今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年2月18日(金曜日)午前10時から午後0時30分まで

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. ヒアリング
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

安西 祐一郎、今井 浩三、木場 弘子、栗原 敏、黒岩 義之、桑江  千鶴子、坂本 すが、竹中 登一、丹生 裕子、中川 俊男、中村 孝志、西村 周三、濵口 道成、矢崎 義雄、山本 修三
(敬称略)

文部科学省

鈴木文部科学副大臣、磯田高等教育局長、加藤高等教育局審議官、新木医学教育課長、茂里視学官

オブザーバー

(厚生労働省医政局)村田医事課長

5.議事録

【安西座長】  ただいまから、今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会、第3回になりますけれども、開催させていただきます。

 会議に入ります前にご報告申し上げますけれども、この会議は冒頭から公開とさせていただきます。ご了解、お願い申し上げます。

 今日は、前回に引き続きまして、まず有識者の方からヒアリングを行わせていただきます。今日は、株式会社LOTUS代表取締役社長・日本製薬医学会の評議員の高橋希人先生、それから、北海道乙部町長の寺島光一郎先生、千葉大学医学部附属病院長の河野陽一先生のお三方に、お忙しい中、いらしていただいております。よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 今日は、3人の方々から20分ずつお話をいただきまして、その後、1時間程度の自由討論をさせていただきたいと思います。発表者への質問というのは、まとめて自由討議の際に受け付けるということにさせていただきます。よろしくご協力のほど、お願い申し上げます。

 本日は、お忙しい中、鈴木副大臣がいらしていただいております。まず、鈴木副大臣からごあいさつをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【鈴木副大臣】  おはようございます。今日は、ヒアリングも立て込んでおりますので、私からは御礼だけ申し上げたいと思います。

 皆様方、大変お忙しい中お集まりをいただいて、また、毎回大変熱心なご議論をいただいておりますこと、感謝しております。いろいろな現場からのお声を伺いながら、まさに熟議を尽くしていくことだというふうに思っておりますので、よろしくご指導のほど、お願い申し上げます。

 ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。

 それでは、ヒアリングに入ります前に、事務局から資料の確認をお願いします。

【茂里視学官】  おはようございます。資料の確認をさせていただければと思います。

 まず、高橋様から頂戴しております資料、資料1と資料1-参考というものが、2部ございます。そして、寺島様からは資料2、河野様からは資料3及び資料3-参考、トータルで5点、ご用意させていただきました。不備がありましたら、お申しつけください。

 以上でございます。

【安西座長】  よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、ヒアリングに移らせていただきます。先ほど申し上げました、まず最初に株式会社LOTUS代表取締役社長・日本製薬医学会評議員の高橋希人先生にご意見をお伺いしたいと思います。

 大変恐縮ですけれども、20分程度でお願い申し上げます。

【高橋希人氏】  皆様、おはようございます。高橋と申します。

 私、先々日、竹中会長からお電話いただきまして、一緒にこういった業界で長くお世話になっておりますものですから、そこで製薬企業にいる医者の状況はどうだという話をしておりまして、そのご縁もございまして、今日このような機会をいただきまして、大変光栄でございます。おそらく、ふだん聞かれている話とはちょっと毛色の違う話と思います。医者の世界もこういった多様化の面があるんだということを少しおわかりいただければというふうに思います。本日は、主に私、日本製薬医学会といいまして、これもあまり聞きなれない学会かと思いますが、そこの評議員の立場での話をさせていただきます。

 まず、この学会でございますけれども、歴史は既に30年ほどある、製薬企業に入ったお医者さん、30年前ですから、かなりベテランの方たちが仲間同士で集まって始まった会でございます。それが発展いたしまして、昨年4月からは一般財団法人の学会として活動をしております。主にメインのメンバーは、製薬業界におります医師で形成されております。最近はMD以外の方も入っていただいて、徐々に会員数を増やしているというところでございます。かなり専門性の高い集団でございますので、製薬産業にかかわる問題、行政にかかわる問題、アカデミアにかかわる問題等を議論して、いろんな提言をさせていただいているというようなところでございます。私どもの上部団体として国際製薬医学医師連合会というのがございまして、それのオリジナルの構成メンバーにもなっております。

 今、日本製薬医学会にいるメンバーを見ますと大体、製薬業界にいる医者の状況というのはどんなものだということがわかりますので、メンバーをお示しいたしますと、青い線で出ておりますのが外資系の製薬企業にいるメンバーでございまして、これがどうしても圧倒的に多いということでございます。日本のもともとある企業が医師を雇うということは歴史的にあまりなかったものですから、今、徐々に増えてきているという形で、大分差があるような感じでございます。最近は、学会化いたしまして、行政、PMDAにおられる先生方も入っていただきまして、あと大学の先生方も徐々に入ってきていただいて、企業色の強い学会から、徐々に一般化しつつあるという状況でございます。

 これも、図で示しましたが、同じようなことでございます。主なメーカーにアンケートをとりまして、いろんなまとめをしてございます。明らかに外資系の医者が多いということでございます。

 まず、製薬医学、これもあまりお聞きなれない言葉かと思いますが、ヨーロッパではかなり歴史が長い、医学の一分野でございます。名前のとおり薬剤に関した医学という定義になってございますが、ここに書いてありますように、薬剤開発に関するいろんなサブジェクトがございます。それと、倫理、それから、企業の関係もございますので、プロモーション、マーケティング、それらにかかわるコンプライアンスの問題ということも、入ってございます。ですので、一般的な医学部で習う科目とはやや違っておりますので、卒業してから我々のような世界に入って新たに学ぶような状況でございます。

 製薬企業で働いている医者は何をやっているのかということでございます。それで、今日参考に、メンバーの1人に書いていただきました論文、我々、『Medicina』とか、それなりの雑誌に結構、製薬医学を広める意味で記事を書いてございまして、それの1つとして製薬医師の役割をまとめて書いていただいたので、興味があればご参照になるかと思って、添付させていただきました。

 主な役割として、やはり安全性情報、薬剤は当然、副作用その他、有害事象というのがくっついてまいります。そこで、医学的判断をするということは非常に重要な仕事でございまして、これはやはり医師がやるということで、我々、製薬業界におります医者の約3分の1がこういった安全性情報にかかわっているということでございます。

 それともう1つが、臨床開発でございます。フェーズ1、2、3といった言葉であらわされる臨床試験をやるところに、リーダー、あるいは医学専門家といった形で、疾患、病気に関する知識を利用しまして、リードしたり、企画したり、プランをしているという役目でございます。これがやはり3分の1ほどを占めております。

 その他、以前、日本の製薬企業には学術というところがございまして、それは基本的には売っている薬剤の情報に関して、先生方、あるいは薬剤師の先生方に情報を提供するという部門がございました。それだけではなくて、昨今、製薬企業が昔のように売る、MRというのが宣伝しにいって売るという時代は徐々に変わってまいりまして、今、製薬企業の使命としましては、薬剤を正しく使っていただく情報をお配りするというのが使命になってきておりますので、そういった役目を担うメディカルアフェアーズ、これはなかなかいい言葉がございませんで、ずっとメディカルアフェアーズという言葉でつくっておりまして、これもヨーロッパで特に発展して、アメリカなんかでは非常に重要な機能になっておりまして、日本でも今、徐々に発達中の役割でございます。ここにかなり、医者が活躍の場を見つけているという状況でございます。

 その他、マーケティングなどにもおります。あと、特に外資系になりますと、向こうの本社側といいますか、そこのプロジェクトのリーダーをやっているのは大体MDでございます。そうしますと、それと対等に話をする上で医者のバックグラウンドがあると非常にいいということで、本社対応に非常に時間を割くというのも結構、外資系の特徴になっております。私も前職はそういった外資系におりまして、ほぼ半分は本社対応で、朝晩、ずっとテレカン、ビデオカンファレンスをやっているというような状況でございました。

 それと、お医者さんが必ずしも企業で全て万能に働けるというわけではございません。人によりまして、学者タイプ、あるいはマネジメントができる人、いろいろと分かれておりまして、やはりその特性に合わせた形で、部下などのマネジをしない、スペシャリストとしてのキャリアもございますし、中には才能をいろいろと発揮して経営側に入っているような方も出ておりまして、いろいろとさまざまになっております。これが大体概略でございます。

 それで、これはどこでも同じことかと思いますが、必要とされる医師の要件でありますが、これはおそらく、製薬企業のみならず、どこへ行ってもこういうことは要求されるかと思います。まず、卒業してすぐ製薬企業に来ていただいても、あまり役に立ちません。やはり実地経験をして病気のことをよくわかって、現場をよくわかってから製薬企業に来ていただくというのが、一番効果的かなというふうに思います。それと、当然そういった中で育てられた倫理観を持って薬剤を見つめるということで、また医者として確立した後に薬剤を見るということで、その製薬企業にとってはかなり有益な役割になっているというふうに考えております。あとは、薬剤開発は既にグローバライズされておりまして、日本だけを考えていたのではもうだめな時代でございますので、国際的に通用するようなことを考えていただく、そういう方が必要でございます。その他、これは一般的、どこの会社あるいは団体におきましても必要な素養というのは、常に要求されております。

 それで、製薬業界にどれだけ医者がいるんだという話でございます。いろんなことを推定いたしますと、我々のところに全ての医者が会員として入っているわけではございませんので、これも各社のサーベイからいろいろと検討をしました結果、大体400名ほど、製薬企業に所属しているのではないかというふうに推定されております。我々の会員になっているのが約250名ほどおりますので、それ以外にも150名ほどの方が活躍されているという状況でございます。

 それで、これは既に竹中先生からもお話があったかもしれませんが、外国と比較するとどうかということでございます。これを見ますと、やはり圧倒的に米国に、もともと製薬企業の数とか規模も非常に大きうございますので当然、歴史的にも数が多いというふうに思います。ドイツにも製薬企業、歴史的に長い会社もございます。あと英国ですね。製薬医学の概念というのは英国で始まったところですが、大きい会社もございますけれども、数としては、ここに統計として出ているのが、500名ほどでございます。日本で今、約250名ほどになりましたけれども、極端に少ないというわけではございませんが、まだまだキャパシティーとして必要とされているのではないかというふうに考えております。

 これはどのようなバックグラウンドの方がいるかというのを海外のサーベイで見たものでございまして、これもやはり製薬業界にいる医者が多いという話でございます。

 ここまでのまとめといたしますと、外資系製薬企業にMDが多いという結果であります。これは、どうしても海外の状況からそのようになっているということでございます。欧米諸国におきまして、製薬医学の歴史が長いものでございますから、それを学んだ方が多いために、薬剤開発に関する基準というのも確立されておりまして、臨床試験の質なども日本よりよかったということであります。日本も、今、大分キャッチアップして非常に良くはなってございますが、こういった製薬産業に医師が来るということで、製薬のみならず、医療にももっと貢献できるのではないかというふうに考えております。

 あと、製薬医学と非常に深くかかわっているのが、臨床試験、あるいは臨床研究というものでございます。それで、現在、なぜ製薬企業に人材が来ないかという話でございますけれども、これはやはり、臨床試験とか臨床研究に対する興味、モチベーションというのが、日本はまだ低いというふうに感じております。それで、それの現状といいますか、その状況をお知らせいたしますと、これは5カ年計画が始まるときにいろんな検討会があって出ていたご意見でございますけれども、当然、医学部等では臨床研究とか臨床試験を教えませんので、こういったことをトレーニングされている医師が少ないということで、治験があまりよくなかったんだというような話でございます。それと、研修機会が当時は全くございませんでしたので、当然、企業に入らない限り、こういう勉強はできなかったということであります。ですので、人材養成が必要であろうという話になっておりました。「新たな治験活性化5カ年計画」の中でも、人材の育成と確保というのが非常に重要なアクションプランとして提案されてございました。それで、やはり臨床研究実施にかかわるインセンティブが低いということが非常に認識されておりました。

 そこでインセンティブにかかわる話でございます。現在、大学、アカデミアにおいて、日本の基礎研究のレベルは非常に高いものがございますけれども、臨床研究といいますと、あまり高い評価を受けていないというのが、どうも現状のようでございます。それと、学会支援をはじめ、大学病院、大学におきましても、そういった臨床試験・臨床研究をするという体制がまだ全然できていない。治験に関しては非常によくなってきたと思いますけれども、先生方自ら研究して、立派な臨床研究として国際的に発表するような試験をやるための素地がまだ確立されていないのではないかというようなことになっております。

 結局、その結果どうなっているかといいますと、基礎研究論文数は、日本はトップクラスでございます。米国は格段に多いので、それとの差は歴然でございますけれども、有名雑誌に出ている論文数からすると、日本は世界3位ということでございます。ところが、臨床研究の方で論文数を見ますと、基礎研究でトップクラスの国は臨床研究でもほぼトップクラスにおりますけれども、日本だけが18位というところに下がってしまうというのが現状でございます。最近、経済発展目覚ましい中国からの論文数は、統計によりますと日本を超えたと。GDPと同じような状況になっているというのが、現状でございます。これは何が問題かといいますと、せっかく日本で基礎研究で発明されたり、できた成果が、どうも橋渡しが外国になっておりまして、そこで全て開発されて、特許も、名声も、どうも外国に先に取られているというのが現状で、日本国民に恩恵がやや後れて返ってくるということが、非常に懸念されることでございます。

