実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第8回) 議事録

1.日時

平成27年1月13日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館1階 全省庁共用108会議室

3.議題

  1. 新たな高等教育機関の基本的方向性について
  2. その他

4.議事録

【黒田座長】  皆さん、こんにちは。所定の時間になりましたので、ただいまから、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議、今日は第8回目でありますが、開催をしたいと思います。
 皆さんにはお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日も前回に引き続き、報道関係者の会議全体の撮影あるいは録音を行いたい旨の申出がありました。これを認めておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
 それではまず、委員の御欠席状況、本日の配付資料について、事務局から御確認をお願いいたします。
【神山教育改革推進室長】  それではまず、委員の出欠についてでございますが、本日は冨山委員、樋口委員が御欠席となってございます。
 続きまして、本日の配付資料につきまして確認をさせていただきたいと思います。資料は1から6-2までの七つ、それから参考資料を二つ用意をしてございます。資料1から4は、それぞれ池田委員、内田委員、金子委員、冨山委員から、これまでの議論を踏まえて御提出頂いた資料でございます。資料5と6-1、それから6-2につきましては、後ほど説明させていただきたいと思いますが、これまでの議論を踏まえまして、大学体系との関係を検討していく上で特に検討が必要な論点をまとめたものなどとなってございます。また、参考資料1として第5回に提出しました「これまでの議論で指摘された主な論点」、それから参考資料2といたしまして、第7回で事務局から提出しました「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関のイメージ」を御用意してございます。不足の資料等がございましたら、事務局までお申し付けいただきたいと思います。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。それでは、今日、御意見を頂いています方が4人いらっしゃいますけれども、3名の方が出席でありますので、時間がなくてまことに恐縮ですが、お一人5分で御説明をお願いしたいと思います。
 まず、池田委員からよろしくお願いします。
【池田委員】  それでは、資料1に基づいて御発表させていただきます。
 実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関が従来の大学体系の中に入るかについて、赤い字のところですが、地方創生の観点から大学の偏在する現状も考慮すべきではないか。実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関の地方における設立認可を国策として積極的に進める必要があるのではないか。具体的には、各都道府県の中核都市に実践的な職業教育を行う新たな教育機関が存在することが望ましい。これは、データはないのですけれども、各地方都市、中核都市を見てみると、ある学部、ない学部があり、大学においても大変な定員割れをしている。そこには教員の質の問題とか、いろいろな課題がある。
 では改めて地方創生の観点から、大学を活性化、このイメージは、地方における国公立大学、各地方には駅弁大学と言われている大学があって、文系と理系がある程度、特色が地域にあって併せて学部が創設されているケースもありますが、じゃあ地方都市が活性化するのにそういう駅弁大学だけで足りるのか。確かにそうするといろいろな施策の中で技科大があったり看護大学があったり教員大学があったり、それは国策の中で地方に散らばせたと。地方の活性化の観点で大学が作られてきたということで、そこの不足している部分を私立大学の有志が幾つか作ってきた、地方の思いがある人が作ってきた、そういう意味ではばらばらである。
 そこを補完するように、職業教育という意味で、昭和50年以降ですが地方には専門学校が次から次へと作られてきて補完をしている。事実、地方の専門学校の卒業生の9割ぐらいが地方に就職をしている。偏在であるという観点から考えますと、今、地方創生のど真ん中に大学等、大学「等」という中に専門学校も入っていて、その中で、いわゆる奨学金をある程度面倒見ましょうということが提案されているんですけれども、残念ながら、大学に比べると極めて専門学校の奨学金枠は少ないとか、いろいろな課題がある。そういう意味では、日本国を作り直すという視点で、じゃあ新しい公立大学とかそういうものができるかというと、なかなかできないということでございますので、財源的にも難しいことを、無理なことを言ってもしようがない。そうすると、今ある大学、短大等を、どう整備するかという議論のほかに、やっぱりそういう新しい高等教育機関が必要ではなかろうかと。
 その中で、朝日新聞で11月30日に出ていますが、今、首都圏の大学が定員の3割を超えて、補助金が出るものですから、特にある程度のレベルの大学は定員以上の学生を採っている。その数たるや大変な数なんですね。それが地方から若者を吸収している大きな原因になっています。それを、本来は定員を守っていただきたい。だけれども、入りたくない大学がほとんどなものですから、地方の受皿がないんです。それは逆に、専門学校を含めて充実させることによって、そこをきちっと運用していただく。そうすると、地方で受け入れられるある程度のレベルの大学、高等教育機関を設置することによってできるんじゃなかろうかということです。
 2番目の首都圏大学の定員抑制を厳守すべき、その受皿として新たな1条校が必要になると。残念ながら、そういう意味では専門学校自体がグローバル的にも、またIターンや、抑制した地方の受皿として私立大学が本当に存在しているか、若しくは大学が整備されているかというと、なかなか整備されていない。そこには留学生も倍増しているという中で、首都圏でだけ留学生を採ればいいのかと、そうではなくて、地方で培った人も、地方の中小企業のグローバル化ということになりますと、専門学校卒の人だけ採っていればいいのかというと、そういうわけにいかない。そうなると国際的なプロトコルが必要になってきます。そういう意味では新たな高等教育が必要になるという考え方です。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。地方創生と連動した形での高等教育機関ということを御提案頂きました。
 それでは引き続きまして、内田委員からお願いいたします。
【内田委員】  それでは、資料2にまとめさせていただきましたが、これに沿って御説明させていただきます。
 新たな教育機関として育成すべき人材についてでございますが、これは社会や企業が必要とする専門知識や能力、技能、実践力に加えて、変化する社会に柔軟に対応し企業等に貢献できる人材。これも今まで議論されたとおりなのですが、もう一つの2の方も大事だと思います。専門能力を有するとともに、国家社会の構成員として、またリーダーとしてふさわしい教養を有する人材が必要であろうということでございます。
 2番目の、この機関の必要性ですけれども、現在、学術的教育を中心として大学制度が確立されていますが、高等学校卒業者あるいはそれに相当する社会人に対して、社会が必要とする職業教育を中心とした教育システムが余り整っていないというのが現状でございます。これについて2番目に、サービス業などの多様で変化の激しい職業分野に対して、これはその職業に就くというだけではなくて、その職業の人のステータスを上げたり給料を上げるという意味では、その職業の効率化とか高付加価値化の方式そのものを創意工夫できるような人材が必要であろうということでございます。
 3番目は、職業教育が大学等と比べて低い位置付けにされている現状に対して、大学とは異なる観点から高く位置付けられる公的な仕組みを制定して、価値観とか意識改革を行う必要があろうということでございます。
 評価については、3番目ですが、(1)のように、研究志向の大学については既に評価方法が確立されております。それ以外の大学について、(2)のように評価機関による評価はありますが、そのほかに就職率とか求人、あるいは卒業生の活躍や企業の評価、メディア等によるランキングなどがされているのが実態でございます。(3)の新たな高等教育機関では、今の(2)と同じような位置付けで、同じ土俵で評価がされて、お互いに切磋琢磨されることが効率的かつ効果的でしょうという提言でございます。
 4番目の入学者は、高等学校卒業生あるいはそれに相当する社会人というところかと思います。
 5番目の修業年限は1~3年と一応書きましたけれども、これは出来上がる仕組みとか質とか、そういったレベルに対応してどのくらいが適当かは、もう少し今後の議論を必要とするかと思います。
 それから6番目の大学との接続については、できるだけ編入学とか大学院への門戸は開かれるということが望ましいと考えております。
 7番目にありますように、その他、制度、名称、学位等々につきましては、まだもう少し方向が明らかになってから意見をまとめていきたいと考えております。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 それでは引き続いて金子委員、よろしくお願いします。
【金子委員】  私のものは資料3となっておりますが、これは実は昨年、教育学術新聞の求めに応じて書いたものです。それを今日、資料として提出させていただきました。
 基本的には、新たな高等教育機関についてどういう観点を考えなければいけないのかということを議論しているわけですけれども、まず最初に言っていますのは、これは決して唐突に出てきた問題ではなくて、やはりそれなりに背景があってまじめに向き合うべき問題だということであります。一つの理由は、専門学校、特に専修学校専門課程の位置付けというのは、現行の学校教育法124条の規定でありますけれども、これはかなり曖昧な規定であって、この学校がどのような位置に位置付けられるかということについてはまだ十分に検討されていない。特に、こういった位置付けを与えている学校の中で質的に非常によい学校ができていて、その学校についてどのように位置付けを与えるかということは大きな問題になっているということです。
 第二の背景は、これは国際的に見ましても、いわゆるアカデミックな学術的な学校教育体系と職業訓練体系の二つの流れがあるわけでありますけれども、それを何らかの形で関係付けるという動きが出てきている。この中で改めて専門学校と教育体系全体との位置付けというのを考え直す必要があるということです。
 第三には、高等教育のユニバーサル化を背景としまして、現在、4年制大学への進学率が5割を超えているわけでありますけれども、その中でより直接な職業に関連する教育を行うべきだという声も広がっている。
こういった三つの背景から新しい職業高等教育機関を検討するということは重要な課題になっているということです。
 こうした背景から、どういった具体的な形態があるのかということを考えてみますと、幾つかの次元があるわけでありますけれども、私は、端的に言うと三つ可能性があるのではないかということを言っています。これは表1の下の方に書いてありますけれども、1は、仮の名前を職業カレッジとしますけれども、専門学校のうち一定の要件を満たしたものについて、大学の制度の中には入れないけれども、一定の新しい学校種を作る。これはただし、学校教育法の1条には入れない。これは、ある専門学校の一定の部分については既に職業実践専門課程として認定する制度が始まっているわけでありますけれども、この認定は必ずしも厳しいものではないわけでありますから、それをさらに厳しく、一定の評価を含めて新しい種類の学校として認定するという考え方です。
