大学通信教育等における情報通信技術の活用に関する調査研究協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成24年8月21日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省16F2会議室

3.議題

  1. 大学通信教育等における情報通信技術の活用に関する調査研究協力者会議の運営について
  2. 大学通信教育等における情報通信技術の活用に関する調査について
  3. その他

4.出席者

委員

西原座長、來生委員、向後委員、小松委員、五月女委員、鈴木委員、高橋委員、田島委員、三石委員

文部科学省

内藤専門教育課長、金子視学官、児玉専門教育課課長補佐 他

5.議事要旨

(1)事務局より開会の挨拶の後、座長の選任が行われ、西原委員が座長に選任された。

(2)会議の公開について、審議が行われ、本会議については公開で行うこととされた。

(3)大学通信教育の制度に関するこれまでの経緯や現在の状況について、資料に基づき事務局から説明があり、その後、意見交換が行われた。主な発言は以下のとおり。

(○:委員、●:事務局)

○ちょっと確認をさせていただきたいのですけれども、資料1に、この会議の設置について、目的が書かれております。この会議の名称は、「大学通信教育等における」ということで、「等」がついております。それから、目的の中でも、「このため、これまでの中央教育審議会等における検討を踏まえつつ、大学通信教育をはじめ、大学における情報通信技術を活用した教育にかかる実態把握や」というように続いています。そうなると、これは必ずしも大学通信教育だけでなく、通学制におけるメディアの利用も含めた検討をここで行うという解釈なのか、それとも、あくまでも大学通信教育だけなのか、それが確認の一点でございます。

○通学制におけるメディアの利用も含めた検討ということですよね。

●はい、さようでございます。

●調査研究事項1、2、3というように資料1で書いてございます。平成13年に大学通信教育の、特にメディア教育という観点で大きな改正を行いました。平成13年以降、このメディア教育に関して、きちんとした形のフォローアップがなかなかできてこなかった部分もございます。一方で、今、事務局から説明しましたように、この平成13年の改正の基礎の上に立った特区制度ができていて、それについて、特区本部決定で全国展開の方向が打ち出されている状況がございますので、まずは平成13年の制度改正に基づくメディア教育と情報通信教育に関する議論を最初にやらせていただければと思ってございます。
 ただ、平成13年あるいはその前の段階の改正というのは、この資料の中にはあまり書いていないんですけれども、実は大学通信教育だけの改正ではありませんで、大学教育における遠隔授業の取扱い、何単位までメディアを利用した授業が行えるかというのも、セットで平成13年までの間に改正をされてきたという状況がございます。そういった大学通信教育で議論した内容というのは、恐らくは大学通信教育にとどまらないのではないかということで、この(3)「その他、情報通信技術を活用した大学教育の改善について」という事項を入れさせていただきました。ただ、これ自体、広いテーマですし、それこそ、大学教育そのもの、大学運営、いろんな角度から議論できる話だと思いますので、とりあえず大学通信教育に焦点を当てながら、大学通信教育にとどまらないところについても議論の対象としていければというような形で、このような整理をさせていただいたところでございます。

○大変よくわかりました。
 それと更にもう一点ですけれども、実は大学審議会当時から、中央教育審議会にわたって、通信教育に関する問題についての検討課題として、常に通学制と通信制の区分の在り方をどう見直すか、見直すべきではないかというのが繰り返し出されているんですね。配付資料の中でも、平成22年の「中長期的な大学教育の在り方に関する第四次報告」の中にもそういう文言があるわけです。ところが今回、表面的には通信制と通学制の在り方について検討するという事項は入っておりませんよね。その辺は、なぜなのかというか、それは次の課題として、当面はここに掲げられている事項を検討し、とりあえずは通学制と通信制の区分の在り方については、この会議の委嘱期間の中では検討しないというお考えでしょうか。

●検討課題から外しているつもりはないんですけれども、平成13年以降の実態を十分踏まえて、その課題は何か、どう解決していくかというようなことを押さえた上で、通信制と通学制についても、必要であれば、御議論いただくことも当然あり得ると思ってございます。ただ、確かに中央教育審議会の大学分科会の課題として、通信制と通学制の在り方がずっと挙げられ続けてきたわけでございますけれども、いきなり通信制と通学制について、統合するとか、今のまま置いておくとかというような、大きく振りかぶったところから議論を始めるよりは、まず実態の積み重ねから議論いただいたほうがよいのではないかということで、ある意味、ゴールみたいな話ですので、あえて最初から書くのをはばかったぐらいの趣旨でございます。

