学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第5回) 議事録

1.日時

平成25年11月8日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省15F1特別会議室(文部科学省東館15階)
(千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学生への経済的支援の在り方をめぐる課題・論点について 等

4.出席者

委員

相川委員、奥舎委員、小林委員、濱田委員、樋口委員、前原委員

徳久理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)

文部科学省

布村高等教育局長、中岡審議官、渡辺学生・留学生課長、渕村学生・留学生課長補佐、田中学生・留学生課長補佐

5.議事録

学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第5回)
平成25年11月8日


【小林主査】  時間になりましたので,ただいまから,学生への経済的支援の在り方に関する検討会を開催いたします。8月に「中間まとめ」をまとめていただきまして,その後2か月ほど空きましたので,本日はその復習も兼ねまして,もう一回論点を明らかにしていきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 本日も,日本学生支援機構の関係者,徳久理事長代理と月岡理事と石矢部長が陪席しておりますので,御了承いただきたいと思います。
 本日は,事務局から布村高等教育局長,並びに中岡大臣官房審議官が御出席でございます。御挨拶を一言いただければと思います。まず,布村局長からよろしくお願いいたします。

【布村局長】  おはようございます。学生への経済的支援の在り方の検討会に御出席を頂きまして,ありがとうございます。今年の7月に高等局に異動してまいりました。高等局異動後,学生の個人的な支援,経済的な支援がまた大きな課題になってございますので,先生方の御指導方,よろしくお願い申し上げます。

【小林主査】  ありがとうございました。
 では,中岡審議官,よろしくお願いします。

【中岡審議官】  中岡でございます。
 学生・留学生課の担当でございますので,先生方にはこれまでの御議論をまた深めていただくということで,大変お世話になります。よろしくお願いいたします。 

【小林主査】  どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 では,議事を始めるに当たりまして,配付資料の確認を事務局からお願いいたします。 

【田中課長補佐】  配付資料の確認をさせていただきます。
 本日,お手元にまず議事次第が一つ,それから「第5回以降の検討会での議論において扱う論点」ということで,簡単に2枚程度のもの,それから高等教育の主要事項ということで,概算要求に関連する説明の資料が入っております。最後でございますが,今後の日程であります。それから参考資料といたしまして,財務省の財政制度等審議会に提出いたしました資料,並びに関連の資料をお付けしているところでございます。あと机上でございますが,既に検討会でお配りしておりますが,「大学生等の経済的支援について」という簡単なデータ集,それから,8月におまとめいただきました中間まとめも,配付させていただいております。
 以上でございます。 

【小林主査】  ありがとうございました。
 それでは,議事に入ります。先ほど申し上げましたが,本日は8月に取りまとめました検討会の中間まとめについて,今後議論を深めていく論点について,改めて整理,確認するとともに,併せて概算要求等の状況についても説明を頂いた上で,学生の経済的支援の在り方について,自由に時間の限り議論していただきたいと思います。途中で退席される委員の方もいらっしゃるとのことですので,是非活発な御意見を出していただければと思います。
 まず,事務局から資料について,説明をお願いいたします。 

【田中課長補佐】  資料1から,御説明させていただきたいと思います。「第5回以降の検討会での議論において扱う論点」という形で,ペーパー2枚にまとめさせていただいております。こちらでございますが,本日机上に配付させていただいております中間まとめの中から,今後検討しなければいけないという形で記述されているところを,抜き出したものでございます。基本的に並び順といたしましては,中間まとめのローマ数字の3の並びで書いております。最初に,「貸与型支援の在り方に関連して」,それから「返還者の経済状況に応じた返還の方法に関連して」,「給付的な支援に関連して」,それから「そのほかの論点として」という形で大きく4つにまとめた上で,整理をさせていただきました。
 具体的な内容について,御説明をさせていただきます。なお,「(P5 3 1.)」というような,括弧書きの中は,中間まとめにおいてどこに書かれているかをお示ししたものでございます。
 それでは,「貸与型支援の在り方に関連して」のところからでございます。まず一つ目,中間まとめでいう5ページ目でありますが,「真に必要な学生等や,優先的に支援すべき層についての不断の見直しと貸与基準の検証」を行わなければならないという御指摘,宿題を頂いております。また丸の二つ目でございますが,「無利子奨学金の拡充」をと。これは有利子から無利子へということでございますが,これについては概算要求の方でもまとめておりますが,概算要求に関連する事項については,私の説明の後に,引き続き御説明させていただきたいと思います。そして丸の3番目,「社会人への奨学金の充実」として,学び直しへの無利子奨学金による対応など,多様な学びのニーズへの対応ということを,宿題として頂いております。
 続きまして,「返還者の経済状況に応じた返還方法関連して」でございますが,一つ目,「延滞金の賦課率の見直し」ということで,具体的には賦課率の引下げ,あるいは段階的な賦課の方式の導入,延滞金の総額についての上限の設定等を頂いております。これも一部,概算要求に関連する事項でございます。丸の二つ目でございます。「減額返還制度や返還期限猶予制度の柔軟な運用」ということで,制限年数の見直しや,あるいは基準額の緩和,これも一部概算要求に関連する事項でございます。丸の3番目でございます。「より柔軟な『所得連動返還型奨学金』導入に向けた準備」でございます。具体的には,誰を対象にするのかといった対象者の範囲,あるいは対象となる奨学金の範囲,一種なのか,あるいは一種と二種の両方なのか,あるいは一定期間経過後の債務免除の仕組みなどについて,今後とも議論をしていかなければならないという御指摘を頂いております。
 3番目でございます。「給付的な支援に関連して」という点でございますが,ここについては,いろいろな趣旨の御指摘を頂いておりまして,例示として幾つか記述があります。
 まず一つ目,「給付目的と受給のタイミング」と書いておりますけれども,具体的には,在学中の学習のインセンティブを高めるという観点から,事後給付のような形の方がいいのではないか。あるいは将来的に予見性,自分が免除をされるといった形で予見性を持って安心して進学ができることから,事前の給付の形がいいのではないか。入学時あるいは進学前に,受給の可否が判断できる形のものがいいのではないかといった論点があります。
 二つ目,「制度のターゲットと支給基準・給付すべき内容」でございますが,具体的には家庭の経済状況を重視した基準とするのか,あるいは学業成績をどの程度重視した要件とするのか。育英と奨学といった話でございますが,そういったところが論点として残っていること。あるいは給付すべき内容としては,奨学に必要な全額を給付するのか。あるいは一部は貸与,一部は給付という形で,ミックスした形でするのが望ましいのかといったことについての検討が必要であります。
 また「受給対象者の選定」でございますが,給付的な支援については,より貸与型よりも受給者の選定の公平性が厳しく問われることになるという記述が,中間まとめにあります。そういった中で,日本学生支援機構あるいはその他の機関がどのように関与すべきか。あるいは大学等がどのように判定に関与していくべきなのかといった点について,宿題があるところでございます。また,現行の貸与の奨学金と同様に,機構を通じた支給が適切なのか,あるいは各大学等を通じた支給が適切なのか。これが「支給の実施方式」に関連するものであります。
 ポツの4点目,「教育と連携させた他の取組の活性化」の点でございますが,具体的には,他の取組として,ティーチングアシスタント,リサーチアシスタント,いわゆるTA,RAと言われている取組と,どのように連携させていくのか,あるいは,学内ワークスタディのような形もございます。そういったものとどうやって連携させるのか,あるいは取組をどうやって活性化させていくのかといった点について,述べられております。
 丸の二つ目でございますが,非常に大きい課題でございまして,中間まとめの中でも将来的な課題になり得るという形で述べられておりますが,授業料減免制度も含めた給付的な支援策全体の制度設計について,これを整理しなければならないという御指摘を頂いております。
 次のページに参ります。奨学金を含めたその他の経済的支援について,目的あるいはターゲット層に応じた制度改善を検討しなければならないということで,これも具体の例示として,特に経済的困難な状況にある者,具体的には児童養護施設に入所している者や,生活保護世帯であって,かつ優秀な層に対して,どのような給付的な支援を充実させていくべきなのかという点。あるいは返還免除に関してでございますが,現行の制度では大学院段階の者のみに返還免除を認められておるのですが,これを大学の学士課程の層にまで対象を広げるべきなのか,あるいは分野をどのように考えるべきなのかといったことについて,検討すべきではないかと御指摘いただいております。
 引き続きまして,「そのほかの論点」でございます。一つ目,「奨学金制度についての情報提供,金融面のリテラシー向上について」でございますが,具体的なターゲットとして,大学における奨学金,高等教育における奨学金の候補者になり得る,いわゆる高校段階,中高生やその保護者に対して,高等教育段階での経済的支援策について十分な情報提供をしなければならない。それと同時に,奨学金を借りる際には,返還の責任,負担についても理解を徹底していくべきではないか。保護者と同時に,実際に奨学金の案内をする学校の先生方,職員の方々に対しても,しっかりと周知をしていかなければならないという点でございます。
 二つ目,「総合的な経済的支援策の充実について」でございますが,まさに総合的なということでありまして,具体的には例えば学生寮の提供や税制の優遇という形で,金銭の支給以外の経済的な支援も含めて,総合的に推進していくことが効果的であることを御指摘いただいております。
 順番が一つずれますが,「民間奨学金との関係について」でございますけれども,民間での奨学団体,各団体の理念に基づいて奨学金事業をきめ細かに行っているところでございますが,こういった各奨学団体と国の奨学金との関係をどのように関連付けていくべきなのか。あるいは情報の集約など,そういった活動を通じて民間団体の活動が円滑に行われるような対応をしていくことが,重要な課題であるという指摘を頂いております。
 一つ戻りますが,「大学院生の経済的支援について」でございますが,大学院への進学に当たって,とりわけ人文社会系の分野においては,経済的な不安感が多いという実態があるという御指摘を頂いております。そういった中で,学士課程の段階について返還免除がない中で,大学院課程への進学は経済的な不安が大きいのではないか。そういったことに留意をして検討することが必要という点について御指摘を頂いております。
 丸の五つ目でございます。「日本人の海外留学支援について」という点でございますが,「日本再興戦略」で閣議決定されておりますが,2020年までに日本人の留学生を6万人から12万人に倍増させるよう取り組んでいるところでありますが,こういった日本人留学生に対しての経済的支援の方策についても,引き続き検討が必要であるという御指摘を頂いております。
 最後でございます。「機構の運営体制について」という点でございますが,奨学金の規模がこれだけ充実している中で,その運営を支える日本学生支援機構の体制についても,引き続き安定的に機構が実施できるように,運営体制の強化について配慮していくことが必要であるという御指摘を頂いております。
 ざっと中間まとめについてのおさらいということで,大分時間が空いてしまいましたので,記憶を呼び起こしていただければと考えてございます。
 引き続きまして,今の説明の中にもございましたが,概算要求について説明させていただきたいと思います。 

