学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第8回) 議事録

1.日時

平成26年2月3日(月曜日)10時30分~12時

2.場所

15F特別会議室(文部科学省東館)

3.議題

  1. 中間まとめに関する団体からのヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

相川委員、奥舎委員、小林委員、中村委員、濱田委員、樋口委員、前原委員、松本委員

徳久理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)

文部科学省

渡辺学生・留学生課長、田中学生・留学生課長補佐、渕村学生・留学生課長補佐

5.議事録

学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第8回)
平成26年2月3日

【小林主査】  それでは定刻になりましたので,ただいまから学生への経済的支援の在り方に関する検討会,第8回を開催したいと思います。
 本日も日本学生支援機構の関係者が陪席しておりますので,御了承ください。
 議事を始めるに当たり,配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【田中課長補佐】  失礼いたします。本日,お手元にお配りさせていただいている資料を御説明させていただきます。
 議事次第の下に配付資料を記載させていただいております。まず資料1ということで,日本弁護士連合会から提出していただいた資料でございます。日本弁護士連合会に提出していただいた資料には,参考ということで,別刷りでもう一つ机の上に準備させていただいているものがございます。これが資料1でございます。
 資料2は,日本学生支援機構提出の資料でございます。資料3といたしまして,当面の検討会の日程ということで1枚お配りさせていただいております。また,参考資料ということで,これは前回お配りした資料でございますが,大学等奨学金の事業の改善充実についてというもの,これも参考までにお配りさせていただいているところでございます。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 それでは議事に入りたいと思います。本日は,前回,前々回に引き続き,8月に取りまとめました本検討会の中間まとめについて,各団体からの御意見をお伺いしますが,今回は日本弁護士連合会,独立行政法人日本学生支援機構から関係者の方にお越しいただいております。お忙しい中,お越しいただき,どうもありがとうございます。
 まず15分程度,この中間まとめについての御意見を伺い,その後10分から15分程度,その質疑という形で進めていきたいと思っております。
 では,まず日本弁護士連合会から資料の説明,よろしくお願いします。日本弁護士連合会の河田副会長と,日本弁護士連合会,岩重貧困問題対策本部事務局員にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いします。

【日本弁護士連合会(岩重)】  よろしくお願いします。

【日本弁護士連合会(河田)】  今回はこのような機会を与えていただきまして,ありがとうございます。日弁連では,本日の机上配付資料の中にありますように,2013年6月20日付で「奨学金制度の充実を求める意見書」というものをまとめて,公表いたしております。奨学金の返済をめぐる様々な問題が日弁連にも寄せられておりまして,こういった実情を踏まえて,意見書をまとめたものでございます。今回のヒアリングに関しましては,この意見書等の基本といたしまして,私たちが取りまとめたものでございます。本日の意見,これからは,この意見の取りまとめの責任者でもありました岩重弁護士から説明させていただきますので,よろしくお願いいたします。