 2番目は職業短期大学とも言うべきものでありまして、現在の短大に相当するものを1条校の枠内に作る。ただし、この短期大学というのは基本的には短期であることに性格の主眼を置いているわけでありますけれども、職業の準備をするということに主眼を置いた学校種を一つ作るという案です。
 3番目は、1条校のうちに、言ってみれば職業大学といったものを作る。これは学士相当の学位を出せることにして、4年程度の修業年限とすることが考えられるということです。ただ、学士という名前をそのまま使うことはかなり問題があるかもしれません。どこの国でも、学士というのは学術的な体系の学校で学士という言葉を使っています。そういう意味で、学士相当というような言葉の方が適当かもしれません。
 これは端的に三つオプションがあるということを申し上げたわけですけれども、いずれにしても、これを選択するときに幾つか論点はあるだろうということです。
 最も重要なのは、この新種の学校はどういう教育内容を持つのかということです。よく、学術的な体系ではなくて実践的な職業教育だと言われますが、しかし、実践的な職業教育でも一定の体系性がなければ制度的な学校としては成立しないわけでありますから、それはどのような論理でもって内容が構成されるのかということ、それはどういうふうな一貫性を持っているのかということが問題になるだろうということです。
 これに関連しまして、新種の学校がもしできるとすれば、どのような形で質的な保証を行うのかということが非常に重要な問題になってくるだろうと思います。さらに、国際的に見た標準的な学位体系のどこに位置付けられるのかということも問題になるだろうと思われます。この前に申し上げたことですけれども、現在、基本的にはアメリカ型の高等教育では大学の中に全ての教育が統合される形になっています。ヨーロッパでも、今までは職業教育系と学術系の二つに分かれていたわけですけれども、これが両方を統合した学士に統合する傾向にあります。その中で、新しい学位、専門的な学位を新たに作るということには相当な違和感があるし、国際的な説得性は疑われるということもあるだろうと思います。
 もう一つ非常に重要な論点は、新しい高等教育機関ができた場合にどのような需要があるのかという点です。実際には現在の専門学校の半数以上は健康関連系であるわけでありますけれども、こういった新しい学校がそういったところで新しい需要を見付けるのかどうかということも考えるべき問題だろうと思います。
 それから最後に強調していますのが、直接はこの場の議論ではありませんけれども、本来の4年制大学並びに短大が、こういった新種の学校ができることによって縄張りが荒らされるというような感覚で議論をするべきではない。むしろ重要なのは、既存の4年制大学あるいは短期大学が職業的な教育をするということを改めて位置付けることをやはり考えるべきである。特に、現在の大学制度はそういった職業的な教育ができる、制度的には十分にできるような緩い形態になっていると思います。そういった意味では、既存の大学が職業教育をさらに強く、強固に位置付けるということも重要な課題になっているということを既存の大学は意識すべきである。そのために必要な組織的な改革といったことも正面から取り組むべきであるということを主張しています。
 以上です。
【黒田座長】  はい、ありがとうございました。それでは、今、御発言頂きました池田委員、内田委員、金子委員に対する御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
 はい、どうぞ。
【鈴木委員】  池田委員に御質問したいと思います。よろしくお願いいたします。
 先ほどの、地方において、人材育成のところで受皿が足りないというのは本当にそのとおりだと思います。首都圏とか近畿圏の方で集中しているというのはそのとおりだと思うんですが、新たな職業教育を行うような高等教育機関の前提となると言ってはいけないんですけれども、大きな要素となるような現在の専門学校の職業実践専門課程というのは、現在どのくらい地方若しくは首都圏、近畿圏に存在しているのかということと、もしそのようなものを、地方創生ということを考えたら、首都圏、近畿圏において新たな高等教育機関というものに関しましては制限すべきだという御意見なのでしょうか。
【池田委員】  地方において、まだ専門学校とか私立大学がほとんどない地域もございます。残念ながら評価が大変低い私立大学がほとんどに近いんだと思います。いわゆるビジネス系というか、文系ですかね。そういう意味で、専門学校は事実、私ども、いろいろな地域と連携しながら教育内容を高めていって、そういうところは十分対応できる。今回の文科省の高等専修学校を高度化するというところにも、こうした地方の専門学校が相当できてきていますので、そういう意味では十分。ただ、いわゆる地方の教育を充実させるという意味で、それでもまだ足りないと思います。そこの中で新種の高等教育機関に対応できるような文系の人材を育成するものを整備するということが必要じゃないかと思っています。そういう意味では、首都圏でまたそれができてくるということになると、やっぱり大学を制限するのと同じように、首都圏には新種の教育機関を、当然、地方創生から考えると制限すべきだと私は思います。
 以上です。
【黒田座長】  よろしいでしょうか。
【鈴木委員】  結構です。
【黒田座長】  ほかに、どうぞ。
【永里副座長】  金子委員に質問いたします。最後のところに、「いずれにしても、既存の大学の姿勢が変わることが重要であり、それが新種高等教育機関の論議にも大きな影響を及ぼす可能性があることを」と書いてありますが、既存の大学の改革が叫ばれているんですがなかなか遅々として進まない、だからこういう新たな動きが出てきたのではないでしょうか、そういう質問です。
【黒田座長】  よろしいですか。
【金子委員】  私は全部の大学について責任を持つつもりはないんですが、ただ、私はこれはそのとおりだと思います。この教育学術新聞というのは既存の大学の管理者を主たる読者としていますから、私はその既存の大学の関係者にこういったことを申し上げている、主張しているという意味合いで書いているのです。ただ、これは決して、一般的に言えば遅いと言えると思いますが、具体的に見れば、既存の大学でも職業教育の課程を作っているところが実は相当あって、これからさらに進んでいく、進めていくということは非常に大きな可能性としてあるべきところですし、実際にこれから広がっていくのではないかと思います。
 ただ、これに関しては実は幾つか障害もあると思います。一つ大きいのは、今の大学は学部、学科を中心とした組織でできていまして、しかし職業教育というのは言ってみればロットが小さいものが多い。非常に大きい、普通の学部の教育は1学年300名とか1,000名とかはできるんですが、職業教育に関わるものはそういう数であまりできるものがなく、むしろもうちょっと小さいものをきめ細かく作っていかなければいけないわけです。あるいは、職業教育というのは実はかなり需要が変わりますから、プログラム自体も変わっていく必要がある。
 ところが既存の大学は、今までの作り方は、学部、学科に教員も学生も分属していまして、そういう組織の作り方ですので、教育需要の変化に応じて組織を変えていくことは比較的難しかったという欠点があったと思います。ただ、これは制度上そういうふうに規定されているわけではなくて、今まで伝統上、大学というものはそういうものだというふうにして出来上がってきたわけで、そういう意味では、教員の帰属組織と教育プログラムを分離した教育プログラムをさらに柔軟に作るというような形が一般化すれば、さらに多くの大学で職業関連のプログラムを作るということはかなりこれから行われてくるようになると思います。あるいは、そのように様々な政策を進めるべきだろうと思います。
【黒田座長】  岡本委員、先に。
【岡本委員】  内田委員と金子委員に一つずつです。まず、内田委員の前半のところは非常によく分かったのですが、修業年限がなぜ1年から3年までに限定して4年制がないかという、その論拠をちょっとお聞きしたいということと、金子委員の方は二つありまして、表1の1、2、3ということで、いろいろ先生は述べておられるんですが、先生の個人的御意見で結構なんですけれども、最終的にこの1、2、3のどれが最も妥当であると今お考えなのかということと、もう一つ、ちょっと今の最後の大学の姿勢の問題なんですけれども、大学の目的、学校教育法の目的を読んでも、職業教育にどんどん取り組んでいくという目的が書いていないんですね。ですから、ちょっとなし崩し的に、一般教養もおろそかになっている、専門教育もおろそかになっている、その中で職業教育にも手を出している。私は日本の大学はアメリカ型と言いながらも、アメリカはしっかりリベラルアーツを4年間やって、その上に専門の修士課程があると、こういうことなんですけれども、日本の大学はそこがしっかりできていない、ちょっとなし崩し的に職業教育の方に取り組んでいるというか、足を入れているのではないかと、そこに大変違和感を私は感じます。この2点について、御回答をお願いいたします。
【黒田座長】  内田委員、お願いします。
【内田委員】  なぜ修業年限が1から3年かというところですが、これは厳密な考えがあるわけではありません。個人的には従来の大学とは一味違う、社会に対して非常に大きく貢献できるようなものであってほしいという期待があります。そうだとすると、どんな位置付けが必要かというのはまだ明確になされていないために、大学と同じレベルにするか、それとはちょっと違って、同じ内容ではあるけれども3年で十分達成できるかもしれないとか、そのあたりをアバウトに考えている程度でございますので、まだ明確な根拠があるわけではございません。
【黒田座長】  金子委員、よろしいですか。
【金子委員】  私がこの三つを出しましたのは、まだ私自身も迷っているといいますか、どこに行くのかということはこれから十分考えるべきところであると思います。先ほど申し上げましたように、既に専門学校で相当の実践的な教育ができているところがあるとすれば1条校にはならなくて、むしろ現在の1条校外の扱いの中でもきちんとした扱いをして、さらにそれに評価を加えるといった形もあるだろうと思います。
 それから逆に、3の方の4年制の職業大学みたいなものを作れるかどうかということについても、これは一方で必要だという御議論もあるだろうと思いますが、しかし、先ほどのお話などを聞いてみても、地域のニーズに応じたかなり小さい規模のものを想定した方がむしろいい場合がある。そうしますと、4年間の教育課程を作るような体系性とか規模とか、そういったものができるのかどうか、そこら辺も非常に大きな問題です。
 それから先ほど申し上げましたように、4年制の職業の何らかの学位を作るというのは、むしろ一般的には国際的な趨勢とは反している。したがって国際的な位置付けもかなり難しいだろうといったこともある。そういう意味で、3番目のオプションというのはかなり考えるべき、まだいろいろと議論が必要だろうと思います。
 それから後半の大学の姿勢の問題でありますけれども、大学が職業教育をするというのはなし崩しになっていて、これまでの大学はアカデミックな学術的な教育をやっていて、それでお客さんが来ないからちょっと職業教育をやってみようかというような形で変化しつつあるのではないかというお話だったと思います。確かに、もしそうであるとすれば、何というんでしょうか、きちんとした位置付けなしに大学が変容するというのは望ましくないのかもしれません。
 ただ、戦後日本の大学は、決して学術的な教育機関だけを行う機関としてできているわけではないと私は思います。戦後の日本の大学はアメリカのモデルをかなり受け継いでいるわけですけれども、前に申し上げましたが、アメリカの大学というのはかなり大きな幅を持って作っている。教養、リベラルアーツ系だけをやる大学もありますが、もう一方で職業教育にかなり重点を置いて作っている大学もある。教養教育が曖昧になってしまうのではないかということですけれども、むしろ職業教育にリベラルアーツをうまく組み合わせることは非常に重要であって、それを作っているのがアメリカの大学の一つの強みではないかと思います。日本の大学は、それが必ずしもまだうまくできてないところはあるのかもしれませんけれども、私は、むしろ大学にとってのこれからの課題はそこだと思います。