○大変よくわかりました。
 そうしますと、2年ほど前ですか、13ぐらいワーキンググループができましたよね。まだまだ問題はありますけれども。あの中の一つとして、たしか通信制と通学制の在り方に関するワーキンググループをつくるというのが入っていたんですが、実際には作られなかったんですよね。この会議は、その代わりではないですか。

●はい。その代わりではないです。

○そういう解釈でよろしいですか。

●大学分科会の当時の議論の流れから、そこについてずっと課題になっていたので、早急に議論を始めるべきではないかという流れでワーキンググループを作ることになっていたのですけれども、正直、テーマが大き過ぎて、いきなりそのテーマから入るというような整理でちょっと手間取って、結局は作られなかった部分があるんですけれども、冷静になって考えてみれば、平成13年以降、文部科学省としてきちんとしたフォローアップはできていない段階で、いきなりそのテーマについて議論しますというのは、ちょっと急ぎ過ぎたのかなという感じはあります。もちろん、先生が言われたような、通学制、通信制については、議論を重ねていく上で、その議論に行きつくということは、想定できると思っておりますけれども、まずは平成13年の制度改正を踏まえた現在の状況、それから、それを取り巻く環境に大学通信教育として、今答えられているのか、課題はどのようなところにあるのかというようなところから議論していただければと思っております。

○大変よくわかりました。ありがとうございました。

○念のためにちょっと今後のために質問させていただきます。資料1で確認をさせていただくと、本会議の中心といたしましては、タイトルのとおり、情報通信技術が中心だなというのが、今の質疑応答でも理解はできているわけですけれども、ディスカッションの範囲としては、この調査研究事項の(2)や(3)などにも書かれたような施設設備に関するところとか、あるいはそれ以外も含めた全体の教育課程も含めて調査研究の対象になっているという理解でよろしいでしょうか。

●先ほど申し上げましたように、平成13年度以降の状況を、あまり我々がフォローアップできていないという状況がございます。それは、いわゆるイーラーニングに属するものだけではなくて、伝統的な形での、紙と郵便の印刷教材による通信教育も含めて、どのような状況になっているのか、その中にどのような形でメディアの要素が入っているのか、恐らく今日、1つの方法だけで行うことはなかなか難しくなってきていることもあるかと思いますので、より適切な教育手段として、どのようにブレンドした方法が採用されているのか、そういったことにも目を向けていきたいと思っております。昔からの基本的な通信教育が、今現在どうなっているのかということも含めて、情報を集めて、皆様方と共有して議論していきたいと思っております。

○ありがとうございます。

○この資料1の「情報通信技術を活用した大学通信教育の利点と課題の整理」ですが、これは今までに調査した結果や、ある程度の仮説みたいなものがあって、それに対して、いいとか、悪いとかということを議論することになるのか、それとも、全くゼロから組み上げていくのか、どちらでしょうか。というのは、私どもの感覚ですと、既にいい点はあるが課題もあるので、それを良くするにはこうしたらいいねという所に議論が行きやすいんですね。課題が全くなくて、ここで検討してくださいというのか、現実はこんな問題があって、その課題を更にきちっと定義していくのか、その辺の議論の進め方はどうなんでしょうか。

●そういうことを含めまして、実は調査をしたいと思っております。これはこの後の議題で御紹介しようと思っていたのですけれども、統一的に行った調査というのは、今から5年前のデータで止まってしまっている状況でございますので、まずは本日の会議で、その当時の調査結果を御紹介申し上げますとともに、ある程度時系列で比較できる調査をとること、併せて、現在行われている通信教育の状況について、情報を共有することで、改めて課題の整理をしていきたいと思っています。恐らく、学生にとっての利点と同時に、例えば学習の質の保証等が課題になることはあると思うのですけれども、それが直近の、5年前と比べて、どのように変わってきているのか、そこから少し始めてみたいと思っております。まずは、5年前の調査の課題意識や、通信教育の利点に関する感覚と、次回以降行う予定のヒアリングにおいて出てくる直近の課題意識を突き合わせる中で、改めて年末にかけて課題をまず設定して、どのような形で特区という問題に向き合っていけばよいのかということが議論できればいいのかなと思っているところです。

