獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第14回) 議事要旨

1.日時

平成25年12月16日(月曜日)10時~12時10分

2.場所

文部科学省17F1会議室

3.議題

  1. 獣医学教育の改善・充実について
  2. 教育実施状況調査の結果について
  3. 大学院教育の充実について
  4. その他

4.出席者

委員

伊藤座長、酒井座長代理、石黒委員、大井委員、尾崎委員、藏内委員、佐藤委員、竹中委員、中山委員、平井委員、政岡委員、三角委員、横尾委員、吉澤委員

文部科学省

常盤審議官(高等教育局担当)、牛尾専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

オブザーバー

藁田農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、滝本厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

5.議事要旨

議事の概要:
議事に入る前に、今回が初出席となる藏内委員より挨拶があった。事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(◯:委員、●:事務局・オブザーバー)。

 

(議題1について)
大井議員より、資料1に基づき豊浦獣医科クリニック及び株式会社エス・エム・シーの事業及び獣医診療業務について発表があった後、意見交換。

○ クリニックと、エス・エム・シーというコンサルティングの会社を一緒にやっていることは、ビジネスとして特徴になっているのか。
○ どの検体をどの検査に回すのかという交通整理のできる獣医師を置いておかないと検査の依頼は増えない。こういう検査ができますという宣伝だけで検査が来ることはない。依頼の内容が明確なら問題ないが、そもそも何を検査すればいいのか分からない発注者も多い。農場が困っている状況で、検体をどのような検査に回すかという整理をして結果を返してあげることが重要。豊浦獣医科クリニックの現場での豊富な知識と、エス・エム・シーでの検査の正確さと迅速性の二つが力になってビジネスになっていると思う。
○ グローバル化に伴って、今後の獣医師の職域を広げるべきという話があるが、クリニックとコンサルティングというモデルは、世界でも使えるビジネスモデルか。
○ 欧米には既にしっかりしたビジネスモデルがある。アジアの中でアメリカ・中国も進出を狙っている。その中で、日本の技術レベルの高さは東南アジアでも評価されている。定期的ではないが、私もフィリピンから呼ばれたこともある。それぞれの先生が得意分野を持ってトータルで養豚場をフォローできるような仕事をしていき、そこに語学力があり、海外で情報交換ができるような人が加わってくれれば、ビジネスモデルになると思う
○ 養豚は大企業でやっていることが多いが、そのような企業では、中に同様のシステムを持っているのか。
○ すごく大きな運営体がやっている場合は、内部にシステムは持ってはいる。ただ、社内の目はどうしても甘くなるし、何かあったときに責任の所在が明確にならないので、企業の社会的責任の観点も含めて外部の第三者の目で見てほしいという要望がある。
○ クリニックでは各種臨床試験も受けているとあるが、その内容と、規模はどのくらいか。
○ 豚のものだけに限られる。ワクチンや新薬など。新薬は余り多くはないが、最近は機能性の飼料を使った試験等が増えている。
○ 養豚関係の獣医師は日本でどのくらいの数がいるのか。
○ 正確なところは分からないが、私どもの会社で33名。同様に獣医師が複数名でやっているクリニックが4社。全部で40~50名程度かと思う。あとは企業、飼料メーカー、NOSAI、農協等。
○ HACCPの認証は、農水省が力を入れているが、全国的に伸びていない。今後伸びうるものなのか。
○ 今のところ意識の高い人で、生産物の販売に直接宣伝できるというメリットのある人しかやっていない。外国ではHACCPによる生産を続けるメリットがある。例えば韓国では学校の給食にはHACCP認定以上の豚肉しか使ってもらえない。認証をとることによって国の補助金が得やすくなる、お金を借りたときの利息が逓減されるなど、売るためでなく生産を継続するに際してメリットがある。
○ HACCPを取っているところとそれ以外とでは、損耗率に違いはあるのか。
○ 元々生産性向上を念頭に考えるべきではないが、HACCPを導入していると、実際には結果としてかなり生産性が改善されている。取り組んでいる方が一番実感していることだし、そういった数字をきちんと公表できるような形にしないといけないと思っている。
○ 韓国が今後日本にとっての主要市場となるかどうかは別として、TPPにおいて、HACCP認定を受けていないことを理由に韓国が輸入を拒否することもあり得るか。
○ 認定されていない産物を拒否するというよりは、HACCP認定を受けた自国産物を武器にするということが考えられる。
○ TPPで自由化が始まったときに、日本の畜産物の安全を保証するのは獣医師。統一的な獣医学教育をすることが大事。
○ 大学との具体的な連携内容はあるか。
○ 養豚現場では病性鑑定が一番重要。ところが、これをやってくれる大学がなかなかなく、麻布大学にお願いすることになった。
○ 大学の先生が農場に行くことはあるのか。インターンシップ等はやっているか。
○ 大学の先生が農場に行くことはない。インターンシップは5年ほどやっており、100人以上受け入れた。そのうち、10人くらいは豚の世界に入った。就職希望が寄せられるが、給料を出せないのでお断りしている状況。
○ 臨床実習の中でも特に経済動物の場合は、感染症対策の観点から対応が難しいが、こういうことだけは十分に教育してほしいという、大学への要望はあるか。
○ 養豚場の衛生管理は、他の家畜に比べ厳しいのは確かだが、そういう認識が乏しい学生がいる。実習につなぎで来たりする学生もいる。実習前教育として、感染を広めないための心構え等をしっかり教えてもらえると有り難い。
農場に来て、あの豚は病気だと獣医師は言うが、基本は病気を出さないことだ。豚については、頭数も多いし、特に重要な考え方である。
○ 女性の割合はどのくらいか。
○ 具体の数字はないが女性も増えている。
○ 大学に聞きたいのだが、HACCPについてはどのくらい教えているのか。
○ 食品衛生の科目では、15コマのうちの一コマというところ。家畜衛生の科目では、フードチェーンの川上の話として取り扱っている。

