【資料2】主な論点と各委員の発言等(案)
目次
1 普及促進について
(1)単位化
(2)学内(教員)のインセンティブ
(3)学生のモチベーション
(4)学生の参加率(体験率)
(5)受入れ企業のインセンティブ(採用との関係、社会貢献等)
<若手社員研修としての活用>
(6)専門人材(コーディネーター等)
(7)大学等と産業界との調整を行う仕組み
(8)経費関係(報酬等)
2 質的充実について
(9)大学教育における位置付け(事前・事後指導等)
(10)目的及び教育効果(キャリア教育、専門教育等)
(11)中長期インターンシップ
(12)企業研究型インターンシップ
(13)評価
3 その他
(14)国等の支援
(15)「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」
(16)その他
1 普及促進について
(1)単位化
- 単位化されていない現状でインターンシップ参加は2、3日でも認めているところ、学生が単位取得を希望することを見込んで単位化するのではなく、単位化するからには、5日以上のインターンシップ参加を指導する、というように、単位化を、より密度の濃いインターンシップにする手段として活用できる。
- 学生の学ぶ意欲を高める活動であれば単位化しなくてもよいという議論がある。
- 単位化によって逆に縛られる、例えば、90分15回ということが単位付与の基本。本来は10回でもいいところを無理矢理15回にしてしまうとか、そういうマイナスの面があるのではないか。
(2)学内(教員)のインセンティブ
- インターンシップが学内の多くの学部で増えたきっかけは二つあり、一つはトップマネジメントで、学内トップが各学部でどの程度インターンシップを実施しているかという調査をしたこと、そしてもう一つは、学生からの要請。
- インターンシップを通じ、教員がこれまで実施してきた大学教育がいかに社会に役に立ち、それが間違っていなかったか、という説明を学内の教授会等で行うことでインターンシップに対する学内の理解を得ている。
- 体験学習の重要性を教員に意識づける意味でも、インターンシップがインターンシップの専門家だけの中で完結するのではなく、多くの研究科でインターンシップ関連の科目が置かれる必要がある。
- 教員がある種の業務過多という状況に置かれ、インターンシップは教員にとって負担となっている。
(3)学生のモチベーション
- 前年にインターンシップに参加した2年生全員を自動的にインターンシップアシスタントという役割を与え、インターンシップに参加する1年生をサポートさせる。2年生が1年生に教えることは、教員が学生に説明するよりはるかに効果的である。
- 関係企業の合同採用セミナーや株主総会における受付、誘導アシスタントとしての参加は、会社と株主の力関係等について生身で理解するなど、非常に大きな効果がある。
(4)学生の参加率(体験率)
- 大学を介さず、自ら受入れ先を見つけるインターンシップへ参加する学生を全学的に捕捉する仕組みはない。
- 大学が把握していないインターンシップへ参加する学生がどのようなインターンシップを体験しているのか、産業界で何を行っているのかという調査又は産業界における本格的なインターンシップの調査がこれから必要になる。
- 教育学部など資格取得を目的とした学部を除いた学生の参加率は約20%である。
(5)受入れ企業のインセンティブ(採用との関係、社会貢献等)
- 諸外国のインターンシップでは採用を意識して行われており、企業としてはコストに見合ったリターンがあってしかるべきであり、インターンシップが採用につながることがあってもおかしくない。
- 採用とは切り離した形でインターンシップを受け入れている企業については、例えばCSR、社会貢献としての評価を高く得られるような方策があれば企業側もアピールできる。
<若手社員研修としての活用>
- 大学が企業の若手社員育成に貢献する目的で立ち上げたプログラムは、企業理念が会社とどうつながり、それが自分の日々の業務とどうつながっているかを考える機会を若手社員に与えるほか、プロジェクトマネジメント、リーダーシップ、プレゼンテーションなどを4ヶ月かけて行う。
- 部下を持ったことがない20代の社員が多くいる企業があり、その若手社員に学生を1人割り当てることで、社員が学生を教えながら自分の仕事を見直すという若年層研修の一環として学生を企業が学生を受け入れる取組を普及させたい。
(6)専門人材(コーディネーター等)
- 専門人材の育成、確保、拡充は不可欠。業務内容は、学生の指導はもちろん、企業開拓と連携強化、学内の情報交換・調整、カリキュラム開発・改善等と多岐にわたる。教員的素養と職員的素養、さらにプロジェクトマネージャー的能力も要求される。
- インターンシップの実施に当たって、コーディネーターが学生と企業の間に立ち、企業側ニーズを把握し、プロジェクト設計や、学生に対してメンター的な指示をするなど、学生の主体性を伸ばすことが重要である。