 さっき申し上げましたけれども、今の現行の設置基準では、制度上そういったことができないということは全くありません。むしろ、設置基準を妙に日本的に解釈してしまって、日本の大学は学術的だという印象が作られてしまったと思います。そういった意味で、現在職業教育をやってないじゃないかと、割合とそういったところが少ないことは事実でありますけれども、しかし、それも実際にできるかできないかという点から見てみますと、実は職業教育、きちんとやっている大学は決して少なくないです。特に健康系とか一部の情報系とか、これはかなりやっているところがありまして、決して現在の制度がそれを制約するというふうにできているとは私は全然思いません。
 以上です。
【黒田座長】  じゃ、寺田委員。
【寺田副座長】  金子委員に集中して恐縮ですが、2点ほど質問と意見を述べたいんですが、一つは、大学における職業教育と、それから、再々おっしゃる、特に専門学校等の職業教育のロットが小さいという話ですね。まず、そのことについて。もう一つは、学士という名称を取ることについて違和感があるという、文書で書いておられて、この二点です。
 前者ですけれども、まず、大学における職業教育、つまり、4年制大学で、とりわけ1980年代から追求されてきた大学の職業教育化、これ、正確には「職業教育」となかなか書きづらくて、例えば、九州大学の吉本さんあたりは括弧付けで書いておられたりします。私は、端的に言えば、大学における職業教育、定義が問題なんですが、特定の職業あるいは職業群に対して準備するという意味、狭義の意味、正確な意味で取るのであれば、それが成り立っているのは、いわゆるプロフェッション、教師、医師、弁護士、あと会計士等があるだろうと思います。あと、最近では介護福祉とか社会福祉とか、こういった特定の職業資格対応を大学教育の枠に取り込んでいる学部、学科、これは十分位置付いているだろうと。これは、確かにかなり学術志向なんですね。
 他方、話は戻りますが、80年代あるいは90年代から4文字学部、6文字学部と称して作られてきた職業教育的学部。端的に言えば、観光であるとか、その前は情報であるとか、あるいは最近では福祉系の多様な分野などがそうですけれども、幾つかありますけれども、例えば、観光だとかについて、かなり実証しましたけれども、正確に言えば、当事者たちは職業教育をやっているつもりはないと答えられます。幅広く観光業だとか情報だとかの教育をやっていて、特定の職業、狙いは、例えば、旅行取扱主任とか、そういう資格を取れるような措置を取っているようですけれども、基本的にはやはり学術志向の、幅広い産業分野に人材を送り出すという教育をやっているというふうなことです。実態はそうで、就職先を見ても、例えば、観光に関して言えば、琉球大学以外は余り関係ございません。したがって、先ほど言いました教師、弁護士、会計士等々、資格対応の職業以外の職業教育的教育というのは、私は「産業教育」と呼んでいます。幅広く産業分野の人材を育成する、あるいは、それを超える場合もあるということで、一定の狙いを定めた分野の専門家を養成することは、なかなか成り立ちにくい。そこで、こういう新しい職業教育機関の問題があるんだろうと思います。
 ついでに、ロットが小さいという話ですが、今挙げました、例えば、社会福祉という関係でも、多分、全国の定員を集めると1万人程度です。観光系で四千幾らです。決して大きくありません。専門特化すればするほど、そういうふうになっていって、定員が大きいというのは割と広く、例えば、情報関係とか、そういう言い方で幅広くしていて、結果として大きな定員を確保できるということではないかと思っております。
 それから、ちょっと長くなって恐縮ですが、もう一点、学士の問題です。国際的な動向という話がございましたけれども、そこはやっぱり私は言わなきゃいけないと思うんですけれども、例えば、ドイツ、北欧の例で言うと専門大学というのがございます。この専門大学も現在、学士、かつては学士(専門)というところで職業教育に特化しているということが非常に見えていたんですが、確かに今、ヨーロッパの高等教育資格枠組みの統合化の中で、他方でヨーロッパの職業教育資格の体系化の中で、全体として、ここに先生が書いておられるように、学士に統合するという動きがあります。ただし、中身は従来どおりであって、専門大学の専門職業教育と実践的な教育、例えば、2セメスター、3セメスターぐらいを企業実習に充てるとか、こういったことを全てのみ込んで、「学士」という名称で統合されていっているということだと思います。
 結局、何が問題かというと、4年制、アカデミック志向の大学の専門教育と職業教育あるいは実践にある程度特化した専門教育、これを等価性のあるものとして見るのかどうかということだろうと思います。70年代から中等教育における職業教育と普通教育の等価性の試みが始まって、現在、高等教育の段階にこういう議論が移行してきているということですね。アカデミックな専門教育と職業教育における実務型の専門教育、これは座学という点では割と等価性を承認しやすいわけですが、要するに、実技の部分をどう見るのかという、そこが残っているんだろうと思います。
 私は、これは位置付け方次第であって、実技の部分というものを専門座学の応用という位置付けをすれば、これは広く専門教育として位置付くのだろうと思います。そこが学校教育法の、例えば、戦後の日本の大学教育の目的の中に、一番最後に「応用的能力」ということが書かれながら実現してこなかったわけですけれども、それを今、こういう新たな新機関という形で、4年制大学と等価性を確立しつつ構築していこうとしているのではないかと思っております。
 以上です。何か、もし、金子委員、御意見ありましたら、どうぞ。反論なり、それは違うよとお願いします。
【黒田座長】  どうぞ。
【清水委員】  簡潔に申し上げます。意見というか感想ですが、金子委員の表1が余り独り歩きしては困ると、正直、思いました。職業カレッジと職業短期大学、カレッジと短期大学、名称の問題もありますけど、要するに、この表というのは、今の大学とは別に、職業大学という新しい学校種を作ること。また、大学の中の短期大学のところに職業短期大学を位置付けるという表だと思います。これですと、今の短期大学は縄張りを侵されることになるわけです。しかも、大学という系統と職業教育の系統が混在した制度体系になりますので、制度設計から言うと、余り好ましくないと思います。むしろ、うまくすみ分けできるような高等教育体系を作った方が私は賢明ではないかと思っております。余りにも混在し過ぎて、制度設計としてはどうかなというのが感想です。
【黒田座長】  発言されますか。
【金子委員】  今の御意見、新しい学校種を考えるのであれば、既存の大学がどの程度可能性があるのかということを考えるべきだということになるだろうと思います。私が申し上げたいのは、既存の大学自体は相当変化する必要があるというのは、多分、先生方とそんなに意見は変わらないのではないか。ただ、今、18歳人口の5割が4年制大学に行っているわけでありますから、4年制大学の果たすべき機能は、実は中で相当多様であってしかるべきだろうと思います。多様であるのを、新しい学校種を作って、その機能を分化させるのか、既存の大学自体の中に機能の多様性を持ち込むことによって、むしろそれぞれのよさを生かしていく方向で考えるのか、そういう問題だろうと思うんですね。私は基本的には、機能の多様性を持ち込んだ方が、いろいろな意味で可能性はむしろあるのではないかと思います。
 ただ、既存の大学の制度自体に相当大きな制約があることは事実でありまして、先ほどのお話に出ていましたけれども、ロットが小さいという問題ですが、学部は教員の帰属組織で学生の帰属組織であるという制約を外さない限りは、免許型の医師とか学校の先生とか、専門の学部だけではなくて、観光学部とか、言ってみれば、何でこれが学部になるのかと思うような学部を作らないと、キャリア養成に近いことはできない。ただ、これは制度の考え方を具体的に捉えているだけで、制度上も、教員の帰属組織と学生の教育プログラムを相対的に独立させることによって、これは対応が可能でありますし、アメリカの大学などはむしろそういう方向でもって、そういう機能の多様性を大学の中に取り込んでいる。私は、それはそれなりに成功していると思います。
 では、なぜ、新学校種を作るのがいけないのかという議論は、これからまた議論されると思いますが、少なくとも既存の大学制度の中にそういった多様性を持ち込むことは決して不可能ではないし、私はむしろ望ましいところもあるだろうと思います。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。まだ、あと審議することがありますので先に進めたいと思いますが、今、金子委員が言われたこと、冨山委員が資料4で提出されています。これが極端な例なんですね。既存の大学から、医師とか看護、歯科、薬、法律、こういうものを全部新しい学校種の方へ持っていけという書き方をされているわけですね。二つの山を作ろうというのが冨山委員の例。新しい学校種を作った方が、社会から見たときには非常に明快だという言い方をされておられます。これはまた、何かの機会に議論の対象になろうかと思いますので。
 まだ、あと議論の中で御意見をお伺いしたいと思いますが、資料5、資料6-1、6-2を作っていただいておりますので、この説明をまず事務局でお願いします。
【神山教育改革推進室長】  それでは、資料5、資料6-1、6-2、併せて御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料5でございますけれども、「これまでの議論を踏まえた基本的な方向性」ということで、今まで(1)から(6)までの論点について御議論頂いた中で、比較的大きな異論がないであろうと思われることについてまとめたのがこちらでございます。
 (1)については、養成する人材像・対象者でございますけれども、新しい高等教育機関については業種の限定はしないことや、高等学校の新卒者、社会人のいずれもが入学することが想定されるといったこと。
 (2)の教育内容に関することと(3)の実践的な職業教育としての質の確保については内容が重なりますので、両方併せて五つほど挙げてございますけれども、一つは、教育課程の編成に産業界の意向も反映すること、また、資格に関する分野については、それとの関係に留意が必要であること、そして、実習、実技、演習、実験等を重視すること、また、一定程度は実務家教員が必要と考えられること、評価に際して当該分野の産業界の関係者の関与が必要であることなどでございます。
 (4)は、高等教育機関としての質の確保でございますが、国による設置認可が必要であること、また、分野特性に応じた第三者評価を受ける必要があるということでございます。
 (5)は新たな高等教育機関の位置付けに関することですが、これに関しては、一つ目の丸にありますように、大学体系の中に位置付ける場合には、学位授与機関としての国際的通用性や国内の大学・短期大学制度との整合性に留意が必要だということですし、一方で、大学体系とは異なる新たな学校種を設ける場合でも、国内の各既存学校種の制度との整合性には留意が必要ということでございます。
 また、(6)社会人を含む学生のニーズへの対応に関することについては、社会に出てから再教育を受ける者が学習しやすい仕組みとする必要があることを挙げさせていただいておりまして、これらについては、おおむね大きな異論は今までの議論の中ではなかったのではないかということでまとめさせていただいたものでございます。