○わかりました。

○「メディアを利用して行う授業」という解説がありますよね。これは例えば「通信衛星、光ファイバー等を用いることにより」というのがあるのですけれども、今、インターネットが光ファイバーで繋がっているかなんて普通の人は何も知らないですし、そんなことは意識しなくて、ただ、ある速度が出ればいいという感じですよね。そういう意味では、こういう定義なんかももう少し考えた方がいいかもしれないという気がします。

●まさにこの部分が手つかずになってしまっているのが、十数年間、検討がなされてこなかったということだと思います。

○大変細かなことなのかもしれませんが、議事次第の一番最後についております、今後の日程のことについてなんですけれども、調査をされるということで、調査結果の検討というのが年内の予定になっていまして、後は有識者からのヒアリングということになっています。ただ、平成25年の2月の会議のところで、「通信教育における対面授業の意義について」というのが出てきて、これはちょっと唐突な印象といいましょうか、他にも色々ある中でなぜこれが入っているのか、それ以外は、この会議の主目的である特区832のことが次に書かれていますので、なぜ対面授業の意義というのがここで取り上げられているのか、その辺は何か意図がおありなのかどうかということをお伺いしたいんですけれども。

●参考資料1の30ページを御覧いただければと思いますが、特区832の全国展開に当たってのお題として、特区推進本部で「対面性を補完し得る方策」ということを明記している状況でございます。対面授業の意義と言ってしまうと、確かに若干言葉は書き過ぎていたのかもしれませんけれども、特区評価で補完せねばならないと言われている対面性とは何なのか、端的に言われる対面授業というのは、どういう意味があって、どういう価値があって、メディア授業がどういうものであれば、対面授業と等価交換といいますか、同じものとして扱えるのかということを少し議論しておく必要があると思っております。そういった意味も踏まえまして、9月、10月のヒアリングでは、一つは、伝統的な通信教育の手法について改めて検討しつつ、一方ではインターネットなど、新しいツールとされている手段を用いて行っている大学通信教育について取り上げてみたいと思っています。また、場合によっては海外の状況などについて御存じの方をお招きしたり、この特区に基づいて教育を行っている大学の方に今現在の状況を話していただいたりして、特区がどのような制度であればもっと動きやすいと考えているのか、特区そのものにどのような問題点があるのかといったことを踏まえて、みんなが大事だという対面というのは何だろうということを考えたいと思っております。そのことを1回まとめて考える場として、第6回を持とうと思っています。その前提として、12月中旬にここまでの議論のまとめというのがありますので、その段階で、ある程度論点を絞ったものをつくった上で、12月上旬から2月上旬まで、年末年始を挟んで2か月程ありますので、少しまた皆様と議論をしたり、議論の整理をしたりしておければということを思っている次第です。

○大変よくわかりました。ありがとうございました。

●もう一つだけ補足させていただければと思います。資料の98ページを御覧いただければと思います。特区の委員会で対面授業が大事だと言われたことについては、そもそも特区の申請マニュアルに「対面性を確保すること」ということが書いてあります。メディア授業をやりながらも、そういった部分が意識されているところがありまして、そのきっかけが平成13年の大学通信教育設置基準改正の前に、大学審議会の答申として出された「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」なのですけれども、平成13年にメディア授業で124単位とれるという仕組みを導入する際に、大学審議会の答申の中にも若干制度的な迷いがございまして、98ページの上から2段落目ぐらいからちょっと見ていただければと思いますが、「今後の通信制の大学には、直接の対面授業による修得が必要な20単位についても、遠隔授業により修得することができるものとすることが適当である。このことにより、124単位全てを遠隔授業により修得することも可能となる。ただし、平成9年12月の答申で示したとおり、直接の対面授業には教員と学生や学生相互の触れ合いなど、人間形成の効果があると考えられることから、高等学校を卒業して、実社会での職業経験を経ずに大学教育を受ける青年期の学生などに対しては、各大学が定める範囲内で直接の対面授業を履修させる機会を与えることが望ましい。」とあります。つまり、124単位全部をメディア授業でできるとしながらも、直接の対面授業を履修させる機会を与えることが望ましいというようなことも一方で言っています。構造改革特区を導入する前、こういった対面授業もある程度やることが望ましいという考え方に至って、今の大学通信教育設置基準ではある程度、校舎等施設の面積が確保されるような仕組みになっているということでございます。
 それに対して今の構造改革特区は、申請マニュアルである程度の対面性を確保するという留保条件を付けて、大学通信教育設置基準の面積要件を緩和するという特例をしています。そういう意味で、平成13年の制度改正から特区の制度導入にかけて、この対面性というのが一つの焦点になっています。今、説明したように、構造改革特区本部の決定でも、対面性という言葉がうたわれているということで、平成13年以降の現在の制度を議論する中で、この部分について、各大学でどう考えられているかということは、押さえておきたい話ですので、日程で言うと唐突感があるんですけれども、議事の中に書かせていただいたという状況でございます。

