学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第2回) 議事録

1.日時

平成25年5月15日(水曜日)16時~18時

2.場所

文化庁特別会議室(文部科学省旧庁舎5階)
(千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学生への経済的支援の在り方をめぐる課題・論点について 等

4.出席者

委員

相川委員、奥舎委員、小林委員、中村委員、濱田委員、樋口委員、前原委員、松本委員

徳久理事長代理(日本学生支援機構)、月岡理事(日本学生支援機構)、石矢奨学事業本部長(日本学生支援機構)

文部科学省

松尾学生・留学生課長、渕村学生・留学生課長補佐、保立学生・留学生課長補佐

5.議事録

【小林主査】  それでは,時間になりましたので,ただいまから学生への経済的支援の在り方に関する検討会(第2回)を開催したいと思います。本日も御多忙の中,お集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
 まず,議事に先立ちまして,今回から御出席の委員の方を御紹介したいと思います。慶應義塾大学商学部の教授でいらっしゃいます樋口美雄先生です。

【樋口委員】  よろしくお願いいたします。

【小林主査】  それから,公益社団法人経済同友会副代表幹事専務理事の前原金一先生です。

【前原委員】  前原でございます。よろしくお願いいたします。

【小林主査】  どうぞよろしくお願いいたします。
 それから,本日も日本学生支援機構の関係者が陪席しておりますので御承知おきください。審議官から一言,御挨拶,よろしいでしょうか。

【山野大臣官房審議官】  私,1回目は都合が悪くて出られなかったのですが,山野といいます。よろしくお願いします。奨学金はいろいろな場で充実を求められています。議論に当たっては,様々な切り口があると思うのですが,ざっくばらんに議論していただいて,新たな方向を打ち出していただければと思います。よろしくお願いいたします。

【小林主査】  ありがとうございました。
 それでは,まず議事を始めるに当たり配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【保立課長補佐】  お手元の議事次第を御覧ください。配付資料のところに資料1から3まで,それから,参考資料が1から3までございます。このほかに机の上に机上配付資料を2種類置かせていただいております。机上配付資料,1枚物と,それから,少し分厚いものとございますけれども,机上配付資料はお帰りの際こちらに残していただければと思います。よろしくお願いいたします。また,不足がございましたら,途中でもお声がけいただければと思います。
 以上です。