 引き続きまして、資料6-1を御覧いただきたいと思います。本日の議論に関しましては、大学体系との関係における各論点ということで、参考資料2の方でも、前回お出しした資料をそのまま入れております。前回は参考資料2の2ページ目、3ページ目、4ページ目の比較表に基づいて、いろいろ御議論を頂いたわけでございますけれども、その中で、本日は特に四つほど、資料6-1の方でございますが、資料6-1のタイトルの括弧書きにございますように、教育内容・方法等、教員の資格・実務家教員、校地・校舎面積、運動場・図書館等の諸施設、評価という、その四つのテーマに関しまして、これまで頂いた主な意見を整理したものを御用意してございますので、主にこの四つの点につきまして、今までの御意見と参考資料2にあります比較表などを御覧いただきながら、御議論頂ければと考えてございます。
 最初の教育内容・方法に関しましては幾つか小見出しを付けておりますけれども、総論の関係では、職業に就いたときに役立つ実践的な知識の体得が可能なカリキュラムが必要といったこと、あるいは、体系化されたカリキュラムでProject Based Learningやインターンシップといった実践的な演習を実施することも有効といった御意見などを頂いてございます。
 また、教育方法に関しましては、一番重視されるべきは実務実習であるということなどの御意見を頂いてございます。
 それから、産業界のニーズの反映に関しましては、二つ目の丸にございますように、企業等が参画してカリキュラム編成を行って、企業の具体的な人材ニーズに的確に対応する必要があるといった御意見を頂いてございます。
 その次は、高校との接続等ということで、主に専門高校の生徒さんが、さらに高度に成長できるような仕組みなどが必要ではないか、特に人を束ねて指導するようなマネジメント能力について欠ける部分もあるのではないかといった御意見を頂いてございました。
 それから、一番下、教養教育の関係に関しましては、グローバルに戦える人材として、教養を持っていることが必要といったことや、二つ目の丸にあります、汎用的な能力を高める方向が求められる、あるいは、変化に対応する発達的な力を付けていくことが重要といった御意見を頂いてございました。
 また、2ページ目の上の方には、ドイツ型なのかアメリカ型なのかということで、その中間を取ったらいかがかという御意見や、一定の教養教育も行いながら、年限3年から4年という複数のオプションなどでやったらどうかという御意見を頂いてございました。
 この教養教育の関係に関しましては、もう一つの資料、資料6-2も御用意をさせていただいてございます。資料6-2は、「教養教育により身につける知識・技能・能力等のイメージ図」ということでして、これの細かい位置関係について議論頂くというよりは、教養教育といったときのイメージは非常に広がりが大きいものでございますから、各委員が教養教育といったときに、特にどのあたりを重視すべしということで、御説明をする際に指し示しやすいようにするという意味で、これまで出てきた御意見をある程度見取れるように並べたものでございます。
 簡単に御説明いたしますと、左上の方には、緑色の枠で人文科学や自然科学、社会科学といったものを並べてございまして、比較的古典的に大学における教養教育と言われたときに扱われていた内容を並べてございます。その下には、少し青みがかった部分を設けておりますけれども、将来的な変化への対応力や汎用的な能力の育成ということで、地球規模の視野や歴史的な視点、多元的な視点で物事を考えて、未知の事態や新しい状況に的確に対応していく力を教養教育を通じて身に付けさせる必要があるといったのが真ん中のあたりでございます。
 左側の青枠のところでは、大学、特に学士課程では、分野を問わずに、そういったものの変化への対応力などが求められる、それを育成することが求められるということで、一つ枠をくくってございます。
 さらに、その下には、一般的な知識・技能といたしまして、大学での学習に必要なレポートやディスカッションのほか、一番下には、社会生活全般で必要となるような知識・技能ということで、コミュニケーション能力やITスキル、あるいは外国語などを並べてございます。このように非常に広がりがあるわけですけれども、さらに、右側の方に行きますと、専攻分野に関連した教養教育といったときに、右側のオレンジ色のようなやり方がそれぞれあるのではないかということで、一番下のところを御覧いただきますと、コミュニケーション能力、ITスキル、外国語が左下にあるわけですけれども、そのすぐ右側の方に、専攻分野に関連した職場で必要となる知識や技能、その分野で必要な英会話や、その分野で必要なITスキルといったような教養教育の行い方もあるのではないかということでございます。
 その少し上には、先ほどは、将来的な変化への対応力、汎用的能力ということで、分野を問わないものを一番左に書いておりましたけれども、もう少し専門分野における、必要に応じて変化への対応力を育成するというのを、その右側にオレンジで書いておりまして、例えば、その分野での起業・独立、あるいは経営で直面する課題解決をPBLで行うことや、人口動態を踏まえたマーケティングやグローバル展開をするのに必要な国際情勢の理解などを当該分野に引き付けた形で行うことも考えられるのではないかというものでございます。
 さらに上に参りますと、専攻分野の周辺領域に関する知識・技能ということで、その専攻分野に関連する法令の知識やマネジメントの知識、あるいは専攻分野の知識・技能を応用・活用する上で必要となる関連分野、例えば、介護・福祉分野にとっての医療分野の知識などを周辺領域として学ぶといったこともあると思いますし、一番上には、その専門の基礎的な知識、工業分野における微分・積分の知識や理美容分野での化学のような知識といったものも挙げられるのではないかということで、今後、教養教育について御議論頂く際に、例えば、特にブルーの部分が重要ではないかといったことや、あるいは、それらをオレンジのような専門分野に引き付けた形で行うのでよいのではないかといったような形で、刷新しながら御議論頂けるようにということで御用意したのがこちらでございます。
 資料6-1の2ページ目にお戻りいただきまして、そこでは二つ目の項目といたしまして、教員の資格・実務家教員について挙げてございます。これまでの主な意見、実務家教員の関係では、企業等の実務家が大学の教員を兼務する制度を作ってはどうかといった観点や、三つ目の丸の最後の方に、教育内容の充実の観点から、専任教員と非常勤講師の組合せが重視されるべきといった御意見を頂いたり、最後の丸のところでは、実務経験の教員の問題に関しては科目によって考える必要があって、一律に実務経験何年以上といったのはなかなか難しいといった御意見も頂いてございます。
 また、教員の資格のところでは、研究業績中心ではない柔軟な教員の業績評価が必要といった御意見や、上から三つ目のところでは、系統的な教育を行うことの中には、当然、研究的な要素が入ってくるけれども、一方で実務家教員には実務卓越性も必要だといった御意見も頂いております。
 また、一番最後のところでは、研修に関しまして、新たな高等教育機関では実務に関する知識・技術と同時に教員としての指導力が必要なので、教員研修によってそれらを確保すべきといった御意見も頂いてございます。
 続いて3ページ目の方には、校地・校舎面積、運動場や図書館等の諸施設に関しての意見を入れてございます。こちらに関しては、国の設置認可に関しては、他の機関と同様の審査を経るべきだけれども、個々の基準は柔軟でよいのではないかと。一方で、市場や世の中での競争性が非常に強く求められているので、教育の質が非常にきつく評価されてくるのではないかといった御意見。あるいは、現在の大学の設置基準また短大の設置基準をある程度柔軟にしていって、その中に組み込むといったような考え方はないものかといった御意見。そして、三つ目に、関係の文化ホールや体育館などをきちんと使わせていただくという形が可能になることで、体育館等を新たに造る必要があるという話にはならない方がよいといった御意見も頂いてございます。
 それから、最後、4ページ目には評価に関するものをまとめてございまして、総論としては、認証評価に関しては専門団体に委ねる形がいいのではないかといったことや、三つ目にありますように、当然、国際的にも通用する形で評価を行う必要があるといった御意見を頂いてございます。
 また、産業界等の関係者による評価ということで、企業等から参画する委員会による評価が必要なのではないかといった御意見もありましたし、最後の項目、分野別評価・プログラム評価に関しましては、新しい高等教育機関の質保証システムを構築する際に、当面は機関別評価の枠組みの中でプログラム評価を行う方がよいのではないかといった御意見や、一番最後、現在の専門職大学院でも評価機関ができてない分野もあるので、各分野において評価機関ができるということを前提にしないと、新しい学校種の議論はできないのではないかといったような御意見を頂いてございました。
 こうした御意見を踏まえながら、先ほど御紹介した参考資料2、前回の資料の比較表などを基に御議論を賜れればと考えてございます。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。ただいま御説明頂いた資料5につきましては、今まで御議論頂いたものを基本的な方向性にまとめてあります。それから、資料6-1につきましては、どういう体系にするのかということで、それぞれの内容について御意見を頂いたものを、その項目ごとにまとめさせていただきました。資料6-1の議論は、大学体系の中での位置付けをする場合と新たな学校種を設ける場合、どちらの方がより機能的になるかということだろうと思います。したがいまして、今日は、あと残り時間で資料6-1の1の教育内容と方法について、2番目の教員の資格と実務家教員の在り方、そういうもの、3番目の校地・校舎、運動場・図書館等の施設等について議論をしていただきたい。あと、時間があれば評価についても御議論頂きたいと思いますので、まず、資料6-1に従って、1の「教育内容・方法等」について、皆さんから頂いた御意見をここに羅列してあるわけでありますが、これについて御意見を頂きたいと思います。どなたからでも結構ですが。どうぞ。
【内田委員】  今の議論の前に、資料6-2で教養教育というのがどういうもので、どういう考えであるべきかということで、コメントさせていただきます。大変よくまとめていただいていると思うんですが、もう一つ、別の観点も大事ではないかと思います。例えば、下の方のコミュニケーションとかITスキル等々、これは教養でもありますけれども、ある意味で専門の基礎というということもできます。それに対して、上の方の人文科学等々に関しましては、一般教養といいましょうか、会社でいえば、直接利益が上がることにつながるわけではないが、会社の品格を作る、ものの考え方の基盤になるということができます。つまり、人間としての品格を形成する基盤として一般教養も大変大事だと思います。それがまた国の品格を作ることにもなります。したがって、高等教育では教養教育は重要で、このような考え方も考慮する必要があると思います。
【黒田座長】  ありがとうございます。今、大学の中でも教養教育の在り方というのを議論されていまして、実社会に出て社会人として役に立つ教養という。昔のような哲学とかシェークスピアを読めばいいとかというような教養は今ほとんどやられてないという、そういうことで、この教養教育、専門とどう連動させていって、ここをスキルアップしていくかという、そういうことが重要だろうと思うので、この表の考え方、今おっしゃったようなことで、どんどん下の方へ下がってきているのが実情ですね。
 川越委員、どうぞ。
