実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第4回) 議事録

1.日時

平成26年11月7日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 委員からのヒアリング
  2. その他

4.議事録

【黒田座長】  それでは、時間が参りましたので、ただいまから、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議を開催いたします。今日は第4回目であります。お忙しいところを早朝からお集まりいただきまして、ありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。
 本日は、内田委員、金子委員、寺田委員のお三方からお話をお伺いすることになっております。
 今日もでありますけれども、報道関係者より会議全体について撮影を行いたい旨の申出がありますので、これを認めておりますことを御了承頂きたいと思います。
 それでは、まず本日の会議に関係する資料の確認と、本日の委員の御出欠について、事務局から御説明をお願いします。
【神山教育改革推進室長】  それでは、本日の配付資料につきまして、確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第にございますように、配付資料といたしまして本日御説明を頂く3名の委員から御提出のあった資料が、それぞれ資料1から資料3としてございます。また、寺田委員から御提出のあった資料につきましては資料3の後ろに冊子と申しましょうか研究をまとめたものを入れていますので、それも併せて御確認頂ければと思います。
 それから、前回の会議での寺田副座長からの御指摘を受けまして御用意した資料が参考資料1として入れてございます。こちらに関しましては中央教育審議会のキャリア教育・職業教育特別部会の第21回で配付された資料の抜粋でございまして、「我が国の企業等における中堅人材の人材ニーズに関する調査研究」の概要をまとめたものとなってございます。時間の関係もあるので簡単に御説明申し上げますと、もともとこちらにつきましてはキャリア部会で提言された職業実践的な教育に特化した枠組みを活用して育成することが求められる経済社会活動のボリュームゾーンをなす中堅人材について、どのような職業や業種があるかというのを明らかにするということで、株式会社三菱総研に委託調査したものの概要をまとめたものとなってございます。分野につきましては、下から2つ目の丸のところにございますように調査対象の分野としては人材ニーズに関する調査委員会で分野の将来性や人材のボリューム等を勘案して、福祉、コンテンツ、IT・情報サービス、それから観光、ビジネス分野の5分野という形で設定されてございます。
 また、人材のレベル設定につきましては、1枚おめくりいただいた後ろのところに表がございまして、こうした形でその人材のレベルを、中堅人材としては3のレベルのところを中心に、分野によって2や4も含めて検討するということになってございます。
 これをベースにいたしまして、例えばIT・情報サービス分が3ページのところでございますけれども、1枚おめくりいただいて5ページにその人材のマップといいましょうかイメージ図がございまして、中堅人材というのはこの辺のところではないかというのに赤色を付けているかと思いますが、そんな形になっていると。それから、人材群のレベル設定についてもその下にございます。さらに、そのボリュームに関しましては8ページにIT・情報サービス分野の中堅人材量について推計した数値というのが記載されてございます。以下同様に、ほかの分野につきましてもこうした中堅人材のイメージとボリュームについて、その調査研究したものをまとめた資料となっておりますので、御確認頂ければと思っております。
 以上が配付資料でございますので、不足の資料等がございましたら事務局までお申し付けいただきたいと思います。
 また、本日は青山委員、冨山委員、樋口委員が御欠席となってございます。また、永里副座長に関しましては、遅れていらっしゃると伺っているところでございます。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 それでは、早速審議に入りたいと思いますが、まず内田委員から御発表を、15分程度でお願いします。
 よろしくお願いします。
【内田委員】  内田でございます。よろしくお願いします。
 私、国立高専から来ておりますので、今日は国立高専の教育の現状と、新たな高等教育機関への期待ということでお話をさせていただきます。
 早速ですが、資料の2ページ目を御覧下さい。現在の高専の状況でございますが、左側にありますように中学校を出て本科に入学すると、ここから5年間の教育を経て進学あるいは就職となります。5年間の本科の上に専攻科がありますが、そこへの進学が16%程度、大学への編入学が24%程度です。専攻科2年を終えますと今度は大学院に進学するのですが、これが約31%で、残り70%が就職です。先ほどの大学とか大学院への進学は、その表の下にございますようにかなりトップレベルの大学にたくさん入っております。これらのパーセンテージは年によって変動いたします。
 次が3ページですが、高専は理工系ですので、私見ですが理工系を中心に輩出する人材のイメージを書いてみました。左側の欄に仕事の分野として、研究、開発、設計・企画・管理、製造に分類して示してあります。それに対して表の上の欄に、大学・大学院の理学系、工学系、高専、職業高校や専修学校等の学校種を並べて、これらが輩出する人材の対応する分野を橙色の濃さで示しています。これもいろいろな御意見がおありかと思いますので、またコメントを頂ければ幸いです。
 次に4ページに参りまして、高専はほぼ全国の都道府県に1つずつあります。国立高専は全国で現在51校、ほかに公立、私立がありまして全部で57校でございます。学生定員は本科が5万人余り、その上の専攻科がその1割弱の3,000人です。
 次を御覧下さい、5ページです。この高専教育の特徴ですが、15歳からという非常に若い時期から5年間、専攻科を含めますと7年間の一貫教育で技術者教育を行っております。先ほどお話ししたように、ほぼ全国都道府県に設置され、地域の優秀な人材を受け入れて高度な教育をしております。6ページにありますが、少子化時代でも一定の志願倍率を保持しています。
 それから、教育としては一般的なリベラルアーツ的な科目と専門科目がありまして、低学年で一般科目が比較的多く、高学年になるに従って専門科目が増えていくというくさび形カリキュラムが作られております。一般科目の占める割合は大体40%程度です。
 教育方針としては、理論の確実な習得、実験・自習を重視したスパイラル教育などの実践的な専門教育を行っています。このスパイラル教育というのは7ページに図で示してありますけれども、らせん状にぐるっと回りながら、最初に講義をして、次に演習を行い、そして実験・実習をしてまた講義に戻ってということを繰り返していきます。それぞれのフェーズが大体2週間程度で順にこうしていくことで、理論と実践をしっかりと結び付けるという教育です。
 それから、先ほどの5ページに戻っていただきまして、真ん中あたりの問題発見・課題解決型教育、いわゆるPBL教育とか創造工学演習を導入しております。また、地域産業と積極的に連携しておりまして、インターンシップを行っております。
 次にあるように、多様な背景を有する優れた教員がたくさんおりまして、30%以上が民間企業等の経験をもち、約25%が教育免許を持っております。また約80%が博士号、残りがほぼ修士号を持っておりまして、この修士号を持っているのは文系など一般科目を担当する教員です。
 一つ飛んで、教育寮としての学生寮とか課外活動を通していわゆる全人的教育を行っています。
 それから、ロボコン、プロコンとありますが、これはNHKの番組でおなじみのロボットコンテストやプログラムコンテストのことで、これ以外にもいろいろなコンテストがあります。詳しくは8ページにまとめてありますが説明は省略いたします。
 最後に、多様なキャリアパスがございまして、本科の卒業生は5~6割が就職、その求人倍率は非常に高くて、年によって変わりますが15~20倍、これらは10ページにまとめてあります。それから約4割が専攻科に進学したり大学に編入学しています。9ページを御覧頂きたいのですが、一番上が卒業生全体、そのうちで就職者数が赤、進学者数が緑で書いてあります。高専ができたのが約50年前の昭和37年で、順次高専が設立されて増えていきます。真ん中辺の平成3年ぐらいから赤の就職者が減って緑の進学者が急増しておりますが、これは景気が悪くなったり、あるいは製造業が海外シフトしていった時期で、より高度な教育を求めて進学者が増えていったと見ております。
 次に、少し飛びまして11ページを御覧下さい。本科の上にある専攻科ですが、本科5年を卒業した後、更に高度な技術者教育を行うということで2年間の課程が設定してあります。これを修了すると、ほとんど全ての学生は学位授与機構から学士号を取得しております。それから修了生の3分の2は就職で、求人倍率は30~40倍程度、就職率はほぼ100%です。残りの3分の1は大学院に進学しますが、先ほどお話しいたしましたようにトップレベルの大学あるいは大学院に進学しています。また、それらの大学院から、高専の卒業生はとにかくよく動いてくれるとか実践力が高いということで、最近では高専特別枠を設けるなど、ラブコールを寄せて下さる著名大学も幾つかございます。
 専攻科教育については、企業から「大学に優るとも劣らない」という評価を頂いております。具体的には次の12ページを御覧頂きたいのですが、青い線が大学の学部卒、赤が高専の専攻科ですけれども、青に比べて赤が大幅に外側にありまして、高く評価されていることがわかります。唯一、英語力が劣っておりますが、右下に記してあるようにこの数年間、英語力の強化にまい進しているところでございます。いろいろな英語のプレゼンテーションとか国際シンポジウムの開催等も盛んに行っております。
 11ページへお戻りいただきたいのですが、真ん中のあたりの創造的実践の重視として、問題発見・課題設定型の学習、いわゆるPBLを盛んに行っています。また、複眼的視野と経営感覚の育成を目的として、いろいろな学科の出身者を専攻科では1つにまとめて、専門の異なる学生どうしが議論をし合って融合化を図っていくということをやっております。
 その下にあるように、産業界とは非常に密接に連携しておりまして、例えば1か月以上の長期インターシップとかCOOP教育などを行ったり、企業の退職技術者を講師としてお迎えして、ものづくり技術の伝承をしていくというようなことをしております。それからJABEEによる認定を受けております。
