学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年6月17日(月曜日)10時~12時

2.場所

文化庁第2会議室(文部科学省旧庁舎2階)
(千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学生への経済的支援の在り方をめぐる課題・論点について 等

4.出席者

委員

相川委員、奥舎委員、小林委員、前原委員、松本委員

徳久理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)

文部科学省

松尾学生・留学生課長、渕村学生・留学生課長補佐、保立学生・留学生課長補佐

5.議事録

学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第3回)
平成25年6月17日


【小林主査】  それでは,定刻より少し早いのですけれど,出席の方おそろいになりましたので,ただいまから学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第3回)を開催したいと思います。皆様,御多忙中にも関わらず,また暑い中お集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
 本日も,日本学生支援機構の関係者が陪席しておりますので,御承知おきください。
 まず,議事を始めるに当たり,配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【保立課長補佐】  配付資料が,資料1から4までと参考資料が皆様にお配りしているもの,それから机上資料としまして,メーンテーブルのみの資料が3種類ございます。不足がございましたら,途中でもお申し付けください。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。それでは,議事に入ります。
 本日は,これまでの議論を踏まえて,中間まとめ案を事務局から提示させていただきまして,自由に議論いただきたいと思います。ついては,事務局の方で資料の御説明,よろしくお願いいたします。

【保立課長補佐】  では,まず資料1からですけれども,資料1は前回の議論のポイントです。前回,委員の方全員から御指摘を頂きましたので,ざっとでございますけれども,少し復習がてら順を追って説明いたします。
 まず,学生の置かれた経済状況というところで,大学院生への支援,特に人文系などは経済状況が厳しいのではないか。大学院生への支援ということを考えるべきではないか。それから,奨学金を返還できないということは就職の問題にも起因するので,マッチングの支援等にも力を入れていただきたいという御意見を頂きました。
 それから,給付型の制度設計に関してですけれども,まず,そもそも目的を奨学という観点でいくのか,それとも育英という観点なのか。そのどちらの目的でいくかで制度設計が変わるので,理論的な整理が必要ではないかということ。それから,例えば国立,私立の間,自宅か自宅外か等で,必要経費が変わってくるわけですけれども,大学,学校へという機関補助なのか,個人に対する補助なのかという,もう少し大きな観点も必要ではないかということ。それから,世界各国でも中間層への負担が増加しているのではないかということ。それから,例えば専門学校の学生の4割ぐらい,高校卒業者以外の方がいらっしゃるということで,様々な背景のある人々を考慮した制度設計にしなければならないのではないかという御意見を頂きました。
 それから,今後目指すべき方向性に関しまして,まず育英か奨学かという先の論点の続きですけれども,高校卒業後に就職する人も結構いることを考えますと,まずは奨学的制度というところから整備していくことが必要ではないかという御意見。それから,逆に経済界の視点からは,学生に学習のインセンティブを与えるような育英的制度が必要ではないかという御意見,両方ありました。また,育英的にインセンティブを与えるということですと,予見可能性の高い制度が効果的ではないかという御意見がありました。
 それから,給付的な制度を設けるときに,給付ですと,誰に支給するのかというところで公平性を厳しく問われるわけですけれども,その成績基準を誰が判断するのかというところで,しっかり議論いただきました。そもそも大学という多様な人材を育成しているところからしますと,現在の奨学金制度のように高校の成績を基準にしていることは,そもそも時代の流れに合っているのかという御意見。そういう観点からすると,公平性といっても全国一律の試験を実施するようなことではなくて,各大学が推薦するという仕組みがいいのではないかということです。ただ,各大学で推薦するということよりも,その後議論いただきましたように,大学間で連携して奨学金の面接試験が実施できないかということ。例えば,その地域に貢献する人材ですとか,様々な観点を持って。その場合に公平性を担保するためには,例えば基準をオープンにするなど,透明性が鍵になるのではないかという御意見を頂きました。
 それから,給付的制度の制度設計のその先の別の論点としまして,財源の問題を考えますと,全部給付というよりは,以前,特別貸与制度というのがありましたけれども,給付と貸与を組み合わせたような制度がいいのではないかという御意見を頂きました。
 それに関しまして,以前の特別貸与という制度ですと,入学前に選考があったのですけれども,やはりインセンティブという観点からは,入学後の事後的な選考の方がいいのではないかという御意見。事後的な選考にすれば,在学中に奨学金を得たことが,就職の際に有利になるようなこともあるのではないかという御意見を頂きました。ただ一方で,やはり進学時の安心という意味からは,入学時に奨学金の免除が予見されていることも重要ではないかという御意見も頂きました。
 それから,所得連動型の奨学金制度に関してですけれども,まず源泉徴収が可能ですと非常にやりやすいのではないかという御意見を頂きましたけれども,実際問題,源泉徴収は難しいのではないかという御意見も頂きました。それから,現行では無利子奨学金のみですけれども,無利子奨学金だけではなくて有利子奨学金も対象にすべきではないかという御意見を頂きました。また,こういった制度を導入する際には,定年後のシニアの学生の扱いについて規定しておかないと,成績や収入いずれも満たしてしまうけれども大丈夫なのか,きちんと考えておくべきではないかという御指摘を頂きました。
 それから,すぐにできることとして,例えば税の控除のようなことはできないかという御意見を頂きましたけれども,なかなか現実的には実現が難しいのではないかという御意見も頂きました。
 ざっとですけれども,議論の概要はこのようなことでした。
 それから,前回の検討会の後に委員の先生方から頂きました御意見,資料を踏まえて,事務局の方で作成した案を,資料3にしてございます。先生方に共有できているものとできていないものもございますので,1回ざっと御覧いただければと思います。
 まず資料3の1ページ目について,本日いらしていない中村先生から2回御意見を頂いておりまして,1回目の御意見の方は委員の先生方にお送りできているのですけれども。給付ありきという議論には疑問があるということですとか,あと現在,入学前の入学金等の納入においては,その資金を労働金庫のつなぎ融資でやっていますけれども,最初から全部,日本学生支援機構の奨学金で賄えるようにすべきではないかということ,それから「所得連動返済型の無利子奨学金制度」については有利子も適用できるようにすることが急務ではないかという御意見を頂いておりました。
 その後,中村先生から少し補足の御意見を頂いておりまして,給付ありきの進め方があるというふうに指摘はしたけれども,それは給付制度の導入を否定することでは決してないということ。ただ,例えば専門学校を卒業して社会で活躍されている方は多くいらっしゃいますけれども,そういう人をきちんと評価して,例えば業績優秀者として給付の対象となるような制度設計をしっかり考えてやっていただかないといけないのではないかという御意見を頂きました。
 それから,次のページに参りまして,現在予約採用を高校3年生でやっておりますけれども,もう少し早い時期にその見通しが立った方が,進学のためにはいいのではないかという御意見がありました。
 それから,その次の奨学金の貸与時期は先ほど申し上げたことと同じですので省略します。
 それから,最後の部分ですけれども,例えば,児童福祉施設出身の方のような特に厳しい状況に置かれた方というのは,中退率も高いですとか,厳しい状況にあるので,こういった方々の支援を拡充して,教育の機会均等にしっかり取り組む必要があるのではないかという御意見を頂きました。
 それから次に,前原先生からお電話で頂いた御意見がございます。何点かございますけれども,まず現行の奨学金の貸与基準。この検討会の場でも御意見を頂きましたけれども,自営業者の家庭の方というのはサラリーマンの家庭の方よりも,はるかに奨学金の貸与基準をクリアしやすくなっていて,現在の奨学金の貸与基準の設定の仕方に問題があるのではないかという御意見。それから,現在の奨学金制度というのは,規模を拡大して参りましたけれども,少し貸与対象を広げ過ぎているのではないか。本来支援すべき学生,学習意欲のある本当に支援すべき学生に絞って,むしろ給付をするべきではないか。その際には当然,中村委員も心配されていたことですが,専修学校の学生であっても,優秀な学生に対しては基準を設けてきちんと給付するべきではないかという御意見を頂きました。
 それから,少し飛ばしまして,3ページ目の小林先生から,給付奨学金の必要な理由というところの理論武装を10点ほど頂きました。給付奨学金の必要な理由としまして,まず低所得層ほど,やはり借りるローンの負担感が重く,借りるぐらいであれば進学を諦めようというローン回避傾向があるので,こういったことを防ぐためには給付奨学金が有効ではないかということ。現に,現在の貸与奨学金は,低所得者層にこれ以上拡大する可能性が低いということからも給付が必要ではないかということ。
 それから,給付奨学金の機能として,所得再分配機能があるということ。
 それから,優秀な学生への顕彰も有効であるということ。
 それから,給付奨学金は,貸与奨学金と違って回収のコストが不要ということがメリットであるけれども,その代わり,支給の公平性を担保するためには,支給対象の選抜コストは高くなるという御指摘。
 それから,未返還の問題がないこと。これは回収が不要であることとセットかと思いますけれども。
 それから,教育は単なる消費ではなくて未来への投資,我が国の将来を支える人材の育成への投資であるということ。
 それから,給付奨学金は結局,貧困や雇用対策にも有効であるということ。
 それから,留学生に対しては給付奨学金などの支援がしっかりあるので,日本人に対する経済支援も,しっかり充実しなければならないのではないかということ。
 それから,給付奨学金は,教育費の負担が大きいことから,少子化対策という意義もあるのではないかという御指摘を頂きました。
 ざっとですけれども,大体こういったような御意見を前回から頂いております。また先生方から補足がございましたら,後ほどお願いしたいと思います。
 本日御議論いただきたい中間まとめについて,事務局で案を作成しているものを机上資料として配付をさせていただいております。傍聴の方には資料2の骨子しかないのですけれども,メーンテーブルには机上資料として中間まとめの案を作成しておりますので,これをまず,こちらから御説明させていただきたいと思います。
 1ページ目が骨子の部分になるわけですけれども,ここは前回,骨子のようなものをお配りしたときのものとそれほど変わっていません。まず学生の置かれた経済的状況を概観した上で,学生への経済的支援の目指すべき方向性──その意義ですとか,将来的な方向性を踏まえた上で,そのⅢとして,現行の各制度の改善方策をそれぞれ見ていくという構成になっております。
 2ページ目から,まずは現在,学生の置かれた経済的状況の概観でございますけれども,ここも前回の資料と大分重複しますので,ざっと御説明させていただきます。まず大学の在学者の経済状況ということですと,我が国の世帯収入は減少している一方で大学の授業料の負担は上昇しておりますので,負担感も重いということ。それから,学生の多様化が進んでおりまして,例えば社会人学生の受入数が,専修学校を中心にですけれども,増加傾向にあるという状況がございます。
 こうした状況を踏まえて,現在,我が国の学生への経済的支援がどういう状況にあるかということですけれども,文部科学省におきましては,意欲と能力のある学生が安心して修学できるようにということで,まずは日本学生支援機構の奨学金事業,それから国立大学や私立大学の授業料減免等の公的支援というものがございます。それから,TA(ティーチング・アシスタント),RA(リサーチ・アシスタント)に関する経費の支援ということも実施してきております。特に奨学金ですとか授業料減免は近年,受ける学生が増加しているという状況にございます。
 それから,学生の卒業後の状況ですけれども,非正規雇用が増えておりまして,このため,高等教育機関を卒業しても,現在その3分の1が年収300万円以下にとどまっているというデータもございます。これは専業主婦などを除いた有業者のデータですので,結構厳しい状況にあることを示していると思いますけれども,こういった現状があるということです。
