体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年4月22日(月曜日)14時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室

3.出席者

委員

稲永委員、荻上委員、加藤委員、正田委員、田籠委員、続橋委員、藤村委員、古屋委員、宮川委員、吉原委員、吉本委員、渡辺委員

文部科学省

山野大臣官房審議官、内藤専門教育課長、児玉専門教育課課長補佐、杉江専門教育課専門官、小栗専門教育課教育振興係長、辻学生・留学生課課長補佐

オブザーバー

吉田厚生労働省若年雇用対策室室長補佐、中島経済産業省産業人材政策室室長補佐

4.議事要旨

議事の概要:
事務局より今後の進め方等について配布資料に沿って説明。要旨は以下のとおり(○:委員、●:事務局、◇:発表者)。

(北九州市立大学における取組事例について、発表者から説明)

◇地域創生学群はコース制を採り、社会人40名と18才で入ってくる学生が50名という構成になっている。
地域創生学群を設置したときに、社会人基礎力や学士力を参考に「地域創生力」を作り、地域活動の中でどういった力を伸ばしていくのかということを目標設定し、地域創生力の獲得を目標に学生と教員とで一緒になって取り組んでいる。
実習を行いながら実習の振り返りを行う科目も今年度から設定している。ここでは、地域活動が「地域創生実習」として、位置付けられている。
教員が一つの実習に一人若しくは二人付くのが基本的な形であり、実習担当教員を複数名配置していることが特徴と考えている。
地域創生実習の特徴を挙げると、(1)1年次から3年次まで縦断型のチームで活動すること。(2)地域における日常的なルーティン活動がベースにあること。(3)同じテーマで3年間継続して取り組むこと。(4)テーマは教員が設定すること。(5)教員と学生の適度な距離感を保つこと、である。学生だけで取り組むと目標達成に対するハードルが下がってくるので、ハードルを下げないように教員が関与する必要がある。
セルフアセスメントを実施し、地域創生力としての六つの力を点数化している。5点満点で、学生自身が今どの状態であるか、また、入学時から卒業時までどのように変化していったかが分かるようにしている。あくまでも自己採点なので精巧な結果かどうかは分からない。
今後の展望として、アウトカムをいかに設定し、どのように検証するかを検討していく。また、長期インターンシップである。それをどのようにカリキュラムの中に位置付けるのか。地域創生と名乗っているので、事業を起こせる人材を育てないといけない。事業を起こせるよう支援する科目をカリキュラム上取り入れていきたいと考えている。

○北九州市立大学の方では、実習という名前を使用しているが、大学の教育が学生を引っ張るという従来型の実習ではなく、学生に自主性・主体性を与えるものであり、本質はインターンシップであるという理解でよいか。

◇学生の自主性を重視しているので、その意味では、インターンシップといえると思う。

○何名くらいの学生やチームに対して一人のディレクター、アドバイザーがはりつくのか。

◇例えば、20名のチームでは、実習に当たり、更に班が分かれている。広報実習では、高校訪問する班もあれば、Webサイトを作成する班、イラストレーターをつかって印刷物を作る班もあるが、20名に対し、教員1名程度が対応している。

○大学として、この実習を通じて、具体的に何をもって成長していると決められるのか教えてほしい。

◇地域創生力の獲得であると考えるが、より精巧な分析が必要である。今後の課題だと思う。

○地域創生学群卒業生の進路は多様だと思われるが、最終的にどのようなキャリアをたどることが地域創生力を育成したといえるのか。

◇今後、卒業生の進路調査等を実施しないといけないと思うが、現段階では分からない。


(京都産業大学における取組事例について、発表者から説明)