【小林主査】  ありがとうございました。
 それでは,岩重先生,よろしくお願いいたします。

【日本弁護士連合会(岩重)】  皆さん,おはようございます。
 まずこの場に呼んでいただき,まことにありがとうございます。本日ここでこういうお話をさせていただく機会を頂きまして,大変貴重な機会だと思っております。
 それで,本日は意見を資料として皆さんにお出ししていまして,これを最初,一つ一つ説明しようかとも思いましたが,詳細はこちらの資料に書いてあります。そのポイントについては後半で簡単に御指摘させていただくことにします。まずなぜ私たちがこの問題に取り組むようになったのかということからお話をさせていただければと思っております。
 実は私は,長年,多重債務の問題に取り組んでまいりました。日栄という会社の社員が「腎臓を売れ。目ん玉を売れ」と言って脅かして取立てをして,刑事責任が問われたという事件,記憶にあると思いますが,弁護士になって間もないころあの告発に携わったというのが私の最初の仕事でした。それから貸金業法等の改正の際には,国民生活センターから多重債務問題についての調査研究報告というのを出したのですが,それについて主査をさせていただきました。
 私は多重債務問題にかかわる前,返せなくなるほどの借金を抱える人,これはだらしない人なんじゃないかと思っていたんですね。ですが,実際に会ってみますと,皆,普通の方ばかりなんです。取組の中で,私は次第に多重債務問題に苦しむ人たちは本人の力ではどうしようもない構造的な理由で生み出されている,言ってみれば被害者だということを実感するようになりました。
 人は誰でも生活やお金に困ることがあると思います。しかしながら,我が国では困ったときの社会的な支えが極めて不十分です。そして,大変皮肉なことですけど,そういうときにお金を工面してくれるのがサラ金ですとか商工ローンでした。いわゆるグレーゾーン金利を許すようないびつな法規制がまかり通っていて,違法な高金利での貸付けが事実上,放任されていました。貸せば貸すほどもうかりますから,過剰融資を起こします。当然,生ずる焦げつきに対しては厳しい取立てがなされますので,借り手は自転車操業を繰り返して,あっという間に多重債務に陥ってしまいます。
 多重債務問題の解決を目指す私たちの運動というのは,こういう被害の実態を事実に基づいて明らかにしていくことにありました。そしてその成果が2006年12月の貸金業法等の抜本改正につながっていくわけです。改正は,この多重債務問題が個人的な問題ではなくて,構造的な問題であるということを直視して,その構造にメスを入れるものでございました。その結果,多重債務問題は現在,大きく改善されています。本当によかったなと,苦労のかいがあったなと,そのように私たちは思っていました。
 そのように思っていたときに出会ったのがこの奨学金の問題だったわけです。あることがきっかけで,日本学生支援機構の奨学金の返済に苦しむ人たちの相談・救済活動をしている現場の皆さんと接する機会を得ることができました。そこで初めてこの問題の実態を知った私たちは,大変大きなショックを受けたんですね。というのは,クレジット,サラ金などの多重債務被害と全く同じ問題,見方を変えれば,もっとひどい問題がそこにあったということになります。
 私たちが目にした状況は,支援者が制度上の救済手段を駆使して手助けをしようとしているんですが,それがことごとくはねられてしまうという光景でした。そして皆さん,できるはずもない無理な返済を強いられて,追い詰められていらっしゃいました。公的な奨学金でどうしてこういうことが起こっているんだろうと,何でこんなことが許されているんだろうかと,そういうふうに考えて,とにかく目の前のこの人たちをどうかしなきゃならないと必死な思いでした。そしてQ&Aをつくって,法的支援を含めた相談・救済活動を今日まで続けて,制度の改善を求めているわけです。
 そこで実感した問題点は,大きく二つのことに集約されると思います。まず一つですが,返済困難にある方ができるはずのない無理な返済を強いられて,心身ともに追い詰められているということです。その状況は,もはや一刻たりとも放置できないほど深刻な状態にあります。もう一つは,そのような奨学金の返済に苦しむ多くの人たちが自分の力ではどうしようもない理由でシステムとして構造的に生み出されているという事実です。皆さんには細かいことよりもまず何よりも,この二つの点をよく認識していただいた上で,議論を進めていただきたいと思っております。
 お配りしました配付資料の3枚目のところに,昨年の2月1日に当連合会が呼びかけて,全国で行ったホットラインの結果があります。御覧になっていただくとわかると思いますが,下の方,低収入,非正規,病気,失業などで生活が苦しくて返済ができないという相談が圧倒的多数を占めています。つまりは返したくても返せないというのが実情なんですね。これは相談現場の実感とも一致するものです。本日,資料1ページ目には,奨学金の返済の負担に苦しむ人たちの生の声を掲載してあります。統計上の数字だけでは当事者の深刻な現実を知ることはできませんので,是非この生の声に耳を傾けていただきたいと思います。
 左上,例えば病気で生活保護を受けている方がぎりぎりの最低生活費の中から返済を強いられて,18年以上も返済を続けている。それでも延滞金に充てられて,元金が減らない。この人は一生,返済をしていかなければなりません。ずっと請求のなかった日本学生支援機構から,膨らんだ延滞金を含めて突然,一括請求を受ける。せめて延滞金はカットしてほしいというふうに言ったけれども応じてもらえない。この手の相談が後を絶ちません。
 奨学金の問題は,御本人の問題にとどまるものではありません。御自身が払えないと,保証人である御高齢の両親,親戚に請求が行って,迷惑がかかるということになります。自分が死んで支払を免れるなら死んでしまいたいですとか,夫の奨学金の返済を奥さんが必死に働いて手伝っているけど先が見えない,子供に必要なお金が回らないなどなど,奨学金の問題は御家族や親族も巻き込んでいきます。人生の可能性を広げるための奨学金ですが,それが人生の選択肢を狭めてしまうという皮肉な実態も明らかになっています。返還期限猶予の5年間を使い切って,その後は減額返還を利用して,月9から10万円のパート収入の中から毎月1万6,000円を支払っているんだけれども,このままだと54歳までかかってしまう,とても結婚や出産は考えられない。その他多くの声が寄せられています。
 ここに掲げた事例,もちろんのことですけれども,深刻な事実のほんの一部にすぎないということになります。就職が決まらずに,返済が不安だとの声も深刻になっています。ライフリンクという自殺問題に取り組むNPOが調査をしたんですが,その調査によりますと,就活を開始した大学生の2割程度が,「消えたい」ですとか「死にたい」ですとかいうふうに考えたことがあるということです。奨学金の返済の負担がそこに加わってきますと,これにさらなる追い打ちをかけることは明らかです。
 資料2ページ目以下,「「奨学金被害」の現状と課題」というふうにお書きしていますが,これは奨学金の問題の構造的な問題を明らかにしてございます。御覧になっていただければわかると思いますが,下の方,公的支援のカットによって学費が異常に高騰しています。他方で家計はますます苦しくなっていますから,奨学金に頼らなければ大学に行くことができません。頼るといっても,ほとんどが貸与という現状ですから,借りないという選択肢はありません。学費の高騰に伴って,おのずと借入額も増加してまいります。学生は多額の借金を抱えた債務者として世の中に出ることを余儀なくされています。
 そこに利息と延滞金が負担をさらに大きくしてまいります。負担がふえる一方で,返済の前提となる雇用は,非正規雇用やブラック企業の増加ということで,ここにいる皆さんの時代とは,あるいは我々の時代とは比べものにならないほど悪化して,深刻になっています。それに対して制度上の救済手段は,あるにはありますが,極めて条件が限られています。運用上の様々な制限もあって,実際には使うことができません。
 困難な状況がふえる中で,本来,優しい方向で制度が改善されるべきですが,残念なことに回収が強化されて,ますます無理な返済を強いられています。経験上,相談事例の多くは,いわゆる支払不能という案件なんですね。私たち法律家側から見ると,自己破産という最後の手段で対応しなきゃならないケースがほとんどなんですが,実はこれができません。なぜかというと,親御さんが保証人にとられていますので,そちらへの影響を恐れて,無理な返済を続けるということが横行しています。言ってみれば八方ふさがり,どうしようもないというような状況が現場の状況です。一言で言いますと,現在の奨学金の問題というのは,制度が利用者の現状と余りに乖離(かいり)しているということ,そしてそういった矛盾が本来は責任がない利用者の負担に押しつけられている,このことにあると思います。
 その解決は,制度を抜本的に変えていく以外にはありません。そのための大きな視点については,本日の資料4枚目以降におつけしています当連合会の意見書にも記載してありますので,是非お読みいただければと思います。
 今回の中間取りまとめにおいては,制度を大きく変えていかなきゃならないというこの視点が明確に示されているということ,それから,そのためにまずできることから一つ一つ進めて,風穴をあけていこうと,そういう意図がよくわかります。そういう意味では前向きにとらえたいと思います。
 しかしながら他方で,現場で相談活動に携わっておりますと,その深刻な状況というのが本当に皆さんに伝わっているのだろうかと,そういう率直な感想を持っているというのもまた事実であります。切羽詰まった状況を考えれば,ほかにもやるべきことですとか,それからできることはまだまだあります。そのことに是非スピード感を持って取り組んでいただきたいと思います。意見書は,そういう観点からまとめさせていただきました。簡単にポイントを御説明させていただきますので,意見書を御覧になりながら聞いていただきたいと思います。
 まず無利子奨学金の原則と拡充が指摘されたということ,これは積極的に評価させていただきたいと思います。他方で,その家計基準が厳格化されてきたことは残念に思っております。こういう要件の厳格化というのは,無利子を原則とするという方向とはある意味,矛盾するのではないかと思っておりますので,第一歩ということで今回はとらえさせていただいて,今後は是非基準を厳格化することなく,無利子奨学金の充実を目指していただきたいと思います。
 次に,延滞金,これが大きな問題となっていますが,これについてお話しします。現在,年10%という延滞金は,事実上は高利の機能を果たしています。そしてこれによって多くの人が苦しめられています。賦課率が年10%から5%に引き下げられるということは一歩前進だと思いますが,今,おぼれている人を救うためには,この引下げというのは現在生じている延滞金も対象にしなければ意味がありません。
 そもそも延滞金,これはペナルティーという意味があると思うんですが,延滞者の多くが実際には返したくても返せない,そういう現実に照らしますれば,その正当性自体に疑問があります。延滞金は将来に向かって廃止すべきだと思います。それまでの間は,現在ある延滞金減免に関する規定の柔軟な解釈ですとか返済の充当順位を元金,利息,延滞金の順にするなどの運用によって,その負担を可能な限り減らしていただきたいと思います。
 返済困難者に対する救済措置の問題点,これは現在の制度が実情と大きく乖離(かいり)しているという話をしました。そう考えるならば,返還猶予ですとか減額返還等の一部制度の部分的な改善にとどまるのではなくて,今,現場の返還困難に陥っている人はどういう状況にあるのか,その状況をよく調査していただいた上,その実情に合ったような形の十分な改善を目指していただきたいと切に思います。
 また,救済制度ですけれども,利用者の返還困難な状況に配慮したものであるはずであって,そこに利用制限の期間制限を認めるということは合理性がないと思います。今回,猶予の期間制限の延長などの動きが出てきて,一歩前進だとは思いますが,そもそもこのような期間制限はやめるべきだと思います。既に述べましたように,返還困難者の窮状は深刻で,その救済は待ったなしです。したがって,改正された救済制度,これは新規に適用されるだけではなくて,今,困っている方に対してもさかのぼって適用していただきたいと思います。従前の扱いとの公平性というような問題があるかと思いますが,今はそういうことを言っている余裕は全くありません。
 現在,救済制度の問題は,利用条件が極めて限られているということもありますが,運用上,様々な不当な制限がなされている,これも大きな問題になっています。先ほど生活保護の方がずっと払い続けているということがありましたけれども,猶予等の制度が,延滞がある場合にはそれを全部解消しないと利用ができないと,そういうような運用がなされているからなんですね。これはおかしいことだと思います。このような運用上の制限はやめるべきだと思います。
 そして,このような制限というのが,実は規則等では公表されていない内部の基準でなされているということも,公平な観点から大きな問題があると思います。私は,この運用基準を全て明らかにしていただきたいと思っておりますし,要求していくつもりであります。
 このように不十分な救済制度といっても,あることはあるんですが,それすら十分に利用されておりません。その背景には,制度が複雑であるということと,手続が煩雑なこと,それから何より情報が十分行き渡っていないということがあると思います。返還困難者に対しては,機構から進んで親切に説明をして,利用を手助けできるようにしていただきたいと思います。そのために,答えられるだけのきちんとした教育体制と相談体制を早急に整えていただきたいと思います。個々のケースでは借り手の実情に応じた柔軟な返済案に応じていただきたいと思います。
 今回の中間まとめでは,所得連動型返済制度の導入が視野に入れられています。これは大変重要なことであると思います。積極的に進めていただきたいと思います。奨学金は,もともと返還困難のリスクが内在しているものですから,所得連動型の返済が原則とされるべきだと思います。その制度設計に当たっては,アメリカなどの教訓も活用しつつ,利用しやすい制度というのを具体的に始めていただきたいと思っております。アメリカ調査については本日の資料にもおつけしていますので,是非参考にしていただければと思います。
 それと個人保証,これは絶対にやめていただきたいと思います。借入額が大きい,返済期間が長い,利用者には将来の収入や仕事がわからない,限られた収入の家庭のお子さんが利用するなど,奨学金における保証人のリスクはほかの場合以上に大きく,非常に問題があります。保証人への影響を恐れて,法的債務整理もできないという不合理な実情もありますので,廃止していただきたいと思いますが,廃止までの間は保証人に無理な返済を強いない運用をしていただきたいと思いますし,それについてガイドラインの制定が必要だと思います。
 給付型の支援は,予算をつけた上で速やかな導入と拡充を求めます。国際公約となった高等教育の無償化についても,迅速かつ効果的な達成を求めていただきたいと思います。漸進的というのは,ゆっくりの意味ではないということは国連が指摘しているとおりです。
 なお,給付型支援ですが,工夫として,目的とターゲット層に応じた制度改善の検討の余地もあるかと思います。例えば法科大学院のような専門職の大学院では,弁護士の過疎地ですとか公的部門を担う事務所に就職した場合の免除等の検討も必要だと思いますし,養成期間が長期にわたるということへの配慮等々,様々な工夫が必要だと思います。これは法的分野だけではなくて,ほかの分野にも言えることではないかと思います。給付型支援については,是非具体的な制度設計を始めていただくように求めます。
 最後に,皆さんにお伝えしたいことがあります。それは,奨学金の返済に苦しんでいらっしゃる方というのは,会ってみるとどなたも非常にまじめで誠実な方ばかりです。この活動をしていますと,「返すのは当たり前だ」ですとか,「甘えるな」というような声をよく頂くことがあります。しかし実際に会ってみる皆さんというのは,恐らく誰よりも努力を続けてきたのではないかと思われる場合がほとんどです。もう十分無理をしているのにもかかわらず,まだまだ無理をしようとします。なぜか。自己責任の意識が強くて,「助けて」と言えないんですね。そういう方が相談や救済を求めて来られるというのは,よほどのことだということを認識していただきたいと思うんです。
 私自身が相談活動をしていますが,8割ぐらいの方が精神的な病を抱えられているのではないかと思います。顔は真っ白,口をきくのがやっと,そういう方も珍しくありません。そういう意味で,奨学金の返済に困っている方たちは声を上げられないで苦しんでいるんだということを認識していただきたいと思います。今の若い人たちの状況は,私たちの時代とは全く比べものにならない,そういう困難な時代に来ているということも是非認識していただきたいと思います。学費の負担しかりですし,格差や貧困の問題ですとか雇用の崩壊,現在の制度は,その現実におよそ対応できないものになってしまっています。中には制度自体が破綻しているのではないかというような批判をなさる方もいらっしゃいます。
 皆さんにはその事実を正しく認識していただいた上で,議論をしていただきたいと考えます。その上で,当事者の必要な声ですとか,この問題に現場で取り組む人たちの話とか意見を聞いて,吸い上げる継続的な体制を是非つくっていただきたいと思います。当連合会がお役に立つのであれば,そのためのいかなる助力も惜しまないという考えでいます。
 本日は日弁連の代表ということでありますが,一方では返済に困っている人の代弁だということでお話をさせていただきました。たくさんの方が皆さんに対して助けを求めています。御尽力に敬意を表するとともに,さらなる奮闘を是非お願いしたいと思います。
 どうもありがとうございます。

【日本弁護士連合会(河田)】  ありがとうございました。

【小林主査】  どうもありがとうございました。非常に多くの論点について語っていただきましたので,余り質問の時間がとれず残念ですが,委員の方から御意見あるいは御質問等ございましたら頂きたいのですが。どうぞ,前原委員。

【前原委員】  法科大学院の評価の委員をしておりますけれども,このような合格率では,ここで言っておられるようなことがちょっと該当しないのではないかと。余りにも低過ぎて,有為な若者が中途半端なまま卒業して,就職も困っているというケースが非常に多いですよね。

【日本弁護士連合会(岩重)】  はい。

【前原委員】  だからこれはちょっとその辺のこともしっかりしてもらわないと,私はこういうのをつくったらいいとは思いますが,もっと根本的な問題があるのではないかという気がします。

【日本弁護士連合会(岩重)】  私はその問題の担当者ではありませんが,個人的見解としては,同じような問題意識を持っております。制度の根本的な問題,法科大学院の問題,その問題自体を捉えなきゃならない,それは私も同じ認識でいます。ただ今回は,それにかけて奨学金の問題というのを取り上げさせていただいたということで,こういう形の御提案ということになっております。