- コーディネーターの有効性は非常に実感している。コーディネーターは地域の企業の人と顔なじみであり、顔のつながりをうまく使って、インターンシップの受入先の開拓を行う。
- オフィスコーディネーターを専任職員として常駐させ、そこでは学生がインターンシップに関する内容すべてがわかるよう対応している。
(7)大学等と産業界との調整を行う仕組み
- 協議会としては、「地域中小企業の人材確保・定着支援事業」のように三省一体の方針等発信や支援があると、大学と連携しやすい。
- 協議会ではシステム化が遅れており、学生がWeb上での直接申請や、受入れ可否決定通知を可能とし、評価も含めデータベース化されるような、地域で統一したシステム構築が必要。
- 受入れを希望する学生に個別に対応すると大変な手間になるため、協議会がとりまとめて企業につなぐことで企業側が助かっている面がある。
- 協議会としての二つの課題があり、一つは、受け入れを了承した企業の半分程度しか受け入れられていない現状があり、基本的には学生に幅広いインターンシップを希望してもらう努力をすること。もう一つは、大学生を採用するような企業でインターンシップを受け入れていない企業があり、その開拓である。
- 協議会は、県内大学のキャリア教育担当者が集まる場となっており、リクナビなど県内の企業を集めて勉強会を開始するなど、新たな取組を開始している。
- 企業に任せっぱなしにすると学生が都合良く使われてしまうことがある。例えば証券会社では、非常に座学の時間が長く就業体験時間が短いという実態があったため、教職員が受入れ先に出向き、職業体験を増やすよう訴える機会を設けている。
(8)経費関係(報酬等)
- インターンシップの名を借りた低賃金労働の例もある。それこそ最低賃金にも満たないような時給で働かされるほか、企業の中にはインターンシップというのは低賃金で人を使えるいい機会だと考える企業がある。そのような場合、大学への相談を呼びかけながら、問題がある場合は止めるよう指導する。
- デパートで30人の学生を事実上、安い賃金でアルバイトさせていたという事例があったようだが、ある学会において、フランスでインターンシップという名の下、いわゆる偽装雇用があまりにも社会問題化し、ここ数年法整備が進んでいる、という中央大学の研究者からの報告があった。今後、日本でもこのような事例があり得るということ。
- 報酬は出さず、交通費も全額学生負担を原則としているが、長期(3週間ないし4週間)のインターンシップに参加する学生は、10日間を超える11日目以降についての交通費は学校で部分的に負担している。
- 実習先が遠隔地にある場合、シフト勤務の場合には、ホテルなどで宿泊となるため、受入れ企業に負担をお願いしている。
- 事務局、運営スタッフは自主運営を意識しているので、運営費を捻出することに苦労している。協議会では、加盟大学から年会費10万円、1件のインターンシップが実施されると受益者負担の考え方で1件当たり1万円をお願いしている。
2 質的充実について
(9)大学教育における位置付け(事前・事後指導等)
- 基本的なビジネスマナーもまったく知らない学生を企業に送り込むと迷惑になるため、事前学習では基本的なところをしっかりトレーニングした上で送り込んでいる。事後報告会では、優秀な報告をした学生に報告会で発表させている。事前・事後指導を丁寧にやろうとすると、多くの学生に受けさせることができないことが悩み。事後報告会では、受入れ企業も参加して質問等を行う。
- インターンシップはインターンシップだけで独立して取り組んではならない。本校では、事前学習、事後学習をセットにして、体験学習を中心において取り込んでいる。
- 短期のインターンシップでは、事前・事後学習だけではなくて、キャリア教育科目を組み合わせ、教員の意識を高める必要がある。
- インターンシップの高度化には、専門性、長期性、反復性は外せない要素である。自分がインターンシップで学びを行ったところで大学に戻り、さらに学習目標を大学の中で立てるというような、行きつ戻りつというような反復往還が様々な形で行われることが望ましい。
- インターンシップ終了後、報告会でレポート提出とともに全員にプレゼンテーションさせる。さらに7、8名のグループをつくり、グループメンバーに対してプレゼンテーションを行う。業種や職種を混ぜて行うことができ、お互いの情報交換の場としても活用できるため、グループワーク形式の報告会を行っている。
- 導入の際は、経営トップもしくは準ずる方に社の理念や創業時の話を、体験時には、顧客に近いところでの接触を依頼している。また、お客様扱いされないよう、新入社員であれば当然のようにあるルーチンワークも依頼している。その上で振り返りや、企画提案など必ず学修の機会を設けていただくよう依頼する。
