平成22年12月22日(水曜日)午後1時から午後3時まで
文部科学省3F1特別会議室
安西 祐一郎、今井 浩三、片峰 茂、栗原 敏、黒岩 義之、桑江 千鶴子、坂本 すが、妙中 義之、竹中 登一、丹生 裕子、永井 和之、中川 俊男、中村 孝志、西村 周三、濵口 道成、平井 伸治、矢崎 義雄、山本 修三 (敬称略)
鈴木文部科学副大臣、磯田高等教育局長、加藤高等教育局審議官、新木医学教育課長、茂里視学官、玉上大学病院支援室長
【茂里視学官】 定刻となりました。ただいまから、今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第1回)を開催いたしたいと思います。
私は、後ほど座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます、文部科学省医学教育課の視学官をしております茂里と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
会議に入ります前にご報告をさせていただきます。本会議は冒頭より公開とさせていただいておりますことをご了承いただきたいと思います。
それでは、本日は第1回目の会議でございますので、鈴木文部科学副大臣より一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。
【鈴木副大臣】 皆さん、こんにちは。文部科学副大臣の鈴木寛でございます。今日はほんとうに年末のお忙しい中、お集まりをいただきまして、まことにありがとうございます。また、このたび委員の就任をご快諾いただきましたことを、厚く御礼を申し上げたいと思います。
この医師の確保・養成の問題といいますのは、まさに国政上最大関心事の1つでございまして、先の参議院選挙におきましても、あるいは昨年の衆議院選挙におきましても、国民的な議論となったということは、皆様方もよくご案内のことだと思っております。地域医療の崩壊に対応するために、文部科学省といたしまして、私も2年目に入っておりますけれども昨年に引き続きまして、地域医療人材の確保ということで、既に、来年度に向けて77の増員を認めて、8,923人の入学定員というところまでは増やしているところでございます。この委員会では、これまでの取り組みと検証と評価をぜひ皆様方に議論をしていただきますとともに、今後少し中長期的スパンで、平成24年度以降の医学部入学定員の在り方―――もちろんこれはその養成の充実ということとの質と数の両方についてのことでございますけれども、議論をしていただきたいと思っております。
引き続き、地域医療人材の確保というのは大変重要な課題だと認識しておりますが、加えまして、菅政権におきましてはこの6月に新成長戦略を取りまとめております。その中で、ライフ・イノベーションというものをこの国を引っ張っていく新しい柱の1つに、グリーン・イノベーションとともに2大イノベーションの1つというふうに位置づけております。しかしながら、いろいろと聞いてみますと、このライフ・イノベーションを担う若手人材の確保・育成ということについても、しっかりと考えていかなければいけないと考えております。
また、我が国の医療水準というのは、WHOが認めるように世界最高水準の医療技術、医療サービスを誇っていると自負していいんではないかと思っております。今後、国際社会において、我々日本が医療の分野で世界に貢献をし、そして名誉ある地位を占めるというのは、国家戦略上も極めて重要な課題であると考えておりまして、地域医療人材の確保に加えまして、こうした新しい日本社会をつくっていくという観点、社会的・国家的ニーズという観点からもご議論賜れば、大変ありがたいなと思っております。
今回、この問題を議論するに当たり、我が国で最高峰のベストの皆様方に委員にご就任いただいたと思っております。大変感謝をいたしております。医療の実態、医学の実態というのは非常に多様でありますし、また、日々刻々と変わっております。きちっと将来の姿を見据えたしっかりとした議論をして、そしてそれを政策につなげてまいりたいと考えておりますので、委員の皆様方のご指導とご協力を心よりお願い申し上げまして、私のごあいさつとさせていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【茂里視学官】 ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、配付資料を確認させていただきたいと思います。資料番号を打たせていただきました。お手元に資料1、2、3、及び、青い冊子でございますが関係の冊子を2部、そして、桑江委員からご提出ありました資料、6点配付させていただいているところでございます。ご不備がございましたら、お申しつけいただければと思います。よろしゅうございましょうか。