【川越委員】  資料6-1の2ページ目の上の方に、丸の三つ目に書いてあることは、この前、私が言わせていただいたことかなと思っておりまして、6-2の資料も大変いいものを作っていただいたなと思っています。先ほど金子委員からも、職業教育にリベラルアーツを組み込む、入れていくということも可能じゃないかというようなお話もございました。新しい職業教育の高等教育機関は、いわゆる大学設置基準と比較検討することは非常に重要ですけれども、それに合わせようという観点で見るのではなくて、それとは違うものを作ろうという観点で見ていかないと、新しい学校種としての意味を失うのではないかと思います。中教審のときにもこのような議論があって、そのとき、前にも、私、言いましたけれども、大学を出るときに、私、単位が足りないと言われまして、大学4年の12月に、「おまえ、人文科学を取ってないじゃないか」と言われまして、人文科学って何ですかという話になって、そうしたら、文学の先生がいい人だというので、私、千葉県の方へまで、哲学の先生のところまで、ウイスキー1本抱えていって、一晩酒を飲んで、取っていたことにしてもらって卒業したんですけど、そんなようなこともあって、私は大学時代、どういう教養の勉強をしたかなというと、私は体育会軟式庭球部という、軟弱な部ですけれども、一応、体育会だったんですけれども、4年間、勝ちたいと思ってスポーツを続ける中で、長幼の序であるとか負けたときにどう身を処すべきであるかとか、社会に出てから生きる様々な知恵を教わったような気がするわけですね。その意味では、やっぱり職業教育機関にふさわしい教養教育というものがあるんじゃないのかなと、そういうふうに思っておりまして、例えば、うちの介護福祉士の学科なんかでは、地域の非常に苦労して生きてこられたような方を毎年何人かお呼びして、人間学教育なんていうのをやってみたりしておりますけれども、そんなようなことも、これから社会に出ていくに当たって必要な教育でありますので、何しろ、大学とは違う教養教育の在り方というものがあるべきでないかなと、そういうふうに思っています。
【黒田座長】  そうしますと、川越さんの発言を聞いていますと、大学の体系の中に入れるのではなくて、新しい学校種を作る……。
【川越委員】  それは終始一貫しておりまして、私はそのように考えて、冨山委員の二つの山の考え方に近い考え方でございます。
【黒田座長】  ほか、ございませんか。どうぞ。
【池田委員】  私も大学経営をしていまして、教養の問題とかいろいろな、大学時代の物すごく大きな課題を抱えているなと思っているんですね。その中に新種の高等教育機関を巻き込んだら、いつまでたっても結論が出てこない。やっぱり物を改革する、若しくは物を発展させる一つの手法として、今、既存のいろいろな課題を抱えているところに何かをしようとして、解決しないで流れていくケースってすごく多い。私は、いろいろなプロジェクトを見ていて、そう思うんです。そうすると、新しいものを作るって、ある種、仮説ですよね、実験に近いと思うんです。それをチャレンジする。だから、今までの経験に基づいて仮説を作ってやるというのが、今回、新種のことだと思うんですね。そういうふうに考えると、やっぱりそこのところで一緒に入れて、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃして、私は過去の流れから、研究とか、大学院も研究をしなければ修士課程も博士課程も取れない。だけど、ここの教員に関しては3分の1とか実務経験のある人たちが教育をやるという意味で、実務をやってきた人が教育者が必要とするものを勉強できるような大学、要するに、教員免許というか、もう少し高度にできるような課程があれば、そういうものも併せて作っていくという議論が必要なんだろうと思う。
 そういう意味では、大学って国公立と私立の間の問題とか、先ほど述べました中央と地方の偏在の問題とか、中央が物すごくオーバーしている問題とか、そういう意味で、研究と教養の、オーバードクターで、博士課程を取っていれば、みんな、すばらしい人材かというと、決してそうじゃないというのも物すごく体験的に分かっていまして、じゃ、大学に入ってから研究を続けているかというと、そうでもないみたいな、いろいろなことがあって、そういう人たちは地方にばらまかれて、レベルが低くなって、もう市場からアウトになっているというような状況の中で、そこでまた内部に入って変革しようなんて、これを巻き込んで変革しようなんて、それはちょっと難しい。やっぱり新しいものを作って、それがヨーロッパとかアメリカとか、事例ももちろん、過去のことを研究するのは必要なのですけど、日本というのが中央集権になって、なおかつ地方が疲弊して、極度な高齢化になって、島国であって、グローバル、全然位置付けが違うので、新しいものを創造、クリエーティブするということは物すごく大事だと。未来へクリエーティブするというのが、多分、この議論の中心にならなきゃいけないんですけど、既存のものの中のところにぐちゃぐちゃと入れてしまう議論でずっと終始するというのは非常に危険だなと私は思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。
【金子委員】  ちょっとよろしいでしょうか。
【黒田座長】  はい、どうぞ。
【金子委員】  これ、落ちついて議論するべきところだと思うんですが、今のお話を聞いていますと、何でも、かなり、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃとおっしゃっていて、この話をそれで片付けてしまうのであれば、もう議論にならない。やっぱりそれは少し問題を区別していくべきところだと思います。地方の問題と学術と実施の問題、幾つか違う次元がありますから、そこをやはり落ちついて議論するべきだと思います。
 それから、大学について、学術的なことをやって、地方に役に立たない人をばらまかれると言われると、私はこれは大学人としては大変心外でありまして……。
【池田委員】  いや、先生の大学は大丈夫です。
【金子委員】  いや、大学によらず、そういう人もいるでしょうし、また、おっしゃるようなこともあるだろうと思います。これ、やっぱり一括して、そういうふうに一まとめの議論を、ぱっとこういう場でされてしまうと、実のある議論ができないと思います。そこは私自身も含めて、少し気を付けて議論した方がいいと思います。
 以上です。
【池田委員】  分かりました。それは素直に反省します。
【黒田座長】  ほかにございませんか。前田委員。
【前田委員】  どなたに御質問ということではないんですが、以前から、ずっと疑問に思っていたこととしまして、新たな高等教育機関が、例えば、今の専門学校を充実させるといったときに、本体の専門学校が行っている職業教育の部分はどう充実するのかというのは、余りこの会議で聞いた記憶がないような気がしております。本当はそこが大事なのではないかという気もしておりまして、そこのところが見えてこないと考えにくいところがあります。どなたでも結構なのですけれども、何かプランとかおありだったら教えていただければと思います。
【黒田座長】  はい、どうぞ。
【川越委員】  職業教育の本体のところを充実させるというのは、ずっとやってきていることであって、我々は実績を上げないと選んでもらえないという立場でずっと来ています。だから、中身の充実は当たり前のこととして、でも、じゃ、1条校になろうとしている新しい職業高等教育機関、いいものにしてもらおう。そんなに本体の職業教育に大きな差があるかというと、それは余りないんです。むしろ、来る学生たちの質によって、もちろん高いレベルのところを目指す、例えば、税理士を目指す子たちと、日商簿記2級まででいいんだ、ビジネスの会社に行けばいいという子とで、この間では当然違う教育が提供されているわけですけれども、今の専門学校教育が1条校にふさわしくないから中身を充実させて1条校になろうぜという話ではないんじゃないかなと僕は思います。そうじゃなくて、今までできていなかったことは何かというと、やっぱり質の担保とか一定の質の範囲にみんな収まっているという保証とかです。どこが大学と違うのかというようなことを明確にしていくことによって、そこに合致してくる学校が今、第一段階としては職業実践専門課程、先ほど、鈴木委員から、どのぐらいあるのという御質問がございまして、17%は初年度取って、二年度目にまた増えると思いますけど。
 例えば、宮崎県の場合、二十数校、私どもの連合会に入っておりますが、入っていない専門学校は結構ありまして、看護学校はほとんど入っていないですね。看護学校は厚生労働省の指定養成施設であるということの方が重要で、専門学校認可、余り考えてはいらっしゃらないところが多い。私、今度、看護学校を作るので、ちゃんと専門学校の連合会に入れるんですけれども、その歩みでいくと、宮崎県の場合、今年で、もう1校増えて8校になるんだと思いますが、加盟校でいうと3割ぐらいが認定を受けることになるんですけど、認定を受けた学校は、外形的に一定の要件をきちんと満たしておりまして、大体は、それを得ることで信用を得なくても、既に信用を得ている学校が、それをきちんと形の中にはめて保証していくというようなことが、今の職業実践専門課程だと思います。御質問の答えになったか分からないですけれども、中身の職業教育、専門の教育についての充実は当然やってきたし、やっていかなければならないことだろうと思います。
【黒田座長】  はい、どうぞ。
【前田委員】  その辺は十分分かりました。そうだとした場合に、今、地方創生ということもあって、新しい教育機関ができたときに、それに魅力があるから、そっちに行こうというふうに考える呼び水は何か。要するに、今まで、一番本体の部分はちゃんとやっているんだ、いいんだといったときの新しい高等教育機関の魅力というのは、どこになるんだろうというところについて、どなたか、お考えがあればと思うんですけれども。
【黒田座長】  じゃ、岡本委員。
【岡本委員】  昨年、7回議論されてきて、各論の積み上げがされてきて、資料6-1になったと思うんですよね。ですから、もう年も変わり、3月に向けて、どういう方向性を出していくかということでありますので、今の前田委員のお話にもあるとおり、やはり制度設計の基本的な理念、コンセプト、そして、もう一つは、やっぱり実態とニーズですよね。そこの両面を見た考え方が必要かなと。昨年末の第7回でも申し上げたんですけど、やっぱり制度設計の土台となるものは、一つは分かりやすさということ。それに、名称の問題も含まれます。先ほどの金子委員の職業カレッジとかいろいろあったんですけれども、やはり屋上屋を重ねるようなものや、もう既にある専門学校群とどこが変わるのか、はっきりしないような新しい学校種を作っても、学生にとっても全く魅力がありませんし、保護者、産業界にとってもよく分からないということになってしまいますね。分かりやすさが大事。
 それから、二点目は、やはり学校教育法の1条校に入っている学校とそうじゃない学校、これは実際に経営している経験のない方は、どれだけの格差があるかというのはお分かりにならないと思いますけれども、学ぶ学生も含めて、実際問題、非常に大きな格差があります。
 三つ目は社会的な地位。これも共通の問題であります。
四つ目が国内通用性と国際通用性の必要性ということです。そうした論点を整理しながら、やはりそろそろ制度的な方向性を出すべきじゃないか。その上で、今日も参考資料2、これは昨年の12月に出されたものの再掲、再提出だと思うんですが、「大学体系との関係」ということで、2ページ、3ページ、4ページということで、大学体系の中に位置付けるのか、大学とは異なる新たな学校種として位置付けるのかということで、よく見ていただくと、それほど大きな差はないんですね。ですから、大学体系の中に位置付けられることも、金子委員もおっしゃるとおり、可能性はあるよというお話だったと思いますし、大学体系とは別の職業教育体系を新たに作る場合、一番の違いは、学位ですね。学術学位、職業学位、いずれにしても学位相当のものが出せるかどうかという話と、それから、研究の位置付け、教員資格のところが違いはありますが、しかし、新しい学校種の目的を考えれば、この二つの体系がそれほど大きく乖離するようなものにはならないのではないか。ですから、ここを、どちらに絞るかというのはまだ時期尚早だと思いますが、大学体系の中に位置付けられる可能性、大学体系とは別の可能性、こういう議論を是非進めていって、一体何が違うのか、どういうハードルがあるのかということで考えるべきじゃないかなと思います。