○ありがとうございました。大変正しい考え方だなと思います。

(4)大学通信教育等における情報通信技術の活用に関する調査について事務局より説明があり、その後意見交換が行われた。調査票については、会議終了後に改めて各委員が内容を確認し、事務局において修正の上、通信教育を実施する全大学に送付することとされた。

 各委員の主な発言は以下のとおり。

 ○確認なのですけれども、過去の調査では、年齢別みたいな項目が結構入っていたと思うのですけれども、今回、特に項目には入っていないですが、これは学校基本調査等でやったので入れていないということですか。

 ●そうです。学校基本調査で分かるものは、直近の学校基本調査を使わせていただくことにしようということです。一方で入学者数に関しては、どうしても年度の中で動いていきますので、前の年度が終わった段階で切ってもらって、出してもらうという形にしようと思います。

 ○先ほど、メディアを利用して行う授業科目をどのようにカウントするかというお話があったのですけれども、開設科目数について、放送授業とか面接授業を、何科目開講していますということを書く欄があるので、もし可能であれば、これを受講している総数、例えばメディアを利用して行う授業科目について、同時双方向の科目は年間で何人いるとか、更に可能であれば、年代別まで聞けると、例えば若年者がすごくインターネットを使った授業を受けているとかというところまで見られるのかなという気がしたので、可能かどうかちょっと分からないのですけれども、あればいいなと思っております。
 あとこれは情報通信技術の活用に関する調査票ということなので、あまり関係ないことかもしれないのですが、将来的に通信制と通学制について検討する際の参考資料として、発行している学位の名称についても聞けるとよいと思います。学科名は書く欄があるんですけれども、学位名を書く欄がないので、もしかすると、学校基本調査や個別の大学の学位規則等ですぐに確認できるのかもしれないのですが、わかるとよいと思います。
 あと、大学が通信制、通信教育課程をどのように扱っているかということを知る上で参考になると思うので、卒業証書とか、成績証明書に、通信制とか、通信教育課程という名称を入れているかどうかを聞く欄があるといいなと思っています。以上です。 

○通信教育は、いわゆる独立型と併設型の2つあるわけですね。多くの大学は併設型の通信教育で、併設型になりますと、教員組織はほとんどが基礎となる学部学科の教員によって行われます。そうなってきますと、通信教育でメディアを利用した授業を行おうとしても、基礎となる通学課程において、メディア授業というものがどのように行われているのかが問題になりますので、この調査票では通信教育のメディア授業の実施状況を聞きますけれども、あわせて基礎となる学部学科においての、メディア授業の実施状況も聞いていただければというふうに思います。これは、通信教育でメディア授業を推進する上で、併設型の場合、教員組織という非常に難しいところを抱えておりまして、そういう意味であわせて質問項目を作っていただければなというふうに考えております。 

○参考資料の、以前、日本大学で実施した調査の中で、メディア教育開発センターのデータを参照していますけれども、これは通信制に限らないデータですよね。

 ●そうですね。

 ○そういう意味では、ここだけちょっとほかのデータから浮いたようになっています。今の御質問のように、通信制と通学制が同じ大学で実施されていて、何だかよく分からなくなっているところもあったりします。

 ●調査報告書の本体の方を見ていただくと分かりますが、メディア授業の非実施の状況についての調査にくっついている図表みたいな感じだと思うのですけれども、学内のコンセンサスが得られないから予定がないというところと、コストがかかり過ぎるから予定がないというところを、通学制も含めた大学全体で見たときの課題と見比べるために、置いたのだと思います。恐らく表のテーマとしては、既にICTを導入している機関と導入していない機関とで、若干、課題意識が違うということを言うためのデータだと思います。