【前原委員】  これはこれでそのとおりいい提案だと思います。

【日本弁護士連合会(岩重)】  そうですね。おっしゃっている問題点は私も全く同感だと思います。

【小林主査】  ほかにいかがでしょうか。

【日本弁護士連合会(岩重)】  ちょっといいですかね。実は本当に現場の状況は深刻で,もう余り当たり障りのない議論をしている余裕がないんですね。そのことを是非認識していただきたいと思います。もちろん分かっていただいていると思いますが,そのことが,どうしても現場から見ていると,ちょっと不安になるときがあります。是非この事実というのを知っていただくために,もしそういう場でお話しさせていただくゆっくりとした時間ですとか資料の提出の機会がありましたら,是非協力させていただきたいと思いますので,その点をくんでいただけると有り難いと思っております。

【小林主査】  本日のお話というのは,実際の運用上の問題点や現場の声というのが1点と,それから制度的に,あるいは構造的とかシステムという言い方をされましたけど,そっちのほうに問題点があるということで,二つ,大きく違う問題だと思います。もちろん生み出されている問題は一つですけれど。
 それで,ここでは制度の設計の問題,これから議論していかなければいけないわけですから,その点についてはいろいろほかの御意見も伺って,今やっているところですが,特にエビデンスということを重視してやっていこうということでずっとやってきております。JASSOでも,延滞者の調査とかそういうことでされていて,その分析もこれから見ていくつもりです。今回日弁連で,現場の声ということでいろいろ挙げられましたが,JASSOの認識とかなり違うのではないかという気がしないではないです。
 つまり無理な返済を強いられているとか,延滞について,岩重先生はおっしゃいませんでしたが,突然,一括返還を迫られているというのがこの意見書の中にも入っております。ですからそういうような実態があるということは,日弁連としては,そういう声がたくさん上がっているという認識だということですね。

【日本弁護士連合会(岩重)】  はい。

【小林主査】  それは制度的には,現在の運用で解決できるかできないかというのは私には分からないのですが,その辺について,事務局ないし日本学生支援機構側で,運用についていかがでしょうか。こういった声がたくさん上がっているということなのですが。

【月岡理事】  まず,突然返還を求められたということはあり得ません。

【小林主査】  あり得ない。

【月岡理事】  はい。基本的にそのときどきの割賦の履行期には必ず全員の方に,以前であれば,請求書をお送りしているし,延滞になれば延滞していますよということをお知らせしています。現在であれば,原則月賦返還ですから,毎月毎月,延滞になれば,延滞になっていますということの書類をお送りし,電話をかけます。そして個人信用情報の取扱いに同意している方については,さらに個人信用情報機関に登録されますよということの文書も事前に送るということを毎月やっておりますので,それを一切見ないで,突然,何年もたって一括返還を求められたということはちょっと考えにくい。恐らくその方の特別の御事情ではないかなと思います。
 例えば住所を機構に届け出る義務がございますけれども,届けてもらっていなければ機構は住所を調査します。調査しても見つからなければ書類が届かないかもしれません。でもそれは御自身が機構に届けておられなかったことで,機構からは何とかして住所を探そうとする努力もしております。
 したがって,御本人から見れば突然だというふうに思うこともおありかもしれませんが,機構がずっと請求も何もしないでいて,例えばわざととめていたとかそういうことはあり得ませんし,機構がずっと請求しないでいて,突然請求されたということはないのではないかと思っております。運用としてはそういうふうに誠実にその都度きちんとした連絡をするように努力をいたしております。

【小林主査】  かなり認識がずれていると思うのですが,ここに逆に言うと問題があるような気が私はします。つまり個人の側からすると突然に来ていると,しかし機構側はそんなことはない,きちんとやっているという御説明だったと思いますが,そうすると,どこかこの間に問題があって,実際の問題としては,こういった突然来たというような形に個人の側は受けとめているという問題があると思われます。
 岩重先生,今のことについて,突然返済を求められたということはあり得ないというお話だったのですが,もし何か原因とか,その辺,思い当たるといいますか,現場の方でやっておられて。

【日本弁護士連合会(岩重)】  今,1月ごとというお話がありましたが,以前が実際そうだったかということは問題があると思います。今の運用と以前の運用はかなり違うのではないかと思う点が1点と,それから住所のお話がありましたけども,通常,債権というのは,回収機関は住所を自ら調査して,そこに請求をかけていくというのが当たり前の姿なんですね。特に本件事業が金融事業というふうに位置づけられていますので,それは通常やることです。
 ところが,御本人が住所変更届を出さない場合もありますが,そこを私たちでしたら住民票をチェックする等々で請求をしていく。あるいは請求が来たときに,このまま返さないと延滞金がつくよという,普通そういうような文言で返済を促しますよね。そうではなかったはずです。
 ですから,来ていたとしても,御実家に来ているとか,あるいは御本人のところになかなか届かない今言ったような事情があるというようなことで,御本人から見ると,厳しい取立てが最近ここ何年かそれがふえていて,御本人のところにその郵便等々,それから内容が到達するというようなことが強化されているのではないかと思います。その段階で御本人が不満を抱いているということではないかと考えています。

【小林主査】  そのあたり,もう少しきちんと原因を考えて,制度的にもし,あるいは運用面で改善ができるのでしたら考えていきたいとは思います。

【月岡理事】  私どもも住民票の調査はいたしております。むしろ住民票の調査を中心に据えて,請求しております。その結果として,例えば転居先が,市町村では分からないこともございます。例えば日弁連の資料の中にあるような,親が説明せずに私の名前で奨学金を借りていましたとか,親が払うと言ってくれていましたということはあるかと思います。しかしながら,本来であれば御本人様が自ら借りているわけですし,学校在学中は御本人自らが手続をしたはずだと思いますので,私は知らなかったということはないとは思うのです。何らかの事情で,実家の御両親が機構からの書類をずっと持っていて,御本人に言わなかっただけなのかもしれません。
 そういったことはあるかもしれませんけれども,機構としては,住所はきちんと調べておりますし,それから延滞すれば延滞金がつきますということは,当然のことながら申し上げていますので,しかるべきことはしてきたのではないかと思っております。

【日本弁護士連合会(岩重)】  従前の運用を明らかにしていただきたいと思います。最近,回収ですとか債権管理が厳しくなったということについてはそのとおりだと思いますが,恐らく今,現場の皆さんが戸惑っているのは,従前の対応が急に変わって厳しくなったというところで戸惑っているということがほとんどなんですね。
 この運用の大幅な改変がその人の生活に大きな影響を与えるというのは,これは公平なことではないのではないかと思っていますので,現在のやり方ではなくて,本当に前はどういうことをやっていたのか。例えば延滞金を昔はとっていなかったはずです。実際に,とっていなかったというのは,延滞金をつけていたことはあると思いますが,非常に緩やかに減免が認められていて,例えば親御さんの面倒を見ていて支払ができなかったというような場合に,元金を返せば延滞金を免除するというような運用は,比較的大らかに行われていたように思います。
 そういう意味では,従前の運用と今の運用が全く違っているというところが大きな問題で,この一括請求を突然されるという認識についても,そういうような問題が絡んでいるのではないかということを十分認識する必要があると思います。現場の声ですので,受けとめている方がどうかということは大変大事なことだと思っています。

【月岡理事】  その現場の声の背景となっている事情が様々あるのではないかと思いますが。

【日本弁護士連合会(岩重)】  それであれば,そういう状況は変えていかなければなりませんね。

【前原委員】  ちょっとよろしいですか。統計を見て,この数年間,返還期限猶予が非常にふえているというのは,はっきり言って就職のミスマッチが非常に大きかったと思うんですよ。親御さんも本人も大企業ばかり志向していて,地方の優良企業に就職できるのにしないで,それで非正規にたくさん行っちゃったということが今の統計に出ていますが,最近は地方とのマッチングが随分進んできているので,正規の就職率もよくなっています。だから改善していくと思いますが,非常にそういうものがたまってしまったのがここの統計に多分,出ていると思います。ですから,日本学生支援機構を責めても僕はしょうがないと,社会情勢だと思いますので,そういう議論は無駄ですから,ここではやめてもらいたい。
 それで質問ですけど,この1ページの現在生じている延滞金も全部対象にしなさいという意見書がありますが,これはどのぐらいお金がかかるのですか。10%を5%に下げると。大してかからないですか。予算的に。というのは,限られた予算の中で運用しているから,それをやったらほかを減らさなきゃいけないですよね。金の面では。日弁連の資料の1ページの真ん中辺で,10%から5%への適用を,今,延滞している部分にもすぐに適用してくださいという御要望で,それをやったらどのぐらいの予算が必要ですか。

【石矢奨学事業本部長】  ざっと見積もると年間20億ぐらいになります。ただ延滞金は,既にもうお支払いしている方もいらっしゃいますし,これまで延滞金を支払っていない方に対して,今から過去の分の延滞金をゼロにするということだと,公平性がたもてないと思います。

【前原委員】  いや,これ適用を26年4月以降に生ずる延滞金でなくて,今,延滞している部分に適用してくださいという御意見ですよね。

【石矢奨学事業本部長】  ええ。今,延滞しているということは,過去に延滞されていた事実があるわけですね。それについての延滞金として賦課されていると。一方,過去に延滞していて,延滞金を払って,正常の返還に戻った方もいらっしゃいます。だから過去に延滞金をお支払いしていただいた方もたくさんいらっしゃると思います。

【前原委員】  いや,ただ運用の,融資の世界でいうと,ある時期から金利が下がったからといって下げるということはよくあることなんですよ。ですから,そういう判断をあなたがするのではなくて,あとはお金が幾らあって,その予算をどう有効に使うかという議論になるわけで。そうではないですか。だからこういう御意見があったんでしょう。

【日本弁護士連合会(岩重)】  ちょっとよろしいですか。予算の話が出ましたが,ここは私も詰めていないところですが,実はこれ,多分,財政的にいうと,この延滞金というのは利益の部分に計上されているはずなんですよ。だから予算措置が本当に必要なものなのかということが大きな問題だと思うんですね。
 従前,延滞金をそんなに厳しくとっていなかったということを照らして見ても,本当に財政的にできない問題なんだろうかということについては,きちんと検証していかなきゃならないのではないかと思っています。

【前原委員】  では,これは僕は検討する価値があるとは思うんですけど,この御意見は。

【月岡理事】  今,現に延滞している方の延滞の元金がありますけれども,その延滞元金について,今年の4月以降生じる延滞金については5%で計算をするというふうになっております。以前,発生した延滞金までは及びませんけども,延滞している方についても,そういった意味での限定的かもしれませんが,メリットは及ぶのではないかと思っております。