 こうした状況から見える課題としまして,厳しい経済環境に置かれる者が今日の学生には少なくないということ。特に生活保護世帯ですとか母子家庭世帯,それから児童養護施設の入居者等,特に経済的に厳しい世帯は,例えば中退率が高いですとか,大学等への進学率も一般に比べて低い傾向があるという状況がございます。ただ,いかなる状況にあっても,学生が安心して高等教育段階に進めるような仕組みの充実が急務であるということです。
 それから,我が国の学生の学習時間が,国際的に比較しても相対的に短いという実態も踏まえますと,特に経済界などからは,こういった奨学金等の経済的支援を活用しながら,在学中の学修にインセンティブを付与するといったことも考えるべきではないかという御意見もあるところでございます。
 次に,4ページ目に参りまして,学生への経済的支援の目指すべき方向性です。まず学生への経済的支援の意義でございますけれども,奨学金等は,そもそも憲法や教育基本法の保障する教育の機会均等ということから国が責任持って取り組むべき責務であるということ。それから,高等教育の受益者は学生本人であると同時に,我が国の将来を担う人材育成という観点からは,社会全体が受益者であるとも言えますので,学生の学びを社会全体で支えることが必要だと,そういった意義もございます。
 2ポツの将来的に目指すべき方向性ということですけれども,こうした重要性に鑑みまして,各国においても給付型奨学金を始めとして,学生に対して各種の経済的支援策を展開しております。我が国も昨年,国際人権規約A規約の第13条で,無償教育の漸進的な導入という,これまで留保していた条項を撤回しまして,引き続き高等教育の無償化に向けて漸進的に導入を目指すことが求められるという状況でございます。
 このために,漸進的導入ということでございますけれども,ステップとしましては,まずは授業料減免等の給付的支援を充実していくことによって学生の負担の軽減を図るとともに,現行の日本学生支援機構の貸与奨学金制度につきましては,アとイ,2つ分けて書いておりますけれども,まず奨学という観点から,経済的事情により修学が困難な学生に対しては,とにかく進学や在学中に必要な学資を確実に提供すること。その上で,貸与奨学金に関しては将来の返済の仕方をより柔軟にする。例えば所得連動のような形で柔軟にすることによって,将来の返済の不安を払拭することが必要であるということ。それから育英の観点からは,特に優秀な成績を収めた者へのインセンティブとして,奨学金の返済の免除といった制度を充実していくことが必要ではないかということでございます。
 こうした大きな方向性を踏まえた上で,現行の制度ごとに改善方策をまとめております。
 まず5ページ目の1ポツで,貸与型奨学金の在り方についてでございます。機構の貸与型奨学金は事業規模を近年急速に拡大させてきたわけですけれども,現状の課題としまして,この貸与規模の拡大というのは主に有利子奨学金の大幅な拡大によって達成されておりますこと。それから,現在の学生の在籍状況を見ますと,社会人学生の在籍割合が諸外国に比べて圧倒的に低いといったような状況にも留意する必要がございます。
 これを踏まえて,今後の取組の方向性としましては,まずは先ほどの有利子奨学金の話ですけれども,やはり教育の機会均等という観点からは,機構の貸与奨学金は無利子奨学金が本来の姿であって,有利子奨学金はその補完的な役割を果たすべきものであるということが,これは有利子奨学金が導入されたときの育英会法案に対して衆議院,参議院両方の附帯決議でもそういったことが言われておりますので,こういった原則に立ち戻って,無利子奨学金を基本とする姿を目指すべきであるということ。
 それから,先ほど社会人の在籍割合の話もございましたけれども,高等教育機関在籍者の多様化ですとか,支給対象の拡大に伴って,基準の検証等が求められるということでございます。
 これを踏まえて具体的な取組として,次のページに行きまして,無利子奨学金の拡充ですとか,社会人に対する奨学金の充実といったような多様な学びのニーズへの対応が具体的に取り組むべき事項として挙げられるのではないかということでございます。
 次に,現行の制度の改善方策の2つ目でございます。貸与型の支援方策の返還の方法についてですけれども,返還者の経済状況に応じた返還方法を充実していくべきではないかということです。現状と課題というところですけれども,現在,機構の奨学金の返還に当たっては,特に経済状況も厳しいことから,返せるのに返さないというだけではなくて,真に返還が困難な経済状況にある者もいるということで,より柔軟な返還制度ができないかという,そういったことを求める声が増えている状況にございます。
 この点,昨年度,平成24年度から「所得連動返済型の無利子奨学金制度」というものを導入しているわけですけれども,これは,そもそも借りるときに世帯年収が300万円以下の方が対象となって,しかも卒業後の年収が300万円を下回る場合のみ,その所得に連動して返還期限が猶予されるという制度でして,やや限定的な範囲で返還額が所得に連動しているというのが現状でございます。
 今後の取組の方向性としましては,返還が厳しいといっても,やはり借りたものは返すことが原則であるということは言うまでもないことですけれども,ただ,真に返還が困難な状況にある者に対しては,より柔軟な返還方式を導入していくことが必要ではないかということ。
 「所得連動返済型の無利子奨学金制度」,現行の制度をより柔軟化していくためには,社会保障・税番号制度によるスキームも活用して,制度設計をしていくことが必要ではないかということでございます。
 具体的な取組としましては,より柔軟な返還方策ということで,例えば延滞金の賦課率の見直しがあります。現行,延滞金の利率が一律10%ですけれども,これが非常に重くて返還のネックになっているという声もあることから,この率の引下げですとか,また段階的な賦課方式ですとか,工夫の余地があるのではないかということがございます。
 それから,例えば現行の減額返還制度。これは額を減らして,その分,期間を長くして返すという制度でございますけれども,それから現行の猶予制度も柔軟に運用していく必要があるのではないかということ。
 それから,先ほどより申し上げていました「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を,より柔軟な制度に改善するための準備。これは,やはり,これまでの返還方式の考え方を大きく変えることになりますので,少し時間が掛かることになるかもしれませんけれども,例えばその準備にはシステム開発等も必要になることから,制度設計とシステム等の整備も同時並行的に進めるなどの取組が具体的に必要になるのではないかということでございます。
 それから,現行制度の改善の3つ目としまして,給付的な支援についてでございます。現状と課題について,我が国では高等教育段階での給付的な支援としまして,大学等の授業料減免が行われているわけですけれども,給付型奨学金は財源等の問題から現在我が国では導入されておりません。ただ,国際的にみますと,先進諸国では,給付型奨学金制度のない国は見られないというのが現状でございます。
 現に,我が国の高等教育への進学率の状況等をみますと,例えば4年制大学への進学率と家庭の経済状況には,一定の相関が見られるということですとか,それから,特に経済的,社会的に厳しい状況にあるような,児童養護施設に入居されている方などの進学率をみますと,やはり一般に比べて著しく低い状況もございますので,家庭の経済的状況が進路選択に一定の影響を与えていると考えられる現状がございます。
 今後の取組の方向性としましては,やはり親の経済格差が子供の教育格差として引き継がれることのないように,きちんと給付的な支援を充実していくことが重要な課題でございまして,ただ給付的な支援には様々な形態が考えられますので,以下箇条書になっておりますけれども,論点をよく検討した上で制度設計を行う必要があるということでございます。
 例えば受給のタイミングですけれども,奨学的な制度ですと,将来の予見性を持って,安心して進学できるということから,事前給付──入学時や進学前に受給判断ができるようなものと特に親和性が高いわけですけれども,育英的な制度,在学中のインセンティブを重視するようなことを考えますと,卒業時ですとか,事後的に受給できるかどうかを判断できるような制度が親和性が高いわけでして,どういった制度設計が望ましいかという観点。
 それから,そもそも支給基準を定めるに当たり,制度のターゲットをどういった層と考えるかということですけれども,経済状況を重視した基準とするのか,それとも学業成績を重視するのか,どの程度重視した要件とするのかといった論点がございます。
 それから,給付の内容としましても,まずは修学に必要な費用である授業料や教材費。それからもう少し広がっていくと,例えば下宿代ですとか,通学費。更に広がっていきますと,生活費のようなところまで広がっていきますけれども,どういった範囲の金額を給付することが適切なのかという論点がございます。
 それから,実施方式ですけれども,まず受給対象者の判定。特に成績要件を評価する主体を前回,例えば大学の連合体のようなことではどうかという御意見も頂きましたけれども,誰がどのように判断するのかということも1つ論点となります。
 それから,現行の貸与奨学金は日本学生支援機構を通じて支給しているわけですけれども,これも各大学を通じた支援もあり得るのではないかということ。
 それから,各大学を通じ,教育と連携した取組として,学内のワークスタディーですとか,TAやRAとしての給付ということですと,大学の機能の充実に資する点にも意義が大きいので,このような取組も同時に考えていくべきではないかというような,こういった論点もあろうかと思います。
 また具体的な取組ということで,こういった方向性を踏まえまして,以下のような事項から取り組むべきであるというところですけれども,まずは学資の本質的部分である授業料。この授業料の減免を引き続き拡充することが,必要であろうということ。
 ただ,留意すべき点がございまして,現行の授業料減免制度は国立大学と私立大学の間で公的支援の割合等に差があるということですとか,また私立大学に関しましては,私学助成でやっており,大学に負担が生じますので,大学によって学生が受けられる経済的支援に差が生じるということ。それから専修学校専門課程においては授業料減免措置が公的支援の対象とされていないことなどを踏まえますと,授業料減免制度も含めた給付的な支援策の在り方を将来的に,全体としてよく考えることが必要ではないかということがございます。今の話が授業料減免の拡充ということでございます。
 それから,奨学金その他の経済的支援につきましては,目的やターゲットに応じた制度改善を図っていくことが必要ではないかということ。例えば先ほどより申し上げております,児童養護施設の児童ですとか,特に経済的に困難な層への給付的支援を充実すべきではないかということですとか,それから卒業時の返還免除というものが,現在大学院だけでやっておりますけれども,より広く免除対象とすべき層がないかどうかなど,対象や分野を検討していくことが必要であるということがございます。
 こういった制度改善を検討する際には,学生の教育効果という観点も加味しまして,例えば学内のワークスタディー等を組み合わせた,より効果的な経済支援策という観点からの検討も十分検討が必要ではないかということでございます。
 それから最後に,この現行の制度の改善策というところにうまく入らなかった,その他の検討事項ですとか,将来的に改善すべきことを何点かまとめております。8ページの一番下からですけれども,奨学金制度についての情報提供ですとか,金融面のリテラシーの向上が,もっとしっかり必要ではないかという御意見を何度か頂いているかと思います。高校生やその保護者に対してきちんと情報提供ができるように,高等学校の教員への情報提供の徹底が重要であろうということがございます。
 それから,学生への経済的支援策を考えるに当たりましては,この奨学金ですとか授業料減免のような金銭的支援だけではなくて,例えば学生寮の提供ですとか,それから税制優遇ですとか,総合的な支援策を検討することが効果的であろうということがございます。
 それから,大学院生への経済的支援ですけれども,特に人文・社会系の分野など,経済的な不安が大きいという実態もございますので,意欲と能力のある学生が引き続き,大学院に進学,修学することができるように,大学院生への経済的な支援の在り方についても引き続き検討が必要ではないかということ。
 それから最後に,民間奨学金との関係でございますけれども,奨学財団と,民間団体におかれましては,団体の理念に基づく独自の奨学金事業というのをきめ細やかに行っていただいていますので,これはまた給付的な支援によるものが多いといったことからも,公的な奨学金と互いに補い合う関係にあるのではないか。国としましても,こういった情報を例えば一元的に集約することや,民間団体の活動が円滑に行われるように対応するなどの支援が重要な課題ではないかということがございます。
 最後に10ページ目,結びとしまして,今回,何回かにわたった議論をここにまとめたものでございます。最後の部分,2段落目でございますけれども,ここでこれまで議論してきたとおり,経済的状況に関わらず高等教育段階で学び続けられるようにするためには,高等学校段階ですとか,それ以前の段階における家庭や学校の教育的指導や公的支援の影響も極めて大きいので,早い段階からの一貫した総合的な政策立案が求められるのではないかということ。
 今回はこれで一旦,中間まとめということにしますけれども,これまでの検討で残された課題と併せて,こういった総合的な政策立案について引き続き検討を進めることを期したいということで結んでいます。
 以上でございます。