 専門学校を始め職業教育機関に学ぶ学生たちは産業界にたくさん輩出されております。そういう若者が新たな学校種が創設されたら、さらに学ぶ意欲を強め、学ぶ環境が整えられ、また、産業界もその認識を新たにするということでありまして、やはり新しいニーズは新しい枠の中に入れるというのが中教審、教育再生実行会議、そして、この有識者会議という流れなんですよね。だから、その流れを是非見ていただいて、今そういうのが求められているんだというところで御理解頂ければいいのではないかと。今の専修学校につきましても、私からも、詳しく申し上げましたとおり、職業実践専門課程が第二期も相当数の学校が申請しております。これが全部認定されるかどうか分かりませんけれども、全専門学校の学校数・学科数の約25%が職業実践専門課程に申請をしている、あるいは、もう認定された、こういうことでありますので、どんどんそれが増えてくる。やる気のある専門学校群、学ぶ学生、それを受け入れる産業界、この仕組みはできていますから、それをさらに伸ばす仕組みをどう作るのかという問題が重要だと考えています。
 以上です。
【黒田座長】  どうぞ、長塚委員。
【長塚委員】  先ほどの前田委員の御質問とちょっとかぶるのですが、今の職業実践専門課程、私も、この会合に参加するようになって、初めてよく認識したような次第で、始まったばかりの制度なので、世間に知られてないと、あるいは、高校教育の現場などには余り知られてないということなのかもしれませんが、本来ならば、これは今ここで考えているような高等教育機関における実践的な職業教育を見越した、先行的な、試行的な取組ということで始まっているんだろうと思いますので、その経過とか成果とかがある程度把握された段階で、だからこれが必要なんだとか、そういう議論になるのが、いわば実証的な議論につなげていく方が大事なのではないか。職業実践専門課程というのは、専修学校の学校単位というよりも、学科単位で認められているとも聞きます。ですから、まだまだ学校単位での在り方をどうするかということに至るには、相当積み上げが必要じゃないか。何よりも、その成果が、産学協同でやっている、大学もやっているようですけれども、専修学校がそれをやったときに、どういう成果があるのかということをもっと明確に実証していく、その中で初めて、この議論が深まっていくのではないかと思えておりました。
 大学、短大はアカデミックな資源を相当持っているわけです。というのは、設置基準が非常にハードルが高いですから、施設、設備も教員も、これまでのいろいろな教育の実績の中で資源を持っているので、それを生かさない手はないと私は思いますし、一方で、専修学校の自由度の高い教育が必要だということで、それが効果的だということはよく分かるものですから、両方が相まったような中で、いわゆる教養と専門と言うんでしょうか、理論と実践と言ってもいいんでしょうが、あるいは学術と職業と言ってもいいんでしょうけれども、そういうものがあわさったようなものになっていく。先ほど、金子委員から、機能的なものとして考えたらどうかという意見が出ましたけれども、私もどちらかといえば、そちらの方にして、大学と専修学校及び企業が一体となって、それで習得したものを新たな職業的な高等教育の学習をしたという認証を与える仕組みを作っていくあたりからいけば、大学、短大、あるいは専修学校も、その両者が協力し合って、よりいいものを、資源を生かしながら作り上げていくことができるのではないかなと考えています。
 というのも、1条校の問題が随分出ましたけれども、1条校ってそもそも何で1条校になりたいのか、1条校って一体何なのかということですが、私は非常に単純な考えですが、設置基準の問題なのかなと。設置基準は、前回お配りいただいたもので、この資料6-1の後半にも議論があるわけですけれども、例えば、校地、校舎などを見ても、大学、短大及び高等専門学校において、収容定員200名に対しては校地が2,000平米必要だ。しかし、専修学校は特段の決めがない。必要な面積でいいんだというだけで、決めがないわけです。これは、我々、中等教育学校の設置基準よりも緩いんです。そういう中で、いわゆる設置基準というのは、教育機関の教育の質を担保しているのではないかと。教育の環境の質と言ってもいいんでしょうけれども、そういう施設設備や教員などの質を担保する意味で設置基準があり、それが1条校としての区分になっているのではないかと思うものですから、その辺のところを余りないがしろにしちゃいけないのではないか、そこが教育の質を担保するというときに非常に基本的なところではないか、そんな気がしております。
 ということで、冒頭言いましたような機能的なということからすれば、職業実践専門課程をしっかりと発展させて、それを機能的に、新たな実践的な職業教育の高等教育に結び付けていけないものかな、そんなふうに感じているところでございます。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 それでは、簡単に。
【岡本委員】  じゃ、簡単に。今の長塚委員のお話なんですけれども、前にも何遍もお話し申し上げているんですが、職業実践専門課程というのは、専修学校制度の中で質のより高い学校群を文部科学大臣が認定する、こういう制度でありまして、これはこれで今後、ずっと継続されていくものなんですね。だからといって、それは5年先、10年先にならなければ、新たな高等教育機関の話ができないというのは、これは日本特有の先送り議論なんですよ。今、世の中で、すぐにでもやるべきことを先送りする時間的余裕はありません。中教審答申は平成23年1月なんですよ。4年たっているんですよ。それで、ようやく教育再生実行会議という流れになっているわけですね。人口がこれから減少していく、大学や短大、専門学校だって学生数がこれから激減するかもしれない。しかし、社会人の学び直しもあるかもしれない。そういう環境変化の中で、必要性があるということで、こういう議論がある。
 それと、もう一点、1条校とどう違うのかとおっしゃいますけれども、国公立の学校は、100%税金立学校です。私立中高、私立大学、これも補助金を相当もらっています。しかし、1条校というのは、補助金なくしてはたして1条校の質を保てるんですか。専修学校はよくやっているけど、君たちは補助金なしでずっと質の高いものをやりなさいと、こういう議論は全く現実を見ていないと私は思っています。教育というのは未来への投資なんです。お金が掛かるんです。1条校というのは国のハードルがあって、その中で手厚い保護もあるんです。1条校だからハードルも高い。だけども、支援がある。この基本的なところが1条校のポイントなんです。ここを是非御理解頂きたいと思います。
 以上です。
【黒田座長】  服部委員。
【服部委員】  今日頂いた資料の中で、資料6-1、6-2、参考資料1、参考資料2によって、今までの議論がかなり集約されてきたように思います。これからの議論は、今日頂いた、事務局が作っていただいたんですかね、皆さんの意見を集約した、この資料6-1、6-2、さらには参考資料1、参考資料2の個々の項目について煮詰めていけばいいかなと私自身は思っています。
 先ほどから、いろいろ出てきましたように、一般の大学教育と、ここで議論する専門職業教育、大学においても、先ほど、寺田委員がおっしゃっていましたが、地方の大学においてでも、職業教育を一生懸命やっている大学もあることはあるんですね、小さな規模の大学でも。だから、一般の大学と言われるところと職業教育を行うところとの違いは、極端な例になるかもしれませんが、普通科高校と専門高校の違いだというぐらいに言い切ってもいいかなと思います。普通科高校は、大学進学を目指す、あるいは就職を目指すにしても、一般的な教養を全般的にカリキュラムの中に編成して、一斉授業の中で授業を行う。ところが、職業教育は、社会に出てすぐに間に合うような高校生を3年間で育成するということで、かなり実社会の中に現実に起こっていることを教員が把握して、それを絶えず課題として学ばせていく。その意味では、私、岐阜県の事例でお話ししましたが、専門高校の内容と高等専門学校がかなり、そして、さらには専門学校も、ある意味では職業教育を重点的に行っているという意味では共通する部分があると思います。だから、これは参考になると思います。専門高校あるいは高等専門学校、専門学校の、職業教育に特化したその仕組みは何が違うかというと、今日の資料6-1の中に、新たに教育方法というのを、教育の内容の違いよりも教育の方法、学び方の違いということ、これを入れていただいたことはうれしく思いますが、その下に高校との接続で専門高校ということも紹介していただいたんですが、高校における専門高校、専門学校、高専等の職業教育というのは、ある意味では職業教育に必要な専門的な知識、技能を既存の知識、技能を学びますが、それだけでは不十分です。既存の学習を学ぶだけではいけないので、新たな創造性というか、独創性、そういうものを身に付けていく。それは、絶えず課題を持って、その課題を解決するというようなプロジェクト学習的なことをやりながら、新しい問題にぶち当たり、それを自分自身の考えで突破するというか、挑戦的な学びを絶えずやっている、そういう教育方法、学びの仕組みというのが特徴的ではないかなと考えます。
 職業教育に特化した学びと一般の大学との違いは、そこら辺がちょっと違うのではないでしょうか。先ほど、前田委員がおっしゃっていましたが、私はそういうふうに解釈して、それで、今後の方向としては、大学の中にも専門教育に特化した、あるいは職業教育を実際に行っている学部とか、あるいはそういう大学もあるというようなことも考えながら、今ある大学の中で職業教育をさらに充実させるという意味も含めて、大学が持つ機能、専門学校、専門高校、さらには高等専門学校が持っている機能、そういうものを生かす。さらに、それプラス、実社会というか、実業界、産業界の人材育成というか、産業界の学びの仕組みというものを加味した、そういう新しい仕組みをつくる。新しい建物を作って新しいものという、そういう方法もあるかもしれませんが、そうじゃなくて、様々な機能を生かしながら、そういうところの、ある意味では生かせるところを十分活用しながら、機能的に生かしながら学ぶ仕組みを構築する方法に向かうべきではないかなと思っております。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 それじゃ、清水委員。
【清水委員】  まず、今日御用意していただいた資料6-2、教養教育のイメージについてです。このあたりが恐らく新たな学校種と既存の大学体系の違いが表れるところだと思います。緑の部分の、人文、社会、自然というのは、1945年のハーバード大学の「自由社会における一般教育」というハーバード大学モデルです。このモデルが入ってきて、最初の日本の大学では、文系は40単位、理系では36単位、それぐらいの学修量を持っていました。そのほか、一般的な青い部分、これはどちらかというとスキルの部分ですね。技能強化の部分です。先の緑の部分は一般教養(教育)で、general educationと呼ばれるものです。アメリカのリベラルアーツというのは、学士課程というか、学士課程がリベラルアーツとなっております。オレンジというか、黄土色の部分はメジャーになるわけです。メジャーと一般教育general educationとスキル、これがリベラルアーツで4年間を構成しています。しかも、教養教育の持つシェアが非常に大きいです。日本の大学についても、教養教育部分と専門教育の部分を1対1で設計しなさいという助言があったぐらいで、ここが大学学士の非常に重要な点があるわけです。その後、70年近い歴史の中で、我が国では一般教育がだんだん減らされていったことは言うまでもないことです。ここの部分をどう設計するかというのが、新たな学校種の設計の大事なところではないかと思います。
 もう一つ、その上で制度設計を考えた場合に、この間、文科省は、組織という考え方を改めて、課程制にしたわけです。つまり、プログラム主義の方に移行したわけです。学士課程とか修士課程とか博士課程というものです。そういう課程で考えれば、私は今の大学の部分と新たな学校種の部分とは、すみ分けできると思っています。学位というものを考えれば、アカデミックの学位の体系と職業学位の体系、この二つを考え、職業学位を授与する職業大学というのを新たな学校種、1条校に設置して、その中に短期のものも入れるということになります。しかし、それはあくまでも職業学位であって、従来の学術学位とは違う。そういうふうにすみ分けしていって、学士レベルのものを作れば、当然、将来的にはその上の大学院レベルもまた作りたくなります。これは、制度の歴史が語っています。そのときに今度は、専門職学位に結び付けていくことになります。