【渕村課長補佐】  それでは,資料2を御覧いただければと思います。「高等教育局主要事項―平成26年度概算要求―」ということで,資料を提出させていただいております。
 1ページ目で,特に「学びのセーフティネットの構築」として,大学等奨学金の充実と健全性確保ということで,対前年度207億円増の1,300億円を要求させていただいております。その内容につきましては,資料1にもございましたように,無利子奨学金の拡充も含めまして,意欲と能力のある学生等が,経済的理由により進学等を断念することがないよう,今年度は「無利子奨学金の貸与人員を大幅に増員する」こととともに,「真に困窮している奨学金返還者に対する救済措置の充実」。これは,この在り方検討会でも中間まとめに提言していただいたものを盛り込んでおります。
 奨学金の貸与人員につきましては,今年度144万3,000人から147万3,000人,約3万人の増になっておりますが,無利子奨学金につきましては,42万6,000人から49万6,000人,被災学生等の分も含んでおりますけれども,7万人増を要求させていただいております。また有利子奨学金につきましては,有利子から無利子へということで,4万人減の97万7,000人ということで,要求させていただいております。
 また「国立大学・私立大学の授業料減免等の充実」ということで,対前年度28億円増の379億円を要求させていただいております。国立大学の授業料減免は,対前年度13億円増の294億円,私立大学の授業料減免の充実につきましては,対前年度15億円増の85億円を要求させていただいております。
 ページが飛んで恐縮でございますが,これらの詳細を書いておりますのが,8ページ目,9ページ目でございますので,そちらを御覧になっていただければと思います。まず奨学金につきましてでございます。貸与人員につきましては,「対応・内容」の欄にございます。先ほども申し上げましたように,「無利子奨学金の貸与人員の大幅増員」を要求させていただいております。新規貸与者といたしましては,4万4,000人,そのうち被災学生等につきましては4,000人を要求させていただいております。日本人学生の海外留学に伴う無利子奨学金として,今年度は1万2,000人,新たに要求させていただいております。それと昨年までの貸与者の学年進行,1年生から2年生に進級ということでの学年進行に伴う増員分が1万4,000人でございまして,全部で7万人増となっている状況でございます。
 「真に困窮している奨学金返還者の救済」につきましても,この在り方検討会でも御議論いただいたところでございます。特に返還猶予の制限年数の延長及び適用基準の緩和ということで,返還猶予は現在5年間となっているところを10年に,延滞金の賦課率も10%から5%への引下げを制度改正ということで財務省に要求させていただいております。
 9ページ目を御覧いただければと思います。授業料減免でございます。そちらの「対応・内容」の欄を御覧いただければと思いますが,各大学においての授業料減免が確実に拡充するよう,所要の財源を現在要求させていただいております。その中で国立大学につきましては294億円,免除対象者といたしましては,0.2万人増を要求させていただいております。私立大学につきましても,免除対象者を3万7,000人から3,000人増の4万人を,減免の人数規模といたしまして要求させていただいております。またこの中で,今期,新規要求といたしましては,新たな枠組みといたしまして,先ほど田中からも少し話題がありましたが,学内ワークスタディを,それぞれ国立大学,私立大学で行っているところに支援を行いたいということで,新たに予算要求させていただいております。
 概算要求につきましては,簡単でございますが,以上のような内容で,今,財務省と折衝させていただいております。
 先ほどお話がありました,財政制度等審議会の状況について,簡単に御報告させていただきます。お手元の参考資料を御覧いただければと思います。3種類ございまして,まず「文教・科学技術関係資料 平成25年10月 財務省主計局」という資料があるかと思います。こちらにつきましては,先月10月28日,財務省の財政制度分科会で,文教関係予算について御議論されたところでございます。これらの資料につきましては,財務省のホームページに掲載されており,全部で約100ページ近くになりますが,この中で御用意しておりますのは,まず1番の,平成25年度の文教及び科学振興費の全体の状況,2番の,教育投資,公財政支出の状況について,4番の「大学関係予算について」と,5番の「奨学金事業について」を,抜粋という形で御用意しております。
 特に今言われておりますのが,例えば46ページ,下段にページ番号を付しておりますが,これは財務省から提出されている資料でございますけれども,「授業料の設定状況」で,特に分科会の中で意見として,大学改革については来年度の予算編成の一つの焦点だと言われているようでございます。特に授業料の設定の状況。おめくりいただきまして,49ページ,「奨学金事業」につきましての論点として,財務省の論点といたしましては,「限られた財源を有効に活用し,低所得者世帯に重点的に貸与するための取組」をするべきではないか,その中で特に「無利子奨学金の貸与基準の見直し」,「無利子奨学金を低所得者世帯に重点配分する等の運用改善」が必要ではないか。またそれに伴いまして,限られた財源ということでございますので,「より一層の回収努力」が必要だと言われております。
 この中で,特に「無利子奨学金を低所得者世帯に重点配分する等の運用改善」と言われておるところでございます。状況につきましては,奨学金の家計基準について,現在,無利子奨学金の家計基準は,53ページを御覧いただければと思いますが,これは平均的な家庭としてよくお示しする数字でございまして,私立大学で4人世帯,お子さんも2人ということで,自宅通学の場合は,907万円以下となっております。これが全体の8割に上るということで,無利子奨学金の家計基準は昭和59年から今の考えになってきているのですが,乖離(かいり)が出てきているのではないかということを,財務省は今述べております。
 また55ページをおめくりいただければと思います。これは財務省の主張でもありますけれども,特に低所得者層に奨学金を充実するということであれば,今の907万円については,家計基準としては高いのではないかということ,また「無利子貸与を受けている世帯のうち平均所得(697万円)以上の世帯が2割を占めている」ということで,「低所得世帯に重点配分する等の運用の改善を図るべき」だという主張がございます。
 また57ページを御覧になっていただければと思いますが,昨今の奨学金の拡充に伴いまして,3か月以上の延滞債権額が大幅に増加している状況がうかがわれております。延滞債権につきましては,日本学生支援機構のこれまでの様々な努力のおかげで,総回収率につきまして,当該年度に返還されるべき要回収額に対する回収額の割合で申し上げますと,平成15年度は78.5%でございましたが,24年度につきましては,82.1%まで上昇してきております。また新規返還開始者の回収率は,当該年度に返還されるべき要回収額のうち,当該年度から返還を開始する者についての要回収額に対する回収額の割合でございますが,これも平成15年度につきましては,92.2%でございましたが,24年度では96.8%と,状況が改善してきております。
 また延滞債権額が増えているということでございますが,延滞者の数につきまして,今JASSOの取組が,だんだん効果をあげてきているとは思います。延滞債権者につきましても,平成24年度では33万4,000人,平成15年度は22万2,000人ということで,増えてきているところではございますが,実際この中で新規の,延滞期間が3か月未満の者が増えてきております。3か月以上の延滞債権者は,平成15年度で22万2,000人のうち17万人,3か月未満が5万1,000人でございました。それが24年度につきましては,33万4,000人のうち,3か月未満の延滞者が14万人,3か月以上の延滞者が19万4,000人ということで,どちらかというと3か月未満の延滞者が増えてきている状況でございます。これは振替口座等につきまして振替できなかったことについて,延滞にならないようにJASSOが奨学生,返還者に対しましてきめ細かに連絡して,引き落としができていませんということで働きかけをし,回収状況につきましては改善している状況でございます。
 これらにつきまして,また財務省での特に財政制度等審議会の委員の発言といたしましては,奨学金も含めてでございますが,大学改革については来年度の予算編成の焦点の一つであり,無利子奨学金の増額だけではなく,大学改革とセットで考えるべきだという意見があるようでございます。大学側も授業料を工夫するなど,ただ奨学金を増やすというのではなく改革を進めなければならない,メリハリの利いた授業料の取り方をすべきという意見があったように,議事要旨では出ております。
 もう一つの,財務省理財局の財政投融資分科会の資料を御覧いただければと思います。これは先月23日に行われた分科会でございます。こちらも回収等についてのお話が特に議論になっております。財務省理財局と書かれている資料は,現在の回収状況について論点としていろいろ御意見を頂いております。また「延滞状況の改善の進まない学校名の公表」として,意見提言されております。
 もう一点,参考資料となっておりますのが,財政投融資分科会で,文部科学省と日本学生支援機構で現状を説明した資料でございます。それについても,財投分科会でも議論がございましたが,回収についていろいろ御意見がございました。ただ,日本学生支援機構の特に20年度以降の回収につきましては,努力されているところについて評価を頂いているかと思います。引き続き回収につきましては努力すべきであると,各委員から御意見があったということでございます。
 財政制度審議会につきましては,限られた資源の中でいかに有効に活用するかということで,今,概算要求でいろいろ要求させていただいておりますが,文科省といたしましても,引き続き財政当局に奨学金の必要性等は説明していきたいと思っております。
 簡単でございますが,概算要求の状況と財政制度等審議会での議論の状況につきましての御報告でございます。よろしくお願いいたします。 