【前原委員】  そうすると,現在生じている延滞金の26年4月以降は低くなると。

【月岡理事】  現在延滞金を生んでおりますまだ返還されていない元金に対しては,年10%つくわけでございます。例えば3月までに生じたものはそのまま年10%の金額でございますが,返還していただけない場合は,4月以降に生じる延滞金については。

【前原委員】  生じるものというか,今,生じていて,延滞金を10%払っているでしょう。

【月岡理事】  はい,今,現に。

【前原委員】  それを5%にするということはできないんですかという質問です。

【月岡理事】  過去にさかのぼってということでしょうか。

【前原委員】  過去にというか,だから今年度の延滞金ということになるんでしょう。延滞金というのは毎年,延滞している分について払うわけでしょう。

【月岡理事】  はい,毎月毎月ということですね。

【前原委員】  だからその計算は可能なんじゃないですか。技術的には。

【渡辺課長】  例えば今,1万円延滞していて,今年の3月までの延滞金を10%で計算して,1,000円発生しているとすれば,4月以降も延滞した場合,今年度に発生しているその1,000円の延滞金は1,000円のままですけれども,同じ状況で,4月以降にも延滞が継続した場合,半分の500円となります。

【前原委員】  500円になるんですか。

【渡辺課長】  ということです。

【月岡理事】  そうなります。

【前原委員】  では,ここで言っているのは。

【日本弁護士連合会(岩重)】  いやいや,今,発生している延滞金の負担というのが異常に大きいんです。それでこの延滞金ですけど,ちょっとお話ししますと,意見書にも簡単にお書きしていますけど,制度的には延滞金は弁済期の来ているものについて発生するという建前ではあるんですが,弁済期未到来の分について繰上げ一括請求をして延滞金を請求されているケースがとても多いんですね。
 そして,実際には支払能力があるにもかかわらず,していない人に対して繰上げ一括請求することができるという制度になっているんですが,明らかに支払能力がない人に対して一括請求をなさっているんです。これはジャーナリストの方がちゃんと質問をして返ってきた回答なんですけど,どうやって支払能力がないかということを確認しているかというと,何回も連絡するけれども,何の連絡もないと,救済を求めてこないと,そういう人に対しては,支払能力があるというふうに認めざるを得ないということで一括請求がなされています。そういうような延滞金が積もり積もってきているんですね。
 それから先ほどの突然,請求されたかどうか議論がありましたけれども,そういう今まで膨らんだ延滞金の負担というのは非常に大きくて,これは返しても,返しても,要するに元金が減らないんですよ。一生,借金漬けなんです。この問題を考えますと,この延滞金の問題というのは,今後の問題として一歩前進だとは確かに思っておりますが,今,過去にさかのぼって生じた延滞金の正当性自体に問題があるという状況であれば,やはりさかのぼって計算をし直すということを求めたいと思います。

【前原委員】  それはちょっと難しい。

【日本弁護士連合会(岩重)】  それは可能であると思っています。

【前原委員】  それは難しい。

【日本弁護士連合会(岩重)】  でもそれはできないことではないと思います。

【前原委員】  それはちょっと僕も,それであれば賛成しかねる。

【日本弁護士連合会(岩重)】  ただ延滞金の規定の中には,真にやむを得ない事情で返済ができない場合には延滞金をカットするというような延滞金減免規定があるんですが,それが実際には非常に厳しくて,適用されていないために延滞金がつけられているんですね。
 例えば就職がない,仕事がないということで延滞金がつく。その中で,確かに猶予の規定というのがありますが,猶予の規定を知らなかったり,あるいは時間がたって使えなくて,延滞金が発生しているという方もいらっしゃる。そういう中で,実際にその延滞金が,その制度を柔軟に適用していれば発生していなかった延滞金というのもあるはずですし,今のような延滞金減免規定を緩やかに適用するというような制度的な手当てをすれば,それを工夫しながら過去にさかのぼって,例えばケースによっては延滞金を一部免除ということになると思いますが,適用していくということは制度的に不可能なことでは,私は法律家ですけど,決してないはずです。

【渡辺課長】  ちょっとよろしいですか。机上の参考資料,これでお伺いしたいのですが。下村大臣自身,奨学金の貸与を受けており,私も奨学金の貸与を受けていました。

【日本弁護士連合会(岩重)】  そうですね,よく存じ上げています。

【渡辺課長】  これは前回も説明させていただきましたが,下村大臣自身からこの問題について,やはり非常に強い指導を頂いています。これでも不十分だとおっしゃいますが,延滞金賦課率改定というのも50年ぶりですので,そこは御理解ください。

【日本弁護士連合会(岩重)】  そうですね。はい,それはそう思います。

【渡辺課長】  今回の提言の中にも書かれている御指摘ですけれども,所得に連動した返還の仕組みというのを,我々も是非導入したいと考えておりまして,それに向けて準備を今,進めております。
 例えばこの返還期限猶予を5年から10年にというのは,まさにその一環です。現在,5年間を使ってしまった人には,もちろん所得証明を出してもらう必要はありますけれども,さらに5年間,猶予期間が延びるという可能性があります。返還期限猶予は現状でも運用されていて,そもそも機構サイドは一生懸命,周知しているのですけれども,これは対象者の人数も多いです。今回,議論がかみ合わないのは,日弁連に相談に行かれる方というのは本当に困っている方で,ところが我々,制度全体を運用している立場からすると,本当に困っている方に加えて,返せるのに返していない人もいるからだと思います。
 ですから,制度全体を運用していく過程では,どうしても本日のように意見がかみ合わない部分もあると思いますが,ただこの制度を運用していく過程で,本当に困っている人を救うために,返還猶予制度をより柔軟な適用をできるようにという意味も込めて入れていますし,また,所得連動の仕組みというのは,どうしても,独立行政法人として極めて少ない定員の中で制度を運用していくためには,マイナンバー制度が導入されて,市町村のデータもかなり簡易な形で来ないと,運用上,難しい面があります。ただマイナンバー制度で所得がより簡易に捕捉されるようになれば,より収入の少ない人は収入が少ないなりの返済をしていくという,所得連動の仕組みを是非導入したいと思っています。確かに今,現実に困っている方というのはたくさんいらっしゃって,そういう方を我々は痛めつけようというつもりは全くなくて,何とかして救っていかなければならない。救っていくために,例えば返還猶予期間を5年から10年というのも,これは制度発足以来ですから,70年ぶりの改正なのですね。ですからそういった意味でいくと,これは非常に大きな制度改正になります。
 現在でも140万人が借り続けていますから,140万人に対して,本当にどれだけ苦しんでいるのかということについては,詳細まではJASSOだけでは当然対応できない部分があります。しかし,教育費の無償化に向けて,気持ちは一緒なんですよ,我々。気持ちは。ただこの今の国の債務超過が450兆円という中で,いかにして,その財源を適切に配分していくのかというのは,なかなか我々だけでは済まない問題もあります。むしろ,若干,意見の食い違いはあっても,向いている方向は一緒だと思います。
 そういった意味でうまく話ができればいいと思います。1点,この参考資料の2枚目に書いている家計基準の見直しのことについて,事実関係だけをお伝えしたいのですが。本日の御提言の1枚目にも,最初に「無利子奨学金の家計基準が厳格化されたことは大変残念である」という御指摘を頂いていますが,これは我々は決してそういうつもりはなくて,むしろ今回,無利子奨学金貸与の数をふやしています。家計基準を少し見直したというのは,今は無利子奨学金であっても,私立の自宅から通っている学生の標準的なケースであれば,900万円程度の年収がある方まで対応できていますけれども,ただボリュームゾーンというのは,もっと世帯所得収入の少ない方が多くいて,現実的にはまだそういう方にも全て貸与できている状況にないためです。
 このイメージ図で描いているとおりですけれども,高所得の人たちではなくて,より所得の低い方々に対して優先的に配分できるようにということで,今,基準を見直させていただいています。もちろん予算が十分にあって,無利子の数がどんどんふえてくれば,その無利子の方がよりふやせるような対応というのは当然必要だと思いますが,現状,我々が,今,実現できる中で,より困っている方にきちんと貸与できるようにということで一生懸命これをやりました。ですから決して,基準を厳格化したのではなく,これを一律に否定されても・・・。我々は本当に頑張ったのですが。

【樋口委員】  よろしいですか。今の課長さんの説明と関連するところがありますが,私も弁護士さんのところに相談するというのは,相当にやはり厳しい現状があるのだと思います。私の周りにもそういった人がいます。それがふえているというのも事実だと思うのですが,その一方でという方もいらっしゃるわけですね。
 それで,先ほどのこの参考資料の1枚目でいいますと,課題の(2)のところで,返還困難者への対応というのが書いてあります。これをどう認定するのか,誰を返還困難者というふうに考え,誰を返還可能であるというふうに認定するのかというようなところというのは,具体的な運用では問題になってくるのだろうと思いますが,それに関して何か御意見ございましたら。

【日本弁護士連合会(岩重)】  やはり今おっしゃった中で気になるのは,要するに簡単に言うとだらしない人もいるだろうというお話だと思うんですけれども,それはだらしない人がどの程度いるかということを,一体どういう根拠で皆様は認識なさるのかということを逆に問いかけさせていただきたいと思います。
 弁護士のところには,別に本当に困った人だけが来るわけではございません。いろんな相談が来るんです。その中でも,皆さんが困っていらっしゃる,それで実は本日の資料の中にもおつけしましたが,これは機構のデータでもあるんですけど,3か月以上の延滞者,御覧になっていただくと,年収が少ない方が圧倒的多数を占めているということを御覧になっていただきたいんですね。これを見ていただくと,どんな制度でもそれは不正な利用の仕方ですとかそういうのはあるわけですし,いいかげんな人もいるわけですけども,それではないかという前提でお話しになるのは,実際のこういうデータとは違うのではないかということがあります。
 そして実際にその人がどこまで困っているかということですけれども,やはりその個々のケースをきちんと認識できるような,そういう人員体制ですとかそういうノウハウが蓄積されていかないと,わからないと思うんですよ。そういう意味では,例えば,もしお役に立てるのであれば,私は日弁連でも活動しておりますし,それから奨学金問題対策全国会議というところでも活動させていただいているんですけども,そういう実際に機構にはかなりの相談が来ると思うんですね。そういう個別のケースをきちんと分析させていただいたりとか,そういう中に私たちが加わらせていただくのであれば,そういう実態把握ということについてもうちょっと何かの工夫が考えられるのではないかというようなお知恵を援助することができるのではないかと思います。
 今ここでどういうふうに区別するかということを問われましても,結論がすぐに出るわけではないですが,とにかく返せるのではないかと,いいかげんではないのかという前提で進めていくと,この問題はどこまで行っても実態がわかりません。皆さん方も,では,実際どういうふうにお考えでしょう。現場の方々に実際にお会いになって,その状況を御覧になっていただければ,絶対あってはいけない事案ばかりなんですよ。
 そういう意味では,確かに弁護士に来る人は困ったので来ている,そういう人が多いということもありますが,でもそれが全てではないんですね。そういう意味では,もう少し一人一人の状況について細かくチェックをする,生活状況も聞いていく,そのような状況の体制を整えるということで,現場のお役に立てるのであれば,そこの中に是非加わらせていただければ,何らかの解決策が見いだせるのではないかと,御協力もできるのではないかとは思います。