◇私が発表した場は、自民党のキャリア教育推進特命委員会だと思うが、そこの議論ではインターンシップを推進していこうという感触を抱いた。これから何か変わっていくのではないかと思っている。
「企業人と学生のハイブリッド」という科目を立ち上げた趣旨は、インターンシップ、PBL等のプログラムで、大学が企業に対し、一方的に協力をお願いするものではなく、大学が中堅・中小企業の社員の育成に貢献できないかというもの。卒業生の7、8割は地元の中堅・中小企業に入社している。中小企業では、新入社員が多く入社せず、なかなか若手の社員に後輩ができない。若手社員の育成の機会を大学がインターンシップとして提供するので参加してほしいという依頼をする。若手の社員1名に学生3名をつける。社員が学生を引き連れて自分の上司にプレゼンテーションをするが、若手社員は会社の人間からすれば部下であり、非常に厳しい指摘をすることになる。それが学生へも及んで学生もタフなプレゼンをすることになり、そこで鍛えられる。
インターンシップは2週間程度だが、では4、5か月行かせられるかというと、今の大学のカリキュラムでは難しい。
卒業生アンケートでは、O/OCF(オン/オフ・キャンパス・フュージョン)、これは産業界と非常に密着したプログラムであり、非常に効果的であるという結果がでており、卒業後にそれが実感されてきていることがわかる。
全体的な話としては、産学協働人材育成ネットワークの設立準備を進めているところ。
また、昨年度、「大学間連携共同教育推進事業」で4大学が採択された。採択理由としては、「中小企業向けインターンシップの標準モデルとなることが期待される。」ということであった。
また、海外では、産学協働を積極的に進めているところ。世界コーオプ教育協会(WACE)という組織があり、協会主催で世界大会が2年に1度開催されるが、今年2013年の開催国は南アフリカで、2015年は京都産業大学がホスト大学として決定した。その際、日本のプレゼンテーションをする際に、インターンシップは相変わらず2週間しか普及していない、また1Dayインターンシップのようなものが多い、PBLの実施率はやっとこの程度である、という状況では世界のスタンダードから考えると日本への関心が低下することが懸念される。
インターンシップの普及については、キャリアガイダンス的なインターンシップの拡大の必要性を認識しており、そのためには、受入れ企業の拡大とクラスの増加が必要である。そこで、教員をどう増やしていくかという課題が生じており、現在9名の教員を確保しているが、それを10人、20人に増やしていくというのは難しいと思う。
更なる課題は、教育効果の高いインターンシップを大学教育にどう根ざしていくのかということ。インターンシップへの取組が進んでいるといわれている本学でも、まだまだ長期のインターンシップを実施することについては課題が多いと強く感じている。
インターンシップに応募して選考に漏れた学生の大きな理由として、学生に大企業志向があるということが挙げられる。大きな企業には、一人か二人しか参加できないのだけれども、そこに15人も希望がある。そうすると、選考に漏れた学生は行きたい企業に参加できなくて、参加できるところが中堅・中小企業であったりすると、大企業にいけないなら参加しないという学生が多い。

○キャリアセンターの教員採用のときに、教学の精神を理解している人を採用するというような大学として工夫があったら教えてほしい。
また、インターンシップを具体的にカリキュラムに落とし込められなかった事情として、学生自身と社会とのレリバンスと学生が受けた大学教育と社会とのレリバンスが違う関係にあることが原因かと推測する。

◇学部のカリキュラムの中に落とし込められなかったということについては、専門教育とインターンシップとの意味づけ、関連づけがうまくできなかったということ。いわゆる伝統的な大学の先生や執行部にインターンシップをやる価値を十分に説明しきれず、執行部が大学に説明するだけの理論構築を十分できなかったということが原因。


(安田女子大学における取組事例について、発表者から説明)