 そうすると、子供たちの学ぶ側から見れば、専門高校から新たな学校種の実践的な職業教育課程に入って、将来的には専門職学位に結び付けることができます。私は、そういう学びの道が新たにできるのではないかと思っています。
【黒田座長】  麻生委員。
【麻生委員】  今は、教育内容・方法についての議論でございますが、全体的には評価にも影響する内容だと思いますが、私が提出資料で冒頭に疑問を呈した職業教育、若しくは実践的職業教育における学習成果とは何か、さらに学習成果を獲得するための内容、方法があります。そこで最終的には評価につながっていくという観点から言うと、その論点が、どうも今までの意見の中で、職業教育における学習成果の測定と、獲得を含めたものが見えてこないのですけれども、その点はいかがなものでしょうか。
【黒田座長】  これは、どういうふうに考えておられますか。
【服部委員】  これは、専門高校のレベルで言うと、農業、工業、商業とか、私、専門高校の校長もしていたんですが、これは産業界に間に合うために、様々な産業界が資格認定というか、そういうものを持っていますね。例えば、工業だったら、電気工事士とか、計算技術検定、それが3級から2級、1級とか、そういうような、それぞれの産業界ごとに、そこで身に付けておいてほしいような、そういう資格認定というのは既に幾つかあります。商業は商業で簿記検定とか、いろいろな分野があって、それが今の社会の中で公的に認められている資格に結び付くような技術を身に付けていく。目的はそれだけではないんですが、そういうものによって評価される部分がありますということを紹介しておきます。
【黒田座長】  ほか、ございませんか。次の教員の資格・実務家教員の在り方、そういうところに入っていただいても結構ですが。よろしいですか。
【川越委員】  先ほど前田委員から、充実しているんだったら、何もこっちに来なくていいじゃないかというような話がありましたが、例えば、職業実践専門課程の認知度のお話がございましたけれども、今、全国では75%が普通科、25%は専門高校、宮崎県では五分五分。我々が学校として来ていただける学校は専門高校がメーンになります。そうすると、宮崎県立大宮高等学校とか宮崎県立西高等学校とか、説明に行っても、ほとんど無駄なんですね。門前払いされるしね。みんな、大学を目指していますから。だから、我々が行く範囲の高等学校については、相当な御認識を頂いていると思っています。
 問題なのは、実は75%のうちの半分以上の難関校を目指せない普通科高校が多分一番問題なんです。大学信仰の強い親が、とにかく普通科に行って大学に行けという教育をするために、無目的的に大学に進むという子たちの数が一番多いのが普通科の下の方ですね。下の方なんて言っちゃうと怒られるけど、偏差値上、下の方です。高校時代に、専門高校の子たちは一定の好きなものがあって、それを勉強して、その方向で専門学校に来る子がかなり多いです。就職が第一と考えて、専門学校に来る子もたくさんいるわけですけど、しかし、普通科校の子たちというのは、特に宮崎県で言うと、宮崎市周辺の元名門普通科高校が下の状態になっています。それは何かというと、まちの真ん中に学区のない中高一貫だとか、高等学校の特別な科だとか、大宮高があった文化情報科とか、西高だったら理数科といって、どこからも来られる。そうすると、日南も高鍋も、その周辺は、頭のいい子は全部そっちに行っちゃうんですね。だから、旧制飫肥中から伝統のある我が日南高校は極めて大変な状態になっていると。そういう子たちは、本当は、率直に申し上げて、専門学校に来た方がいいと僕は思っているんですね。よく分からない勉強をするために大学に行って、訳も分からず4年出て、僕みたいに大学をモラトリアムだと思えば、それはそれでいいんですが、全部が全部そういう意味じゃないけど、そういう子たちもたくさん普通科の中には交じっているという意味において、その子たちがプライドを持って学び、地域社会で就職したときに、ああ、おまえ、専門卒かなんていう差別は受けない、そのためには、こういう制度を創設することによって、誇りを持って学び、社会に出ていくことが重要です。
 正直な話、こうなっても募集には大してプラスにならないんです。なぜなら、子供たちは専門学校は学校だと思っているんですから。今更、学校になりましたと言ったって、何のPRにもならないと僕は思っています。我々は、補助金なしで経営してきたんですから、今更補助金が欲しいという話じゃ……、いや、くださるものは頂きますけど、補助金が欲しいという話でやっているわけじゃない。やっぱり学習者の、学生であって学生ではないという状況を、僕は、きれいごとみたいですけど、解消したいという気持ちが、この1条校の新たな専門学校の創設に対して考えることです。
 それと、もう一つ、厚生労働省の委員会とかしょっちゅう出るんですけど、労働統計にきちんと専門学校の卒業生の就職率が出てこないんです。なぜなら、厚生労働省は統計を取ってないから。統計を取らない理由は、1条校じゃないから。そんなこともたくさんある。60万人以上いるのに、厚生労働省の統計がちゃんとないということも幾つかあってやっているということです。
【黒田座長】  金子委員。
【金子委員】  事実だけですけど、専門学校の就職状況は、学校基本調査で一応調べてはいますけれども。
【川越委員】  もちろん。しかし、厚生労働省の統計には出てこないですよ。
【金子委員】  学卒者の就職状況は厚生労働省独自、大学についても取ってないですけど。
【川越委員】  でも、統計として、私が行った委員会では出てくるんです。
【金子委員】  それ、多分、学校基本調査から取っているんだと思います。それはそれで……。ただ、今、川越委員がおっしゃったことは大変面白い、面白いというか重要なことで、1条校とそれ以外の差というのは、その議論から発想したんですが、これ、前から川越委員、おっしゃっていたんですけれども、余り選抜性が高くない高校の子で、余り行き先がはっきりしてないから大学に行ってしまう。これはやっぱりおかしいのではないかということなんですけれども、確かにそういうところはあるんだと思うんですね。選抜性の高くない高校の子というのは、専門学校に行く子を見て、「おまえたちはいいよな、やることがあるから」と言うそうですね。それ、今までとは大分違っていることは事実で、要するに、やりたいことがはっきりしてないから一般の大学に行ってしまうという子は今結構いると思います。ただ、それの捉え方は幾つかあると思うんですね。新しい学校ができれば、そういうところにチャンスがあるから、そっちにそういう子が行くのかどうか。それは私はかなり疑問でして、むしろ問題は、高校3年生のとき、自分が何をやりたいのか分からない子が結構いて、この子たちをどうするのかということです。そのときにもう職業を決めろと言ってしまうのか、それとも、大学に入って、もう少しいろいろなことを考えて、それで決めていくと言うのか。これはいろいろと方法があると思うんです。
 専門学校、ある意味では一般教育的なところがあって、一定の職業に入って、そこから中心として、いろなことを考えて、いろな考え方ができてくる、これも非常に重要な出来方で、私は決して悪くないと思うんですけれども、ただ、今決まらない子を無理やり、新しい学校種ができたら、そっちに行けるようになるから、その人たちが初めから職業を志望するようになるかといえば、それは必ずしもそうではないのではないかと思います。小さい点のようですけれども、実は4年制大学というのはそういうところがあると思うんですね。教養教育というのは、ただ単に、いろなことを勉強するというんじゃなくて、4年間を通じて人格が変わっていって、いろなことを成長する場ですから、成長する環境を作るというのは4年制の大学の学士が持っている非常に大きな意味で、そこは非常に大切にしなければいけない。その中で、個別の職業に興味を持った人たちが入るようなところもできてもいいだろうし、そうじゃないところもあってもいいだろう。そういう意味で、4年制大学というのは、幅があるところが、ある意味では非常に大きな意味があるわけで、そういう意味で、余り最初から、やりたいことがはっきりしているのではなくなっている若者の現状を考えると、やはりそういった側面も非常に重要だと私は思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 ほか、ございますか。はい、どうぞ。
【鈴木委員】  教育内容・方法のところに戻りたいと思うんですけれども、資料5のところで業種の限定はしないということなのですが、保健医療系ということに、私は新しい学校種が必要なのかどうか、ちょっと疑問なところがあるんですけれども、まず、保健医療系では厚生労働省で規定されている養成施設に関しましては、恐らく教育課程の編成基準等も示されておりますし、最終的に国家試験があって、国家試験のガイドライン等も出ておりますので、また教員基準も、実務家教員何人入れなさいというようなこともかなり決まっております。そこから外れることはできないので、恐らく保健医療系に関しては、教育内容・方法等につきましては、現状の厚生労働省の規定している内容に従うしかないかなと思っています。
 保健医療系の場合は、そこで国家試験に受かれば、ほとんどその領域において就職が可能というか、受皿があるんですね。そういう意味では、国家試験に受かればいいかなと思います。国家試験に関しては、今のところ、恐らく、管理栄養士に関して言えば、専門学校と大学では合格率がかなり変わってきております。その辺は、恐らく教育の内容というよりも、最初のところの選抜性という問題があるのかと思います。恐らく、今のところ、高校生として資格志向が多いので、保健医療系の学校ができて、もしハードルが低ければ、かなりの人数が入ってくることは確かですけれども、ドロップアウトとか、その後の国家試験のところでセレクトされていって、大学の方、若しくは新しい教育機関についてもセレクトされていく可能性が高いかなと思います。
 問題は、はっきりした資格系、国家試験があるような保健医療系の資格系でないところの産業界で、ある程度領域に特化したプログラムを産業界の方で本当に提供していくことが可能なのか。また、提供したプログラムをちゃんと修了した学生を就職という形で受け入れることが可能なのか。それから、即戦力というのは、恐らく即戦力外になり得る可能性があると思うんですけど、そのあたり、教養教育ってすごく遠回りなんですけど、長い意味で応用力が効くということで、そこの分野じゃなくても動けるということで、私は重要だと思うんですが、即戦力、即戦力外になってしまう可能性もあるし、若しくは、そもそも戦力にならないで、でも、その教育しか受けてこなかった、その職業に特化したものしか受けてこなかったという学生たちの行き場みたいなところをどのようにお考えになるか。産業界からいらしている方にちょっと伺いたいと思っています。
【黒田座長】  どうぞ。
【永里副座長】  ですから、この中で議論されてない部分が一つあって、何を教えるのかということ、本当に議論してないんですよ。それを詰めていかなきゃ、まず中身を固めていかないと、器というものはできないんだと思うんですよ。そういう意味では、中身が決まってくれば、先生をどうするのかと、こうなる。と同時に、大変変なことを要求しているということも出てくると思うんです。すぐ陳腐化するようなことを職業教育で教えても意味がないわけですから。ということは、実は中身の議論を、このメンバーでやる必要はないんだと思うんですけれども、実際は産業界も入れてやるべきじゃなかろうかと僕は思うんです。今のお答えにはなっていませんけれども、本当はそこをやらないと答えにならないんですね。