【渡辺課長】  1点補足させてください。今,御指摘あったこの机上資料の表ですけれども,これは確かにJASSOの奨学金の延滞者に関する属性調査の資料で,これは延滞されている方のデータです。ただ一方で,延滞されていない方についてもJASSOのデータには出ています。アンケート結果なので,かなりバイアスがかかっていると思いますけれど,おっしゃるように,確かに延滞者は300万円以下の方が圧倒的ですが,他方で返還している方のデータも比較してみると,確かに収入層としては少しより高いほうにずれていますけど,でも300万円以下でもたくさん返している方もいらっしゃるし,逆に400万円以上でも,ここに出ているように返していない方もいらっしゃいます。それは確かに悉皆(しっかい)で調査しているわけではないですし,延滞の理由のアンケートの中にも書いてあったように,そもそも返すものと思わなかったという人もいるわけですね。
 すみません,我々は本当に返せるのに返していない人たちを正確に捕捉できているわけじゃないので,そこは確かにわからない部分はあると思います。ですから私が今,申し上げた返せるのに返していない人がいるのではないかというのは,アンケート結果とある程度の推測に基づくものになるのですけれども,ただ今回の改善というのも,やっぱり何とかして困っている人を救いたいという思いで,例えば今回の改善の返還期限猶予の適用となる年収額についても,これは家族構成を含めて考慮し,より柔軟にしていきたいということです。少しでも救いたいんですよ。本当に困っている人を。
 本当に困っている人を救う一方で,奨学金というこの制度そのものが現状は返還金をもとにして運用されている以上,これを健全に運用してくためには,どうしても制度を健全に運用できるような一定のルールはつくらなければいけないわけです。ですからそこの議論というのは,どうしてもかみ合わない部分というのは出てくると思うのですが,ただ,これについても極力,今後も改善できるものは改善していきながら,一方では制度を健全に運用していくと。多くの学生さんは,きちんと返還して,その返還金が次の学生さんの原資にもなっているので,そういったことも含めて,まさにこの検討会はそういうところを議論する場ですから,検討をお願いいたします。

【小林主査】  すみません,時間の都合があるということなので,相川委員に先に。

【相川委員】  すみません,先に,中座するものですから,ちょっと分からない部分で,資料の2ページに,「真に困窮している返還者に対して救済措置の拡充」の「真に困窮している」というような具体的な定義規定というのは,どの基準が真に困窮しているのかというところが,一応,私,確認しておきたいというところと,やはり先ほど運用基準があって,それで進められているとのことでしたが,ただここの3ページ目には,「運用基準を全て公表すること」とありまして,ということは,公表されていない部分もあるということだとすれば,きちんと利用する学生,また連帯保証人になっている保護者に対して,また保証人になっている方に対しても,この運用基準ということは誰が見ても分かるようなことが必要なのではないかなというところです。この内部で公表するものがあって,表に出せないものがあってというものがあるとすれば,それはシステム上,少し検討すべき余地があるのかなという,検討しなければいけないのかなと感じますが,あと先ほど言った真に困窮している返還者というのは,いわゆる300万円未満の所得ということで,非正規の,所得収入が少ないというのは何となくわかるのですが,この表現というのは,ちょっと。

【日本弁護士連合会(岩重)】  よろしいですか。私たち,実はここの意見書にも書いたんですけど,「真に困窮する」というのを,余り厳しくして,困っている人を救済しないというようなことがあってはいけないと思っているんですね。この「真に困窮」というのが非常にややこしいんです。私たち法律家から見ると,こういう曖昧なもので運用されるというのが一番困るんですね。
 例えば延滞金減免規定についても,真にやむを得ない事由で返さなかった場合には延滞金減免となる,同じ言葉があるんですが,前は非常に緩やかに解釈されていた。ところが今は,返したくても返せない人についても,真にではない,機構が認めた場合となっているんですね。裁量は機構にあるんですよ。これは公平じゃないと思うんですね。そういう意味では,本日意見書の中でも若干ふれているんですが,まさに今の点,真に困窮しているのはどういうことかというのについてちょっと詰めていく必要があると思います。
 それで,それに関して先ほどのお話ですが,300万円以下でも返している方があるとおっしゃいました。しかし返している方が楽ではないんですね。返している方はみんな必死になって働いて返している方や,生活を切り詰めて返している方もたくさんいらっしゃるんです。本日の当事者の声の中にもお書きしましたけども,なるべく借入額を多くしないように,アルバイトをふやして勉学できない方もいらっしゃいますし,それから親御さんが苦労して返している方,年金の中から細々と一生懸命,返している方もいらっしゃるんですね。
 私が相談を受けた方は,もう返済ができないんですけれども,その中から,限られた年金を担保にして,お金を借りて一括で返そうと思っていたんです。実は時効の案件で,時効で処理ができたんですけど,一歩遅くなっていたらば,その方は病気も抱えているんですが,年金を担保にしてお金を借りて返していたと思うんですね。
 それで,実感なんですけども,返している人は非常にまじめなんですよ。私,多重債務の問題に取り組んできたと申し上げましたけども,多重債務の方も決していいかげんな方ばっかりではないんですけど,この問題に取り組んで一番驚いたのは,何でみんなこんなにまじめで,無理をして返すんだろうと,そういう方が多いということを認識していただきたいんですね。そういう中で,「真に困窮」というのは何かということについて,曖昧なやり方ではなくて,もうちょっと現場をきちんと調査するということがとても大事ではないかと思います。
 それはJASSOが調査をしていただいているということは大変,貴重なデータではあると思うんですけども,それだけではなく,ケーススタディーとかそういうことも含めた,実際の顔が見える調査をしていかないと,年収だけでは本人の生活や返済している状況はわかりませんので,そういうことを含めて,是非やる必要があるのではないかと考えています。

【相川委員】  ありがとうございます。

【小林主査】  今,内部基準のお話がありましたけど,それについてはいかがですか,JASSOの側で。

【月岡理事】  例えば猶予につきましては,非常に詳細に,Q&Aも含めて,こういった場合にはこういう資料を出してくださいということをお願いしております。それで猶予の場合ですと,猶予は在学猶予と一般猶予がありますが,一般猶予は24年度の実績で約11万5,000件承認いたしております。猶予承認しないという割合は非常に低いですし,我々が公表している基準に照らして,通るものは通しております。
 ただし,書類の不備があり,不備を直さなければいけないというものもたくさんあります。そういったものも,こうした点が不備でございますからということを示して戻しております。それに対して,1か月ぐらいの程度の期間で戻していただければ,当初の申請の時期を基準にして承認をするといったことをいたしております。
 いろんな基準は,ホームページその他でも公表しておりますし,Q&Aでも説明していますし,随分取り組んでいるとは思っております。

【日本弁護士連合会(岩重)】  基準についてですけれども,延滞金がついている場合,延滞がある場合に,延滞を解消しないと,猶予ですとか,それから返還免除,重篤の病気の方が返還免除もできないというような運用が実際に行われていますけど,それについては公表されているんでしょうか。

【石矢奨学事業本部長】  具体的な延滞金の減免の取扱いについては公表されていないと思います。ただ機構としては,個々具体的な問題ですとか,個別の案件ごと,総合的に判断していますので,公表するかどうかということは検討が必要です。
 延滞金の減免につきましても,御本人の責任がないにもかかわらず延滞金が賦課されてしまっているとか,あるいは延滞の返還者の方とか,連帯保証人とか保証人の方による返還が困難な状況で,第三者の方がお支払いいただくとか,そういった場合には延滞金減免をしております。延滞金ですから,余り軽々に減免するべきではないとは思いますけれども,やはりこれはやむを得ないというような事由のあるときに,機構は減免をしております。

【日本弁護士連合会(岩重)】  やむを得ないというのを,まさにどこの基準で判断しているかということが問題で,それが現場の実態にそぐわないから問題になっているんだと思うんですね。
 それともう一つ,今のお話に関連すると,例えば延滞金があると利用できないというのは公表されていないというのは今までのやりとりでも分かったと思いますし,それから年収が300万円以下というのが一つの基準だというのも,長年公表されていなかったんです。現場でその基準を明らかにしてくれと言われて,ずっとそう言い続けている中で,300万円以下だという基準がようやく公表されたんですね。
 契約というのは,当初に条件が示されていなければ,それを適用する根拠は本当はないはずなんですね。合意に含まれていないはずなんです。そういう意味では公平性を欠くと思います。ただ公表に前向きだというお話を頂きましたので,全ての運用基準について,これから公表していただくよう,日弁連として働きかけていきたいと思いますので,それについては御協力をお願いしたいと思います。
 それから猶予については認められない率が低いというお話がありましたけれども,そもそも相談の段階で,猶予が認められないようなケースについては,猶予の申請に至らないというようなことがとても多いんです。例えば過去にさかのぼって猶予の申請をするというのができるんですね。ところが5年以上前は,役所の所得証明がとれないから,あなたの場合はそもそも猶予が認められませんよということで,本人がその段階で相談の段階でそう言われてあきらめるんです。
 ですから,猶予を認める率が高いということが,利用がきちんと促されているということとは全く違うということを認識していただかなきゃならないと思います。別に非難をしているわけではなくて,実態がそうだということ。

【月岡理事】  基準を公表するということは,基準に沿って運用するわけですから,300万円以下,5年以上のものがとれなければ駄目ですよという基準があり,その基準を公表していれば,事前の相談の段階で,その状況では無理ですねということを教えてあげることは親切ではないでしょうか。

【日本弁護士連合会(岩重)】  その段階ではそうかもしれませんが。

【月岡理事】  今回,新しい制度が導入されるということでもございますので,新たなQ&Aや,私どもの説明の仕方といったものも考えていく必要があるのではないかと思っております。