 ○メディア教育開発センターがあったころは、大規模な調査が毎年あって、大変興味深いデータが得られたのですけれども、最近は無くなってしまった。そこまでは今回はできませんよね。

 ●恐らくこれまでの蓄積の中で、我々が共有しておかなければならないデータもあると思いますので、そこは色々お願いをして、調査に関わってこられたお立場から御意見を聞かせていただける方に来ていただくということも考えたいと思います。

 ○メディアセンターの調査は放送大学で引続き行われています。ただ、放送大学とメディア教育開発センターが合併してから一定の期間が経って、もともと開発センターが独自の活動として行っていたものをだんだん少なくして、放送大学の一般の教育の中に吸収するというのが大きな課題になっていて、来年度からはメディアの先生方がコースを作るというようなこともありまして、従来どおり色々な活動ができるかというのはなかなか難しい状況になりつつあるということです。 

○項目6の授業料なのですが、いわゆるインターネット大学は、単位毎にクラスでもとっているところが多いと思うので、授業料を年額でとる場合と、単位ごとにとる場合で、1つ項目を増やしていただければ、両方答えられると思うので、その方がいいかなと思います。
それから、項目13の卒業者数と卒業率ですが、この式を見ると、平成20年度入学、21年度2年次編入学、22年度3年次編入学、23年度4年次編入学が分母になって、23年度の卒業者数を割る訳なのですが、これが卒業率でいいですか。普通、通信課程は、4年間ですんなり卒業する人の方が少なく、6年とか8年とかかかりますので、これでいいのかなという感じがします。きちんとやるならば、ある年度に入った人を分母にして、何年かかけて卒業した人を分子にするというのが、入学者の卒業率を出す正しいやり方だと思うのですけれども、これだとばらばらに入った人が、ある年度に卒業したということが、卒業率として算出されるわけですよね。

 ●これはばらばらといいますか、最短修業年限での卒業率です。

 ○だから、平成23年度の卒業者数は、20年度以前にも入っている可能性は十分あるので、これを聞くと、卒業率というのは何かちょっとおかしいような気がします。

 ○最短年限卒業率を出したいのか、それとも、先生がおっしゃった真の卒業率、一人一人追いかけた形を出したいのか、また、考え方としては、当該年度の4年次に在籍した者の卒業率を出すというのも結構一般的にやられています。それから、もっとアバウトにやろうとすると、当該年度の卒業者数を、3年度前の入学者数で割るという大雑把な方法もあります。ぶった切り方式。そうすると、アバウトな数字だけれども、長期間の変動は見られます。実は卒業率について4つぐらいあります。だから、どの卒業率を見たいのかというところが非常に難しい問題です。

 ●そこに関しては、非常に悩んだ結果ではあるのですけれども、一つには、以前に比べて、卒業まで行きつく人の割合が高まっているというのは出したいなと思いました。一方で、日大の調査の方法でやってしまうと、少なくとも卒業率は出ない形になってしまうのかなと思っていて、卒業率が出せるとすると、どういうやり方かなというので、まず作ってみたのはこれだったのですが、確かにおっしゃるとおり、その後、5年かけても、6年かけてでも卒業するといって勉強している人の様子はわからないものがありますし、実際にそういった方が、卒業率を押し上げているという現実には対応できていないと思います。ただ、逆にこれを余り細かくし過ぎると、今度は調査をかけられた側の御負担にもなるということで、一番わかりやすいデータとして、最短修業年限での卒業率がどうなっているかということをとれればと思ったのですが、確かに、これでは23年度の卒業者数というのは、ほかの年度に入学、編入学した人も入ってくるので、若干そこはノイズになってしまうというのがあります。より良いやり方が、どうすればいいのかというのは、これはもうしばらくお時間をいただいて、詰めることができればと思います。