【小林主査】  ありがとうございました。今の説明につきまして御意見,御質問等ございませんでしょうか。

【前原委員】  よろしいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【前原委員】  全体的には,とてもいい中間報告になっていると思います。評価できます。
 それを踏まえた上で,2点だけお話ししたいのですが,1つは今,経済同友会では被災地3県の実業学校を中心に支援をしています。半年で2億5,6千万円ずつ集めて,実業学校の,農業学校でしたらトラクターやバスなど,それから水産学校でしたら船などの支援をしています。私もよくそういうところを回っていますけど,半分ぐらいが地元に就職するという方針でやっているんです。
 そういう子供たちを見ていると,意欲もあるし,非常に良い子供たちが多いのですが,就職した後,更に上の勉強ができる環境というのが,残念ながら,昔に比べると非常に減ってしまっているのではないかと思います。昔は,東京にいらっしゃる公務員の皆さんも,地方から来て,夜学に通っている方がたくさんいらっしゃったと思うのですが,そういうのが減っていると思うんですね。そういう真面目に働いて学びたいという子供たちに対して,もう少し機会を増やすという工夫をしていく必要があるというふうに感じています。それから,その支援ですね。
 今,例えばアメリカなどでもコミュニティ・カレッジというので四割ぐらいがeラーニングで勉強しているわけで,例えば東北3県などの国公立大学でも,eラーニングをもう少し充実していけば非常に役に立つと思います。IT戦略で配った資金というのは,ほとんど,eラーニングに役立っていない。eラーニングが効果的なものになっていないのです。
 ですから,その辺のところ,もう1回,文科省でも見直していただいて,工夫していただくといいのではないか。中間まとめの最後のところで触れていただいていることだと思います。
 もう1点は,非正規で働く人が非常に増えてきたために,我が国でも貧富の差が非常に広がっていますね。ジニ係数で見ても,昔は2.6から2.7ぐらいだったのが,今は3.4から3.5になっている。急速に貧富の差が広がっていると私は思います。諸外国もそうなんです。中国などは,もっとひどいのですが。しかし,日本という国の在り方を考えると,これは決していいことではないとずっと思っています。
 ティーチ・フォー・アメリカという活動がありますよね。皆さんも御存じだと思います。あれが活動していると聞いたときに,アメリカはスラムなどがあるので普通だろうと思ったのですが,日本は所得階層の低い世帯が,あるところに集中してということは余りないんですよね。だから難しいかなと思ったら,実はティーチ・フォー・ジャパンというのがスタートしていて,この間,興味があったので,活動している方に来てもらって話を聞いたのですが,そうしたら,何と私が住んでいる奈良に派遣しましたと。
 はたと気が付いたのですが,奈良県や和歌山県には同和地区というのが昔からありました。私も住んでいるので分かるのですが,たまたま私の娘が,その同和地区も含んだ小学校の教員をしていたことがあって,非常に難しい家庭状況にある子供が多いということを娘からも聞いていました。今回,そういう地区のあるところの学校に派遣したということを聞いて,なるほど,そうかと。今の日本でも,そういった活動が非常に有益かもしれないということを強く感じています。
 ですから,そういった貧富の差が,日本の場合は諸外国のスラムのような形ではないのですが,今起きているということを踏まえて,もっと我々ができることがあるのではないかと思いますので,その辺の配慮も必要だと思います。ティーチ・フォー・ジャパンは,まだスタートしたばかりですけど,是非日本の若者があのような組織に入って,教育の場でも頑張ってくれるといいなと思います。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 今のお話を,少し補足したいのですけれど,やはり高校段階と学部段階で,まず奨学金が都道府県と日本学生支援機構に分かれてしまっているということで,お互いの関係が現在,直接はないのですね。ということは,学生からすると当然,高校で借りて大学で借りるということもありますから,全く今,返還免除がないような状況をどうするかというのが1つ問題だろうと思います。
 それから,何回も出てきていますように,情報リテラシーといいますか,高校段階からもう少しそういった教育をきちんとしていくということも必要だと思います。
 もう1点は,後半の前原先生のお話に関係するのですが,やはり日本は中間組織というのが非常に弱いと思います。こういった中間組織を育てていくことによって,学生支援だけではなくて,いろいろなことができると思うのですけれど,そういうことをどのように考えていくか。これは大きな問題だと思います。
 学生支援に関して言いますと,例えば松本先生のところの民間育英団体とか,そういった活動をもう少し支援していく方法はできないのかとか,そういうことが考えられてもいいのではないかと思っております。
 2点補足させていただきました。
 相川先生いかがですか。高校の問題に,少し入っていると思いますので。

【相川委員】  中間まとめとしては今までの議論が網羅されているなという感じがしております。特に私自身が児童養護施設に勤務していた経緯もありまして,児童養護施設の子供たちの大学進学率は非常に低いです。また,その児童養護施設の子供たちが大学へ進学して,卒業して,そして更に社会に自立してとなると,金銭的なバックアップもそうなのですが,いわゆる精神的にフォローする体制がしっかりとれていないと,やはり途中で潰れてしまうんですね。
 そういうところがあるので,今回この中に児童養護施設の入所児童に対しての支援を盛り込んでいただいたということは,まずは1つクリアしていけるのかなというふうに思いますが,少し具体的な話になると,結局,児童養護施設の子供たちも,いざ奨学金ですとかいろいろなものを借りるとなると,保証人の選任ですとか,そういう問題が非常に難しいんです。保証人のなり手がいないんですね。そこの施設長が全部の卒業生の保証人になれるかといったら,なれないんです。細かなところも具体的に制度設計をしていくということであれば,そういうところも問題になるのかなというふうに思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。今の保証人の問題ですが,日本学生支援機構の方で,機関保証はないのですか。

【月岡理事】  児童養護施設の子供で,保護者の同意等がとれない場合には特別な扱いを認めておりますし,それから保証の方も機関保証で対応しております。

【小林主査】  ありがとうございました。
 本日は御自由に議論をということなのですが,今までどうしても大学に手厚くといいますか,議論が大学のことが多くなっておりまして,最後に近くなって参りましたので,いろいろな立場から御意見を頂きたいのですけれど。
 松本先生,民間について,今の話の流れで,私の方は非常に重要だと思っていますので,是非,御意見を頂きたいのですけれども。

