実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第3回) 議事録

1.日時

平成26年10月29日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

全国町村会館2階 ホールB

3.議題

  1. 委員からのヒアリング
  2. その他

4.議事録

【黒田座長】  それでは、時間になりましたので、ただいまから、第3回の実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議を始めたいと思います。本日はお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。
 本日は青山委員、永里委員、樋口委員から、産業界からの新たな高等教育に関する期待ということで、御発言を頂くことになっております。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず本日の会議に関係する資料の確認と本日初めて御出席いただいております委員の方の御紹介、欠席の委員の方々の紹介を事務局からお願いいたします。
【神山教育改革推進室長】  それでは、本日の配付資料につきまして確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第にございますように、配付資料としまして本日御説明を頂く3名の委員から御提出のあった資料がそれぞれ資料1から資料3としてございますので、確認を頂ければと思います。
 また、議事次第には記載しておりませんけれども、机上資料といたしまして青山委員から配付がございました「商工会議所キャリア教育活動白書」が議場には配付をされておりますので、併せて御確認を頂ければと思います。もし不足の資料がございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。
 また、本日に関しましては、報道関係の方からは会議の全体についてカメラ撮影を行いたい旨の申出がございましたので、御承知おきいただければと思います。
 引き続き、今回初めて御出席いただきました委員を御紹介させていただきたいと思います。
 慶應義塾大学商学部教授でいらっしゃいます樋口美雄委員でございます。
【樋口委員】  どうぞよろしくお願いいたします。
【神山教育改革推進室長】  また、本日は欠席の委員としましては、池田委員、岡本委員、冨山委員が御欠席となってございます。私の方からは以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。冒頭お話ししましたように、今日は皆さんからまた御意見をお伺いするということでございますので、まず、樋口委員から御発言を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【樋口委員】  それでは、発表させていただきます。
 2回欠席をしてしまい、申し訳ございませんでした。この間の議論の議事録に目を通させていただきまして、何が議論されてきているのかといったことを把握した上で発言をさせていただきたいと思います。
 私は、労働経済学という研究分野で研究しておりまして、割と実業界の方々とも話す機会が多いというようなことから、一体、今、この実践的な職業教育といったもので、どういうことが求められているのだろうかということについて、お話をさせていただき、それに応えられるような制度といったものはいかなるものかについて、お話しできればと思っております。
 その職業教育といった場合にいろいろなところで人材の不足が指摘されているかと思います。従来、日本の企業、特に大手の企業におきましては、入社する段階においては何も知らなくてもいい、あるいは何もできなくてもいいと。あとは社内に入ってから、社内におけるオン・ザ・ジョブ・トレーニングを中心とした能力開発、教育訓練を行っていく。これによって一人前の人材を育てていくという仕組みがとられてきたかと思います。
 しかし、そういった企業がある一方において、例えば中小企業においてはなかなか社内における人材の育成に、経済的な理由あるいは時間的な理由というもので取り組めないという実態もあったかと思います。
 そしてまた、ここのところ大手の企業も含めまして、それだけの時間的な余裕がどうもなくなってきているということから、社内で必要とする技能を身に付けた社員を例えば採用の段階においてもある程度これが欲しいんだということも聞こえてくるかと思います。あるいは技術革新のスピードがアップしてきていることから、なかなか社内で教えようと思っても、社内で教える側の、トレーナーの人材も確保することが難しいということから、社会に対してできれば学校のようなところである程度の基礎的なものを身に付けた能力を持っている人材を育てられないかという指摘があるかと思います。
 同時に今申し上げましたのはどちらかというと入社の段階ということで、技能的にも初期レベル、イントロダクションレベルのものだろうと思いますが、さらには中堅層においてもこの産業界をリードするとか企業を変えていくといった職業人が不足してきている。経営層においてはいろいろな方がいらっしゃるわけでありますが、どちらかというと中間的な組織層においてそういう人材が不足してきて、ここにつきましても社内で育成するものの限界があるんだということから、海外を見たら海外においていろいろな大学がそういった人材を輩出している、あるいは職業人という形でそれを受け入れて、リトレーニングということで新しいものをまた身に付けていくようなことが可能になる。そういう仕組みができないかということもよく聞きます。
 さらには今度は個別企業じゃないのですが、社会として産業の栄枯盛衰を考えたときに、新しい企業がなかなか日本では生まれてこない、起業家が不足しているということから、起業家教育というものもできないのかという職業の現場における要請が起こっているかと思います。
 こういう社会的な要請が資料1に書いてありますところで起こってきているわけでありまして、こういったものにどう応えることができるんだろうか。これは基本的な高等教育機関に実践的な職業教育を行うところでは、必要になってくるかと思いますが、その一方において、企業における組織、採用から中に入って人員の配置、そしてまた、転勤も含めた配置転換という仕組みは海外の企業と、多くの場合、特に大企業においては大きな違いがあるという可能性があるのではないか。
 例えば海外ですとこういう仕事ができる人がいるのかいないのか、それを採用という形で見極めるということでありますから、求人の中身を見ればこういう能力を持っている人は具体的に示され、そして、それに応えられる人が応募してくるという仕組みをとっているわけですが、特に日本の場合新卒採用におきましては、大手企業においてはどちらかというとそういうスペックが定まっていない、総体的に入ってから配属を決めていきます。また再配置におきましても会社のいろいろな理由、また幅広い能力を身に付けてほしいところから配置転換が行われていくということで、言うならば自らがキャリア形成をできる状況があるのかないのかというところも考えていかなければならないところかなと。
 その結果として仕事を選べるか選べないのかという、これは働く側にとってということですが、やはり仕事が選べるというところで自己啓発なりして、自らその学校に通う、自己啓発をしますということも起こってくるかと思いますが、そこのところはなかなかうまくいっていないのが現状かなと思います。
 今後考えますと、企業、大企業におきましても、特にホワイトカラーにおいても職種別の採用とか職種限定採用といったものが増えていくのだろうと思いますが、それを期待して、この学校の制度も考えていくのかどうかというのは非常に大きなポイントになってくるかなと。現状の状況においてそれを受け入れて、学校制度を作っていくと議論するべきなのか、それとも社会自身あるいは企業の人材活用自身も変えていく仕組みから、視点から、この学校の在り方を変えていくのかというところは、議論していくべきところかなと思います。
 といいますのも、企業の方に聞くと学校は人を育てていないから職種別の採用をしてもなかなかそういう人材がいない。したがって、採用してから教育訓練を社内で行っていくんだという声も聞かれるわけでありまして、そのところにおいては学校に対する不満、また学校から見れば、企業に対する不満ということが相まっている現状だろうと思いますが、そこをどう変えていくのかということも実はこの問題、今考えている実践的な職業教育といった問題を通じて、我々に問われている問題だろうと思います。
 その上で、現状として今ある社会の秩序を受け入れて、その下において実践的な職業教育をどう考えていったらいいのかを考えますと、どういう人材を養成していくのか、教育していくのか、育てていくのかを考える必要があり、そこではまず最初に、どういう業種を考えるんですかということが必要になってくるだろうと思います。
 例えば農業といったものもあります。酪農というところでもそういった業種、仕事を考えたときにどういう訓練、教育をするのかということもありますし、IT関連とかあるいは福祉だとかファッションといったものを想定して、学校の制度を作っていくということもあるかと思います。
 もう一つ、日本では業種という方が分かりやすいのですが、職種ということでその業種の中でどういう仕事をする人を育てていくんですかという、ここの職種がなかなかゼネラリストを求めるということになると、明確に規定することができないという面があるわけでありますが、やはり技術職とか事務職という割と漠然としたもの、事務職も経理を担当する人なのか、それとも法務を担当する人なのか、人事管理を担当する人なのか、そこについてこれから採用される人に対する教育であるのか、もう既に会社の中において実際にそれを行っている人を再教育のような形で進めていくのかというところで、これもまた学校制度としては大分変わってくるのかなと思い、その点についてもやはり考慮しておく必要があるだろうなと思います。
 そして、その上で現状を受け入れるとするならば、いわゆる専門職に限定することも一つの方法であって、将来的には先ほど言いました経理ですとか労務といった専門職の人材を育てることもあるかもしれませんが、今の職業分類で言うところの専門職といったものが想定された学校になってくるのかなと思います。