【日本弁護士連合会(岩重)】  説明が間違っていることが多いんですね。例えばさかのぼって猶予申請の場合でも,所得証明ということに限るというようなことにはなっていないんです。ところが所得証明が必要だからできないという言い方を本人がされれば,それがとれなければ駄目だというふうに思うんですね。所得証明をとれない場合は,ほかの資料で補てんするということも制度的にはあるんですが,そういう説明がなされていないんですね。
 こんな言い方をするのは嫌ですが,恐らく現場の窓口業務をなさっている方が制度について御存じないのではないかと率直に思います。実際に話をしていても,私は,一生懸命,勉強しながら少しずつ制度が分かってきているんですけども,その制度も御理解いただいていない方のやりとりが余りにも多いということが現実です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 非常に活発な議論が続いていますが,残念ながら時間がもう既に大幅に超過しております。

【奥舎委員】  1点。今,貸付額そのものに対しての意見が全くないですが,12万から14万,最低は5万とか,貸付額全体についてはどういうお考えをお持ちですか。

【日本弁護士連合会(岩重)】  貸付額は,幾らがいい,悪いという判断は私どもではできません。ただ,ちょっとこれは考えているのは,やはりその人が必要な貸付額がどれぐらいかということを,リテラシーという言葉がこの中間まとめの中にも出てきていて,それはとても重要だと思っているんですが,例えばあなたの場合には,こういう学校へ行った場合は生活費はこれぐらいかかる,家計の収入からこれぐらい援助が出る,アルバイトでこれぐらいできる,したがってこれぐらいの借入額が相当ではないかというようなことを,情報を提供していくということが最初だと思っていて,幾らが妥当かどうかということについては,様々な議論を尽くさなければ,それが貸し付けられるかどうかということを軽々に判断することはできないと思うんですね。

【奥舎委員】  そうすると,現場で例えば大学ですとか高校の予約サイドでしたら,その時点で判断するという形になりますね。

【日本弁護士連合会(岩重)】  そうなりますね。その段階ではそうなります。ただ……。

【奥舎委員】  そうした場合,現場にその制度等が,さっき言われた周知できなかった人とか,十分周知したとか,いろんな人がいると思いますが,相当そこでミスマッチができますね。

【日本弁護士連合会(岩重)】  できます。

【奥舎委員】  これが一つの原因でもありますね。

【日本弁護士連合会(岩重)】  あると思います。恐らく制度についても現場の学校の先生ですとか職員さんからすごく不満の声がたくさん来ています。要するにこんな複雑な制度をなぜ私たちが手続をやらなきゃならないのかと。説明もできないと。実際のところですね。返還シミュレーションなんかできっこありません。しかも契約するときは未成年ですよね。そういう意味でいえば,十分な情報が与えられていないということがあると思いますが,これについて,その御本人の生活状況ですから,プライバシーにも入っていくことにもなると思いますので,難しい問題が多々あると思っていまして,簡単にリテラシーといってもできるものではないと思いますが,例えばそういう家計の問題をやっている生活協同組合ですとか,それから自治体でもそういう家計のアドバイスをしているというような取組が今,いろんな支援が出てきていますよね。そういうところのノウハウとか,そういうところの協力を得ながら,少しずつそういうシミュレーションですとかいうことをやっていかないと,多分,その学生さん自身も,御自身の負担を分からないまま借りるということが続いていくのではないかとは思っています。

【奥舎委員】  もう1点,今の元利均等方式について。元金均等でしたら,はっきり残高の元金が分かるわけですが,そういう支払方法については一つもないわけですね。ローンは元利均等が基本なんでしょうけど,それについてはどうお思いですか。

【日本弁護士連合会(岩重)】  そこはなかなか難しい問題と思いますが,確かにおっしゃるとおりで,特に変動型の金利の場合,これは返済額が分からなくて困っているというようなこともありますので,それは考えていく必要があるとは思いますが,どうでしょう,ちょっとそこについては問題意識としては持っていますが,実際どうするかというところまで日弁連としては結論はまだ出ていないです。