 次に、13ページを御覧下さい。国際的にも非常に高く評価していただいておりまして、例えばOECDの調査団からは、「高専はハイレベルの職業訓練の質のみならず、産業界への対応において国際的に賞賛されている」とか、「我々は、高専のマネジメント、質及びイノベーションに感銘を受けた」というような評価を頂いております。ワシントンポストやマッキンゼー・アンド・カンパニー等でも高く評価されております。また、最近では諸外国から高専教育そのものが高く評価されて、高専制度を導入したいとか、さらにはその協力要請のお申出を頂いております。例えばモンゴルでは昨年急にそのような要請がありましたが、既に現在三つの高専が出来上がっています。そのほか、ベトナム、ミャンマー、トルコなどでも高専を作りたいということで、協力要請を頂いています。また、一番下に書いてありますが、OECD閣僚理事会で安倍総理が基調講演された中で次のように述べられています。日本の現状は単線型の教育であって、モノカルチャー型の高等教育である。このため、教育改革を推進して、社会のニーズを見据えた実践的な職業教育を高等教育に取り込みたいとおっしゃっています。そういう意味では高専が最もこれに適しているのではないかと思います。
 14ページには、高専生はいろいろなコンテストや大会で活躍しており、その例をここに示してあります。
 15ページを御覧下さい。卒業生はいろいろな会社を作っておりまして、その代表的なものの例を示してあります。このほかにもいろいろ社会で活躍しております。
 次に、16ページに現行制度の課題をまとめておきました。1番に書きましたように、科学技術が著しく高度化した現代社会に求められる創造的実践的技術者育成には、やはり一般教育から専門教育、インターシップ、留学などと幅広い教育を必要としますが、これについて5年間では過密過ぎるという状況です。高専の学生も大変忙しいし、教員も忙しいというのが現状です。専攻科2年がその上にありますけれども、学生定員は本科の1割にも満たない程度で、教育上も本科と一貫した形になっておりません。
 2番目は家計の厳しい家庭の子弟がかなりおりまして、そのために留学やインターシップ等においては経済的支援が必要であるという状況です。
 3番目が、運営費交付金が毎年削減されておりまして、人件費が大部分を占めるようになっているという状況です。研究中心で外部資金を得やすい大学とは異なり、外部資金の獲得も容易ではありませんが、予算面で抜本的な対策が必要と考えております。
 4番、5番は入れ替えて先に5番ですが、高専は残念ながら高等専修学校や専門学校と誤解されることがしばしばです。これは4番に書きましたように、実力に比べて知名度が非常に低いことを示しております。例えば高専卒の親を持つ学生や、上の兄弟に高専生を持つ学生がたくさん入学してきていますが、このようないわゆるリピーターが多いということは、高専が一般の認識よりも実態は相当高レベルの教育機関であることを示しています。
 次は17ページですが、国立高専の将来の方向性として、1番目に、国や企業を支える中核的人材の育成を目標としております。2番目に、更なる高度化を図っていく必要がありまして、特に専攻科を加えた15歳からの7年一貫教育で大幅な高度化を図る必要があると考えております。3番目は国際化の更なる推進です。そして4番目、個性的で創造的な教育機関として更に発展・展開する必要があると思っております。その下にございますように義務教育を終えた若者の約1%が高専に入っているわけですが、この数ですので他の高等教育に大きな影響を及ぼすものではありません。しかしこのような目的意識を高く持った若い人たちを受け入れて、高校等の普通の進路と違う7年を視野に置いた個性的で創造的な教育を行う機関の意義は十分あり、それを発展させる必要があると思っております。そして、高卒後の職業教育機関とは明確に区別して維持・発展させることが重要であると思っております。
 最後、19ページに新たな高等教育機関への期待を記してあります。1番目に、今後高等教育機関で育成が望まれる能力等ということでまとめましたが、これは20ページを御覧下さい。これも私見でございます。3ページと類似した図ではありますが、企業側の立場で見た人材あるいは必要な能力という意味でまとめてみました。高専は製造業と関連が深いのでその観点で書いたものです。サービス業関係は余り詳しくないので、もし間違い等がありましたら御指摘下さい。人材としては経営者型、管理者・中間管理者型、設計・製造者型に分離してあります。ここで、管理者の枠に「研究開発者型/企画者型」と書いておりますが、これは会社の中でも少し扱いが違うという意味で研究者を管理者等と分けて書いてみました。それから、その下にいわゆる専門家の中でもマイスターのような高い技術や技能あるいは能力を持った方も必要であろうということで、これを赤枠で囲った黄色の欄に示してあります。これに対してそれぞれの教育機関はどのような人材を意識して、あるいは目指して教育しているかというのを橙色の濃さで示してあります。
 求められる能力については、例えば一番上の経営者型について御覧下さい。経営者は、専門に詳しくなくても、その専門の人たちを十分に使いこなせることが必要だとしますと、専門能力よりもリベラルアーツとかコミュニケーション力、創造力が必要であろうと思われます。それから、中間管理者の中で研究者の位置付けは、やはりかなり高度な専門力が必要です。しかもコミュニケーション力や創造力も重要であろうということでこれらに二重丸や丸を付けてあります。一番下の現場に係る人たちは、一番右の専門が一番重要で二重丸ですが、人との連携も重要ですのでコミュニケーション力、創造力もある程度必要であろうということで丸を付してあります。リベラルアーツについては、18歳以上を考えるとすると初等・中等教育でかなりやってきているので少し脇に置いてもいいかなということで横棒を引いてあります。一方、マイスター型のような専門の中でも非常に高度な技能をもつ方々については赤枠と黄色の欄で示したようにもちろん高度なレベルの専門が必要ですが、それと同時にやはり次に続く世代を育成していくことも求められるので、コミュニケーション能力や創造力、さらにはリベラルアーツもそれなりに必要であろうということで二重丸や丸を付けてあります。
 19ページに戻っていただきまして、2番目ですが、今日の最先端技術は日進月歩のため、製造の海外シフトや陳腐化が生じた場合、別の分野の最先端技術を学び直す必要があろうということで、これができる社会システムを構築する必要があります。例えば会社と国が連携して従業員に学び直しの機会と経費を提供するというようなことがあっても良いのではないかと思います。
 3番目ですが、社会で必要とされる人材類型ごとに、その養成の在り方について、高専、大学、専門学校、新たな高等教育機関等でどのように分担していくかということの整理が必要だろうということでございます。
 以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 ただいまの内田委員に対する御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
 どうぞ。
【川越委員】  私、昭和39年に中学校を出て高等学校へ入った、ちょうどオリンピックの年ですけれども、たしか高専はその年に誕生したのかなと思いますが、そんな感じですかね。
【内田委員】  ええ。
【川越委員】  私のクラスから1人、高専に行った子がいました。当時の僕たちのこれからできる学校としての高専のイメージというのは、まさにおっしゃったようなイメージではあるのだけれども、20歳で卒業して就職するんだろうなという当時はイメージだったんですね。今お聞きするとやっぱり4割ぐらい進学するという状況に今になっているということで。あと、3ページの図の中で「職業高校・専修学校等」と書いてある意味は、職業高校へ3年行った後、専門学校へ2年行くというイメージで高専と比べているということですか。
【内田委員】  このあたりは非常に大ざっぱに書いてございますので、余り厳密なことは意識しておりませんが、おっしゃるとおり、そのあたりを1つの束として考えたという意味でございます。
【川越委員】  おっしゃったように高専、専修学校、専門学校、いろいろ一般では混同されがちで、専修学校の専門課程は専門学校だという点でいうと、これは高等専修学校なのか専門学校なのかちょっと分からなかったのでお尋ねさせていただきました。
 それと、東京高専を一度視察させていただいて、本当にすばらしい教育をしているのだなと思ったのですけれども、やっぱり1,000人在学していて27億円ぐらい予算が掛かっていて、授業料そのものは2億4,000万円ぐらいの収入なんですが、1人270万円ぐらいコストが掛かっているわけですが、私立の高専が3校ございますけれども、ここには国からどういう補助がされているんでしょうか。
【内田委員】  すみません、そのあたりの詳しいことは、私は存じ上げないのですが。
【川越委員】  文科省でお分かりになりますか。
【黒田座長】  私の方から話しますか。私のところは私学高専の3校のうちの1校でやっていますので。
 国からは私学助成の経常費補助金という格好で、大体年度経費の10%程度の補助です。ほんのわずかです。
【川越委員】  そうすると、授業料的には普通の専門学校並みの授業料になるということですか。
【黒田座長】  授業料は国立高専よりもはるかに高いです。
【川越委員】  そういうことですね。分かりました。
【黒田座長】  はい。それでも赤字ですね。
【清水委員】  よろしいですか。
【黒田座長】  どうぞ。
【清水委員】  大変分かりやすい御説明を頂きまして、ありがとうございました。
 二つほどお聞きしたいのですけれども、一つは高専は一般科目と専門科目で構成されているということですが、一般科目というのは高校の教科型の授業で占められているのかどうか。あるいは4年次、5年次にはいわゆる大学における一般教育とか一般教養的な科目というのは履修できるようになっているのか、そのあたりを確認したいと思います。
【内田委員】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、大体高校の授業に準じておりまして、国語、数学、英語、理科等々ございます。先ほどお話しいたしましたように低学年だけで学ぶのではなくて、順次、低学年から上の学年に行くに従って一般教科が減っていきまして専門科目が増えていくというやり方でございます。それから、高校と多分少し違うと思いますのは、特に英語を大変重視しておりまして、いわゆる英語でのプレゼンテーションの能力を磨くとかそういうことも含めてかなり熱心にやっておりまして、場合によっては、私どもの高専の例ですけれども、大学から留学生をお呼びして発表の練習をトレーニングしていただくとか、いろいろな形で実践的な意味も含めた一般科目を勉強していると御理解頂ければと思います。
【清水委員】  4年次あたりにはいわゆる短大が開設しているような一般教養科目とか一般教育科目のレベルの科目はないのでしょうか。
【内田委員】  これは実は5年制を卒業して大学に編入学するということも意識しておりまして、大学の教養レベルでやるようなものを基本的にはこの中に取り入れているというところでございます。