 こういう基本的な議論をした上で、このあるべき姿を議論しないと、作ったものの余り役立たない、有効ではないということになってしまうことでありますので、私はこの問題を考える上でまさに基礎の基礎ということでありますので、そこから議論をしていくべきだろうという形で、ここに問題提起をさせていただきました。
 今、新卒とかあるいは無業でこれから就職しようという人たちについての対象者を絞っていくのか、それともそうではなく、もう既に働いている、会社に勤めている人、時にはそれが入社して3年、5年という人もいるでしょうし、中には10年、15年というような人もいると思いますが、どういう人を対象に今申し上げたような専門的教育を施していくのかも重要なところでありまして、4年制の今の大学であれば高校を卒業して、1年、2年浪人するかもしれませんが、職業を経験していない人を対象としてこの学校制度が基本的には考えられているということですが、実践的な職業教育といった場合にはこれだけではこの社会のニーズには応えられないだろうと。もちろんこれから就職するあるいは転職する人もいるかと思いますが、一方で、もう既に働いている人で、時には会社からの派遣といった形の人も受け入れて、この実践的な職業教育を促していくのかというところも重要なポイントになってくるだろうと思います。
 就職後にやはり学校で身に付けた技能、能力、知識といったものが会社で実際に活用できるというためには、学校と企業との間の継続性というものが当然必要になってくるわけでありまして、しばしば出される問題で、アメリカでビジネススクールのMBAを取ってきましたが、日本に帰ってきたら、その企業に戻ったら全く違った仕事をしているということで、学んできたものが有効に活用できない。そのために自分は転職をしますなんていう人たちも多くなっているわけでありまして、そこの連続性は学校だけではなく企業と一体となって考えていかなければならない問題となってくるんだろうと私は思います。
 もう既に高等学校を卒業して、進学志向というのは非常に高いわけでありまして、実際数字を見ましても高校卒業生の進学率、大学、短大に限定しましても約55%、あるいは専門学校が22%ですから、併せますと7割強が何らかの形で進学をしていることになりまして、これを新卒だけを対象にすると多分この残りが対象となるのか、あるいはここに言った学校との間の人材の奪い合いを想定していくのかというところも重要になってくるかと思います。
 最後に、では何を教えるのだろうかというところで、新たな高等教育機関への制度ということをどう考えていくか、ある程度カリキュラムみたいなものを想定しながら考えてみております。
 今、専門学校におきましては、もう18歳の春の段階でどういう仕事に就くのか、希望を明確にし、それを学ぶためにそれぞれの学科別に入学していくという仕組みになっているわけですが、大学生の場合には4年制大学でいうと3年の秋ぐらいからどういう企業に就職するのかということを考え出すわけでありまして、1、2年生のときにはほとんどそこが明確になっていないのが現状だろうと思います。
 そうしますと、新しい高等教育機関を作った場合に、もう既にこういう仕事をしたいのだということが明確になっていることを前提に、その後、1年生から専門の教育を行っていくのか、それとも1年生の段階ではもう漠然としていると。漠然としているんですが、インターンシップを通じて自分の行う仕事について実態を理解した上で職業選択というものもできるような仕組みにしていくのか。
 ですから、1年生のときにはまさに職業選択というカリキュラムの作り方をし、2年生以降についてまず2年生、3年生ぐらいで基礎的な各専門分野の職業選択をした後でありますので、その専門分野の知識技能といったものを教えていくということをし、また、3、4年生の段階において、更に幅広いものを教える。例えば、マネジメントも含めた形で業務マネジメントですとか組織マネジメントですとか経営企業というところも教えていく仕組みを考えていくのかが一つ、論点になってくるかなと思います。
 今の専門学校では会社に雇われる人を想定して、会社を変えていくとかあるいは新たに自ら開業していくところはなかなか視野に入っていません。よく酪農家の人たちと話をしますと、牛の育て方はよく勉強してきていると。しかし、実際には今度そこで働いてみると帳簿の付け方、会計制度というのもどうやれば利益が出るのかというところも雇われる側でも理解していないと駄目な時代になってきているわけであって、そういうところも含めた職業教育を行ってもらうことはできないのかというふうに御指摘を頂くことがありまして、そこも含めたマネジメントに必要な素養を考えていくことも重要かなと思います。
 そうなってきますと例えばこの1、2年生のところはもう既に社会人であればスキップとして、そして、このマネジメントのところ、酪農に特化したマネジメントの在り方をやっていく、編入なのか学士入学なのか分かりませんが、そういうところから再入学という形で認めていく仕組みもあるのかなと思います。
 これによってどれぐらいの規模の学校を考えるのかといったものも左右されてくるかなと思います。例えば、1年生のときにまさに職業選択までということになりますと、非常に幅の広い授業等々、インターンシップ等々も含めて用意しなければならないことでありますので、相当に数の多い学生を想定して、そして、単科の専門学校ではなかなか厳しいということになってくるわけでありまして、この1年生のところは今の専門学校で言えば、幾つかの専門学校の連携という形で、この職業選択のカリキュラムを作っていくことも可能になるかと思います。
 あるいは全く新しい学校を作ろうということであれば、ここはまさにインターンシップということが、職業を選択するためのインターンシップということを、何を学ばなければならないのかということを認識するようなものに重点的に置いているということがあるのかなと思っています。
 私ども慶應の商学部におきましてもインターンシップをやっておりますが、これは通常のインターンシップと違っておりまして、2年生に設置しております。2年生で企業に行って、まず体験しろと。そして、自分はどういうものをやりたいのか、どういうものを学ばなければならないのかということを理解し、そして、その上で例えば専門のゼミを選ぶとかということを使って、そして社会に出ていくというキャリア形成の一環としてそれを位置付けるということをやっておりますが、そういったものも必要になってくるのかとか、もう職業ははっきりしていますと、自分の就くのはこれですというのが分かった人間だけを対象にしていくのかどうか、これが逆に今度は会社に入った後での離職、転職率という、特に離職率が非常に七五三と示されるほど高いこの社会の中で、そこがしっかりしていないという問題も私はあるのではないかと思っておりまして、それをカリキュラムの中に組み入れていくことも重要ではないかと思います。
 あとはどう教えるのか、どう育てるのか、どう活躍を支援していくのかというところで、まさに企業との一体という形で、ドイツや最近フランスが取り出しておりますデュアルシステム、インターンシップを超えてデュアルという形で、実際に週のうち3日ぐらいは企業で働き、2日ぐらいは座学を受けるというような仕組みも考えられるでしょうし、そこは職場、現場と一体となった教育といったものが、この分野においては特に求められていくのではないかと思います。
 どういう組織とするのかというようなところもこれは今、申し上げたようなことでありまして、教員につきましてもやはり実務経験のある教員の配置、あるいは企業等の現職者の活用ということもありますし、さらに、企業をリードしていくような外部人材、相当に高度なものを身に付けている人を連れていくということも必要であり、スタンフォードであるとかそういったところでやっているような仕組みを考えていくことも一つかなと思います。
 以上が、私の申し上げたいことでありまして、やはり基準、基礎から考えていく必要がこの問題はありますねということを申し上げて終わりたいと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。それでは、何か御意見ございましたらお願いします。はい、どうぞ、金子先生。
【金子委員】  樋口先生が御専門なので伺いたいんですけれども、こういった職業的な高等教育を必要とする業種、職種あるいは産業に関してどのようなものが具体的にあるかとお思いなのか、あるいは潜在的な需要があることを知るためにどういった作業をすればいいのかということを伺いたいのですけれども、今、例えば専門学校での就職者を見てみますと、一般的には例えば工業とかそういったものが多いと思われているのですが、実は今はもう医療関係が35%で最大で、福祉、教育がそれぞれ10%ぐらいですから併せると55%、工業は10%ぐらいです。半数以上はいわば医療福祉関係の専門職。これはかなりもう職種として明確にある程度定義されていて、免許もある程度あるという職種です。
 ところが、大学の場合は福祉関係で専門職に就く人は全卒業生の1割ぐらいでありまして、その割合がかなり小さいわけです。ある意味では専門学校はむしろ福祉教育関係の免許が要るところにその需要先を見つけていて、大学に入るとその割合はかなり少なくなっている状況になるわけですが、今度新しい大学、高等教育機関ができるとすればその間ぐらい、間という言い方が不適当かもしれませんけれども、その間のどこかに自分を位置付けなければいけないことになるのではないかと思うのですが、そのときにやはり具体的にどのような職種が具体的なターゲットになり得るのかということとお思いになるか、将来何か推計するといったディマンドを図るためにはどういったことが必要なのかということを伺いたいんです。
【樋口委員】  ありがとうございました。
 今の御質問でこれから就職しようと思う人、現在は未就業ですと、あるいは就職しましたけれども、そこを辞めて今は無業でこれから再就職しますということを考える場合には、かなり資格とかあるいは職種も専門的なものに限定されるのかと思います。もう既に就職している、既卒というよりも就業している人、働いて会社にいて、具体的に学校にもう一度入り直してということになってくると、その幅が広がってくるのかなと、内容的にも高まってくるということがあるかと思います。