◇安田女子大学・短期大学の規模としては、大学が6学部9学科で約3,800人、短大は2学科で約500人である。2種類のインターンシップがあり、現代ビジネス学科主催のインターンシップと学習支援センター主催のインターンシップに分かれている。現代ビジネス学科主催は、平成24年度現代ビジネス学部3年在籍者142名の内、135名参加しており、約95%の参加率となる。学習支援センター主催は、平成24年度大学3年、短大1年の合計550人の対象者の内、125名参加しており、約20%の参加率となる。大学の学生の約半数は、将来の就職先が資格取得によって決まる学部なので、その部分については積極的にインターンシップに参加するということではなく、教育実習として就業体験をするということになっている。現代ビジネス学科主催のインターンシップは、企業開拓や企業訪問なども全て教員が全員で分担してやっている。学生がインターンシップに参加する際、インターンシップ先を訪問し実習の様子をチェックしている。インターンシップBという科目は大学3年の夏休みから後期にかけての授業で、2単位としている。
学生の中には、インターンシップに1箇所だけでなく、2箇所参加を希望する学生がいたので、そういう学生は事前の調査も報告も2倍になるが、積極的な学生には、2箇所参加させるようにしている。
問題があると、すぐに学生から聞き取りをし、それを企業へフィードバックすることにしている。企業に全てを任せると、都合良く学生が使われてしまうことがある。インターンシップ参加者が増加すると他の大学のインターンシップとの競合が問題となる。広島県内で企業の取り合いになる。学生から評価を必ず行い、その評価の低かった企業に対して、どう対応してもらうのか毎年問題となる。過去に、一部のインターンシップ受入れ企業に学生を無給の学生アルバイトのような使い方をするケースがあった。例えば、デパートでの30名のインターンシップ受入れは、実際はお盆の繁忙期のアルバイトに学生が使われていたという例があり、企業に対して申入れをしたり、インターンシップ受入先から外すようにしている。学生に対し、希望の職種以外の職場での体験もとても大事だということを説明している。つまり、社会に出て、自分の希望する仕事しか見ないのではなくて、もっといろんな職種を知るということが自分のキャリア形成のために大事だということで説明している。
インターンシップの報告会で茶話会を行い、企業の方と直接話す機会を設け、学生がインターンシップに参加した企業以外の企業の方と会うことができる機会を設けている。

○先ほどの事例発表で、デパートで30人の学生を事実上、低賃金でアルバイトのようなことをさせていたという事例については、先般学会発表でも報告があり、フランスでインターンシップという名のもと、いわゆる偽装雇用が社会問題化した。ここ数年で、法整備が進んでいると中央大学の研究者から報告があった。
県内に上場企業が19社しかないという、インターンシップを行うのに非常に厳しい環境の中で大変良く工夫をされていると思う。インターンシップなのか、ボランティアなのか、漠然としたものでいいので、ユニークな取組はないか。

◇企業の社長へ学生が聞きたいことを直接インタビューすることを2,3日かけてやっている。この取組をインターンシップとして拡大しようとして、5日間にわたって、企業に対しての取材をする取組をしている。ただ、それがインターンシップと呼べるのかどうかについて学内で議論がある。

○学生の学ぶ意欲を高める活動であれば、インターンシップを単位化する必要はないのではないか。

◇これまで単位化せずに行っていた問題点として、例えば、事前に教育ができる回数が非常に少ないことが挙げられる。現状だと3回の事前研修しか行うことができない。事前研修を行う時間帯が放課後となるので、あまり学生の時間が取れない。単位化することによって、確実に事前研修の時間及び場所が確保でき、事前教育あるいは、事後報告会の質を上げることができるのではないかと考えている。
単位化するからには、5日以上のインターンシップへ必ず参加するよう指導するので、今まで以上に、密度の濃いインターンシップとする手段として活用できると考えている。

○単位化する場合、評価が必要になると思われるが、どういう評価の基準でやるのか、どのようにして可視化され、評価されているのかというのを教えてほしい。

◇大学として、定型のフォーマットを作り、基本的には企業の方にも評価してもらい、またインターンシップ報告会にも来てもらい、学生の発表を見て、その発表に対する評価も得ている。
地域インターンシップ推進協議会が、以前は広島県にも存在していたが、現在、活動しておらず、各大学が個々にマッチングを行っている。3,4年前まではあったと思う。


(山口県インターンシップ推進協議会における取組事例について、発表者から説明)