 【清水委員】  それに関連してもう一点ですが、1万人ぐらい毎年入学されて、24%編入学ということは2,500人前後が毎年大学に編入されているということですが、本学においても高専生の能力は非常に高い、入学後の追跡調査をしても高いということで、大学とすれば編入学の定員枠を増やしたいという希望があります。しかし、現実はいろいろな定員管理等で難しい状況にあります。高専側から見てこの24%の編入学というのは満足な値なのですか、それとももっと拡大してほしいという要望があるのでしょうか、そのあたりをお聞かせください。
【内田委員】  これは学生側の立場ですと、通常は各大学若干名という程度で非常に数も明確でないですし極めて少数なのですけれども、学生側から見れば大学に行きたい学生もかなりいるかと思うのですが、私どもとしては妥当な数字ではないかと思っております。といいますのは、やはり地元も含めた就職で活躍してほしいという希望もありますし、それから専攻科を強化したいということもありますので、このあたりのパーセンテージを、将来的には専攻科をもうちょっと増やしていくことを検討しているところでございますけれども、おっしゃっておられるように妥当なところではないかという考えでございます。
【清水委員】  ありがとうございました。
【池田委員】  はい。
【黒田座長】  どうぞ。
【池田委員】  一つは、中学卒の倍率が2倍ぐらいあるんですけれども、これは落ちた子たちという、併願も含めて、多分工業高校が非常に残念ながらレベルが低くなるということで普通高校に行っているということになると、日本にとって物すごい損失だと思うのですけれども、その辺の落ちた子たちがどこに行っているかという、普通高校に行っているのか、それとも工業高校、志願した方向の高校に行けているのかどうか。そこら辺が1つです。
 それで、求人倍率が物すごく高いですね。そうすると、高専を採れなかった企業は残念ながらどこから採っているのだろう。若しくはどちらかというと工業系から採れなくて文系から採って社内教育しているのか、その辺も含めて、もし情報があればということをお願いしたいと。
 それからもう一つ、3点目ですが、いわゆる工業、ものづくりで日本は高専とか理科大とか物すごい。私も理科大の協議会委員をやらせていただいて、日本の成長に物すごい役割を果たしてきたんだなと思うわけですけれども、1つのものづくりプラス最近はソフトとかサービスとか、サービス産業の効率化というのはこういう技術の問題も必要だと思うんですが、そういう学際的なところのフィールドの人材育成という意味では、極端に言うと卒業生が文系とかMBAとか文系の修士の方に進んでいるケースがあるかどうかも含めて、その3点をお願いしたいと思います。
【内田委員】  ありがとうございました。
 まず最初の御質問で、高専に受からなかった学生がどういう状況かということですが、実際的には中学卒業のかなりトップレベルの学生がおかげさまで受けていただいておりますので、対象はどうも併願している大部分は普通高校のようでございます。そういう意味では、うまくシェアしているといえばシェアしているのですが、多分御質問の意図は、工業あるいは工学を非常に強く意識した学生がそこでない普通に行くことがどういうものかということだと思うんですけれども……。
【池田委員】  すごい日本の損失じゃないかと思って。
【内田委員】  ある意味ではおっしゃるとおりでございます。ただ、彼らは恐らく普通高校から大学の工学部に行ったりすることが多いと思いますので、そういう意味ではある種のバランスはとれているのかもしれません。
 それから、就職関係で会社が採れなかった人たちをどこから補充しているかというお話ですと、これは実はやはり対応は大学との競争といいましょうか、大体求人に来られる方の様子を窺いますと、大学の工学部と、それから高専の学生とをセットで考えていただけるようなことが多くございますので、恐らく採れない場合はほかの大学を目指して求人しておられると思います。
 それから、ものづくり関係は多いのですけれどもサービス業あたりはどうかという御質問に対してですけれども、これはおっしゃるとおり高専のもともとの成り立ちが日本の高度成長、特にものづくりを中心とした高度成長で参りましたので、全体のシステムもそれに対応しておりまして、サービス業関係というのは高専で持っている学科としては非常に少のうございますので、そういう点ではこれを今後どう考えていくかというのは大変大きな課題でございます。ただ高専の中にはそういうサービス業に特化した学科もあるところもございますので、そこを参考にしながら今後どういう方向で行くかは検討していくべきと思っております。
 それから、最後は何でしたしょうか、すみません。
【池田委員】  要するに文系の大学院へ行くケースは、普通ものづくりの工業系の大学院へ行くとは思うのですけれども、よくあるのが工業系で勉強したのだけれども、もう少し経営的なこととか、経営大学院的なところへ行くケースというのはあるのでしょうかと。
【内田委員】  おっしゃるとおり、そういうケースも結構あるやに伺っております。ただ、工業系での要望が非常に強うございますので、逆に工業系での仕事が要望も多いし学生もその意識になっておりまして、自分で意識して文系に行くという学生も幾つかの例は知っておりますけれども、そんなに多くございません。
【黒田座長】  どうぞ。
【麻生委員】  高等専門学校としての特色をよく説明していただき、分かりましたが、2ページに当然高専を中心に作られた制度上の問題で、一番右あります短期大学は2年若しくは3年プラス専攻科で同じく学位授与機構の認定専攻科で学士の学位が与えられるということで、この表だけが出てしまいますと、我々短期大学の立場が少し薄くなってしまいますので、そこは御理解頂きたいとともに、短期大学の場合は幼児教育系や福祉系と前回申し上げましたようにいろいろな学科があります。また、工業系の短期大学という、例えば自動車短期大学もそうですが、いわゆる技術系の短期大学の学科を持っているところもあります。こちらも今まで様々な人材を輩出してきたという現実もありまして、国立が大変多い高等専門学校と、私立が多い短期大学も是非今後の議論の中に入れていただき、例えば3ページの中で大学・大学院、高専というカテゴリーがありますが、大学の中に短期大学が入るのかということを疑問に思ってしまいますし、学校教育上でいけば大学として短期大学は位置付けられており、出口のところもほぼ同じです。違うのは入り口に、中等教育の部分が入っているというところでございますので、その辺のところをうまく御理解頂き、是非今後議論が深まるにつれて、短期大学の立ち位置も御考慮頂いて、これから議論していただきたいとお願い申し上げます。
【内田委員】  コメントありがとうございました。2ページの図には、大変申し訳ございません。
【麻生委員】  いいえ、とんでもないです。
【内田委員】  詳しく存じ上げないで失礼しました。
 それから3ページは、私としては大学に含まれていていいのかなと思いまして、あえて分けて書かなかったのですが、これももしこうすべきだという御意見がございましたら、またお寄せいただければ有り難いと思います。
 ありがとうございました。
【麻生委員】  よろしくお願いいたします。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 どうぞ。
【鈴木委員】  恐れ入ります、19ページの新たな高等教育機関でどのように分担していくかというところのお話と、20ページの今企業が必要とする人材・求める能力というところで、どのあたりのところに新しい教育機関を位置付けることが必要なのかについてどのようにお考えなのか、そのあたりをお聞かせいただけますでしょうか。
【内田委員】  御質問ありがとうございます。
 この赤枠で囲ったあたりというのは、何となく世の中にはそういう方がいらっしゃって、高い専門をお持ちなのですけれども、教育システムとしては必ずしも十分出来上がっていないように思いましたので、この赤枠を中心に、これは重要な部分ではないかというようなことを考えておりました。ただ、この部分と現在ある教育機関とは、だいだい色の色の濃さで少し示させていただいたように少しイメージも違いますので、このあたりがごっちゃになってしまいますとそれぞれの特徴が薄らいでしまうということもありますので、現在の特徴を生かしながら更にそれを改善すると同時に、この赤枠のような部分に注目しながら新しい教育制度をどうしたらいいかということを全体として考えていくべきだと思っている次第でございます。
【鈴木委員】  ありがとうございます。
【黒田座長】  どうぞ。
【長塚委員】  ありがとうございました。御説明が大変詳しくされて、私も初めて高専のことが分かったような気がしたのですが、先生がおっしゃるように実践的な職業教育の高等教育ということでは、まさにこれを実現しているような、いわばモデルになっているような気がしたのですが、ただ知名度が低いというのが残念だと、まさにそのとおりだと思いました。
 しかし高等専門学校は後期中等教育から高等教育までの非常に長期にわたる教育機関制度となっているので、本当にここで今我々が議論している高等教育機関というだけではないという特殊性があるのだなという思いを持ちました。
 5年間のカリキュラムが非常に過密になっているというお話だったのですが、そもそも基本的なことをお聞きしたいのですけれども、学習指導要領が、例えば高校ですとしっかりあって、ある意味でその制約の下にカリキュラムが構成されるわけです。あるいは教員免許も同時にそれに関係してくるのですが、教員免許を持っている方が25%だというようなお話でもありましたが、指導要領的なものは余り基本的な制約がないのか、あるいは教員免許はもしかすると一般教育科目の高校の通常の必要な教科目の先生の場合に免許が必要となっているのか、あるいはそれも必要でないのか、その辺についてお伺いしたいのですが。
【内田委員】  ありがとうございます。
 おっしゃるように教員免許に関しましては、これは必要ではございません。基本的には大学と同じスタイルでございまして、先生も教授、准教授というような呼ばれ方をしておりますので大学型なのですけれども、しかしおっしゃるように中学校を出てからの教育でございますから、高校のような一般的な科目も非常に重要であるということで、高校の科目を非常に勉強しながら重視しておりますし、それから一般科目の先生方もこれを非常に熱心に勉強しております。例えば英語の先生の例ですと、英語は一生懸命教えなければいけないのですが、しかし高専で英語というのはどうあるべきかということを本当に一生懸命考えておりまして、教材まで自分で一生懸命選んで、特に最近の工学系の話題を世界中から集めて、それの英語版を自分で教科書のようなものを作って、最近ではその教科書がいろいろな短大や大学で使われているということになっておりますので、それぞれの教員が特におっしゃるような免許という形ではなくて、自発的に非常に熱心に勉強しながら進めているというのが現状でございます。
【長塚委員】  ありがとうございました。
【黒田座長】  時間が来ていますので次に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、金子委員から御発表をお願いします。