【奥舎委員】  まだそこまで行っていないわけですね。

【日本弁護士連合会(岩重)】  そこまではまだ結論は出ていません。

【小林主査】  ありがとうございました。今後も御協力していただけるということなので,是非いろいろまた意見を伺いたいと思います。

【日本弁護士連合会(岩重)】  はい,お願いします。

【小林主査】  どうもありがとうございました。

【日本弁護士連合会(岩重)】  どうもありがとうございます。

【小林主査】  すみません,時間が押していますが,今のこともありますので,日本学生支援機構から,この中間まとめについての御意見をいただければと思います。

【日本学生支援機構(月岡)】  日本学生支援機構の奨学金担当の理事をいたしております月岡でございます。

【小林主査】  よろしくお願いします。

【日本学生支援機構(月岡)】  本日は貴重な機会を与えていただきまして,まことにありがとうございます。
 私どもから出しております資料でございますけれども,こういう意見の冊子のほかに,現在の奨学金事業の状況を御覧いただきたいということで,日本学生支援機構奨学金の貸与と返還の現状という資料と,それから返還猶予の事由別承認件数の平成19年度からの内訳を出してございます。
 それから,私どもに寄せられております奨学金に対して,あってよかったといった御意見もたくさん頂いております。直接,手紙等で頂いたものと,それから相談センターで聞き取った内容等の簡単なものをまとめてございます。
 それでは,中間まとめに対する意見でございますけれども,お手元の資料に沿って説明させていただきます。まず学生に対する経済的支援の考え方ということで,今回の中間まとめにおきましては,単に奨学金だけではなくて,授業料減免,あるいはTA,RA,幅広く捉えられているということについて,私どもとしては非常に賛成だというふうに考えております。このことによって,国の責務として,あるいは国以外の主体も含めまして,様々な手法によって学生等への経済的支援がより一層,充実が図られていくといったことを期待いたしております。
 区分して考えますと,経済的支援の例としては,学生等の支出そのものを減らしていくというような方策が一つ考えられると思います。取り上げられているのは,減免と学生寮の整備でございますが,それ以外にもあるのではないかと思います。2点目には収入そのものをふやしていくということで,TA,RA,ワークスタディーといったこと,そしてこの収支差を埋めるための取組といったものとして,機構の奨学金,あるいは学校独自の奨学金,民間団体の奨学金といったものがあろうかと思います。
 ただ世の中には,奨学金以外にも様々な経済的支援策がございまして,日本政策金融公庫や民間の銀行等が行っております教育ローン,あるいは学資を事前に用意しようということで取り組んでおられます学資保険,あるいは社会福祉の観点から来るところの施策,あるいは祖父母等からの援助,そして看護師等,特定の職業の人を確保するために行われている施策と様々なものがございます。こういったふうに経済的支援を幅広く捉えますと,学校においてはこれらを学生にどのように周知していくのか,学生が個々具体的にどのように該当しているのか,どう適用していくのかといった,周知,指導,アドバイスといったことなどが重要になってくると思います。
 このためには,担当の教職員がより深く広く理解することが必要でございまして,学校が単独で,あるいは共同して研修を行うとか,機構も研修をしていくといったことが必要になってくるのではないかと思っております。現在,機構は奨学金を中心として研修の機会を用意しておりますけれども,さらに内容の改善に取り組んでまいりたいと考えております。学校に対しては,機構の行う研修に必ず職員を派遣していただくといったことも期待いたしておるところでございます。
 それから,資料の中には書いてございませんけれども,中間まとめの中では,最後のところで早い段階からの一貫した総合的な政策立案を求められるというふうに述べられておられます。このことについても全く同感でございます。是非検討を深めていただきたいと思っております。
 機構としても,進学,とりわけ奨学金を利用しての進学という進路選択に関係があるわけでございますけれども,それを支援する情報提供の一環として,高等学校,あるいは高等学校の生徒,保護者に対する指導とか,あるいは助言といったことの取組を進めてまいりたいと考えております。是非御支援を頂きますようにお願いいたします。
 2番目に,当機構の奨学金制度でございます。中間まとめで触れられている事柄,あるいはその後の議論の中でも出てきております事柄について,現時点での取組などを説明させていただきたいと思います。
 1点目は啓発の強化でございます。私どもは,経済的に困難な家庭の学生が奨学金制度を知らないために進学を断念するとか,あるいは理解不足のために新たな延滞債権が生じてくるといったことを抑制したいと考えております。奨学生,返還者,保護者,学校関係機関等に対して必要な情報の提供を行っております。
 まず,奨学金の希望者への情報提供でございますけれども,高校生やその保護者に対しまして,「奨学金ガイドブック」というのをつくって配布いたしております。奨学金を希望する方に対しましては「奨学金案内」を作成し,それをお配りいたしております。
 それから,都道府県教育委員会や相川会長の全国高等学校PTA連合会などが主催する研修会などにも職員を派遣したり,あるいは資料等をお配りしたりして,周知に努めているところでございます。
 次に,インターネットを活用した情報提供を行っております。非常に大人数の方が奨学金を利用したい,利用している,あるいは返還中であるということで,そういった方々に個別に郵便その他ではなかなか情報を伝えることが難しゅうございます。努力はいたしておりますけれども,そういった中で,インターネットを使うことが非常に有効ではないかということで,インターネットを使っております。ホームページの充実,奨学金モバイルサイトの運用,メールマガジンといったことを行っております。
 ホームページにつきましては,貸与,返還等,合計で平成24年度実績では3,200万回のアクセスがございました。それから,21年度からは進学等に際してのファイナンシャルプランの設計等に役立つように,あるいは返還を意識してもらって,借り過ぎを防ぐために,ホームページの上に奨学金貸与・返還シミュレーションというのを設置してございます。平成24年度では約160万回のアクセスをカウントいたしております。22年度からは,ウェブ上で個々の奨学生,あるいは返還者が御自身の貸与の情報や返還状況を見ることができるようにということで,スカラネットパーソナルというものを設置して,運用いたしております。さらに,昨年からは転居,改姓の手続,この3月からは繰上げ返還の申込みのための機能など,順次,新たな機能を追加して,充実を図っております。
 1月末現在で24万3,000人が登録いたしております。今後,さらにこの拡大を進める予定でございます。
 その他の情報提供にかかる取組でございます。21年10月から,民間委託によりコールセンターを設置いたしておりまして,その充実を図っております。24年度は着信数73万件に対して,67万件応答しまして,応答率は91.8%となっております。
 それから,大学等の奨学金事務担当者を対象といたしまして,業務連絡協議会を毎年,行っております。それに加えまして,新任者を対象とする研修会を22年度から,採用業務の研修会を23年度から行っております。これは大学,短大,専門学校等の担当者が対象でございますけれども,それに加え,高等学校の関係者を対象に,高校教育関係の月刊誌に,平成20年4月号から奨学金関連の記事を連載いたしておりまして,制度や事務処理に関する理解の促進を図っているところでございます。
 ここで猶予制度等の案内について,若干,補足をさせていただきます。機構では,貸与が始まる前から返還の完了までの期間,繰り返し,繰り返しこの案内を行っているところでございます。まず,奨学金の貸与希望者へお渡しいたします奨学金案内に記載いたしております。さらに,採用時に奨学生にお渡しいたします冊子「奨学生のしおり」,貸与終了時にお渡しいたします「返還の手引き」という冊子,そして学校で行ってもらっています返還説明会での説明内容,そういったもので取り上げております。そして貸与が終わった後も,返還が始まることを各返還者にお知らせする文書の中に,猶予に関する案内の文書を同封いたしております。
 加えまして,延滞となった場合には,機構,あるいは機構が委託をした業者から文書をお送りいたしますけれども,その文書の中に猶予について記載し,個人信用情報機関への登録を同意している方については,その方に送る封書,通常,登録前に3回, 3か月間にわたって,月1回ずつ送っていますが,その中に猶予願に関する申請書を同封いたしております。それから延滞をされた場合には,文書だけではなくて,機構側から電話をかけておりますけれども,その電話におきまして返還困難だといったお話を聞いた場合には,必ず猶予の案内を行うようにしております。
 回収を委託したサービサーも同様に行っておりまして,サービサーに返還困難であるといった申出があった場合には,猶予の案内の書類を送付いたしております。延滞初期の回収委託の場合,約1割は猶予願が提出されてまいりまして,回収委託がその段階で終わるというふうになっております。
 先ほど申し上げましたけれども,機構のホームページにおきましても説明文書,あるいはQ&A等を掲載し,Q&Aにつきましては適宜,更新,追加などを行いまして,利用の便を図っているところでございます。この結果,24年度におきましては一般猶予約11万5,000件,在学猶予を合わせまして約26万件の猶予を承認しているところでございます。
 2点目は,入学前の予約採用の拡大でございます。経済的理由によって進学等を断念することがないようにする,そして自分が奨学生に採用されるという,奨学金を借りることができるという予見性を持って進学できる環境を整備するために,進学前の予約採用の枠の拡大を進めております。このことによって,基準に適格でありながら予約採用にならなかったといった学生の数をなるべく少なくしていきたいと考えております。
 3点目は,貸与中の指導でございます。奨学金事業は教育的な側面もあわせ持つものだと考えております。採用時の審査のみならず,貸与中におきましても学業成績を含む奨学生としての適格性の維持・向上を図るということについて,各学校の協力を得て取り組んでいるところでございます。
 まず,適格認定の実施でございます。毎年度,適格認定を行っております。その趣旨は,1年間の学修状況を振り返ってもらおうということ,そして自らの経済状況についてもそれを振り返り,奨学金の必要性とか適正額といったことについて判断をさせるということで,奨学生としての責務の確認,借り過ぎの防止,返還意識の涵養(かんよう)といったことの機会といたしております。
 学校におきましても,奨学生の学修及び生活の状況等を確認して,この奨学生が引き続き奨学生として適格性を有しているかどうかといったことを確認し,必要に応じて適切な指導を行うという機会としていただいているところでございます。
 ただし,平成24年度に行った調査におきまして,適格認定において一部不適切な事例が見られたところでございます。この調査結果等を踏まえて関連規定の改正を行いまして,より一層,適切に適格認定を行うように,引き続き取り組んでいるところでございます。
 次に,返還説明会でございます。貸与終了を控えた奨学生,あるいは既に貸与は終了したものの学校に在学しているということによって猶予を受けている学生がおりますけれども,そういった者に対しまして,学校を通じて返還説明会を行っております。単に冊子を配ることにとどまらず,口頭での説明といったことも十分に配慮して取り組んでいるところでございます。
 4点目は,返還金の回収でございます。
 まず,返還金の役割・重要性でございます。返還金につきましては,次の世代の奨学金の原資として循環運用されております。26年度の政府予算案におきまして,返還金は第一種の場合,約75%,二種の場合でも50%以上,返還金が充てられることとなっているところでございます。このように奨学金は先輩から後輩へと受け継がれていくという仕組みでございまして,我が国の奨学金事業の根幹を成しているものでございます。このことは,中間報告におきましても「借りたものは返すことが原則であることは言うまでもなく」とされているところでもございます。
 他方,経済的に困難な学生等が安心して進学をしよう,進学を選択しようとする際には,国によるこういった経済的支援策が安定的に運営されていなければならないと考えております。仮にこの事業の運営が不安定な状況に陥った場合には,学生等にとって奨学金を借りることができるのかどうかといったことが不確かなものとなりまして,そのことがひいては進学,あるいは学業の継続といったことを断念するといったことになるのではないかということを恐れております。
 したがいまして,教育の機会均等という奨学金事業の本旨を実現するためにも,この奨学金の返還を円滑にしていただきまして,それを奨学金として次の世代へと循環して運用していくと,そして事業を安定的に運営することが不可欠であるということを考えております。返還が滞りますと,最悪,事業にも影響する可能性があるのではないかということでございます。
 次に,早期延滞解消の重要性であります。延滞者につきましては,私どもは,「延滞しない」,「延滞しても早期に解消してもらう」ということが非常に重要であると考えております。そのために,機構から繰り返し,繰り返し文書,電話等によりまして連絡をして,早期の解消を促しているところでございます。この早期の解消の中には,入金にとどまらず,返還期限猶予の申請を出してくださいということも含まれております。
 この結果,平成22年度以降,毎年,事業規模の拡大によりまして,要返還額は増加いたしておりますけれども,新規に発生する延滞額はふえていないという状況が続いております。当年度分の回収率につきましては,平成20年度は94.0%でございましたけれども,24年度には95.6%になりました。期首時点で,延滞していない方の回収率は,平成20年度は98.7%でございましたけれども,24年度には99.1%となっております。このように,基本的に大半の方はきちんと返還をしてくれているという状況にあるものと,そのように考えております。
 返還困難な者に対する救済制度であります。それでもなお返還することが難しいという方が出てくるということは十分,考えられるところでございまして,機構におきましても配慮といいますか,制度を設けております。それは減額返還制度と,返還期限猶予制度でございます。さらに平成24年度の採用者からは,「所得連動返還型無利子奨学金制度」を導入いたしておるところでございます。
 さらに26年度からは,真に困窮している返還者の救済として,返還金賦課率の引下げ,経済的困難による返還猶予制度の適用年数を延長していくこと,それから返還猶予制度の柔軟な運用ということで,適用基準の緩和,基準を満たした延滞者に対する適用,返還開始時における減額返還制度の申請手続の簡素化といったことなどを実施することといたしております。
 私ども,こういった制度の改正その他も含めまして,様々な方法によりまして,そこにございます説明会,文書,ホームページ,加えてコールセンター,債権回収会社なども使いまして,その案内に努めてまいりたいと考えております。
 それから,延滞者に対する学校からの働きかけでございます。奨学金は貸与であると同時に,教育施策でございます。したがって,貸与を受ける前に,借りたものは返すという返還義務のことを意識づけることが重要だろうと考えておりますが,このためには学校の協力といったことが不可欠であると考えております。今後,学校と一層の連携によりまして,意識の涵養(かんよう)と救済措置,猶予等の周知の徹底にも努めていくことといたしております。
 そして,最後のところでございますけれども,こうした学校と機構とが一体となって取り組んでまいりました結果,平成25年度におきましては,25年度の新規返還者の回収率は,12月現在で95.2%となっております。およそ新規返還開始者は10月から返還が始まりますけれども,10月,11月と進み,12月現在で履行期に来ている割賦の回収率が95.2%ということで,昨年度比で0.3ポイントの改善となっております。
 このように様々な取組が浸透していっているものと思っておりますが,新規に延滞となった返還者からの相談につきましても,きちんときめ細やかに応じていきたいと考えております。
 3番目に,目指すべき奨学金制度について,機構としての要望,考えのようなものでございますが,述べさせていただきます。
 まずは,給付型奨学金制度の創設でございます。これは非常に重要な問題であると,また非常に大きな問題であるということを認識いたしておりますけれども,厳しい財政状況の中ではございますけれども,施策としての効果の高さ,先進諸国の動向もございますので,そういったものを踏まえていただきまして,給付型奨学金の導入が検討されることを心から期待いたしております。
 2点目が,無利子奨学金の拡充でございます。奨学金事業におきましては,教育の機会均等を保障するという観点がございます。そのためには,奨学金を必要とする学生の需要に応えていく必要もあろうかと思います。貸与制の奨学金は,給付制と比較いたしまして,国の財政負担の観点から,必要な規模を維持しやすいという利点もございます。このため,貸与制であっても学資を必要とする学生がより好条件で支援を受けることができるといったことが重要であると考えております。
 現在,無利子と有利子の2本立てでございますけれども,有利子奨学金は創設当時の経緯を顧みたとき,無利子奨学金の補完措置であるとされております。厳しい財政事情の中で,平成26年度予算案におきましても無利子奨学金の拡充を図っていただきましたけれども,今後とも是非この拡充をお願いしたいと考えております。
 3点目に,より柔軟な所得連動返還型奨学金の導入に向けた準備でございます。これにつきましては,諸外国の制度を参考にしつつ,準備を進めていくこととなろうかと思います。制度の詳細は今後,検討することになろうかと思いますけれども,正確な所得の把握と確実な事務処理が大前提でございます。是非これを実際,検討し,仕組みを整え,運用していくこととなる機構におきまして,それが十全に支障なくできますように,十分な御支援を頂きたいということをお願いいたします。
 4点目に,高校生,その保護者等に対する一層の情報の提供の充実でございます。現在,大学等へ進学する高校生の半分ぐらいが機構の奨学金の予約を申し込んでおります。若干,ここを補足いたしますと,74万人というのは,平成25年度入学者選抜での既卒者込みの大学・短大受験者の推定実数でございます。34万人は25年度進学予定者を対象とした機構の奨学金の予約申込者の数で,専門学校を予定しているものも含まれております。
 このように非常に多くの,進学を考えている高校生の半分ぐらいが予約の採用を申し込んできているという状況でございます。しかしながら,奨学金の貸与を受けるということは,お金を借りるということでもありますから,お金を借りることの意味,適正な貸与金額の選択,保証制度,それから有利子奨学金における利率の選択など金融的な知識も含めまして,様々な知識と判断が必要でございます。現在,機構におきましても取り組んでおりますけれども,今後さらに都道府県教育委員会と連携した情報提供ですとか,あるいはDVDなどの作成といったことなども考えていきたいと思っております。
 さらに経済的支援策としては様々なものがある状況のもとでは,進学に必要な支出,それに対して充てることができる経費,そしてその経費と支出額と家庭なりが負担し調達することができる経費との間の差額を埋めるものとしての奨学金がございますけれども,いろんなものの情報提供を保護者等にもしていきまして,保護者,生徒等の高校卒業後の進路意識の涵養(かんよう)とその適切な準備という教育的な側面にも資する取組が必要ではないかとも思っております。機構でもこの点,取り組むことができる部分があるのではないかと考えておりまして,また検討を深めてまいりたいと思っております。
 4番目に,奨学金事業の執行機関としての要望でございます。機構は,平成16年度に独立行政法人として発足いたしました。関係機関から様々な指摘等を受けつつ,健全な奨学金事業の運営に努めてまいりました。この間,事業規模を大幅に拡大いたしまして,これに比例して貸与者数,返還者数も急速に増加いたしております。また,国民ニーズの多様化等に対応するため,制度の改正・新設等も常に行われてきているところでございまして,それにも対応をしてまいりました。
 一方,独立行政法人といたしましては,厳しい効率化が求められております。事業を運営するための経費であります運営費交付金は,平成16年度86億円ございましたが,26年度予算案においては28%減の67億円となっております。また職員定員も13%減の487人となっているところでございます。機構は,求められた厳しい効率化を達成しながら,急速に拡大する事業規模,制度の多様化・複雑化にも対応し,そして返還金の回収状況の改善等にも取り組んでまいったところでございます。
 中間報告におきましても言及されておりますとおり,近年の経済状況を背景に,家庭の収入の減少,一方では学資の負担感の重さなどがございますけれども,こういった状況等を踏まえますと,機構の奨学金事業を含めた経済的支援の重要性というものはさらに重いものになっていくのではないかと考えております。
 機構は,国の奨学金制度を運用いたしております。機構の奨学金は無利子,または有利子のものでもほかのものに比較して低利でございます。12月貸与終了者の場合,固定金利で0.89%,見直し方式で0.26%でございます。この時期,政策金融公庫の国の教育ローンは2.35%程度であったかと思いますけれども,さらに機構の場合は,在学中は無利子でございまして,その分を国庫が負担しております。返還も長期間とし,1回当たりの返還額は少額でございます。経済的に困難な家庭の学生が修学を継続する上で,非常に有利な貸与の仕組みとなっていると思っております。この点だけ見ても,一般のローンとは一線を画した仕組みではないかと思っております。
 前身の日本育英会及び機構の奨学金を利用した方は既に1,000万人を超えております。これらの人の中で奨学金が使えてよかった,助かったという人はたくさんいると考えております。育英会と機構は,これまでも十分に学生の修学を援助するという目的を,役目を果たしてまいりました。これからも果たしていくことができるし,果たしていくべきだと考えております。このような機構の役割と時代の変化に対応しつつ,事業規模の拡大や制度の充実等に対応するためには,相応の人的体制と安定した財源が必要でございます。是非国におきましても機構の体制強化につきまして格段の御配慮を頂きますように強くお願いいたします。
 以上でございます。