 そういったことで、こういった臨床研究をもう少し活性化するということで、やはり病院での先生方の研究、非常にお忙しい中でやるというのは大変な状況だというのは、我々もよくわかっておりますが、そういったことを支援するためのリソースというのをしっかりとつけていただければというふうに思います。そしてその他、お医者さんの数もそうですけれども、それを支援するような方たちの確保というのもぜひしていただきたいというふうに思いますし、アカデミアにおきましては、臨床研究というのを、特に臨床科におきまして臨床研究というのを重視するような形で、日本の学会も考えていただければというふうに考えております。

 今言った学会に関してですが、特に学会、大きな学会、日本もいろんな学会がございます。ここに来ていらっしゃる先生、重鎮の方々がおられますので、ここで何とか臨床研究を重視する形、あるいは支援する形を考えていただければというふうに、切にお願いするわけでございます。それと、臨床科においては、臨床研究の評価をもっと上げてあげる。それと、これは大学のカリキュラム上大変難しいかもしれませんけれども、臨床研究・臨床試験というのも学部時代に教えていただければ結構ですし、あるいは卒後、専門医を取る課程においては必須の項目とするといったようなことをしていただけると、大変いいのではないかというふうに考えております。

 本日の結論でございます。Pharmaceutical Medicine、ここでは製薬、あるいは薬剤、臨床研究全体のことを指すと考えていただいて結構と思うんですが、そういったことをやることによって、日本の医療の向上に貢献できるというふうに考えております。それと、残念ながら、臨床研究の論文数だけの話でございますけれども、ちょっと低下が懸念されるということで、これも日本の臨床研究レベルを国際的水準に高めることに貢献できるだろうというふうに思っております。それと、新たに臨床研究での研究者としての地位を確立をして、世界を見ますと臨床研究で有名になった方も大勢いらっしゃいますので、そういった形で日本の先生方ももうちょっと活躍できるのではないかというふうに思っております。あと、そういった専門家、臨床研究をすることによりまして、製薬企業ですとか、あるいはPMDAですとか、そういった、これまでの直接患者さんを診る医療とちょっと毛色が異なりますけれども、そういったところに行く医者の数も増えてくるのではないかというふうに考えております。

 以上、ちょっと駆け足で大変申しわけございませんが、私の発表とさせていただきます。ありがとうございます。

【安西座長】  ありがとうございました。お急がせして、大変申しわけありませんでした。

 ご質問、ご意見は、後にまとめてさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、2番目のヒアリングになりますけれども、北海道乙部町の寺島光一郎町長からご意見をお伺いしたいと思います。申しわけありません、やはり20分でお願いいたします。

【寺島光一郎氏】  ご紹介いただきました、北海道の乙部町の寺島でございます。乙部町といっても、委員の皆さん、どこにあるか、わからないと思います。一番最後についています、北海道の地図がございまして、

【安西座長】  資料2をご覧ください。

【寺島光一郎氏】  資料2の一番最後の4ページ目にこのような図がついていると思いますが、平成5年に奥尻が大地震で島全体が大被害にみまわれたのですが、そのちょうど対岸のところで、札幌からは約4時間半、函館には1時間半という位置にある町です。北海道の医師の現状と対策について、私どもの国保病院の状況も含めて、現在の状況についてご報告させていただければと思っています。

 北海道の場合、面積が8万3,000平方キロメートルということで、四国、九州、沖縄の12県を合わせた約1.3倍の面積がありまして、人口は550万で、これは10月の国調で、四国、九州の速報値がまだ出ていませんので載せておりませんが、大体、この12県の30%の人口です。医学部の大学は3大学で、四国、九州、沖縄の12県には15大学あるので、その20%しかありません。福岡県は4大学あって、北海道には今は3大学しかないという状況です。特に地方の病院というのは町村に多いわけですが、北海道は今、町村が144ありまして、これは12県では213町村ですので、町村の数も70%ぐらいあり、北海道は大変広く、松山千春が出ている足寄町は、1つの町で香川県の4分の3の広さがあるんです。札幌に大学が2つあって、お医者さんの派遣は札幌が多いのですが、そこから道北までは約5時間、それから、道東という東の方の根室までは7時間かかるということで、私ども、飛行機で札幌から東京に来るのに1時間半なのに、道内にも飛行機はあるんですが、例えば根室の近くに飛んでいる飛行機は1日1便とか、多くて2便とかですので、ほとんどいい時間には使えないという感じで、まだ新幹線は北海道にありません。5年後にようやく函館まで入って、20年以上かかってようやく札幌という状況です。皆さん、北海道の道路は非常によくなっていると思いますが、まだ高速道路が札幌から函館まで続いてないという状況で、交通手段による先生方の移動は時間がかかります。

 そういうことで、もう一度、別表の4ページをごらんいただきたいんですが、北海道には二次医療圏が21ございまして、北海道全体ではほぼ全国平均のお医者さんがいますが、そのお医者さんの半分以上1万2,000人のお医者さんのうち6,300人が札幌圏にいるんです。それからもう一つは、旭川医大があります上川中部にやはりお医者さんが集中して、これと合わせて8,000人くらいのお医者さんで、あとの4,000人くらいが他の19圏域におりますので、この地域ではどこもお医者さんが少なくて、1ページに戻っていただきたいんですが、札幌から遠いところはどこもお医者さんが不足しているという状況でございます。

 そして、今、町村立病院というのが、144の町村のうち59、4割の町村が病院を持っております。その他に診療所が20カ所以上ありますが、来る前に町村会で調べた資料では、そのうちの43ヶ所、全体の4分の3がお医者さん不足で、恒常的にお医者さんを募集しているという状況で、それも先ほど申し上げましたように札幌から遠いところということでございます。

 次に乙部町の現状ですが、私どもの国保病院は2人の医師体制でやっておりますが、一人の医師が4年いてくれても、大体2年に一度、お医者さん探しということで、私が就任してから今まで、昨日福岡にお医者さん探しに行きまして、今日朝一番で福岡からこちらに入らせていただきましたが、今、28年間で13人目のお医者さんを探しているということで、町長の仕事の半分がお医者さん探しに使われている状況です。ですから、私は、よく、乙部町、乙の部です。昔、甲乙丙という成績があったんですが、早く甲の部になりたいなと、お医者さんの問題がなかったらなっているんだけど、このまだったら乙部でなくて丙部になるんじゃないかと言って、何とか行政の仕事に熱中できるような医療環境をつくってほしいというのが、切実な気持ちです。今までに12人のお医者さんを探したんですが、北海道から2人、九州から5人、本州からは東京や名古屋を含めて5人ということで、北海道から探すと、必ずどこかの国保病院が抜かれることになるんです。となると、ドミノで、5つぐらいの国保に影響するので、みんなに迷惑がかかるということで、立場上苦しくても、なるべく道外を中心にで探させていただいておりますが、町政の最大の問題です。

 そして、私どもが属するのは南檜山第二次医療圏ですが、そこのセンター病院は道立の病院で、札幌医大から医師の派遣を受けていますが、ここでも医師不足で、今、北海道の中で南檜山二次医療圏では、この3年間、お産ができないんです。ですから、1時間半かけて函館まで行かなければならなく、毎年2例ぐらい、途中で破水を起こして、異常出産なんかで命が危ない状況が続いているというのが、今の状況でございます。

 医師不足の主な原因は、遠いということです。4時間以上くらいかかると。子どもさんが小さい人は、なかなか長期のお医者さんは来てくれない。やはり子どもの教育の問題が大きいです。それともう一つは、2人体制のために、1日置きの夜間当直日中の勤務と合わせたら非常にハードなので、なかなか先生が居つかないということで、土日の宿日直は札幌医大から応援をいただいているんですが、これも片道5時間ですので、汽車で来て、途中で車で迎えに行っても5時間、車で来ても5時間、高速道路を使ってもかかるということで、往復10時間なものですから、医師本人だけじゃなくて医局のローテーションにまで大きな負担となっているのが、私どもの国保だけでなくて、地方の病院を応援している医局の現状です。私どもとしては何としてもお医者さんが定着し、安心して最低の医療レベルを確保したいということで、30年前から厚生省や道にお願いしてきました。あと10年たったらちゃんとなるからと言われて、10年、10年、10年で、今まで30年もたっています。今の状況は前より悪くなっています。お医者さん探しが厳しくなっている状況ですので、ぜひ、まずは今ある大学の増員をしていただきたい。私ども、削減のとき、実情を訴えて、町村会挙げて反対したんです。その削減が今の深刻な医師不足の一因であると思いますので、ぜひ削減以上の、現在の大学、いろいろな事情があるんでしょうが、増員していただきたいというのが一つです。

 もう一つは、面積が広大なので、例えば札幌から4時間半なり7時間のところに来てくれといっても、なかなか難しいので、医師が特に少ない地域については、新設の大学が例えば道南と道東にもう1つあると、大体3時間でカバーできるんです。それでも一番遠いところは3時間かかるということです。そうしていただければ、将来の医師不足解決の大きな要因になると思っています。特に、函館に、道南につくると、新幹線があと5年で来ますので、青森、秋田、岩手、北東北もお医者さん不足なので、そこから新幹線を使うと2時間以内でそれもカバーできるので、応援も1時間か2時間だったら出しやすいということになります。現に、北海道では旭川中部や道北はいわゆる旭川に医学部ができてから、あの地域についてはお医者さんが今、平均以上に定着して、医師不足が一番大変な地域だったんですが、解消されているという実態がございます。広い、そして交通過疎の地域では、そういう地域ごとにぜひそういう新設もご検討をお願いできればなと、これが今、私たちの一番の願いです。ただ、新しく附属病院をつくるとかじゃなくて、現在ある市立病院などを利用してやっていただければ開業医とも共存でき、いいんじゃないのかなと。大学も、新しくつくるのではなくて、今ある大学に医学部を設けて、お医者さんは別ですけど、あとの教官は共有できるということで、今、地域ではそういう要望が、コンセンサスを得つつあります。

 もう一つは、女性医師の増加の中で、何とか地方勤務が可能になるような弾力的な勤務体制と紹介システムを確立していただきたいなというお願いでございます。実は、私ども今、3月にお医者さんがやめて、20日頃でお医者さんがいなくなるわけですが、その後は院長1人で、出張があったら、ゼロになってしまうんです。現に3日間の出張が入っているものですから、その医師の確保がなかなかできない中で、女性の医師が本州から応援に来てくれると。それから、4月以降もすぐ見つかる状況にないんですが、その応援もやはり九州のお医者さんで、昨日それもあって行ってきたんですが、女性医師がわりあいそういう中で、フルタイムじゃなくて、常勤じゃない中で、来てくれている例が多いので、いろいろなルートでお願いしているんです。このシステムが確立できれば、既存のお医者さんがいらっしゃる中で、もう少し全体のそういう実働するお医者さんが増えるんじゃないのかなというので、ここを何とかできればなと。私どももそういう構築に今努めているんですが、やはり大きな組織で日本、県組織でできればと思っています。

 もう一つは、地方の実態に応じた規制緩和ができないのかなと。例えば、私どもの病院あたりでも、調査のたびに保健所から、医師の充足が足りないと、何人足りないという話が出るんです。紹介してくれれば幾らでも雇用するんですよと、いないんですよと、地域の実態に応じた医師の配置と、もう一つは、当直体制です。例えば10分とか15分ぐらいに診療所とか開業医がいたら、その人が駆けつけられる体制であったら、そこは何とかできないのかと。恒常的じゃなくて、お医者さんが何日かいないときに、そういう少し地域の実態に合わせた中で今の医師不足が解消するまでの応急的対応というんですか、実効のある対応をしていただければなあというふうに思っております。

 もう時間ですね。もう二、三分ぐらいいいですか。

【安西座長】  もう少し大丈夫ですよ。

【寺島光一郎氏】  現地で見ていて、本当にお医者さんが気の毒なんですよ。昼間勤務して、そして夜は1日置きの当直、土日だけは大学が応援してくれているんですが、その応援の医師もやはり4時間半というのはすごいハードな日程で、それでもお医者さんの充足率が足りないということで、4週のうち1週は、金曜日の晩から来て欲しいと依頼し、大学は4時くらいに終わらせて、5時の汽車に乗せてくれないかいと。そうしたら、こっちに来て9時半か10時からの夜間当直を含めた勤務に入って、土曜日に宿日直やって、日曜日の午後に帰ると。着いた夜、翌日はもう大学病院勤務です。これ以上は大学に頼みづらくて、59ある町立の病院のうち、札幌周辺は別ですが、その8割くらいのところが同じ悩みをもっています。この他にも北海道には35の市があって、二十幾つに市立病院がありますが、市の方はまだ、札幌市立とか、函館市立とか、そういうところは、これも大変だと思うんですが、大学の応援もいただいているでしょうし、町村よりは楽だと思うんですが、募集は常に出ているという状況でございます。

 何か厳しい話ばかりをしてしまいましたが、私になってから28年で悪くなっている地域の医療についても、医師も確保できず、またお産もできない状況があるというのは、高度医療ももちろん大切なんですが、日本全体がミニマムの、これだけは最低の安心安全な医療水準が保てるという、私たち地方ではそっちの方を先にやってほしいなというのが大方の意見です。

 ありがとうございました。

【安西座長】  ありがとうございました。ご質問、ご意見、多々あるかと思いますが、後でぜひお願い申し上げます。ありがとうございました。

 それでは、3番目のヒアリングに移らせていただきます。千葉大学医学部附属病院の河野陽一病院長から、ご意見を伺わせていただきます。やはり20分程度でお願い申し上げます。