【松本委員】  今回の中間まとめ案,今お聞きしていまして,民間の役割のようなものにも大分触れられているということで大変いいことだと思います。私どもが長い間,貸与型でやっていたものを給付型というのに変えましたのも,やはりベースには育英ですとか,そういった理念的なものももちろんあったわけなのですが,もう一つは,正直申し上げて,現行の国の奨学金制度は,有利子の問題も含めまして,かなり拡大されて行われているということです。
 そういう中で何人かの学生さんたちに,面接のときなどに聞いてみますと,やはり返還の問題について,民間も貸与型,国はもちろん貸与型,となりますと,卒業のときにかなりの負担で,えっ,そんな額になっちゃう,そうだよねという話が多かったわけです。
 そういう意味で,民間の役割のようなものとして,いろいろな民間の団体の方とお話ししますと,やはり給付型であるというのは,返還の負担の問題が大きいと思います。その上で,各団体のいろいろな人材育成の理念が給付型を通じて実現させています。
 ですから,今回の中間まとめ案の中で示されています,そういった民間の役割のようなもの。これを,やはりもう一度考えていただいて,本日で検討会も3回目になりますが,私自身が今ここへ座りながら思っておりますのは,少し民間団体同士の交流などもしながら,できれば,それは文部科学省の一定の支援や支持の中でやった方が,どんどん話合いも進むと思いますので,そういったことも必要かなということです。
 それから,もう一つ言いますと,この中間まとめ案全体の前に,昨年,日本学生支援機構の在り方に関する検討会に出させていただいておりますけれども,一貫していろんな問題が検討会の中で整理をされていて,一定の方向付けができているのかなと思います。
 ただ,私は給付型論者みたいなことを再三申し上げているわけなのですけれども,給付型について若干まだ玉虫色といいますか。国として給付型を選ぶというのは,税金を使う話ですから,もちろん大変な,真二つになるぐらいの論議があるのは十分分かっているつもりですけれども,それでも,こういったものに対して給付型をやっていこう,そういう検討に入ろうとしているんだという国としてのフラッグといいますか,そういうものが1つ欲しいなと思います。
 そうでないと給付型というのは,やはり,ここにいらっしゃる方でも恐らく,手を挙げてくださいと言ったら半々に分かれてしまうような,かなり大きな問題だと思います。ただし,やはり人材育成,国のリーダーシップをとる若者をこれからも育てていくんだとか,貧しいんだけども,本当に向学心を持って成績も良い子,こういった子たちをどう支援していくかということを考えますと,どうしても必要なのではないかと思っていますので,今後とも引き続きの検討をお願いしたいと思っています。

【小林主査】  ありがとうございました。
 私も奨学金のことを研究しているためかもしれませんけど,民間の育英団体から公益法人になるとき,かなり相談を受けました。そういうときに,どうして私に御相談をと聞くと,相談に行くところがないと言うのです。文部科学省に行ってくださいと言われても,文部科学省も,民間の団体は何千もありますから,全部は引き受けられない。ですから,そういった意味でも,業界団体というと変ですけど,そういったものがないのです。ですから,非常に困っているというお話は聞きました。ですから,そういうものを育成していくというのも1つの,間接的ですけれど,この問題に関する支援策だろうというふうに思います。
 それから,後半の,非常に大きな問題,給付の問題ですけれど,これはまた一通り皆さんに御意見を頂いてから少し論点を詰めていきたいと思いますので,後に回させていただきます。
 奥舎先生,どうぞよろしくお願いします。

【奥舎委員】  私は大学の広報ではありませんが,私どもの大学では卒業式に奨学金の返還に関するチラシを配っております。できるだけ奨学金は返還していただきたいと思って配っております。参考までに見ていただければと思います。
 私どもの大学は小さな大学なのですけど,公立大学83校の1つでありますし,また,公立短期大学17校も奨学金を借りているわけです。
 これに出ている8ページの具体的な取組の中で,最初に授業料の減免等を引き続き拡充という箇所があるのですが,公立大学,公立短期大学については全然述べられていないわけですね。その理由も。国立大学法人は運営費交付金で授業料減免のパーセンテージは補?されるわけですけど,公立大学,公立短大は交付税算入の需要額だけで,全く財源の明確化ができていないと。これが非常に困る点で,何とか解決したいと思っております。できるだけいろいろな団体にお願いしているわけですが,まだ全然進んでおりません。
 その結果,財政的に地方自治体も非常に厳しいですから,設置者から授業料減免と言われても,全国86国立大学,83公立大学,17公立短期大学ばらばらであります。それで,どうするかといったら,結局,事務担当者が,いわゆる自主財源の確保に努力している,教職員が努力しているということで乗り切っているような現状であります。ですから,この点も授業料の減免,給付できる公立大学の学生に対しては,こういうことが支援できるのではないかという1項目を入れていただきたいと思います。
 それから,もう1点ですが,最後のまとめに,民間奨学金との関係があります。松本先生も言われたのですが,民間奨学金と各地方自治体が出している奨学金もあるわけです。そうした場合に,この整合性が全くとれていないと思います。
 例えば自治体によっては,県立大学で看護の単科大学が多いわけですが,病院が,病院抱えで3年病院に勤務したら,毎月の10万円の奨学金は無償で返還しなくてもいいという制度があったり,またそれが病院であったり,自治体であったり,ばらばらであります。それから,日本学生支援機構と併給できる奨学金もあるし,そうでないものもある。
 先ほど松本先生が言われましたが,いわゆる民間奨学金ばかりではなく自治体の奨学金との整合性,これも先ほど連絡会議で言われたのですが,どこかが事務局,文科省でもいいですから,調査していただいて,いわゆる,併給する人は12万円,支援機構の最大月額の奨学金を借りた上に,また無償の10万円を借りているとか,22万円といったら,いわゆる中間管理職くらいのいい所得なんですね。現実には,そんな学生もいるかも分かりません。それを若いうちから,そういう経験をしたら,将来いいことになるわけないです。現実問題,奨学金を逸脱した状態になっているということが考えられるので,是非その整合性をとって,調査して,併給できる場合でも厳格な基準を作るとか,それから併給はできるだけやめて,公平にみんなに回るようにするという仕組みを作っていただきたいと思います。
 特に実学であります介護福祉や看護などの学部につきましては,そういう奨学金が多いと思いますので,そこのところをよろしくお願いしたいと思っております。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 非常に重要な論点なのですけど,確かに公立大学はこれまで全体の議論の中でも抜けていました。当然,高等教育全体のことを問題にしておりますので,これは是非同じように書き込んでいただきたいと思います。ここでは高等専門学校の代表の方が出られていませんが,高専についても同じ問題がありますし,本日は出席されておりませんけれど,専修学校専門課程ですね。これも高等教育の中に入りますので,同じように扱っていくというのは基本だろうと思います。
 それから,後半の問題なのですが,事業団体の複数から借りている学生がどれぐらいいるかというのは,日本学生支援機構の学生生活調査である程度は把握できているのですが,かつてはかなり少なかった。ただ,授業料減免を受けて,それで,なおかつJASSOの奨学金を借りて何とかやっているという学生がかなりいると思います。ですから,こういった本当に,かなり両方がないとやっていけないような学生どうするかというのは大きな問題だろうと思いますし,その場合,先ほど奥舎先生が言われた公平性という問題は少しある。以前ですと,例えば授業料減免を受けている人はJASSOの奨学金は借りないでくださいなどと,そういう指導をしている大学もあったというように聞いています。これは枠が小さいので,公平性,皆さんが使えるようにするためにということで,そういうようにしていたと聞いていますけれど,現在のところは,JASSOの奨学事業実態調査というのがあるのですが,それを見ると,併用を禁止しているところは少なくなっている。ですから,そのあたりをどのように見ていくかというのは,これは制度設計として,これから大きな課題だろうと思っております。
 本日はひとわたり論点をあげました。今のところ,これでよろしいですか。
 では,今のことに関連して少し詰めた議論に入りたいと思います。初めに授業料減免と給付奨学金の問題なのですが,確かに授業料減免は国レベルでは,公立大学にもないし,それから専門学校にもない。高等専門学校は私,すみません,知らないのですけれど。

【保立課長補佐】  あります。

【小林主査】  ありますか。はい。一部あると思うのですけれど,ただ,先ほど保立さんの方から説明がありましたように,かなりやり方が違う。特に私立大学については大学独自でやっている場合がもちろんありますけれど,国としてやっていることは私学事業団(日本私立学校振興・共済事業団)を通じてやっている事業で,これは,2分の1の補助です。
 もう一つ大きな問題は,私立大学の場合,授業料が大学,学部によって違いますから,減免額がみんな違うわけですね。ですから,国立大学に対する授業料減免とはかなり仕組みが違っている。このあたりをどうするかということが大きな問題で,私は,先ほど言われました公平性の観点からすると,これはやはり給付奨学金という形に統一していく方がいいのではないかと個人的には考えております。
 その場合,アメリカとか韓国で行われているように,授業料に充当するというやり方がある。つまり,実際には学生のところには渡らないわけです。授業料よりも奨学金の額が多ければ,もちろんそれは学生に生活費として渡せますけれど,一般には授業料の方が高いですから,授業料に充当して,学生には直接渡らない。ただし,このやり方ですと金額が,先ほど申しましたように一律になるということと,それから学生にとっては,授業料減免といいますと,お金を支給されているという感覚が余りないのに対して,給付奨学金は一応,奨学金をもらっているという形になりますので,そこが違うという,そういう2つの問題があります。
 これについて少し御意見を頂きたいのですけど,いかがでしょうか。どうぞ。

【前原委員】  今おっしゃったのは非常に大事で,私も大学を経営しているときに奨学金を黙って渡していたんですね。それはやっぱりおかしいということで,親御さんも呼んで贈呈式,みんなの見ているところで表彰のような形で渡すようにしたんです。そうしたら,親御さんや本人の意識はものすごく変わりましたね。そういう工夫というのは必要だと思います。

【小林主査】  ありがとうございます。私が関係している奨学金の民間団体でも,やはり同じようなことがありまして,極端に言いますと,今の授業料減免の方式というのは,学生の顔は見えない。

【前原委員】  はい。自動的に行ってしまいますから。

【小林主査】  自動的に行ってしまいますから。そういうやり方は,やはり出している方からしても学生の顔が見えないという問題がありますし,学生の方も逆にそういう,意識を余り持たないという問題がありますので,そのあたり,少し工夫が要るのではないかということです。