【金子委員】  ありがとうございます。
 私は研究の対象が高等教育でございまして、私の役割は多分、高等教育制度全般の目から見て新しい職業教育機関をどのように見るかという点をお話しするのだと思います。多少、多少といいますかかなり問題のある発言をするかもしれませんが、あえて私の役割はそうだと思いますので、させていただきたいと思います。
 まず、全体としまして高等教育と職業教育がどういう関係にあるかということですが、教育体系というのを各国は持っているわけでありますけれども、これは3つ分類の軸がありまして、一つは段階です。二つ目は要するに最終的に学位といいますか、高等教育で与えられる、大学で与えられる学位に導くかどうかという点です。三つ目はトラックといいますか、初中教育からの連続性あるいは接続性です。非常に単純化して言いますと、こういった面から見ますと世界の教育体系というのは二つに、非常に粗っぽい話をあえて申し上げますけれども分かれると思います。一つはヨーロッパ型で、これは学位トラックというものがかなり明確に中等教育から分かれていくタイプです。職業教育は中等教育から分かれて、しかもそれが高等教育、ユネスコでは第三段階といいますが、要するに高等教育レベルにそれが伸びているという形です。アメリカ型は初中教育での分離がなく、高等教育の中でも職業教育と高等教育が制度的に分離していないというタイプです。
 ヨーロッパは複線型でありまして、これは戦前の日本がこうだったわけでありますけれども、職業教育トラックというのは大体中等教育まであったわけでありますが、これがだんだん上に伸びていったと。特に1960年代に、各国は政策的に中等後セクター(post-secondary)というのを作りまして、第三段階、要するに中等後教育なのでありますけれども、職業に特化するというような学校を幾つか作っております。ただ、これは最近、ここ10年か20年くらいの間に再びこれを統合化する動きが出ていまして、イギリスでは1991年から、いわゆるポリテクニクというのは職業高等教育機関だったのですけれども、これを大学制度に統合すると。それから大陸ヨーロッパでは、これはボローニア・プロセスといいまして各国の教育制度を統合化する、標準化するという動きがありますが、この動きの中で職業高等教育機関についても基本的には学位制度と結び付けるということが行われています。私はこういう言葉を使うのですが、バチェラー本位制といいますが、基本的には学士に様々な高等教育機関を結び付けるというような形で改革が進んでいると思います。ただ、ここで非常に重要なのは、ヨーロッパの職業教育機関というのはほとんどが公立でありまして、実質的にはかなり強力な質的統制が行われているということであります。
 次のページに行きまして、アメリカはもともと単線型、もともとといいますか単線型のシステムをずっと作ってきました。もちろん職業高校というのはあるのですけれども、基本的にはやはり単線型に統合されるという形でできています。それを単線型の高等教育(higher education)と呼んでいます。ただ大学の中にかなり職業教育が充実しているということは言えると思います。大学の内部は非常に多様であるということは一つありますが、もう一つはコミュニティ・カレッジというものがありまして、これは日本では短大と訳される場合もありますが、基本的にはコミュニティ・カレッジといった方が正しいと思います。これは進学とそれから職業教育と一応両方の機能を持っているということになっていて、4年制大学への編入というのをあらかじめ想定したカリキュラム内容になっています。ただ、こういったことが非常に重要なのは、質評価システムがかなり明確にできていて、それも大学自体に対する機関評価と、専門分野別のプログラムといいますか教育課程の評価の二本立てでありまして、専門分野別の評価もかなり強力に行われていると言えると思います。
 ただ、1990年代くらいから新しい傾向が出ていまして、これは営利大学というのが出てきまして、for-profitというわけでありますけれども、現在ではこれはヘッドカウントといいますか頭数だけでいうと2割ぐらい、実質的にはもうちょっと少ないかもしれませんが2割くらいの大学の学生を占めているわけでありますけれども、これらの大学はほとんどもともといってみれば各種学校みたいなところが大学に移行したというところが多いと。どうやってこれが大きくなったかといいますと、これは連邦奨学金制度が非常に関係していまして、大学制度に組み入れられることによって奨学金を与えられる、要するに営利大学がそれで財政的に成り立つという構造になっています。ただ、これは今、質が非常に大きな問題になっています。それからかなりの、例えば連邦の貸与奨学金を借りた人の、営利大学ですと大体5割ぐらいが返していないという統計もありまして、今非常に大きな政治的な問題になっています。
 ただ、大ざっぱに国際的な趨勢を見てみますと、やはりヨーロッパ型の職業教育トラック別、複線型も基本的には学士本位制といいますか、学士を標準とする体系に統合される趨勢にあると思います。それから、教育機関とか教育課程が、高等教育制度の中でかなり多様化していて、その多様化した一部に成人が参加するという形になっている。もう一つ大きいのは質的統制・保証が大きな課題になっているということです。それと、質的統制がはっきりしないと接続関係が明確にならないという問題が生じていると、ここが大きな課題であると思います。
 この中で日本がどういう特質を持っているかということですが、大学は一般的に、教育課程の内容が職業上の要求と分離しているのではないかということがよく言われているわけであります。それともう一つは、大学適格認定、Accreditationといいますが、適格認定制度が必ずしも十分ではない。特に現在認証評価という制度ができていますが、これは適格認定とは実はかなり違うもので強制力が非常に薄いと。それから、もう一つ非常に大きいのは専門別の質的保証について独自のシステムが出来上がっていないということであります。それともう一つは社会人を対象とした教育課程・内容が未整備であるということです。
 もう一つ、経済社会での非常に大きな問題は、生涯雇用を前提として職業教育は企業の中でやるという伝統が非常に強くて、外部にそれを出すということは必要だと言われながら行われてこなかった。私どもがやりました事業所の調査ですと、8割くらいは大学院に出すことを認めないと言っております。日本的な慣行というのは非常に根強いということがあります。もう一つ大きいのは、大学外セクターといいますか、大学以外のセクターの位置付けが非常に曖昧であるということです。さっき申し上げたヨーロッパ型の職業トラック機関と非常に大きく違う。それは特に専修学校の専門課程というものが出来上がったときに、その位置付けが曖昧であったからです。どちらのトラックなのか明確でない。国際的な統計についても、専修学校専門課程というのは実はかなり長い間OECDの統計では高等教育機関として位置付けられていませんでした。現在でも私はかなり問題があると思います。それから大学の接続でいえば、今、専門学校の履修単位は60単位まで大学で認めるということになっていますが、それの条件等々については実はほとんど不明確であります。いってみればその質的な統制・保証体制が非常に問題であるということも言えると思います。
 あと、大卒者と職業との関係の基本的な問題は、私はあると思うのですけれども、私どもは大卒者の調査をやりましたけれども、大卒者と職業は大学の教育内容と直接に結び付いていると答えている人は大体1割くらいでありまして、かなり間接的な結び付き方、これは大学教育が必ずしも悪いだけではなくて、企業での職業の作り方がその大学で教えられることを直接使うようにできていないということだと思います。これは大体2万5,000人くらいの大卒者に聞いた調査でありますけれども、専門知識を直接に生かしてきたというのは、「よくあてはまる」「ある程度あてはまる」を入れましても大体大卒者全部の4割くらいで、文系については3割くらい、理系でも実は半分くらいです。ですから、社会人が望む大学教育というのは、職業に直接役に立つことを勉強させろというのはあるのですけれども、それは圧倒的に多いのではない。一番多いのはむしろ基礎的な勉強をさせろということ、きちんと身に付けさせろというものです。
 大学と職業を結び付けさせるのは非常に重要だと一般的に言われておりますけれども、それは個別の職業専門知識だけを身に付けさせるというのはなくて、もう少しそれを含めた一般的な考え方とかコンピテンス、更に非常に重要だと思いますのは、学生は自分で何をしたいのかを明確にするといった総合的な問題があると。そう考えてみますと、職業と大学の関係というのは必ずしも個別に職業知識だけで結び付けると、まあまあ非常に効率的であるというものでは必ずしもないのではないかと思います。
 あともう一つ、社会人の教育需要についての問題はなかなか具体的に出てこないということでありまして、職業大学院、専門職大学院ができておりますが、次のグラフでは、専門職大学院の入学者というのは今大体3,000人台でここ10年ぐらい停滞しておりまして、しかもこの6割くらいは法科大学院と教職大学院です。他のところは必ずしも拡大していない。例えば情報専門職大学院というものがあるのですが、これはかなり大きくなるのではないかと期待されていましたが、ほとんど大きくなっていません。それともう一つ、大学院教育にどういう需要があるのかというのを調べてみますと、その下のグラフですけれども「先端的な専門知識」、あるいは「職業に直接必要な知識」というものもありますが、「広い視野」というのがかなり大きな部分を占めていると。要するに職業人というのは必ずしも専門的な知識だけを望んでいるのではなくて、自分の仕事はどう位置付けられるのか、どういうふうに自分の将来を作っていくのかということを職業に関連して学びたいというところに大きな需要がある。これが専門職大学院、特に例えばMOTとかITなんかも一定の需要はあるのですけれども、量的に拡大しない非常に大きな理由ではないかと思います。1つは、こういった意味で大学教育の改革は非常に重要なのですけれども、必ずしも特化した職業教育をやればこれが解決するという問題ではないと、大学教育の在り方自体を総体として考えることが必要ではないかと思います。
 次に、新しい職業高等教育機関についての問題ですが、ここからがかなり問題のところですけれども、基本的な問題として職業教育体系の中の一機関としてそれを考えるのか、それとも大学体系の一部として考えるか、これはかなり基本的に非常に重要な問題です。今までの専門学校はかなりそれを曖昧にしてきましたが、この問題が持ち上がったために実は専門学校自体の性格も問題にせざるを得なくなると思います。職業教育体系の中にとどまるのであれば、学位それから名称について相当大きな問題が起こるだろうと、それから国際的な認知度についてもかなり大きな問題が起こると。それと大学体系の中に入るとすると、これは考えてみますと日本の学生は、先ほどもお話がありました高専ができたのは1963年か4年くらいですから、今から半世紀前です。それからその次に専修学校ができましたのが1976年、それからも40年たっていますが、これはかなりの大改革であります。かなり重要な点、大きな点をきちんと議論しておかなければいけない。
