表のうち教育に係るものについて整理してございます。分析項目、観点とございます。例えば観点、教育の実施体制につきましては、記述内容例がございますけれども、教員組織編成や教育体制の工夫とその効果など。観点の1-2、教育内容・方法につきましては、教育課程の編成状況やその工夫など。観点の2-1、学業の成果というところでは履修・修了状況から判断される学習成果の状況や資格の取得状況。進路・就職の状況という観点の中では、そのまさに進路・就職状況について。大学評価・学位授与機構が出しております作成要領というものがあるのですが、その作成要領の中に、例えばということで、このような記述内容例が示されているところでございます。
  3ページでございます。現況調査表の研究の部分について作成要領から抜粋したものでございますけれども、教育と同様に、それぞれの観点に応じまして、例えば研究活動の状況ですと、論文・著書等の研究業績や学会での研究発表の状況や、競争的資金による研究の実施状況等々、また研究成果の状況といたしましては、組織単位で判断した研究成果の質の状況を記述内容例として作成要領に示しているところでございます。これを踏まえて各法人が部局ごとに書くということでございます。
  また、現況調査の研究部分の基礎となる研究業績説明書というのが3ページの下の方に書いてございます。これは研究の方の分析項目Ⅱでございますけれども、研究成果の状況につきましては、学部・研究科等を代表する優れた研究業績として選定した研究業績について、この説明書を作成して提出するということになっています。選定する研究業績数は、助教以上専任教員数の20%程度を目安とするということになっています。
  おめくりいただきまして4ページでございます。これは達成状況報告書と、大きな二つ目でございます。これにつきましては各大学が作成、策定しております中期目標、中期計画ごとに、その達成状況を書いていただくわけでございますけれども、2行目に書いてございます、中期計画ごとに3段階の判定を各法人がしてまいります。良好、おおむね良好、不十分という3段階でございますけれども、中期計画ごとに各法人が判定をいたしまして、その判断結果や判断理由を見まして、国立大学法人評価委員会、大学評価・学位授与機構において評価をするということになっているわけでございます。
  本日、机上資料といたしまして1-1から1-4というのを御用意させていただいております。今、参考資料で御説明しましたものは第2期の教育研究に係る評価のものでございまして、机上資料1-1で御用意したサンプルは、当然まだ第2期の評価はこれからでございますので、第1期のときに各法人が実際に作ったものを参考に置かせていただきました。
  机上資料1-1は東京大学理学部のものということで、最初が教育の現況調査表、次が研究に関する現況調査表ということでございます。机上資料1-1、理学部の教育の部分を見ていただきますと、分析項目はⅠからⅤまでございます。
  今御説明しました参考資料の方は、2ページを御覧いただきますと、若干項目の区切り方は変わっておりますけれども、実際の中身は大きく変わっているわけではございませんので、参考になろうかということで置かせていただきました。
  理系だけでなく文系のものがどうなっているのかということで、同じく東京大学文学部の教育に係る現況調査表と研究に係る現況調査表を置かせていただきました。
  机上資料1-3は研究業績説明書。これは実際のものは非公開になっておりますので、様式ということで置かせていただきました。それぞれ先ほど申しました助教以上の専任教員の20%に係る研究業績について、学術的意義がある研究業績なのか、あるいは社会、経済、文化的意義がある研究業績なのか、あるいはその両方に該当するのかということについて記入していただいた上で、SS、S、A、B、Cの5段階で自己評価をしていただく。これが研究業績説明書として研究の現況分析調査表の基となる資料として添付されるということでございます。
  また机上資料1-4は中期目標の達成状況でございまして、これは当然、部局ごとでありませんので、当該大学として中期目標、このような形で達成状況を達成したのだということの報告書の例でございます。
  参考資料にお戻りいただきますと、4ページの下半分のところでございます。こういった資料を出していただきまして、大学評価・学位授与機構におきましては、まず研究水準判定を基に現況分析を行います。それを踏まえて、大学から提出されております中期目標の達成状況報告書の達成状況を評価する流れになっているということを4ページの下の方で示しているところでございます。
  説明は以上にさせていただきます。
【須藤座長】  ありがとうございました。これにつきまして北山委員から補足説明等をお願いいたします。