【小林主査】  では,議事に入ります。本日は先月25日に開催されました第1回の議論のポイントを確認しつつ,学生への経済支援の在り方について自由に議論いただきたいと思います。つきましては,事務局の方で第1回議論の主なポイントをまとめていただいておりますので,それについて資料を説明していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【保立課長補佐】  では,まず資料1から順番に御説明申し上げます。資料1を御覧ください。これは前回の議論の主なポイントをまとめたものですので,ざっと復習させていただきます。まず,議論のあった順番からの論点になってしまいますけれども,延滞金の利率に関して議論いただきました。これはすぐに取り組める短期的課題ということで冒頭議論していただきましたけれども,背景としまして国税の延滞利息が平成26年度から少し引き下がる。最初が3%でだんだん時間がたつと上限9.3%までということになります。
 一方,JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)の延滞金の利率の10%というのが,高いのではないかということが国会でも指摘されているという背景がございまして,議論いただきました際にいきなり10%というのは,今の御時世を考えると厳しいのではないか。借りたものを返すのは原則であるけれども,返還段階においても教育的な側面が必要であるので,返還努力をサポートするように段階的に利率を引き上げていくような制度はどうかですとか,それから,延滞金というのはペナルティーであるので限度額,上限を設けるというような配慮も必要ではないかなど,そういった御意見を頂きました。
 それから,次に予約採用段階,奨学金の予約採用段階での広報が弱いのではないかというような議論を頂きました。高校で予約採用するときに,もっとしっかり広報する必要があるのではないかということ。それから,この議論の中で出てきた御意見,ちょっと順番が前後するかもしれませんけれども,高校からずっと借りているという方は特にかなりの金額になってしまう。また,博士課程修了者というのはまたその後の就職が厳しいこともあって返還も滞りがちなのではないかということ。計画的にという意味かと思いますが,そういった御指摘も頂きました。
 それから,高校段階での周知ということに関しまして,高校の先生一般のリテラシーの向上が必要なのではないか。進路指導担当だけが理解しているのではなくて,進路担当の教員を通じて一般の教員がもっと奨学金のことについて知識を高める,リテラシーの向上が求められるのではないかという御意見を頂きました。
 それから,次の論点としまして,奨学金の返済の段でございますけれども,奨学金の返還金について税制面での優遇があってもいいのではないかという御意見も頂きました。それから,学校種ごとの事情ということかと思いますけれども,専門学校というのは特に授業時間数が多いということもありまして,アルバイトが難しい場合もあるということですとか,また,特に世帯収入の低い家庭からの生徒が多いといったことを踏まえると支援の充実が必要ではないかという御意見も頂きました。
 それから,少し論点が細切れになりますけれども,専修学校だけではなく一般に奨学金の入学時の特別増額について,現在,JASSOの奨学金というのは飽くまで学生が対象ということで入学前に貸与は受けられません。現在,労金からのつなぎ融資をしておりますけれども,こういったことは不便なので1回で借りられるようにすべきではないかという御指摘も頂きました。
 それから,議論の最後に給付型奨学金について議論いただきましたけれども,論点としまして経済的に困難な人に対しての支援という奨学の観点と,それから,優秀な学生を支援するという育英の観点,奨学金の性格としてどちらを目指すのか,充実していく際にどちらを目指すのかという議論がありましたけれども,ここは両方御意見がございまして,まだまだ学びたいというニーズにしっかり応えていくためには,奨学の観点を重視すべきではないかという御意見と,それから,逆に現行の奨学金で十分ベーシックな部分をカバーしているということも踏まえますと,今後,若者の国際的な活躍やリーダーシップ能力を育てるような仕組みなど,これから育英の方を拡充していくことが必要ではないかというような御意見も頂きました。
 それから,この奨学と育英という,そういった議論の際には月額の設定も関係してくるだろうという御指摘も頂きました。また,育英の観点,成績を重視するというような奨学金にする際に現行の貸与制度,例えば予約採用ですと高校の成績で見ているわけですけれども,今度,給付的な要素を持った制度を導入するということになりますと,それは何で判断するのかということ,具体的には高校の成績で判断するということですと,高校によっても大分差があるということもございます。では,大学に枠を振ればいいのか,それともあるいは全国一律の試験のようなことをすべきなのか,何によって成績を判断するかということも育英の制度をつくる場合には論点になるだろうという御指摘がありました。
 それから,大学の給付型奨学金というのは,1回,平成24年度の概算要求で要求しているということもありましたので,その経緯も含めて検討材料を,次回,事務局の方で用意してほしいということも最後に御指示いただきました。
 以上が資料1です。資料1,今回,お名前を伏せて配らせていただきましたが,こちらの方で委員の先生方の御意見をざっとまとめました。昨日メールでお送りしているものには委員の先生方のお名前が入ったものでお送りしておりまして,趣旨が違うというような御指摘がありましたら,事務局の方にお知らせいただければ訂正いたしますので,併せてここでお願い申し上げます。メール等で事務局の方にお知らせいただければと思います。
 それから,次に資料2でございますけれども,前回議論いただきました内容を踏まえまして,少しこちらで体系的に論点を整理させていただきました。全体の構成から御説明いたします。まず,1ページ目に四角で囲った「学生の置かれた経済的状況」の分析がありまして,それから,2ページ目に学生の経済的支援というのが一体どういった方向性を将来的に目指すのか,目標としてやっていくのかという,全体の目指すべき方向性を次にまとめました。それから,それを踏まえて3ページ以降に現行の各制度をどのように改善していくか,貸与の在り方ですとか,給付の在り方ですとか,そのように整理しております。
 1ページから順に少し詳しく御説明申し上げます。「学生の置かれた経済的状況」ですけれども,学生と申しておりますが,在学中と卒業後と両方になります。在学中というのが1.と2.になりますけれども,近年の経済情勢によって世帯年収も減っている一方で,大学の授業料は上昇しておりまして,親の負担も大きくなっていますし,仕送りも減っていて学生も経済的に以前より厳しい状況にあります。また,高等教育のユニバーサル化により一部のエリートのみではなくて,様々な層が高等教育に行くようになっているということでございます。
 それから,多様なニーズということでございますけれども,特に社会人の学び直しのニーズについて,専修学校を中心に増加はしてきておりますものの,諸外国に比べて我が国では社会人学生の割合が圧倒的に小さいという状況もございます。前回,データを出しましたので,簡単にですけれども,高等教育入学者のうち,25歳以上の者の割合がOECDの平均だと21%であるのに対し,日本ですと大学段階では2%という,そのような状況もございます。
 それから,それを踏まえて「2.我が国の学生への経済的支援の状況」はどのようになっているかということです。これは授業料減免や奨学金等による支援を受ける学生等が増加してきているという状況にございます。それから,「3.学生の卒業後の状況」でございますけれども,近年の雇用慣行の変化ですとか,産業構造の変化によりまして非正規雇用の増加ですとか,就職状況の厳しい状況にあって,高等教育を受けたとしても必ずしも高い所得が保障されるわけではない状況で,高等教育を卒業した者のうち,所得が300万円を上回らない,30代以降もずっと所得が300万円を上回らないという人が3分の1いると。有業者だけのデータであってもそれくらいいるのが現状であるという状況でございます。
 これらを踏まえまして,「4.学生の経済的状況から見る課題」としましては,まずは学生が安心して高等教育段階の学びの場に進めるような仕組みの充実が必要ではないかということ。2つ書きましたけれども,まず1つは今申し上げましたような厳しい経済状況を踏まえますと,卒業後の返還が厳しい場合への対応について見直しが必要なのではないかということ。それからまた一方で,将来の我が国を支える人材を育成するという面も高等教育には大事な役割がございますので,努力した学生には国としてインセンティブを付与するという,そういったことも必要ではないかということがございます。
 それから,やはり社会人学生の圧倒的に割合が少ないという状況も踏まえますと,高校,大学,就職という一本道ではない学びに対してもニーズに応えられるような仕組みが必要ではないか,そういった課題があるのではないかということでございます。それから,次のページに参りまして,「学生への経済的支援の目指すべき方向性」ということで,学生の経済的支援をするという意義ですけれども,高等教育の受益者は学生本人だけではなくて,将来の我が国を支える人材ということで社会全体ということでございますので,社会全体で学生を支えることが必要である。それを踏まえて将来目指すべき方向性ということですけれども,我が国も国際人権規約A規約第13条の高等教育の漸進的無償化という条項を昨年,留保撤回しておりまして,高等教育の無償化に向けて漸進的に無償化を目指すということが方向性ではないかと思います。
 漸進的にということですけれども,負担軽減に向けたステップとしまして,これまでもやっているとおり,授業料減免の拡充などによって負担軽減を図るとともに,奨学金については,奨学の観点から経済的に厳しい学生への支援として,まずは教育資金を奨学金として提供した上で,卒業後の所得に応じた月額の返還,所得連動のようなことをしっかりと充実していくことによって,将来の返還の不安を払拭して,安心して進学できるような状況をつくることが必要ではないかということ。それから,育英というのが経済的に厳しい上に,ということですけれども,育英の観点から,その中でも優秀な成績を収めた者へのインセンティブとして奨学金の返還を免除するとか,そういった仕組みをステップとして,仕組みの充実や構築を図っていくことが必要なのではないかと思われます。
 それから,こういった方向性を前提にしまして現行の各制度をどのように見直していかねばならないのかということです。3ページ目に入りますけれども,大きく分けて貸与の話と返還方法の話と給付の話と3つあります。まず,貸与の話についてです。貸与型の支援は,前回の資料でもお配りしているのですけれども,貸与規模が主に有利子奨学金の増加によってここ10年の間,拡大の一途をたどっているという状況にございます。
 今後の取り組みの方向性としましては,無利子奨学金というのが本来でございまして,有利子奨学金はその補完であるという原則に立ち戻る必要があるのではないかということ。そういった方向性に向かうために直ちに取り組むべき事項としましては,まずは無利子を拡充していくということ。それから,今の無利子,有利子の話とは別の話ですけれども,生涯学習社会の実現を目指しまして,社会人の学び直しのようなニーズにもしっかり対応していくために,奨学金を充実していくことが課題としてあるかと思われます。
 それから,「2.返還者の経済状況に応じた返還方法について」ということでございますけれども,まず,現状としまして,育英会からJASSOになった後,奨学金の返還金の回収率は計画的に改善を続けております。目標も達成している状況ですけれども,一方で真に返せないような経済状況にある人というのが最近よく報道でもクローズアップされております。そういった人に対する回収の対応の見直しということも必要なのではないかという課題がございます。現行の「所得連動返済型の無利子奨学金制度」,現行のというのは平成24年度から導入されたものなのですけれども,これは年収300万円以下,貸与を受ける際に親の年収が300万円以下の場合に対象となりまして,また,卒業後に本人の年収が300万円を超えなければ返還が猶予されるわけですけれども,そこを超えると普通に返還をしなければならないということで,まだまだ改善の余地があるという制度でございます。
 今後の取り組みの方向性としましては,将来の返還の不安を抱かずに安心して進学できるように,今,社会保障・税番号制度が導入されましたら,所得の把握ができるようになりますので,真に返還できる者,できない者をしっかりと見極めまして,返還できる者からは引き続きしっかり回収する一方で,所得の把握を前提に所得連動返済型の奨学金というのを本格的に導入していくことが必要なのではないかということ。これに関しまして,お手元の参考資料の2でございますけれども,言葉だけで御説明申し上げるとわかりにくいと思いますので,資料を参考資料2として入れさせていただきました。
 左側が現行制度でして,横軸が卒業後の本人の年収ですけれども,紫色の線が卒業後の学生が返還しなければならない額で,300万円を上回るまでは返還が猶予されます。0円というところが,返還を猶予されます。300万円を超えると途端に一定額を返還しなければならないというのが,平成24年度から導入された現行の「所得連動返済型の無利子奨学金制度」でございます。こうではなくてということで,右側がある一定の所得まで,今,300万円というところになっていますけれども,一定の所得までは返還を猶予するのですけれども,その後は年収に応じて返還額が連動するという,そういった形の方が将来の不安が少ないのではないか。そういうイメージでございます。ちょっと伝わりにくいかと思いましたので,図をお配りさせていただきました。
 もとの資料に戻りまして,今は3ページ目の,(2)取り組みの方向性というところを申し上げました。ただ,そのような所得連動返済型を本格的なものにするといった場合にも,それは何年くらいで返すような設定にするのかですとか,それは今,無利子奨学金だけがこの制度の対象になっていますけれども,有利子にも広げるべきではないかですとか,あるいは所得の何%を返すことに設定したらいいのかですとか,またいろいろ論点が出てくると思います。それから,直ちに取り組むべき事項でございますけれども,経済状況に応じた返還ということの中で,前回,議論いただきました延滞金の見直しで,現在,延滞金の利率が一律10%ですけれども,延滞率自体を見直すというほかにも,前回,御指摘いただきましたように段階的に高くしていくことや上限を設けるなど,工夫の余地があるのではないかということがございます。
 それから,最後に3つ目の給付的な支援についてでございます。4ページ目でございます。現状では国の給付的な支援というのは授業料減免や,あと一部ではありますが,大学院ですと業績優秀者免除もありますけれども,そういったものに限られておりまして,いわゆる給付型奨学金というものが財源等の問題から現在は導入されていないというのが現状でございます。ただ,現に進路選択にも世帯年収と一定の相関が見られるという現状ですとか,また,国際的に見ても給付型奨学金のない国はないのではないかとよく国会でも指摘をされます。そういった状況も踏まえまして,「(2)取り組みの方向性」でございますけれども,先ほど申し上げましたとおり,高等教育の漸進的無償化という目標に向けて給付的な支援の充実を図っていくことが必要ではないかということでございます。その際にどういう制度設計をしていくかという議論の際には,前回も少し議論に出ましたけれども,幾つか観点がございます。制度の目的としまして安心して進学してもらうためには,予見性を重視しますと事前に渡して渡し切りにしてしまう給付型奨学金のようなものが目的に沿うわけですけれども,逆に将来の返還能力に応じた制度にしようですとか,あと本人のインセンティブということを重視する制度設計ですと,事後に頑張った人に給付をする。それは返還免除ということになるかと思いますけれども,そういった仕組みが目的に沿うのではないかという,そういう論点がございます。
 また,制度のターゲット層としましても,現行制度よりももっと経済状況を重視した制度設計,それは奨学という観点の制度設計が必要なのか,それとも現行制度よりももっと学業成績を重視したような育英的な制度設計が必要なのかというような観点もございます。また,前回の議論の中でも少し御紹介しましたけれども,例えば育英的な学業成績を重視するような制度を設計する場合に,成績の評価主体ということをどう考えるのか。高校の成績なのか,大学でみるのか,あるいは一斉試験をするなど,どこかで一元的にみるのかといったような,実際問題として大きな問題になる話かと思いますけれども,そういった論点も出てくるかと思います。それから,その他の給付的支援制度との関係ということも念頭に議論いただく必要があるかと思います。
 これについて言葉で抽象的なことを申しておりましてもわかりづらいので,次のページに制度設計の例示を載せさせていただいております。まず,軸が2つありまして,経済的に困難な人への支援という軸と,それから,成績優秀な人に給付するということを重視する,そういう軸がありまして,現行の有利子奨学金というのが最低限,経済的にも困難で,意欲や能力もあってというところにございます。それから,無利子奨学金というのは,それよりも経済的にも,それから,成績の面でも基準が高いという,そういう奨学金になっています。
 この無利子奨学金から更に奨学的な面,経済的に困難な人への対応ということを重視する制度としては,所得連動返済型,将来厳しい状況にある場合には,それに応じた返還にしますという制度がまず考えられると思います。これは今,部分的にというか,平成24年度からやっているわけですけれども,そういうものになるかと思います。それから,今の無利子奨学金から,それに対してもっと育英的に成績が優秀な人に対する支援をしっかりしようということになりますと,例えばそれは右の方に行きまして業績優秀者に対して返還を免除するということが,より育英的な観点を強くした制度として存在するかと思います。
 それから,給付的な支援を入れようとした場合には,恐らく今の無利子奨学金よりも経済的にも業績的にもいずれも厳しい基準ということになるかと思いますので,右上の方に3つほど制度を挙げておりますけれども,一番わかりやすいのは給付奨学金ということになります。この頭に白い四角がついているのは,安心して進学してもらうことを重視するような,先に給付とわかるものです。
 それから,黒い四角がついているのは,事後的に給付となるもの,インセンティブを重視するとか,将来の状況に応じてという制度設計です。給付奨学金は一番わかりやすくて,メリットとしては借金をする必要がないという,将来,卒業時に何の債務も負わずに社会人としてスタートできるということになりますけれども,デメリットとしては最初に給付してしまうと,なかなか在学中のインセンティブ喚起ということにはつながりにくいということですとか,それから,全部渡し切りでおしまいですので,限られた財源の中では支給規模が当然制限されてしまうということもあるかと思います。
 それから,幾つか,これは飽くまでも制度設計の例ということですけれども,2として予約付き返還免除,進学時に特に経済的に厳しい人に安心してもらうために,進学時に経済的に厳しい人が予約をした場合は,在学中に一定の成績をとれば返還を免除することを予約するような制度も考えられると思います。こういった制度ですと,経済的に困難な人に対してインセンティブも付与しつつ,給付的な支援ができるというメリットはありますが,デメリットとして成績の設定の仕方によると思いますけれども,ここを高い設定にすればするほど本当に免除になるのかということで,安心して進学できるかどうかというところで少し,予見可能性が低くなってしまうかもしれないということです。
 それから,昔あった制度をそのまま復活ということはなかなか難しいのかもしれませんけれども,イメージとして挙げているのが特別貸与で,これは何かと申しますと,特に経済的に困難で,また優れた成績要件を満たす者に対して一般の貸与に上乗せして,上乗せ額,特別貸与分ですけれども,それを貸与する。返還時には,その一般貸与相当額を返還すれば特別分の返還が免除されるという実質的には半額給付,半額貸与のようなイメージだと思います。こういった制度というのは,学生にとって必要な額の半分を貸与,半分を給付でということですので,半分回収すれば次の世代の人に貸す原資となるので,全部給付してしまうよりは支給規模を広く確保しやすいという,メリットはありますけれども,当然のことながらデメリットとして,半額は返還しなければいけないということがございます。このようなマットもつくってみたのですけれども,これもヒントに後ほど議論いただければと思います。
 また4ページの(3)のところに戻りますが,そういう将来的な方向性も議論いただきたいのですが,また,直ちに取り込める事項ということで,現行の授業料減免を引き続き拡充していくことや,それから,奨学金についても目的やターゲット層に応じた制度設計で何か工夫できることはないか。例えば今,大学院段階にしか業績優秀者免除がないわけですけれども,それを学部段階などに広げるということもアイディアとしてはあり得るのかと思います。
 それから,最後に,この中に入り切らなかったところで,その他の検討が必要な事項で御指摘いただいたことの中で,幾つか挙げておりますけれども,大学院生の経済的支援について,前回,特に博士課程の学生は就職が厳しいため返還も厳しいのではないかという御意見もありましたように,大学院生の経済的支援の在り方として検討することもあるのではないかということ。それから,民間奨学金との関係について。また,その他の経済的支援で,例えばTA,RA等も含めた学生の雇用ということですとか,それから,もっと現物的なもので,例えば学生寮ですとか,それから,次のポツで税制ですとか,いろいろな経済的支援をどう組み合わせていくのが適切かということがあるかと思います。
 それから,前回かなり多くの御指摘を頂きましたリテラシー,情報提供をもっとしっかりやっていかなければならないのではないかという,そういった論点もあるということでございます。
 こちらからの説明は以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。