【小林主査】  ありがとうございました。
 以上の資料の説明について,御質問,御意見等,ございませんか。
 私も少しあるのですが,時間の関係で,意見を委員の方から頂きたいので,またそれについては戻ることにいたしまして,ここからは,本日の資料を含めまして御自由に御意見を頂けたらと思います。4つに論点をまとめていただきましたけれども,それについて,どなたからでも,どの論点についてでも結構ですので,この点について特に御意見があるという方から,是非お願いしたいのですが。
 どうぞ,前原委員。 

【前原委員】  早く退席しなければいけないので。
 3点あるのですが,1点目は,資料1の2ページ目で,経済的困難な学生の支援というところです。昨年,「ティーチ・フォー・アメリカ」の活動について,いろいろ私に知らせてくださる方があって大変感激したのですが,ハーバードの学生たちが中心になって,スラムに卒業生を派遣して,2年間教師として働くという仕組みです。その結果,大学などに行かなかったスラムの子供たちが,一流大学にたくさん進学するようになった。すごいことをやっているなと思いましたら,日本でも昨年,一昨年頃から,松田さんという,元教師でハーバードに留学して帰ってきて,活動を始めていらっしゃいます。「ティーチ・フォー・アメリカ」に触れて,日本でもやろうということで,NPOを創って,「ティーチ・フォー・ジャパン」という組織を創って。ただ私は,彼と会っていろいろ話していて,日本では教員資格の問題とか,明らかなスラムが日本ではないことになっているために,いろいろ難しい点があると言っていたのですが,今年,実際始めていまして,どこを最初に選んだのか聞いたら,奈良を選んだと。奈良は同和地区が今でもありまして、そこの教育問題はかなりシビアです。ただ表だってはそういうことはないことになっていますので。私は奈良に住んでいますから,あなたはいいところに着目したねと。奈良教育大学の学長にも御紹介しておいたのですが,民間の団体でも,貧しい子供たちに対して夢を与えて火を着けて勉学を志させるという活動をしておられますので,是非日本学生支援機構でもそういうところを注目してあげて,何とかサポートしてあげてほしい。アメリカでは非常にいい成果を上げていますので,日本でもプラスになったらうれしいと思っております。
 2点目は,1ページ目の,ティーチングアシスタント。実は今,留学生の問題などもあって,主な大学は英語で全部単位が取れるようにしてほしいなということをお願いしているのですが,先日も某国立大学の元教授と話したら,その方はアメリカで学位を取っているにも関わらず,英語で授業するのはかなわんなとおっしゃったので,びっくりしたことがあります。今はeラーニングのシステムがすごく発達していますから,例えば本授業は日本語でやるけれども,裏授業というと変ですが,英語でコンテンツを作って日本語でやる授業と同じものを英語で作って,eラーニングをオンデマンドで勉強できるようにすればいいわけで,それから質問も文章で質問できます。そういったコンテンツを作る,あるいは英語の発音が苦手な教授のためにティーチングアシスタントのようなものをもっと活用したら,若い学生たちはかなりそういうことがよくできる学生が多いですので,そのようにしていただくと進んでいくのではないか。
 先週,ある県立大学の学長を訪問しておりましたら,これはいいねと。でもeラーニングのシステムはものすごく金がかかるのだろう,某システム会社に聞いたら2億円かかると言われましたと。アメリカではeラーニングは当たり前で,出来上がったものを買ってきて使えば,1,000万円以下でできるよと。私が昭和女子大学にいるときに導入したのですが,最初の資金はたった100万円で導入しました。そのぐらいでできるのに,ゼロから作らせようとするから何億もかかってしまうのです。日本の国立大学でみんなそれぞればらばらにシステム屋さんに頼んで作っているから,みんな何億もかけてほとんど使い物にならないeラーニングを作っているのです。是非チェックしていただきたいと思います。もうアメリカでも主なシステムは1つか2つぐらいにもう集約されてきているので,そういったものをうまく活用すれば,日本中の大学でうまくそれができるし,それから英語で単位が取れるようになると思います。同時に若い研究者,大学院生とかドクターにいる人に対してお金をあげる機会が増えますので,是非うまく使っていただければありがたいなと思います。
 3点目は,2ページ目の日本人学生の海外留学支援です。これはお話があったときに最初から申し上げているのですが,ファンドを作ってお金をあげるのもいいのですけれども,実業界から考えると,今や主な日本企業はほとんど海外に出ております。したがって,海外の子会社とか支店とか営業所などで,夏休みの間のトレーニーシップを2か月とか3か月受けさせることにすると,非常に抵抗もなく,リスクも小さくて有効ではないかと思います。なぜ私がこんなことを言うかというと,私はアイセック・ジャパンを設立したときのメンバーで,50年前にアイセック・ジャパンができまして,49年前に私はドイツのジーメンスというところで,3か月少しトレーニングシップを受けました。そういう経験からしても非常に有効だと思います。留学もいいのですが。
 ですから国内の,例えば1年生のときにある企業のインターンシップを1か月,2か月受けて,2年か3年になったときに,その企業の海外の営業所なり支店なり子会社で受けることをすれば,非常に就職ともうまくつながっていくし,有効ではないかと考えています。経団連は,就職につなげてはいかんという倫理綱領を持っていますけれども,それにこだわることなくやっていただいたらと思います。問題は学生がいかにレベルアップしていくかということですので,海外のインターンシップと国内のインターンシップをうまく結び付けて使っていかれると,恐らく非常に強い学生を育てることができると考えておりますので,是非御検討いただきたいと思います。
 以上3点です。