【前原委員】  そうです。

【小林主査】  ありがとうございます。ほかに御意見,いかがでしょうか。
 奥舎先生,公立大学側からすると,今のような方式に変えれば,公立大学も同じような形でなると思いますが。

【奥舎委員】  そうですね。国立大学法人の授業料減免は,去年は8%でしたかね。

【小林主査】  8%ぐらいです。

【奥舎委員】  8%。その分の補?は,やはり運営費交付金でしているということと,公立大学にはそれがないとすると,私は公平性を保つには,公立大学には無利子の奨学金を増やすのがいいのではないかと。授業料の減免よりは,そういう方がいいのではないかという感じがしております。
 ですから,例えば各83の公立大学,17の公立短期大学があります,大学によってどの程度の減免率になっているか分かりませんが,そこのところ,何かいい解決法がないかなと思っております。

【小林主査】  中村先生からも無利子の方を増やすという話は意見としては出ておりまして,それも確かに1つの解決策といいますか。中間まとめの中でも無利子が根幹であって,無利子の確立は非常に重要なことだということは書いてあると思うのですけれど,ただ,おっしゃるように財源の問題がありますから,両方拡充するのは難しい。優先順位をどうするかと,そういうようなことだと思うのですけれど。ただ,授業料減免については,先ほど少し申し上げましたように,今のところ,国立と私立については,形は違いますけれど財源はあるわけです。

【奥舎委員】  そうですね。

【小林主査】  ですから,それをもう少し配分のやり方を変えることはできないかということなのですけど。

【奥舎委員】  公立大学はどうですか。

【小林主査】  公立大学を含めてです。あるいは高専とか,ほかのところも含めてです。

【奥舎委員】  私も詳しくは分かりませんが,平成6,7年ごろ,いわゆる医系ですか,医系,看護系の備品整備に何か補助金があったんですかね。文部省の。

【小林主査】  はい,あります。

【奥舎委員】  ありましたね。

【小林主査】  私学に対して。

【奥舎委員】  私学も公立もありました。

【小林主査】  公立はよく分かりません。

【徳久理事長代理】  公立もありました。

【奥舎委員】  たしか,ありましたね。そういう制度でも,いわゆる授業料減免のパーセンテージに至らないのは,交付税ですとか,その係数で操作するような財源補?ではなしに,具体的な数値で補助金を交付できるとか,そういう目的のようなものがあればはっきりすると思うのですけど。それ以外でしたら,やはり公立大学の学生には,その恩恵があるような制度。例えば私どもの大学,仮に3%の学生しか授業料減免をしていなかった場合,5%は,もう外れるわけですね。その分は金額的に数値を出して,どういう方法で財源補?するとか,無利子の奨学金を充てるとか,何かいい方法はないかという考えは持っているのですけど,なかなか知恵が浮かばない。

【小林主査】  学生側からすると,やはり一番恩恵が大きいというのは当然,給付奨学金のような授業料免除で,次が無利子奨学金,有利子奨学金という順序だろうと思います。ですから,現在,その3つを組み合わせているわけですけれど,その組合せのバランスをどうするか,そういう問題だろうと思いますね。

【前原委員】  やはり授業料免除や給付型みたいな表彰される形のものの方が,本人の就職上は非常に有利になるでしょうね。

【小林主査】  この前の議論ですと,そういった顕彰的な意味合いを持たせるような奨学金というか,学生支援を考えるのは非常に重要なことだろうというお話でしたので,それは考えていいと思います。
 その場合,少し具体的になりますけれど,では,どういう形で選ぶのかというのが一番重要な問題になってくるわけで,現在の授業料減免というのは,国立でいいますと,大体経済的な要件が一番重要でありまして,法人化してから大学によってやり方が少しずつ変わって,東京大学でいうと所得が400万円以下の層は自動的に対象に入るというやり方をしていますけれど,従来のやり方もとっております。成績要件も入っているということです。
 そういった様々な方法を工夫されるというのは,前回の御意見ですと,大学にある程度,あるいは大学連合に任せていいのではないかという御意見だったと思います。
 例えば現在,JASSOの第一種奨学金については,大学推薦の場合,順序を付けて推薦を出してくるわけですよね。ですから,そのうちの上位者については,これは給付奨学金に当たるとか,あるいは予約型の返還免除の対象に当たるとか,そういうふうに考えるのも1つの方法だろうと思います。高校推薦の場合でも同じようなことができますので。
 それは,あとは財源で,どれぐらいの人数ができるか。あるいは金額と人数の組合せの関係になりますから。あとは具体的な予算が決まれば決まる話だと思いますので,そういった形も1つ考えられるのではないかと思います。

【相川委員】  よろしいでしょうか。

【小林主査】  どうぞ。

【相川委員】  恐らく,その公立大に授業料減免などの制度が余りないというのは,分からない保護者が多いのではないでしょうか。というのも,私自身も今一瞬えっと思いました。本当に国立大学などは授業料の減免ということを耳にしていますけど,公立大,公立短大の減免など,先生がおっしゃったようなものについては聞きませんので。

【奥舎委員】  一応,文科省の方からは,国立大学法人に準拠したという方針は出ます。出ますが,実際の実務としては非常に難しい。なぜかというと,財源補?がないからですね。
 各都道府県にしても,政令指定都市にしても,私どもみたいな小さな市の設置者にしても,非常に今,地方自治体は厳しいですから。財政当局も,そのとおり,それならばというわけにはいかないと思いますね。

【相川委員】  大きな意味で高等教育という観点からすると,たまたま大学の種別というか,国立だったり,公立だったり,私学だったり,専修学校だったりという種別はあるけれども,先ほど先生がおっしゃったように,大枠の高等教育ということからすると,やはり公平性というところは,きちんと担保しておく必要があるのかなという気がするのですけど。

【奥舎委員】  私は,国公私立関係なしに,大きな目で見た場合,高等教育に差別はない方が良いと思っています。そういう奨学金にしても,授業料減免にしても。私は,そう思いますけど。

【相川委員】  私も,それは,そうあるべきかなというふうに思いますけど。

【小林主査】  ありがとうございます。それはおっしゃるとおりだと私も思います。ただ,現実の問題として公立大学は地方自治体の所管ですので,そういう形になってしまっています。今言っているのは国としての事業がない。要は,地方公共団体に任せられてしまっているということです。その場合,当然,地方公共団体はかなり財力に差がありますから,そこで差が出てしまっていると。

【奥舎委員】  変な言葉があるんですよ。よく言われますけどね。皆さん,御存じだと思いますけど,公立大学,公立短期大学に対して,文科省は口は出してもお金は出さない。総務省は公立大学を所管しているわけですが,お金は出すけど口は出さない。だから,今現在,非常に中途半端な位置で公立大学の立場があるわけです。
 ですから,公立大学協会も無理なお願いを言ったりすることが多いんですよ。松尾課長のところで,いろいろ努力されていると思いますが,非常にアンバランスな立ち位置にいるという状態である。これは事実です。

【小林主査】  松尾課長,どうですか。

【松尾課長】  恐らく,先生方が言われるように,学生の観点からすれば国公私,みんな大学ですから同じだと思うのですが,お金でいうと,所管が違うので,これはひとえに機関に補助するのか,個人に補助するのかということだと思います。機関に補助して学生の負担軽減ということになると,これは国立と公立と私立は,それぞれに成り立ちが違うので,機関補助は別々の方法になるのですけれども,小林先生が言われたように,例えば学生という視点で,学生に給付型や無利子奨学金を与えるということになれば,これは国公私,関係ないんですね。あと使い道として,例えば私が学生だったときに,給付型奨学金をもらっていたのですが,まず私の口座に入るのではなくて,先に大学の方に行って,授業料が天引きされる。これは国公私とも一緒ですから,天引きされて,残れば私のところに来る。ほとんど授業料分なのですけど。そうすると,学生を支援するけれども,まずは大学にお金が行ってということで,これは学生の観点からは違和感のない,小林先生が言ったアメリカの給付型のタイプだと思います。
 したがって,そういうふうに変えるのか,機関補助でいくのか。これは恐らく,財源の問題で違ってくると思います。
 あと,もう一つ言いますと,やはり給付型も,対象者を誰がどう判断するかと考えるときに,この資料3でありましたように,例えば実務を大学や専門学校がやるということになると,一番簡単なのは恐らく,大学に人数を割り振ることなんですね。例えばA大学には何人分,B大学には何人分と割り振ることだと思います。そこで中村先生が給付型奨学金に対して,一番心配しているのは,国立大学に人数が多く割り振られて,専門学校には割り振られないのではないかということだと思います。恐らく,給付型をやった途端に,国立大学ばかり給付型になって,専門学校へ回ってこないのではないかという御心配を。したがって,割り振るときも,学生本位で割り振るのか,機関に割り振るのかによって恐らくやり方が異なってくると思うので,そこはよく工夫をする必要があると思っています。

【小林主査】  ありがとうございました。先ほど少し申し上げましたけど,それぞれが,現在も推薦枠は持っているわけですよね。

【松尾課長】  はい。

【小林主査】  ですから,それで給付型とか,あるいは予約型返還免除みたいなことを考えれば,今の問題はクリアできるのではないかと思います。
 問題は,高校推薦ですと,どうしても成績がいい子になってしまうとか,そういうことはあるかもしれませんけど,それは高校推薦と,大学などの機関推薦と両方組み合わせていくことで,ある程度できるのではないかと思いますね。
 それから,前回ですと,一律の試験ですね。例えば大学入試センター試験のようなものを使うことについては皆さん,余り賛成なさらなかったし,これですと確かに,かなり成績のいい人だけということになってしまいますから。その点についても,中村委員が懸念されているようなことは多分起きないのではないかと思います。
 今の支給基準の問題は具体的な問題で,すぐにできる問題ではないので,これから十分詰めていっていただきたいと思います。もう一つ,先ほど少し言いましたけど,私立大学については今,2分の1の補助です。

【松尾課長】  上限がですね。

【小林主査】  はい。それで,あとはそれぞれの大学が出していると,そういうやり方をとっていますので,これは国立大学に対する補助とは全くやり方が違います。恐らく,私学事業団を通じていますから,予算の付け方も違いますよね。その辺を一元化できるかどうかということなのですけど,これはどうですか。

