平成27年3月18日 委員 冨山 和彦(株式会社経営共創基盤代表取締役CEO)
前回の有識者会議において事務局より提出された「審議まとめ案」に関して、職業教育の質保障の観点から以下を追記すべきと考える。本検討の始点であるこの有識者会議における「質への圧倒的な拘り・執着」が、新たな高等教育機関制度の成否を決定づけるといっても過言ではない。我々が問うべきは、「この提言が実行に移された時に、本当に産業界が必要とする人材が輩出され、我が国の労働生産性・労働参加率向上、そして持続的な賃金上昇と雇用安定化に寄与するのか」である。
二つ目の高くて、大きい山を形成すべく、委員の先生方でぜひ議論いただきたい。
・ 「成果を残すか」「退出するか」の二択は、経営に緊張感を生み、たゆまぬPDCAによる質の改善をもたらす。
・また、市場原理による自然淘汰のみに依存した場合、質の低下による志願者数減や助成金の減少が起こってから、最終的な退出に至るまでの期間、質保障が機能していない状態となる。例え情報公開をしても、学生側の情報や理解不足も十分に想定される中で、学生にとっての適切かつ最良な選択を担保する意味で、レベルの低い大学を強制的に即刻退場させる仕組みが必要である。
・「数」と「質」はトレードオフの関係にあり、特にスタート時点で広く門戸を開けることで、レベルの低い大学が乱立することは避けなければならない。まずは「数」を絞り、移行希望校については、そのパフォーマンスを検証した上で、追加・入れ替えを行う。
・新たな高等教育機関は、質の高い職業人を育成するという極めて重要な役割を担うことから、公的助成の対象とすべきである。ただし、本件は、数ではなく内容の問題であり、既存の大学に比して新たな高等教育機関における一生徒あたり養成コストが高い場合を除き、助成金の総枠が拡大することは説明がつかない。裏返して言えば、大学の大衆化によって意味を失っているような学術的な一般教養教育を行っている大学への助成金の大胆な削減、あるいは「新たな高等教育機関」への転換を進めることで総枠を維持すべきである。
・本制度の目的を果たすためには、本制度に共感し、高いモチベーションとコミットメントをもって職業教育を実践してくれる大学の参画が必須である。成果を出せない大学には助成金の減額や退出を求める一方で、こうした大学に対しては、職業教育に不要な設置基準への対応からの解放、成果に応じた助成金の増額等のメリットを付与し、新たな高等教育機関への移行を促進することで、本制度を魅力あるものとする。
以上
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