 ○今、委員がおっしゃったことは非常に関心事でして、先に結論を言いますと、卒業率というのは、今までこういった調査がされていないこともあって、ちょっと重過ぎるのかなという気がしています。まさにここに書いているように、参考値としてのものですというのがわかるような形にはなっていますが、回答者が割り算をして書き込むというのはちょっと重いのかなということです。
 あと、細かいところを言いますと、例えば、編入学というのは本来半分の年からですが、通信の場合は再入学制度で4年次に入ってくる等、その他もたくさんありますから、これをどういうふうに表現したらいいかということが常に問題となるということです。
 更にもう一つ言いますと、学校基本調査において架空の卒業率も出せないのは、編入学者数をとっていないことと、5月1日現在で調査するために10月入学者数をとれていないという2つの問題があって、そのためにこの項目13というのは必要だと思っています。ただ、通常、秋入学者は半年で1年目を過ごしますから、翌年の4月入学者と合算をして、学則上の年限カウントをしていくのが通常ですので、この表の中でも秋入学生は、本当はこの年に卒業できないはずです。もう一度、意見として繰り返しますと、大学の回答者に書き込ませる形の卒業率は無くしておいて、その部分については集計結果のところで、あくまでも限定付きの参考の卒業率として算出するというのが、一番分かりやすいのかなと思います。

 ○項目40「メディア授業の授業料」というのがありますが、これは良い調査だと思います。通信制の大学では、授業料とは別に、スクーリングの受講料をとっていますね。その流れの中で、実はメディア授業をやる場合も、別に受講料をとることで、学生側から特に不満がなく、メディア授業ができているということがあります。その受講料で、メディア授業を実施するだけの財政的なものになるとは思いませんけれども、補助にはなりますよね。だから、私は通信制の大学がメディア授業を結構導入している実態があるのだと思います。ただ、見かけ上、30単位前後という実施の数が124単位からすると少ないように見えるかもしれませんが、もともと設置基準で面接授業、あるいはメディアを利用して行う授業によって取得しなければならないのは30単位ですから、30単位実施すればよいということですね。それ以上、つまり124単位全部やる必要は逆にないわけでして、124単位やっていないと、利用していないんじゃないか、通信制の大学は余りメディア授業をやっていないというようなことをおっしゃる方がいますが、逆にやる必要もない。30単位程度やれば、学生にとっては面接授業の負担が軽減される、その代わり、相当する受講料を徴収するということで行っている学校が多いと思います。ですので、この調査は非常にいい調査なんだと思っています。
 それから、もう一つは、日本大学の調査の、項目3です。「メディアを利用した授業を実施していない場合の今後の実施予定」を聞いたところ、今は実施していないけれども、「予定あり」と答えたところが大学で9校あったとあります。これについて、先ほど事務局から今度調査することによって、どうなったか見ることができるという御指摘がありましたが、そうすると、この日大の調査結果だけではなくて、個別の個票をお持ちだということですか。これは日大がお持ちになっているものなのか、それとも、文部科学省の方でお持ちになっているものなのでしょうか。これについては、個票がないと追跡できないのではないかと思います。

 ●当方には今無いので、そこまで日大にお願いをして、追跡をするのかどうかということになってくるかと思います。

 ○今回の調査は大いに興味深い調査ですが、今後の予定を見ますと、8月下旬にはこの調査を実施するということのようで、今日時間が無い中で、この場で調査票について全て確認するというのは難しいと思うのですが、例えばこれを持ち帰らせていただいて、気づいた点などを後から個々にお出しするということは認めていただけるのでしょうか。

 ●できればそうしていただけると幸いです。我々もこれはまだまだ完成形とは言えないと思っていましたので、今日の御議論に加えて、皆様方からの御意見を踏まえて、修正をした上で、一応この日程表に間に合う形で集計ができるような位に、発出できれば良いと思っています。

 ○皆さんよろしいですか。今日御説明いただきましたけれども、また詳しく御覧いただいて、いろいろ御意見があろうかと思いますので事務局へお知らせいただければと思います。

 ○ここにある素案は、日本大学で調査したときの言葉がほとんどそのまま移ってきているわけですね。

 ●基本的にはそうです。

 ○この素案では、例えば今使わない言葉ですとか、合わない言葉が入っていますので、皆さんでそれを直して意見を出さなければいけなくて、後で調整が大変になってしまいますね。したがって、原案を送っていただくときに、もう当然誰でもわかる、テクノロジーの変化などは直していただければ、後で集計が楽になると思います。みんなから同じ意見が来て直すのはチェックするのが大変だと思います。したがって、時代の変化によるものは修正した上で、データをお送りいただいたほうが効率的ではないかと思います。