【河野陽一氏】  千葉大学附属病院長の河野でございます。このような非常に重要な検討会での発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 ただいまのお話の中で北海道での医師不足の話が出ておりましたが、私の知り合いにも、千葉から金曜日に行って土日働いて日曜日に帰ってくるというのが1人おりますので、千葉県も医師がいないのに、北海道に少し貢献しているかなと思っております。

 必要医師数というのは、医療システムとか、目指す医療レベルによって当然変わってくるわけですので、医療システムと必要医師数ということで話をさせていただきますが、現在、医療需要の増大というのは、人口構成の変化、いわゆる高齢化というのが一つの大きな要因でございますので、そこから話を始めさせていただきます。

 これは世界における人口の高齢化率の推移でございますけれども、黒いラインが日本ですが、1960年代、1970年代では、世界でも高齢化率の非常に低い国でありました。それが1990年から2000年になりますと中ぐらいになりまして、現在は、2010年は世界でもトップレベルということでございます。これは、我が国における高齢化率が非常に高いというだけではなく、その進行が早いことを示しています。高齢化の問題というのをそのまま先ほど申しましたように医療問題ということで置きかえますと、現在、我々が直面していっている喫緊の医療課題というものは、世界で類を見ないものであり、私たち自身で回答を探していかなくてはならないというものでございます。

 これは全国の都道府県別の高齢化率をまとめたものでございますが、現在、既に沖縄を除く全都道府県で高齢化率は20%を超えております。2020年には沖縄を除く都道府県で25%、スライドの左下の方の2040年では、東京、愛知、大阪などの人口集中地域でも30%を超えるようになります。ただ、その後、2040年を過ぎてきますと、各地区で見ますと高齢化率は若干の低下がございますが、問題は東京が2040年以降も高齢化率が高くなっていくことです。ですから、地方は違った意味での医療の大きな問題というのは先ほどのお話のようにあるわけですが、この高齢化で見ていきますと、高齢化による医療需要の増大というのは都会の問題であり、このような時間の経過からみますと、特に東京などは非常に大きな問題を抱えているということになります。

 高齢化率の上昇ということには2つの面がございまして、1つは、労働人口が減少してくることによって、相対的に高齢化率が上がるというものです。この場合には、労働力の低下、あるいは税収の減少といったようなものにつながるかもしれませんが、高齢者の絶対数が上がらなければ、医療・介護というものの急速な増大ということにはならないと考えられます。しかし、一方において高齢者数の絶対数が上がってきたことによる高齢化率の上昇の場合には、医療および介護の問題というものは急速に必要度が上がってきます。この場合、労働人口が変化しなければ、労働力というのは緩やかな減少にとどまります。

 そこで、先ほどから申し上げております高齢化に伴った医療需要という問題につきましては、高齢者の絶対数の増加ということが非常に重要な要因でありまして、2010年を基準にして10万人単位で高齢者の増加を地区別に示したのが、この図でございます。そういたしますと、2020年をごらんいただきますと、高齢者数の増大が起きるのは、北海道、関東、中部、関西、福岡というところでございます。2030年は、広島あたりが抜けてまいりますが、ほとんど同じようなパターンで2040年ぐらいまで行きます。先ほど2040年を過ぎますと高齢化率が下がるということを申し上げましたが、高齢者の絶対数も2040年を過ぎますと減ってまいります。しかし、2050年でも、東京、関東地区、この地域には高齢者の絶対数の増大が継続して起こってくるということで、先ほど申しましたが、高齢化に伴う医療問題は、都市部において長期にわたり非常に大きな問題になるということでございます。

 このスライドは千葉県においての二次医療圏を基に同じような計算をしたものです。そういたしますと、この緑色の線が入院患者総数です。これは人口構成等々の動きから計算をしておりますが、赤が高齢者の入院数、ブルーが総死亡数ですが、高齢者の入院数と死亡数というのは大体パラレルになるのですが、入院総数を見ていただきますと、安房というのは南房総の比較的過疎の地区でございます。そこでは2016年に入院患者数のピークがありまして、その後、入院患者数は減ってまいります。高齢者はそれほど多くない。一方、八千代とか柏というような、ちょっと前に新興都市として若い人たちの流入があった地区におきましては、高齢者が順番に増えてまいりまして、八千代市で2035年に入院患者数がピーク、柏市で2030年がピークと。一方、今でも人の流れの動きが続いております浦安市におきましては、2050年でも入院患者数の増加が見られるということです。このように地域によりまして高齢化の動きには差がございまして、都会の方が後れ、かつその幅が大きいということであります。

 人口構成における老齢人口の急激な増加というのは、外来・入院患者の増加、介護の需要の増加、救急患者の増加、死亡者数の増加ということにつながっていきまして、非常に大きな医療の負担になります。

 それでは、我が国の医師数について考えてみたいと思うのですが、これは今までにもよく話が出ておりますOECDの人口1,000人当たりの医師数の比較です。一部2007年のデータもありますが、2008年のOECDのデータで見ております。一番右側に平均値が書いてございまして、真ん中の方に赤で日本が書いてあります。OECDの基準に比べて日本は非常に人口当たりの医師数が少ないということです。

 それでは、これから我が国の医師数はどのように動いていくのだろうか。これは医籍登録者の総医師数をプロットしたものでございますが、ご承知のように今年から医学部の入学定員が8,923人になりました。そこで、この条件の基に総医師数を計算をしたものでございます。OECDのレベルももちろん微妙に変わってくるわけですが、今後の動きは予測できませんので2008年のデータが、変わらないという前提にしました。そうしますと、OECDレベルになるには2026年、G7、これはOECDの中からピックアップしたデータですが、2028年にそのレベルに達します。そして、もしさらに1,000人、医学部の定員数を増やすとしますと、ここで1,000人増やすというのはあり得ないと思うのですが、準備期間も入れて2013年より入学定員を1,000人増やして1万人にした場合、どのように医師数が動くのかということで見ますと、OECDレベルになるには、定員が8,923人に比べまして、2年間しか短縮されません。というのは、目標値のところが非常に近いですから、あまりその効果は出ない。ところが、その後、入学定員1万人の方は増加率がぐっと増えてまいります。ですから、全国の入院患者数のピークというのは大体2030年前後、これは他のデータでもよく言われておりますが、入学定員が10000人ですと、患者数が減り出した後の医師数の増加率というものは非常に大きくなってくるということであります。

 それでは、これからの課題に医学部定員の増員のみで対応できるのか、これが今日の私のお話のテーマですが、現在の医療問題を医療者の責任と考えるのならば医療機関だけの改革でよろしいですが、そうでないならば社会全体で考えていかなくては対応できないであろう。社会、県民の意識、行政システムの改革、当然医療機関の改革というのが前提ではございますが、全体で対応していかないと解決できる問題ではないのではないかと存じます。

 医師数の方の話に戻りますが、これは千葉県における平均寿命をプロットしたものです。ご存じかと思いますが、千葉県には、旭中央病院、亀田総合病院といったような、メガ病院がございます。そこの地区の平均寿命を見ますと、旭中央病院の地区で77歳、亀田総合病院の地区で78歳ということで、旭中央病院、亀田総合病院などの基幹病院があっても、平均寿命は必ずしも長くありません。ですから、医療というものは、医師を集中させて大規模病院を1病院だけ建てましても、医療のレベルがぐっと上がるということではない。やはり診療所の役割も非常に重要であり、医療ネットワークを形成して地域の医療をポイントではなく平面として捉えていかないと、その地区の医療レベルというものは上がらないと考えられます。

 多様化している現代の医療問題というのは、医師数の増員のみでは解決しないのではないか。やはり医療体制というものを見直して、在宅医療の推進ですとか、疾病コントロールを進めていく、あるいは看護師などのコメディカル、あるいは病院の機能、そういったものの分担ということによって、医療の効率化ということも進めなくてはならないのではないかと存じます。

 そこで、在宅医療、あるいは疾病コントロールというものが医師数にどの程度影響するのかということについて、述べたいと思います。

 在宅医療ですが、ご存じのように我が国の患者の方々が亡くなる場というものは、非常に病院が多い。ただ、このように病院でほとんどの方が亡くなるというような日本の今の現状というのはそれほど昔からではございませんで、1970年代の後半を境に自宅で亡くなる方と病院で亡くなる方が逆転しました。この三、四十年の傾向なわけですね。その前はそのような傾向はなかった。世界で見ましても、日本では医療機関で亡くなる患者数というのは80%で、諸外国に比べても非常に多いという特徴があります。病院で亡くなる方が多くなりますと、入院需要の増大、救急搬送への負荷、医師の負担の増大ということに、当然つながってまいります。

 在宅医療推進の目的でございますけれども、これは医師の負担の軽減ということが在宅医療の目的ではございませんで、患者の方の社会生活を維持していくことです。皆さんに体の調子が悪くなったときにどこに行ってケアを受けたいかという質問をいたしますと、病院に入院したいというふうに答える方というのは10%にも満たない、7?8%なんですね。当然と思いますが、できるだけ自宅にいたいというのがほとんどの方の希望です。ですから、在宅というのは、生きる目的(生きがい)の維持、社会生活の維持によるADLの維持ということになります。ただ、これを本日のテーマであります医療負担ということで考えますと、いわゆる療養型の病院において医師1人が診れるというのは大体25人から30人ぐらい。ところが、在宅専任医師が診ているという数になりますと、がんの患者さんと非がんの患者さんで違ってまいりますが、100人から150人ぐらいは診ることができるということになります。

 そこで、在宅を推進することによってどの程度の影響が必要医師数に出てくるのか。先ほど出しました医師数の問題は、医籍登録者の総医師数のデータです。しかし、ここで在宅医療を推進することによって必要医師数がどうかということを考えるためには、医療条件に基づいた必要医師数という機能的な考え方を導入しないと比較ができませんので、一応暫定的にこのような診療条件を設定いたしました。これはもちろん幾つかの実際のデータをもとにつくってあるわけですが、少し厳しい条件になっています。1)の外来診療は、4分診療で、1日6時間の診療を行う。2)の高度医療病院、これはDPC病院を対象としておりますが、医師1人が入院患者5人を診る。3)の急性期病院、これは二次救急病院として申請している病院ということを対象にしておりますが、医師1人が患者10人を診る。4)は、その他の病院ということで、療養型病院というふうに名前をつけましたが、医師1人が患者25人を診るというような条件です。そうしますと、高度医療病院が10%、急性期病院が50%、療養型病院が40%と、大体病院の割合を把握することができます。全体の病床数の割合とし、入院患者を病床数で割り振りまして、今の1)から4)の条件で医師数を計算していくわけです。外来患者数は人口に受療率を掛けて割り出しまして、1)の条件で医師数を計算するというものです。

 これがその結果でございますが、このデータのブルーのライン、これが人口構成等々の患者数の動きに合わせまして、ただいまの条件で必要医師数を計算したものです。これは現状で、在宅死率を12%で計算しています。それがこの部分ですね。先ほどの総医師数の動きをこれに重ねてみますと、これは医学部定員が8,923人の条件ですが、今は不足していますが、2022年ではただ今の診療条件による必要医師数に一致してまいります。

 話が在宅死に戻りますが、他の条件は全部同じにしておいて、在宅死率だけを12%から30%に変えると、いわゆる療養型の病院における入院患者数が減りますから、それだけ必要医師数が減るということになります。破線で示したものです。そうしますと、現在でも在宅死率30%であれば、医師数は必要数を満たしているというデータになります。

 次に、疾病コントロールの効果はどうであるか。これは千葉県での活動を具体的な例としてお示ししたいと思いますが、ご承知のように2008年に銚子市立病院が休止になりました。これは地域医療の一つの崩壊のシンボルのように話されまして、千葉大学から医師が出ていた病院ではなかったのですが、そんなことを言ってられませんで、千葉大学が直ちに一部対応致しました。銚子市立病院にはいろんな科がありますが、内科とか外科は、近辺にそういった科を持った病院がありましたので、そちらの方に患者さんが移っていきました。ところが、あの地区は精神科が全くないんですね。ですから、12万人の医療圏から精神医療が全く消失してまった。そこで、千葉大学の精神科がすぐ対応をいたしまして、パート等で参加をいたしました。その中でどのように医療需要を軽減していくのかという試みも考えました。統合失調症の方が約500名いらっしゃったのですが、統合失調症というのは再発率が非常に高いということと、薬物療法が比較的効いて、コントロールができる。ですから、早目に統合失調症の患者さんをよくケアして薬物療法を的確にやっていけば入院をしないで済むというようなことがございますので、統合失調症を対象にいたしました。

 具体的にどうしたか。ケースワーカーが週に1回、患者の方に電話をいたします。10項目の質問項目がございまして、これはヨーロッパで使われている統合失調症の再発率をスクリーニングする質問項目がございます。ITAREPSと言われるものですが、その10項目の質問を患者の方にしまして回答をケースワーカーの方がコンピュータに入れる。そうすると、コンピュータのプログラムに従いまして、再発徴候の有無が出てまいります。再発徴候が出たらば、すぐに訪問看護を緊急でかける。そして、患者さんに会って、薬の指導、あるいは入院ということを行う。アラートがなければ、訪問看護をかける必要はないわけですので訪問看護の面から考えると負担が少なくてすむと言えます。こういう形で行いますと、コメディカルのアウトリーチが可能になりますし、患者の方にとっても非常によい教育になります。どういった状況になるとアラートが出るのかということより、患者の方が学習するということです。患者の方の生活もよくなりますし、医療業務の軽減から医療費の軽減ということにつながることが期待できます。