 まず最初に、直接的に学士に結び付ける機関とするかどうか、要するに出れば学士相当の学位が取れるのかどうか。私は、これはかなり無理があるだろうと思います。なぜなら、既存の大学についても実は今設置基準も相当大綱化していまして、こういった職業教育を含めた大学教育をすることは全然不可能ではない、既存の大学の中で不可能ではないと思います。そうすると何らかの制約を付けた機関とすることが必要になってくる。例えば年限上の制約、あるいは教育目的の制約ということになります。名称もかなり問題で、学士あるいは大学そのままを使うということはできない。例えば短期職業大学、職業カレッジとか、卒業生については短期職業大学士等というようなある程度制約の付いた称号を作るということになるのではないかと思います。
 しかし、そういったことが一応想定されるとしても幾つか条件があるだろうと。1つは需要の問題です。これは学校教育法の改正に至るような改正をするのであれば、相当の需要があることが必要だろうと思います。学校側も一部の先進的な専修学校がそういったことを希望されているようですけれども、最終的にどの程度の規模になるのか、全く私は分からない。例えば情報関係について先ほど何かお話がありましたが、情報関係は今コアになる働き手、27万人というのはさっき紹介あった三菱総研のレポートで出ていますが、これは総計で27万人ですから、仮に20歳で分布していると1年当たり1万5,000人くらいしかないのですね。これは実はかなり少ない、そんなに大きなものではない。今の専門学校を見ていましても大体6割が福祉関係、健康関係ですが、これは大学制度の中で大学卒と相当重なり合うところでありまして、大学制度の中に取り込んでもそんなようなことしかない。いずれにしても単一のボリュームゾーンというのが余り想定できない、かなり雑多なものが相当集まるような需要に対応することになる。これは規模がどの程度なのか非常に予測しにくいという問題が一つあると思います。
 もう一つは質的保証でありまして、専門学校は、現在は御存じのように都道府県の認可になっていますけれども、もし大学、短大制度に入れるのであれば国の質的統制の中に入れる必要があるだろうと。また学校法人制度のような経営的形態上の問題も生じる。特に重要なのは質的保証の部分でありまして、ロットが小さいということは専門課程別の認証が非常に難しいだろうと、これをどのようなものにするのかということが問われるだろうと思います。同時に、入学要件というのは今までほとんど問題になっていませんが、やはり基礎的な学力をチェックするということは必要になってくるのではないか。今、高大接続で高校基礎学力試験というようなものが議論されていますけれども、そういったものを課すといったことも想定しなければいけないのではないかと。
 もう一つ非常に大きいのは、もしこの新学校種が創設されるとすると、既存の専門学校をどうするのかというのは非常に大きな問題として出てくると思います。先ほど申し上げたように既存の専門学校は60単位を上限として大学への編入の際に認められることになっていますが、これについては実は相当大きな問題が既にあるわけですけれども、もしこの新しい学校種ができた場合には既存の専門学校の単位をそのまま大学編入の際の単位認定を認めるのかという問題も出てくる。いずれにしても、新学校種に移行しない既存の専門学校との差異化をどのように図るのかということは非常に大きな問題になるだろうと思います。
 一応私、ちょっと難しいことを申し上げましたが、大学制度が多様化することは、私は非常に重要だと思いますが、1つはやはり大学自体が多様化するということが望ましい。新しい制度が一定の数ができるということが想定されるのであれば、それは決して私は認めるべきはないとは思いませんが、しかしその場合には需要等々、それからやはり質的保証についてかなり周到な検討が必要であると思います。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 金子委員の発表に、どなたか御意見はございますか。
【寺田副座長】  では。
【黒田座長】  寺田委員、どうぞ。
【寺田副座長】  質問というより若干意見が入るかもしれません。後ほどの私の発表でも若干触れますけれども、最初のところのヨーロッパ型、アメリカ型で、ヨーロッパ型が学位トラック、職業トラックが分かれていてということはそのとおりだと思います。ただ、もう既に数十年来、例えば最もヨーロッパ型のドイツあたりでも職業トラックから学位トラックへトランスファーするということはもう普通で、それをかなりセットにして制度化していますので、なかなかそう簡単に言えないのかなという気がしています。金子先生自身が2ページの真ん中のところで国際的な趨勢、学士本位制による統合ということを書かれておりますけれども、まさにこれじゃないかなと思いますが、その点についていかがでしょうか。あと1点は、今日新しい学校種の問題で、主として専門学校に焦点を当ててコメントされたようですが、先ほど御発表のあった高専あるいは短大を含めて、短期高等教育全体の在り方という視点から考えたときにどうなんでしょうかと、そういうお考えが何かあればお聞かせいただければと思います。
【金子委員】  職業トラックからの統合は、実はそんなに自明ではないのではないかと思います。例えばドイツのFachhochschuleでも大学院に入学をそのまま認めるところと、大学によっては認めていないところ……。
【寺田副座長】  私が言っているのは中等だとかターシャリーの段階での、高等教育ではない、専門職業トラックから大学の方へ移るということはあるわけです。
【金子委員】  職業高校から普通の大学に移ると?
【寺田副座長】  ええ。
【金子委員】  それは認めているところは多いですが、ただ、やはり制限はある程度まだあるところも多いと思います。それからもう一つは、私、かなりこれは単純化して申し上げているので、職業教育トラックのまま残っている教育機関もかなりあることはあります。学位トラックにまだ統合されていないというところもかなり残っているところはあります。これはかなり伝統的に作られたものですから、そんなに簡単に移行するというわけではない。それで、しかもこの変化はここ10年くらいにかなり急速に起こっている変化ですから、例えば特に大陸ヨーロッパがどう動いていくのか、簡単には分からないと思います。
 それからもう一つ、先ほどの短期高等教育がどうなるかということですけれども、私は基本的には大学の制度とかなり統合させていくということが非常に、条件といいますか、これから新しい独立の職業高等教育機関を作るということは国際的な趨勢から見てもかなり難しい。やはり国際的というのはよそから見てみっともないとかそういう問題ではなくて、いろいろな国との制度の統合性というのは課題になると思いますので、バチェラー本位といいますか、学士を1つの共通通貨にしていくという方向は間違いないのではないかと思いますけれども、お答えになっているかどうか分かりませんが。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 どうぞ。
【清水委員】  よろしいでしょうか。
 私も金子先生の論点というか意見にかなり賛同する部分がございます。特に2ページの先ほども触れました国際的な趨勢で三点挙げてありますが、私の関心からいうと三番目の質と接続関係の明確化、ここが私はかなり重要なポイントになるのではないかと考えています。それを踏まえて、5ページの論点で改革の射程というところにございますが、職業教育の体系とか大学の体系というところにもう一つ加えるとすれば、我が国は臨教審以降の生涯学習体系という、もっと広い視野からこの問題を私は捉えた方がいいと思っています。職業とか学位、大学化というような捉え方よりは、我が国の生涯学習体系をどう構築していくか。そのためには先ほどの三つ目の、今ある機関の中で生涯にわたって学び続けることが可能になっているかどうか、あるいは移行がスムーズに行われるかどうかというのが非常に重要な観点で、そのために、金子先生も触れられました専門学校の60単位というここをきちっと質保証ができるような仕組み作りが重要なことではないかと思います。この60単位を大学が認めるというのはすごいことです。もちろん設置審等で認定された大学においてはいいわけなのですけれども、専門学校の60単位がきちんと何らかの質保証ができるような仕掛けを作っておけば、ここからの学びの接続というのが非常にスムーズにいくのではないかと思います。ですから、AかBかというのではなくて、もう一つの見方として生涯学習体系という広い中でそこの学び続ける接続というものを質の保証という観点から考えていく、このことを私の感想も含めて述べさせていただきました。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 何かありますか。
【金子委員】  今の御指摘はそのとおりでありまして、私はこの発表で生涯学習との関係を、時間の制約もあるということもありまして余り入れませんでしたが、これもおっしゃるとおりで非常に重要です。特に生涯教育に関してはどうも私、専門職大学院のように例えば2年、3年の修士号に結び付けるというようなやり方は、かなり需要とマッチしていないのではないかなと思うんですね。むしろ部分的な単位認定のようなもの、それは蓄積することができるような制度といいますか、そういったものがこれから必要になってくるのではないかと。それは必ずしも新しい職業高等教育機関を作らなければできないということではなくて、むしろ既存の大学あるいは大学院でそういったことを一定の単位の塊というか履修経験の塊を認定するような仕組み、あるいはそれを社会的に認知するようなデータベースみたいなものを作っていくといったことはかなり必要だろうと思います。現在、履修証明制度というのができていますが、これはかなり厳しい制度でありまして、これは初めはかなりコンサーバティブにやるということで今のような制度になっていますが、もう少し単位を細かくするとか、当然そのためには社会的な認知をして、それが社会的な機関によってデータベースみたいなものに蓄積されて、それが次の教育機関に結び付くというような制度が必要になってくるわけでありますけれども、そういったものが必要ではないかと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 時間が来ていますので、次の寺田委員の発表が終わった後に、またまとめてお願いしたいと思います。
 寺田委員、お願いします。
【寺田副座長】  よろしくお願いいたします。