◇山口県インターンシップ推進協議会は、県内事業所によるインターンシップを推進する機関として活動している。県内16の大学・短大・高専・専門学校及び経済団体が加盟し、県内学生だけではなく、県外の学生の就業体験をも実現している団体である。我々学校関係者は、学生一人一人の社会的・職業的自立にむけての意欲と能力を身につけることを期待している。
平成24年度の受入れ可能事業所は456であった。実際に学生が行った事業所は229で、受入れ可能を表明した事業所の半分には、学生の希望がなかった。申込数は727名。実施数が636名で、実施率は87.5%であった。
受入事業所の内訳は、民間企業63.2%、公務・団体(病院含む)36.8%である。公務が3割以上を占める。これは山口の特徴かもしれない。中小企業36.7%、大手(公務含む)63.3%。中小企業は受入れが難しい面もあるが、学生の希望があまりないという結果でもある。学生の内訳は、文系・理系がほぼ半々。正課と正課外は55対45であった。
 協議会設立の経緯は、厚生労働省の委託事業の終了に伴い山口県としてどうするのか産学公の議論がはじまった。大学中心の協議会を設立し、県が支援するということになり、平成22年4月に発足した。会長は山口大学の学長で、運営委員長が私。事務局は引き続き山口県経営者協会が担当し、現在、コーディネーター4名、事務局員1名の体制である。事業費は自主財源(会費)と県からの委託費で運営している。学校・経済団体の基本会費は5万円、プラス、人数の多い学校には応分の負担をお願いしている。
課題のひとつは財政問題である。県からの委託事業がある今はよいが、委託がなくなれば事業運営はどうなるのかと懸念しながら、運営している。
 学生の参加数と偏りの問題もある。山口大学は1学年2,000人、全ての学生たちに学びの機会を提供する方針で実施しているが、現在1割ぐらいの200人しか参加していない。受入れ表明した企業のうち実際にインターンシップが実施されるのは、半分程度でしかない。更に受入企業の業種は限られる。学生の希望が多い、金融・IT・研究開発・国際にかかわるような受入れは少ない。更に大学生を採用する会社が実はあまりインターンシップを受け入れていない現状もある。
受入れ可能事業所の半分程度しかインターンシップに行っていないという現状があるので、学生に幅広いインターンシップを希望してもらうよう推進協議会として努力していかなければならないと思う。
 新たな取組として、「1day学習会」に力を入れている。企業の協力を得て1日で学習をする場で、銀行の仕事を学ぶ学習会などを開催した。1日であれば協力できる企業、1日であれば参加できる学生も少なくない。多くの学生に学習機会を提供する取組であり、実質的な学びの強化に向けて、協議会としても新たな動きを模索している。
 事前指導について、県内校へは協議会からコーディネーターを派遣し、少なくとも1回は、アナウンスや注意を行っている。それに加えて、大学においても、事前指導などを行っている。事後に関しては、該当者に集まってもらい、協議会にて報告会を行っている。


(質疑応答終了後)

○経済産業省で行われたインターンシップの会議では、論点はどんなことで、どこに問題意識を持っていたのかを教えてほしい。


◇会議の最後の取りまとめとしての提言は、インターンシップをそれぞれの大学教育の中にどのように位置付けていけばいいのか、企業の参画をどのように促していくべきか、企業、地域、大学の連携を更にどういうふうに進めていったらいいのか、連携する中で、専門人材が必要であり、その専門人材をどのようにして育成していくのか、更にプログラムの質的な向上、質保証を担保する取組はどうあるべきか、最後に行政としての役割、取組に期待することであった。

●キャリア教育を考えるときには、経済産業省や文部科学省で行っていること自体に本質的な違いはなく、要はいかに教育効果の高い取組ができるかということかと思う。
 インターンシップを受け入れてもいいが、実際は受け入れていない企業が結構あって、企業に理由を聞くと、声をかけられていないからということであった。
プログラムの標準化は、大学側のカリキュラムとしても重要なことだと思う。

○安田女子大学の例でいえば、7割の学生をカバーしており、残りの3割の学生について、どうすれば実施できるのか。いわゆる三省合意についてもいろんな軸で議論していくのが大切だと思う。

○インターンシップへの参加意欲のない学生をどうするかという問題があると思う。企業で働くことが重要であり、社会的価値のあることだと理解してもらうことが、今求められているインターンシップなのではないかと思う。これは大学ではできない。
 企業も意欲のない学生をどうするかということについて、ある程度は考えてもらいたいと思う。優秀な学生ばかりが行くのであれば、今のインターンシップはいらないと思う。

●経済産業省の会議で中長期インターンシップについて、議論をしてもらっているので、この会議にフィードバックできる段階になれば、こちらの方に提供してもらい、議論に役立てるようにしたいと考えている。
文部科学省、経済産業省、厚生労働省にとって、「キャリア教育・職業教育」「インターンシップ」がそれぞれの政策課題にかなり重要なものになりつつあるので、三省で連携しながら推進していきたい。

以上

お問合せ先

高等教育局専門教育課