(10)目的・教育効果(キャリア教育、専門教育等)
- インターンシップを大学の正課教育とどのように連携させていくかは非常に大きな課題。キャリア教育の中で、今聞いている自分の話が、普段受けている講義あるいはゼミとどうつながるのか、ここを全くつなげないままキャリア教育という柱ばかり太くしてきたことがこれまでのキャリア教育の問題点だった。
- インターンシップで実際に企業の現場を見て、学生自身がいかに自分の知識が少ない、あるいは考える深さがいかに足りないか体験をすることで、自ら勉強しなければいけないと自覚できることが必要。インターンシップで自分たちが見てきた企業の実態が実は大学の学びと結びついている、そのように橋を架けてやらないと、インターンシップによって大学教育はよくならない。
- 例えば、3年生の夏休みの2週間のインターンシップは、キャリアガイダンスとしては非常に価値がある。学生の就職活動長期化として、リアリティのない自己分析や業界研究に原因を感じており、リアリティを持たせるための方策としてインターンシップがある。
- 実態として3年生を中心に行っているが、教育効果の観点ではもう少し早い方がよいのではないかという議論を学内で行っている。
- 4日間のインターンシップでも、丁寧につくり込まれ、視野が広がったという感想を持つ学生もおり、中身のあるインターンシップも確かにある。世の中を知る意味でも、短期型のインターンシップもしっかりと育てていく必要がある。現状として日本社会はそういう段階にあると考えている。
- 卒業生を対象にしたアンケート結果では、インターンシップなど産業界と非常に密着したプログラムほど、社会に出たときに役立つ、履修して効果が高いと卒業後に実感されているという結果がある。また、実践系のプログラムを受けた学生は非実践系のプログラムを受けた学生よりも良好な人間関係や将来のキャリアプランに対して満足度が高いという結果がある。
- 大学でインターンシップに参加した学生は内部調査では内定も非常に早い。
(11)中長期インターンシップ
- 高等専門学校では、全体として長期であるが1週間に1日又は半日だけというものがあり、短い時間に集中的に様々な内容を聞いて、その場ではわからない内容を、学校に持ち帰り、残りの時間を教員への質問時間や図書館等で調べる時間などに費やして反芻することで、実効的に長期的な内容になっている。
- 技術系、ものづくりとなると、長期のインターンシップのほうが好ましいと思うが、長期となると、技術系では講義が大変多く、その調整が課題となる。
- 長期のインターンシップについては課題が多いことを強く感じた。専門教育とどう連携するか、いわゆる海外で行われているコーオプ教育に非常に近いものをカリキュラムの中に位置付けようとしたが、学内の課題があり、なかなか先に進まない。
(12)企業研究型インターンシップ
- 企業側とWin-Winの関係を保つため、学生たちに徹底的に企業を調べさせることで企業にとって非常に貴重で詳細なデータが残り、次年度以降の受入れ継続が実現可能となる。
- コーオプ演習を通じて企業側の意識が変わる。本格的にインターンシップを実施する時期になり、企業研究のために学生が受入先の企業に対し熱心に問い合わせをするようになると企業もそれに応えるようになる。
(13)評価
- 世界的にインターンシップの評価手法が研究され、本格的に研究がスタートしているところ。
- 定型のフォーマットを作り、企業側にも評価してもらいつつ、報告会で学生の発表を企業側に見てもらいその評価も行う。また、教員があまり参加していないため、組織化し、インターンシップに参加する学生を見に行ってもらえるような取組を予定。
- 半年間のコーオプ実習において、成果発表を年末に行い、年明けにプログラムの最後に学生を集めて評価シートを用いて自己・他者評価する相互評価方式を取り入れている。
3 その他
(14)国等の支援
- 国のある事業は、各都道府県の経営者協会が窓口になって、主に中小企業にインターンシップの紹介をするものであったが、事業修了後、中小企業におけるインターンシップが減少した。
(15)「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」
- 「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」について、様々な軸で議論していくことが大切。
(16)その他
- 教員が1年間企業へインターンシップに参加する取組を来年度から開始予定。
- 地域とのつながりもインターンシップの実施上、大事な土壌である。
- 働く意欲が持てていない学生こそ、企業で働くことが社会的価値のあることだと理解させることが、今求められているインターンシップだと思う。企業もCSRを含め、そのような学生をどうするかを考えていただきたい。優秀な学生ばかりが実施するのであれば、今のインターンシップはいらない。
以上