【北山委員】  国立大学法人評価委員会では昨年9月に、第3期の6年計画の策定に向けた「見直しの視点」を各大学に通知しています。この計画の進捗状況に係る評価が、今議論している評価とうまく同期すれば、二重の評価は避けられます。つまり、国立大学法人評価の評価項目を工夫すれば、6年計画の1年ごとの評価の中で、機能強化や学長裁量に係る評価も行えます。評価側も、評価される側も、二重の負担とならないよう、既存の評価とよく対比しながら制度設計する必要があると思います。
  また、認証評価も含めた全ての評価を整理統合できないかというのが本音です。一回の資料提出で評価が済むよう、うまく工夫ができればと思っていますので、仮に、法律上の建て付けがネックなのであれば、法改正等も考えられるのではないでしょうか。また、情報公開がもう一つの重要な柱になりますので、こちらもセットで進められればと思います。
【須藤座長】  ありがとうございました。今、北山委員から言われたところ、かなりの委員の方も同じような考えをお持ちだと思いますので、その辺を踏まえまして、次の資料を説明していただいてから議論したいと思います。
  次の資料は資料3です。前回までいろいろ評価について議論してきましたけれども、その意見を踏まえまして、事務局と私の方で素案をまとめました。それを説明していただいて、今、北山委員から言われた、ダブルで評価するのかとか、三つの評価をやるのかとか、そういった議論も出ると思いますので、とりあえず資料3を説明してもらってから議論したいと思います。では、よろしくお願いします。
【事務局】  失礼いたします。それでは、資料3について御説明させていただきます。今、座長から御説明がございましたとおり、前回、前々回、評価について御議論いただきました御意見をまとめまして、素案という形で取りまとめさせていただいております。
  まず基本的な考え方といたしまして、この予算配分に反映するための評価につきましては、機能強化の方向性に応じた重点支援、それから学長の裁量による経費に基づく活動等による実績、この大きく二つに分けて評価を実施してはどうかと考えているところでございます。
  まず一つ目の機能強化の方向性に応じた重点支援に係る評価についてでございます。まず取組構想の選定につきましては、共通の政策課題、それから三つの重点支援の枠組みというふうに二つに大きく分かれておりますので、それぞれについて記述しておりますけれども、共通の政策課題につきましては、文部科学省から高等教育政策等の共通の政策課題に係る支援項目を各大学に提示をさせていただき、その項目に基づきまして取組構想を提案していただきまして、その取組の成果を検証するための測定可能な評価指標を設定してはどうかと考えております。文部科学省は、この取組構想の提案を有識者の意見を踏まえまして選定をするということを考えております。
  それからもう一つの三つの重点支援の枠組みにつきましては、三つの枠組みのうち、いずれか一つの枠組みによりまして各大学から取組構想を提案していただきまして、こちらも測定可能な評価指標の設定をし、同様に有識者の意見を踏まえて選定をするということでございます。
  評価手法につきましては、それぞれ共通でございますけれども、有識者の意見を踏まえながら年度ごとに進捗状況の確認をすることと併せまして、あらかじめ設定をいたしました評価指標によりまして実績の評価を行ってはどうかということでございます。この評価につきましては、設定された指標に係る進捗度合い、向上度合いに基づいて行うことを基本としてはどうかと考えております。
  これらの評価に基づきまして予算配分に反映をしていくということでございます。
  2ページをおめくりいただきますと、具体的に評価の指標の例ということでございますけれども、この評価指標の設定に関しましては、三つの枠組みごとに、あらかじめ示しました複数の指標から取組構想に応じた指標を各大学が選択して設定していただくものと併せまして、各大学の取組構想に応じた大学独自の指標の設定も可能としたいと思っております。
  なお、三つの枠組みのうち地域活性化、特定分野の重点支援を行う大学につきましては、これから御説明します1、2の観点の例を組み合わせて設定してはどうかと考えております。
  なお、評価指標の項目の詳細につきましては更に検討していきたいと思っております。
  また、米印のところで書いておりますけれども、やはり専門分野の特性を踏まえる必要がございますので、可能なものに関しましては学部・研究科等の単位で状況を求めることも検討してはどうかと考えております。
  具体的にどういった指標の例があるのかということでございますが、一つ目の地域活性化のところを御覧いただきますと、まず米印で地域のニーズを捉えた人材育成を行っているかと書かせていただいておりますが、こうした文部科学省がこの地域活性化に係る指標を設定するに当たってどういった観点を重視したのかということを各大学に示し、それにあわせて、例えば地域内の企業等への就職状況といった指標を設定してみてはどうかと考えております。