 金子先生御存じのとおり、日本の政府統計で職種分類というのがあります。その職種分類を見ますと割と細かく分けていることができるような分野と、そうじゃない大ぐくりのものが併存してあるわけでありまして、ホワイトカラーの仕事は往々にして大ぐくりの方、逆に今おっしゃったような医業であるとかあるいは福祉関係の問題もそうですし、ITであるとか、そういったところは細かく職業分類ができています。その分だけ逆を言えば職業というものが明確に区別できるのと同時に、どういう能力が必要かということもはっきりしているというようなところでありまして、そこについては多くの場合、専門学校も含めて既にそれが提供されているところもあるのではないかと思います。
 問題になってくるのはホワイトカラーの職業教育といったものがどれだけ求められていくのだろうか。現状についてはなかなか企業の方に、青山さんは別かもしれませんけれども、どういう人が必要なのですかといったときに、具体的にこういうものというスペックを明確にできるという方は経営者の中でも少ないのではないかなと、ホワイトカラーについては言えるかと思います。
 何しろ配置転換を考えてということになりますと、経理もできて、法務も分かってというようなことになってくるわけでありまして、今後の社会においては恐らくそういうプロフェッショナル化がホワイトカラーについても進んでいくだろう。特に、大企業においては進んでいくだろうと、そして、そういう人材が必要になってくるということであれば、そういったものに対する学校教育、大学における教育といったものも必要になってくるのかなと思います。
 金子先生のお話で先ほど専門学校、専修学校があって、4年制の大学があって、その中間的という表現があったのですが、そういったものが必要なのか、それとも4年制の大学と並行する形で、同じようなレベルまで想定して、片方は研究大学ですよと、片方はむしろ実践的な大学ですという形で、企業に採用された後もトップまで進むような人材を想定してこの実践的な職業教育をやる価値も私は出てくるんじゃないかなというふうに思っています。
 現状の企業において専門職というと、トップ経営者になれなかった方が専門職に位置付けられているというような面が現状としてあるわけです。そこの考え、現状のままではそういう実態があるわけで、やはり間ということになってくると思いますが、今後考えていくとかなり人事とか経理とかいろいろな分野で専門的な知識がないと、仕事をすることができないというところが増えてくるんではないかと思います。
 今は本人の努力でそれを補っているというところですが、それにも限界があるということが最近ささやかれてきているのだろうと思い、企業のニーズというのはかなりそちらまで広がってきているというのを、私の経験では感じています。
 お答えにはなっていないかもしれませんが、今後見通すときにもそれがどうなるかというところです。
【黒田座長】  ありがとうございます。また後ほどトータル的に御質問いただきたいと思いますが、時間がありますので、次に青山委員から御発言をお願いしたいと思います。
【青山委員】  商工会議所の青山と申します。よろしくお願いいたします。
 私の方から二つばかり資料を提出させていただきました。一つは「社会総がかりでのキャリア教育の実践を」というものと、もう一つは、昨年の3月に商工会議所がまとめた「キャリア教育活動白書」というものです。商工会議所は全国に514ございますが、どこでどういうことをやっているか、教育という分野、職業教育という分野でどういう取組をしているか、そういうものをまとめたものでございます。
 お手元にこの資料2と書いた横長のもので御説明させていただきます。
 商工会議所は、今申し上げましたように全国に514ございますが、事業数で申しますと126万社ございます。大企業から中小、小規模までみんな入っておりますけれども、圧倒的に日本の産業構造と同じように中小企業が中心でございます。97%が中小、小規模企業ということでございます。
 一方で、御承知のとおり日本は人口が減少していく、高齢化が急速に進んでいるという構造的な問題に直面し、結果として労働力人口がこれからものすごく減少していくことについては、日本創成会議から報告されたレポートが去る5月に出ております。その中でも消滅可能性都市ということで、都市が消滅していく時代が恐らく30年後には来るだろうということが指摘されております。
 私どもの基本的なミッションというのは、いかにして中小企業を元気にさせ、創業させて、なおかつ地域で雇用を維持し、創出し、地域をどのように活性化していくかということです。これが私ども商工会議所に与えられた使命でございます。基本的にこういうものを実現するためにいろいろな意見、要望事業を行っているというところでございます。
 先ほど樋口先生からマクロ的な問題から各論に入るいろいろな御示唆を頂きましたけれども、私は事業者団体である商工会議所という総合経済団体から見て、この職業教育について、何をやってきたか、どういう理由でやってきたかについて御説明させていただきたいと思います。
 1ページを御覧いただきながら、商工会議所について簡単に御説明させていただきます。商工会議所は明治11年に発足しております。そもそもの発端は後で御覧いただければと思いますが、条約改正を進める上で国民世論を代表するような機関が世の中になかった中で、国会がなかった時代ですから、それで欧米にあった商工会議所という組織を組成するということで、当時の政府が渋沢栄一さんという方にお願いして、設立されたのが商工会議所のスタートでございます。ですから、商工会議所の基本的なミッションというのはこの建議要望活動を行うことで、現在でも大前提になっております。
 
 次の3ページ、4ページ、教育の方に移らせていただきます。実は直近では第一次安倍内閣のときに教育再生が掲げられて、その際、2007年に教育再生に関する意見を取りまとめております。基本的な考え方から職業教育に至るまで大きな方向性と考え方を出させていただきました。大きく四つのパートから分かれておりますけれども、少しだけ御紹介いたしますと、ローマ数字の1を御覧いただきますと、2.で我が国の強みの源泉である多様で能力の高い中位層の厚みを維持していく必要があるのではないか。
 それから、ローマ数字2を御覧いただきますと、必要な人材はどういう人材像なのだろうということでございます。一つは基礎能力が必要ではないか、これは四つの能力、基礎学力、規範意識・生活態度、実践力、これは社会人基礎力と言っていると思いますが、四つ目に専門知識・スキルというようなこと。それから、今後必要になるだろうという能力として、実践力を補完する能力を挙げております。具体的にはどういうことかといいますと、その下に書いてありますコミュニケーション能力ですとか創造力、問題解決能力、こういうところも実はその当時から打ち出させていただいております。
 それから、ローマ数字3に「社会に参加する」「働いて生きていく」ために必要な能力を明示すべきではないか、こういうような考え方を打ち出させていただきました。
 この右側の2.の(3)企業の役割を提示しておりますけれども、一番下の・二つを御覧いただきますと、企業においても奉仕・ボランティア活動・職業体験等のキャリア教育へ協力していく必要があるのだということでございます。
 それから、企業自ら教育サポーターへ前向きな支援を取り組むのだという意思表示をさせていただいております。そういうことをやらないと、やはり教育は成り立たないのではないかという考え方でございまして、最後にローマ数字4に市民・企業・NPO・各種団体等による「社会総がかりでの教育再生」をしていく必要があるのではないかという基本的な哲学の下に、いろいろな事業をこれまでやってきております。
 特にこの中で2.を御覧いただきますと、「商工会議所が実施する職業教育支援の更なる推進」と書いてあります。いろいろなものにできる限り協力していこうということをやってきております。
 次の5ページ、6ページを開いていただきますと、先ほどこの白書のことを紹介させていただきましたが、2013年3月に公表したものでございますけれども、全国の商工会議所を対象として、いろいろなものを調査いたしました。教育支援とか協力活動を実施している商工会議所数等の推移、左側のグラフを見ていただきますと、実は20年度からこういう調査をやっているのですけれども、20年度は190の商工会議所だったものが、24年度は267ということで、ものすごく数が伸びております。それだけ商工会議所としても、特に職業教育という分野に関わるものについては極力協力していくようになっております。どういうことをやっているかということはその右側の表でございますけれども、一番上はインターンシップ・職場体験ということで受入れを多く実施しております。
 それから、もう一つ、教育機関への社会人講師の派遣、これもやってきております。特に東京商工会議所は都からの要請で、教員採用の際の面接官の推薦を要請されております。これは15年前からやっておりますけれども、そういう活動にも参加させていただいているということでございます。
 それからあと、6ページの左下を御覧いただきますと、中小企業が多いものですから学校と中小企業というのはどういう関係にあるのかということでございます。中小企業をどうやって学生に伝えるのかということが非常に重要なのですけれども、商工会議所として学生に中小企業の姿を伝えていくというのは非常に重要視していまして、「実施している」、「今後実施する予定」で約37%、「学校からの要請があればどんどんやります」というのも39%ということで、これについては非常に前向きに取り組んできているということです。
 大企業ですと非常にブランド力が高いものですから、大体普通名詞で皆さん御承知なのですが、中小企業はどこにどういう会社があって、どんなことをやっているかというのは実はよく分からない。これが非常に大きなネックになっておりまして、中小企業の中には、実は優秀な会社、世界に冠たる会社はいっぱいあるのですけれども、よく埋もれていて分からない。そういう情報発信力が弱かったということがありますので、これに非常に力を入れているというのが現在の姿でございます。