 ○あくまで調査対象は、通信教育について実施していくということでいいですか。

 ●そうです。

 ○先ほどのお話の中で、通信制だけではなくて、今後の情報通信技術の活用についても検討していくということがありましたが。

 ●案としてはございますが、まずは一番コアになる通信教育の情報を把握したいというのが趣旨でございます。

 ○通信制と通学制を併設している大学等において、通常の大学の認識が変わるようなデータがとれるのかなということは予想されますけれども、そういう意味で、例えば後半の部分は、「メディアを利用して行う授業」を行っている場合にはお答えくださいという形になっているものですけれども、結構メディアを利用した授業以外についても聞いた方がいいかなという項目も多い気がします。いわゆる授業設計なんかのFDをどうしているかとか、メディアを使う、使わないとか、通常授業とメディア等を使った場合の比較ができるような取り方ができると、後々生かせるんじゃないかということをちょっと思っていました。

 ●それは通信制ではなくて、いわゆる併設の通学課程についてということでしょうか。

 ○この範囲でいいのですけれども。授業一般について何かやっていて、当然、メディア授業でもやっているのか、メディア授業だから、特別に何かをやっているのかということが見えるといいですね。そうすると、ほかの大学などの傾向の予測にも使えるのではないかと思います。 

○多分、今回の委員の中で日大の研究のときと兼ねているのは私だけだと思いますので、少し経緯を話させていただきます。項目15を作成するときには、予備調査はできなかったのですけれども、今どのぐらいこういったものがあるかということを検討して、ある程度のリアリティをもって、大学が回答できるようにということを行いました。ただ、先ほど事務局から御紹介いただいたように、実際に調査してみると、集計不可能な数値が非常に多くありました。あと先程、質問のあった、原票がどうなっているかという話ですが、私の記憶の範囲では日本大学で保管していると思いますが、実際にはかなり電話で問合せをして、書き直したり、データ入力段階で入れ直したりして、非常に困難な中でやった調査であるということを当時関わった人間として申し上げたいと思います。
 その上で、項目15について申し上げますと、3つ目の項目の「一般の出版社による書籍等」というのが確かに分かりにくくて、正確に言うと、「一般の出版社による教科書及び書籍等」で、あくまでもこれは教科書や印刷教材として使用したものということです。これは実態としてどういうことかと言いますと、通信制の大学に直接タッチされていない方は分かりづらいところかと思いますが、1つ目の項目は大学が独自に出版をしたり、あるいは大学が持っているユニバーシティプレスで出したりというのが該当して、2つ目がそういったものを共同作成教科書などとするときもありますので、そういったもの。それで、3つ目のところでは、大学でお願いをして、出版社に頼むというケースを想定しています。例えば、何々先生がもう20年も前から通学課程で教科書を使っていて、通信をやるのだったらこれを使うしかない、そこには教科書って書いていないんだけれども、郵便料金の優遇のために文部科学省認可の通信教育教科書というものを後からシールではったり、印刷をしたりということをやっているということがあるのですね。そういうことを考えると、3番目の項目というのは、大学通信教育における印刷教材の質の向上や、通学課程における実績を反映させるという意味で非常に必要なものとして、大規模な大学でも小規模な大学でも実態が出てくるという経緯がありますので、項目15は、過去の比較ということも含めてこの形でなさったほうがいいかなということで申し上げました。
 あと、項目13の関係で言いますと、通信教育課程の教育の質の維持という意味では、通学課程以上に在学年限を長くすることによって、4年で卒業するという計画ではなくて、最初から6年でやります、いや、私はこんなに忙しいから8年でやるのだと宣言しながら入ってこられる入学者の方がおられて、それをフォローするために学則上も通学課程と異なる在学年限を設定しています。これは高等学校の通信教育だとか、夜間部とかを見ても、決して通信だけの特別な話ではなくて、現実にはそういうものがありますので、先ほど委員がおっしゃったように、学位のことを調べるとすると、日大の調査では無かったけれど、もう一個新しい項目としてあってもいいなと思うのが、在学が可能な年限を明記する項目です。これは編入学でも、通常の場合、学則に明記していますから、卒業まで3年間必要だったら、在学年限は3年間だけじゃなくて、7年だったり、6年だったりという部分について、どう定めているかということも同時に聞いておかないといけないと思います。項目13について、修業年限が4年間だから、4年で卒業することだけが正しい在り方ですよというように本会議の委員なり文科省が思っていると思われると、混乱の元になるかと思いますし、主な大学はそれ以降も再入学などその他の手続を定めて、審査した上で延長を認めるということが多くありますので、そういった在学年限についても聞くことによって、項目13に関わる不十分さというか、現場の回答者の誤解は回避できると思います。
 それともう一つ、これはちょっと先の話で、言い過ぎる話かもしれませんが、実はこの入学、卒業に関する部分のところは、公益財団法人私立大学通信教育協会でも、あるいは文部科学省の方でも気にしていた部分でもありまして、それなりに質の高い教育をやっている大学において、実際のところは卒業率が高くならない現象が発生しています。これは何かというと、一般的に厳粛にやっていますという問題だけではなくて、今回の調査で入学者の学歴を聞くことになっていますので、そこでも出てくるかと思いますが、通信教育協会の調査では、4割が大学卒業者で、つまり、大学の卒業証書を目指してという戦後直後のスタイルではなくて、資格の取得、あるいはそれに関する具体的な能力の修得ということを目的にされるというケースが非常に多くなってきています。だから、卒業イコール大学通信教育としての成果というよりは、入学する段階から、卒業証書は持っているので教員免許状が欲しいとか、何々資格が欲しいという方がいらっしゃって、そういったことをシステム上の前提としていたり、学生にとっても、教員にとっても、自明の理であったりというところがあります。今回ですと、項目7で取得可能な資格等として問われることになる訳ですけれども、在学年限に関する規定を置くのと同時に、入学者及び編入学者が、卒業そのもの、正確に言うと卒業証書そのもの、学位そのものを求めない形で入学してくることに対応することが大学の機能としてあり得ます。よって、非常に聞きにくくて、今この場ですぐ言えるような話ではないのですけれども、そういったことが何か聞けるような項目があればいいかなということも思っていました。非常にこれは聞きにくい話なんです。だから、アンケート調査のときに言うべきことではないと思います。ただ、実態としてはその部分が、社会的に役割を果たしていらっしゃる大学でかなり起こっている状況がございますので、少し発言をさせていただきました。