 これがその効果でございますが、介入群をCIPERS群というふうに言っていますが、左が介入をした群、それから右側が通常診療群でございます。人数は28と29でそれほど多くないんですが、2群において入院回数は変わりません。しかし、延べ入院日数並びに1回の入院日数というのは、介入群で6割から7割減です。非常に大きい。これはヨーロッパでやられた結果ともほぼ一致しておりまして、ただ、ヨーロッパと千葉との違いは、千葉では訪問看護を導入したということです。ヨーロッパは訪問看護を一切してないですね。6割方入院が減るということは、かなり医療者の負担の軽減になりますし、医療費から言うと、全国展開すれば、700億から1,000億の軽減につながるだろうと考えられます。これはいわゆる他の生活習慣病、数値化できるような、例えば糖尿病ですとか高血圧というような疾患にも導入することはある程度可能ではないだろうか、このように疾病をコントロールすることによって、医療者の負担軽減になるのではないかと考えられます。

 それから、循環型の医療と医療情報の共有並びに専門職連携(IPW)について、少し触れさせていただいています。病院というのはそれぞれの機能がございますので、やはり得意な分野をその病院が担っていくということが、一番効率がいいわけです。ですから、急性期病院に患者の方がずっととどまっているというのは非効率ですから、患者の方があるレベルになったら慢性期病院に移り、そしてまた診療所に移っていく。必要だったらまた急性期病院に行くというような、千葉県で言っている言葉ですが、いわゆる循環型医療というようなことを進めたい。その場合、一つ問題になるのは情報の共有化です。患者の方々が病院を移ったときに、違う医師が診るときに情報がつながっていかなくてはならない。そこで、県内の一病院化ということを医療ネットワークにおいて現在進めておりまして、情報共有により、逆紹介・相互受診を行い、機能分担を実現して循環型医療を確立する。今、それの整備を地区において行っているところでございます。

 ただいま申し上げましたように、循環型医療による医療機関の役割分担、在宅医療の充実、疾病コントロールというような、医療提供システムを改善することによって、医師の側の負担、ニーズというのは大分変わってくるということであります。

 これがIPWでございますが、IPWというのはInterprofessional Work。これは広い意味でのチーム医療ですが、今までよりも、看護師、薬剤師、理学療法士、医師がもっとフラットな関係で、自分たちのできる範囲をよくディスカッションをしていくということ。これは別に医師不足対策で考えられたものではなく、こういうことによって医療の厚みが増すわけですね。自分たちの得意なところ、何ができるかを十分に議論していくということで医療の厚みが増し、そして、今日の話で言えば、結果的に医師の負担の軽減につながるということです。その前には、IPE(Interprofessional Education)、学生のときからこういった考え方を教えていかなくてはならない。千葉大学におきましては、看護学部、医学部、薬学部が非常に近いところにございますから、今、一緒に教育を行っているというところでございます。

 最後に、地域医療の状況が多様化している中で、どこが医療の分析、医療立案、行政とのタイアップによる実行ということをやっていくのか。国立大学というのはほぼ全国に配置されていますから、教育、研究、診療の他に、地域医療に当然大きな役割を担わなくてはならない。そしてそのときに、大学病院が、このような地域医療を分析し医療政策を立案・計画等を進めていく上で、一つのセンターといいますか、コンダクターとして役割を果たすことは重要であろうと考えているところで、現在、千葉大学においては地域医療政策部門の整備を進めております。

 これは最後のスライドでございますが、医療者の質の確保として適正な医師数の設定、女性医師を含めた医師の確保、それから医療資源の効率的な運用、もう一つは疾病コントロールを行う上での医療者と患者に対しての医学教育、これと医療情報を共有することによって、医師数の問題というのも全く違ったものになってくると思います。

 以上でございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

 3人の先生方にお話をいただいたわけでありますけれども、今から、質疑応答、自由な意見交換の時間にさせていただきます。3つのヒアリングの内容はそれぞれかなり多様な状況でございますけれども、どなたでも結構ですので、ご質問、ご意見、いただければと思います。

 ちなみに、申し上げておきますけれども、少なくとも次回まではヒアリングを続けさせていただきますが、だんだんと意見交換を密にするという方向に行くというふうに思います。そのことは前もって申し上げておきたいと思います。

 それでは、今の3つのヒアリング、どれでも結構でございます、総合的なことでも結構でございますので、どなたでも、ご質問あるいはご意見をお願いします。

 どうぞ、中村委員。

【中村委員】  最初の講演に関してなんですが、今、製薬会社で仕事をするドクターというのは非常に必要だろうということには同感です。しかし、つい最近の私の経験ですと、米国に留学していた若手の医師と臨床に戻ってくる話をしたときに、「私はバイエルで薬剤のコーディネーターとして働くことを決めました。」と言ったんですが、そのときの給与の額が教授の1.5倍なんですね、40歳で。今優秀な人材が求められているPMDAなどに行く医師というのは非常に少ないんですね。その人たちの給与というのは多分、バイエルに行った医師と同じ年代だったら800万以下になるだろうと。製薬会社が欲しいのは非常に優秀な人たちであって、それがどんな医者でもいいということだったら提示する条件から幾らでも集められるだろうと思うので、その辺の違いがある。

 それで、一つ聞きたいのは、40歳前後で企業に行っているドクターと大学に勤務するドクターの給与の格差です。今、大学の助教で40歳というと、多分、800万から900万の給与なんですけれど、その辺の格差がすごく出てきているというのが、気になることで、製薬会社に行っている医師がどの程度の条件で働いているかですね。製薬会社の医者が足りないということですが、民間ですので、かなりそれは待遇でコントロールできるんじゃないかというふうな感じを持っています。臨床試験や臨床研究など、やる仕事の内容が随分違うので人材がいないという点が問題なんだとは思いますが。それが1つです。

 後半の方で言われていた、国立大学含めて日本から臨床データが出ていかないというのは非常に大きな問題で、そのとおりだろうということでは同意するんですけど、その解決方法が、製薬会社で臨床研究者を育てるというのは、一つの観点ですけれども、多分、今、日本の大学の置かれている状況が重要で、さっき言ったように企業は2,000万円ぐらいの給与を出しているのに対して、大学の助教には800万円ぐらいしか出せず、かつ、助手教の数も少ないという状況を変えない限りは難しいだろうと思います。それから、日本で治験経費が高くなってしまう理由は、治験する施設が非常に分散化しているところにある。国立大学の臨床規模が小さくて、非常に分散した形になっている。例えば、1,000ベッドある国立大学が幾つかで、ほとんどが600か700のベッドで、外国はそれを2,000とか3,000にして、大学がセンター化しているという状況がある。日本の全ての大学がそんな大きな規模を持つ必要はないんですけれども、リードしていく大学はそれが必要だろうという感じがしております。

実際に統計がありましたら、給与の関係を少し聞きたい。例えば、企業に入っている今の若手、40歳ぐらいの人たちの給与が、企業間や企業内のポストによっても格差があるのかどうかということですね。

【高橋希人氏】  格差はございます。会社によっても、まちまちでございます。それで、高く出すのは、言い方は申しわけございませんけど、企業がいい人間をとるためには、医者に限らず、高い報酬を出してとりますので、その点、正当なことかなというふうには思っております。企業にとりましても、誰でもいいということはございませんで、私もちょっと年をとりまして、最近の若い先生たちという言葉を使いますと、ちょっと動機が変わってきているということも言えますので、我々長老の立場にいる人間がなるべく製薬企業にいる仲間に言ってスクリーニングするようにというような努力はしてございますが、残念ながらこれは各企業さんが自主的にやっていることなので、必ずしもコントロールできている状況ではない。ただ、我々としては、レベルは非常に保っていきたいなというふうに思います。

 私も大学におりましたので非常に厳しい状況はわかっておりますが、残念ながら大学などの給与や、PMDAの条件に関しては、これも非常に問題として認識されておりますが、残念ながらまだ解決されてはおりません。企業が、何らかの形で、明確な形で支援ができるような検討というのはずっと続いていると思いますので、うまくいけばいいなというふうに思います。

 それと、臨床研究のリソース分散化というのは非常に、これも問題として挙げられまして、我々、提言としてはいろいろと出してございます。これも、それこそ大学の学長クラスの先生方、教授クラスの認識を変えていただいて、残念ながらアカデミアで協力するということが非常に難しい状況だというのはよくわかってございますが、そこを打破しないと国際的には打ち勝てないだろうという認識です。海外でメガトライアルが多いのは、連携が非常に強いということです。日本に関しても、連携して良い臨床研究をしたいという気持ちは皆さんありますが、誰かがリードしないとやらないというところが問題かなという認識で、我々としては皆さんを押すという形で努力はしていくというところでございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

 それでは、中川委員。

【中川委員】  我々は将来にも責任を持った議論を求められていると思います。現在の医学部の定員を増やすかどうかということですから、臨床研修も含めると、最低でも8年、一般的には10年以上、新しい医師を育てるのにかかるわけです。

 そこで、河野先生、先生の資料の21ページと22ページ、非常にわかりやすいデータだと思うんですが、これは、高度医療病院10%、急性期病院50%、療養型病院40%というふうに出されましたが、この中で診療所の医師というのはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。

【河野陽一氏】  外来の受療率等々から外来患者数が出ます。外来については診療所の先生が何人診ているということで補正をしていていますが、多くの患者の方を診療所で診てられます。それで、その残りは病院で診ているというような計算なのですが、個々の医師の全体のプロフィールをつかむというのは不可能なものですから、少し無理があるのですが、診療所の先生を含めて外来を診る医師と入院患者を診る医師との両者を合計しています。

【中川委員】  わかりました。それで、現状の8,923人の医学部定員で2022年には必要医師数と総医師数がクロスするわけですね。その後、この赤いラインと青いラインのすき間は、言ってみれば医師が余ってくるというふうに考えてよろしいんですか。

【河野陽一氏】  統計処理には幾つかの前提がありますが、2022年以降医師は余ってくるということになります。

【中川委員】  このすき間の余る医師をどうしたらいいのかということにも我々は責任を持たなきゃいけないんだろうと思うんですが、その辺についてはいかがでしょうか。

【河野陽一氏】  いろいろこれからの医療の展開を予測するというのは必要なのですが、実際には大変難しいというのが本当のところで、例えば、今ご議論いただいている製薬メーカーに勤める医師数の件とか、日本の医療はこれからどのレベルを目指すのかなど、医療条件の設定は簡単ではありませんし、よく医師数を比較している日本の医療とOECDの医療条件というのは全然違います。1人の医師が患者さんを診る人数など、そのようなパラメーターを変えただけでも、必要医師数って変わってきてしまいます。ここでお示ししたのはあくまでも現在の医療条件の基で考えたものです。いろんな可能性がありますので、正しい方向かどうかは別にして、医師が余ったから全然仕事がないということはないと思うのですが、医師数が増えれば、それだけ医療費というのは当然上がっていきます。これは別の問題として考える必要がありますが。

【中川委員】  そういう意味では、資料の10ページに医学部定員を1万人にした場合という例がありますけど、これは、現在の8,923人のままでもこうなのに、1万人になったらもっと余るよという理解でよろしいですか。

【河野陽一氏】  はい、そうです。8,923人がブルーのラインですが、入学定員を1万人にしましても、現在のOECDレベルを目標としますと、その値が目先ですから両者の間に差が出ないんですね。ですが、その後は当然ですけど積み重ねになりますので、8,923人と1万人では医師数の増加は非常に大きな差になります。ですから、このような目先だけではなく、20年、30年後の医療はどうなっていると、いろいろ議論をしながら考えていかないと、先生の一番最初のご質問の医師数がどうなるんだということが見えてこない。その幅がこれだけ大きく出てくるということです。

【中川委員】  わかりました。ありがとうございます。

【安西座長】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【今井委員】  今井でございます。ちょっと話が戻りますが、高橋先生のお話で非常に重要なポイントを言ってくださったと思うんですが、今の医薬品の輸入とか輸出ということを考えましても、非常に多くの外国からの医薬品が我が国に入っているわけでございまして、その差は非常に大きいという現状がございます。それはいろんな要因があるでしょうけど、1つは、そういうイノベーティブなものをつくっていく仕組みが我が国はやや少なかったということがあろうかと思います。先生がおっしゃった臨床研究とか橋渡し研究というのが非常に重要になってくるということで、少し控え目におっしゃいましたけれども、私、大学医学部の方を経験した者として申しますと、やはりここは非常に弱いわけでございまして、今の仕組みでそれを少し頑張ってくださいというようなことでよくなるのかということについては、非常に疑問があります。ですからもっと大胆に、例えば全く新しい発想で医学部をつくるような、そういう気持ちで、例えば臨床研究とか臨床に非常に力を入れるような大学を新たにつくるとか、きちんと橋渡し研究を目指すとか、そういうタイプの病院をつくっていく、大学をつくっていくということが求められると思うんですが、その辺、先生のお考えはいかがでございましょうか。