【保立課長補佐】  すみません,もう一つありました。

【小林主査】  はい。どうぞ。

【保立課長補佐】  大変申し訳ありません。机上配付資料で奨学金に係る予算のシミュレーションという縦の資料があるかと思います。先ほどいろいろな制度,例えばということで申し上げたのですけれども,予算の規模ですとか現実的な話が何もないと議論していただきにくいのではないかという御指摘を小林先生からも頂きまして,すごく粗いシミュレーションなのでこの金額でどうかというのもあると思いますけれども御用意しています。人数×月額×12が予算額になりますが,現行の無利子奨学金というのが,家計基準が約950万円で,高校の成績基準が3.5以上,月額が平均すると7.2万円なので計算を単純にするために月額を5万円とすると,大体それで2,500億円ぐらいになります。
 それを給付的なものにすると,要件を狭めていくわけだと思うのですけれども,パターンAというのは一番狭めたバージョン。比較的厳しい要件にした場合,家計基準300万円で,高校の成績4.3,家計基準の300万円ですけれども,例えば生活保護の支給対象というのが4人世帯で,高校生や大学生の子供が2人いるという場合ですと,250万円ですので比較的厳しい基準だと思います。高校の成績4.3というのは,現行の無利子奨学金基準適格者,基準を満たす者のうちの2分の1くらいという,大体そのようなつかみの集団になるかと思いますけれども,そういうところに月5万円を給付するとすればということですけれども,それが380億円ぐらいになります。
 ここに書いていないのですけれども,これは飽くまで1学年分しか掛けていないので,これがだんだん年次進行によって何倍かに,四,五倍だと思いますけれども,なっていきます。とりあえず1学年分でこのくらいだということです。それに対して成績か,家計かどちらか緩めると,まず家計の方を緩めるのがパターンBになります。家計基準を500万円まで緩めてみると,同じ額を支給しようと思うと677億円で,逆に成績の方を4.0に,4.0というのは現行の無利子奨学金の基準を満たす人のうちの3分の2が4.0以上のようですけれども,その人たちで家計基準を300万円に維持すると,564億円くらいになります。自営業者も同じ家計基準で試算しているなどごくごく粗いものなのですけれども,そんなような数字になるということも御参考にしていただければと思います。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 まず,ただいまの事務局からの説明について御意見,御質問等ございませんでしょうか。どうぞ。

【前原委員】  今の最後の資料で自営業者も一律の家計基準で計算するとなっていますけれども,これは仮定計算になるわけですか。

【保立課長補佐】  仮定計算でしょうか?

【前原委員】  というのは,大学で決裁をしていたときに非常に矛盾を感じたのですが,基準に合うのは自営業者ばかりなんですよね。サラリーマン家庭ですとか,役人の家庭は年収の基準でほとんどもらえません。申請書を見ると,こんな年収では生きていけないようなケースもある。多分,家計費を会社の経費で落としてしまっているから,そういう数字になるのだろうと思うのですけれども。

【保立課長補佐】  そういう意味であれば仮定です。そこをちゃんとやると計算が複雑になってしまうので,実際,制度設計する場合には同じであってはならないとは思っていますし,現行の無利子奨学金もそこは一応差をつけているのですけれども。それでもという趣旨かと思いますけれども,いずれにしても制度設計の場合には同じにはしません。

【前原委員】  そうですね。非常に矛盾を感じながら判を押していましたので。

【小林主査】  ほかにございませんでしょうか。そうしましたら,私から所得連動型について,これはなかなかわかりにくいので,前回の検討会議で出させてもらった資料そのままなのですが,参考資料1の49ページから御覧いただきたいと思うのですが,簡単に御紹介しておきたいと思います。今後,所得連動型を入れるときの議論の参考になればと思いますので,簡単に御紹介いたします。
 所得連動型という趣旨は,卒業後所得に応じて支払うということで,イギリスの場合で言いますと所得のゼロ%から3.6%程度,それから,オーストラリアのHECSという仕組みですと,所得のゼロ%から8%程度を支払っていくという方式です。いずれも最低額が決まっておりまして,それ以下の場合には返済が自動的に猶予されるというような仕組みです。これは300万円というのは飽くまで当時の為替レートで,今ですとまたかなり上がってきていまして,オーストラリアはずっと400万円ぐらいということになります。それから,一定期間や一定年齢で返済を免除する場合もあるということで,これについてはまた後ほど御紹介いたします。
 それから,所得から源泉徴収される場合が多いということで,こういった要素が組み合わさっているものでありまして,オーストラリアが最初に導入して,イギリス,スウェーデン,アメリカなどで導入されている方式です。この場合,所得連動型の1つの欠点としては,返済が長期にわたる可能性が強いので利子負担が非常に重くなるという問題がありまして,これはオーストラリアについては実質的に無利子,それから,イギリスは今までは無利子だったのですけれども,新しい連合政権になりましてからは利子を導入しております。それから,アメリカは実質的には利子を取っております。そのためまだ非常に連邦政府,特にオバマ政権は力を入れているのですけれども,なかなかこの所得連動型が普及していないという問題があります。
 スライドの50は,その要素をまとめたものですので,51なのですけれども,これは前回お配りしたときから制度が若干変わっておりますので,差し替えの新しいものを見ていただきたいのですが,先ほど申しましたように為替が変動していますので,最低基準についてはそのままそれぞれの通貨で書いております。少し説明が要りますのは,アメリカの場合には家族人数というものも考慮いたしまして,これは大体日本で言いますと生活保護ラインの150%程度というふうに考えていただければいいと思います。大体,それが1.5万ドルから4.5万ドル程度以下になると猶予になるということです。それから,それぞれ掛ける額が違っておりまして,例えば4万ドル収入があった場合,例えば3万ドルが最高額だとしますと,4引く3,それに一定の率を掛ける。現行は15%ですけれども,オバマ政権はこれを10%に変えるということを提案しております。というような形で返済を続けていくというやり方です。
 この場合,問題になるのは,先ほど言った利子率の問題と,もう一つは返済が余りにも低い場合には,当然ですが全額返済できないということが生じます。その場合の設計は国によって違いまして,オーストラリアの場合には,飽くまで本人が死亡するまで一生ついて回ります。それから,イギリスの場合は現行では30年,又は60歳になるまで支払はありますが,それ以降については残額は帳消しになるという仕組みです。アメリカにつきましては,現行は25年,オバマ政権の新提案では20年間返済を続けますと,残額は帳消しになります。あるいは公的サービスに10年間就きますと,残額は返済免除になる。こういうような仕組みです。これが各国の仕組みですので,もちろん国によって,今,御紹介しただけでも相当制度設計が違っております。これは飽くまでも各国の実情に合わせてできておりますので,日本において導入する場合には,日本の状況というものをよく考えてつくらなければいけないと思いますので,飽くまで参考ということで見ていただければと思います。
 その上で,本日,事務局から説明がありました主に資料の2に基づいて議論を進めていきたいと思いますけれども,大きな論点といたしましては,特に2と3について大きな課題があります。特に今申し上げました所得連動型の制度設計,それから,給付型,こういった点については非常に大きな論点になります。それから,前回も申し上げましたが,逆にすぐできることは直ちにやっていきたい。これは延滞金の問題でありますとか,情報リテラシーの問題ですとか,比較的取り組みやすいものについてはすぐに,来年度の概算要求にも乗せられるようなものはすぐやっていきたいということと,それからもう少し長期的に時間をかけて検討していかなければいけない課題というものは分けて考えなければいないということで,前回整理していただきました。
 最初に簡単に1ページ,「学生の置かれた経済的状況」についてですけれども,これについて何か御意見,御質問等ございませんでしょうか。私の方からで恐縮なのですけれども,これは後には出てくるのですけれども,大学院生の問題というのを少し入れておいていただければと思うんですね。今,大学院進学率が下がっていて,これは日本にとって将来的には非常に大きな問題になるかと思いますので,大学院生が非常に苦しい状況に置かれているというようなことはここに入れておいていただければと思います。

【保立課長補佐】  わかりました。

【小林主査】  ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

【前原委員】  前回欠席しましたが,ほとんど議論はいい方向に向かっておられるので言うことはありません。ただ大学でいろいろ見ていまして,奨学金を返せない状態がどういうケースかというのを調べたことがあります。就職の問題がほとんどでしたね。きちんとした正規の雇用になっていない場合に返済が滞るというケースが多発していました。これはこの委員会の仕事ではないのですが,文科省を挙げて是非,就職問題にもう少し取り組んでいただくといいと思います。
 同友会に来てからいろいろ調べてわかったのですが,求人数と求職数でいけば,日本全体では求人数,新規卒業者に対する求人数の方がはるかに多いです。ところが,大学のミス,それから,その本人のミス,親のミスがあって就職についてのミスマッチが非常に大きくなっています。特に地方にはかなりいい企業があるのだけれども,誰も応募しないというケースがあります。今,同友会でも全国の同友会にマッチングを一生懸命やってくださいとお願いしています。文科省としても是非もっと取り組んでいただくと,返済できない子供が減ると思いますので,その点だけよろしくお願いいたします。

【小林主査】  ありがとうございました。
 これは樋口先生,まさしく専門ですが,経済学で何かございましたら。

【樋口委員】  まさに若者・女性活躍推進フォーラムが5月19日にある程度のものを福岡で出すと思いますので,そこら辺も検討しなくてはいけないし,逆に言えば経済全体が活性化しないと,どうしても椅子の奪い合いという話になって,誰かが椅子に座れば,結局,そこからはみ出るようなこともあるわけで,その問題をどうするかというのは非常に重要なことだと思います。今回,競争力会議の下にそのフォーラムが設けられているわけですけれども,お互い相互関係にあって競争力を高めるためには,こういった若者,女性の活躍も必要でしょうし,逆に今度はそれを実現するためには競争力がないといけないという因果関係,結果という,そのところをどうするのかは,まさに産業界と一体となって考えないといけないというところだと思います。