  同様に、例えば産学連携活動を通した地域活性化を積極的に行っているかということであれば、共同研究の実施状況などについて、また地域における新たな産業の創出を図っているかということでは大学発ベンチャーの設立状況についてなどを考えているところでございます。
  また二つ目の、ある特定分野の教育研究に係る指標につきましては、それぞれの特定した分野の教育が充実しているか、あるいは研究が充実しているか、また国際的な存在感を高める研究を実施しているか、特定分野の社会貢献が充実しているか、こういった項目が考えられるところですので、それぞれに併せまして、例えば教育のところであれば企業等への就職状況、研究のところであれば、その関連した分野の論文数などの状況などについて指標を設定してみてはどうかということでございます。
  3ページに参りまして、三つ目の世界水準の教育研究に係る指標の例につきましては、同様に観点といたしましては全学的に国際レベルの質の高い教育を行っているか、また世界水準の研究を実施しているか、国際的な存在感を高める研究を実施しているか、イノベーションを創出する機能を充実しているか、世界水準の教職員体制を構築しているかなどが考えられるところでございまして、教育の部分では、例えば大学院生に占める特別研究員の採用状況、また研究のところでは論文数・論文の被引用の状況など、国際的な存在感の高める研究というところでは国際共著論文の状況などを指標として想定してはどうかと考えているところでございます。
  大きな二つ目の学長の裁量による経費に基づく活動等による実績評価ということでございます。こちらにつきましては、学長の裁量経費ということになっているわけでございますが、評価につきましては、この検討会の中でも、やはり活動の実績をしっかり見るべきだという御意見がございましたので、こちらについては全体の活動の実績評価というふうに大きくくくっているところでございます。
  こちらの評価手法につきましては、学長の裁量の経費を活用した様々な取組による業務運営の改善、あるいは教育研究活動の活性化を目的とするところでございますので、経費の活用状況と併せまして、その活用による業務運営の改善、あるいは教育研究活動等による実績を評価してはどうかということでございます。
  こちらにつきましても有識者の御意見などを踏まえながら、学長のビジョンに基づく取組状況を、2年終了ごとに取組状況を確認してはどうかということで考えているところでございます。
  4ページに参りまして、こちらの方の評価指標の例ということでございます。こちらの評価指標につきましては全大学に共通するものとして設定してはどうかということでございまして、こちらにつきましても、また御意見を踏まえながら、詳細については更に検討していきたいと考えているところでございます。
  点線の中、具体的な指標の例でございますが、こちらにつきましては、やはり、この検討会の中でも運営面での指標をしっかり取り込むべきではないかという御意見がございましたので、そうしたところを中心にした指標の設定を考えてみたところでございます。
  一つ目に、Institutional Researchが充実していて活用できているかということに関しましては、大学のビジョンの有無でございますとか、エビデンスに基づいた計画の状況、各部局の予算・人的資源の把握の状況などが考えられるところでございます。また教職員の資質向上のための取組がなされているかという部分につきましては、全教員を対象とした教育面の業績評価の取組状況など。また財源の多元化ということに関しましては、自己収入増加に向けた取組の状況。また学生が学びやすい環境となっているかということに関しましては、多様な学生に対する支援の取組の状況。それから教育の質保証に取り組んでいるかという点に関しましては、学生数と教員数の割合。それからステークホルダーへの情報公開の徹底。また研究成果を最大化するような学内体制。教員が研究に積極的に取り組んでいるか。年齢構成に配慮した教員体制か。社会貢献、それから人事給与システム改革といったようなところを主な評価指標の観点としてお示しをさせていただき、それに基づきまして具体の指標を幾つか例示をさせていただいているところでございます。こうしたところをベースにしまして、更に詳細の設計を考えていってはどうかと現在考えているところでございます。
  また、先ほど北山委員から法人評価等の関連性ということで御意見を頂いたところでございます。先ほど法人評価の制度の仕組みに関しましては御説明を申し上げたところではございますけれども、こうした指標がそれぞれ各大学の方から中期計画などに盛り込まれているのは、やはり大学にとっても分かりやすい指標設定という意味では意義があることではございますので、大学の選択を尊重しなければいけないわけではございますが、できる限り、そういったところが同期していくような方法については、私どもも引き続き検討はしていきたいと考えているところです。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして、残りの時間を使いまして議論していきたいと思います。橋本委員、お願いします。