続きまして、本来ならば各委員の先生方をご紹介させていただくところでございますが、時間も限られておりますので、資料1の別紙、並びに、お配りさせていただいております座席表をもって、委員の先生方のご紹介にかえさせていただければと思います。ご了承くださいませ。
早速ではございますが、座長及び副座長の選任に移らせていただきます。本会議の会務を掌理するお立場として、座長を1名、そして、座長の代理者として副座長を2名、お選びいただきたいと思います。
まずは座長を選任いたしたいと思います。どなたかご推薦をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
矢崎先生、お願いします。
【矢崎委員】 安西委員を座長に推薦申し上げたいと思います。と申しますのは、安西委員は中央教育審議会の大学分科会の会長を務めておられまして、高等教育政策の全体を把握しておられる。さらに、慶應義塾大学の学長のご経験から大学運営の実際にも精通しておられることから、ぜひ座長を安西委員にお願いすればと存じます。
【茂里視学官】 ありがとうございます。
いかがでございましょうか。ただいまご推薦いただきました安西委員を座長とすることでよろしゅうございましょうか。
( 拍手 )
【茂里視学官】 ありがとうございます。
続きまして、副座長を選任いたしたいと思います。こちらもどなたかご推薦いただければと思いますが。
片峰先生、よろしくお願いします。
【片峰委員】 副座長候補者として、医学教育の経験が豊富な方ということで、医学系の大学の先生お二人をご推薦したいと思います。お1人は国立大学の名古屋大学総長でございます濵口先生、もう一方は私立の慈恵会医科大学の学長でございます栗原先生、お二人をご推薦申し上げたいと思います。
【茂里視学官】 ありがとうございます。
ただいま、濵口委員と栗原委員を副座長とすることについてご推薦いただきました。いかがでございましょうか。
( 拍手 )
【茂里視学官】 ありがとうございます。
それでは、大変恐縮ですが、安西委員におかれましては座長席の方へご移動をお願いいたします。
ありがとうございました。
ここからの進行は安西座長にお願いしたいと思います。
安西座長、よろしくお願いいたします。
【安西座長】 安西でございます。今、座長に選任されたということでございますけれども、皆様とのご協力でやらせていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
一言だけ申し上げておきますと、この、今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会、今、鈴木副大臣がおっしゃられたように、国民にとっても大変大きな関心事でございますし、医学教育、医療の教育のことがこの検討会の問題として出るわけでありますが、皆様よくご存じのように、それだけにとどまらず、日本の医学教育だけでなく医療全般のことについて、やはりこれからどうしていくかということもかかわってくると思います。そういう意味では、副大臣が言われましたように、特に世界最高水準の医療をこれから続けていくためにはどうしたらいいのかということも含めて、そして、基本にはこれからの医学生、医療の教育をどうしていけばいいのかということをもって、進めていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
また、濵口委員そして栗原委員には副座長をお務めいただくということで、よろしくお願い申し上げたいと存じます。
よろしゅうございましょうか。それでは始めさせていただきます。議事の2番目ということになりますけれども、現在の医療・医学を取り巻く現状についてという議題になっております。初めに、事務局から、この会議の設置の趣旨を含めまして、文部科学省におけるこれまでの医学部定員の在り方等に関する取り組みについて10分程度、それから、厚生労働省における取り組み等につきましても同じく10分程度、説明をいただければと思います。
よろしくお願いします。
【茂里視学官】 では、文部科学省の方から、資料2に基づきましてご説明を申し上げたいと思います。大変恐縮でございますが、資料2をお手元にご用意いただければと思います。それに先立ちまして、本会の趣旨でございますが、最初の資料1に記載してございますとおり、医学部入学定員増に係るこれまでの取り組みについて評価・検証をいただくというのが1点、あと、平成23年度までの取り組みは決まっておりますが、それ以降の取り組みについてご議論いただくのが2点、大きく2点でございます。よろしくお願いいたします。
資料2に戻ります。1ページをお開きいただければと思います。私の方から5点、かいつまんでご説明申し上げたいと思います。まず1点目でございますが経緯、2点目は地域枠について、3点目は研究医枠について、4点目は地域医療に関する教育の実態について、5点目、その他でございます。