【小林主査】  ありがとうございました。今の前原委員の御意見についても,あるいはほかのことでも結構ですが,いかがでしょうか。
 私から補足ですけれども,最後の論点のところに「民間奨学金との関係」と書いてあるのですが,これはもう少し広く,民間奨学団体を支援するなりサポートするということを,たしか中間まとめで入れておいたと思うのですが,そういう観点から,先ほどの「ティーチ・フォー・ジャパン」のような団体をサポートする体制についても,検討する必要があるということです。そのように位置付けていけばと思います。

【前原委員】  ありがとうございます。

【小林主査】  ほかにいかがでしょうか。
 樋口委員,どうぞ。

【樋口委員】  私も途中で失礼しますので,発言させていただきたいと思います。
 第4回以降の検討で論点を非常によくまとめられておりますし,また今回の概算要求でもそれが生かされてきているということで,非常に有益な会議になっているのかなと思います。その点は事務局に対して御礼を申し上げたいと思います。
 その上で,幾つか論点の中で,今後それを決めていくとか,今後どうするかというような,議論の整理をしてもらったということだろうと思うのです。その議論の整理に基づいて,今後いろいろ決めていかなければいけないわけですが,その段階では,是非エビデンスベースに基づいた議論をしていただきたいと思います。幾つか論点が先ほどの御説明で出てきまして,どちらにするのか。例えば給付目的や受給のタイミングの話も,事後,事前ともにメリットとデメリットがありますねというようなところで,今議論が整理されているかと思います。どちらに重点を置いていくのだという意思決定をどこかでやらなければいけないわけであります。そのときに方向性としては,あるいは論理的には今指摘されているようなことだろうと思いますが,数量的に効果はどちらの方が大きいのかということを言う上では,いろいろなデータや,皆さんが持っている行政記録等において,そういったところをはっきりさせていくことが必要ではないかと思います。
 財務省から提出されました奨学金の家計基準も,かなり数量的な,所得の分布がどうなっていまして,それに対して何%の基準がという話で出てきているわけです。客観的に議論をしていかないと,どうしても難しいのではないか。どちらかというと,理念的にはこうあるべきだというものと,実態として,例えば貧困の支援に対して所得格差の問題等も含めて,そうあるべきだろうと私も思いますが,それに果たしてどれだけ効果を持っているのだということを問われないと,国民はなかなか納得しないところもあるのではないかと思います。
 先ほどの財務省の主計局が出してきた所得の分布についても,さすがかなと思っているのは,国民生活基礎調査をベースに使っているのですが,これは割と癖のある統計だと言われていまして,所得の低い人たちがかなり多く分布的に表われている。一方において,全国消費実態調査とかほかのところも,かなり乖離(かいり)があると。どちらが正しいか分かりませんが,乖離(かいり)があると言われているもので,そういったものを使うと議論が大分違ってくるわけです。是非,そういう客観的な御議論をしていっていただきたい。またそれを用意していく,マテリアルを準備していく必要があるのではないかということを,申し添えたいと思います。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 全く私もそれは同感でして,先ほど少し申し上げました幾つか質問があるというのは,その点のこともあります。エビデンスベースということで幾つか,リクエストになるのですが。例えば,授業料減免について国公私でどういう状況になっているか。日本学生支援機構の「学生生活調査」を使えば,どういう人が学生支援を受けているか,特に奨学金と両方受けている人とか,様々な形で受けているわけですが,どの程度の所得の人がどの程度の授業料減免を受けているのかが,ある程度把握できますので,それを分析する必要があるかと思います。
 それから,先ほどから出てきております,真に必要な者というのが,またなかなか難しい問題ですが,例えば申請したが不採用になった低所得の人がどのぐらいいるのかといことも,同じく「学生生活調査」で分かりますので,その辺をもう少しデータを整備する必要があるのではないかと思っております。
 それから,こちらの資料で,例えば最初の財務省主計局の参考資料ですが,その47ページに,「米国の大学の授業料の設定状況」ということで,授業料を高く出して,奨学金もたくさん出すという,高授業料・高奨学金政策が行われているのだという資料が出ております。これは私もずっと研究してきたことで,こういう形になっていることは間違いないのですが,これだけ見るとかなり平均的な姿でありまして,実は非常に多様性に富んでおります。ですから,そのあたりのことを説明しないと,少し誤解を与える資料になっております。実はイギリスも同じような方式をとっておりますので,併せてイギリスについてもこういった資料を出していくことが非常に重要だろうと思っております。ただしイギリスはあまり授業料設定には幅がなくて,今は9,000ポンド近くに張りついていてかなり高くなっていて,それに応じて奨学金を出してはいるのですが,それについてはかなりばらつきがあると言われております。これについては,私の方でまた機会があればこの場でも資料を出していきたいと思います。
 それから,樋口委員が言われた,53ページの国民生活基礎調査に基づくもの,あるいは次の55ページで700万円以上の世帯で23%受給しているのではないかという資料ですが,これについては日本学生支援機構の方が詳しいと思いますが,単純に所得だけで決めているわけではなくて,認定所得という形をとっております。例えば要介護の者がいるとか,在学中の兄弟姉妹があればそれについては所得を控除するといいますか,その分を引くわけですから,単純にこれで非常に高所得の人が受給しているのではないかとは言い難いと思います。その辺についても,これはもう2006,2007年に私は同じようなものを出していただいたのですが,もう一回新しいものを出していただければ,こういった誤解はかなり解けるのではないかと思います。これは日本学生支援機構がデータをお持ちだと思いますので,いわゆる高所得で受給していると言われている人が,認定所得との関係でどうなっているかを明らかにしていただければと思います。
 最後のページの回収状況ですが,確かに私もこういった返還について,ずっと検討会議にも参加させていただいて,返還を強化すべきだと申し上げてきましたが,同時に救済策なども考えなければいけないとも申し上げてまいりました。国際的に見ると,延滞率という形では出せないのですが,回収コストという形では各国が出しておりまして,そういった推計によりますと,日本学生支援機構の回収コストは非常に低い。逆に言いますと,リカバリーが非常に高いことになっていまして,そういった点も併せて言っていかないと,日本だけ非常に延滞しているという印象になってしまいますので,この辺もエビデンスを是非出していくことが必要ではないかと思います。
 説明はなかったのですが,今の主計局の資料の56ページに,「奨学金が有効に使われていない可能性」とあり論文が引用されております。この論文は私も読んでおりますが,実は,日本育英会奨学金を対象にしていると書いてありますが,元データは全国大学生協調査でありまして,実は日本育英会の奨学金であるというのは,あくまで推定なのですね。これについては,私たちの研究グループでも先ほどの「学生生活調査」を使いまして,確実に日本育英会あるいは日本学生支援機構奨学金に特定し,それで同じような推計を出しておりまして,若干違った結果を出しております。
 簡単に申し上げますと,当然のことながら,日本学生支援機構の奨学金を受ければ収入全体が膨らみますので,一部では例えばこういった奢侈品(しゃしひん)といわれるものに使われるようなものも増えるのですけれども,逆にほかのものでも増えているという結果も出ていますし,あるいはアルバイトを減らすとか,家庭からの仕送りを減らすということで,総収入はそれほど変わらないようにしている学生も多いことが分かっておりますので,そういった点も,是非具体的にエビデンスを出して反論していくことが重要ではないかと思っております。
 最後に,延滞率の高い大学の学校名を公表するかということですけれども,これについては,私がずっとやってまいりました検証委員会等でもそういう議論がありました。アメリカの場合には全ての学校の延滞率を公表しております。延滞率の高いところだけというのはどうか。先般,全国学力テストの公表がかなり問題になりましたが,あれも点数の低い方だけ静岡県で出すというので問題になり,逆に高い方だけ出すことになったわけですが,出すなら全部出すべきでありますし,その公表の仕方も考えなければいけないと思います。余りにもペナルティという性格だけ出しても回収の強化に本当につながるかどうかはかなり疑問ですので,そういったことも考える必要があるのではないかと,私自身は思っております。
 少し長くなりましたけれども,幾つか,エビデンスに基づくということだったので,それについて私の意見を述べさせていただきました。
 ほかに御意見はございませんか。
 どうぞ。