 私の方に余り自由なプレゼンの依頼が来ませんで、これとこれ、これをやってくださいということで余り意見が言えないのですが、最初に一言だけ申し上げますと、先ほど金子先生からニーズの重要性ということがありましたし、前回も私自身も発言しましたけれどもそのとおりで、先ほど事務局から説明があったとおりです。加えて、ここ数年来私が言っていますのは、特に諸外国の高等教育段階の職業教育を概観しますと、国としての職業教育力、あるいは職業教育における国家的な競争力といいますか、これが今問われているような気がいたします。これは必ずしも目に見えるようなニーズ、何人とかそういうことだけではない質的な問題を含んでいるので非常に難しい問題でありますけれども、そういう観点からも考えていかなければいけないことか思います。
 今日は余り意見を言うのではなくて、諸外国、とりわけアメリカ、ドイツ、韓国、中国という私が知っている、直接足を運んで、見て聞いたりしたところに限って制度の概観をさせていただきたい。囲みの中がテーマですが、時間の関係で制度の成り立ちについて、それから非常に重要だということになっております5番目の質保証、認証評価等については別添資料、抜き刷りも付けましたので今日はあえて触れずに、それ以外の点だけ触れさせていただきます。
 まず、大きな2番目、たくさん中身があるのですけれども、2ページの「各国の実践的な高等教育機関の種類・学校体系における位置づけ」でございます。まず、その前提に各国比較概観ということで、実証的には必ずしも合っていないものがあるかもしれません。後ほど説明します中国について例えばそうでありますけれども、別添資料1というのがありまして、その右側のページの図4-3に当たるものですけれども、各国の高等職業教育の布置状況は、法制の整備あるいは教育機関の年限という点から比較してみるとそんなことでありまして、とりわけ日本の専修学校、あるいは日本の場合、厚労省系の職業能力開発大学校を除いて文教行政の高等教育段階の初級教育というのが、短期若しくは法的未整備という状況に置かれているということでございます。にもかかわらず、左側のページを見ていただきますと、OECD諸国のタイプ別、これはOECD国際教育標準分類でいう5A、5B別の卒業者のタイプ別割合を比較しますと、これは1回目の会議でも若干コメントしましたけれども、日本の場合、高等教育全体の卒業者率というのは大体同一年齢層の40%、半分近くですけれども、その中で5Bタイプへの依存度が非常に高い。専修学校をはじめとした短期高等職業教育機関への依存率が非常に高いという状況になっております。にもかかわらず、十分な整備がなされていないということであります。
 それから、資料に戻りまして2ページ、具体的に各国を見渡していきますと、2-2アメリカというところです。これも今金子先生から報告がありましたけれども、伝統的にはCommunity collegeが存在しているわけですけれども、要点だけ申し上げますと、取得学位degreeがBachelor Associateなど、これが4年制の大学への編入を前提とした準学士と同時に職業別のCertificateが取れるという、両方取るためには大体3年間、2年間にプラス1年就学しなければならないという状態です。それ以外に、余り言われませんが、統計的にはCommunity collegeの中に一括されておりますけれども、ほとんどが私立であるTechnical collegeというものが存在しているということです。
 法制上は1965年の高等教育法に大学、短大とCommunity collegeとかいう仕分をせず、学位を授与するに十分と認められる2年以上の教育プログラムを高等教育と位置付けるということであります。それ以外にCommunity college、Technical collegeに関しては職業教育単独法(カール・D.パーキンス法)によって定義されております。量的な問題は省略いたします。
 次に、2ページの一番下に2-3.ドイツがありまして、先ほどもこれは出てきましたがFachhochschule、英訳名はUniversity of Applied Sciencesということで、分野的には教育大学、芸術音楽大学というものは他にありますけれども、あるいは行政専門大学というものがございますが、主として新分野に特化していて、大抵は4年制で、文系の一部の場合は3年制、後ほどカリキュラムを紹介しますのは3年制ですけれどもあります。取得学位は、以前はDiploma(FH、Fachhochschule)、わざわざ専門大学卒ということを後ろに付けてDiplomaとは区別しておりました。ただ、99年以降の先ほどもありましたボローニア・プロセスでヨーロッパ共通の学位枠組みを作っていて、2000年の1桁台からこのFachhochschuleもBachelor一般に移行しております。
 それから、文科省でよく作られる資料にFachschule、専門学校、これは日本の専門学校と何か勘違いしますけれども、翻訳というのは非常に問題だなと思っているのですが、これを5Bタイプに入れておられます。当のドイツ政府も5Bタイプに入れているのですが、これは実はテクニシャン、ドイツ語で言うTechnikerの継続向上教育機関、職業教育機関でありまして、Tertiary educationには入るけれども、Hochschulbildung、高等教育には位置付けられていないのでちょっと注意する必要があると思っております。
 法制上の位置付けとしては非常に面白いのですが、連邦高等教育法、高等教育大綱法、これは2008年で廃止されたことにはなっていますが、事実上機能は継続しているようです。その高等教育法の中に総合大学(Univesitäten)とFachhochschuleその他の高等教育機関が定義されているということであります。注意したいと思いますのは、総合大学もこの学術的に認識の応用ということを必要とする職業活動に準備するということをはっきり位置付けています。加えて、先ほどから問題に出ておりました継続教育ということも、大学、Universityの仕事だと位置付けられているというのが、ちょっと我が国と違うかなと思います。
 他方、専門大学というのは応用的な教育、学修、そして直接的に職業活動に準備するというところに焦点が置かれているということであります。
 4ページの上に、これはコピーペーストしましたので見づらいのですが、ちょっと古い資料でボローニア・プロセス以前のものですが、UniversityとFachhochschuleの比較をした一覧表で、特にその中で訓練の特質という真ん中あたりの右側に、専門大学というのは強い実践性、企業実習等実践的教育研究に特化しているというところが特徴かと思います。
 次に2-4.韓国ですが、韓国も専門大学を1977年以降作っております。取得学位は2年制の場合は専門学士、2年若しくは3年制の場合が専門学士で、プラス1年の、これは専攻科のような感じですが専門深化課程というものを、専門大学の卒業者で実務経験があれば、その1年間の深化課程に入って一般のBachelorを取れるという仕組みであります。
 法制上は1997年の高等教育法で、韓国の場合は非常に面白くて、是非日本の文部行政も参考にしたらどうかなと思っているのですが、高等教育法第2条で高等教育の機関を定義しており、たくさん挙がっていまして、その4番目に専門大学というものがあって、その上、かつ7番目に各種学校というものを並行して位置付けているということです。プログラムとして認められる内容であれば、これはオーストラリアなどもそうですけれども高等教育として位置付けるということであります。取得学位は2~3年制の場合は専門学士ということで学士、Professional Bachelorという英訳名を使っております。
 5ページですが、2-4-3.教育技術科学部、文部科学省の当たる中の行政所管ですが、これもまた面白いなと思いました。一般大学、その他の大学に関しては人材育成室というところで担当し、専門大学及び各種学校に関しては生涯職業教育局で所管して分担しているということであります。
 2-5.中国ですが、種類として非常にたくさんありますが、1996年の職業教育法、1998年の高等教育法以降、以前は高等学校に上2年継ぎ足されたような職業学院であるとかいろいろなものがあったのですが、徐々に3年制の専科大学に統合されております。分野としては主に第三次産業、医療系、教員養成系などが中心であります。もちろん工業技術系もたくさんあります。
 法制上の位置付けに関しては、これもアメリカと同様で職業教育法単独法の中に高等職業教育という形での位置付けと、高等教育法単独法の中での専科大学の位置付けがなされておりまして、アンダーラインのように定義しております。
 6ページの特に3のところ、教育課程・連携実習等についてです。アメリカのCommunity collegeについて、これは非常にプログラムがたくさんあるので、なかなか質問したり調べたりするのが大変なのですが、ずっと下の方でいきますと、アメリカの場合は高等教育、Community collegeが、先ほど言いましたように4年制への編入、それ以外に成人一般の教養教育であるとか、当然職業教育、キャリア専門教育というものがあるわけですけれども、2年制の中で、2年間の中で、これはデパートメントによって様々ですが大体通常20単位くらいクレジットアワー、これは1単位がアメリカの場合は日本の大体3倍くらいの時間ですので60時間ぐらいということでしょうか、教養教育、教養科目、リベラルアーツというものをちゃんと履修しなさいとなっているということです。
 後ろの別添資料丸2というのがありまして、これはある、あるカレッジというかもう名前が出ていますので、Columbus State Community collegeのビジネス分野のプログラムですが、黄色で注意を促しておりますが、トータルクレジットというのがあって、General Education、Basic Education、Technical Education、Technicalというのが要するに職業教育です。GeneralとBasicを合わせて大体半分くらいということです。うち、その半分が教養科目です。どういう科目なのかというのが上にT、G、Bということで仕分されてありますので、御覧下さい。
 その中の実習ですけれども、この中にも出てきますが、ACCT2901というAccounting Practicum3単位という形で、それほどたくさん現場実習を組み込んでいるわけではありませんけれども、必ず最後のセメスターで現場実習があるのが目立ちます。
 それから7ページのドイツですけれども、ドイツの専門大学のカリキュラムあるいは産学連携のシステムです。これはやはり法律の国といいますか、きちんと法律だとか規則の中にどういうカリキュラムにしなさい、あるいは実習セメスターはどれくらい置きなさいということが厳格に書かれているというのが特徴かと思います。ノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW)というところの学修課程の基準の中に、例えば第61条に、1つの学修課程の中に海外セメスターとかあるいは実習セメスターを幾つか置きなさいということがきちっと書いてあって、かつ、各学校や州の各専門大学の試験規定の中に同様の規定が置かれておりますので、結果のところ、別添資料3のベタッと黒くなった部分が現場実習です。これは私立のゲッチンゲンの専門大学の経営学分野のバチェラーコースの、これは比較的新しいプログラムですけれども、全体がモジュール制になっていて、24モジュールの中の少し黒く塗りましたモジュール9、14、18、22という形ですごくたくさんの、これは何か月単位ですね、セメスター単位です。その中の何か月単位の合計、恐らく3分の1ぐらいが現場実習で、こういう現場実習を受け入れるのが、7ページの一番下にありますけれども、ここの専門大学の場合は11のパートナー企業というのがあって、ドイツテレコムなどの有名な会社、大きな会社ばかりですけれども、これが学校評議会に参加して教育課程の協議をし、企業実習、とりわけ卒業、Diploma Arbeitという卒業研究を受け入れる。この辺はかなり日本的ですが、かつ卒業生の、この大学の場合は80~90%とか言っていましたけれども、それだけの卒業生がパートナー企業に就職するということであるようです。