【橋本委員】  簡単に申し上げます。3点ありまして、まず、この個別の3類型ごとの評価についてですが、これは今御説明いただいたように、地域活性化、特定分野の重点支援を行う大学に関しては、是非とも、この地域活性化の視点だけではなくて、特定分野において、その世界的な観点での評価軸をしっかり入れていただくというのが、もちろん選べるという形で、それをしていただくことが重要だと思います。
  それで、特定分野の研究教育拠点に関しては、ここに書いている論文の被引用数・論文数など、こういうことに関して分野間の違いというのが非常に大きいので、これは分野の特性というのを明確に示した上でやる必要があると思います。
  このメッセージは極めて重要で、各大学の方が大変これを心配しておられます。ですので、分野間の違いについてしっかりと明記していただいた上でという形でお願いしたいと思います。
  それから3番目の世界水準に関しては、このとおりですが、私はこのグループの評価軸をいかに高いものにするかというのが、成功の鍵の一つだと思っております。ですので、国際レベルのというよりは、国際のトップクラスの大学がベンチマークの対象であり、例えばハーバードとか、ケンブリッジとか、そういうところと比較してどうかと、そういう評価をするというくらいまで書き込んでいただく必要があると考えておりますので、御検討いただきたいと思います。
  それから最後です。これは少し評価とは違うのですけれども、今回この改革を進めるに当たって、国大協の先生方とか、今いろいろと意見交換する場が非常に増えております。そのときに必ず言われるのが、多分3番目のこの全体の評価指標に関わってくるものと思われますが、規制緩和をしっかり併せてやってほしいということです。大学を運営するにおいて、いろいろなしがらみがあって、実現実行できないことがたくさんあるというわけです。だから、お金を増やせないのだったら、規制緩和をどんどん進めていただくだけで随分違うということを、とても強調して言われます。具体的にどういった規制緩和が求められているのか分からないので、私が別にでている産業競争力会議の方ではまさに規制緩和が1丁目1番地の議題となっていますので、大学改革に関しても、それは議論の場に上げることができるのではないかと思います。
  ですので、文部科学省におかれましては、是非、国大協等々にヒアリングして、どういう規制緩和が必要なのかということを具体的なものとして挙げていただければと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
【須藤座長】  ありがとうございました。山本委員、どうぞ。
【山本(眞)委員】  特に3類型のうちの地域活性化に関わる指標の例でございますが、この面に関しては、是非地域の特性というものを考慮していただきたい。画一的ではなくて、地域はそれぞれ違い、地域の持っている課題も違いますので、画一的な指標、KPIではなく、その地域の特性を踏まえた、できれば大学が設定した指標、これを重視していただきたい。
  例えば最初に地域内の企業への就職状況となっていますが、北海道の場合は地域内の企業がほとんどないわけで。そうなると、例えば小樽商科大学の例でいいますと、9割の学生が北海道出身で、5割が東京の方に就職しますので。そうなると、指標としては非常に悪い形になると思いますので、地域の特性を考慮した、あるいは大学の置かれている状況を是非考慮した柔軟な指標にしていただきたいということでございます。
【須藤座長】  よろしいですか。では山本委員、お願いします。
【山本(廣)委員】  機能強化と、それから学長のリーダーシップの、それぞれ1点ずつ申し上げます。
  今、山本眞樹夫先生から地域活性化の話が出ましたが、この指標を見ていると、地域内の企業等へと、こういうことが非常に強く出ている。もちろん、これから評価指標にどういうことを入れていくかということ、まだ議論される時間はあると思うのですが、随分、全体的に見て、企業や産業界との関係が非常に強調されていないかなと。これは、もちろん産業競争力会議からの期待も非常に大きいということで、このような書きぶりになっているかと思いますが、もう少し違う視点も含めて、特に文系分野の評価の在り方についてどう考えていくかといったような十分な議論が必要かなと思います。