【奥舎委員】  数回の会議に出席させていただきまして,非常にいい取りまとめができていると思っております。私は公立大学の立場から,二,三点お願いしたいと思っております。例えば授業料の減免の充実等につきまして,来年の予算要求等では大きな額が減免をされているようですが,公立大学につきましては,はっきり言いますと具体的な数値が全く見えてこないという問題があります。それについては,交付税算入ということで総務省と協議されていると思いますが,引き続いて文科省の方にも努力していただきたいということを,お願いしたいと思います。例えば特別交付税,特殊事情というのが総務省でありますが,各自治体における特別事情で,公立大学が持っております,公立大学の特別交付税に算入するとか,具体的な数値で目に見えるものをお願いしたい。
 それから,大きいのは,交付税算入の基準財政需要額の単位費用が10年前ぐらいに比べて,皆さんも御存じでしょうが1割近く落ちていると。これを何とか引き上げていただきたい。引き続き総務省に要請をお願いしたいと思っております。
 新規返還者の回収率が96%から97%となっていますが,これは非常にいいことだと思っております。100%の回収などは,現実にはどの社会でも政治でも自治体でも地方税でも国税でもあるわけではありませんし,必ずいろいろな制約がありまして,社会的に困窮される新社会人も出てきます。ですから,新規返還者で96%から97%が頑張られているのは立派だなと思っております。ただ今後の回収で,是非敗者復活戦をしていただきたい。民間委託にする回収の方法も難しいでしょうけれども,きめ細やかな回収をお願いしたいと思います。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 これも,先ほどの授業料減免のお話で申し上げましたが,かなり違うわけです。高等教育機関は,今さらですが,これ以外に高等専門学校,高専と,それから専門学校,専修学校の専門課程が入っておりまして,これらもみんな今ばらばらなのですね。私は同じ高等教育機関としては,できるだけ公平性の観点から言っても同じような支援を受けるべきだと考えておりますので,長期的な課題として先ほど事務局から説明がありましたけれども,授業料減免と奨学金は改革として併せて考えていくべきではないかと思っております。
 それにつきましても,先ほど奥舎委員から言われましたように,公立大学に対する支援がどの程度のもので,今どうなっているのか。そのあたりのことを少し事務局で調べていただければと思います。私は今,専門学校の方の学生支援をやっているのですが,都道府県によってばらばらなのです。非常に手厚いところと,ほとんどやっていないようなところと分かれていますので,そういった実態も分からないと、ここは国としてどうするのかという、国としての施策を考える場ですけれども,都道府県の実態も分からないとそれもできませんので,是非それはお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。

【相川委員】  財務主計局の資料の56ページで,先ほど先生がお話しした,「奨学金が有効に使われていない可能性」というページですが,保護者側からすると,大学へ進学させるときに,進学をする,生活をする,いわゆる一つのプラスアルファとして,奨学金はこれに使わなければいけないという印象を私は受けたのです。例えばその奨学金が生活費に回っても,私はいいと思っているのです。安定して学生生活を送って勉学をする。奨学金が研修とか教材とか,直結したものだけに限定するようなニュアンスをここでは受けるのですが,借りる側の意識としては,大学生活をする上で,本当に総体的なものでの支援を受けているという感覚で,どうしてこういう視点で出てきたのかなというのが,私には分かりません。

【小林主査】  ここにありますように,特に奢侈費(しゃしひ)ですね。娯楽,嗜好費といわれるものになるわけですが,そういったものに使われているのではないかということが,どうも財務省の側では出したいということだろうと思います。確かに現実の問題として,奨学金で極端な例ですと車を買ってしまったとかいう例も,ないわけではないのですね。ただそれはごく一部なのでありまして,その辺は,先ほど樋口委員が言われたようにエビデンスで,もう少し,本当にどのように使われているかを明らかにしていくことが必要だろうと思います。
 参考として申し上げますと,これは全部の調査ではないのですが,東京大学の「学生生活実態調査」があります。そこで奨学金の目的を尋ねているのですが,結構貯金とか奨学金の返還自体のために使っていることが多いのです。返還のために貯蓄する。そうなると少し驚きなのですが,現在の学生は,就職活動とか,就職後かなり不安がありますから,どうしても貯蓄に回して,そういった就職活動,万が一就職できなかった場合に備えるということでやっているようなことになっています。全部の大学生の特性とは思えないのですが,そういうこともありますので,そのあたりも,奨学金が本来有効に使われているかどうかの検証としては必要だろうと思っております。

【前原委員】  よろしいですか。私もそうですが,奨学金を受けて,社会に出てから評価されるわけですよね。奨学金をもらった人のリストというかトレースはできるのですか。例えば私も受けたわけですが。

【石矢奨学事業本部長】  原則,返還終了後5年でデータは保存しなくなります。

【前原委員】  もったいないですね。返還終了した人こそ,その後,例えば寄附金を,給付型奨学金などを充実するときに,かつて世話になったのだから寄附してもいいよという人はいっぱいいると思うのです。ちょうどその寄附をもらえそうなときにリストから消しているということですね。

【月岡理事】  返還が終了しますと,返還終了のお知らせを送りますけれども,そのときに,JASSOには寄附金事業がございますので,よろしければ寄附の方もお考えいただきたいというお願いは同封しています。

【前原委員】  けれども,その後ですよね。ゆとりが出てきて寄附してあげられるのは。大体課長くらいでその返還は終わってしまうでしょう。

【月岡理事】  もっと若いと思いますね。40歳ぐらいまでです。

【前原委員】  僕も30少しで,もう返してしまったのですが。

【月岡理事】  延滞している方は長いのですけれども,延滞していない方は30代ぐらいで終わります。

【前原委員】  でも,その後,少しお考えになったらどうですかね。

【樋口委員】  まさにそこが弱いところなのです。教育のように,支出したときとその成果が表われるときには,時間のずれが,ラグがあるわけです。

【前原委員】  ラグがすごく大きいですよね。

【樋口委員】  それにも関わらず,通常の日本のデータでは,クロスセクションで,一時点でという話になりますから。

【前原委員】  だからこういうデータはナンセンスですよね。おっしゃるように。

【樋口委員】  そうなのです。ですから,文科省等から研究費,科研費をもらって,私どもはパネル調査をやっていますけれども,同じ個人を20年,30年,追っていくわけです。そうすることによって,どういう違いが生まれているかというのが客観的に出てきます。そこをやっていかないと。そういう問題があるのです。

【前原委員】  そういうことですよね。是非,その辺も御配慮いただけると。特に給付型を増やしていくときに,国の予算もいいけれども,世話になったという感謝の気持ちで寄附したいという人はかなりいると思います。

【小林主査】  手前みそですけれども,東京大学の寄附者調査をやったことがあるのですが,授業料が安くて助かったとか,いろいろ減免を受けていたから寄附しますという方はかなりいらっしゃいます。
 ありがとうございました。ただもう一つ問題なのは,今度はお子さんの教育費にかかるのですね。ちょうど返し終わってから,しばらくの間。

【前原委員】  しばらくですね。だから寄附できるときは,かなり後なのですよ。

【小林主査】  もう少し後ですね。

【前原委員】  50代半ばとか,ゆとりができてくる頃に,思い出してね。そう思います。

【小林主査】  逆に言いますと,これは総務省の「家計調査」などを見ますと,大学生を持っている世帯は貯蓄率がマイナスになるのです。だから相当厳しくなっていますので。