【小林主査】  このテーマは,実は前回も出たのですけれども,かなり厚労省関係のことと重なっている部分が多くて,ただ単に学生の支援という小さな問題ではなくて,実は非常に大きな問題だというのは,多分,皆さん共通認識としておありだと思いますので,その辺を少し何かニュアンスを入れていただけるといいと思うのですけれども,よろしいでしょうか。これはまた戻っていただいても結構です。やはり2と3が非常に大きな問題ですので,この辺について今日は集中的に議論していきたいと思っております。
 その中でも本日,具体的に出てきましたのは給付的な支援をどうするかという問題でありまして,シミュレーションも簡単なものをつくっていただきましたので,そのあたりのことを前回の議論では給付型奨学金を導入することについて御異論はなかったと思います。具体的にこれを入れるとなるといろいろな問題点といいますか,制度設計しなければいけないところが出てきますので,1つのたたき台としてこういったシミュレーションをつくっていただいたわけですけれども,これについて,もう少し御意見をいただければと思います。先ほど前原委員から所得の把握の問題というのが出てまいりましたけれども,これも非常に大きな論点ですけれども,それを含めて,あるいはそれ以外のことについても結構ですので,御意見を頂ければと思います。

【樋口委員】  よろしいですか。

【小林主査】  はい。

【樋口委員】  シミュレーションの話に入る前に,私も前回欠席して申し訳なかったのですが,もう議論なさっているのかもしれませんが,ここに出てきている社会人の学び直しの問題における所得の把握といいますか,何をもって貧困というふうに考えるのか。まさに単線的であれば親の所得も含めて,その世帯所得で把握していくというようなことになるのだろうと思いますが,それが20代とか,特に30代,40代というようなところまで学び直しを考える。そこにおける経済的支援といったものを考えるときに,所得を個人の所得,あるいは資産で把握するのか,それとも世帯の所得というようなもので把握するのかによって大分その基準というのは違ってくるのではないかと思いますので,この一律に親の所得まで含めて入れる奨学金を考えるのか,その対象によってかなり違ってくるということも考えるのかということが1つあるのかなと思います。
 もう一つは,そもそもなぜ政府が経済的支援を学ぼうという者に対して与えるのかということを考えると,少なくとも経済学で言っているのは,1つは所得格差,あるいは貧富の格差によって勉強する機会の均等が達成されていない。そのため,その機会の均等を達成するために貧困層,学校に行けない人たちに対しての経済的支援を政府が責任を持って行うということがあると思います。もう一つは,むしろ社会に対する外部効果の問題があって,本人が学ぶことによっていい企業に,また,将来,所得が高まるということだけではなく,社会にプラスがあるのだ。その人が学ぶことで副効果といいますか,外部効果を生むのだというような,その2つの理由があって,それに基づいて奨学金制度というのは違ってくるのかなと。
 これは既に議論になったのだろうと思いますが,ここに出てきている経済的困難に基づく奨学的制度でいくのか,それとも成績優秀な育英的制度でいくのかというのは,この2つの目的によって大分違ってくるだろうと思います。特に前者の格差をなくすのだということであれば,経済的困難,これを重視して奨学金を出しますというようなことがあり,一方,むしろこれは外部効果と言っていいのかもしれませんが,そちらだということであれば優秀な人に対して外部効果が期待できるわけですから,奨学金を出すのだということで,そのスタンスがおのずからどちらの点を重視していくのか,恐らくそれはそれぞれの奨学金の制度によって違ってくると思うので,そういった理論的な整理を行っておく必要があるのではないでしょうか。あるいはもう議論になったのだろうと思います。
 その上でもう一つ忘れられている基準はないのかということを考えると,必要となる経費といったものをどう考えるのか。1つは学部によってかなり授業料というのも違っていて,それに対する奨学金を幾ら出すというようなところも違ってくるでしょうし,更には私立と国立の授業料の違い,これによって,どちらにいくのかによって必要となる経費が違ってくる。それによって差をつけるのか,つけないのかというようなところもあります。あるいは地方出身で生活費が余計にかかります。要は親元から通う,通学するのと,そこを離れて上京し,そして通学する。これによっては経費が違ってくるわけですから,そこでの経費の違い,学ぶ上での経費の違いといったものをこの奨学金に反映させるのか,反映させないのか,あるいは経済的支援に反映させるのかどうかというようなところも議論になったのだろうと思いますが,1つ論点としてあり得ることかなと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。
 前回もいろいろな形では出ているのですけれども,今,樋口先生が言われたように明確な形でまだ整理はされていないので,その辺はもう少し詰めていかなければいけないと思っております。最初の社会人の件につきましてはいろいろな形で出ていますけれども,これは具体的にどういうふうにそれでは所得を把握するかというのは,これは全体的に,社会人だけではなくて家計単位なのか,個人単位なのかというのは大きな問題ですので,これはまた議論していかなければいけないと思っております。
 それから,そもそもなぜ国が教育に公費を投入するのかという議論については,経済学で言われている2つの理由のとおりだと思います。ただ,もう一つ,これが本当に理由になるかどうかわかりませんけれども,各国で今問題になっているのは,むしろ中間層の教育負担が非常に重い。つまり,低所得層の方はわりと給付型奨学金で手厚い補助を受けられる。ところが,中間層はそういった恩恵を受けることがかなり少ない。教育費負担だけが重くなっているという問題がありまして,アメリカとかイギリスでは,そういった中間層問題というのがむしろ今取り上げられているところです。ですから,これも論点として入れるかどうかということは,議論の余地はあるかと思いますけれども,一応,そういうことがあるということです。
 それから,経費の差の問題は全然まだここでは議論しておりません。これは現行の日本学生支援機構の場合でありましても私立と国立とは違いますし,あるいは自宅,自宅外で異なっておりますので,これをどういうように制度設計していくかというのは非常に大きな問題だろうと思います。それから,そもそも授業料の違いということになりますと,これはもっと大きな問題になりますけれども,全体として公費,国立大学の運営費交付金と私学助成をどうするかとか,そういう非常に大きな問題を含んでいることは事実なのですけれども,これはかなり長期的な問題になりますので,視点としては必要だと思いますけれども,直ちにというのはなかなか難しいのではないかと思っております。ありがとうございました。

【樋口委員】  最後の点,ごもっともで,なかなかすぐには解決できないのだろうと思いますけれども,ただ,やはりこういう公的資金による支援というものを1つは個人支援,もう一つは機関支援ということを考えると,やはり総枠に考える必要があるのかなと思うわけです。ですから,片方で機関を通じて,要するに大学への助成金,あるいは国庫補助を通じて支援を受ける。それで授業料が安くなっているというような面と,片方,直接個人に対して奨学金なり,いろいろな形での経済的支援をする。これを個別に考えていいのかどうか。個別に考えると,まさに逆に問題がいろいろ複雑になってくるという面があって,どちらを選択するのだという話が,結局,将来全て高等教育も無償化というようなことになってくると,結局,両方を足してという議論になってくるのだろうと思うのです。

【小林主査】  是非それは,私もそのことは非常に痛感しておりますので,長期的な課題としましては,例えば授業料免除のこととかもありますけれども,もう少し大きな問題としては,今言われましたように機関補助の問題を個人補助と切り離して議論してもいいのかというような問題ですね。ですから,その辺は全体として公費の補助をどういう形で行っていくか,国立と私立の違いも含めてそういうことを問題にしていかなければいけないというのは,もうそういう時期に来ているのだと思います。ですから,これは中長期的な課題として是非,これから検討していきたいと思います。

【樋口委員】  そうですね。わかりました。

【小林主査】  この委員会の課題を超えるようなところがありますので。ただ,是非,指摘はしておきたいと思います。ありがとうございました。
 どうですか。

【前原委員】  今の樋口先生の話に関連して,これは私学のケースだと思うのですけれども,最近,競争が非常に激しくなっているので,ファンドをつくって奨学金をいろいろと工夫している大学が増えていますよね。その辺の実態もよく我々教えていただいて議論しないと,何かとんちんかんな議論になるおそれがあるのかなという感じがいたします。

【小林主査】  私学の基金,エンドーメントについては私たちの方でも,私たちの大学でも幾つか調べたりはしているのですけれども,これについてはまだ確かに余り手がつけられていない問題でありまして,ですから,1つは国が,あるいは都道府県がやるような助成と民間,例えば松本先生のところでやられているような民間育英団体,あるいは大学が独自で行うような支援というのもありますので。

【前原委員】  はい,今いろいろありますよね。

【小林主査】  そういうものを全体含めて役割分担をどうするかという問題であろうと思います。私の意見を余り申し上げるのは適切かどうかわかりませんけれども,国の方はやはりベースとして広く薄く支える。民間なり大学というのは,それぞれのターゲットを明確にして支援を行っていく,恐らく,そういう違いが出てくると思います。ですから,その辺の役割分担をどうするかということも,ここで議論していただければと思います。
 いかがでしょうか。

【中村委員】  よろしいでしょうか。

【小林主査】  はい。どうぞ。

【中村委員】  専門学校の立場でお話しさせていただきます。今お話がありましたように,専門学校入学者は様々な方がおり,6割ぐらいが高校新卒者,4割が学び直しの方で,離職者等の社会人経験者並びに大卒新卒者から短大新卒者までが同じ教室で,同じ授業を受けております。離職者の方には,厚労省から離職者支援補助で授業料を補ってもらっている方,また,奥さんの収入で学費を賄っている旦那さんもいらっしゃいます。
また,ここ数年は母子家庭が急増しており,その家計収入にはがく然としてしまう家庭も少なくありません。教育ローンの貸与を受けられなくなるので生活保護を受けていないという家庭もあります。専門学校としても経営が可能な限り学生生活環境が少しでも維持できるように手を差し伸べておりますが,残念ながら経済面における中途退学者の数は年々増える傾向にあります。できれば卒業まで何とかしてあげたいのですが,私どものような小規模経営の専門学校においては,その救済が非常に困難であります。
このように本当に種々様々な環境の方々が入学してくるという実情と専門学校の経営状況も是非,御理解いただき,奨学金貸与や給付制度の御検討の中にお含みいただきたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。
 専門学校については,前回もかなり議論いたしましたけれども,かなり重要な役割を担っていることは事実ですので,そこも忘れないでほしいということだと思います。
 ほかに御意見,いかがでしょうか。どうぞ。

