獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(平成23年度~)(第13回) 議事要旨

1.日時

平成25年10月22日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省15F1会議室

3.議題

  1. 獣医学教育の改善・充実について
  2. 大学院教育の充実について
  3. 教育実施状況調査の追加調査の実施について
  4. その他

4.出席者

委員

伊藤座長、酒井座長代理、石黒委員、尾崎委員、榑林委員、佐藤委員、菅沼委員、竹中委員、中山委員、平井委員、政岡委員、三角委員、村上委員、横尾委員、吉澤委員

文部科学省

常盤審議官(高等教育局担当)、牛尾専門教育課長、児玉専門教育課長補佐

オブザーバー

藁田農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長、滝本厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

5.議事要旨

議事の概要:
事務局から配布資料についての確認があった後、以下のとおり議事が進行した(◯:委員)。

 

(議題1について)
榑林委員より、資料1に基づき製薬分野における獣医師の潜在的需要・能力等について発表があった後、意見交換。

○ 教育が大きく変化してきた中で、今日の獣医学教育がある。60年代は30名の定員がいれば10名程度は企業に進んでいた。70年代くらいからペットブームになり、30人中20人が小動物に進むようになり、企業に行くのは3、4人になった。
獣医学はもともと薬学・理学に比べれば養成規模が小さいのに、製薬に進む獣医師の数が減り、獣医師がそれまで活躍している場所からいなくなった。その後次第に企業は医学・薬学出身者を教育しなおすことで獣医師に任せていた部分を対応するようになり、製薬において獣医師はどんどん減ってきている。
小動物獣医師の開業も飽和し規模が減ると、学生の志向も変わってくる。しかし、獣医師が製薬に進もうとしても、一度失った製薬企業におけるポジションを取り戻すのは難しい。今後、倍以上の努力が必要であり、その覚悟をして教育に取り組むことが必要。
○ 医師は動物実験については素人。宮崎大学では、医学・獣医学の大学院を作った。今年4年目だが、充足率はずっと100%。医学系の学生は、実験動物を基礎から学ぶことができ、獣医系の学生は、Translational Medicineを学べるようにした。
○ 本学の薬理の講義15回のうち2回を榑林委員に頼んだ。学生の評判もよく、講義後は製薬に進みたいという感想もあった。私のところからは毎年4名ほどの学生が出ていくが、ほとんどが製薬や食品健康科学の分野に進んでいる。
○ 企業が獣医師の価値に気づいていないという指摘があった。大学から製薬企業に対する熱意を感じたことはあるか。また、企業の側は、獣医学教育の中で特別な教育を必要としているか、そのような教育をすることで、企業にとって獣医師を雇用するモチベーションとなるのか。
○ 大学からの熱意は感じたことがない。獣医学教育を受けた人をどのように使うかということについて、企業への働きかけは少ない。
医学でも一緒だが、固定観念が芽生えないうちに目を広げておくためにはキャリア教育が重要。キャリア教育の講義をやった場合、1年生では興味をもって聞いてくれるが、2・3年生以降になると就職を意識して自分の興味のある分野程度しか聞かない。大学院ではほとんど聞かない、という状態。
医学も製薬に進む学生は少ないが、活躍の場があることを植え付ければ、学校が働きかけなくても、学生の側から可能性を探りにいくのではないかと思う。
また、大学において、健康医療産業論のような形で、社会のニーズを直接的に伝える研究は必要。ただ、創薬研究だけを教えることが学部教育では必要ではなくて、むしろ形態・機能・臨床をしっかり教えることが重要。
○ 医学・薬学の分野では、大学から企業に対する寄附講座の要請が多い。東大医学部は寄附講座をたくさん要請し、多くの講座を実施しているが、このような動きがもっと あってもいいのではないか。
○ 現在の外国の教育では、臨床に特化している。外国の製薬企業等ではどのようなスタンスなのか。
○ ドイツとアメリカの製薬企業では、獣医師が活躍している。獣医師というよりは、獣医学教育を受けた人が、製薬会社の研究開発のシニアリーダーとして活躍している。

 