  それで、先ほどの地域活性化のところに戻りますが、地域内の云々(うんぬん)という、この地域をどの範囲で見るのかということが、先ほどの山本先生のお話も関係すると思うのですが、その地域に特殊な事情というか、面白いテーマがあって、それをやれば全国的な課題も解決していけるといったようなテーマ。
  例えば私、島根にいましたが、島根のような、ああいう限界集落が何個もあるようなところをフィールドにしてやった研究。これは将来的に少子高齢化が全国で進むわけですけれども、そういうことに反映されていく、まさにこれは地域活性化の課題だと思うので、ここの指標に挙がっているような地域内でどうなったのかとか、企業どのぐらい就職したのかという指標だけではない見方が必要かなと思います。
  それから特定分野の教育研究についても、これが何か、この指標だけ見ていますと、非常に研究に軸足が偏っていないかなと思います。教育研究とタイトルには書いてありますが、教育部門でどうなのかなというところが。それから人材養成にしても、企業人という感じがあるのですが、教員養成であるとか、あるいは自治体に勤めて公務員になっているようなこともあろうかと思うので、もう少し幅の広い指標を設定していく必要があるかなと思っています。
  最後、学長のリーダーシップのところです。ここは、かなり細かく見ていただいていて結構なのですが、私、最初の会議でも申し上げたかもしれませんが、コンプライアンスに関わる体制の整備とその運用とかチェック、これがどういうふうにしっかりとされているかというのを、学長のこのリーダーシップの中に入れて、それがきちんとされているかということも評価指標に入っていいんじゃないかと。すみません、長くなりました。
【須藤座長】  ありがとうございました。海部委員、お願いします。
【海部委員】  一つは確認、二つは注文でございます。
  まず確認ですが、御覧のように、ここには共同利用、あるいは分野の全国的な推進ということについては何も触れられていない。これはもちろん、今日議論があるから、その後という理解なのですが、考え方として、例えば現在の法人評価では、先ほど御説明があった資料のように、共同利用あるいは大学共同利用機関については、別項目を設けて、そこで特に必要な事項を入れてあります。そういう形で、ここに第4の枠を付けていただくというのが一つの考え方かなと思いますし、そういうものについては、いろいろ御意見を申し上げたいということを、まず確認しておきたいと思います。その点、よろしいですね。今日のこれにはそれは含まれていないという理解です。
  それから二つ目の注文。一つは地域活性化ですが、地域のニーズを捉えた人材育成を行っているか。これは、先ほど少し話しました、企業、企業、企業と、並んでしまう。全部企業。企業は大事ですが、企業等となっているから、等となっていると何でも含むということになるようです。私は、ここには是非、地域の教育への寄与というのを入れてほしいです。学校教育でもいいし、社会人教育でもいいです。やはり私は地域における大学は、そういう面での積極的な寄与が非常に大事だと思います。ですから、その項目は是非是非入れていただきたいということを一つ申し上げます。
  もう一つ。私が奇異に思ったのは、いろいろ言い出すと切りがないぐらいある資料3の最後のページですが。この中に、私は、やっぱり女性という文字があるべきだと思います。この中には、例えば障害のある学生など多様な学生に対する支援とあります。しかし、やはり現在、女性の学生と、特に職員における女性の率の向上ということは、これは是非是非入れるべきことと私は思いますので、その辺は注文として入れておきます。
  以上でございます。
【須藤座長】  ありがとうございました。上山委員、お願いします。
【上山委員】  簡単に2点だけ。今、海部委員がおっしゃったことと一つ関係するのですが、地域における教育ということです。恐らく少し欠けているなと思うのは、地域大学における、地域大学だけではないですけれども、人的資源の移動という視点だと思います。地域でいうと、例えば地域の大きな大学が、そのほかの私立大学も含めた、いろいろな大学とのネットワークとの間でハブ的な役割をもっと果たすべきではないでしょうか。例えばそういうところの2年終わった人を受け入れるとか、そういう人的な移動がどれぐらい行われているかということは、恐らく、その地域における、その地域大学の役割を高めていくことだし、その地域において有能な人間を、ある程度の一定期間の間、そこでの経済、あるいはその他で活動してもらう役割をしていくという意味では、人的なネットワークと移動。移動を通した人的ネットワークをどれぐらいやっているかということが一つの考え方だろうなと思いますし、それは実は特定分野の研究拠点というところから、大学院レベルに行って、3番目のところに人が移動していくといいますかね。そういうことも含めて、キャリアアップ的な形での人的な移動ということの視点も一つ重要じゃないかなと思っております。