 次のページを御覧いただきますと、7ページ、8ページ以降でキャリア教育の実践事例ということで、幾つか御紹介させていただきたいと思います。東京商工会議所の事例を幾つか御紹介させていただきますが、墨田区でやっている活動でございます。
 8ページを御覧いただきますと、次世代を担う若者を育てる「教育支援プログラム推進事業」をやっておりまして、実は地域の先輩が地元の学校へ行って自分の会社が何をやっているのか、会社とは一体何なのかという講座でお話をしたり、職場体験の前にマナー講習をするとか、中学生のハローワークと言って、仕事のやりがいを中学生に伝え、将来について考えてもらう機会を提供しています。
 それから、9ページ、10ページでございますが、これは豊島区の豊島支部でやっていることでございます。「夢サポート事業」というものですけれども、プロの野球選手、サッカー選手、ダンサーの方と触れ合う機会を提供し、夢のある職業選択の幅を広げてもらおうという取組も実施しております。2002年から始めて、実施回数は17回、参加人数は3,500人に上っております。非常に人気の高いものでございます。
 11ページ、地方ではどういうことをやっているか、その一例を御紹介させていただきますと、茨城県の日立というところでございますが、これは日立製作所があるところでございますので、ものづくりが基本的に非常に盛んな地域です。日立製作所に実は一緒に仕事をしている中小協力企業はものすごく多くございます。企業城下町はそういう産業構造でございますけれども、このものづくりに対して子供たちにものづくりを実際に学んでもらうということをやっている日立商工会議所の取り組みでございます。
 それから、三重県の桑名というところがあるのですが、古くからインターンシップをやってまいりました。特に工業高校生を相手にして、ここに桑名方式と書いてありますけれども、実際に桑名独特のやり方でインターンシップをやっているわけですけれども、非常にこのインターンシップのおかげで、工業高校生が地元に就職している。ですから、若い人が域外に余り出ない、そういう効果も出てきたわけでございます。
 それから、12ページでございますが、先ほど樋口先生の御説明にもありましたとおり、どういう専門分野が必要なのか、どういう能力が要るのかということで、商工会議所は戦前からそろばん検定試験をやってきておりますけれども、やはり基本的な基礎力、専門的な分野の能力を時代のニーズに合わせてこういうものが必要ではないかというものを提供してきたのが商工会議所の検定試験でございます。その代表が簿記の検定試験でございますが、そのほかに例えば会計ですとか電子商取引ですとか福祉関係ですとか、そういうものについても現在検定試験として提供させていただいております。これも新しい時代に、新しい産業に合ったような検定試験を随時提供していくということにしております。
 次のページを御覧いただきますと、ジョブ・カード制度を商工会議所もお手伝いさせていただいております。ジョブ・カード制度は今更御説明する必要もございませんけれども、政府が取り組んでいる事業でございますので、私どもが承っている仕事というのがこの下の14ページを御覧いただきますと、全体像が書いてあります。簡単に言えば、商工会議所の会員企業、中小企業が中心でございますが、そこで求職者支援訓練、委託型の支援訓練を行う。言ってみれば、インターンシップをより充実した内容と御認識いただければよろしいと思いますけれども、そういう事業をやっております。
 15ページを見ていただきますと、この事業は平成20年度から始まったのですが、このジョブ・カードを使う企業、受け入れる企業の表でございますけれども、実は当初は少なかったんですが、今日では25年度、26年度を御覧いただきますと、企業数で5,000、特に25年度はいろいろな奨励金が出たものですから、約2万近くいっております。累計で右側に出ておりますけれども、現在普及サポーター企業で8万8,000、認定企業数で4万7,000という数に上っております。なぜこういうことをやってきたかということでございますけれども、商工会議所は企業の集まりでございますので、人材を確保することに注力してきました。少子化になり、世の中の経済の動きが非常にグローバル化、専門化、高度化してきたこと、経済構造が変化していること、それに併せて産業の中身も大分変わってきているというのが実態です。
 例えば、現在、この日本の産業を引っ張っているのは何だと考えたときに、皆様方も御案内のとおり、恐らく自動車が中心になってきていると思いますけれども、でも、今から10年前、20年前を引っ張ってきた電機が、その座が実はだんだんなくなってきている。雇用もだんだん減少しているということで、世界的に産業構造の変化が起こっている。
 次に、日本はどういう産業で生きていくのかということでございますけれども、これが今、安倍政権が取り組んでいる日本再興戦略に盛られている考え方ではないかと思っています。
 一つは、国際競争力のある産業をどうやって作っていくのか。これは恐らく今、特に特区で動き始めているのは医療ですとか健康、高度な技術、例えば航空機ですとかいろいろ分野はあると思いますけれども、日本を引っ張っていく産業をどうやって作っていくのか。それをサポートする中小企業、先ほど分厚い中小企業層を維持していく必要があると意見書で申し述べておりますけれども、そういう企業をどうやって育てていくのか。それから、そこに働く人をどうやって教育していったらいいのか、そういうことが商工会議所の大きな関心事になっております。
 16ページ、17ページに産業界から見た教育界への期待ということでまとめさせていただきましたけれども、この意見は2012年4月の中教審でヒアリングで、日本商工会議所からの代表が申し述べた意見の骨子であります。特に職業教育に関するところから中心に並べてみました。一つは教育を通じて地域経済を発展させなければいけない。今、安倍政権が地方創生ということで取りかかっていただいておりますけれども、地域経済が成り立ちませんと日本経済が成り立ちません。こういうことをやり続けないと、サポーティング・インダストリー、分厚い中小企業層が育たない、人材も育たないということであります。
 それから、二つ目で起業家の育成に通じる「パイオニア精神」の涵養が必要となっております。先ほど樋口先生からも起業の話、業を起こす話が出ましたけれども、実はデフレ時代には、ざっと申し上げますと、事業所数で見ますと100万ぐらい消滅しているのです。そのうちのほとんどが実は小規模事業所でございました。その小規模事業所と申しましても2人とか5人とか雇用を抱えております。ですから、何百万人という本当は失業者が出ているのですけれども、だんだん労働移動が起こって必要なところに労働力が移動してきたということであります。
 ただ一方で、企業を起こしていかない限り、実は地域の雇用が育たない、創生されないということでございますので、各地域で業を起こすような仕組みを作っていく必要があると思います。
 それから、三つ目にものづくりと書いてありますけれども、日本はものづくりでこれからも生きていきませんと、日本国が成り立たない。サービス産業だけでは恐らく日本国は成り立たない。このものづくりは戦前からずっとやってきておるわけですけれども、これからのものづくりで必要なものは一体何なのか、そういう観点の教育が必要なのではないかと思っております。
 四つ目はキャリア教育の見直し。これまでの産業構造のキャリアではなくてこれから必要となるキャリアは一体何なのか。先ほど樋口先生から御指摘がありましたけれども、中小企業といえどもある程度この分野だけやればいいというより、専門化、高度化した人材を求めつつあります。例えば、企業会計でいえば財務諸表を読めないと営業として務まらないとか、技術であっても複合的な技術を周知している人材を非常に求めております。
 それで五つ目にグローバル人材の育成と書いているのですけれども、いずれにしましても労働力が不足し、なおかつ高度人材、高度技能者がだんだん不足してくる。実際に建設労働者が不足しているわけでございまして、それが今、サービス産業、小売にも波及している。これが恐らく全ての業種に波及してくるのは時間の問題だと見られておりますが、特にものづくりを維持するための人材の育成が恐らく喫緊の課題になってくるんではないかと思います。
 次のページに幾つか大きな考え方として、教育に対する意見を申し述べましたけれども、いずれにしましても基礎的な議論が必要だと先ほど樋口先生のお話がございました。そういうことが必要ではないかと私も個人的に思っております。
 ただ、商工会議所として何でこういうことをやってきたのかということを各地域でいろいろヒアリングしますと、一つは人材獲得が第一なのですが、今日では何が重要かと申しますと、いかにして若者を地域内にとどめておくのか、地域外に出さないのか、そういう観点も実は必要なんだということで、商工会議所はこういう観点からも取り組んでいる次第であります。
 非常にはしょった言い方になりますけれども、私の説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【黒田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、何か御質問ありましたらお願いします。どうぞ。
【寺田副座長】  どうもありがとうございました。
 一つ、私も関わっていましたので、それとの関連で拡大して質問させていただきたいのですが、大学生の問題も触れておられましたけれど、主として高等学校段階のインターンシップであるとかキャリア教育について、中等教育段階に論及されたかと思うのですけれども、そのうちで桑名方式の話がありました。これはおっしゃるように、平成10年ぐらいからインターンシップを全生徒に、1年生で実践して、商工会議所が仲介して体験させるというすごい試みで、その上でたしかこれは若者自立・挑戦プランが出た後だと思いますが、私、8年間も世話をしたのですけれど、桑名工業高校を中心にした日本版デュアルシステムです。これが桑名方式ではもう一つ非常に注目されることで、御説明のとおり商工会議所が学校と各企業、会員企業を仲介して、インターンシップであるとかデュアルシステムは実は大変なことで、その学校では7単位も学校単独設置科目として、週1回、選択ですが、生徒、毎年20人ぐらい行くのですが、企業実習という形、これは専門実習という形でやっています。こういうことが桑名方式ということで、三重県、これは商工会議所のエキスパートが実はいて、その人が今は桑名から三重県の商工会議所に移って、三重県全体へ広げているんですけれど、そういう人材も必要なのですけれど、この桑名方式で終わっていいのかなというのを私はずっと思っていました。是非日本商工会議所あるいは経団連、大企業セクターもこういうことを是非取り入れていただいて、広げていただきたいと思いますけれども、差し当たって商工会議所ではこの三重県桑名以外にいかがでしょうか。私、地元の名古屋で一度話をしたことがあるのですが、全然そういう雰囲気がございませんでした。