恐縮ですが、もう1枚お開きいただければと思います。1点目のポイント、これまでの経緯がこちらに記載してございます。3ページの上の方でございますが、「これまでの経緯」。文言がございますが、昭和57年そして平成9年の閣議決定によりまして、医学部の入学定員につきましては抑制が図られてきたところでございます。ただ、昨今の医師不足の社会的ニーズを踏まえまして、平成18年そして平成19年に、特例的に入学定員の増員を図ったところでございます。それに続きまして、平成21年度そして平成22年度そして来年についても、医学部入学定員について増員を図っていこうという取り組みになってございます。具体的には、平成22年度につきましては、その括弧書きがございますように、地域枠、研究医枠、振替枠という3つのスキームを設けまして、現在8,846人まで増員を図ってきたところでございます。来年度につきましても今年度と同様の枠組みで、前年度比77人増の8,923人まで増を図ることを予定してございます。
続きまして、4ページ、5ページをお開きいただければと思います。4ページにつきましては、これまでの定員増を図ってきた経緯を記載させていただいてございます。5ページでございますが、先ほど申し上げました昭和57年と平成9年の閣議決定を記載させていただいております。その下にございます「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」、これは文部科学省告示でございますが、具体的にはこの文部科学省の告示でその抑制方針を具体化しているという整備がなされている状況でございます。
続きまして、恐縮ですが6ページ、7ページ。大変細かい数字で恐縮ですが、ここには、ピーク時の昭和59年度から一番ボトムの平成19年度、それから平成20年度以降の増員について、各大学ごとに数字を並べてございます。そもそも医学系の大学につきましては、全部で79大学ございます。国立が42大学、公立が8大学、私立が29大学となってございます。トータルで、これまで一番最低値の7,625人から約1,300人の定員増を図ったところでございます。
恐縮でございます、8ページをおめくりいただければと思います。2点目のポイントでございます。「地域枠について」ということでございますが、そもそも地域枠というのは、地域医療に従事する意欲のある学生を対象として入学選抜を行うことを目的としたものでありまして、現在、67大学で1,171人の地域枠が設定されてございます。実際、平成20年度から定員増を図ってきております。このグラフをご覧いただければ、平成9年度からの数字が記載されているわけでございますが、実際は、定員増に伴う地域枠と、それ以前から大学独自が設けてきた地域枠という2種類があるということで、ご理解いただければと思います。例えば、9ページの一番上の旭川医科大学。これは、平成22年度入学定員122人、うち地域枠が72人。これは旭川医科大学の独自の取り組みそして近年の定員増に合わせた取り組みということで、半分以上地域枠を設けている、こういった大学も見受けられるところでございます。
もう1ページ、10ページをお開きいただければと思います。その地域枠の有効性ということを示したデータを記載させていただいております。平成20年度からの定員増でございますので、卒業生はまだ出ていないという状況ですが、先ほど申し上げましたように、それ以前に独自に取り組んでこられた大学からデータをいただいて整理したのが、この表でございます。これを見ますと、地域枠による入学者の方が一般枠の入学者よりも定着する確率が高い。具体的には、県内定着の平均といたしまして、地域枠入学者が89%に対しまして、一般枠入学者は54%となってございます。
続きまして3つ目のポイント、研究医枠でございます。11ページをお開きいただければと思います。研究医枠につきましては、その背景といたしまして、医師免許を持つ基礎医学研究者が近年激減しているという状況を踏まえまして、研究医枠を設けましてその確保に努めようという趣旨のものでございます。具体的には、各大学で奨学金や、大学院と学部を一貫したコースの設定などを通じて、その養成に取り組んでいるところでございまして、現在14大学で23人の増員を実施したところでございます。
大変恐縮です、13ページをおめくりいただければと思います。4つ目のポイント。これまでは定員のお話をさせていただいたわけでございますが、実際にその教育内容はどうなっているかということでございます。「地域医療等に関する教育の実態」ということで資料をご用意させていただきました。各大学、ほぼすべての大学で地域医療教育というものに取り組んでいるわけでございますが、これについては、医学教育の学習指導要領というか指針とされます「医学教育モデル・コア・カリキュラム」というものの中に、既に地域医療の重要性が訴えられ、その具体的な内容が示されております。ただ、それでは不十分という声も一方ではございまして、現在、モデル・コア・カリキュラムの改訂作業を行っているところでございます。