【高橋希人氏】  方法論として臨床研究に特化した大学なりセンターなりをつくるということは、一つの大きなオプションであるというふうに思います。それで、こういったことは、臨床研究関係のシンポジウム、学会等では、ずっと提案されております。一つは実行力ですので、提案はずっとされておりまして、やればきっといいことになると思うんですが、そうなりますと、今問題なのは、やる人がいない、人材不足というところにぶち当たります。それで、今、各大学でも橋渡し研究センターをつくったり臨床研究センターをつくったりしておりますが、見ますと、現状としては、先生ひとりでやっているとか、そういったところで、形だけできているというのが多いというふうに見えます。ですので、これは我々製薬医学会ぐらいが何か言ってもなかなか動くようなところではございませんで、今、厚労省研究班でも、臨床薬理学会を中心とした形でも、臨床試験を正しくやれる医師を育成する活動もやっております。ですので、形だけをつくるのではなくて、いかに中身を、やはり力のある先生方、おそらく政治家の方も入っていただいて、本当にやるためには真剣にやる必要があると思います。お隣の国を見ましても、ものすごい施設ができております。さっき言ったリソースの分散がどうしても日本は多うございます。センターというのがそんなになくてもいいかなと、東と西に1つずつつくるという提案も、されております。そういった形で何かセンターとなるものをつくるというのは一つ、いいアイデアではないかなというふうに思います。

【今井委員】  私も、例えば外国の仕組みも含めて大胆に入れるとか、そういう人材も含めて、そういうことをしなければ中国や韓国にもどんどん追い越されていくという状況にありますので、その点も今後考えていかなければいけないと思います。

 もう1点は、寺島町長に伺いたいんですが、北海道の、特に道南のかなり厳しい状況についてお話しいただいたんですが、寺島町長がおっしゃられた、大学の医者が週末に来てサポートして、その間だけそこに常勤している医師は当直を免れると。そうでないとほとんど1日置きという状況で体がもたないという、そういうのを私自身も経験してよく知っているんですが、それを大学側から見ると、その医者は金曜から行って、日曜の夜に帰ってきて、翌日朝、外来とか、手術をしているわけですね。こういう現状がずっと繰り返されているという、町長はおっしゃられなかったですけど、私、大学にいた人間としては、それを若い人がずっと担っているというのは、これはやはりかなりおかしいと。労基法もございますし、現実問題として非常に過酷な状況にあるというようなことがあります。そのときに、一つのファクターは、広いというのは、先ほど河野先生からネットワークの非常によいお話が出ましたけど、広さのファクターというのはネットワークづくりをなかなか簡単にはさせてくれないというところがありまして、これは、東北地方とか、広いところは特にそうだと思うんですが、そういう観点も考えて入学定員を考えていかなければならないというふうに、私自身は思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【黒岩委員】  全国医学部長病院長会議会長の黒岩でございます。

 まず寺島町長様のご発言についてでございますけれども、北海道の医療につきましては、私も十分ではございませんが知っております。例えば神経難病の地域医療ネットワークに関する研究班というのが厚生労働省にございますが、稚内の神経難病の患者さんを診るために北海道大学から片道5時間かけて特急で訪れ、一泊、その間に神経難病の患者さんを200人ほど診て、そして帰るというふうな、非常に深刻な状況であるということは、私もよく存じております。この場合に、やはり実効性のある解決が重要かと思うんであります。少ない場所に定着する仕組みを工夫しなければなりません。北海道の中でも札幌であるとか、皆が都会に集まる現状を放置して医師数を増やすということだけでは解決つかないわけでございます。やはり実効性ということを考えますと、ここは、河野先生もおっしゃっておりましたように、医療者だけで解決できるところをかなり超えてきています。行政の関与を考えるべきです。北海道のように非常に広大な場所における問題でございますので、行政の介入ということなしには実効性のある解決というのは難しいのではないかというふうに考える次第でございます。

 それから、河野先生のご講演で、現在の地域医療の崩壊からくるニーズという中に高齢化というファクターが強い、それをしっかりと考えなきゃいけないということ、確かにそのとおりであるかと思います。再び対策の実効性ということを考えますと、医学教育の改善が大学のすべき最優先事項と考えています。今、日本の医療はこのような状況の中でも、WHOの統計では、大腸がんの成績であるとか、いろんな事柄でも世界一を競い、一生懸命頑張っているわけでございます。とはいえ、臨床実習をやる週などは、アメリカでは72週であるのが、日本では、国家試験の問題も絡みまして、少ないところでは20週ぐらいしかやってない大学もあるということです。医療の実力というものを考えますと医師の数掛ける質ということが重要かと思います。現在の8,923人の入学定員の学生たちが十分フルにその実力を発揮できるような卒前教育、特に臨床実習の充実といいますか、そういうことが非常に重要なのではないかというふうに思います。

 前回も私は申し上げましたけれども、単一な一手ではなかなか難しく、非常に複雑なファクターが絡んでおります。北海道の問題を考えますと、医療者だけで解決できる問題をかなり超えている問題もあるということがございますし、また、医師数だけの問題ではございませんで、やはり医師の質ということを考えますと、現在の入学定員であっても教育の内容を改善させることによって入学定員を増やすということをはるかに上回る実効的な成果をつくり出すことは可能なのではないかと思います。そういう意味で広い視野で総合的に考えていかなければいけないということを再度申し上げたいと思います。

 以上です。

【安西座長】  ありがとうございました。

 ここは、医療、医師の皆様の集まりということではありませんので、広い立場から、しかし具体的な提案をしていかなければいけない、そういう場だとお考えいただければと思います。

 どうぞ、副座長。

【栗原委員】  先ほど河野先生から大変詳しいデータを出していただき、私も大筋において賛同いたします。先生は循環型の医療システムをご提示なさったのですが、医療人は色々なところで様々な経験を積んで将来の自分のキャリアパスを創っていくことが望ましいと思っています。現在、地域医療が崩壊していることが問題になっていますが、地域医療を若い人に経験させることは大変結構なことだと思います。

 中核病院とそれに関係するサテライトの病院、あるいは診療所が一体となって、千葉県内ではこのようなシステムが出来る可能性があるというお話で、大変素晴しいと思います。1県1大学政策では無医村をなくそうということでそれぞれの県に医科大学があるわけですから、このような仕組みがうまくできれば、現在、急いで医学部入学定員を増やさなくても地域医療を支えることができる可能性をお示しになったと思います。厚生労働省も地域医療支援センター構想を出しているようで、先生のスライドの中でも同様なシステムが提示されていましたが、今後、そのようなセンターと大学の役割分担についてどのように考えていらっしゃるのかお聞かせいただければと思います。

【河野陽一氏】  現在進めている千葉大学の医療配置システムということにつながると思うのですが、現在、基幹病院を4つ5つ決めまして、大学病院からはその基幹病院に医師を派遣する。その基幹病院はその地域でのクラスターをつくりまして、その基幹病院がその地域を全部見る。ですから、大学病院は基幹病院にだけ医師を派遣していく。それも各科ばらばらじゃなく、大学病院として統一的に医師配分というのを考えていく。そうしますと、全県下にクラスターが幾つかできてくるわけです。そこの基幹病院がその地域をカバーするという形になりますと、大学病院から若い人を出しやすくなる。と申しますのは、大学病院からいきなり地域病院に若い医師を出すとなるとなかなか難しいのですが、大学病院から基幹病院にだけ医師を派遣するということになりますと、非常に出しやすい。その地域のサテライト的な病院に対しましては、よく地域を知っている、基幹病院から医師が行く。これはまだ始めたばかりではあるのですが、昨年スタートとしては比較的うまくいっておりまして、それが最も、医療効率というか、医師の配置というものが綿密にできるのではないか、研修というものもそれにのっとった研修が組めるのではないかということで、進めております。

【栗原委員】  ありがとうございました。

 もう1つよろしいですか。

【安西座長】  どうぞ。

【栗原委員】  研究医を育成するということで、現在、研究医枠が設けられていますが、研究者というのは自分の興味があってこそ初めて当該分野の研究をやるのではないかと思います。医科大学入学時から研究者を目指す人は少ないと思います。研究を経験させることが必要ですので、卒前教育の中で研究を経験させるプログラムを各大学で取り入れています。卒業後に研究をやりたいという若い人を支援することの方が重要ではないかと考えています。

 また、研究をやる人材を育成するためだけの大学というのは、少し実現不可能ではないかと思います。医学を広く学んだ上で研究に対するモチベーションを高めていくということが、その研究者が将来大成する上でも必要ではないかというように考えております。また、若い研究者で職を失っている人もたくさんいるという現実がありますので、そういう若い人たちを何とか支援するシステムを構築することが、今後の医学研究の振興にとって必要ではないかと考えております。

【安西座長】  ありがとうございました。

 どうぞ、西村委員。

【西村委員】  私は、この検討会での大変大事な課題は、いわゆる総合医というか、プライマリーケア医というか、そういう医師と、それから専門医をどういうふうな割合で養成していくかという課題があると想像して、この委員会に参加してまいりました。これは実は前回の日本医大の長谷川先生のご指摘でもありましたように、キャリアパスの問題が重要です。医師は大体ほとんどの方は一生医師をされるわけです。途中で製薬業界に行かれる方もおられると思いますが、それは非常に少なくて、この点から考えて、後に中川委員からもご意見を伺いたいんですが、日本の仕組みというのは現状ではかなり特異な現状でございまして、それは大学でかなり専門医としての教育を受けて、ある時期、だんだん転換されて、例えば開業されて、もちろん一つの専門をお持ちですが、かなり幅広い分野を担当される医師になるというのが、日本の伝統かと思います。ただ、欧米なんかでは最初から総合医あるいはプライマリーケア医を養成するということを意図的にはっきり決めて、私が申しているのは、チェンジがいけないとか、がちがちした制度を想定しておりませんが、ただ、大学に入ってかなり早い時期から、この人は例えば過疎地に行くんですよということを頭に置いて教育を受けるというようなイメージで総合医というふうに考えておりますが、そういう方を必要としておられるのか、それともやっぱり専門医の方をたくさん欲しいと思っておられるのかという論点が、大変失礼な言い方をするんですが、寺島町長も、河野先生の話にもありませんでした。

 個人的な意見で、町長に大変失礼ですが、実は北海道の空知地区等でそういう総合医としてかなり幅広い分野をお持ちになって活躍しておられる先生方も存じ上げておられます。そうすると、これからどうしても高齢化が進む中で、そういうわりと若い人が減るような地域が増えるときに、そこに全てのところに病院を置いて、もちろん病院はあってもいいんですが、黒岩委員もおっしゃったように、専門性のすごく高い方を配置することはちょっと難しい。そうであれば逆に、非常にまれな病気の患者さんは都会の病院に移動して治療をして、ある程度回復したら帰っていいかなと、そういうイメージができないかと、想像しております。これは素人でございます。こういう考え方はわりと一般の社会にはございます。それが無理であれば、無理であるということをお示しする必要が医療界にあると私は思っておりますが、ともかく河野先生には、先ほどのシミュレーションはそういうケースを想定してできないのかという疑問をちょっと持ちますので、できましたらそういう話を、町長の方には、医療体制、医師の教育はそういうことができるかどうかという、そういう質問ではございませんが、現場の感覚でどっちをより欲しいと思っておられるのかという、そういう意味でございます。

【安西座長】  町長、どうぞ。

【寺島光一郎氏】  今、言われましたように、できれば、この病気はどこに行った方がいいのか仕分けていただける。極端に言ったら内科関係の総合医がいてくれて、手に負えないものはすぐ、これは二次医療圏の病院、函館とか、その判断で十分なんです。そしてまた、機械についても、MRIにしても二次医療圏の中核病院のものを使って、そういう連携はとっているので、まず一次的に仕分けてくれる総合判断ができる、家庭医というんですか、そういうお医者さんの方がむしろ町村立の病院ではベターです。

【安西座長】  河野先生、いかがですか。

【河野陽一氏】  ただいまのご質問は、まず最初に、総合医という言葉の意味が、皆様方はそれぞれイメージが少しずつ違って語られている印象を持っております。千葉大学にも総合医の総合診療部がありますが、彼らは自分たちを専門医と考えています。例えば疾患別の専門医が10人集まっても、診断は総合医にしかできないというケースがあるんですね。病気を横断的にまた全体を診るということですが。そういった意味において、専門医としての総合医です。それと、いろんな患者さんを診る医師、どちらかというと一般的には、後者のニュアンスだろうと思います。私は小児科医なものですから、小児科医というのは全部の疾患を診るんですね、もともと昔から。ただ、サブスペシャリティーは持っています。私は、そういった目で見ていきますと、サブスペシャリティーを持っていた方が、長く医療者として活動する中で、よりどころと申しますか、それでもって広く診ていくというようなことが総合医の、1つのあり方ではないだろうかと思います。

 それともう一つ、先生が今申されたアメリカ等々でのやり方は、いわゆる従来の日本の医学というのは、プロセス・ベースド・エデュケーションなんですね。1つ1つの課程を重ねて教えていけば、一定のレベルの医者が育つという考え方。そうではなくして、アウトカム・ベースド・エデュケーション、要するにどんな医者をつくるのかということがまず前提にあって、そのためには何を教えるべきかを遡ってプログラムする教育です。今、千葉大学はこのアウトカム・ベースド・エデュケーションを進めようとしています。一体どんな医者が必要かという前提のもとに、研修医から、医学部生から、全部プログラムをつくっていく。そのように変えていかなくてはならないだろうと。今、世界的にはその方向にどんどん行っています。日本も今その議論が進んでいるところです。そういった中で、総合医という概念も整理する必要があると思います。現状でもいろいろな方々が専門医の中で幅広く診る能力がありますので、その場の設定、先ほど私が申しました医療ネットワークなどの充実を進め、働きやすさといいますか、自分の能力の出しやすさを整備していければ、十分に地域においての能力を発揮できるのではないかと思っております。