【青山委員】  実は他の県でも取り組んでいることは取り組んでいるのですけれども、一方で実業高校は非常に消滅している、普通高校に転換しているということがあって、どちらかというと商工会議所はやりたいと思うのですけれども、高校自体が例えば工業高校も商業高校も普通高校になってしまうところが結構ある。そういう背景がありまして桑名方式が全国に非常に普及しているかというと、そうではないのが実情です。
 これは恐らくこの教育のシステムの問題にも関わるかと思いますけれども、どういう人材を教育機関で育てていくのか、どういう教育システムをしていくのか、いくべきなのか、そういうことがまだ定まっていませんし、今、ニーズのあるところだけで商工会議所がお手伝いさせていただいていますけれども、他に地方の大学さんと提携していろいろなことをやり始めております。教育システムをもう一度見直し、確立した上で、私どもも更に協力をしていくことになると思いますが、今は過渡期になっているのではないかなというふうに思います。特に商業高校は非常に少なくなっていまして、インターンシップで商業高校生を受け入れていたのですけれども、だんだん少なくなってきて、需要が減少しているのかなという感じを受けます。工業高校も同じでございます。
 その一方で、大学と提携する商工会議所は大分最近では増えつつございます。以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。はい、どうぞ。
【川越委員】  16ページの上の方の地域での教育効果が地域に還元される取組が必要であるというところに非常に関心を持ったわけでございますが、私も宮崎県の専門学校の連合会の会長であると同時に、商工会議所の常議員もしておりまして、経済同友会の副代表幹事もしておりまして、それから、宮崎経営者協会の理事もしております。威張っているわけじゃなくて大体地方ではそんなもので、両方に軸足がある、経済界にも軸足があり、教育界にも軸足があるという立場が多くて、ジョブ・カードを推進するための運営会議ですとか、デュアルシステムをどうするかというのもほとんど地元で、地方で入っておりますが、そのような立場で考えますと、今、専門高校系がすごく減っていると。
 前々回か前回、私は申し上げましたけれども、宮崎県はまだ5対5かそれよりちょっと専門系が少ないぐらいで、昔ながらの健全な状態は保たれておりまして、これは労働統計とか進学統計をとるのはとても難しいのですけれども、高校新卒した子が地元に残って、地元で高等教育機関に行こうとしている場合、大学は非常に少ないわけです。7校ぐらいしかありません。
 そうしますと大体宮崎県の場合、不景気の頃で26%、景気がいいと34%ぐらい就職してしまいますので、約3割前後が就職するとしますと、残り7割が進学をしますけど、何と去年調べたところでやっとあちこちから数字を探して調べておりますと、高校新卒の45%は専門学校に行っているのです。全国統計では22%、20%という話になるのですが、それは宮崎県外の大学にたくさんの子供が出て行ってしまっているということであって、地域に残って、地域の高等教育機関に進んでいる子を見ますと、今申し上げたような数字で、その子たちの実は8割は地元で就職したい子たちなんです。
 ただ、過去の例でいいますと最近少し変わってきましたけど、大体7対3で地元に就職したい子が多いにもかかわらず、求人は7対3で県外が多い、地方は定期採用しないところがほとんどでございますので、そういう中でうちの場合は大体8割ぐらいは卒業して、地元の宮崎県内に就職しているのではないかなと思っています。
 その意味で、現況専門学校が大都市以外の地方の県において果たしている役割は、全国統計に出てくるよりもはるかに私は重いのではないかなと思っております。
 それで、しかし学校教育制度の中で言うなら、学校教育法第1条の学校でないという意味においては、一種の学校教育制度のミッシングピースみたいな、小中高大があって、その横に小中、専門高校、専門学校、専門職大学院という二つの流れを作ろうという複線化という考え方をずっと提唱しているわけですけども、その目で見たときにはこの職業教育の体験の中において専門学校だけが学校教育制度の外に置かれているという点においては、ぽこっとここに穴が空いているわけであります。
 それの意味においては、様々な果たすべき責任とか質の担保ですとか情報公開ですとか外部評価といったものをくぐり抜けた、きちんとした教育を行っている専門学校群がこの新たな学校教育制度の中に手を挙げて入っていく。もちろん大学、短大がそちらに入っていく場合もあり得ると思いますが、ということは地域の視点から見ても私は妥当なことなのではないかと思っています。
 今回、地域創生、地方創生ということを政府がおっしゃっているわけでありますけれども、何しろ景気は地方に行けば行くほど悪いです。アベノミクスというのは東京の話だろうという話でございまして、なかなか地域経済が復活してこない中では、どうしても地域に就職したい子たちがいるということもちょっと頭に置いていただけたらと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。時間が来ていますので、次に移りたいと思いますが、引き続きまして永里委員から発表をお願いいたします。
【永里副座長】  旭リサーチセンターの永里でございます。旭リサーチセンターは一般的に製造業と言われている旭化成のシンクタンクであります。経団連の方では産学官連携推進部会長というのを務めております。
 今日は「実践的な職業教育を行う新たな高等教育のあり方」について、私の意見も含めてお話しさせていただきます。
 まず2ページ目を見てください。前回行われたヒアリングにより、現在の職業教育機関である大学、短大、専修学校それぞれが学校の立地や設備、修業年限、教員の雇用、単位互換、資格取得、国際通用性等の様々な点について課題を抱えていることが分かりました。この有識者会議の目的は新たな高等教育機関を考えることですので、そのような問題点を認識しつつ、大学等の高等教育機関の現状を広く見回した上で、既存の学校の枠を超えたあるべき姿を考えていきたいと思います。
 3ページ目を御覧ください。まず海外の高等教育機関ではどのように職業教育を行っているか、私の知る範囲で事例を御紹介いたします。まずはイギリスの事例です。一言で申し上げれば、イギリスには職業訓練に特化した高等教育機関があります。もともとイギリスの高等教育機関は研究に重点を置いた大学が主流であって、職業能力開発のための教育機関としては、日本における専門学校に当たるポリテク・スクールというものが存在していました。しかし、1992年にFurther and Higher Education Actが制定されまして、90年代の前半にポリテク・スクールの大学昇格が行われ、現在では従来の研究に重点を置いた大学、それから、ポリテク・スクールが昇格され、職業教育に重点を置いた大学など、多様な高等教育機関が存在しています。
 ポリテク・スクールを大学にする際に名称にも注意を払いました。ポリテクというと職業的な感じがしますので、これを残すべきかどうかというので非常に議論が行われたのでございますが、少数派が残すという感じで、大多数の意見は大学という言い方にしたいということになりました。
 したがって、名称に注意を払ったのですが、結局全ての学校がポリテク・スクールはユニバーシティを名乗り、学生が魅力を感じる名称に変更されています。例えばオックスフォードポリテクニークはオックスフォードブルックス・ユニバーシティとなりました。ブリストルポリテクニークはユニバーシティ・オブ・ザ・ウエスト・オブ・イングラント・ブリストルとなりました。キングストンポリテクニークはキングストン・ユニバーシティとなっております。名称が大事だろうと向こうは考えたわけです。
 次に、4ページ目を見てください。ドイツの事例です。ドイツは小学校、中学校を卒業した後、職業訓練校で技能を得て就業に就くコースと大学に行くコースが存在するデュアルシステムとなっています。技能を得て職業に就くコースは3年間の課程で、週1日から2日は職業訓練校で理論を学び、週3日から4日は企業の職場で仕事を教えるカリキュラムになっています。もう一方の大学に行くコースでは日本と同じように高校に通い、高校卒業試験を受けて大学に入学する流れとなっています。技能を得て職業に就くコースを経て、就職した人々をドイツ社会は経済の基盤となる人材と考え、大学を卒業した人材と同等に高く評価しています。ちなみに両コースは行き来することが可能であり、多様な経験を経た学生が社会へ輩出されています。また、職業訓練を行う高等教育機関として職業に特化した専門大学もあります。
 このドイツのやり方の場合には、中学校を出た段階で職業をもう決めているというようなことになっちゃうわけです。そこで職業訓練学校に行くわけですけれども、相互に普通の大学と一応移れるというふうにはなっております。ただ、ドイツの場合の文化として、昔から親の職業をそのまま長男が引き継ぐというのがありますので、この辺ができてきたのだろうと思われます。先ほどの青山委員のお話で、桑名方式というのは非常にこれに似ているという感じがいたしました。
 次に、5ページ目にいきます。我が国における高等教育機関に関する最近の動きを紹介します。御承知の昨年の6月、安倍政権は日本再興戦略を公表し、産業競争力強化の観点から、大学改革を進めることにしました。