  もう一つは、特に3番目の世界水準の教育研究ということに当てはまるのでしょうけれども、一度考えた方がいいのは、特にアメリカの大学のようなところのある種のベンチマークをちゃんと調査した方がいいと。この間もシンガポールの国立大学へ行ってきましたら、そこは、たしかバークレーに、例えば給与の水準、それから論文の数、特許数、それぞれについてベンチマークをある程度作成してもらっている。そういうコンサルティング活動をアメリカの大学は結構やっていますから、そういうところに依頼するのも結構でしょうけれども。グローバルに戦えるような大学というと、どれぐらいのレベルの、それぞれの指標に関して目指すべきなのかということを考えながら、この世界水準の大学なんかについても落とし込んでいく作業をどこかでやった方がいいと。
  恐らくは、どの国の研究大学も、やっぱりターゲットとして先端を行っているアメリカの大学のベンチマークがどの辺に行っているのかということを念頭に置きながらグローバルに強い大学を作っていくことを考えるだろうし、実はそれは世界水準だけではなくて、ほかのところでも地域型というのは、世界水準の大学なんかにも同じようにことが当てはまるのではないかと思いますので、ベンチマーキングを少しやった方がいいんじゃないかなというのが前から思っていることであります。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは有川委員からお願いします。
【有川座長代理】  最後のページですけど、これは学長のリーダーシップに関わることに意見がございます。そこに破線内で書いてあるのは、大学としては、どこの大学でも当然やるべきことが全て書いてあるように見えます。ですが、学長というのは自分の大学の置かれている状況をしっかり把握した上で、この時期に何をしなきゃいけないかということをしっかり分かっているはずです。ここには、そういったことがたくさん書いてあるように思いますが、もう少し考え方を変えた方がよいのではないかというのが一つです。
  それから、ここに書いてある事項を見て何が抜けているという議論をしますと、どんどん追加されて、ごちゃごちゃになってしまいますので、それぞれの大学の特性に応じてもう少し考え方を整理すべきだと思います。学長が自分の大学にとって大事なことに対して、それぞれが目標を定めて、それに向かって努力して得られた成果・実績を見て評価することが基本的にあるべきだと思います。そうしておかないと、画一化されたものになってしまって、各大学の特徴を発揮できない。
  地域といってもいろいろあるわけで、自分のところの地域をどう捉えて、どうしようとしているかということも評価の対象になると思います。それぞれの大学の独自性をもう少し発揮できるようにして、その上で評価するようにしたらと思います。
  そして、例えば、最後に書いてあるようなことは、当然押さえるべきことで、それは、評価者が評価の視点として持っていればいいという項目ではないのかなという気がいたします。
【須藤座長】  ありがとうございました。では熊平委員、お願いします。
【熊平委員】  地域活性化について2点あります。
一つは、先ほどから出ています地域の教育に関する貢献というところで、やはり、この資料では出口寄りというか就職寄りになっていますが、高等教育ですから、初等中等教育の土台があって高等教育なので、地域での教育は初等教育から始まるというところで、そこにも大きな力になるのではないかと思いますので、是非そういうところに貢献していただきたいなというのが1点目です。
  そしてまた地域の大学との連携とか、そういうこともあるのかもしれません。その辺は大学の事情がよく分からないので、一応申し上げておきます。
  それから2点目は、地域における新たな産業の創出とありますが、これに併せて、地域の社会問題の解決に貢献していただくというところを入れていただけると大変有り難いと思います。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは日比谷委員、お願いします。
【日比谷委員】  ありがとうございます。マル2特定分野の教育研究のところで一つ申し上げます。特定分野の教育が充実しているかというところで、企業ばかりを見ていてはいけないのではないか、教育への貢献もというお話もありましたが、私、もう一つ、是非捉えた方がいいと思うのは、こういうところで優れた学部教育を受けた人が、それこそ世界水準の教育研究を行うような大学院にどのぐらい進学できるか。さらに、日本の中のそういうところではなくて、どんな大学であっても、地方の大学であっても、特定分野の強い学部で本当に優れた人は、いきなり海外のトップクラスの大学に行くということも不可能なことではないと思うので、進学という意味の出口の指標も是非入れていただければと思います。
【須藤座長】  ありがとうございます。小林委員、お願いします。