【安西座長】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【今井委員】  誤解があるといけないので私からちょっと追加させていただきますが、例えば、寺島町長の資料2の裏に北海道の図がございますが、ちょっとお目通しいただきたいんですが、例えば右側にありますいわゆる道東というところには医学部がないわけですね。それで、実際に拠点病院と言われるものは、あちこちにございます。例えば、遠紋と書いてある右側のオホーツク海のところでございますが、ここに紋別の道立病院がございますけど、ここから札幌まで6時間ぐらいかかるわけですね。そこに大体、拠点病院に行く人がいないんですよ。そこの定員が充足されていないという、そういう現状がありますし、先ほど町長からお話ありましたように、乙部町、左側の下の方でございますが、そこに道立江差病院という拠点病院があるんですが、そこも人が足りなくて、しかもお産もできないんです。麻酔科医もいない。そういう状況にありますので、机上の話とこの地域での話は、千葉や何かと、都会圏とはちょっと違う。はっきり言うと、相当違う。

 しかも、飛行機が来なくなってきているんですね。例えば紋別-札幌間というのは1年半ぐらい前に途絶えておりますので、全部、汽車で行かなければいけないんですね。そうすると、週末をサポートするといったって、その人はさっき言ったように、日曜日に帰ってきて、ほとんど車に乗ってなきゃならないわけですね。根室も同じです。そういう観点があるので、多分これは北海道だけでなくて東北地方もかなり似たようなところがあると思うんですが、そういう要素をきちんと考慮に入れて、この機会にそういうことをきちっと考えてプランを立てるべきだというふうに、私は思います。

【西村委員】  先生、私は別に誤解しているわけではなくて、私が申したのは、空知はおっしゃるようにわりとそういう意味では幸運なところにあります。ですから、乙部の状況を伺いたいと思って質問をしたわけで、別に総合医だけでいいということは一切申しておりませんので、誤解のないように。

【今井委員】  わかりました。空知は近いです。総合医はすごくいいと思いますし、いろんな大学で少しずつ育てていますが、まだ数が非常に少ないので、あまりワークしてないという感じはします。

【安西座長】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【寺島光一郎氏】  先生、空知は確かにうまくいって、我々の参考にしたいんですけど、あそこは、札幌から1時間以内で、旭川からも30分か40分で、3大学に極めて近い条件にあり、うまく運用されています。ただ、3大学から遠いところはなかなかそれもできず、北海道においては、やっぱり広さというのが非常なネックというのか、負担となって、今のところそのお医者さんも来てくれないのが実状です。

【安西座長】  ありがとうございます。

 中川委員。

【中川委員】  西村委員のご発言について話を戻させていただきますけど、総合医という名称はともかく、前回、日本医師会の案を説明させていただきましたが、医学部に入ったときからの教育を抜本的に見直して、医学部6年間で一定のプライマリーケア能力を身につけるというのがまず大事だと思うんですよ。そして、さらに臨床研修で磨きをかけると。全ての医師はプライマリーケア能力の一定水準を持たなきゃいけないだろうと思うんです。その後、さらにプライマリーケア医としての能力に磨きをかけていくのか、専門領域を目指していくのかということは、それぞれの判断だと思うんです。そういうシステムを目指す過程において、西村委員のおっしゃったイメージがだんだん近づいてくるのかなと思っております。

【安西座長】  ありがとうございます。

【黒岩委員】  黒岩でございますが、西村先生のご意見に対してお話し申し上げたいと思います。日本の医学教育においては、あるいは医師養成においては、今までの流れを考えますと、やはりスペシャリティーを持ちつつ、全身をできるだけ診られる医師をつくるということが非常に重要かというふうに思います。例えば私の専門は神経内科ということで、脳卒中であるとか、パーキンソン病とか、そういう患者さんを診るわけでございますけれども、我々の教室員は、脳のことだけではなくて、例えば患者さんが心筋梗塞を起こしたり、あるいは腎不全で透析とか、あるいは吐血とか、そういうことも全部、消化器内科とか循環器内科に頼まないで、ほぼ自分たちでもってやれる、そういうトレーニングをしているわけでございます。やはりスペシャリティーを持ちつつ全身を診られる医者というものを育てていくということが、大学病院の役割かなというふうに思っております。

 そのためにも先ほど申し上げたように、今の卒前教育における臨床実習、これはかなり足りないというふうに私は考えております。例えば欧米におきましては6年間の教育のうちの3分の1をしっかり臨床実習に費やすということをしないと医師として認めないという基準があります。アメリカでは72週ということで、5年、6年のかなりの部分を臨床実習教育として患者さんから学んでいくという、そういう教育システムを8,923人に適用していけば、それが今の地域医療の崩壊を解決する最も実効性のある一つの道じゃないかなというふうに私は信じております。

【安西座長】  ありがとうございます。

 桑江委員。

【桑江委員】  本日のお三方のヒアリングはどれもすばらしくて、特に遠くからいらしていただきました寺島町長さんに大変感謝しております。

 コメント及び質問を二、三させていただきたいと思うんですけれども、北海道の非常に厳しい状況は非常によくわかりましたし、ご不安を持ちながら探していらっしゃるんだなと。しかも、お仕事の半分は医者を探しているという、ある意味、非効率的なことがずっと行われていた、何十年もやっていたということに非常に感銘を受けましたけれども、すみません、もしかしたらお怒りになるかもしれないんですが、医者の立場から言わせていただきますと、多分、今のままで来てくださるお医者さんを探すということは非常に難しく、例えば私がそういう立場になったとしても、なかなか一歩を踏み出すのは勇気が要るかなということをちょっと感じておりまして、ちょっとアイデアといいますか、変えてもいいところというのはないのだろうかというふうに考えながら聞かせていただいたんですけれども、まず、2人いらして、1日置きに当直ということなんですが、当直が労働ということで認められると、これはおそらく認められないような労働形態だろうというふうに思うんですけれども、果たしてそこで診ていらっしゃる患者さんというのはどのくらいいらっしゃるのかなというのがちょっとありまして、労働に対する効率といいますか、患者さんの数と、それからその時間ですね。結局、昼間どのくらいいらっしゃって、準夜帯、深夜帯の救急患者さんがどのくらいいらっしゃるかということで当然決まってくるとは思うんですけれども、つまり、医者の方でそういうところに行きたくないという心の一つには、そこの住民の方とうまくルールが守れればもう少し効率的にできるんですが、準夜、深夜にもいらっしゃる方が多いとか、そういった住民との間のコミュニケーションみたいなものがちょっと不足しているところもあるというのを医者のサイト等を見聞きするものですから、ある程度、医者も一人の人間ですので、そういった厳しい状況でずっと働くということになりますとかなり腰が引けてしまいますので、ある程度、昼間の決まった時間に受診していただくとか、それから夜間帯には救急患者さん以外はなるべく受診されないとか。

 すごく不思議に感じたのは、救急患者さんが出た場合には、夜は当然電車がないわけで、どうやって運んでいらっしゃるかなというのをちょっと考えておりました。私は東京都の人間なものですから、島があるんですね。へき地治療って、今、島だけなんですが、結局、島というところは何かあったら、小笠原はないので自衛隊のヘリを使わせていただいているんですけれども、急患を短時間で運ぶということを考えたときに、陸路だけでやるのはちょっと難しいのではないかなというふうにちょっと考えておりまして、確かに定期便の飛行機を使うのは非常に難しいんでしょうけれども、急患を運ぶということを考えたときには、何か政治的に空路を利用するということも一つあるのかなと。私は産婦人科なものですから、今、周産期センターで働いているんですが、埼玉県とかはかなりNICUも少ないですし、周産期の厳しい患者さんは診れないということがあるので、そういう場合にはヘリコプターでうちのヘリポートにいらっしゃるわけで、時間が限られた中で命を救わなくちゃいけないということを考えると、一つそれもアイデアで、それは逆に医者の輸送に使わせていただくという発想がないかなと。

 実は、島というのはある意味北海道と同じで、陸路ではないんですが、非常にへき地でございまして、今いる病院から例えば三宅島に行かないかという提案があると、必ず手が挙がる。要するに、若い方というのは、そういうところでトレーニングをしたい、研修をしたいんですよ。地域に密着して一人の患者さんをずっと長く診るということも、非常にやりたいんですね。ですから、ある意味、そういう町立病院の業務内容が魅力的に映れば、先ほどの話にもありますように、サブスペシャリティーの専門医だけではなくて、やはりジェネラルに診たいというのがありますので、非常に魅力的に映れば行くと思うんですね。

 それはどういうふうにしたら魅力的かということが問題で、まず1つは、代替がいると。行ったら、誰も来てくれないから自分は帰れないんじゃないかと思うと非常に腰が引けますので、必ず代替があるということが非常にありがたい。それは、先ほど千葉県の例で河野先生がおっしゃったようなことというのは、一つの参考かなというふうに思います。地域の基幹病院からそういうふうに移る。結局、広いということは、5時間、6時間という負担はもちろんございますし、いらっしゃる患者さんがもしかしたら少ないということもあると、トレーニングの場所として何をトレーニングするかということもありますので。ただ、1人の患者さんをしっかり診れるとか、ずっと家族関係でつき合えるとか、全身を診れるとかいうことは、医者にとっては非常に魅力的な分野ではあるので、少し発想が転換できたら非常にいいかなというのと、あと、例えば保健師さんとか、ベテランの方であれば、ある程度、ここから先は医者がやらなければだめだけれども、ここまでは地域である程度可能だということももしかしたらあるかもしれないなと思いながら、お話を伺っておりました。

 2つほど質問をさせていただきたいんですけれども、政治的なことだけ考えますと、そういう場所であれば、そういった町立病院、公的病院ということにもちろんなるんだろうと思うんですが、あるいは先ほどちょっとお話があったように既設の私立大学の分院を誘致するという、あれって、新設医学部をつくる、大学をつくるよりはハードルが低いという部分はあるかと思うんですけれども、新設医学部をつくるということになるということはどういう理由かなというのをちょっと考えておりまして、北海道は550万人で3大学ということですが、東京都の多摩地域は400万人の人口があるんですが、大学は杏林大学1つしかないんですね。分院は3つほどございますが、どれもそれほど医者がいるわけではございませんで、公的病院でカバーしているところは多うございます。日本は1億3,000万人いて80大学あると考えますと、大学は大体160~170万人に1つ、大体、3次医療圏2つで1大学ぐらいの感じを受けるわけでございますけれども、そうしたところで考えると、必ずしも少ないかと言われると、そうではないかもしれない。

 あともう1つの質問としては、そこで質の高い医者を育てましょうというふうに思ったときに、ある程度の患者様、いろんな患者さんが来てくださるということが臨床研修には非常に重要でございまして、そうしたときにある程度人口が少ないということになりますと、十分なそういう研修がそこでできるのかなというのがちょっと、学生さんには不安になる可能性があるかと思われます。今、こういった不況の時代なので空前の医学部ブームでして、毎年、医学部を希望される高校3年生の方はどんどん増えています。国が率先して国立大学をおつくりになるというのならいいんですけれども、私立の大学というのは卒業までにかなりの授業料負担がございますが、そういうことも考えたときに、旭川医大が、もとはひどいところだったんだけれども、大学ができたことで非常に人数が集まってきた、人口が増えたということをおっしゃったので、すごくいじわるな言い方になるかもしれないんですが、町起こし的な、そういうことになってしまうと、十分、学生さんが研修できるのかなというところがちょっと心配になりますので、それについてどうお考えか、お願いいたします。

【安西座長】  どうぞ。

【寺島光一郎氏】  大変いろいろな観点からのご意見、ありがとうございました。

 病院には毎日、80人から100人くらいの患者が来ています。私どもは、宿直は救急患者というより、今の基準では、入院患者を持ったら、当直を置かなければならないんです。ですから、先ほども話しましたが、近いところで10分か15分であるんだったら、そっちの人が面倒見てくれるなり対応できるような制度にして欲しい。恒常的じゃないですけど、突発のときは対応できるような制度にしてくれればいいということです。救急はそんなにない方がいいし、私は、5,000人くらいの町ですから、毎年、16の地域での町政懇談会で、病院に行くんだったら10時まで、我慢できるんだったら朝7時まで我慢して欲しい。夜起こしたら先生がハードで大変と言っており、町民もわかっているので、来るんだったら、夜は9時か10時まで、朝は我慢して6時か7時までというふうに、その辺は非常にうまくいっているというか、お医者さんが大変ということはわかっていますので、そういうふうになっています。

 それから、医学部の新設は、私は門外漢ですが、そこに大学が出来ればお医者さんが増えるということで、必ずしも国立の新設とかでなく、先ほど言いましたように今ある大学や病院を利用しながら、更に民間の大学で来てくれるところがあったら、喜んで受けるのも一つだろうと思います。