 同年11月には文部科学省による「国立大学改革プラン」が公表されました。このプランは各大学の強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な「競争力」を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学となることを目指す内容となっています。これと同時期に経団連では「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」という提言を公表し、国立大学の実効ある改革を実現するための具体的な方策を提案しました。
 今年の6月に改訂された「日本再興戦略」の中には、産業界の意見も踏まえた具体策が盛り込まれており、今後の実行が期待されます。
 6ページにいきましょう。経団連の提言内容を簡単に紹介します。
 大学に対する期待として研究、教育、社会貢献の観点から国際的に卓越した先端基礎研究の質・量の確保。世界に通用する能力を持った高度人材や高い専門性を持った人材の育成。社会実装を視野に入れた産学連携の実現という三つのポイントを挙げています。
 しかし、少子化の進展する中で、全ての大学にこのような機能を求めることは適切ではありません。そこで例えば「研究重点大学」「教育重点大学」「地域貢献重点大学」といった形で大学の機能分化を進めるべきと考えています。
 この機能分化が進んだ暁には、ここで今考えられている職業教育に特化した大学が出てくることが期待されます。ここまでが提言の内容であります。
 次、7ページにいきます。では、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方について、私の具体的なイメージをお話しします。職業教育に特化した大学は企業や社会に出たときに実際に役立つことを教育することが目的となっております。その実現のためには大学の位置付け、カリキュラム、教員について従来の大学にとらわれない形が必要となります。それぞれの項目について具体的な説明をしていきます。
 8ページ目をお願いします。まず位置付けについてです。御参考として現在の学校教育法の条文を掲載しました。条文の中では、大学は学術の中心とされており、学術に関する教授研究を行うものとされています。しかし職業教育については、触れられていません。大学の役割の一つとして、職業教育を明確に位置付けることが重要と考えます。学生や社会が職業教育に魅力を感じるためには学術と職業教育との間に上下関係があることはあってはならず、今の学士と同等となることも不可欠です。
 そこで9ページ目にいきましょう。また、大学で職業教育を行い、冶金など従来の大学から消えたが、実社会では必要な講座を復活させることも重要です。社会人が大学に行って学び直し、得た知識を生かして新たな職場で活躍する流れを作ることも期待されます。このような社会人の再教育は北欧では一般的です。社会人が入学することにより少子化の流れの中でも学生を確保できるという大学側のメリットもあります。
 10ページ目にいきましょう。次に、カリキュラムについてです。従来の学術志向とは一線を画した職業に就いたときに役立つ実践的な知識の体得が可能なカリキュラムが必要です。具体的には企業が欲しい能力を教える体系化されたカリキュラムであり、Project Based Learningや先ほどから出てきていますが、インターンシップといった実践的な演習を実施することも有効です。また、卒業時には学生の質保証を行うことも必要です。カリキュラムの作成や質保証に当たっては企業が入り込み、企業のニーズを反映した内容とするべきであると考えております。
 11ページ目にいきます。そして、教員についてです。職業教育を受けた学生のほとんどは卒業後はアカデミアには進まず社会に出るので、教員も職業に詳しい実務者であるべきです。そのためには実務者を教員として採用しやすい制度が必要です。例えば企業等の実務者が大学の教員を兼務する制度を作ってはいかがでしょうか。企業や実務者にとって、企業の籍を離れずに済むことが重要です。例としてドイツには研究所の研究者が大学の教員を兼務するクロスアポイントメント制度があります。職業教育にはベテランの熟達した技能が求められることもございますので、企業のOBを活用することも考えられます。
 12ページ目。このような教育を受けた質の高い学生を企業としては採用したいと考えています。企業が採用するとなれば、職業教育を行う学校の間で競争が起こり、従来の職業教育機関の中には、職業教育を行う大学への昇格を求めるところも出てくるでしょう。そのときに既存の教育機関の制度等の改正で対応可能か、それとも制度を作る必要があるのか、法律、制度、基準等を見直すべきか、財源の観点も含めて検討することが必要です。いずれにしても、すぐれた職業人材養成のための位置付けとなる社会からも学生からも評価される大学が出てくることを企業は期待しております。
 先ほどもちょっと言いましたが、余談ですけれども、イギリスの例から考えますとこの新しい高等教育機関のネーミングも極めて重要ではなかろうかと考えます。
 以上で私のお話は終わりますが、時間はちょうどのようですけれども、一応、補足としまして既存の制度で対応するのか新たな制度が必要かということで、委員の方々には今、資料を配りました。14ページとなっていますけれども、まずは大学改革における機能分化で出てくる職業教育に特化した大学に期待したいと思います。卒業生を企業が採用するとなれば、職業教育を行う教育機関の間で競争が起こり、短大、高専、専門学校の中に大学への昇格を望む機関も出てきましょう。それに対応する段階で既存の教育機関の制度等の改正で対応可能か、新制度を作る必要があるのか、よく議論すべきです。
 既存の制度で対応ということでありますと研究重点大学、教育重点大学、地域貢献重点大学の横の方に職業教育重点大学みたいな機能が付け加わってきて、現在の予算の運営交付金の約1兆円の範囲内でやるということになろうかと思いますし、新たな制度は別枠として職業教育重点大学を考えるということで、予算をどうするかという問題がこの消費税アップのときにもいろいろな問題がありますので、非常に悩ましい問題ですが、こういう問題提起もしておきます。
 以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。
 これでお三方の発表も全て終わったわけでありますが、今の永里委員の発表に対して御質問ございますでしょうか。なければ、全体を通しての発言でも結構でございますが、これから少し自由に討議をしたいと思いますが、よろしくお願いします。
 どなたからでも結構です。どうぞ。
【麻生委員】  よろしいですか。樋口先生から最初にあったと思いますが、大学と専門学校の中間的な存在で職業教育ができるものについて言及があったと思います。私は短期大学を代表しておりまして、短期大学は学校教育法第1条の大学の中で、108条で2年制若しくは3年制と決められ、その中に職業、実際生活というものがうたわれております。
 ちょっと話題がそれますけれども、「女性の活躍」という言葉も含めて今、そういった担当の大臣を置かれていることを考えますと、その果たしてきた割合は職業教育を含めて、「女性の活躍」が実践型かどうかは別として、特に幼稚園教諭、保育士、栄養士等におきましては、特に地方においては地方の短期大学に行き、地元に就職するという率が高いということと、女子が多いという現状があります。
 女子の社会進出若しくは職業教育に直結したことをずっとやってきたわけでございまして、先ほど言われた中間的な存在が商工会全てにおいて対応できるかどうかは私は分かりませんけれども、学問領域としては工業系もありますし、国文系や、教育系、福祉系等様々な分野があり、設置のときには分野ごとに基準があります。こういった短期大学の制度があるわけでございますので、その辺のところを何か有効に使え、活用できるようなことが考えられないかということを少し思ったところですので、もし樋口先生の御意見がありましたら頂戴したいと思います。
【黒田座長】  樋口先生いかがですか。
【樋口委員】  ありがとうございました。
 具体的に短期大学をこの専門職、実践的な職業教育にという流れはちょっと今後考えてみたいと思いますが、これまで女性の社会活躍に短大が果たしてきた役割というのは非常に大きかったと思います。その中で2年制あるいは3年制は、大学院のマスターも2年制で共通しておりますのは、入学して1年の後半から就職活動というふうになっている実態がありまして、そこにおいて大学へ入ってから、あるいは大学院へ入ってから、あるいは短大に入ってからどこまでそこでの職業能力を高めるための教育を身に付けた上で、就職戦線に臨んでいるのだろうかというと、ちょっと疑問に思うところがあって、もう入った途端にすぐ就職活動という実態は、特に4年制大学ですとまだ3年生の後、あるいは4年生になってからということでありますから、その間、時間的にあっていろいろ考えることもあるいは学ぶこともあると思うのですが、ちょっとせわしいなというのが実態として、短大で学んだことがどこまで今度は就職活動のときに問われているのかについては、しばしば疑問に思うところがあるというところが実態です。
 それと同時にやはり学ぶべきものというのも社会の発展とともに大きく変わってきて、また進化してきているというところで、半年、1年で学べるものはやはり社会のニーズに応えられるところまで学んでいけているのだろうかというと、これは疑問に思うところもあります。これは大学でも1、2年生のときに教養、3、4年生で専門というかつてのスタイルが専門の2年間ではとても短い、ましてや今言ったような状況ということになると、多くの場合、下の方に1、2年生のところまでおろして、教養と活用しながら一緒になって学んでいくということが実態として進められてきているところからも、今後ますますここはそうなっていくのかなと思います。
 その上で4年制大学の経験ですが、日本の場合には学部別の入学というスタイルが私立大学を中心に多いわけでありまして、大学に入って何かを学んで、これに特に関心を持ったからこの仕事を進めたい、この仕事に行きたいんだというものが、そこではもう既に18歳の春の段階で決めなければならないというようなことが、先ほどの私のプレゼンテーションでも今度のところでも同じように想定して、もう18歳で今度は新しいスタイルの大学に入るときにもう決めていますというようなものを学生に求めていくのかどうか。