【相川委員】   2ページのところの学生への経済的支援の目的,目指す方向性というところで,将来的に高等教育の無償化に向けてというところに進んでいければいい,それはそれでいいと思いますが,高校生が,じゃあ,みんなが大学へ行くかといったらそうではないわけで,就職する生徒もいるということを考えたら,授業料の奨学の観点というところで,やはり更に学んでいきたい,でも,経済的に十分ではないというような子供たちを支援していくということの方が何か公平感という観点での問題が残ると思います。
 就職する生徒でも進学したいけれども,経済的理由で進学を断念する子供たちもいるわけですから,そういうところの支援も視野に入れていただきたい。今,高等教育の無償化,高校の無償化といろいろありますけれども,ある程度の制限というか,その辺は今議論されているところですので,そういう片方の生徒の支援は確かに必要です。でも,就職する生徒もいるということをやはり考えていかなければいけないのかなと思います。

【小林主査】  ありがとうございました。
 次回またお出ししたいと思いますけれども,私たちの調査の方で進学しなかった者について,経済的な理由で進学できない,あるいは給付型の奨学金があれば進学したかったという人がどれくらいいるかという推計をやっておりまして,前回,2006年のときは大体7%,全18歳人口の7%程度で,今回の調査でもう少し減ってしまって,私は逆だと思っていたのですけれども,減ってしまって5%程度になっているのですけれども,5%と申しましても120万人の5%ですから6万人程度いるということですので,決して無視できる数字ではないと思います。それはまた次回,具体的な調査結果を出したいと思います。

【相川委員】  はい。

【小林主査】  ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。特にこの2のところが今議論になっているところなのですが,先ほどありました育英か,奨学かというのは,この学生支援の場合の一番基本的な論点の1つでありまして,確かにどちらかという2項的なものではなくて,目的に応じて組み合わせていかなければいけないのはそのとおりだと思うのですけれども,日本の場合は片方だけというのは実は少ない。育英だけという奨学金は若干ありますけれども,国がやっていたものは全て両者の組合せで今までやってきております。ですから,その辺をより,程度の問題だと思うのですが,育英のことを重視して経済的な観点も入れていくのか,それとも逆にまず奨学が基本であって,そこに育英的な観点を入れていくのか。今回のシミュレーションはどちらかというと,まず奨学的な観点,経済的な必要性の方を重点において,それから絞っていくという形をとっているのですけれども,このあたりについて御意見をいただければ有り難いのですけれども。
 前原先生,前回のとき,最後にこの議論をしたような覚えがあるのですが,御意見を伺えればと思うのですが,ニードベースか,メリットベースかということでかなり議論された記憶があるのですけれども。

【前原委員】  そうですね。さっき先生がおっしゃったようにベーシックなところを国が面倒を見るということになると,やはり経済状態を考えますけれども,経済界から見るとやっぱりインセンティブがある方が望ましい。特に日本の大学生の勉強の仕方というのは,かなり緩いですよね。それに対する危機感を持っているので,もっと本当にきちんと一生懸命勉強してほしい。もっと強い若者になってほしいという思いがありますので,何かインセンティブがある方が有り難いという気持ちはあります。

【樋口委員】  多分,成績に応じてというのですけれども,成績が高校のGPAでいいのかという問題になってくるだろうと思います。

【小林主査】  はい,その問題です。

【樋口委員】  今のは,むしろ大学での。

【前原委員】  大学生の。

【樋口委員】  成績といいますか。

【前原委員】  そういう意味では事後的にある程度頑張った子にあげるというのは1つの方法かもしれないなと思いますけれども。

【樋口委員】  はい,そうですね。

【小林主査】  前回少し,先ほど事務局からもありましたけれども,出ているのは予約型の返還免除という考え方でありまして,これは現行の大学院生の奨学金返還免除制度を少し変えたものなのですが,余り基準を高くしてしまうと,先ほどありましたように予見可能性というのが低くなってしまいますので,ある程度のラインの成績をおさめていたら返還を免除する。これをどの程度にするか,例えば上位の4分の1にするのか,3分の1にするのか,その辺は議論だと思いますけれども,そういう形で返還を免除する。そういうのも1つ考えられてもいいのではないかなと思ったのですけれども,そうするとかなりインセンティブになるかと思いますが。

【樋口委員】  大学院の場合には研究とかという形で同じ目的でみんないると思います。ところが,大学生の場合には,まさに多様な人材をいかに伸ばしていくかというのが今の日本で問われている問題かなと。単に学業成績がいい者を成績がいいというふうに言っていいのか,それとも積極性であるとか何とかという,まさに高校からの大学入試のときに一般入試と指定校推薦とか,いろいろな推薦,英語とかというのを組み合わせて各大学ともやっていて,多様化の方向に向かおうとしている中において,今のやり方はどちらかというと一般入試の高校の成績で見ます。あるいはその時点における成績で見ますというやり方になっているわけですよね。果たして時代というか,社会の求めている外部効果を将来発揮できる人間をどう考えるかといったとき,それで良いのでしょうかという問題があります。では,どう変えるのかと言われると困るのですけれども。

【小林主査】  前回議論になったのは,一律のテストといいますか,例えば大学入試センター試験のようなものを使うのかどうかということなのですけれども,それは1つの考え方だけれども,今まさに言われたように一般入試の考え方になるわけですね。ただ,そうなりますと,多分,これは非常に千差万別になりますので,大学なりが推薦するという仕組みにせざるを得ないのではないかと思いますけれども。

【樋口委員】  はい,そうでしょうね。

【小林主査】  それで良いのかという議論を少しした方がよろしいかと思います。現在の大学院の優秀者免除もまさしく大学が推薦しているわけですけれども,それと同じような,それぞれの大学が個性に応じて選ぶというような方式がよろしいのかどうかということですね。私が懸念するのが1点だけでありまして,この方法ではかなり主観的なものにならざるを得ない場合がありますので,特定の主観だけで判断する,例えば極端な話で言いますと,大学の先生の好みで選ぶというようなことになりかねないということになると非常に問題が大きい。
 これは単なる貸与の問題ではなくて,やはり返還免除になりますと金額がものすごく大きくなりますので,皆さんが納得する公平性という問題がついて回りますので,そこのところは非常にしっかり議論しておかないと,後で私はもらえなかったのになぜ彼が,あるいは彼女がもらえるのかという問題を引き起こしかねないので,そこはもう少し精密な議論が要るのではないかと思いますけれども,いかがでしょうか。

【樋口委員】  むしろ,小林先生に教えていただきたいのですが,アメリカあたりでの制度,国の用意している奨学金制度における,そこにおける成績というのは何を見ているのでしょうか。STAとは必ずしも。

【小林主査】  これは全く公的,先ほど申し上げましたけれども公的な仕組みにおいては完全に経済的な要件だけです。

【樋口委員】  そうですよね。

【小林主査】  はい。ブッシュ政権のときにスマートという名前で優秀者の奨学金,特に数学と理科についての優秀者奨学金というのをつくりましたけれども,現在,これはありません。ただ,州政府奨学金でありますとかなりまだメリットベースのそういった優秀者奨学金というのがあります。ですから,非常に千差万別なのです。それから,大学独自について言いますとやはり両方の基準で,これはまさしく大学がどういう人材を育てたいかということで,それぞれの大学が基準をつくってやっているということになるかと思います。
 蛇足かもしれませんけれども,日本からすると,今,私が申した懸念と全く逆でありまして,非常に主観的にやっているというふうに私からは見えます。

【樋口委員】  そうですよね。まさにそうなんですね。

【小林主査】  今の給付の基準についていかがでしょうか。もう少し,ここは重要な点ですので詰めたいと思うのですけれども。

【松本委員】  成績をどう把握するかという問題があります。

【小林主査】  成績といいますか,基準です。

【松本委員】  もちろん,学業成績的なものもあると思います。

【小林主査】  先生のところは,この前お聞きしましたけれども。

【松本委員】  うちの場合はやっぱり面接試験ですね。

【小林主査】  面接で。

【松本委員】  面接試験と言うとちょっとおこがましいですけれども,徹底的に本人といろいろな面で話し合って,その中で把握できることがたくさんあると思います。例えば今,日本の若者に必要だと言われている単なる英語力だけではない,TOEFLとかTOEICだけのレベルではなくて,もっとコミュニケーションをする力だとか,そういうものがこれからの人材として要求される面が非常に多くなってくると思うんですね。そのためには面接というのが有効だと思います。貸与型が残っていますので,返還免除制度というのがあって,4年分,全額返還免除するという制度があるんです。ここから給付型に移行していったのですけれども,やはりこの奨学金支給の仕事をやっていまして一番楽しいのがこの返還免除の面接試験なんです。
 決まったときに内示しますと,やったーと言ってみんな喜んでくれまして,こちらのインセンティブにもなるのですけれども,そういう意味でやはり,面接,フェース・トゥ・フェースの部分はどうしても必要です。では,これを誰がやるのか。うちではいろいろな大学の学生課長や奨学金支給担当の方と食事もしますし,お話もするのですけれども,あの方々は非常に熱心ですよね。学生と接触することに努力されています。ですから,何とかそういうものも活用と言うと,またこれもおこがましいですけれどもお願いをして,そこに大学の先生方も付かれて,選考委員会というか,そういうものが必要なのではないかと思います。もちろん,学業成績的なものも当然必要だろうと思いますけれども,プラスアルファのその部分がないとなかなか難しいかなと思います。

【小林主査】  相当きめの細かな審査基準といいますか,選考基準というものをつくっていって丁寧にやっていくというのはそのとおりだと思います。できれば面接ですとか,もちろん入れた方がよろしいかと思いますけれども,そうなると大学の方の手間がかなりかかりまして,私,以前,金融リテラシーの教育というのを大学で入れるべきだということを中教審で申し上げたら,中教審の別の部会の委員だったのですけれども,そんなことは,大学に負担をかけるので,今の大学ではできない。出来もしないことを言うのは無責任だと。今の大学にそんな余裕があるわけないだろうと言われてしまったのですが,その辺どうでしょうか。具体的に大学の先生方,何人かいらっしゃっていますので,奥舎先生。今の件,あるいは,それでなくても結構ですけれども。