【前原委員】  そうですね。だから40代,50代初めまでは確かにそうでしょうね。50代半ば以降でしょうね。会社のポストも上がってきて。

【小林主査】  ですから返還終了時だけではなくて,もう少し寄附の方をやっていただくというのは,非常にいいアイデアだと思います。

【樋口委員】  まさにこの表に使われている『季刊家計経済研究』という家計経済研究所がそのパネルをやっているのですね。1993年から調査を開始していますので,当時35歳だった人がもう55歳とかになってきて,いよいよ子供の世代の調査をどのようにするか。奨学金を受けた人がそういった年代になり,人生でどう変わってきたか。そしてそれをまた子供にどうフィードバックしてきているかというところまで追える。そういう研究がほかの国ではどこでも行われています。教育の議論をするときには特にそれが必要だと言っているわけですけれども,なかなか日本では,短期的な調査というのが必要だということで,なっていないのですね。

【前原委員】  そうですね。是非御配慮を。

【小林主査】  今御紹介のあった家計経済研究所のパネルデータも非常に有名なデータですけれども,それ以外にも新しく,フォローアップとかパネルデータというやり方で調査が進められていますので,またそういった結果も随時出していくと,随分エビデンスベースドになるのではないかと思います。
 例えば優秀者免除が2004年から開始されたわけですが,日本学生支援機構になったときですから,実際には2006年の修了者からということになりますが,この方たちが免除を受けなかった人とどう違うのか。これも非常に効果という点では大きな論点であると思います。実は,「学校基本調査」の「卒業後の状況調査」と同じような調査だけは行われておりまして,そのデータを見せていただきました。月岡理事,優秀者のデータは公表されていないと思うのですが,返還の優秀者免除を受けた方と受けなかった方の卒業後の状況調査が行われていますよね。

【月岡理事】  はい。直後しか取れないのですが。

【小林主査】  その結果をここで御披露してよろしいですか。

【月岡理事】  はい。

【小林主査】  実は研究者になられている方がかなり多いのです。優秀な研究者を確保するという意味では,効果があるのかなと思います。ただ,残念ながら,月岡理事が今言われたように,一時点だけなのです。修了時の時点しかつかまえられないので,これももう少しフォローアップして,どのような効果があるかということを調べることも必要だろうと思います。ありがとうございました。

【樋口委員】  統計委員会が,今,基本計画の議論をしていますが,文科省には前回の第1次基本計画の中で,学校から社会への移行過程についてのパネル調査を公的統計としてできないかというものを,検討してもらっていると思います。生涯学習政策局でやっているのですが,是非そういったところに,例えば今の奨学金を貸与されている人が,どれぐらいフリーターになっているのだとかいうこととか,全部分かる議論になってきて,初めてそこでその効果が議論になっていくのだろうと思いますので,是非進めていただければと思います。

【小林主査】  局が違うということですが,同じ文科省として進めていただいて,そのデータを使えるということになると,そういった効果も非常によく分かるようになると思いますので,是非それはお願いしたいと思います。
 どうぞ。

【濱田委員】  もういろいろと御意見が出ておりますので,似たようなことになるかもしれないのですが,無利子奨学金,それから給付型奨学金,授業料免除といったような,学生を支援する意味での概算要求が出されていることは大変結構なことだと思いますので,これらにつきましては,今後とも大いに進めていただきたいのが,1点でございます。
 ただ,給付型の奨学金の具体的な在り方は,さら精緻化していく必要があるのではないかという感じが私はしています。何も古い制度に戻す必要はないとは思いますが,現代的な学生の将来を見越して,そういった検討がこの場でも必要になるのではないかと思いますし,また各方面からの意見を私たちは参考にしなければいけないのではないかと思います。
 同じことは,返還免除のことについても言えると思います。現実に行われる返還免除については,ただいま小林先生のお話の一部にもございましたので,そういったことがもう少し精緻な制度として確立される必要があるのではないかと思います。それがまた学生のインセンティブを高める一つの要因になるのではないかと私は思うのですが,その辺の議論は今後必要になるのではないでしょうか。
 それから,かつて話題になりました返還率の低い大学の大学名公表の問題ですけれども,これはいろいろな意味で議論がなされていることは承知しておりますが,先ほどございましたように,ペナルティという意味を持たせた大学名の公表にはかなり問題があると思います。ですから小林先生もおっしゃいましたように,返還するなら全体的にエビデンスに基づいてやることも考えられるでしょうが,私は私学の一員としては,そういったペナルティを帯びるような可能性を持った大学名の公表はできるだけ避けたいという意見の持ち主でございます。
 一方で,大学内の様々な努力をしていかなければならないということで,TA,RAとの連携や,学内ワークスタディなどが,お話として出ました。全くそのとおりだと思うのですが,特に学内ワークスタディはいろいろな形で行われつつあるも,そのことと経済的支援というものと,あるいはその学生の努力に対する評価という問題は必ずしも連動していないと思います。言葉は確かにあちこちで使われ,またそれぞれの解釈に基づいて,言葉は悪いのですが,独り歩きしている可能性もあるかと思います。ですから,その辺のところの議論をもう少しした方がいいのではないか。あるいは,これに類似することが学内にまだ転がっている可能性もあると思います。それが学外の身近な地域社会に出ていくことが可能性としてあるのかないのか。その辺の検討はまだ必ずしも十分になされていませんので,そういったことなども今後の検討課題として残しておいてもよろしいのではないかと思います。
 小さなことになりましたけれども,よろしくお願いします。

【小林主査】  ありがとうございました。
 各方面からの意見ということは,先ほども申し上げましたけれども,本日は御欠席ですが,中村委員が専門学校の立場からですが,ほかの例えば高専からの意見も聞いてはおりませんし,大学団体等とかあるいは日本学生支援機構は陪席されていますが,まとまって御意見は頂いていないわけです。あるいは日本弁護士連合会も最近活発にこの問題に取り組んでおられますので,そういったことも含めて,ヒアリング等を行うかどうか事務局と検討させていただければと思います。
 それから,実はアメリカの場合はオリエンテーションが義務化されていますので,それが,大学別の延滞率の公表と連動しています。つまり大学の入学時と卒業時に奨学金やローンについてのオリエンテーションをするのは大学の義務になっておりまして,そのために義務をきちんとやっているかどうかということで,延滞率を公表していることもありますので,日本の場合はそういったことをしないで,いきなり,確かに大学名だけ公表することになりますと,かなり私自身は問題が多いなと思っております。ありがとうございました。
 TA,RAについては,実はよくどのような効果があるかということは,余りエビデンスが出てきていないのですね。学生生活調査にもTA,RAをもらっているかどうかということは,分かるようにはできているのですが,それを使った分析は余りされていませんので,少しその辺は考えていく必要があろうかとは思います。
 一通り御意見を頂きましたが,今の点も含めまして,もう少し時間もありますので,是非ほかの御意見も頂けたらと思いますが,いかがでしょうか。ほかの委員の発言についての御意見でも結構です。
 御意見をまとめていただく間,繰り返しになると思いますが,もう一回記憶を呼び起こすために,最後の論点の「情報提供,金融面のリテラシー」について、私から少し。今大学の例を出しましたけれども,実はイギリスやその他の国で,この情報提供とか金融リテラシーをどうするかということが結構盛んに言われています。イギリス政府は,「Widening Participation(参加拡大)」という施策をとっておりまして,これは前労働党政権のときからやっているのですが,現在も継続されております。これはむしろ高校などで,大学についての情報を提供したり,金融的なことに関するリテラシーを高めることをやっております。なかなかこれも日本ですと難しいところもあるわけですが,高等教育局だけの問題ではなく,初中局も含めまして,もう少し下の段階でもこういったことが必要ではないかということを,訴えていく必要があろうかと思います。
 アメリカでも,ある調査によりますと,給付型奨学金をもらえる可能性がありながら申請していない人が,かなりの割合に上っていることは明らかにされております。給付型ですから返還の必要は全くないわけですが,それにも関わらず申請していない。それは情報提供が不十分だということが問題になりまして,情報提供をできるだけ積極的に行うことにオバマ政権は熱心に取り組んでいると聞いております。日本でも奨学金の認知度については,私たちの調査でも,日本学生支援機構の名前は知っているけれども,具体的にどのような奨学金があってということまでは知らないという保護者が,かなりの割合,2割程度はいるのではないかと推計しております。情報提供とか金融面のリテラシーの向上も,直接奨学金の問題ではないのですが,大きな課題だろうと思います。
 ほかに御意見はございませんでしょうか。
 どうぞ。