 それから、ドクターヘリについては、北海道は今、3機入っております。それと同時に、島もかなりあります。地震があった奥尻もそうですし、利尻・礼文とかですね。そこにはみんな町立病院がありますが、ここは、今、先生がおっしゃったようにあそこに行ってやりたいなという人がいっぱいいればいいんですけど、私たち以上に島は大変です。それで、道は、自治医大の人たちを、毎年3人ですので9年で27人おりますので、重点的にそちらに配置したりしています。ドクターヘリが来れないときでも海上保安庁や自衛隊が飛びますから、そういう体制は一応東京と同じようになっています。ただ、なかなか地方に、医師の絶対不足、子どもの教育を考えたら札幌なり都市に家族を置きますので、そして、金曜日も帰れないという中で、来てくれないというのが現状なんです。 

【安西座長】  ありがとうございました。

 それでは、濵口委員、お願いします。

【濵口委員】  すみません、ちょっと話を戻しますけど、先ほど西村先生が総合医か専門医かというお話をされた、これは本当に卓見だなと思っています。というのは、今の医療崩壊が起きた原因がここにあるわけなんですね、一つの原因が。それは、従来、医学部の医師養成は卒後すぐ専門家として養成する形で、大学病院にほとんど配置をしてやってきたわけです。それが、新臨床研修になりまして、2年間、とにかく総合医として幅広く勉強させる、救急もやらせるという形にした結果、総合的な力は上がってきておると思うんですけれども、一方で大学要員の医師が不足する現状が出てきて、地方の市民病院、基幹病院から医師の引き上げをして大学病院の機能を維持するための作業が起きたんですね。その結果、基幹病院の医療崩壊が起きてきてこういう現状になってきているわけですけど、その視点から言いますと、今、我々が苦しんでいる現状というのはある意味で移行期における産みの苦しみのようなものがある。新しい、総合医の能力を十分つけた専門家をつくるという作業を日本全体で今やっているわけですね。その中で、次の新しい形でフィットするような医療システムをどうつくっていくか。そのキーポイントはやっぱり、大学病院と地域、地域の基幹病院が密なネットワークをつくりながら、循環型の医師養成システムをつくっていくことだと思います。その点でやっぱり、河野先生の言われたことは非常に先を読んでおられる。こういうシステムが日本全国にきっちりできてくることによって、コストパフォーマンスのいい、いい人材が育ってくるだろうと、そういうふうに思います。

 養成の仕方も、サブスペシャリティーがないと、今の医療というのはものすごくスピードが速いですね、技術の革新が。例えば、変な言い方をしますと、我々が学生のころというのは、ほとんど勉強したのは、結核の治療ばかりなんです。今はほとんど要らないです。一方で、僕らが研修していたころに例えば循環器内科に心筋梗塞が来たら、痛みどめを出して寝かしてと、こういう治療だった。今、夜中に来たら、3人の専門医がすぐ心カテをやらないかんです。そうすると、例えば心筋梗塞を治療しようとすると、十分休ませて回転させていくためには循環器内科だけで9人要るという、こういう概算があるんです。昔は1人でずっとやれたことです。ですから、どのレベルの医療をそれぞれの地域が求めるかというのをよく見つめていかないと、専門的なトップレベルの技術を日本全国で展開するとすると、医療費もものすごく膨大になりますし、現実的に不可能なんですね。

 今、私がもう一つ恐れていることは、この局面というのは、医者の養成だけ見ていますが、実は、先ほど桑江先生もおっしゃっておられたけど、今、医者ブームなんですよ。大学の学長として見ていますと、ちょっとこれはリスキーな状況が起きていまして、どんどん日本の優秀な学生が、18歳人口、今、偏差値70ぐらいのは一万二千数百ぐらいだと思います、我々がちょっと概算したら。ほとんどが有名な大学と医学部へ行ってしまうんです。その結果、例えばイノベーションをやらなきゃいけないという現実が片方にあるんですけど、イノベーションを進めるための工学・理学部の優秀な人材が仮面浪人しては移るという現状も動き始めていますので、だから、適正値というのは、医療だけで見ていると問題点が見えてこないんですね。

 それから、私、河野先生に1つだけ質問があるんですが、先生は在宅を進めることを言っておられたんですけど、これは本当に重要なことで、患者側から見ると、在宅で、自分が生きている現場で死んでいくということが、一番の幸せだと思うんです。我々、それはよく聞かされるんですけど、今、日本の医療費は34兆円とか言っていますね。これは2035年ぐらいになると90兆円になるという試算もありますけれども、30%を在宅死にした場合、医療費はどれぐらい抑制できるかという、そういうお話もちょっとお聞きしたいなと。

【河野陽一氏】  計算はしていないんですが、ただ、在宅を病院の機能の補完的なものにとらえていくと、これは大きな間違いだろうと私は個人的には思っています。在宅というのは、もう一つの第3次の医療といいますか、やはり在宅にはそれなりの投資をして整備をしなくてはならない医療です。しかし、その額を考えますと、病院への整備費から比べると、はるかに少ない額であるとは言えますので、在宅の方に医療を持っていくことにより、今のご質問ですけれども、医療費の削減になることは間違いないと思います。幾らぐらい削減になるかは計算していませんが、今申した別の医療としての整備ということも前提で議論する必要はあります。

【安西座長】  ありがとうございます。

 どうぞ。

【中川委員】  話を少し戻させていただきますが、旭川の話を桑江先生がおっしゃいましたけれど、旭川は、旭川医大ができるまでは、ひどいところではなかったんです。それまでも、そこそこ医師はいたんですよ。ただ、旭川医大ができてさらに増えたということです。

 寺島町長さん、本日はわざわざいらしてくれて、貴重な話をありがとうございました。町長さんのご苦労は、全国各地至るところである、その一例だというふうに認識したいと思います。私、北海道出身なので申し上げますが、国土の22%ある北海道で医学部はどのぐらいが適正かとか、多い少ないとかっていうのは、なかなか議論に無理があるんだろうと思うんです。

 例えば、町長さんの資料2の最後の地図を見ていただきたいんですが、足りないから乙部町の近くの渡島に医学部をつくるんだという発想だと、十勝もつくらなきゃいけない、釧路の方面もつくらなきゃいけない、宗谷もつくらなきゃいけないという発想になるんですよ。そうではないだろうと思います。

 それから、非常にご苦労されたからだと思いますが、札幌から電車で4時間もかかって医者が来るんだから大変だというのは、その通りだと思います。しかし、地域の住民から見ると、病気や病人が発生したときに医師がいればいいのではなくて、健康なときも、いつか病気になったとき、けがをしたときに、いつでも医者がそこにいてくれるんだという安心、これを求めているのだと思うんです。そういう意味ではそろそろ、都道府県が責任を持って医師を配置する機能、これは大学の医学部と住民といろんな関係者が集まったシステムをつくって配置するという機能で、町長さんの窮状もそこが受け皿になるというふうなことが求められているんだろうと思って、前回、私から提案させてもらったんですけど、そういう議論をぜひしていただきたいなと思います。

【安西座長】  どうぞ。

【寺島光一郎氏】  ありがとうございました。旭川とか、函館とか、そういう大きな都市には以前からお医者さんがいるんです。私が話したのは、旭川に大学ができたことによって、あれだけ一番過疎だった道北が、まだ足りなくても、かなり緩和されたということで、やはり2時間なり、近いところにいるとお医者さんが行きやすいということですので、その辺は誤解のないように補足させてください。

 それと、私たち、今、北海道で論議しているのは、十勝にも、釧路にもということじゃなくて、今、7時間なり5時間の圏域に大学が1つあると、そこをカバーできるという意味で、3つがいいのか、4つがいいのかというより、圏域で1ヵ所と考えています。今、5時間とか言いましたけど、5時間もかかるところにお医者さんは定着しないという意味で申し上げたので、気持ちは同じですが、医療行政というのは先生がおっしゃったように国と道が立てる計画なんです。町村は関与できないんですが、その中でこれをどう解決するか。地方にも、医療のミニマムというんですか、子供も産めるし、それから安心安全な地域医療、高度な医療は別として、これはまさに、先ほど何人かの先生がおっしゃっていただきましたように、医療行政の話だと思うんです。ですから、大学の設置の増員新設とあわせて、医療行政・医療政策をどうするかの中で、国民等しくミニマムの医療を確保した中で、定員の話もあると思いますし、それからもう一つは、昔と違って、定員だけじゃなくて、実効の人数もできればご検討いただきたいんです。女性が増えている中で、本当に1万人にした場合、何人が実働になるのか、それも考慮して、できれば地方にもある程度きちんと、探さなくてもお医者さんが行けるような政策をしてほしいというのが趣旨ですので、よろしくお願いしたいと思います。

【安西座長】  ありがとうございます。

 12時までと申し上げながら、多少伸びてもいいという、そういう会合でございますので、よろしければ続けさせていただきます。ですから、まだ時間がありますので。

 一つは、緊急の医師が足りないという、そういう声は全国多々あるという、非常に短期的・緊急的な課題と、それから長期的な、時間的なそういうことが、今、一応フリーでディスカッションをさせていただいておりますのでいろいろ飛んでおりますけれども、だんだんそこは整理させていただければと思いますのと、それから、空間的にも偏在している、あるいはアクセスが長過ぎるという、乙部町もそうかもしれませんけど、そういう問題はやはり現実にはあるかと思います。そういう時間的なものと、空間的なものと、それからもう一つは、中身というんでしょうか、仕組みというんでしょうか、コメディカルとの関係、あるいは医師のキャリアパス、あるいは教育の問題、それから製薬企業への道、あるいは海外との関係もあるかもしれませんけれども、あるいは、そういうネットワークをつくっていく、循環型の医療社会をつくっていく、そういう仕組みですね。医療の内容というか、仕組みというか、そういう問題と、それからさらに、医療費とか、あるいは国・都道府県がかかわるような、そういう行政の問題ですね。そういうことを今は一応全くフリーでやらせていただいておりますけれども、だんだん整理させていただいて、具体的な方向に進ませていただければというふうに思っております。そういうことでよろしゅうございますでしょうか。今日のところはフリーでさせていただきますので。

 それから、申し上げましたように、次回もヒアリングをさせていただく。徐々に、今申し上げたように絞らせていただければと思っております。

 矢崎委員。

【矢崎委員】  

 実は、私、平成18年に医師需給の検討会の座長をやってまとめたんですが、そのときのマクロの指標は、今日河野先生からいただいたデータとほとんど変わらない、将来はこうなりますよということでした。ただ、そこが大きく印象深かったので、当時は議論の間でも、大学の先生方あるいは地域医療の先生方から非常に医療費抑制のために医師を抑制している報告書というご非難をいただきまして、しかし、よく中を読んでいただきますと、現状では病院の医師は5万5,000人不足していると、これに対してどうするかとか、女性医師の問題とか、そういうものをちゃんと書いたんですが、あまりにも皆さんの強いご意見があって、最後に座長の談話というのを発表したんですね。厚労省のホームページに出ているんですが、どなたもそれを読んでいただけない。

 ちょっといいですか、簡単に。そこでは7つの問題点を指摘しました。1つは、地域に必要な医師の確保と調整。2番目は、手術等の地域の中核的な医療を担う病院の位置づけ。これは地域医療をどういうふうに再生するかということだと思います。それから3番目は、病院における持続的な勤務が可能になる、要するに勤務医の環境の整備ですね。環境の構築。それから、病院を入院機能に特化すること等による生産性の向上、5番目に、診療所の外来機能の強化によって病院への負担の軽減、それから6番目に、国民の期待する専門診療と診療科・領域別の医師養成のあり方の検討、7番目に、医学部定員の暫定的な調整ということをそこで述べました。しかし、ディスカッションになると、医師の定員がわかりやすいものですから、そこに集中しちゃって、8月に4省庁の医師確保対策の合同会議があって、そこで医師の定員の増加ということが検討されました。その過程で私が申し上げたのは、今の大学のスタッフとか施設では医師の定員は1.2倍が限度であって、それ以上の定員増加というのは慎重に検討してほしいということを申し上げてきました。その後、それを超えた定員増加とか、そういうお話がありましたけれども、私は、現状では1.2倍が限度であろうというふうに申し上げてきました。

 ただ、今の医学教育は明治以来ずっと同じシステムですので、新しいシステムをつくってもいいのではないかということを最初のときに申し上げたんですが、これは一部、メディカルスクールととられたんですけれど、メディカルスクールには多くの問題が指摘されています。申しわけありませんが、アメリカの医療の環境は、メディカルスクールのスチューデントが実際の医療を日本の研修医のように実習ができているんですね。日本でそういうことができるかどうかというのは非常に疑問であって、メディカルスクールだったら研修医と同じようなことができるかというと、そうはならないんじゃないかというふうに思いますので、しっかりした医学教育をできるようなシステムをつくるのであれば検討をしても可能性があるんですけれど、ただ、医師の定員を増加するということだけで医学部をつくるというのはいかがなものかということで、さっき申し上げましたように、今、ご議論があったような医師の専門性の問題とか、要するに、医師育成の問題とか、地域医療の病院のあり方とか、そういう総合的な議論をしないと、定員だけを議論していくと、数だけ増えて現状は改まらないということなので、ぜひ次回に、私の座長談話というのをコピーして皆さんに配りますので、ちょっと目を通していただければ大変ありがたいと思います。