【奥舎委員】  私,松本先生が言われたとおり,貸付け決定者と回収決定者が違うということや貸付け決定者に責任がないことが,はっきり言えば今の奨学金の滞納額増加に至ったと思っております。ですから,特に給付型の貸付け,いわゆる貸与する場合は必ず地域貢献とか,社会貢献とか,コミュニケーション能力でありますとか,ボランティアとか,震災に対する支援とか,そういうものを加味した第三者機関であり,客観的な機関が,例えば大学でできなかったら広域連合でつくるとか,各県単位で大学を連合したものでつくるとか,そういうことの組織づくりを大学に働きかけていけばいいと思っております。
 大学が多い関東圏域でしたら,私大と国大と分けたり,公立大学と分けて,それぞれ,大学間で選抜した委員によって,特に育英部門の奨学金については,その委員会に権限を与える。貸付け決定者が責任を持つ。何%かあるかはわかりませんが,もし仮にそれが不納欠損になった場合は,それは許していただかないと業務はできないと思っております。そういう方法も1つあるのではないかなという感じがいたしました。

【小林主査】  ありがとうございました。
 確かに1大学でやるというのは大変だと思いますので。

【奥舎委員】  無理だと思います。

【小林主査】  それも1つのアイディアだろうと思います。
 濱田先生,いかがでしょうか。

【濱田委員】  ちょっと論点がずれてしまうかもしれませんが,芸術系の大学ですとか,体育系ですとか,少なくとも一般入試だけではなく,様々な能力を判断して入学許可を出すべき領域もありますので,入学の学力だけでもって判断をするのは問題があるのではないかなという系統の学部をお持ちの大学。更にそういった系統の単科大学,そういったところで学んだ人たちの成果をどう評価するのかというようなノウハウが各大学の中に散在しているのではないかと思います。ですから,今のお話とそういった意味ではつながるかもしれないのですが,連合させて1つの基準をつくっていくとか,考え方をまとめていくということもあってよろしいのではないかと思います。

【小林主査】  ここのところ,かなり私はクリティカルなことだろうと思っていまして,先ほどの繰り返しになりますけれども,大学が社会から信頼されていないと適当なことをやっているのではないかと言われるのが後で一番まずいわけですので,樋口先生が言われた,最初にお出しになったので是非,御意見を頂きたいのですけれども。

【樋口委員】  要は外部効果を期待する人に出したいということですよね,この奨学金は。

【小林主査】  はい,そういうことです。

【樋口委員】  そうなってくると,成績だけではやっぱり,まさに企業がそう思っているところで,就職でどこまで成績を見ているのかという話と関連するところはあるわけですから。と思いますね。

【小林主査】  大学として可能でしょうか。あるいは大学連合でもよろしいのですけれども,そういった適格な方を選ぶということなのですけれども。

【樋口委員】  少なくとも今,入試がいろいろ多様化して,ほかの大学はわかりませんけれども,うちの大学もいろいろなもので,明らかにそれを見ているというところが指定校推薦であるとかにあって。実は奨学金で,それを今年から予約付きの奨学金をやっているのですけれども,そこでは完全に論文を見ます。

【小林主査】  論文ですね。

【樋口委員】  はい。4,000字の論文,テーマを出して,日本の何とかについてどうか。それで上位何人に奨学金を出しますというようなことをやったりしているので,そこがはっきりしてくれば。それで,論文は何人もの先生が読みますが,わりと結果は似ているものが出てきます。先生の主観というのは,それほど介入しません。

【小林主査】  問題にならない。

【樋口委員】  これはやっぱりというのが出てきます。

【小林主査】  わかりました。前原先生,外から大学を御覧になっていると思うので,先ほどは中の話でしたけれども,大学がそういうことをやって社会から信頼を得られるかということ,私は非常に気になりますので,その辺,いかがでしょうか。

【前原委員】  実は大学独自の奨学金をいろいろやっていました。セレモニーもなく支給していました。それはよくないんじゃないか。みんなに知らせて,みんなのいるところで,しかも,家族も招待して渡しなさいというように変えましたら,ものすごく学生たちの意識が変わりました。さっき奥舎先生が言われたように,成績だけではなくて社会貢献とか,理由もちゃんと言って,こういう理由によってこの人に奨学金を渡しますということをみんなに知らせてやるようになったら,もらった人がプライドを持って更に勉強したり,活動するようになったという効果がありましたね。同じ金額とか渡しているだけなのですが,やり方によっても変わります。私学の場合,そういうことは非常に大事なものですからね。私はやっぱり学生たちがもっと成長するために使われるのであれば,それをきちんと説明できるのであれば批判はされないと思いますけれども。

【小林主査】  ありがとうございました。多分,外部効果,あるいは外部経済があるというのが一番重要だというのはそのとおりなのですけれども,これがまた計りにくいという問題がありまして,そうなるとやはり審査ができるだけ透明性を持っているということが重要だろうと思いますね。

【前原委員】  はい,そうですね。

【小林主査】  外から見て不透明だと,また何をやっているのだということになります。

【前原委員】  こういう理由でやっているのだということがわかっていれば。

【小林主査】  はい。その辺を明確にしていけば。

【前原委員】  そんないいかげんな大学の先生はいないと思いますから,きちんと選んでくれると思いますね。

【小林主査】  そうなると,先ほどからの議論になりますと,これは具体的な制度設計になりますけれども,どういうタイプの手法,見解によっても変わる可能性がありますし,それから,大学なり大学連合なりで変わるという可能性もあっていいと思いますね。それぞれが重要だと思う点について基準を設けていけばいいという話になりますので,これができるとかなり,特に公的なものでこれができるとなるとかなり大きなことになると思いますし,少し明るい希望が持てるという気がしますね。今までの奨学金の議論というのは何か,金を返せとか,そういう話ばかりで余り希望が持てない。

【前原委員】  そういうのは,よくないですね。

【小林主査】  よくないのですけれども,少し前向きな話になってくると思いますので,そういう意味では非常にいろいろな意見を頂いて。具体的にやっていくにはいろいろ課題はあるかと思いますけれども,余り今までの基準に捕らわれないでむしろやっていく。日本型の,日本にふさわしいような給付型をつくっていくということだろうと思います。ありがとうございました。これは非常にいい議論を頂いたと思います。
 もう一つ,これに関連して先ほど少し紹介がありました給付と貸与を併用するといいますか,以前,特別貸与という制度が日本にもありまして,先ほど説明があったとおりなのですが,これは実はドイツは今でも基本的にはこういう形でやっておりまして,それから,イギリスも以前はこの形でした。スウェーデンも今この形をとっていますので,形としてはない制度ではないのです。メリットは,当然,半額給付,半額貸与になりますので,限られた財源の中では多くの人に配ることができるというメリットがあります。ですから,これも少し考えていいのではないかと思うのですが,この辺,いかがでしょうか。恐らく,一番大きな問題は財源との関係だろうと思いますけれども,少しでも多くの人に使っていただくということになると,そういうやり方も考えていいのかなと思いますが。

【前原委員】  そうですね。いいと思いますね。

【小林主査】  どうぞ。

【相川委員】   私は基本として借りたものは返すということは,やはり持たなくてはいけないと思います。半分特別給付というか,半分返して半分頂いてという,頑張ったものに対してのプラスという効果,それはそれで子供の頑張りに対して評価してあげるということも良いと思います。大切なことはその人が社会生活を送る中で,借りたものは,やはり返すというスタンスというものを残しておいても私はいいのではないかなと思います。全て給付型という形が果たしてどこまでなのか,それこそ財源の問題も考えたときにという気はしますね。

【小林主査】  恐らく,外部効果が高いという人は個人に対する所得も高くなる可能性が高い人で,例外的な方はいるかもしれませんけれども,返済能力はかなり高いと思います。ですから,そういうことを考えてもいいかなという気はいたします。もし例外的に所得が低いような特別な仕事に就かれるような方がいたら,それはまた考えればいいかなという気はいたしますけれども,ありがとうございました。
 いかがでしょうか,今の点について。どうぞ。

【濱田委員】  かつての特別貸与は入学前の確か選考で決められましたよね。

【小林主査】  そうです。

【濱田委員】  その後,入学後の,あるいは卒業に至るまでの学生生活の中でのその学生の努力や,成果というものが必ずしも反映されていなかったというふうに私は理解しているのですが,それでよろしいですか。

【松尾課長】  そうだと思います。

【濱田委員】  したがって,入学前選考という形よりも,入学後に特別貸与という制度が立ち上がるということも考えられてよいのではないかという考えを私は持っています。

【松尾課長】  入り口ではなくて,むしろ出口ですね。

【濱田委員】  はい。むしろ,出口を意識して,それは経年的に判断するということです。該当しない年もあるかもしれないとか,いろいろなやり方があり得ると思います。

【小林主査】  整理しますと2つありまして,1つは高校までのことをどういうふうに評価するかという問題ですね。それから,入ってからどういうふうに評価するという2つありますけれども,今おっしゃったのは入ってからの方を重視したいということですね。

【濱田委員】  そういうことです。

【前原委員】  お金が潤沢にあるのであれば両方ある方がいいですけれども。

【松本委員】  返還免除はそうですね,後がいいですね。やはり後の方が喜びもひとしおだと思います。

【樋口委員】  このスカラーシップをもらったことが勲章になって,就職にもつながっていくというのが。

【小林主査】  その方がいいですね。

【樋口委員】  いいなと思います。金額もありますけれども。

【松本委員】  企業の採用条件の1つになるぐらいに。

【前原委員】  言うなれば一種の表彰ですよね。

【樋口委員】  そうだと思いますね。

【前原委員】  成績表彰と善行表彰というのをやったらいいと思います。いいことをしたら表彰して支給するとか。

【小林主査】  そうしますと,もう1回整理しますと幾つか方式があるわけで,事前にという場合で言いますと完全な給付型で,これは先ほどから出ていますようにいろいろな基準であり得る。それからもう一つは,今の返還免除を事後的に行うということも考えてもいい。それから,その場合,給付と貸与を併用するような形で考えてもいいというようなことだろうと思います。出てきた議論というのを非常に大きくまとめてしまいますと。具体的には,これは大学なり,あるいはもう少し大きな大学連合みたいな感じで考えていくということでできるのではないかというのが,今日出てきたようなことだろうと思うのですけれども,この点について御意見等ありますか。

【中村委員】  よろしいですか。

【小林主査】  はい。どうぞ。

【中村委員】  家計の立場からお話しさせていただきますと,4年間なら4年間,今の家庭収入でうちの子は大学でお世話になれる保障がされますよねというところが,まずは大学へ進学ための,家庭が子供を送り出すときの一番のポイントかなと思うのですけれども,まずはそこの安心を家庭にしていただきたい。4年間,うちの子は大学でちゃんと履修できる,生活と機会を提供されますよというところがまず欲しいかなと思います。