 高校は商業高校とか工業高校では就職指導、仕事に対する教育もやっているのだろうと思いますが、なかなか普通高校ではやっていないのが現状で、転職率等々を見ますと、この普通高校を卒業して、そのまま就職した人の離職率が圧倒的に高いということも出ているわけです。この教育をどうするのかというのは、学生の立場、社会の立場から見たときにちょっと疑問を持っているところだということであります。
 短大をどういうふうに今議論しているところに適用したらいいのか、ちょっと時間を頂ければと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。どうぞ。
【寺田副座長】  再々失礼しますけど、樋口先生が冒頭に問題提起されたニーズの問題、おっしゃるとおりで、これが何をするにしてもなければ根拠がありませんので、大事な問題だと思います。それでこれは座長先生と十分協議した上で事務局にお願いすればいい話かもしれませんけれども、この点については中教審の2011年1月に出た最終答申、特に2010年5月に出た中間まとめの建議にすごく書かれていまして、中教審でも同じテーマで実はやったわけで、キャリア教育・職業教育特別部会です。その問題が経済界の方だけでなくて、むしろ教育学者から声高々に主張されるということがあって、事務局中心に随分調べたり調査をしたりしたと思います。
 それで現在求められる人材養成の中の必要な新たに求められる業種であるとか職種であるとか、先生御提案の最後の丸の職能レベル、職階と言いかえてもいいのでしょうか。この辺について書き込まれていますので、是非検証していただきたいと思いますので、私、来週は諸外国の話をしないといけないので、事務局から是非資料紹介という形でやっていただきたいと思います。
 簡単にだけ言いますと、最後の点、職能レベル、職階レベル、どういう階層の職場の中の責任を持つ人たちかということに関して、若干僕は異論があったのですが、ボリュームゾーン、技術系でいうと中堅技術者、修士や博士の技術者ではないけれど、あるいは技能者とか半熟練でもないけれども、高い方のボリュームゾーンをなす中堅技術者という言い方をしていた部分を、それぞれの新しい産業分野なり業種で捉えて養成していこうということでなかったかと思っています。
 是非紹介していただきたいというのが1点と、私個人はニーズというのはどこの国でも起こっていますし、日本でも起こっているように、それを的確に素早く捉えているのが専門学校だと思いますけれども、余り縛りがないものですから反応しやすい。学校教育の場合ですと設置基準もあるし、高等学校の場合ですともう10年前後に1回しか変わりませんので、学科再編などをやるとしても、すぐに対応し切れないということがあります。一定部分かなり吸収は既にしていますけれども、先ほど新しい専門職とおっしゃいましたけれども、職業分類で言う専門的、技術的職業従事者のところです。いろいろなものがあると思うのですけれども、そこの新しい専門職、従来の伝統的専門職でない専門職と、専門学校だとか高専だとかは中堅技術者とかいう言い方をしてきましたけれども、準専任プロフェッションといいますか、こういう部分を養成するところが高校でもできなかったし、大学でも従来できてこなかったので、専門学校あたりはかろうじてつかまえようとしていますけれども、非常にまだまだ小さい。そこをきちんとやっていく、組織化していく必要があるのではないかなと思います。
 これが一つと、それからもう1点は、労働力として必要なニーズという言い方、経済学的にそれで結構なんですけれども、それだけじゃなくて来週触れられないので今言っておきますけれども、例えばドイツで専門大学にするときのポイントは何であったかというと、既にかつてエンジニア学校とか日本でいう専門学校とか、私立の専門学校は州立になるという大変なことでしたけれども、そのときのポイントは卒業者の地位改善ということでした。つまり、そういうフォーマルな教育の外にあった場合、どうしても企業での処遇が非常に不十分になるということもあって、学生からむしろそういう声が出てくるということであったわけです。つまり卒業生のキャリア形成とか日本の短期高等教育機関で現に起こっている、初回冒頭に私は発言しましたけれども、学生、短大、あるいは高専、専門学校の卒業生の進路行動をちゃんと見ておく必要があるのではないかと僕は思いますね。
 やはり高度化、あるいは今樋口先生がおっしゃった高等教育機関の長期化、年限延長を彼ら自身の進路行動が示しているのではないかと思ったりしますので、そういう着眼点も是非考えていかなきゃいけないのではないか。社会からどういうニーズがあるかというだけじゃなくて、彼らがどういうことを求めていて、今後日本として高度化をどう図っていくかという観点も大事ではないかと思います。ちょっと長くなりましたが。
【黒田座長】  どうもありがとうございます。他にありませんか。
【永里副座長】  樋口先生の御指摘のとおりで、ニーズが本当にどこにあるかということは、先ほど私の発表にもありまして、我々はこういうのを求めてはいるのですけれども、声の大きい人がしゃべって言って、実際ものを言わぬ別の人たちがいるかもしれないので、本当は何でしょうか、アンケート調査か何か知りませんけど、探る必要はあるかもしれません。先生はどう思われますか。
【樋口委員】  明らかに二極化して、経営者の中で二極化してきているのではないかというふうに思うところはあります。それは今までの人の育て方ということを良しとするといった考え方と、もっとむしろ専門的にしていくべきじゃないかというところが意見が分かれるところがあって、今までで良しとするというのはどちらかというとゼネラリストといいますか、幅広い経験を積んで、そして、一人の卓越した職業人を作っていくというような流れを良しとするという考え方の方も、経営者の半分近くいらっしゃると思います。そういう方々にこういう問題を提起されて、どういう人材が必要ですかと言ったときに、それは学校で教えられるものじゃないよというような考え方になっている方がいらっしゃるかと思います。
 その一方、やっぱり今のものについては企業自身が持っている限界があるという、特にグローバル化してきている、人材についてもグローバル化してきている社会の中で、例えば海外の人も日本企業で働いてもらうことになってくると、かなり明確な規定といったものが、どういう能力が求められるかということを示していかないと、そこについては企業の成長がこれ以上ないのではないかというような視点を持っている方もいらっしゃって、その点については割とそういう方々は明確な考え方で、こういう人材、この職についてはこういうことを身に付けてとおっしゃる方もいらっしゃるという、ここは意見が分かれているのではないかと思います。
 ある経営者団体に行ったときに、そこで私がプレゼンテーションをしたんですが、聞かれている経営者の方々の中で意見が真っ向から分かれたところがありまして、これが今の日本の実態だろうなと受け止めてまいりました。
 もう一つ、寺田先生の御指摘のところで、中間層あるいはもう少し上の層のところまでの教育、人材開発といったものを考えていくときに、そこでの身に付けておかなければならないものについて、社会化できるかどうか。これは民主党政権の下でやった職業単位制はまさに導入部分の資格制度だけではなくて、その後のかなり高度なところまで含めた、それぞれにこういう仕事を行わせる上ではどういう能力が必要なんだというところで、そこまで単位を含めてというところで、今のところ私が理解しているのは介護、環境を中心にやってきたと思いますが、ああいうものが出てこないと社会化していかないところが実際かなと思います。
 イギリスのNVQでも明らかにイントロダクションの部分の能力評価、資格制度だけじゃなくて、その後生涯にわたってこれは続いているわけです。階段的に作られていって、だから管理職までNVQで、こういう能力を持っている人ということが規定される。そこには問題解決とかというような試験では問われないところまで含めて出ているわけで、そういったところを明確にしていくというのは、社会にとっては私は必要なことになるのではないかと思います。
【永里副座長】  私のことに関しての御質問に樋口先生はお答えくださって、まさしくそのとおりで、実は意見は面白いんですけれど、こういうプロフェッショナル化の教育機関が必要だというのを言うのは大企業とか小企業とかそういうことではなくて、技術系の方々がそういう意見です。大学は人格形成のため云々というのは、どっちかというと人文系の経営者の方々が多いように思います。
 ところで、実際に今グローバル化時代で大変な競争時代になっていまして、終身雇用制が日本の中で崩れようとしているのです。途中採用もありますし、具体的にいうと例えばブラウン管を作っているような部門が急になくなるわけです。そうするとその人たちは企業が体力があったときには自分の中で配置転換すればいいのですけれども、そうでない場合には学び直しするしかないんです。あるいは外国の企業に行くとかということにもなりかねないわけです。年をとった人はそういうことをやっています。
 そういう意味で、今後を考えますと同じ会社で同じ部門の職種、業種がずっと続くと限らない。M&Aが起こってきているわけです。そうしたときに自分はこの会社に入ったつもりが全然違う会社に行かなければいけない、若しくはどうするか、辞めるかという話になるわけですから、そういう点では私はこれからは新たな高等教育機関の在り方については本当に議論すべき、本当はこれからそういうニーズが出てくるのではなかろうかと思っております。以上です。
【黒田座長】  それでは、清水委員。
【清水委員】  今日も3人の貴重な御報告を頂きましてありがとうございました。
 3人の報告の中で最後の永里先生の発表がかなり制度的なお話でしたので、それに感想を申し上げますと、補足資料で重点型に職業教育を加えてありますが、研究とか教育とか地域貢献とかは大学の機能です。機能をどこに重点を置くかということで、職業教育は教育のプログラムの中の区分けになると思います。前回言いましたようにカーネギーの国際標準では、リベラルアーツ系と職業専門系プロフェッショナル系といった教育のプログラムや教育の区分けであって、これ(職業教育)は並べる次元が違うのではないかというのがまず感想です。