具体的に地域医療に関する講座の設置でございますが、中ほど以下、大学独自では67大学で設置。これは座学であったり実際の実習であったり、その実習も、例えば夏休みなどを利用した長期の実習であったり短期の実習であったりする、そういったことが行われております。それ以外に、例えば都道府県からの寄附によりまして講座を設け、その中で地域医療教育を行うということで、53大学において79講座が現在設置されているという状況でございます。
14ページ以降、モデル・コア・カリキュラムの内容を記載してございます。
18ページ、「その他」、これは最後のポイントでございますが、ちょっと時間もありませんので、このあたりは省略させていただきます。臨床研修制度や、20ページの医学部入学者に占める女性の割合がもう3割を超えているという話、また21ページに地域枠の設定で実際は県内の高校出身の割合が上昇しているというデータを、さらには大学病院の現在の状況等を示したデータをご用意させていただきました。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【安西座長】 よろしいでしょうか。
それでは、厚生労働省からお願いします。
【村田医事課長】 厚生労働省医事課長の村田でございます。それでは、お手元の資料3に従いまして、ご説明をさせていただきます。
医師数の大まかな状況についてごらんいただければと思います。まず2ページをお願いいたします。医師数、トータルのデータでございます。厚生労働省では2年に1度、医師数、歯科医師数等の調査をやっておりまして、これが直近の平成20年12月31日現在のデータでございます。総数が28万人余り。以下、医療施設の従事者、病院、診療所ということに分けてデータを記載してございます。
それからその下が、今度は、人口10万人対医師数の年次推移でございます。昭和30年から以降、10万人対の数字でお示しをいたしております。ごらんのとおり、10万人対の医師数は増えているという状況でございまして、近年の状況で見ますと、国家試験の合格者が大体7,600人~700人程度ということで、死亡あるいは業務から離れられる方を除いても、医師数は毎年3,500人から大体4,500人ぐらい増加をしていると。勤務医に限っても、大体年に3,000人ぐらいの増加ということでございます。この10年でとりますと、平成10年から20年まで大体3.8万人増加をしているという概要でございます。
それから、次の4ページをお願いいたします。今度は、医師数の中で施設の種類別に見た、年齢階級別に見た医師数でございます。左下のグラフを見ていただければと思いますけれども、これは年齢を追うに従ってどういう医療機関に従事されているかが変わっていくかということで、一番下が一般の病院、その次の濃い青が医学部の附属病院、それからその上の白で抜いたところが診療所ということでございます。当然でございますが、最初は大学病院の割合が多い、あるいは一般病院での勤務が多いということですけれども、年齢が上がるに従って、診療所に勤務されるあるいは開設される医師の方が増えてくるというデータでございます。
右側が、年齢階層に見た、上が病院、下が診療所に従事していらっしゃる医師の数、それから年齢構成の年次推移ということでございます。上の平均年齢の横のグラフを見ていただきますと、病院については平均年齢が上がる傾向にございます。それから診療所についてはほぼ横ばいという状況でございます。
それから、その下の5ページでございますけれども、今度は女性医師の推移でございます。先ほどもお話がございましたとおり、左側でございますけれども、全医師数の中の女性医師の割合は増加傾向にございまして、20年の時点では18.1%。右側のデータは医学部の入学者の中に占めます女性の割合ということで、こちらについては近年は30%を超えるという状況になって、ほぼ3分の1ということでございます。
それから、次のページ、6ページでございますが、これは女性医師の就業率のM字カーブと呼ばれる、年齢を追うに従って男性医師、女性医師、それぞれ就業率――実際に医師として就業される割合――がどう変わるかということでございます。女性の場合は、ごらんのとおり、30代に入ると一たん下がって、また上昇するという傾向にあるわけでございます。それから、その下のデータは、今度は診療科別、小児科とか産婦人科医の男女比ということで、ごらんいただきますと、特に若い世代ではこうした診療科については女性医師の割合が非常に高いというデータでございます。