【松尾課長】  やはり国立大学と私立大学の成り立ちが違いますので,恐らく,機関に対する補助の仕方については一元化できないと思います。ですから,あとは,それを学生本位でもって奨学金という形に全部変えてしまうとかということですけれども,そうすると国立大学の運営費交付金の授業料減免分を吸い上げる,私学の授業料減免分を吸い上げる。現在これは,25年度予算でいえば,たしか9.3%ぐらいだったと思います。

【小林主査】  増えていますね。

【松尾課長】  私学は額にすると数万人分で,パーセントにすると1%ほどだと思いますので,それを吸い上げ,今度は機関補助でなくて個人にということですので,今までの方式をドラスティックに変えることになります。これには少し繊細な議論が必要になってくるのではないかと思います。これは将来的な課題としてあると思いますが,すぐにできるかというと,そこは学校の成り立ちが違いますので,厳しいような気がします。

【小林主査】  法令の改正も必要ですよね。私学事業団の事業の中身を変えるわけですから。

【松尾課長】  はい。

【小林主査】  その点いかがですか。方向性の問題ですけれど。授業料減免という形よりも給付奨学金という形で一元化した方がいいのではないかということなのですけど。

【松尾課長】  あとは授業料減免でやるとき,先生が言われたように,私学の場合は建学の精神があって,どういう方に免除するかというのは相当,その機関によって異なる考え方でやっていると思うんですね。ですから,恐らくそれを根本的に変えるかという議論になります。
 ただ,変えないのがいいのかとか,変えた方がいいのかとか,そこは私学の方々含めて,よく議論していかないと難しいかもしれないですね。

【小林主査】  そうですね。本日は私立大学の方もいらっしゃっていませんし。ただ,前回の議論で言いますと,大学にある程度基準を任せると。ただし,その基準について透明性を十分に確保して,社会的な説明責任を果たす形で行いたいということだったので,その問題はそれほど大きな問題ではないというふうに私は思うのですけれど。
 それはいかがでしょうか。方向性の問題ですけれど,給付型と授業料減免。急にはできないということはよく分かっていますので,方向性としては,これを学生支援という観点から再検討するということなのですけど。

【松本委員】  これは奨学金制度の本来の目的からしても,給付型の導入は授業料減免という形よりも,やる意義はあると思うのですけど。授業料減免でインセンティブやモチベーションを出していくというやり方もあると思うのですけれども,やはり明快に,先ほど私が言ったフラッグ的な意味から言っても,きちんと給付型という形にした方がいいのではないか,その方が,やはり学生の感謝の気持ちとか,そういうのも出てくるのではないかなと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。

【相川委員】  私も将来的には,いろいろな整理をしなければならない,本当にいろいろな課題があるのだと思いますけれども,基本的に学びたいと思う学生に対して支援をしていくということ,そして支援を受けた学生は,それを受けて,きちんと自分のレベルを上げて還元していく,社会に還元するという考えを持たせていくというのであれば,その学生に対しての給付型という形の方が,私はいいのかなというふうに感じますけど。

【小林主査】  ありがとうございました。いかがでしょうか。

【奥舎委員】  いいと思います。

【小林主査】  ですから,これは今後の検討課題ということで,よろしくお願いいたします。
 今の話に関連するのですけど,先ほど少し申し上げました予約返還免除という考え方ですけど,これについて,よく考えてみますと,授業料減免などの今の申請の方式というのは大体学期ごとの申請です。一方でJASSOの奨学金というのは4年間保証されますので,この単位を4年で考えていますけれど,細かく見ていったら,予約返還免除と給付は余り変わらない。
 つまり,例えば学期単位にしますと,学期の頭で認定するか,それとも学期が終わってから適格認定みたいにして認定するかと,そういう問題になりますので。その辺も含めて,同じような形で制度設計できるのではないかと思います。
 これも,すぐにできる問題ではないですけれど,同じように適格認定の在り方と含めて考えていけばいいのではないかと思います。
 よろしいでしょうか。

【相川委員】  ちょっと確認をというか。

【小林主査】  どうぞ。

【相川委員】  いつ頃の新聞でしたか,在学中の状況によって奨学金をストップするというような報道があったと思うのですが。

【小林主査】  ありました。

【相川委員】  ありましたね。そのことについて少し教えていただければと思うのですが,それはどなたに聞けばよろしいでしょうか。

【小林主査】  JASSOの方から,適格認定制度についてお願いいたします。

【月岡理事】  日本学生支援機構の奨学金には年に1回行う,適格認定という制度があります。仕組みとしては,学年の終わりに,来年度も奨学金が必要ですかということを聞きます。必要である人は手続をとってください,必要であるという申告をしてください。その上で,1年間の成績などに基づいて,来年度も奨学生としてふさわしいかどうかということの判断をいたします。その判断の結果に基づいて,厳しい方から言いますと廃止,停止,警告,激励,継続という処置をとります。
 それで,例えば,もう留年が決まっている,標準修業年限で卒業できないことが明らかだといった場合には,学校長から廃止という報告がされます。あるいは留年の理由に,例えばやむを得ない理由があって,必ず卒業できる見込みがあると学校長が判断する場合には,では1年間だけ奨学金をとめる,そういった廃止や停止の申請を学校が行うことになります。
 今回,新聞に載っておりますのは,もう留年することが決まっていたにも関わらず,廃止や停止の措置ではなくて,次年度も奨学金を交付しますという警告であった人たちがいましたので,その人については次の適格認定のときに,奨学金の交付をとめてくださいということを機構から学校にお願いしたものです。
 したがって,4年間何もしなくても4年間奨学金が貸与されますよということではなく,まず毎年毎年,次年度必要かどうかということの判断を本人がする。それに加えて学校が,本人の学業成績その他に応じて,来年度も奨学金を貸与する資格があるかどうかということの確認を毎年すると,そういった仕組みになっております。
 それで,成績が悪いけれどもやむを得ない理由がある場合には,それに応じて,廃止ではなくて1年間,もう1回チャンスを上げますよという形で停止をするといったようなこともやっております。大体そういった仕組みになっています。

【小林主査】  相川先生,よろしいですか。

【相川委員】  やむを得ない理由という,そのところの判断というのは,大学側がするんですね。

【月岡理事】  大学が判断しています。

【小林主査】  実際,適格認定を受けて,奨学金継続の認定を受けられない廃止などになった割合というのはどのぐらいですか。大体で結構です。

【月岡理事】  1万人ぐらい廃止がいます。新聞記事によると廃止が1万846人。91万人の人から次年度も必要だという申請がありまして,廃止が約1万人,停止が約1万2,000人,警告も約1万2,000人ですか。そういったような状況になっています。

【松尾課長】  パーセントにすれば,1%ぐらい。

【月岡理事】  そうです。

【小林主査】  ですから,これをどういうふうに運用していくかということですね。私が申し上げたのは,この制度を給付奨学金,予約返還免除という形で利用できないかということで申し上げたのです。

【月岡理事】  成績はきちんと確認を毎年度,現時点では年に1回ですけれども,学校によっては前期,後期,それぞれ成績を付ける場合には,前期の成績を見て後期に必要な指導をするとか,そういったことをしてくれている学校も多いです。

【相川委員】  それは,単に学生が本来の学生であるべき学習をしていないと。

【月岡理事】  はい。理由もなしに授業に出てこないとか,単位を一切取っていないとか,そういった学生も中に入るわけでございます。そういった場合に,理由があれば,ともかく,理由がないのであれば廃止になります。

【小林主査】  以前の「独立行政法人日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会」で,ある大学の学生課長の方に来ていただいて,適格認定の仕組みの説明を受けたのですけれど,やはり学生に対して直接向き合いますので,面接をしたりして,また頑張りなさいということで,かなり役に立っているというお話でした。ですので,この制度の在り方をどのようにしていくかというのは,先ほど言った学生の顔が見えるということとも関係しますので,私としては非常に重要な制度であると思っています。
 どうぞ。

【奥舎委員】  ちょっと教えていただきたいのですけど,有利子の貸付けの奨学金は,最高12万円ですね。その額というのは,どのように決まったんですか。

【石矢奨学事業本部長】  本人の選択制になっています。3万円,5万円,8万円,10万円と12万円です。

【奥舎委員】  12万円の額を奨学金で希望する人は,率としてどのぐらいいるのでしょうか。

【月岡理事】  3万円,5万円,8万円,10万円,12万円ですけれども,一番多いのが5万円です。

【奥舎委員】  5万円ですか。

【月岡理事】  はい。

【奥舎委員】  12万円でどのぐらい,パーセンテージ,分かりませんか?