 

(議題2について)
事務局より、資料2に基づき教育実施状況調査のうち大学院教育部分について概要説明があった後、意見交換。

○ 獣医学では入学者はほぼ横ばいになっているが、東大全体でいうと志願者数は明らかに減少している。
前職の状況は学部生が多いが、社会人の入学者が他分野に比べて多い。
留学生が明らかに減っている。憂慮すべきこと。
修了者の就職先に、公務員が少ない。高度な知識を有した公務員は必要。
経済支援について、DCの採択率が30%くらい。DCを受けている学生とそうでない学生の格差は激しい。その格差をできるだけ小さくすることが大事。
教育手法・体制について、日本は寺子屋方式が中心だが、スクーリングの割合等に関する調査が必要。
○ 公務員進学者が少ない点について、獣医師の処遇は医師・歯科医師とは全く違う。獣医師は医療職(二)という扱いだが、これは医療職(一)である医師・歯科医師の言うことを聞いて仕事をする人ということ。だが、実際には現場の公務員獣医師は自分で判断して仕事をしている。処遇の改善は大事な問題。
○ 大学院の定員は。
● 112名。ただし、宮崎大学については、医学獣医学研究科となっているので、ここには入っていない。そのため、実際は112プラスアルファとなっている。
○ 共同研究でRAを雇用するというのはよくあることなのか。
● 特にその旨回答のあった大学については記述してあるところ。
○ 修了者について、「その他」が3分の1ほど。北大で調べてみたところ、内訳は留学生で帰国後の状況が捕捉できない者とポスドクだった。留学生でも、もともとポジションがある人はそこに戻るだけだが、そうでない人は帰国後職を探すというプロセスが入るため、分かりにくい。
● 先ほどの教育体制に関する調査をすべきという点について補足したい。カリキュラムポリシーに個別の科目についても記載いただいている大学があるので、参考になると思う。
また、公務員について、大学院卒が平成22年度以降減っているが、同じ期間、学部学生では増えており、何らかの相関があることも考えられる。
○ 教育手法・体制について。北海道大学がリーディング大学院に採択されているが、具体的な取組は。
○ スクーリングを増やしていこうということで、人獣共通感染症と化学物質の専門家養成コースを作った。それぞれ人数を少数に制限し、10単位以上のスクーリングと海外研修の義務付けを行っている。将来的には修了証を出したいと考えている。通常の教育課程にプラスアルファとして、寺子屋方式の外付け的に作った。
● 社会人の多さは獣医系大学院の特徴と言える。学部からの入学者が全体の半数を超えるのは平成25年度が初めてで、少なくとも平成21~24年度は、社会人が多かった。
○ 留学生数の推移は。
● 過去5年間では、34人、39人、32人、24人、30人。
○ スクーリングをやると、教員がどうしても足りず、非常勤講師を増やしてすすめているところ。すぐにはできない。
○ 東大で薬学の特任教授をやっていたが、薬学の講義に、工学等他学部の受講生が結構いた。大きい大学では、学生に上手く紹介しないと伝わらないが、ガイダンス等を通じて、他学部をうまく使うことを教えることも手では。
○ どういう講義をいつやっているか、他専攻では情報が流れてこないのでもったいない。
○ 薬学の中でもうまく伝わっていなかった。それぞれの授業内容を教員同士で把握していない。教育全体の問題かもしれない。
○ 東大の農学研究科の学位論文は研究業績が重要。研究成果主義で、講義を重視していないため、学生は必ずしもスクーリングに行きたがらない。
○ 東大は、一般的にはオープンコースが浸透しているとの認識だが。
○ 必ずしも末端までは浸透していない、というのが現実。
○ 農学部の中にいることも、そろそろ限界を感じている。農学は成果主義的で研究メインだが、獣医学では、社会にどう役に立っているのかも求められる。農学の中にいると、獣医だけが前に出るわけにはいかない。国際的にも、農学の中に獣医学があると言っても理解してもらえない。
○ 同感。獣医は、農学の中の一つではなく、ライフサイエンス分野の中の重要な位置にあると思う。是非、大学の側からも活動を。
○ 獣医師会と医師会で包括的協定を結んだのだが、獣医学が獣医学として独立していないということを知らない人が多かった。人獣共通感染症の防止などには医師との協力が欠かせない。獣医学は確立しなければいけない、その上で医学との連携が大事。
○ 本来の獣医学の守備範囲の拡大、医学との連携は、国民への貢献である。だが、進路の確保については処遇の問題が避けて通れない。処遇改善、魅力ある教育研究環境、学生の経済的支援等、多方面からの対応が必要。
○ 農学からの独立ということについて、具体的にどうすればいいのかというアイデアはあるのか。
○ 日本学術会議の農学分野の参照基準の作成において、現在、獣医学と畜産学を一つにまとめてくれ、と言われている。どう独立するのかを議論する場所がなく、日本学術会議の場でできれば、と思う。
○ 畜産学の先生方の中には、獣医学教育の畜産学における重要性、獣医学あっての畜産学ということを考える人も多い。ただ、今後のことを考えると、議論をもう一つ先に進めるしかない。獣医学教育のライフサイエンスとしてのこれからの貢献について、日本にとどまらず、アジアに、世界に発信していき、最後には人類全体を見据えていく、ということが必要。

 

(議題3について)
資料3に基づき、大学院教育におけるこれまでの主な意見について説明があり、追加的観点がある場合は、年明け頃を目途に事務局に提出することとなった。

 

(以上)

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