【小林主査】  ただ,それは先ほど申し上げた,どちらかというと予見可能性からすると低い方がいいですね。余り高くしてしまうと,ハードルを上げてしまうと返還免除にならない可能性がありますから,そこそこ,そういう言い方は語弊がありますけれども,それをきちんと納めていれば返還免除になりますよと,そういうような制度設計をしていけばいいのではないかと思います。もちろん,先ほどから出ていますようにいろいろなほかの要件,例えば地域に貢献するとか,これは大学でもあり得ますので,そういった要件も加えて,いろいろな要件があればそれは返還免除に該当しますということにしていけば,かなり適用範囲は広がるのではないかと思うのですけれども。
 どうぞ。

【松尾課長】  1点だけ補足して言いますと,貸与であるか,給付であるかというのはいろいろあるのですけれども,その言葉に左右されないで言うと,例えば4年間なら4年間,奨学金というお金を受け取る。そして,その後に免除されるかどうかは別として,例えば所得に応じて返還をするということになると,所得が上がった段階で返還をする。要するに所得が低い段階では,無理に返還してもらうようなことはしません。所得に応じて返還額を決めていくというような形にすれば,ある程度,最終的には返してもらうのですが,所得が低いときには返還額は低く,所得が高いときには,所得に応じて返還するというような形で,所得連動というのを導入し,そこはローンなのか,フェローシップなのかというのはありますけれども,4年間はしっかりとお金が渡る。そして,あとは所得に応じて返してもらうということで安心感をというのが目的で,それに加えてどう免除するかというのはあると思うのですけれども。

【中村委員】  前回もお話しさせていただいた,できれば入学金とか前期のかかる費用のところも担保いただくと非常に親としては有り難いというのはありますね。

【松尾課長】  そういうことですね。

【中村委員】  ここの時期では非常に難しい。

【小林主査】  これは前回も労金を使うとか,そういう話がありましたけれども,それを利用すると手続が2回になってしまうというようなことが改善できないかというお話があったと思います。この辺はすぐにはできないかもしれませんけれども,また考えていく必要があるかと思います。
 いかがでしょうか,特に給付型についていろいろ御意見を頂いて,アイディアもいろいろ出てまいりましたけれども,これはまたいろいろなケースが出てきましたので,整理しないと,次回までにもう少し整理しておいて具体的にわかりやすいようにしたいと思います。今,所得連動型について松尾課長からありましたけれども,これについても大きな論点になりますので,先ほど各国でこのような形で行われているということを紹介いたしました。日本でも現在の所得連動型をもう少し拡大していきたいということで考えているのですけれども,これについて御意見を頂ければと思うのですけれども。
 これは本当に国によって考え方がいろいろでありまして,例えばアメリカとかオーストラリアの場合には本当に所得だけが基準なのです。いろいろな控除的なものをつけますと,所得税の考え方のような控除ですね。JASSOの場合で言いますと認定所得という言い方をされるようですけれども,そういったものをつけておくと,かえって複雑になってわかりにくい。例えば所得が400万円以下だったら自動的に猶予ですよというと非常にわかりやすいということがあります。オーストラリアで聞いたときには,そういうこともありまして現在は500万近くまでは自動的に猶予になるという仕組みをつくっているというようなことだったのですけれども,この辺の具体的な制度設計をこれから考えていかなければいけないと思うのですけれども,先ほど出ましたように現在の場合には,一応,家計が単位になっているということは間違いないわけですよね。

【松尾課長】  そうです。

【小林主査】  そうですね。現在の制度設計。ここでは触れていませんけれども,先ほど樋口先生から少し御質問がありました。単位は,飽くまで家計ですよね。

【松尾課長】  そうです。

【小林主査】  家計所得で考えている。返済の場合もそうですね。

【月岡理事】  返還時は本人の所得です。

【小林主査】  ああ,そうですね。

【月岡理事】  卒業後の本人の年収です。

【小林主査】  本人の所得だけですか。

【月岡理事】  はい。

【小林主査】  いや,ですから,そこが非常に大きな問題で,そうすると例えば専業主婦のような場合で,これは男でも女でもいいのですけれども。

【月岡理事】  御本人が被扶養者である場合は,所定の事情があれば,所得連動返還型無利子奨学金の猶予の対象となります。

【小林主査】  とすると,やはり単位としては家計になっているということですね。つまり,本人の所得だけで決まるわけではないということですね。すみません,何を言っているかわからないかもしれないので説明いたしますと,本人の所得が300万円以下だったら返済が猶予になるという仕組みですと,専業主婦の場合では,所得がない場合には自動的に猶予になってしまうという問題があるわけですね。配偶者が非常に高額所得者であるということだってあり得るわけです。ですから,そういう場合は家計を単位にして考えるべきだというのが,これについても国によって考え方が違いますので今お聞きしたのですけれども,ですから,日本の場合には,そういう形で家計が単位になっていると考えてよろしいわけですね。

【前原委員】  源泉徴収みたいなことはやっている国があるみたいだけれども,日本でできるのでしょうか。

【松尾課長】  源泉徴収の場合は各企業にお願いをしなければいけないので,それはお願いをしていかなければいけません。それができるかどうかという課題はあります。

【前原委員】  それと,今,先生がおっしゃったような結婚している方の場合。

【松尾課長】  そうなのです。あとは歳入庁が徴収しているケースもありまして,そこは本当に国税にしなければいけないですけれども。

【前原委員】  どういう事務的な仕組みをつくるかですね。

【松尾課長】  はい。そこの徴収の仕方は恐らく,企業にお願いするか,歳入庁にお願いするかいろいろあるので,そうでない場合は,もう今,JASSOがやっているような形での返済ということになりますので,ちょっとオペレーションは。

【前原委員】  違いますよね。

【松尾課長】  はい。いろいろあろうかと思います。

【前原委員】  収入確認の上でやるわけですから。

【松尾課長】  はい。

【小林主査】  現在でも理論的にはできないことはないわけですよね。所得を全部申告してもらって,それに応じて一々計算して返済額を決めていけばいいわけですから。ただ,それは現実問題としてはとてもできないということなので。

【前原委員】  はい。大変な事務です。

【小林主査】  今,松尾課長の方からありましたように,所得が自動的に把握できるようになれば,少しはそれが楽になる。更に源泉徴収ができればJASSOとしても非常に楽になる。そういうことなのですけれども。これは余談になりますけれども,オーストラリアで最初にこの方式を導入したときも,やはり国税庁が一番大変だった。説得するのに,なぜ自分たちはこういうことをしなきゃいけないのかというようなことで非常に大変だったということは聞いていますし,アメリカでも同じような問題がありまして,アメリカでは現在,源泉徴収は行っておりません。ですから,その辺は是非,文科省に頑張っていただかなければいけないのですけれども,これができると非常に,いわゆる延滞問題というのはかなり片づくと思います。いかがでしょうか。

【前原委員】  歳入庁みたいなものになってしまえば,やりやすいですけどね。

【松尾課長】  いいとは思うのですけれども。ただ,歳入庁は歳入庁でちょっと業務負荷になってしまうので,そこはよくよく調整しないと恐らく難しいと思います。

【奥舎委員】  先生,よろしいですか。

【小林主査】  はい。どうぞ。

【奥舎委員】  私,この間,ある本で読んだのですが,小さな短編だったのですけれども,教育的貧困の境目の所得というのが世帯で300万円,400万円,日本の家庭でですね。それから,400万円から500万円,この2つの階層で前の階層の世帯については,教育的貧困のケースが多い。7割方の感じで数値が上がっておりました。その次が400万円から500万円。300万円から500万円ぐらいの世帯の所得というのは日本を今一番支えている,一番大事な社会を支えている世帯が教育的支援を受けないというのは,私,一番残念だと思っていますし,いわゆる奨学金の無償,猶予ということにつきましては,社会を支えている中間層の世帯を是非とも御支援いただきたい。これを強くお願いしたいと思います。

【小林主査】  ありがとうございます。
 これは先ほども少し申し上げましたけれども,今一番,各国で焦点になっているのは,むしろそこなのです。日本はそこがおくれていまして,低所得層に十分でないので,まずそこからということなのですけれども,中間層が非常に大きな問題になっていることは事実です。
 いかがでしょうか。所得連動型については,こういう方向で導入していくということでよろしいでしょうか。細かい制度設計はこれからいろいろ考えていかなければいけないと思いますけれども,更に拡大していくということで,特に国税当局と非常に緊密な連携が必要だと思いますので,その辺も含めてこの方向でより具体的な制度設計をしていくということでよろしいでしょうか。

【中村委員】  是非,有利子も無利子も合わせてお願いします。

【小林主査】  はい。

【前原委員】  変な質問をしていいですか。

【小林主査】  どうぞ。

【前原委員】  以前に大学で教えているときに社会人学生の方が非常に増えてきて,しかも,定年になった人がいっぱい来るようになっていましたけれども,ああいう方たちは年金しかもらっていないから,所得でも該当し,非常にまじめですから成績でも該当する。そういう方はどうなるのでしょうか。

【小林主査】  その辺も国によって考え方が違います。

【前原委員】  非常に増えていますよね。

【小林主査】  はい。イギリスの場合ですと,ある年齢層以上になると授業料についてはローンが借りられるのですけれども,生活費についてはローンは出せないというようにして。

【前原委員】  奨学金はどうですか。

【小林主査】  奨学金は,基本的には,ですから,ありますけれども,適用範囲がかなり狭められます。

【前原委員】  その辺もやっぱり決めておかないといけないですよね。

【小林主査】  はい,そうです。

【前原委員】  社会人といってもいろいろな社会人がいるので。

【小林主査】  はい。そうです。ただ,基本的に,そういった方たちも社会人として促進するという,そういう方針であれば逆に出さなければいけないということになりますし。

【前原委員】  ただ,生活はみんな豊かなんですよね。退職金ももらっていて。

【松尾課長】  そうです。

【前原委員】  いや,ですから質問したんです。そういう人がいっぱい,終わりごろいたので,興味深い傾向で,まじめですからすごく勉強するんですね。それで,インカムだけで見たら,そんなに多くないわけです。年金ですから。

【小林主査】  ああ,そうですか。

【前原委員】  ですから,多分,該当してしまうと思うんですね。

【松尾課長】  そうですね。

【小林主査】  その問題も確かに考えておかなければいけない問題だと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。あと,今の問題に関連するところもまだあるのですけれども,所得連動型についてはこれくらいにいたしまして,ほかのその他の件について今後特に,先ほど幾つか出ましたけれども,ここで検討しておいた方がいいということがありましたら,是非,御意見を頂きたいのですけれども。どうぞ。