【安西座長】  ありがとうございました。その平成18年の会合の結果をきちんと超えないといけないと思いますので、ぜひ配付していただければと思います。

 それでは、木場委員、どうぞ。

【木場委員】  ありがとうございます。初めて出席いたします、木場でございます。今日のメンバーの中では、ほとんど医療にかかわっていない、むしろ生活者というか、患者側から意見を言わせていただこうと思います。初回なのでフリーに感想めいたことを申し上げますが、私は、お二方目のプレゼンテーター、乙部町の町長さんのお話をある意味、大変衝撃を受けて聞いておりました。報道などで発表される平均値というものでははかれない。先ほどのご意見にもありましたけど、160万の都市で1つぐらい医科大学があるという数字とはかけ離れた現実、お困りになっている現状というのがよくわかりました。

 先ほど中川委員が言おうとしたことをおっしゃったんですが、私たち住民の立場で言うと、言葉は変かもしれませんけれども、常に安心して病気になれる環境というんですか、そういう部分がないと、大変不安です。安心して出産できる、もそうです。といいますのは、私も実は4,400グラムの大きい子を1人産んでいるのですが、そのとき非常に難産で、要は、近くにNICUがなければおそらく助からなかったし、私も全身麻酔でしたので、今、町長さんから麻酔科もないというのを聞きますと、とてもとても安心して産める環境ではないんだなというところで、大変ご苦労が伝わってまいりました。

 私たち患者側からしても、最低限と言ったら失礼ですけれども、このぐらいはという希望ももちろんあって、それを満たしていただくのは非常に大切なことで、それは、この資料を見た限りでは、地域、地元だけの努力ではどうしようもないということがひしひしと伝わってまいりました。ですから、先ほど来出ていますように、県なり国なりの行政の方がそのあたりはきちんと1人1人の住民生活を支えるようなことをもっと力強くサポートしてほしいなと思います。

 もう一方で、今の町長さんのお話の中で、週末だけ大学病院、千葉大さんからも派遣されていると聞いたんですが、そういうことをされているというのは大変頭の下がることですが、では、その医師を、1人の生活者というか、1人の社会人として見た時に、月~金はお忙しく朝から患者さんに対していて、お休みである金土日を、そうやって地方に行って一生懸命治療に当たる。これは、相当お疲れにもなるでしょうし、また、その方自身にも生活があって、ご家庭があって、休息も必要でしょう。お医者さんがここまでやらなければ、私たち患者を支えられないシステムというは、どう考えても心もとないというか、無理があることと思えてならないのです。この会は最終的には数を決めるのでもちろんそれは大切なことで、そこに至るまでに、先ほど来から諸先生方がおっしゃっていますように、それぞれの患者さん、先生方、つまり治療する側とされる側が生活・環境が整った上でないと、幸せな、皆さんが満たされる医療というのが実現できないと思いますので、そういう人間としての部分からも、満たされるような医療ということも考えていただければいいなと思います。

 お医者さんの数の問題じゃないんだよ、質だよみたいなことをよく聞きますし、それは当然だと思うんですけれども、お医者さんがいい質を保つためにはやっぱりその方がいい環境の中にいなければなかなか難しいと思いますので、そういった面からも、課題の中に一つ、クオリティー・オブ・ライフじゃないですけど、そういうことも視点に入れて、お話を進められればと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【安西座長】  どうもありがとうございました。

 桑江委員。

【桑江委員】  すみません、一言だけ。寺島様、お産というのは非常に怖くて、先ほど木場様もおっしゃっていたように、安心して産むためには緊急帝王切開ができないとお母さんと赤ちゃんの命が助からないので、できましたらお産はそういった施設のところにご本人が移動していただいた方がいいかなと思って、ちょっとつけ加えさせていただきます。

【安西座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【寺島光一郎氏】  誤解があると困るんですが、二次医療圏に子供を生める施設がないんです。それが3年も続いているという。私どもの病院じゃないんです。二次医療圏にないんです。北海道には医療圏が21あるんですけど、やはり広いんですよ。その二次医療圏にないので、違う医療圏に行かなければならない。救急車で行くんですが、70kmあり、途中で破水まで毎年起こしているということです。それが近くにないということは、大変なことなんです。

【桑江委員】  確かに産婦人科は決定的に不足しておりますので、今、いろいろ努力もしているんですけれども、環境を改善しつつ、今、少しずつ増えてきているところですので、大変ご迷惑をかけておりますが、もう少しお待ちいただければと。

【安西座長】  おそらくある時点でもって、地域によって非常に状況が違うと思いますので、そういうことをある程度きめ細かく議論をさせていただく時期も来るのではないかというふうに思います。

【今井委員】  今のお話、ちょっと行政の話も出ましたので、私、北海道立の大学におりましたのでちょっとだけ言わせていただきますと、北海道でも、手をこまねいているわけではなくて、知事が医療対策協議会をもう既に6年以上やっておるわけです。それで、毎回、3大学の学長以下ずらっと、それから各町長さんとか、皆さん出て、その上で北海道を交えて検討しているわけです。6年も7年もやってもほとんど、今までおっしゃっていただいた例えば拠点化とかネットワークづくりというのはやっておるわけですが、ワークしないんですね。なぜしないかというと、やはり一番は、その拠点にあまり医師がいない。少ない。かつかつでやっていますので、そこからなかなか難しいという現状がありまして、その点、何もしないで言っているわけじゃなくて、かなりいろんなことをしてもなかなか難しいという現状をぜひご理解いただきたい。

 それからもう一つ、今、北海道に出ている新設の話は、私立の大学ではなくて、公立の大学です、私が知る限り。ちょっと誤解があったらいけませんので、つけ加えさせていただきます。

【安西座長】  ありがとうございました。

 どうぞ、竹中委員。

【竹中委員】  既に製薬会社における医師の活動状況並びに必要性については、ご退席されましたが、高橋先生からご報告がありましたが、一つだけつけ加えさせていただきます。日本における薬の研究開発状況では、過去におきましても、また現在もその過程でありますが、創薬という化合物を見つけたりするところは非常に強く、多くの薬を発明しております。しかしながら、それをグローバルに開発する力が弱かった、また今でもまだ弱いところで、その原因の一つは、グローバル開発できる日本人の人材、特に、先ほど高橋さんがおっしゃられた医師の役割が大変重要なんですが、そこが不足しております。当社におきましてもそのことは現実にあります。最近の日本の製薬会社の一部分は、グローバル開発をするために海外のMDを活用し、開発拠点の中心も外国としています。当社においてはアメリカに置いています。こういうような形で対応しております。これは、日本から逃げているとか、ご批判あるかもしれませんが、そうではございません。日本で発明したものをグローバルに開発していいグローバル製品としたいために、グローバル開発力がなければできませんので、こういうことをしております。現状をご報告させていただきます。【安西座長】  ありがとうございます。そのとおりだと思います。

【中村委員】  寺島町長さんに少しお聞きしたいんですが、1つは、先ほど自治医大の医師が利尻とか離島では非常に活躍しているという話をお聞きしました。私は大学にいまして、例えば、学生さんがゆとり教育とかいうことで教育されてきて、医者になったらゆとりのないところになぜ行かなきゃならないんだという感じのレスポンスがある。そういう意味では、唯一、自治医大だけがある意味でそういうことを強制するような、デューティーとしてやってきた大学だと思うんですね。地域的には、滋賀県とか島根県などの状況を見ていますと、確かに自治医大の人たちが地域医療に一定の役割を果たしてきて成功しているというふうな感じがしていて、そういう意味ではある程度デューティーとして地域に行かせる教育システムをつくる必要があると考えるのです。若手を今のままでそういうところに行かせることがいいかどうかは別として、システムとして改善は必要なんでしょうけど、そういうふうなことがある。町長さんにお聞きしたいのは、自治医大の制度、今の地域医療の中で果たしている役割に対して、何かメリット的なものとか、見ていて感想として、システムがいいか悪いかなども含めて、何かございますでしょうか。

【寺島光一郎氏】  今、北海道の場合は、先ほどお話ししましたように、北海道の診療所とか道立病院で手いっぱいで、私たちの病院には回ってこないんですが、私たちが自治医大の人も受けているのは、9年の年限が終わった人に来てもらっています。自治医大の出身者が今までに3人くらい、いわゆる個人的にお願いして、地域に年寄りが多い中で、その人たちの話も聞くし、私は非常にありがたいと思っています。そういうお医者さんが、9年の年限が終わっても、都会に出ないで地方で勤務してくれているんです。9年のそういう実績もあるということで、私は非常に、お医者さんが少ない地域ではカバーしてくれており、9年の間に2年くらいは大学が研修なりでフォローしてやってくれていますので、これからそういう医師が増え、定着してくれることを願っています。

【安西座長】  ありがとうございます。

 まだご発言がない委員の方、丹生委員、山本委員はいかがでしょうか。

【丹生委員】  失礼します。兵庫県から参っております、県立柏原病院の小児科を守る会の丹生と申します。私も住民としてこの検討会に加えていただいているんですけれども、先ほどの木場委員と同じような意見を述べさせていただきます。

 私たちは住民活動として住民の立場で、住民としてどのようなことをしたら地域で働いてくださっているお医者さんの負担を軽減できるかということから、皆さんに呼びかける活動をしているんですけれども、やはり住民としては、このような検討会で決まった内容をただ受け入れるしかないような気がいたします。今、このような医療の環境ですとか、それを住民としてどのように受け入れていくかというか、折り合いをつけていくかというところに、住民としての心構えのようなものが必要なのではないかなと思います。ただ、地域のお医者さんといろいろお話しする機会もある中で、こういう検討会で決まったことなどが実際いろいろなところにめぐらされていくと思うんですけれども、指導する立場になるお医者さんですとか、また、これからお医者さんになろうとしている医学生さんのモチベーションを保っていけるような、そういうシステムをこれから検討する中でつくっていただければと思っています。

 委員の皆様も、現場のご経験もある方が本当に多いと思いますし、ご自身が現場で当時感じた思いですとか、そういうふうにどうしたら医師として経験を積んでいけるかとか、キャリアパスをどのように描いていけるかとか、そのような観点を皆さんで持ち合わせて、この検討会を進めていけたらいいなと思います。

 以上です。ありがとうございます。

【安西座長】  ありがとうございます。

 じゃあ、山本委員。

【山本委員】  大変立派な人たちがお話をしていただけるので、できるだけヒアリングを正しく理解しようと思って一生懸命お話を伺っています。今は、自分の意見はなるべく差し控えております。あと1回ヒアリングがあるということで、それを聞いてから申し上げようと思っています。今日の話の中にも大変多くの問題が出されました。文科省にかかわる問題はどっちかというと内容としては少なくて、むしろ医療提供体制とか現場の問題が非常に多いということを考えますと、次の3回目が終わってからの話になるかと思いますけれども、今、隣にオブザーバーで出てきていますが、厚生労働省の人たちの立場をこの委員会の中でどういうふうに考えて、どういうふうに位置づけたらいいのかと、こういうことも問題になるかなと考えています。それを含めまして、次回あたりから、資料も添えて私の考え方を述べさせていただきたいと考えております。

【安西座長】  医学部の定員のあり方等ということで立っている会合でございますので、文部科学省、それから厚生労働省がぜひ協力していただいて、やはり日本の医学教育も含めた医療の問題に、前々から毎回申し上げているんですけど、本当に早くやるべきことであったなあというふうに思いますので、両省ともぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 他に。

【中川委員】  座長、ヒアリングは次回で終了ですか。

【安西座長】  いや、私、どうも言葉は端折ってとられるので言葉に気をつけて申し上げておりまして、「少なくとも」と申し上げました。

【中川委員】  それは把握していますが、その上で1名推薦を申し上げたいのですが、よろしいでしょうか。

【安西座長】  それはできれば事務局にお伝えいただけないでしょうか。これは皆様からご推薦いただいて結構だということになっておりますが、ただ、何十人も推薦されると、ここで名前を出されてしまうと、ということもあるかと思います。ぜひご推薦はお願い申し上げます。

【中川委員】  わかりました。

【安西座長】  事務局はそれでよろしいでしょうか。

 そろそろというふうに思いますが、他にはよろしゅうございますか。

 毎回ヒアリングをやらせていただきまして、今日も、お忙しい中、3人の先生方に大変すばらしい話をお伺いすることができました。改めて厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

 一方で、さっきから申し上げておりますけど、徐々に整理をさせていただいて、フリーディスカッションから、なるべく軸を持った議論の方へ移るようにさせていただければと思っております。

 それでは、一応、議論はここまでにさせていただきます。また、もう十分ご発言もあったかと思いますけれども、まだまだご意見ある方もおられると思います。ご意見がある委員の皆様は、事務局にメール等で適宜ご提出いただければ幸いでございます。よろしくお願い申し上げます。

 最後に、事務局から今後の日程等をお願いします。

【茂里視学官】  ありがとうございます。次回につきましては、3月11日、金曜日でございます。10時から12時を予定しております。なお、今回と同じように、必要に応じて30分程度の延長もと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 なお、先ほどお話ありましたヒアリングのご推薦の件につきましては、随時、事務局の方にお伝えいただければと思います。ただ、物理的な問題もありますので、そのあたりは座長と委員の方々と調整した上で進めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

【安西座長】  皆様から、特にありますでしょうか。

 それでは、寺島町長、河野院長、ありがとうございました。高橋先生はお帰りになりましたけれども、ありがとうございました。

 これで閉会とさせていただきます。ご多忙のところ、まことにありがとうございました。

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