 余り時間がありませんので次に8ページ、3-3.韓国ですが、韓国で一番大きなテクニカルカレッジ、専門大学の東洋テクニカルカレッジの例、歴史、プログラムなどをそこに示しておきました。ここでもやはり既に言いましたように2~3年制のAssociate degreeのプログラムがあって、その上で深化課程、1年制あるいは2年制のプログラムを追加してBachelor degreeを与えるというものです。企業連携によるカリキュラム開発にすごく熱心で、現場での、これはニーズということでしょうか、先ほどの議論のような意味じゃなくて具体的にどういう技術的な能力、知識が要るかというJob analysis(職務分析)と、それをカリキュラム開発に生かして、最後は教材開発に結び付けていくというサイクルを回しているようです。サムスンなど連携企業の要請ニーズ項目を取り入れてカリキュラムを設計するというようなことです。かつ、これは別のところで書きましたけれども、韓国の大学規定の中に産学連携による企業設備の利用、あるいは企業が大学を利用するということが規則として入っていることもあって、企業設備を活用するということがごく普通になっているようです。80%以上の卒業生が連携企業に就職するということです。
 それから、3-3-2で、これはやや資格志向の忠清南道の医療・芸術系の専門大学の例を引いておきました。資料は最後の別添資料丸4というところ、2014学年度教育課程表と、これは急きょ韓国のお友達に訳していただいたものですけれども、これを見ますといわゆる教養科目一般というのは余りないのですが、先ほどのアメリカのCommunity collegeでいうBasic coursesというのですか、基礎科目みたいなものが上の方に必修科目として並んでいて、その上で専門教育に特化する。専門・専攻必修の中の、ちょっと黒く塗っておりましたけれども臨床実習1、臨床実習2、これが現場実習で4週間、主に夏期に現場実習をするということになっております。
 8ページからずっと全部飛ばしまして、質保証に関してはそこに書いておきましたし、別添の抜き刷りがございますのでそれを御参考ください。
 教員資格ですが、時間もありませんのでアメリカの例だけを簡単に触れます。州ごとにかなり違いますけれども、大体において全米レベルでいいますと2年制カレッジの場合は同程度の学校卒業以上、あるいは修士以上くらいでありまして、これは標準的で、カリフォルニア州などの場合で見ますと、実は科目ごとに教員資格が異なっているということです。いわゆるリベラルアーツあるいはベーシック科目などの場合ですと、修士学位科目の場合ですと58科目ですか、そういうリベラルアーツなどの場合ですと修士以上、それから14ページの上に学士プラス2年の専門経験、あるいは準学士プラス6年の専門経験と、職業教育科目の場合、キャリア専門科目と呼んでおりますけれども、この場合ですとバチェラー、あるいはアソシエートプラス実務経験ということで対応できるとして、科目ごとに細かく分けているということが参考になるのではないかと思います。
 ドイツの場合は基本的に博士で、かつ実務経験が以前は5年以上と一律に定義していましたけれども、現在は若干年と変わっております。数年と変わっております。
 韓国の場合はすごくこれは博士志向であって、実務経験については格付のところで、我が国の国立大学の給料の格付とほぼ同じで、現場経験が最高3割引きでカウントされるということで博士学位を求めているということです。
 最後、あと2~3分お願いします。
 15ページから16ページに関して、最近の動向ということでほやほやの話でありますけれども、アメリカは余り抜本的な制度改革ということにはまだ向いていないようです。
 ドイツに関しては先ほど来出ているボローニア・プロセスへの対応ということで、ドイツモデルというのがもうかなりアングロサクソン化しつつある、しているということです。私なんかはいつもゲルマンモデルを放棄するなというように言うのですけれども、いやいや、もう既にドイツでは大学を置く場合は必ずバチェラー課程とマスター課程を持つ両方のものでなければ認めないということになっております。ただ博士課程に関してはまだそこまで勇気がないようでして、従来の徒弟制的な博士教育をやっているというようなことであります。
 ドイツの中で、そういうヨーロッパ共通の枠組みの中に位置付けておりますので、専門大学の場合もリベラルアーツではありませんけれども20~30%は基礎科学科目、ベーシック科目を置くとなっております。これはギムナジウムが2007年から16年の間、もうほとんどの州が終わりましたけれども13年から12年になって、かつてはギムナジウム、高校で教養教育をやっていたので大学ではやらなかったわけですが、そろそろこういうこともドイツでも課題になってくるということかと思っています。
 韓国では2008年以降の教育力強化事業の一環として、世界的専門大学を創生するということであって、かつ、16ページの一番上にありますけれども、専門大学をいろいろな分野だとかプログラムで特殊化して世界的レベルを競っていくということを今進めております。
 中国がすごく大変なことで、蜂の巣をつつく状態かもしれませんけれども、ドイツモデル、欧州モデルを採用しまして、職業技術学院あるいは専科大学3年制と4年制大学が増え過ぎたというわけで、1,200ぐらいある4年制大学の半分を合わせて専門大学に改組していくという決定をしているようです。Applied Universityと呼んでおりましたけれども、高等職業教育人口を現在の4倍くらい、1,480万人まで増やしていくということで、そのことを通して世界レベルの高等職業教育を構築していくということであります。
 ヨーロッパと同様のアカデミックトラックと職業・専門職トラックを作っていって、かつ、相互に乗り入れができるようにしていくということで動いているようであります。
 以上です。ありがとうございます。
【黒田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、今の寺田委員の発言について、御質問、御意見はございますか。
 だんだんシステムの核心に入ってきたわけでありますけれども、池田委員、先ほど……。
【池田委員】  全体的な。
【黒田座長】  全体的なことで。
【池田委員】  地方に存在し、職業に関係する100社ぐらいの支援をして、こういう専門学校の学生も大量に採用し、地方大学の学生もある程度大量に採用している中で、今感じている課題、疑問、要するに私の立場は企業家ということで感じていることを発言せよということでもございますので、一つは地方大学が定員割れしてきている、短大もほとんどなくなったと。そうすると地方大学の今の大学制度の中での地方大学、国立はいろいろな科目はあるのですけれども私立、いろいろな専門的な大学、そこから出てきた人材が職業的な視点から見ますと、大学を出てそのまますぐは残念ながら使い物にならないと。それはどういうことかというと、教える方、今議論になっている教員の質とか学校の質とかということが職業と完璧にミスマッチしているのだと。それで専門学校の学生は多分地方から採用する。地方の専門学校から情報収集しますと、9割ぐらいが地方の企業にしていると。今、御存じのとおり中央集権になってどんどん東京の大学に来て、地方の大学は定員割れして、専門学校は比較的頑張っているところもあるという構造の中で、地方の企業も最近は残念ながら国際化しなきゃいけないと。そうすると専門学校の卒業生と、韓国なんかも留学生も来たりいろいろなプロトコルを考えると、どうしても専門学校の位置付けが2年制課程、いわば短期課程が非常に曖昧である故に国際的な視点からいくとビザが日本人が取りにいくと、ASEANでさえまともにビザが取れない、半年。大卒じゃない、だけど技術的なレベルとか人間力からいくと上なんですね、あちらの大卒より。そういうことを考えると、本当に地方の企業が国際化しなきゃいけないという中ですごくミスマッチしているということは、企業側からすると感じます。そして御存じのとおり、JETROも含めてどんどん地方の企業が出ていって国際化しないと、なかなかもういろいろな意味で、成長性も含めて少子化の中で難しいと。逆に地方がもっと発展しないと日本の国が衰退するという、今アベノミクスがそのど真ん中で、ちょっと議論からいくとすごくミスマッチしている感じがして、地方が要はやる気のあるいい人材をプロトコルに置いてもやっているんだ、そういう意味で韓国というのは自分の国中で余り職場がないから国際的にやるしかないから物すごくダイナミックにこんなことをやっているわけですね。アメリカも移民が多いから、できるだけやる気のあるものを学びやすい生涯学習のシステムでそういうコミュニティ・カレッジを作っているという感じがしまして、私どもが支援している関係の専門学校はアメリカの大学とある面で内容さえあれば、要するに単位互換、2年卒業したら一定レベル英語ができれば専門学校は簡単に、簡単と言ったらあれですが、ちゃんとそれなりの質をある程度維持しながら編入できるという物すごいダイナミックになっているわけですね。アメリカはできる、これは20年前からやっているのですけれども、それはできるんだが日本の大学ではほとんどできないみたいな、その質的というのは何ぞやいうことで、大学の先生が研究課程に入って、だけれども教育内容に関しては現場ではなかなか役に立たない。だから定員割れもしてくるのではないかと、そういう質の高い学生たちを持っている、来ているよい大学はもともと学生の質が高いので、質だといって、それで教員の質が果たしてどうかということになると、私は課題があるのではないかと、今はそんな感じで、今日こうやって初めて聞いたんで、では、どうあればいいかということまで提案できないですが、一応私の今感じている疑問です、経済人として。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 他にございませんか。どうぞ、前田委員。
【前田委員】  いろいろ幅広く御説明頂きまして、ありがとうございました。