【奥舎委員】  機構の方にお伺いしたいのですけれども,私,勉強不足で失礼なことを言うかもわかりませんが,奨学金を借りるとします。そうしたら,返すときは元金均等とか,元利均等とかいろいろありますね。どういう支払方法なのでしょうか,実務的には。返すときは。例えば10万円を1年間借りて120万円で医学部へ行き6年間で720万借りたとしますね。そうしたら,どういう,最初から元利均等でずっと払うわけでしょうか。

【石矢奨学事業本部長】  はい,元利均等です。

【奥舎委員】  元利均等なんですか。

【石矢奨学事業本部長】  はい。第一種は無利子,第二種を借りた場合は元利均等で返還していただきます。

【奥舎委員】  最初の1回目から元金も減っていくという感じ。

【石矢奨学事業本部長】  はい。減っていきます。

【奥舎委員】  減っていくわけですか。

【月岡理事】  まず,在学中は利息がつきません。ですから,医学部の場合であれば6年間通っている間は利息はつきません。貸与を終了した4月から利息が発生していきます。貸与総額に応じて決められた返還年数により,元利金等で返還していただきます。

【奥舎委員】  それなら定額で元利均等でずっと何十年,30年なら30年払うという形。

【月岡理事】  はい。最長は20年ですが,一定額を返していく。途中で繰り上げて返還してもらうことも可能です。

【奥舎委員】  はい。そうですか。ありがとうございました。私が心配するのは,例えば利子だけ先に払って,元金が残っていたら,これでは返す気分になりませんし,そんな感じがしました。

【月岡理事】  返還が始まるときには, 返還1回目から最終回までの割賦金の内訳を表にして,御本人にお送りしています。

【奥舎委員】  はい。ありがとうございました。

【小林主査】  論点になっていなかったですけれども,無利子がメーンだということは一応確認されているのですけれども,今,第一種と二種の差がかなり大きいんですね。つまり,第一種は無利子ですし,いろいろな優遇がついているけれども,二種は余りないんですね。ですから,そこのところもどういうふうに考えるのかというのは1つの論点だろうという気はいたします。延滞金の問題では出てきましたけれども,その他については余り,すぐにできるということがなかなかないんですよね。ですから,その辺も何かあればというのを個人的には非常に思いますけれども。 
 どうぞ。

【石矢奨学事業本部長】  原則として返還期限猶予や減額返還といったセーフティネットは第一種も二種も同じように適用されます。

【小林主査】  はい。

【石矢奨学事業本部長】  大学院の場合は,第一種だけが業績免除の対象になっております。

【小林主査】  減額返還の場合,返還期間が長くなりますよね。

【石矢奨学事業本部長】  はい。

【小林主査】  その場合には利子はどうなるのですか。

【石矢奨学事業本部長】  利息は,変わりません。当初設定された利息の総額は変わらない仕組みになっています。

【小林主査】  ということは,逆に言いますと利子補給がなされているということですよね。

【石矢奨学事業本部長】  そうですね。

【小林主査】  ということは,それだけ。

【石矢奨学事業本部長】  国から手当てをしてもらっているということになります。

【小林主査】  手当てをしているということですね。だけど,そのことは全然知られていないのではないですか。

【月岡理事】  支払額は変わらないということは,周知しております。

【小林主査】  はい。ただ,利子が発生していることは事実なので,余り周知してしまうと,みんな減額返還になるというのも困りますから,それはまた別の問題を生むかもしれませんけれども,ただ,二種の場合にもそういった形で国からの補助が出ているということはもっと言ってもいいのではないかと思います。

【石矢奨学事業本部長】  そうですね。利子補給金という形でかなり厚く補助されていると思います。

【月岡理事】  そもそも減額ではなく猶予をしたときにも,利息が増えるわけではありませんので,その分も国から頂いています。在学中の利息,猶予期間中の利息,それから,今,先生のお話があった減額返還に伴って期間が延びることによる利息の増加,それは全て国から頂いております。

【小林主査】  これはより改善しなければいけないということで申し上げているのですけれども,二種の場合には,だから,やれることはかなりやってあるというように思います。ですから,それ以上のことが今難しいということを申し上げておりまして,その上で何かないのかということを申し上げているのですけれども。ちょっと混乱しますけれども,結構,日本の奨学金,JASSOの奨学金というのはいろいろな意味で国際的に見るとかなり優遇されている奨学金です。だけど,そこのところが余り周知されていないので問題がいろいろ大きく報道されているようなところもありますので,その辺は少し区別した方がいいのではないかなと思います。
 いかがでしょうか,この情報提供と金融リテラシーの問題で,前回,お話しするのを忘れたのですけれども,現在,文部科学省で大学ポートレート(仮称)という構想をしておりまして,これは各大学別に情報を出すというようなことで,現在,平成26年度からの実施に向けて準備をしております。ここにこういった学生支援の情報もきちんと出していただけるように今お願いをしているところでありまして,これができてくるとかなり大学情報の提供という面でも進むのではないかと思っております。この辺,ただ,JASSOの方では独自にまた奨学金のいろいろ情報提供をやられているのですけれども,そこら辺をうまく整理して連携していただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。これはかなり長期的な課題もいろいろ入っておりまして,学生の雇用とか,学生寮の提供とかの問題になりますと,雇用の問題は先ほど冒頭にいろいろ出てまいりましたけれども,ほかにもいろいろ学生支援ということになりますと,これも忘れられがちなのですけれども,学生寮とか学生の食堂に対する支援という論点とか,いろいろな形で実は入っているのですね。しかし,その辺について,もう少し整理が必要ではないかという気はいたします。皆さん,ほぼ言いたいことは言われたのでしょうか。今日は給付型奨学金を中心にしまして,様々な形でアイディアを頂きました。
 ただ,前回から十分に認識されていると思いますけれども,この問題は実はかなり複雑でありまして,JASSOの場合で言いましても,有利子,無利子という問題がありますし,先ほどありましたように,もう少し大きな問題としては授業料免除でありますとか,機関補助をどうするかとか,非常に大きな問題までかかわっております。これは全部今回,この限られた期間でできるものではありません。すぐできるものといたしましては,延滞金の問題でありますとか,幾つかしかないわけですけれども,特に次回には平成26年度の概算要求に向けてすぐにできるようなことがないのかということが,もう出さないと間に合わないわけですよね。

【松尾課長】  そうですね。次回。

【小林主査】  ですから,その辺で是非アイディアがあればまた,次回まででも結構ですけれども,頂ければと思います。前回ありました返還に対する税控除という考え方がありましたね。

【山野大臣官房審議官】  ありましたね。

【小林主査】  それなどは出せるものなのでしょうか。

【松尾課長】  難しいかもしれないですね。

【小林主査】  直接はなかなか難しいですか。

【松尾課長】  ちょっと検討してみますけれども,難しいかもしれないですね,今。

【山野大臣官房審議官】  難しいと思います。

【前原委員】  むしろ,そういうたぐいのものはどんどん削ってきていますからね。

【小林主査】  はい。これも調べてみたらないわけではなくて,確かに国によってはやっていますね。ですから,ほかにすぐできるものとしては,JASSOの方は先ほど申し上げたように大体やれることはやっているような気がいたしますけれども。

【前原委員】  税控除も所得がまだ低い段階ですから,あんまり関係がないんですね,金額的には。

【小林主査】  はい,そうです。

【山野大臣官房審議官】  10%ぐらいですよね。

【松尾課長】  幾つか今まで頂いた中で免除の話であるとか,いろいろありますので,そこはどれくらい我々の中で消化できるか。近々消化できるかというのは色をつけざるを得ないと思うのですけれども,そういうのを少し検討させていただいて,できるものは予算要求に反映させるような話で。

【小林主査】  例の孫に対しては1,500万円まで非課税というのは出ましたけれども,あれは割と簡単に通ったのですか。

【松尾課長】  いえ。うちでやりましたけれども,大変でした。

【小林主査】  大変ですね。例えばアメリカで言うと教育だけに使う貯蓄プランとか,そういったものは,もうちょっと広げたものがあります。ですから,これは孫というか,祖父母ではなくて親の方になるわけですけれども,親が子供のために教育資金を積み立てることに対して税制上の優遇措置をとるとか,そういうこともありますので,そういったことが考えられてもいいかなと思うのですけれども,その辺も難しそうですか。

【松尾課長】  税はいろいろと,わからないですけれども,検討はせざるを得ないと思います。なかなか難しいかもしれないですね。1,500万円というのは,それはおじいさん,おばあさん,祖父母の持っている資金をいかに経済的に回すかということで出てきましたので,そのほかについてどの辺まで一般化できるかというのは少し検討を要します。なかなか難しいかもしれません。

【前原委員】  そういう保険があったのですけれども,どんどんそれが削られてきた歴史になっていますね。

【小林主査】  国の財政事情が厳しいことは百も承知の上でこういう議論をしているわけですから,そこで何とか知恵が出せないかなということでやってきているわけなのですけれども。

【松尾課長】  幾つか免除制度であるとか,事後免除であるとか,そういうのは頂きましたので,そのアイディアはうまく我々としても予算の方につなげたいと思っております。

【小林主査】  そうしましたら,ほかに御意見ございませんでしょうか。次回に向けましては,今日は非常にいろいろありましたので,もう1回論点を整理いたしまして,具体的な形にできるだけ持っていってまた議論をさせていただきます。それから,今日,不十分な点がありましたので,いろいろ議論,なかなか尽くせなかったということと,資料等で私の方で,もう少し用意しておけばよかったという点もありますので,それはまた次回出させていただきます。まだちょっと時間が早いのですけれども,大体議論が尽くされたと判断いたしますので,このあたりで閉会にしたいと思いますが,もし何かございましたら,事務局の方にメールでおっしゃっていただければと思います。
 今後のスケジュールについて,事務局からお願いいたします。

【保立課長補佐】  資料3を御覧いただければと思います。次回,6月17日の月曜日,午前10時から,この庁舎の2階の会議室を予定しております。それから,次回が3回目で,そこで話がある程度,概算要求などの前にまとまるかどうかということがありましたので,今,先生方に7月以降の日程調整をさせていただいておりまして,必要があれば開催するということにさせていただきたいと思いますので,今日,日程調整表をお持ちいただけておりましたらお預かりいたしますので,よろしくお願いいたします。それから,机上資料は残しておいていただけますと幸いです。
 以上です。

【小林主査】  ありがとうございました。
 それでは,非常に貴重な御意見を頂きまして,前向きの議論ができたかと思っております。これで第2回の検討会議を閉じさせていただきます。御協力,どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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