【相川委員】  今の高校生に対する情報提供ということに関しては,先般,私どもの全国大会等で行われたときに,日本学生支援機構さんから,こういうガイドブックを配布していただきました。一番保護者が多く集まる大会のときに,冊子として折り込みをさせていただいて,いろいろな機会を使って,保護者にこういうシステムがあることをお知らせしていくという意味では,本当に御協力を頂きましてありがたいなと思っております。冊子を配って御興味のある方は見て,疑問のことがあれば,どこに相談すればいいのかというと窓口は学校の教師に質問していくなり,問合せ先に行くなりという形になるのだと思うのですが,私たちもこれを配布してその後どのようになっていっているのかまでは追っていませんので,とりあえず第一段階として保護者にこういうことがあることを,PRさせていただいた。そういう積み重ねがまず必要かなということと,こっちでボールを投げたものに対して,向こうで受け取って,その後どうなっているかの確認を,今後どうしていくか。どれぐらい認知度があるのかというようなところも見ていかなければいけないのかなと思っています。

【小林主査】  ありがとうございました。
 確かにパンフレットなどは大分整備されてきたと思うのですけれども,その次の段階が確かに重要だということです。そのあたり,どのように進めていくかも検討の課題ではないかと思っております。一般的なケースではないかもしれませんが,専門学校の学生にインタビューなどをしたりすると,たまたま担任の先生が詳しかったので日本学生支援機構の奨学金について十分な情報提供があったという学生もいれば,担任の先生はほとんど知らなくて,そういったことも教えてくれなかったという学生まで,いろいろいるようです。その辺を含めて,中高生あるいはその保護者がどの程度認知しているかも,もう少し見ていく必要があろうかと思っております。

【奥舎委員】  奨学金の回収ですが,都道府県別の回収率とかそういうものは出るのですか。機構では,つかんでおられるのですか。

【月岡理事】  住所は分かりますので,分析をしようとすればできないことはないです。

【奥舎委員】  先ほど小林座長が言われたけれども,初等中等高校段階で,奨学金の予約等を決めるのは高校段階ですね。そうした場合に都道府県別等で大学を表わして,都道府県別の回収率とかが出れば,各都道府県の高校にしっかり周知するとか,こういう制度がこうなりますよというのも一つの方法かなと,ふと思ったのです。

【月岡理事】  これは前原先生なども詳しいとは思うのですが,一般的に言って,県民所得との相関が強いと言われていますので,学校の,高校の努力だけで解消できるかどうかは,分からないのではないかと思います。一般論ですが。

【奥舎委員】  今年の異動で来た県立高校の事務の方に聞いたら,一般事務職から来たかどうかは知りませんが,奨学金ということ自体も,そこに冊子がありますよというぐらいの認識なのですね。私どもの大学の先生がその程度かなと思ったわけです。先ほど小林先生が言われたけれども,元利金とか元金均等とか複利計算とか,いわゆる中学校程度の数学が,認識できない高校生もたくさんいるわけですから,しっかり,金融教育をした方がいいのではないかと思いますね。その地道な力が回収率の向上につながると,私は思います。しっかりPRしていただいて,私どもの役目はこうなっていると,日本の次の若い世代,次の世代を背負う学生,社会人を育てる資金提供をしているのだという自負心を持っていただき,やっていただければと思います。

【小林主査】  私が答えるのも変なのですが,JASSOは延滞者の属性調査というものをやっておりまして,それを見ると,やはり地域別にかなり差はあります。

【奥舎委員】  ありますね。

【小林主査】  あれはたしか県別の,公表はされていないですね。

【月岡理事】  県別の分析は余り。

【小林主査】  あまりやられていないし,公表もされていないと思いますが,確かに県によって相当違うということがありますので,どうしても国の施策ということになると,県別の差をあまり見ないところがありますが,それは進めていきたいと思います。

【月岡理事】  先生がおっしゃるように,高等学校への働きかけはしなければいけないと思っています。今,都道府県の教育委員会は高校学校レベルの奨学金事業を行っていますよね。したがって,幾つかの県に聞いてみると,毎年春の段階で,高校学校レベルの奨学金に関する事務の学校への説明会はされているようです。そこにJASSOも一緒になって説明する機会を与えていただければと思うのです。我々も人的な限界がありますが,例えば大阪府の教育委員会からは要請を頂きましたので参加をしております。時間の制約もあろうかと思いますが、こちらから出向いて御説明する機会を頂ければありがたいと思っております。

【田中課長補佐】  今,高校段階での金融教育というお話が出ましたけれども,実は私は,6年前ぐらい,現行の学習指導要領を改定する際に,ちょうど担当課におりました。現行の高校段階での金融教育でございますが,家庭科は男女とも必修になっております。家庭基礎あるいは家庭総合という中で,若干,消費者教育的な側面が強いのですが,多重債務の防止の観点から,カードローンなど,お金を借りることはどういうことかといったものについて,教えるという形になっております。また補助教材という形になるかと思うのですけれども,金融庁の金融広報中央委員会と協力いたしまして,文科省でも金融教育の副教材を作っております。これは高校段階に限りませんけれども,そういった教材を使いながら金融教育についても行っていくという実態になってございます。
 補足でございます。

【小林主査】  ありがとうございました。
 奨学金のことは教えられているのですか。

【田中課長補佐】  教科書を以前見たときに,単独で奨学金について教科書で記述しているものは見当たらなかったのですが,お金を借りるということはどういうことか,将来的に住宅ローンなどを借りるシーンがあることを想定して,お金を借りるということは,きちんと借りたお金は返さないといけないのですよといったことについて,触れている教科書は多いです。

【小林主査】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。これから,先ほど申し上げましたようなヒアリングもあるのですが,具体的に詰めていかなければいけない論点として,濱田委員からも出されました。それ以外にも特にこのあたりをもう少し検討する必要があるのではないかということで,本日,論点で出していただきましたが,それについてもう少し御意見を頂ければと思います。エビデンスがないと難しいというのは,確かにおっしゃるとおりなのですが,なかなかそう言っても進まないところもありますので。
 例えば支給の実施方式について,アメリカとか韓国は大学とか教育機関に渡してしまうのですね。本人には渡らないわけです。ですから大学にとってはある意味では補助金みたいな性格を持つのです。授業料にまず充当してほしいということで教育機関に渡すのですが,先ほど相川委員からは,逆に生活費のもう少し足しになっているという御意見がありました。そのあたりどうでしょうか。財務省の資料も,個人に渡すと使い方が個人で勝手にやってしまうということを言いたいらいしいのですが,このあたり,アメリカとか韓国のように大学に渡すというのも一つの考え方ですが,いかがでしょうか。

【相川委員】  どっちがと言われても,なかなか。

【小林主査】  実際に使う額は決まっていて,どのお金をどれということはないのですけれども,もうはっきりしているわけですよね。授業料に入れてしまいますよと。アメリカの場合ですと,それでも余りが出れば本人に渡すという方式ですが。

【相川委員】  どうなのでしょう。実際生活をしていかなければいけないわけですよね。確かに授業料に反映されて,授業料が減額されていくという分,そのために大学に大枠でまず支給するという。それで授業料が減額されていって,子供たちの持ち出しが少なくなって,家庭の負担が少なく学生生活が送れるという考え方。個人に給付するというのは,個人の学生生活のスタイルによって何に使われているか分からないと。予算がたくさんあれば,大学にもやって,個人にもやってということが可能ですが。何となく感覚として,個人に支給したら返還も個人がするという感覚ですよね。大学へ出すということは,完全に大学に補助金として渡すということなので,回収というもので考えたら,それはどういう。

【小林主査】  すみません。少し説明が足りなかったのですが,今のことは給付奨学金のケースです。
 今,私学助成とか国立大学の運営費交付金という形で,機関に対する一括助成で,その結果として,大学が何に使っているか分かりませんけれども,授業料を下げているであろうという想定で行われているわけですよね。

【相川委員】  そこをきちんとしないと,学生も何に使われているか分からない,大学も何に使われているか分からないというようなことが起きないとも限らない。そこをきちんとどういう形で検証すればいいのかというところになるのではないでしょうか。本来授業料が減額されるべきことが,大学によってはもしかしたら授業料ではなくて違うことに使われているとすれば,趣旨が違ってくるということが起きると私は思うのです。全く起きないとは言い切れないと思いますが。