【小林主査】  どうもありがとうございました。
 時間が過ぎておりますけれど,せっかくですので,是非少しだけ質疑を行いたいと思いますが,いかがでしょうか。10分程度延長いたしまして,行いたいと思います。意見でも質問でも結構ですが,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ。

【奥舎委員】  先ほども申し上げたんですが,ここの目指すべき奨学金制度の4番目で,高校生やその保護者に対するより一層の情報提供は,より一層とかそういうことではなく,徹底した情報提供とか,教育,啓発をやっていただきたいと思います。そうでないと,はっきり言いますと,現場の調査する者と,貸付けと審査する人とが違うということは,責任がそれぞれ分担されて,お互いが責任のなすり合いになっている状況ではないかと思っております。
 ですから徹底した情報提供と,金融教育とかそういうものの綿密な業務をお願いしたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。この点は何回も出てきているところで,情報のギャップをどうやって埋めるかというのは,日本だけではなくて各国とも大きな課題になっているわけですが,他方,先ほど来,ありましたように,なかなか大学,あるいは高校とか専門学校の現場で十分にできるかというと,かなり負担も大きくて限界があるという話も聞いております。
 ですからそのあたりどういうふうに新しい仕組みをつくっていくかというのはこの会議の大きな検討課題であろうと思っていますけど,ほかに御意見,いかがでしょうか。どうぞ,松本委員。

【松本委員】  適格認定の御報告が,本日ありましたけれども,今回の中間案に盛り込まれています給付型奨学金制度の将来での導入というテーマを本当に効果あるものにしていこうとすると,やはりこの適格認定の制度がかなり有効になっていかないと難しいのではないかなと。これは私の個人的な意見で,前々から思っていたのですが,実際にこれは大変,労力も手間も,それからあるいはどこの責任でといったような主体の問題もいろいろあるかとは思います。この適格認定制度について,さらに,より将来の給付型支給に向かって役立つものなのかどうか,役立てられるものなのかどうか,そういった観点での検討が必要なのかなと思って,先ほど適格認定のお話を聞いておりましたので,是非よろしくお願いしたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。
 私も少しお聞きしたかったのですが。2ページの下のところですが,適格認定において機構が行った調査だと思いますが,平成24年度に行った調査において一部不適切な事例が見られたということですが,これは具体的に言うとどういうことでしょうか。

【日本学生支援機構(月岡)】  適格認定制度では,留年といいますか,標準修業年限で卒業できないという者については,廃止をするという仕組みになっております。ところが警告になった奨学生を,悉皆(しっかい),全数調査したところ,既に当初の適格認定の段階でもう留年が決まっており廃止とすべきであった者が数百人おりまして,そのことを指しているものでございます。

【小林主査】  なるほど。わかりました。ありがとうございました。
 ほかに御意見いかがでしょうか。濱田先生,中村先生,特に,よろしいでしょうか。

【中村委員】  はい,今までにもお話しさせてもらっておりますが,やはりまずは「所得連動返還型」の制度をより柔軟にしていただき,社会生活における返還への不安を取り除くことができるよう,無利子貸与に限らず有利子貸与まで導入を広げていただきたい。
 もう1点は,「予約」の時点と,「進学先」との対応にギャップがあると思います。ここの部分でうまく連携がとれるような仕組みを考えていただくと,より貸与時における周知が徹底できるのかなと考えます。

【濱田委員】  私も同意見です。

【小林主査】  ありがとうございました。

【樋口委員】  よろしいですか。所得連動返還とか,あるいは所得連動というのは,やっぱり私も必要だろうと思います。最近の経済の流れとして,大きな違いというのは,かつては例えば恒常所得といいますか,所得の変動というのは,サラリーマンは少ないということだったんですね。ところが,会社が突然倒産するとか,あるいはボーナスのところについてのウエートが高まってくる中で,毎年毎年所得が変動するということもありますし,さらには月々,変動するというようなことも起こっているわけですね。
 そうなってきたときに,まさに計画どおりに行かないというような問題に対して,どう対応していくのか。特に大学に進学した人たちの家族の所得が突然ゼロになりますというようなことに対して,この奨学金,授業料を払えないというもののかなりの部分というのは,そういったプランニングどおり行っていないということだろうと思うんですが,そういったものに対して,奨学金で対応するのがいいのか,何で対応するのがいいか分かりませんが,考えていかないと,従来のような所得は安定していると,だから低所得であっても変動は余りしなかったというような時代と変わってきているわけで,そこに対する対応というのがやっぱり求められることになっているのかなと思いますが,これはどこに言ったらいいのか分かりませんけれど,かなり大きな問題となっていると思います。

【小林主査】  緊急対応のこともありますので,御説明をお願いいたします。

【日本学生支援機構(月岡)】  まず所得の変動が,先生がおっしゃるように月々ですと,なかなか対応は難しゅうございますけれども,失業したとかそういったことであれば,緊急採用,応急採用ということで,通常の採用の枠とは別に,随時,申込みをしていただきまして採用するという制度がございます。実績もたくさんございます。
 それから,所得連動返還型は,返還時の所得連動,御本人様の所得に連動して月々の返還額を決めていこうというものでございまして,現在,月々定額でございますけれども,それを所得に連動した形で,所得が低いときには少ない金額で,高くなっていくにつれて,多い金額で返していただくといったようなことを,制度としてはお考えではないかと思っております。

【樋口委員】  そうですか。分かりました。

【小林主査】  ありがとうございました。これは確かにイギリスなんかでも所得の把握というのはやはり一番難しくて,今,樋口先生が言われたようなケースになると,どうしてもラグがあるのですね。

【樋口委員】  そうですね。

【小林主査】  それで,おっしゃっているのは,そういった1年単位でやっていたら対応できないと,そういう問題であると思いますけれど,このあたりはもう少し日本でどうするかということで検討していかなければいけない課題であろうと思っています。
 どうもありがとうございました。まだいろいろ御意見,御質問あるかと思いますけれど,かなりもう超過しておりますので,今後,今までいろんな御意見を頂きましたので,こういったものを含めまして,少し各国の事例とか,いろんな調査の事例,エビデンスも示しながら,これからもう少しこの会議を進めていって,具体的に制度設計をということまで考えていきたいと思っております。
 本日はちょっと時間を超過しまして申し訳ございませんでしたが,ヒアリングに参加していただいた皆様,それから委員の皆様,本当にどうもありがとうございました。
 では今後の予定について,事務局から簡単にお願いします。

【田中課長補佐】  失礼いたします。本日お配りしている資料3でございますが,次回の検討会については3月中ということで,現在,先生方から都合を聞いていっているところでございますので,決定次第,また追ってこちらの事務局から御連絡をさせていただきたいと考えてございます。
 以上になります。

【小林主査】  それでは,第8回の学生への経済的支援の在り方に関する検討会を,これで終了いたします。どうも皆様,御参加ありがとうございました。

 

―― 了 ――

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高等教育局学生・留学生課