 お伺いしたいのは、今日御報告のなかった質保証のところなのですけれども、例えばアメリカだといわゆる機関別アクレディテーションは、ポストセカンダリーとセカンダリーを評価するのは同じ評価機関で、委員会が別になっています。しかし、恐らくプログラム若しくは職業分野のアクレディテーション団体というのはディグリーレベルしかやっていないのではないかと思います。韓国とかドイツの場合、そのあたり、職業教育で学位につながらないようなプログラムの質保証を何らかの形で行うシステムがあるのかどうか、もしお分かりになれば教えていただければと思います。
【黒田座長】  寺田委員。
【寺田副座長】  先ほど説明しましたように韓国にしましてもドイツにしましても、専門大学の枠の中では全てこれは学位、あるいは準学士のプロセスですので、その範囲でしか当然評価はしていないということです。一般職業科目に関しては、詳細は私も調べていませんが、それよりむしろ国家レベル、連邦レベルでの職業資格基準に合っているかどうかということをきちっと規制をしますので、そこでチェックされていると考えてよいのではないかと思いますけれども。
【前田委員】  ありがとうございます。
【黒田座長】  ほかにございませんか。
【岡本委員】  よろしいですか。
【黒田座長】  どうぞ。
【岡本委員】  寺田先生の16ページの中国の例ですが、既設の4年制大学1,200の半分の600を専門大学に再編が昨今提案されたと。この理念、ポリシーがどういうところにあるのか。またそれが私ども日本にどういう参考になるのか、ならないのかという点と、それから続けて、金子先生の最初の1ページのヨーロッパ型、アメリカ型ということで、学位トラック、職業トラックというヨーロッパ型と、アメリカ型は単線型で、日本は戦後アメリカ型の単線型になっているわけですが、早い時期から自分の適性に合った職業を目指していくと、そういう人たちがヨーロッパはそれなりに育っていると。学術トラックと職業トラックの本来二つに分かれているものが統合されていくというプロセスにあると思うんですね、ヨーロッパ型は。しかしアメリカは単線型ということでいろいろ問題も抱えていると。私としては、日本も単線型で来たが故にいろいろ弊害も出てきているということですから、既存の大学体系だけで問題が解決されていくのではないかというお考えは、私はやや楽観的過ぎると思いますので、その点につきまして金子先生にもコメントを頂ければと思います。
 以上です。
【黒田座長】  それでは。
【寺田副座長】  ありがとうございます。
 中国のことですが、これはこの19日に聞いたばかりの話であります。その後メールで詳しく聞きまして、これは一体3年制なのか、4年制のプログラムなのかと聞きますと、4年制ですということなので、中国ならでこそこういうことをやるんだなと思います。日本ではそういうことをやろうと思ってもなかなかできませんし、大学が総抵抗するかもしれませんけれども。その理念ですけれども、基本的に2つのこと、理念に当たるかどうか分かりませんが申し上げておくと、そこに書いていますように基本的には、これは韓国にしてもドイツにしても、かつて2年制のカレッジを作るときには日本の高専をまねましたけれども、今はドイツ専門大学のモデルを入れていまして、その結果としてという16ページの一番最後に書きましたけれども、ヨーロッパと同様のアカデミックトラックと職業トラックを併存させる、それを両方構築していって、かつ相互移動できるようにするということが1つ。
 それからもう一つ、中国独自の問題として言えば、実は前の方にも書いておきましたけれども、職業技術学院、専科大学、特に職業技術学院に関しては学位が付与されないのです。これは作ってもしようがない、行ってもしようがなかったということがあって、これが今回学士課程に格上げになりますので、職業技術学院へ2年間行って、更にその後専門大学につなげていくということ、あるいは中途から直接専門大学に行くということになりますと、学士課程、後で専門というのを付けるのかどうか分かりませんけれども、こういうものにつながっていくという地位改善の問題が1つあるのかなと思っております。
 何しろ、御承知のように中国の場合、韓国もそうですが大学を作り過ぎた、あるいは専門大学を作り過ぎて縮小にかかっているということが1つで、結果としてこの職業人材がいなくて、なのに学卒無業はいっぱいいるということに大変困っているという状態の中で出てきている一つの答えかなと思います。
【岡本委員】  ありがとうございました。
【黒田座長】  では、金子委員、お願いします。
【金子委員】  私もさきおととい上海から帰ってきまして、かなりそれが問題になっているところですが、基本的に大きいのは大卒者の失業問題が非常に大きいということです。それから、専門職業大学にするといっても、普通の大学には相当困っているといいますか、何を教えていいのかというのが分からないと。基本的には対象としているのは地方大学だそうでありまして、地方だから職業教育ができるかというと、必ずしもそういうものでもないだろうということで、これはなかなかどうなるか、まだかなりこれからその推移を見なければいけないのではないかと思います。
 それで、先ほど単線型に弊害があるのではないかというお話でしたが、私は単線型の中で基本的には多様性をもう少し確保するべきだった、努力が必要だったと。ただ、それができなかったために弊害が生じている部分はあるだろうと思います。ただ、私が申し上げたいのは、職業教育をやれば解決するかのごとくよく言われていますが、私は全くそれは誤解だと思います。職業教育というのは具体的に何をするのかというのは、実はそのときに余り内容は私はよく分からない。先ほど申し上げましたように非常に細かい職業的な知識をやるのが職業教育だと考えるのか、それとも職業を中心として様々な人間的な成長を図るということまで含めて言うのかどうか。私は、職業教育の1つの非常に大きな問題は、今の子供がそんなに早くから職業について明確なイメージを持っているかどうかということです。持っている子もいます。例えば先ほど申し上げましたように、日本の高等教育に入る学生の中で一番そういう意味で将来イメージがはっきりしているのは医療系に進学する子供、この人たちはかなり明確なイメージを持っていますが、残りは職業について実は余り明確なイメージを持っていないです。キャリア教育ということでそれを推進しよう、持たせようという努力は行われていますが、実はこれはかなり難しい。なぜならば、職業自体が非常に多様化して流動化しているからです。この状況の中でどのような職業教育をするかということが基本的な問題なわけです。ヨーロッパがなぜ従来の職業教育がかなり普通の学位トラックに統合するような動きになっているかといいますと、これもヨーロッパの中の標準化ということがありますが、しかしそれより非常に大きいのは職種が非常に多様化している。伝統的なドイツなんかは二百何十種類か基本的な職種があるということでしたけれども、特にサービス業を中心として職種が非常に多様化していて、かつ流動化している。これに教育制度をそのまま直に対応させることは非常に難しくなっているわけです。そのためにもう少し流動的な制度を作らなければいけない、そのときに一般的な大学、学士と結び付けることによって、多様化を内包しつつ、しかし行き止まりは作らないというシステムを作っていくということだろと私は思います。
 したがって申し上げているのは、複線化のような硬い形での種別ではなくて、広い意味では統合されていて互いに流動性が利く、その中で非常に職業に特化している部分もあるし、そうでない部分もあるというようなシステムを作っていくということが、基本的には国際的に課題になっているのではないかと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 他にございますか。
【岡本委員】  一言よろしいですか。
【黒田座長】  どうぞ。
【岡本委員】  非常に参考になったのですけれども、確かに経済とか世界の大きな多様化、高度化、グローバル化の中で、従来のような一定の職業でずっと何十年も同じ職業というのがなくなってきたと、そういうことでなかなか早い段階から職業を目指すということが難しくなくってきたと、これは一理あると思うんですが、ただ日本の子供たちは余りにも職業というのを意識しなさ過ぎるということで、とりあえず高校、とりあえず大学と、そして就職も、なかなか自分の職業をはっきり明確にしないで受かるところに入っちゃったということで、ニート、フリーターの問題とか、これは欧米、アジア含めて世界の若者の意識動向と比べてはるかに職業に対する意識が低過ぎると。それをどう解決するかという問題意識を一方で持たないと、私はこういう大きな高等教育の制度、職業教育はどうあるべきかという話に現実から説きおこしていくというプロセスがないといけない。そのために中教審が行われて、そのために教育再生実行会議が行われて、この有識者会議も私はそういうことで開かれていると認識しておりますので、金子先生がおっしゃるとおり分かるのですが、やはり現状の子供たちの状況をどう捉えるかという、若者のキャリア意識、職業意識をどう捉えるかというところについては、もう少しまた議論させていただければと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。
【金子委員】  よろしいですか。
【黒田座長】  はい。
【金子委員】  この問題は、一般的な日本の若者はそんなに職業意識が足りないかどうかと、例えばアメリカと比べて足りないかどうか、これはそんなに一般的には言えないと思います。
 もう一つは、非常に重要なのは、そういう職業意識が育つ子もいるのですね。これはタイミングが非常に人によって違うわけで、全部を職業意識が早くから持つように導いていくことができるかどうか、これは私はちょっと難しいのではないかと思います。むしろ大学に入ってからどういったことが重要なのかということをいろいろと考え直していくというようなこともむしろ考えてもいいし、そういうような大学教育にすべきだろうと私は思いますが、そういう意味で一括して捉えることは非常に難しい。そういうような職業意識を初めから持っている子もいますし、そうでない子もいる。それについて、それに対応した教育システムの多様化といいますか、そういったことは必要だろうと私は思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 もう時間になりましたので、これで今日の自由討議は終わりにしたいと思いますが、次回からは全般にわたっての議論を進めていきたいと思っています。
 それでは事務局から、今後の日程についてお願いします。
【神山教育改革推進室長】  次回につきましては、11月21日金曜日の16時から18時を予定してございます。場所は中央合同庁舎第4号館の1階、全省庁共用108会議室を予定してございます。
 次回は、先ほど座長からございましたように、これまでのヒアリングを踏まえて新たな高等教育機関の基本的な方向性について御議論頂きたいと考えてございます。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の会議をこれで終了させていただきます。どうもありがとうございます。

── 了 ──

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