(議題2について)
政岡委員より、資料2に基づき説明があった後、意見交換。

○ 定員のデータは取っているのか。
○ 取っていないが、大体どの大学も4ないし6名。麻布大学は定員10名だが、ずっと未充足になっている。他の大学は充足している。
○ 定員が4名~10名というのは、適当と考えているのか、もっと増やしたいと考えているのか。
○ 設置当時から10名で変更していない。ただ、臨床家であっても学位を持つべき、という考え方がある。また、学部教育が終わって大学院に入ってくるのではなく、社会人を受け入れようという傾向がある。大学院の再構築を進めれば、各大学とも、定員を増やすという考えがあるものと思う。
○ 獣医系大学全体の教員の質の向上のため、大学院の定員は増やす必要がある。また、私学から連合獣医大学院や国立大学にこの倍は進学している。
○ 学位授与率や平均在籍年数は?
○ 学位の授与率・修了までの年数に関するデータを取っている。ほとんどは4年で修了しており、また、各大学とも修了年限の短縮も行っている。
○ あえて一番大きな問題を挙げるとすれば何か。
○ 教員数の増が必要。学部に120名を抱えている。6年で720名の学生がいるということで、720名の教育に携わりながら大学院生も見るためには教員数の増が必要。これが私学の一番の悩み。
教員増には人件費が必要だが、私学助成の経常費補助が、医学と獣医学では雲泥の差。これを解消したいと考えている。S/T比について私学はこれで良いのかというのは、いつも意識している。S/T比を改善したい。
○ 評価は自己評価で行っているのか。
○ 各大学から委員が出ているので、その委員を中心に自己評価している。
○ 評価基準はあるのか。
○ 明確な評価基準のようなものはない。
○ それぞれの大学が自己点検からどのような見方をするのか、というもので、客観的な評価ではない。ただ、各大学が到達目標にしているものなので、改善率は取れる。
○ 私立の考え方としては、ライセンス教育はあくまでライセンス教育として、大学院教育を充実して育成した人材を健康医療産業の方に輩出していくのが分かりやすいのでは、と思っている。
○ 6年制の獣医学教育はそれだけで価値の高いスキルセットだが、獣医学の人たちは、自分の価値を理解してないのではないかと思う。医学や薬学と同じ場所に出ると、自分たちのテリトリーの中で考えがち。外から見ると、獣医学の学生も、先生も、社会に貢献できるポテンシャルは非常に高い。
6年の教育を終えて国家資格を取って、それを頼りに成長産業に人が出ていく。そしてもっと深堀りして、学んだことを健康医療産業において最大限利用できるような教育研究を施していく。ライセンスで縛られる仕事だけを考えると獣医師の活躍の場は限定的になってしまうので、もっと広げて考えればいい。それを国に、特に文部科学省にもよく考えてほしい。
○ 企業側が獣医学教育の価値に気づくためには、何が必要か。企業に就職する際は、安全性試験に配属されることが圧倒的に多い。また、キャリア教育が大事だとの話もあったが、大学側に求めるものは何か。
○ 一つは教育。獣医学を目指して入ってくる学生は、今や医学に匹敵するくらいの能力がある。そのような学生が生命科学をしっかり学んでいる。そのような優秀な学生を社会の役に立てようと思うなら、進路に思い込みが入るような教育はなるべく排除する。ライセンスを取るための教育、獣医師としてのアイデンティティを学生に植え付けることが重要だが、使い方はもっといろんなものがあるということを、頭が柔らかいうちにどうやって教育するかということ。これは私立だけでなく、国立も同様。
もう一つは、社会に対する情報発信。企業と共同でフォーラムをする、製薬・健康医療産業の企業と寄附講座を行うなど、地道な努力が必要。竹中委員のように、獣医師出身で経営のトップになられたような方をうまく使って、寄附講座をどんどん入れていく。この点については、私学の方が、国立より柔軟にできるのではないかと思う。
○ 大学院では依然と比べ社会人や留学生は増えているのか。
○ そこまで比較できていないが、社会人は増えているとの印象。
○ 国公私立問わず増えている。社会人の学び直しや卒後教育等、社会の要請に基づく大学の使命ということ。
○ 留学生について、学部から留学していて、そのまま大学院にあがるケースが多いのか。
○ 学部から入ってきてそのまま大学院に、というケースは余りない。アジア、特に中国・韓国・台湾は、学部は母国で、大学院は日本で学ぶ、という傾向はある。そういう中で、留学生は増えている。

 

(議題3について)
事務局より、資料3に基づき、各大学に教育実施状況調査を依頼した旨の説明があった。

 

(議題4について)
・ 伊藤座長より、9月に開催された全国獣医系大学代表者協議会の議事について報告があった。
・ 事務局より、構造改革特区第23次提案とそれに対する政府対応方針について説明があった。

 

(以上)

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