 ○ちょっとそこについて質問をさせてください。それは卒業をしなくても、単位を取ることによって資格を得られるということですか。

 ○例えば教員免許状のことを申し上げますと、教育職員免許法に基づいて、一種免許状でしたら、基礎資格として卒業学位が必要なわけです。例えばもうA大学は出ていますが、A大学では免許はとりませんでした、それに対して、大学通信教育のB大学に入って、法律で定めている単位を、20単位、あるいは最大数十単位とって、A大学の卒業証書とB大学の単位の組み合わせで免許状がもらえるというのがあるのですね。そうなったときに、受け入れ大学B大学が、科目等履修で受け入れますとやると、これはここの話ではなくて、それこそ教職員課といいますか、教員養成の分野のお話だと思いますが、これは社会福祉の分野でも同じことが起こるのですけれども、単純に科目等履修生で何単位とったから教育実習に行ってきなさいというのは、今は中教審の答申や審議において、実習公害という言葉が出ていて、大学では学生として受け入れて、ちゃんと年度ごとの指導を徹底しなさいという議論が現在進んでいるのですね。そういう中で、その学生にとっては、すでにA大学の学士であったり、就職していたり、あるいは現実に講師であったりするのだけれども、免許状が必要だという現場のニーズや試験上のニーズがある場合は、社会の、あるいは大学の水準維持の上で、不可避的にB大学に学生として就学して、編入学等を行うということが求められます。一時期、この話があったときに、それならば、これは放送大学で非常に積極的にやっておられるみたいに、履修に関する制度の中でコースを作ればいいのではないかという議論もあって、このことをちゃんと検討しておられる私立大学もそれなりにあるのですけれども、一方ではやっぱり学生として所属をして、毎年度チェックすることで初めて必要な質を維持できるということがありまして、そうなったときに、大学の卒業は目指さずに、社会での役割を果たそうとする方が、現実としては決して少数派ではありません。大学においてこうした学生の割合を調べると、極端な変化が出てくるということも実態としてあるということです。

 (5)今後の日程(案)について、資料に基づき、事務局から説明があった。

 以上  

お問合せ先

高等教育局専門教育課情報教育推進係