【小林主査】  その辺を実際の証拠で示すのは,結局お金は色がないとよく言いますけれども,そうなってしまうので難しいのですが。例えば私学の関係者の方にお話を聞くと,よくそういうことを言われるのです。私学助成があるから授業料を下げられるのだということは言われるので,この辺はまた関係団体の方とか振興事業団などの御意見を伺うのも,一つかなと思いますね。

【相川委員】  確かに私学の立場からすると,助成があることによって,そういう大学のまず全体の運営に対処して,学生を確保することも考えれば,学費を下げていくことは,よく私学の方々もおっしゃいますので,それはそれで理解はできるのですが。

【小林主査】  これは先ほど言いました,給付奨学金とか授業料減免も統一するとなるとそういう話になるので,すぐできるという話ではないのですが,少し証拠を集めまして,それからもう少し議論を重ねていく必要があるかなとは思います。
 今の点について,あるいはほかの点でも結構ですが,御意見はございませんでしょうか。

【奥舎委員】  私どもの学生の中に離島から来た学生がおりまして,看護の学生ですが,家の家計収入が非常に厳しかったのでしょう,授業料は保護者が納めまして,それから自分の生活費は奨学金とコンビニでアルバイトをして,全部やっていましたね。成績はトップで出ましたから,彼女は地元の病院でいい保健師か看護師になってやっていられると思います。
 奨学金は,大学とか機関ではなしに,学生が将来社会に出るための生活のトレーニングもあると思います。海外旅行へ行ったとか,パチンコをしたとか,ギャンブルにかけて使っているとかいう一部分はあるかも分かりませんが,それを前面に出して,それはおかしいというようなことは考えてはいけないと思いますし,奨学金制度そのものは,財務省のものは一つの反論であって,性善説というのですか,学生を信用して支給する行政でないといけないと思いますので,私は大学の機関に支援などではなしに学生に支給するべきだと考えております。

【小林主査】  非常に大きな論点として,機関補助と個人補助の関係をどうするかということで始まったかと思うのですけれども,ただ日本の場合,今議論になっていますように,機関補助としてはある程度出しておりまして,個人補助の場合には,給付型がなくて授業料減免だけです。授業料減免は国公私立また全部違うし,高専も専門学校も違うというばらばらの状況になっているということで,そこを何とかもう少し全体として整理できないのかという,機関補助と個人補助の問題,それから個人補助の教育機関による違いをどのように整理するかという問題だろうと思いますね。
 おっしゃられるように,確かに学生からすると,機関補助の場合もそれによって自分たちは間接的に援助を受けているはずなのですが,そういう意識はあまりないのですね。目に見えませんからね。公立大学でも相当,実際には地方自治体で負担しているわけですから,ところが学生は,そういう意識をあまり直接は持てないわけですね。授業料が安いことだけは分かると思うのですが。ですからそのあたりはどういう方法がいいかというのは,今言われた点を含めて考えていく必要があるかなという気はいたします。
 どうぞ。

【濱田委員】  機関補助と個人補助という大きな分け方の中で,奨学金という制度それ自体は個人補助というところに成り立って今日まで及んでいまして,それが機関補助的性格を強く持つような,たとえ給付型であったといたしましても,持つとなると,奨学金に関する日本人が長い間持ってきた考え方とか制度といったものを,根本的に考え直さないと実現は難しいと思いますし,仮に機関補助の中に含めた形でやるとなれば,各大学が,国公私立を問わず,非常に対学生に対する事務量であるとか様々な指導的な仕事が増えていく可能性があります。
 それから機関補助という意味で,奨学金との関連で言うなら,各大学が独自の奨学金制度を持つように,特に私立の場合はそれをやろうとしています。その財源を一般の学生の学納金から持ってくるのかというところに非常に議論があって,できれば寄附金を募って,それを生かすべきだというところに,傾斜していると思うのです。ですからもし機関補助ということが議論になるとするならば,そういう大学の努力に対して,項目を立てた一部補助という考え方が成り立たないものかどうかということを,お話を伺って感じます。非常に荒っぽい議論かもしれませんけれども,そうあるべきではなかろうかと思いますが,いかがでしょうか。

【小林主査】  私もそこは詳しくないのですけれども,例えば基金の運用益については,税制はどうなっているか,御存じの方がいたら教えていただきたいのですが。非課税になっていないような気がしますが。

【濱田委員】  寄附金に関しては,2年前でしたか3年前から,制度が変わって一定の金額を継続して寄附することによって,税金に関する考え方が根本的に変わっていますよね。それは御存じだと思いますが,それを運用するということを私は今言ったわけですが。

【小林主査】  すみません,私の方が先走ったのでもう一回整理しますと,濱田先生が言われたのは,基金をもう少し活用するということですが,寄附税制で100件でしたか。

【濱田委員】  3,000円以上、平均して年100件以上ですね。

 
【小林主査】  かなりハードルが高いわけです。

【濱田委員】  今は高いですね。

【小林主査】  寄附で税制控除を受けるためには。それをもう少し下げられないかということだったのですが,私が少しお聞きしたかったのは,基金を創りますと,運用益で,当然運用するわけですね。それについての税金が今どうなっているかということが,分からなかったので。別に今日でなくてもいいので、調べていただければと思います。その控除ができれば,それを奨学金とかに大学が回せるわけですね。そういうことも考えていいのではないかということだと思います。
 この問題はかなり根本的な問題で,なかなか解決がつかないわけですけれども,もう少し整理して,片方では大きな論点として出すことと,それから具体的な方策としてどうするかということだと思います。今回はこういう形でいろいろ概算要求に入れていただきましたけれども,来年度のこともありますので,来年に向けてどのような施策ができるか,あるいは逆に長期的にすぐにはできないことの振り分けも必要かと思いますので,その辺をやっていく必要があるのかなと思っております。
 大体御意見を頂いたようには思います。あと私から注文なのですが,社会人への奨学金充実ということですけれども,厚労省が教育訓練給付金という形で今かなり出しています。専門学校生とかMBAとかに対して。それについての新聞報道ですが,かなりそれをまたアップすることが言われているようです。そのあたりがどのようになっているか,次回でも結構ですが,これも一種のすみ分けといいますか,厚労省側のいわゆる就学支援との関係も重要だと思いますので,そのあたりのことも整理してデータを出していただければと思います。
 大体委員の皆様,御意見はこのような形でよろしいでしょうか。ほかにも論点はいろいろあるかと思いますが,本日は,少し空きましたので,大きな論点について幾つか出していただきました。これをもう一回事務局と整理して,次回にお出しして,また御意見を頂くようにしたいと思います。本日は具体的な細かいことについては余り触れられませんでしたので,その辺についてはもう少しこちらでも原案を作って考えていきたいと思っております。
 それと,エビデンスを出すことはかなり重要だと思っていますが,すぐに出るものと,なかなか出せないものがありますので,その辺も整理して,次回また少しずつ分かっていることからお出ししていきたいと思っております。
 言い忘れたのですが,先ほど奥舎委員から出ました交付税の算入についても,多分,大学等への,高等教育機関への支援について出されているのではないかと思いますけれども,そのあたり少し調べていただけますか。
 それでは,少し早いのですが,次回について事務局から御説明をお願いします。

【田中課長補佐】  次回以降の日程について御説明申し上げたいと思います。資料の3を御覧いただければと思います。当面の検討会の日程についてでございますが,本日は5回目の開催をしたところでありますが,6回目,7回目として,直近12月11日に6回目の検討会,7回目は1月中旬頃を予定しておりますが,先ほどお話のありましたヒアリング等について,できればこのあたりでやりたいと思っておりますが,現在調整中でございますので,確定しましたら御報告申し上げます。

【小林主査】  ヒアリングの団体等につきまして,何か御意見等ございますか。こういうところから御意見を聞いた方がいいというのがもしございましたら,お伺いしたいのですが,いかがでしょうか。例えば関係団体等は当然だと思うのですが,それ以外に何か。またありましたら是非事務局にお寄せいただければと思います。
 予定の時間に15分ほど早いのですけれども,これで今回の学生への経済的支援の在り方に関する検討会第5回を閉めさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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