【小林委員】  すみません。時間がなくなってきたので簡単に申し上げます。今日は質問の形で出しますけれど、答えていただくのは今日でなくても結構だと思います。
  主に3点で、相互に関連しています。一つは、今日の提案ですと大学独自の指標ということがかなり強調されていると思いますが、これは既に出ていたことですけれど、先ほど北山委員が言われた大学評価・学位授与機構がやっている評価との関連をクリアにしていただきたいということです。
  それから、それに関連してですけれど、この場合ですと、それぞれの大学が、極端に言えば86国立大学が全部違うということになりますので、そういう評価のやり方をするということを確認したいということです。
  特に、そうなりますと、相対的な評価ではなくて、ある意味で絶対的な評価になるということになります。共通の指標で比べられないということになりますので。ですから、その評価の在り方そのものを考えるというか、考え方の基礎をはっきりさせていただきたいということです。
  特に、それに関連して言いますと、これは前から問題になっていたことですが、地域、特定、それから世界水準という三つに最初に分けて、それぞれを大学が選ぶというやり方をとるということで、私はこのやり方には反対だということは申し上げましたけれど、ここで、今日の提案を見ますと、地域活性化と特定分野については両方の指標を使うということが書いています。世界水準の方は、それでは、ほかのものは使えないのかというような案になりますので、そのあたりのことはどうなっているのかということの御質問です。
  それから、特に教育関係については指標が重要だということはおっしゃるとおりですが、今までの例で出されましたアメリカの州立大学にしても、このキー・パフォーマンス・インディケーターを使っているのはごく一部であります。それは教育の指標というのは非常に難しいわけで、アメリカの場合には継続率でありますとか卒業率というような明確な指標がありますから出せますけど、日本の大学で果たしてそういうものが出せるかどうか。イギリスの場合に、教育の指標は配分には関係しておりません。ですから、そういう意味で、研究の方はありますけれど、教育については、指標が重要だということは分かりますが、非常に難しい。そうなると、こういったキー・パフォーマンス・インディケーターという指標を使うことだけがいいのか。特に数値化することがいいのかということは十分検討する必要があると思います。
  例えば今日の例で言いますと、ランク付けをする。3ランクとか5ランクぐらいに分けるということも一つのやり方ですし、これは数値化というのと若干違う手法ですので、そのあたりのことは検討する必要があるのではないかと思っております。
【須藤座長】  時間もありますので。それでは、ただいまの意見も踏まえて、次回に持っていきたいと思います。
  時間も来ておりますので、ここまでといたしたいと思います。後ほど説明があると思いますが、スケジュール、予定があと2回ぐらいで、とりあえず中間まとめをしようかという考えでいますので、誠にお忙しい先生方ばかりで申し訳ないのですが、今日議論しました評価指標につきまして、追加で御意見がございましたら、是非メール等で出していただきたいと思います。
  また、今日話題になりました国立大学法人評価とこれを一体どうやって関連付けるのかということも御意見があるかと思います。
  それから最初の方で少し出ました、大学共同利用機関の話がありましたので、ここをどう評価すべきか。大学と同じように三つで分けるのか、一つでやるのか、あるいは全く別の考えでやるのか。それから附置研究所の話もありましたので、その辺、御意見等を一緒に、是非メールで事務局宛てに送っていただきたいと思います。できましたら20日の金曜日までにお願いしたいと思います。お忙しい中、申し訳ありませんけれども、よろしくお願いいたします。それを基にして次回、もう少し詰めた案を出しまして、また議論したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、本日はここまでとしたいと思います。次回以降の日程につきまして、事務局からお願いいたします。
【事務局】  長時間にわたりまして御議論ありがとうございました。日程につきましては、資料4にございますとおり、次回第7回を3月13日金曜日に予定しております。また正式な開催案内につきましては別途お送りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
【須藤座長】  ありがとうございました。それでは、本日は終了したいと思います。どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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