【月岡理事】  ちょっと今,数字をちゃんと覚えておりませんが,少ない割合の方だろうと思います。

【奥舎委員】  大学を4年後に卒業して,要するに個人の債務ですね。借金が300万円ぐらいというのが,私,限度だろうと思うんです。個人的にはですよ。それは500万円返せる資力の学生はいるかも分かりませんが,卒業した時点で債務を500万円も背負って,将来,社会に出てやっていけるのかなというのを感じます。実際,300万円ぐらいが限度ではないでしょうか。というのも,1年間の収入ぐらいが限度だと思っておりますので。12万円や10万円借りたら返せる人,いるかも分かりません。医師とか,歯科医師とか,研究者になって,そういう人もいるかも分かりませんが。
 私ども,学部が看護学部と短期大学の地域福祉学科と幼児教育学科があるのですが,現在,うちの学生でも500万円を学部で借りているのが7人いるんですね。看護学部の学生です。それから,地域福祉学科で調べたら10人が卒業するときに,250万円を超えますね。そうしたら,この学生たちが病院に勤めて,500万円のうちどれくらい返していくのか分かりませんが,返していくのは大変だなと思いまして。

【月岡理事】  返還は,貸与総額に応じて,まず返還に要する年数というのが決まってまいりまして,12万円借りておられる場合,20年間かけて返していただくことになります。したがって,月額で2万数千円ぐらいです。

【奥舎委員】  ですから私,学生や担当者には,はっきり言って教育ローンなんですよ。あなた方が借りるのは教育ローンなんですよと。元利均等の教育ローンを払うんだから,これだけ払うようになるからって言っているわけです。しっかり払うようにしなさい,これだけの債務がありますよと教えていくんです,私個人としても,卒業する時点で,これだけマイナスがあって,そこからスタートするのは大変だというのを感じますね。

【月岡理事】  奥舎先生の学校でも御指導いただいていると思いますけれども,実際の修学に要する経費を本人に申告させまして,家計からの交付額とか,アルバイトとか,そういったものを収入として,収入と支出の差額が開いている場合には,奨学金の金額を少なくするよう,指導を個別にしてくださいということを各学校にお願いをしております。私どもとしても,必要最小限の貸与の金額にとどめることが望ましいと考えております。そういった指導を,今申しました適格認定の中で学校に行ってもらうことにしています。

【奥舎委員】  はい,やっているんです。それで,もう一つ。私が実際に学生に指導していると,家計状況をはっきり言わないんですね。例えば年収2,000万円の営業をしたとしても,その家の隠れた債務なんか,全部出てこないわけですよ。2,000万円ぐらいあったら,もう奨学金は借りられないということになりますけど,実際は多大な借金がある人もいるわけで,そこまでは,学生の中に入り込んで把握できないですね。その辺りが大学として非常に難しいという実感があります。
 ですから,時には家庭から親が電話してきて,奨学金,いつ入るのと。あなたにはないんですよ,学生に支給するんですよと言ったら,どうしてという電話が現実にあるんです。それでも家計状況は言いませんけどね。そういう家庭もあります。だから,この中に入り込んでいくまでが,学生も本当のことを言いませんから,非常に難しいのが実態です。
 ですから,5万円ぐらいの少ない額で借りていって,将来を見通して借りなさいよという指導しか現実にはできないのが実態ですね。

【小林主査】  御参考までにアメリカのケースで申し上げますと,時代により変化していますが,今言いました資産を全部調べて,申告しないといけない。ですから,債務があれば当然それも分かるようになっています。
 大学が指導するのではなくて,今言った資産とか,どのぐらい家計が出せるかということの額を出します。その差額が奨学金の金額になりますので,いわば自動的に決まります。
 ですから,それも1つの考え方で,アメリカで一番問題になっているのは,実はビジネススクールとか,ロースクールとか,メディカルスクールというところの大学院生が,非常に学費が高いので,多額の借金を抱えて,奥舎先生がおっしゃったように,返せる人はいいのですけれど,返せない人が今,非常に出てきて,多額の債務を抱えているということです。
 ですから,その辺の問題もありますので,アメリカの方法が全部いいと思いませんけれど,もう少し日本の場合にもきめ細かいやり方があるかなとは思います。
 ただ,きめ細かいということは,逆に言いますと,事務的な手続が大変になりますので,先ほど申し上げました社会保障・税番号制度でどれぐらいできるかとか,そういうことも併せて考えていくようなことだろうとは思っております。
 いかがでしょうか。
 上限を設けるのも確かに1つのやり方かなという気はしますけれど,それについては将来の検討事項だろうというふうには思います。
 それから,今話に出ました所得連動型について,大体これも導入するという方向で皆さんに御意見を頂いたと思いますけれど,実際問題としては,非常に大きな改革ですので,もちろん法律的改正,システム設計,それから実際の周知も要りますし,いろいろな問題が関わってきますので,すぐにできるという話ではないのですけれど,方向性としては,これでいけるということでよろしいでしょうか。
 これについても少し諸外国の例を,幾つかの国で導入していますので,それを参考にしながら,日本型で一番いい方法は何かということを考えていくと,今言った返済の金額の決め方でありますとか,それから将来の免除の在り方でありますとか,様々な問題があがります。これは次回になりますか。ここでは,そういう方向性を出すということで。

【松尾課長】  そうですね。あと,具体的な制度設計は,もう少し専門的な方々の方が良いかもしれません。

【小林主査】  もう少し後の委員会などで。

【松尾課長】  そこは,少し相談をさせていただきたいと思います。

【小林主査】  では,方向性としては,所得連動型を導入することで,もう少し制度に柔軟性を持たせましょうということです。分かりました。
 それから,本日,専門学校の方の中村先生が来られていないので,専門学校の御意見が十分反映できていないのですが,これはまた,もう1回ありますので,次回に御意見を頂ければというふうに思います。
 それから,これは私がこだわっているだけなのですが,9ページのところの互助会的な仕組みが考えられないかということなのですけれど,アメリカの例でいいますと,手数料を実際取っています。貸与額の1%程度ですけど。それから,利子に上乗せをするというのは,有利子の場合,ほかの国ではほとんど行われています。そのまま,その借りた利子率ではなくて,若干手数料的なものを含めて利子率に上乗せということで,これは非常に学生に負担を強いることになりますから慎重であるべきだとは思いますが,JASSOの今の体制などを考えますと,所得連動型ですとか,給付奨学金など,いろいろな新しいものをやっていくためには,こういった別の財源を考える必要があるのではないかと私は個人的には思っています。それについて少し御意見を頂きたいのですが,いかがでしょうか。
 繰り返して言いますけど,学生には負担を強いることになりますので,非常に提案しにくいのですけれど。ごくわずかですね。例えば0.1%でもいいと思いますけれど,例えば手数料を取るというようなことです。せっかくですから,すみません,お一人ずつ御意見を頂ければと思いますが。前原先生から,いかがでしょうか。

【前原委員】  これは今おっしゃった,9ページの2段落ですか。

【小林主査】  9ページの,例えば互助会的な仕組みが考えられないかというところですけど。もう少し具体的に言うと,手数料などを取ることは考えられないかというようなことなのですけれども。

【前原委員】  私も学校にいるときに,いろいろやってみたことがあるのですけど,なかなか仕組みがうまく作れないような気がしました。そのようなところで給付型を入れていくというので,これも制度の作り方,いろいろあると思うのですけど,互助会的なものというのは,余りうまくいかないと思います。

【小林主査】  互助会というのは,何というか,仕組みというか,発想として互助会となっている。実際は手数料を取るという意味合いなんですけどね。

【前原委員】  なかなかなじみにくいと思います。

【小林主査】  なじみにくいですか。

【前原委員】  はい。

【小林主査】  ただ,私も,先生も前の検討会議でもやっていただきましたけど,JASSOの今の運営費交付金が減っていく中で支えていくためには,もう少し別の財源を考える必要もあると思いますし,手数料というのは,確かになじみがないのですけれど,国の事業だから,それ以上手数料を取るのはどうかという議論も確かにあるとは思いますけれど。
 例えば大学入試センター試験というのは手数料を取って,非常に黒字でやっているわけですから。あそこまでたくさん検定料を取る必要はないと思うのですけど,そういうことも,同じ独立行政法人ですから,考えていいのではないかなと,そういう意味合いですけど。

【前原委員】  1つは,例えば貸与型の奨学金は民間の金融機関に全部やらせて,それで利子補給のところだけ国が面倒をみるようなことは制度としては作れると思うんですけどね。

【小林主査】  ただ,それは今やっている国がないですね。アメリカではオバマ政権まであったのですけど,オバマ政権がやめてしまいましたので。

【前原委員】  そうですね。私も作ってやってみましたけど,なかなか運営が難しかったです。
ただ,国全体でやったら,やれるかもしれないなと。一大学と一金融機関が契約してやったものですから,設計が難しかったですけど,国全体でシステムを作れば,できないこともないかなという気はしますけどね。要するに,利息の分だけ国が面倒見ますという仕組みです。

【小林主査】  これは国によって設計が違いまして,アメリカはやめてしまったのですけれど,韓国も前にやっていたのです。これも1つ前の政権はやめてしまったのですけれど,あと,やっているのは中国ぐらいです。

【前原委員】  やはり面倒だからですかね。

【小林主査】  いえ,発想として言いますと,逆なんですよ。つまり,なかなか国の事業として行えないところに,民間に参入してもらうために補助金を出す,そういう仕組みなのです。ですから,国の方がしっかりしているヨーロッパとかイギリスのようなところだと,ほとんどそういう仕組みがないということです。

【前原委員】  なるほど。

【小林主査】  いかがでしょうか。ちょっと乱暴な議論かもしれませんけど。

【相川委員】  先般,センター試験の審議会のときも,この受験料って,もう上がらないんですよねと聞くくらい,センター試験の受験料は結構な金額ですよね。

【小林主査】  はい。

【相川委員】  ですから,学生が,その手数料を払うという考え方は。

【小林主査】  いえ,すみません,説明が悪かったようです。何万円も取ろうなんて考えていないです。100円でもいいと思っています。

【相川委員】  手数料という部分で,どう受けとめられるのかなと。ある程度手数料から充てられると考えられる原資の部分も。手数料が,そちらに回るということ。

【小林主査】  はい。いろいろな使い道があると思いまして。例えば,先ほど申し上げましたけど,JASSOの給付奨学金をやるとなると,また事務が増えますし,それからここで情報提供とかいろいろやるということを言っていますけれど,では,どこがやるのかということになると,やはりお金が要ります。
 実は私学事業団は,学生に対して授業料減免だけではなくて,制度に対しても支援をしているのです。ごく一部ですけれど。これから大学だけではなくて,ほかの高等教育機関で,あるいは,中高まで含めて,こういった情報提供とかそういうことをやっていくとなると,当然お金がそれだけ掛かります。それについて,ほんの少しだけ手数料を頂ければできるのではないかと,そういうアイデアなんです。
 例えば高校への説明会のようなものをJASSOもやられているということなのですけど,これをもっと大きくやろうと思えば,そういうのにもお金が掛かりますし。

【相川委員】  どうでしょう。

【小林主査】  松本先生,いかがですか。

【松本委員】  お聞きしていて,こういう考え方もあるのかなと思いましたけれども,なかなか自分としてすぐには賛成しかねます。
 これは結局,給付型のようないい制度ができていく中で,一方である程度自己負担といいますか,その分を分かち合う,そういう効果を狙うものですね。