【鈴木委員】  そのとおりだと思うんですが、産業界って非常に広いですよね。保健医療系だと、ある程度特化されていますけれども、広い産業界を、今の産業界の中でまとめて、こういう内容をすべきだ、そうであれば産業界として受け入れるんだというようなことが、今の産業界の中でまとまり得るんでしょうか。
【永里副座長】  大企業は経団連みたいなところがありますね。それから、中小企業の固まりとして、かつ大企業も入っている日本商工会議所があります。それから、極めて聡明な方々が勝手なことを言う経済団体もありまして、これはこれで非常に重要な経済団体なんですよ。そういうところに文科省から働き掛けて、しかるべき委員を出してください、と要請する。できると思いますよ。
【池田委員】  一応、産業界の1人だということでお声を掛けていただいたので発言させていただきますが、今日発表した2ページ目の右下に、「学士・称号及び各種資格の国家認定」、ここがすごくキーなんですね。それで、厚生労働省の介護だとか看護だとか、いろな国家試験のあるところ、私もそこの分野を持って、自負としては日本でトップレベルの大学に10年ぐらいで育ったという。そういう意味で、目標が明確になっているところに関連する。だけど、今、日本が大きな課題を負って、地方との問題を持ちつつあるんです。もう一つあるのがサービス産業の付加価値。世界で最も付加価値が低い、要するに、高度化されてない。それが非正規であったり、いろな課題がある。そういう意味で、国際的に開放するために、闘うためにはサービス産業の付加価値の高度化。そこには人材が必要なんだ。それが残念ながら目標がはっきりしてない大学生をいっぱい出して、そこでいろいろな経験をすればいいのではないか。それで出て、残念ながら、とんでもない職業しか選択できないのではなくて、その中で、さっき、金子委員が、すばらしいことを言ったが、高度なことを勉強しながら、いろな人間性の幅を広げる。こういうフィールドがあってもいいのではないか。そういう意味では、専門学校、大卒でなかなか取れない税理士だとか、取っている専門学校、幾つかあるわけですね。そういうことに対して、専門にして、それから幅を広げていくという人間の生き方もあってもいいはずだと。そういう意味では、サービス産業の付加価値を付けるという意味では、各種資格の国家認定、これは国際プロトコルからいくと、物すごく大事な話。1行しかないんですけれども。そういう意味で、そういうことも対応できるというのは、残念ながら、いわゆる研究だとか、そういったことの先生方じゃなくて、専門職の物すごく高度な先生方に教育の手法をもう少し高めて、そういう専門、新しい高等教育機関の中に1ルート、明確に作っていくというのは物すごく大事だろう。それはサービス産業ということ。そういう意味では、高専が物すごくすばらしい仕組みを作ってきて、日本というのを作ってきたので、そういう意味でサービス産業の高専を作る。そういう意味で、高専は職業教育だと。そことのプロトコルの2年間、若しくは、できれば4年間のコースも集約されて、技科大学が長岡と東工大とあるわけです。そういう仕組みを作っていったら、物すごい、世界でも先駆的な教育になるのではないかと私は思っています。
【黒田座長】  どうぞ。
【青山委員】  日本商工会議所の青山です。商工会議所の立場から、完全な答えはできませんけれども、今御質問があったことにお答えさせていただきたいと思います。企業の方も非常に幅広い分野で人材が欲しいわけです。特に中小企業は、いろいろな業種がございます。一次関連産業から三次産業まで幅広い分野でニーズがあります。前回会議から大分などの地方創生の話が出ておりますけれども、2015年度中に成長戦略の地方版総合戦略を策定することになっております。そうしますと、各地域でどういう産業がこれから必要になってくるのか、伸ばそうとしているのか、そのための人材というのは、地元の教育機関で対応ができるのかどうか、というところが問われてくると思います。
 一方で、求人・求職間で非常にミスマッチングが多いというような指摘がございます。何故だろうということですけれども、それをもう少し各地域で深掘りして、原因を究明していくべきだと思います。企業側も情報発信力が、まだまだ弱いところがあります。このためいろいろ仕掛けを作っておりますけれども、同時に、新たな教育機関を創設することに合わせて、企業側の情報発信力をさらに高めていかないといけないということは、企業サイドとしては当然の役目だと思います。
 私は教育については素人ですが、一つ視点が欠けているのかなと思うことがあります。それは学校種を作るというのはいいのかもしれませんけれども、教育を受ける者、生徒・子供たちから見て、自分は一体どっちに行くんだろう、どっちに行ったらいいんだろうという疑問に対してサポートしていくための議論が全くなされてない。そういう議論が必要なのか、必要でないのかということですが、私は、ある程度、その方向性を出してやるべきだと思います。と申しますのは、先ほど来、川越委員を始め、いろいろ御意見が出ていましたけれども、今日の大学、高校の在り方というものが、問われていると思います。何故そうなっているのかということも議論をしていく必要がありますし、単に産業構造が変化しました、技術革新しました、だから高度人材が必要です、というだけでは、この話は進まないと思います。高度人材だけで、世の中や産業が成立するわけじゃありません。ミドル層も絶対必要なわけです。そういうようなことも踏まえて、供給側の話と需要側の話、子供たちの視点、親御さんの視点というような観点も含めて議論すべきではないかなと思います。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございます。
【永里副座長】  一つ、鈴木委員の質問の中で、産業界はどう思われるかというので、そういうふうに答えたんですけれども、実はその中に、いろいろな業界団体があるわけです。化学工業会とかサービス業の業界とか。業界団体がたくさんありまして、そこを入れないと、やっぱり抜けてくる可能性がありますね。
【岡本委員】  新たな高等教育機関がどういう教育内容、教育分野かということが余り議論されていないというんですけれども、2回目の私の発表で、専修学校、職業教育の実態という中で、現在の専修学校、専門学校があらゆる分野、大きく8分野なのですけれども、学科にすると数百、数千といいますか、非常に幅広い分野で展開されていることを申し上げました。基本的には、新たな高等教育機関でできないだろうという分野は、今のところ、ないと思います。大学でできて専修学校でできないというのは、医師とか歯科医師とか弁護士とか、その他一部ありますけれども、ほとんどのその他の分野においては、大学と、あるいは、それ以上の幅広い分野を持っているということであります。一つだけ付け加えさせていただきますと、私も今、青山委員が言われたとおり、子供たちが目標を持つというのは大事なのですよね。今の大学生の多くが自分の人生の目的や職業について、見えていないんです。高校の先生は、自分が大学を出ていて、専門学校のことを知らない。たくさんあり過ぎて分からない。業者任せ。これが実態です。ですから、是非次回以降で、職業を目的とする学校群とそこで学ぶ学生たち、それをどうサポートするかということも併せて、検討するべきだと思います。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。前田委員。
【前田委員】  短くしますが、新たな教育機関を作るときに大事なこととして、どういうカリキュラムを作るかということと、そこに教員がどう主体的に関わるかということだと思うんですけれども、教員が個別の科目を教える能力があるということと、全体のカリキュラムがきちんと作れるかということは少し違うと思うんですね。例えば、産業界が求めるのは仕上がりなのではないかと思っています。つまり、その仕上がりに向かって、どういうカリキュラムを作ればいいのかということ、加えて、専門職業教育にふさわしい教養ということまで入ってきたときに、カリキュラムをきちんと作るということが必要です。さらに日進月歩で技術革新がなされていくときに、それに合ったカリキュラムを作っていくために、そのカリキュラムに責任を持つ人たち、教員だけに限らないのかもしれませんけれども、その人たちにどういう能力が求められるのかは重要なことです。しかし、ここに書かれている教員組織のところを見ていると、個々の教員に求められることが書かれています。実はカリキュラムをきちんと維持し、刷新していくということが非常に重要なのではないかと思いました。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
【寺田副座長】  簡単に項目的な話だけ二つしたいのですけれども、新機関に関しては、今日は専修学校関係者の意見が非常に大きかったので、その問題を解決するために、こういう議論を長々とやっているのかなという印象を受けられた方もあるかもしれませんけれども、私は4年制大学の一部、短大、高専の再編、専修学校の一部の1条校化を通した新機関への昇格とか、こういう短期高等教育機関と4年制大学の再編という枠の中で是非考えたいなと思います。そうでないと、何年もこれをやっている意味が余りないような気がいたします。
 続いては、やはりこういう新機関がもしできた場合のシミュレーションを、事務局はそれなりにされているはずなのですけれども、考えておかなきゃいけないのではないかなという気がします。
 もう一つは、同じようなことなんですけれども、先ほどの前田委員の意見に全く賛成で、あるいは、お隣の永里副座長の意見に賛成で、今日は結局1のところで、いろいろなところへ派生して終わったんですけれども、新機関の目的あるいは内容、方法、ここを固めないと、つまり、たんすに入れる荷物をちゃんとはっきりして、もう少しそこを固めて、大方合意した上で次の教員だとか設置基準だとか、これは全部派生してくるわけで、入れ物、これがはっきりしてくると思いますので、そういう観点から是非議論をしていっていただきたいなと思います。
 ちょっとまた長くなったんですけれども、現在の学校教育法にしても、あるいは設置基準にしても、基本的には戦後すぐの段階で作られたもので、設置基準にしては昭和31年(1956年)の段階の話で、しかも、国主導で高等教育を作っていったという時期の話だと思います。この間、設置基準については一定程度緩和されてきましたし弾力的になってきたと思うんですけれども、先ほど、シミュレーションという話をしましたけれども、新機関が一体どこが主としてモデルとして、あるいは実態として量的に担っていくのか。これをよく考えないといけないと思いますね。僕、初めてこういう意見を言いますが、国が一つモデルを作ってほしいと。一つは国立を。だけど、大半は恐らく既存の施設の再編、昇格を通して作られるものだろうと。かつ、私立法人がかなり多くなるのではないかなと予想します。そういうことを考えながら、是非今後の議論をしたいなと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。今後の進め方について寺田委員から発言を頂きましたので、一番重要なことだと思うんですね。新しいものを作る、その中身を決めずして新しい箱だけ作っても何にもなりませんので、その辺の議論を次回したいと思います。今日、私の不手際で余り先に進まなかったんですが、それだけいろいろな御意見があるということでございます。今日はもう時間が来ましたので、これで終了したいと思いますが、また次回、すぐにあるようでございますので、その日程について事務局からお願いします。
【神山教育改革推進室長】  御議論ありがとうございました。次回につきましては、2月4日の水曜日、10時から予定をしてございます。場所については、調整の上、追って御連絡とさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。2月4日にございますので、また活発な御意見を頂きたいと思います。本日はどうもありがとうございました。これで終了いたします。

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