 次に、今日の意見交換を聞いて、制度化をするときに何が理念なのか、改革の理念を少し考えてみましたが、文科省が「学び続ける教員像」というのを出しました。生涯にわたって学び続けるという生涯学習とかあるいは学習の機会均等という理念といったものを、改革の価値として明確にしておかないと、改革というのは成功しないと思っております。
 民主的な原理として機会均等というのはありますけれども、例えば現在の高校の専攻科がどういうふうに接続しているのか。袋小路を作るというのは非民主的ですから、生涯にわたって学び続けるにはどんなところへ行っても必ず前が開かれていなければいけないわけです。ですから、一つはそういう袋小路を作らない制度というのが機会均等であり、民主的な教育制度づくりだと思います。
 もう一つは、学び(学習)という概念からいいますと、ある方が言いましたけれど、大学での学びというのは人生の中で1割しかない。社会の学びが9割であると。ですから、大学の学びが全てではないということです。社会につながる学びという観点からしますと、高等教育については御存じのようにOECDの概念では変わってきています。今や第三段階、ターシャリー・エデュケーションという概念への移行です。第一、第二、つまり初等中等に続いての第三段階で、それだけ高等教育が極度に多様化してきているわけです。
 したがって、カリキュラムとか研究とか学位というイメージで我々は高等教育をとらえてきましたが、ここを変えないといけないと思っています。その上で、第三段階の教育の制度化という観点から考えた場合、大学はどうして大学になったかというと、リサーチを加えて大学になったことを認識すべきです。実際、わが国でも研究という目的が入っているところは大学の基礎的な要件になっています。ですから、学位を授与するセクター、つまり研究を行うセクターが一つあって、もう一つは継続的な生涯につながる学びの教育が考えられます。継続教育のセクターと研究を備えた学位セクターに大きく分かれるといった感じで私は第三段階の教育を捉えています。
 以上のことから、改革の価値とか理念を明確にするということと、高等教育という概念も非常に曖昧な概念ですので、この辺の検討も必要ではないかと考えています。
【黒田座長】  ありがとうございました。他にございますか。今日の議論は大変核心に入った、本当に新しい高等教育機関を作る上での国としての理念がどうあるべきか、そこがしっかり収まらないと新しいものは作っていけないと思いますが、そういう意味で今日の議論は大変参考になったのではないかと思います。
 それでは、川越委員どうぞ。
【川越委員】  先ほど永里委員の御意見の発表の中で、私どもがずっと言ってきたような内容にすごく近いお話が幾つかあって、例えば新しい職業教育を専らとする高等教育機関を創設するならば、我々は最初、「専門大学」という名前を使わせてほしいと。ドイツとか韓国で使われているわけです。
 それから例えば、教員は研究業績型ではなく実務卓越型、現場で活躍していらっしゃる方に教員になっていただくとか、企業がカリキュラムを含めて中に入ってきて一緒にやろうということ、今、職業実践専門課程という中で実現しているわけですけれども、難しいのはここで先生もおっしゃっていますが、大学設置基準の目的の条項と合わないということです。Higher Educationであるから学位が出せるのであって、職業教育において学位というものは出せない大学は名乗れないところに結局議論がいってしまって、ですから、プロフェッショナルディグリーなるものを出してほしいというのは、私どもの会長の持論でありますが、しかし、ディグリーと言った瞬間にそれはHigher Education、つまり大学であって、しかし、大学は大学設置基準によってきちんと縛られていて、大学の教授の資格というものは研究業績論文型の教員でないと教授になれないというのが現実でございまして、ですから、例えば私の友達が新たに専門職大学院を作ったときに、認可をもらうためには言葉をよく知らないですが、「マル合」の教授と言って修士を出せる教授が何人いなければ大学院になれませんよということになると、その「マル合」の教授は実際にコンピュータを現場で教えられる人かというと、そうではない。では、そういうコンピュータ情報系の企業の有能な部長さんを持ってこようとすると、その人は研究業績の発表をしたことがないですから教授にはなれないということで、随分あれから緩やかになったと聞いておりますけれども、大変な思いをしたことがございます。
 そんなことで言いますと、大学の機能別分化によって全て対応するには目的条項の問題を含めて大変難しい問題がありまして、私は新たな設置基準に基づく新たな高等教育機関というのがいいのではないかと思っています。最後の財務的なところでいうと、私どもは補助金をもらっていない学校種でございまして、一条校になったらもらえるんだろうかなと思ったりもしますが、ただ、そのためになりたいわけでは全くないということであって、学生が学生であって学生でないという不当に置かれている状況を改善したいということが出発点なわけですが、現在は議論の中では学習者の立場で新しい学校種、新しい職業教育を専らとする高等教育機関を作る場合に、専門学校とどこか違うのかということにも答えていかなくてはならないということで、職業実践専門課程という人が出てきたのが流れかなと思っております。
【黒田座長】  ありがとうございました。どうぞ。
【樋口委員】  皆様のお話を伺って、そういうのが社会一般の受け止め方かなと思いながらいたんですが、企業から大学に先生に来てもらって、その人に最先端のところを教えてもらってという議論が一般に社会でよく聞かれるのですが、果たして今求めているのはそれでいいのでしょうかという問題です。逆に研究分野あるいは分野によっては、むしろ大学の方が先に進んでいるところもあって、基本的なところをベースに企業の中をどう変えていくか、そのためにその企業としては大学に人材を派遣して、そしてそれで学んで、それを会社に持ってきてまた新しい制度をその中で作ってほしいという声もしばしば聞こえるわけです。
 例えば会計制度一つとってもグローバル化の進展の中で、相当に企業の会計制度自身が変わってきていると。ところが、企業の中にいてはそれがなかなか吸収できないところで、大学のこれはアカデミックな先生も含めて、国際的に活躍している人たちがいて、その先生の下において企業人を勉強させたいということもあったりして、これはまさに研究と実務が一体化した改革を企業の中に実際取り入れていきたいというところも動きとしてある。
 ここについてはむしろまさに共同、共に大学と実業界がやっていく、そして、実践的な人材の育成にそういったものが応用されることもあるわけでありまして、もしこれは言い過ぎかもしれませんが、そうでなければそれぞれの企業が大学を作って、そこで人材の社員教育をしていくことがより実践的なわけです。
 少なくともOJTも含めて、今までの日本はそれをやってきたわけで、それでもどうも実業界が何とか突破口を見いだすためにはそれだけでは駄目なんだという意識があって、個別企業が大学を作ってというところを更に超えたものを求めるようになってきているのかなと。少なくとも大手の企業ではそういった動きというのがあるのではないかと私も経営者の方々とお話をして、その点が逆にアメリカに置いていかれているところだということも言われるわけで、要はどっちが上ということではなくて、それぞれの特徴、長所を生かすような仕組みをここでは作っていく必要が、少なくとも高等教育としてはあるのではないでしょうかというような問題提起をさせていただきたいと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。御意見ありますか。
【永里副座長】  産業界の人が大学に行ってカリキュラムを作るとか云々というのは、大学が産業界のニーズが分からないだろうからということで言っているだけであって、大学の方でちゃんとつかんでいらっしゃれば何の問題もないわけです。それが1点です。
 それからもう一つ、企業の方の研究に大学の先生たちが来てほしいというのは本当は企業のニーズとしてあるのです。ただ、大学の先生がヘジテイトしているという実情もあります。
 それからもう一つ、先生のおっしゃった企業会計とか何かです。この辺は先生のおっしゃるとおりで、実は先ほど言った終身雇用が崩れても大丈夫なようにというのは、逆の言い方をするとおのおのの社員がプロフェッショナルな技術を持っていれば、その技術は何も普通の科学技術じゃなくて、今の企業会計とかそういう専門性でいいわけです。そういうことを含めてそっちであれば、会社が倒産しても、あるいはその部門がなくなっても移っていけるという意味で重要だろうと思います。今後はそうなっていくのだろうと僕は思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。大体時間が来たようでありますので、これで今日はやめたいと思いますが、だんだん核心に入ってまいりましたので、非常に議論がふくそうしてくると思います。次回は内田委員、金子委員、寺田委員に発表をお願いするということになっております。よろしくお願いします。
 それが終わって、その次の回からは今のような議論を本格的に始めたいと思いますので、今日寺田委員から宿題が出たわけですが、キャリア教育の、あのときは資格枠組みの話まで出たのです。どういう段階でどういうことをやるか、イギリスのような体系を作ってはという話があったんですが、是非とも参考資料として次回お出しを頂きたいと思います。
 それでは、これからの日程について事務局からお願いします。
【神山教育改革推進室長】  それでは、次回につきましてですが、11月7日金曜日の10時から12時を予定してございます。場所は文部科学省の3F1特別会議室を予定してございますのでよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【黒田座長】  それでは、本日はこれで終了させていただきます。
 ありがとうございました。お疲れさまです。

―― 了 ――

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