【小林主査】  そうですね。はい。

【松本委員】  そうですね。そこの観点でいえば,なかなか面白いかなと思いますけど。あるいは,給付型なんか導入すると,必ず社会の厳しい目がありますから,そういう中である納得性が,これで得られるのかなと,少し思いますけれども。1つの効果はあるのかもしれませんね。

【小林主査】  ありがとうございます。奥舎先生,いかがですか。

【奥舎委員】  出捐金のような形で,奨学金を借りる学生が自分のところに何か返ってくるようなものを感じられればいいと思いますけど。ただ単に制度や組織や事務的な手続を作ってPRする,広報するということだけですと,今までと一緒なので。それが返ってくるものがあれば納得できるのではないでしょうか。

【小林主査】  給付型奨学金の原資に充てるというのも1つの考え方です。ただ,これは,自分が受けられるかどうか分からないわけですから,そういう意味では,直接返ってくるということにはならないのです。

【松本委員】  機関紙の発行など,コミュニケーションのための何かに使われるとか,そういうのが少しあれば。

【小林主査】  1つは,先ほど申し上げた中間組織など,JASSOでもいいのですけれど,今もかなり業務がパンクしていますので,もう少し何かそういう支援するようなところに,お金を出せるような仕組みがないかということです。

【奥舎委員】  奨学金を受給して恩恵を受けてきた学生が卒業するときに,大学から奨学生に対する依頼をお願いすると。

【小林主査】  それ,育英友の会というものが,たしかありました。

【石矢奨学事業本部長】  はい。学生の組織があります。

【小林主査】  ただ,あれは全くの任意団体。任意団体というか,任意加盟ですよね。

【石矢奨学事業本部長】  はい。

【奥舎委員】  それは大分入るということですか。

【石矢奨学事業本部長】  いえ,今は恐らく,人数は少ないと思います。

【奥舎委員】  そうでしょうね。

【小林主査】  なかなか難しいとの御意見が多いようですけれど。ですから,これも,私の気持ちとしては検討課題という形で残していただければと思います。よろしいでしょうか。
 それから,御意見を伺っていないところでは,社会人への支援というのが言葉として何回も出てくるのですけど,具体的に社会人をどうするかというのは,かなり大きな問題だと思います。社会人への支援策について,もう少し御意見があれば伺いたいのですが。

【前原委員】  具体的なイメージがちょっと湧かないのですが,昔風の社会人,あるいは高校を出て就職したけど夜学に通うなど。今ですと社会人で,勉強に行っているというのは,ロースクールやビジネススクール,そういうところに行っている人が多いですね。通常の大学に行っているというよりも,そういう感じになっている。
 ただ,先ほど申し上げたように,実業学校を出て,それぞれ地元に就職した子供たちについては,何かやってあげることは可能性としてあるのかなと思うのですが。そういうのは,東京にいると分かりませんね。

【小林主査】  たしか社会人学生は,今。

【前原委員】  夜学とかいうのは,なくなってしまっているんですよね。

【小林主査】  はい定時制とか。

【前原委員】  二部が。

【小林主査】  二部などは,すごく減っていますから,普通の大学に入るなり,夜間大学院とか,そういうケースが非常に多いのですけれど,まず,数が非常に少ないですよね。
 それから,もう一つの問題は,ほとんど支援がなくて。これは,雇用主側の責任も大きいと思うのですけど,一生懸命勉強して修士号を取っても,余りキャリアアップしないんですよね。ですから,インセンティブにもう一つ欠けている。
 本当に今,スキルを磨きたいとか,あるいは自分の抱えている課題を解決したいと言って入るのですけど。もちろんごく一部の企業などでは非常に熱心に支援してくれるところもあるのですけど,残念ながら,ほとんど,そういうところはありません。むしろ通学していることを言っていないようなケースさえあると,そういう問題ですから,この辺をもう少し何とかしないと,社会人の学びを支えるといっても非常に難しいと思います。これは,この経済的な支援だけではなくて,もっと大きな問題なのですけれど,何かできないかなと。
 どうぞ。

【松尾課長】  今,政府の中で,やはりリトライアルというか,安倍政権で再チャレンジということがあって,社会人の学び直しも相当議論されています。それで,大体,文科省の中でも社会人の学び直しについては,奨学金だけではなくて,いろいろなカリキュラムであるとか制度,それから厚労省の制度なども組み合わせてやろうと思っています。恐らく,社会人といったときには大きく3種類あって,前原先生が言われたように,高校を出られて,働いて,また学校に行くと,こういう社会人が1つ。それから,普通に大学を卒業して,勉強するために,もう1回大学に行くという人。あと,少しお年を召されて,時間もあるなという方,大きく3つあると思っております。恐らく,最初の方は,奨学金でいえば,まだ借りていないので,貸与基準に年収ぐらいの柔軟性を持たせることによって,いろんな年代の方が。奨学金は年齢基準,そんなにありませんので。
 ただ問題は,2回大学に行く人で,奨学金を借りてもう1回行く人というのは,これは,奨学金は4年制なら4年間とか,修業年限に応じて年数のアッパーが恐らくあると思いますで。これについては,なかったでしょうか。

【石矢奨学事業本部長】  第一種はあります,二種はありません。

【松尾課長】  二種はないんですね。だから,二種は借りられるが,一種は借りられない。そこは柔軟にするかどうかとか。また,少し年配の方に対してではなく,むしろ若い子の方に支援をとかですね。奨学金については,いろいろな課題があります。
 ただ,もう一つは,小林先生が言われたように,それをどうキャリアアップにつなげていけるかとか,それと併せた形で経済的支援を考えていく必要があります。

【前原委員】  いや,今,小林先生がおっしゃったのは非常に問題がありましてね。ビジネススクール,ロースクール,あるいは教職員の大学院を見ていても,はっきり言って,本来求められているものがそこで提供されているかというと,大変疑問ですね。日本のロースクール,この間ずっと,その委員にもなっているので見てきましたが,ロースクールを出て,では役に立つかというと,ほとんど役に立たないのではないかと思っています。だから,存続が困難なロースクールも多いと思いますね。それが,問題なんです。
 厚生労働省実施の事業においてもそうなのですが,求められているものに対して非常にマッチングしないことを教えているケースが多いんですよ。だから,そこから改めないと,単純に奨学金を渡しても駄目だと僕は思っています。中身が問題だと。

【小林主査】  たまたま雇用主側が問題だと言いましたけど,大学側にも問題があるんです。

【前原委員】  今の日本のロースクールのやり方では,存続は難しいと思います。全く意味がありません。

【小林主査】  ロースクールを作るときも,授業料は国立大学でも上げましたので,その奨学金を充実させる形がセットになって付いてきたのですが,そういう問題だけではなくてですか。

【前原委員】  いえ,中身の問題ですね。

【小林主査】  もっと大きい問題があるということですね。ありがとうございました。
 以上で私の考えていた論点は大体御意見を伺えたと思うのですが,ほかに御意見ございませんでしょうか。
 高等教育といいましても非常に多様ですので,それぞれに応じた細かい制度設計はこれからの課題になりますけど,大きな課題としては,今出てきたような方向性で考えていくということで。
 どうぞ。

【松尾課長】  すみません。ちょっとここで議論すべきことなのかというのはあるのですが,日本人が海外に留学することなども,検討課題とさせていただければと思います。今ちょうど日本人の海外留学について産業競争力会議などで,いろいろと議論しておりますし,先生方からの御意見でも,留学についてございましたので,もし将来的な課題としてメンションできるようであれば,ちょっと付記しようかと思うのですけど。

【小林主査】  私自身は,前回の有識者検討会議で申し上げましたけど,基本的に,学生というのは,もう区別するような時代ではないと思います。まず日本人かどうかということで区別すべきでないと思います。それから,そうは言っても留学というのは,出ていくのと入ってくるのと,そういう話になりますから。入ってくる学生に対しては別の形で。

【松尾課長】  制度についてですね。

【小林主査】  はい。今考えられているのは,出ていく学生について,どれぐらい支援するかと,そういう問題ですよね。

【松尾課長】  はい。

【小林主査】  今,留学生が非常に減っていることが大きな問題になっていますので,それについて,充実させる方向で考えていきたいというようなことだろうと思うのですが,いかがでしょうか。特に反対なさる方はいらっしゃらないとは思いますが。

【前原委員】  ファンドなどで留学生にお金を出してあげるというのは,応募者がすごく減っているんですよね。ただ,実は,お金の問題でないところで減っているような気もするんです。恐らく,民間や海外でも,ファンドはかなり多くある。だから,利用率がすごく低下しているという現状がありますよね。それをどう考えたらいいのかという問題ですね。

【松尾課長】  ファンドはたくさんあるのですけれども,知られていないファンドというのも結構ありまして。これが知られるようになると,前年と比べて結構応募が増えると思います。

【前原委員】  多分これからは応募者が増えると思いますね。

【松尾課長】  はい。前年と翌年とでがらっと変わると思います。

【前原委員】  就職時期の問題も変わってきますし。それから,我々からしても,留学経験を評価するという方向に大分変わってきていますから。

【小林主査】  そうですね。恐らく,雇用上の問題というのも,今までかなり大きかったので,通年採用とかそういうことになってくれば,かなり変わってくると思います。
 実際問題として,経済的な負担も,やはり留学の場合は大きいわけですけれど,それプラス今の雇用上の問題,就職時期がずれると,いろいろな支障があります。5年かかってしまうというのは一番大きい問題だと思います。その辺を改善していけば大分違うと思いますが。
 よろしいですか。そうしましたら,本日,欠席の方もいらっしゃいますので,また御意見がありましたら,前回と同じようにメール等で頂ければということで。
 本日は非常に活発な御意見を頂きましたので,事務局で頂いた御意見を少し整理して,次回でこの会議としては中間まとめを出して,一旦締めさせていただきたいと思っております。
 本日も長い時間,活発な御意見を頂き,どうもありがとうございました。

【松尾課長】  次回は,7月29日に開催を予定しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。また御意見などはメール等で。

【保立課長補佐】  本日の御意見を反映させたものを,またお送りさせていただいて,文章,御意見を頂ければと思いますので,またよろしくお願いいたします。

【松尾課長】  それでは,どうもありがとうございました。


── 了 ──

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