それから、その次が8ページでございますが、診療科別医師数の年次の推移でございます。これは平成6年を1.0とした指数でとったグラフでございます。ちょっとごちゃごちゃしてわかりにくくて恐縮でございますけれども、上から5番目の薄い水色のグラフが、全体の総数の伸びでございます。全体的に伸びておりますけれども、伸び率が高いのは麻酔科、精神科、皮膚科、眼科、整形外科と。逆に、伸び悩んでいるのは産科、外科等でございます。ただし、18年、20年の比較で見ていただきますと、産科、外科はいろんな政策の効果ということもありまして、少し反転をしている傾向にあるという状況でございます。
それから、その次でございますけれども、今度は9ページ、医師需給に係る医師の勤務状況の調査ということで、これは平成18年に厚労科研の研究で、勤務医の方々の勤務状況を調査をしたということでございまして、病院にいらっしゃる時間の中で診療、教育等の時間を合計すると平均で48時間であると。診療所のほうはもう少し少ないと。ただし、なお書きで書いてございますけれども、実際に病院の常勤の医師の方が医療機関に滞在している時間は、平均週63時間というデータが出ております。
それから、その次のページでございますが10ページ、人口1,000人当たり臨床医数の国際比較でございます。これも、ご案内のとおり、OECDに平均すると日本は少ない状況にあるということでございます。
それから11ページ、医療提供体制の各国比較ということ。これもよく言われるデータでございますが、平均在院日数が長いとか、あるいは、病床数は人口1,000人に対して多いという状況でございます。
それから、12ページ、13ページは、厚生労働省が行いました、医師の需要と供給に関する機械的な試算のデータでございます。これは平成20年の8月に、「安心と希望の医療確保ビジョン」会議に出した資料でございます。もとになりますのは、12ページの一番下に書いてございますけれども、平成18年に長谷川先生が主任研究者で厚労科研で試算したものに、機械的なデータを入れて再計算をしたというものでございます。ちょっと見にくい表で恐縮でございますけれども、青色の平行に3本走っていますこれが、需要の曲線でございます。先ほどの勤務時間との関係でございまして、週48時間勤務と仮定したら一番下の青色。それから44時間、40時間ということでの需給のラインでございます。それから、オレンジ色の系統4本、右肩上がりで上がっておりますこれが、医師数の供給のデータでございます。これは、データとしては、先ほどご説明がございましたけれども、定員が抑制されていたボトムの7,700人の時点をベースに7,700人を維持した場合、さらに骨太を踏まえて過去最大にした場合、それからその次が医学部定員が2割増員した場合、それから一番上は毎年400人ずつ増員をした場合ということです。ですから、この需要と供給が交わるところが均衡する点という形になるわけでございます。これは当然幾つか前提を置いて試算してございますので、その前提は13ページの一番下に、供給と需要ということで記載してございます。
それから、14ページ、15ページは、直近の、病院における必要医師数の実態調査の概要でございます。これは、本年、厚生労働省として初めて統一的な方法で、各医療機関が必要と考えている医師数のトータルの数を調査するということで行ったものでございます。今年の6月1日現在で、対象は全国のすべての病院それから分娩取扱い診療所、10,000施設を対象ということで、その施設に対して、「そちらの病院でどのぐらいの医師が必要で、求人をしているけれども確保できていないのか」ということで、いわば病院の必要な言い値を積み上げたということで、それによりますと、必要求人医師数が18,288人ということで、現在の医師数との対比でいいますと1.11倍ということでございます。当然、都道府県ごと、あるいは診療科によってばらつきがあるというものでございます。
それから、16ページ以降は、その少し具体的なデータでございます。16ページの円グラフは、先ほど申し上げた現員医師数状況それから分娩取扱い医師の状況。これは雇用形態によって正規、短時間、非常勤ということに分けてございます。それから、その下が必要医師数の詳しいデータ、それからその次が分娩取扱いの必要医師数ということでございます。
それから、18ページが必要求人医師数ということで、求人をして確保できていないという都道府県別。それから、必要医師数というのは、求人はしていないけれどもほんとうは必要だというデータでございます。それが都道府県別と19ページが診療科別ということでございます。
それから最後、説明は省略させていただきますけれども、別紙になっていますが、二次医療圏別の人口10万人当たり医師数ということで、都道府県の医師の偏在ということが言われておりますけれども、さらに都道府県を区切って、医療法に定める二次医療圏の単位で整理をしてみるとこうなるというデータでございます。
ご説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【安西座長】 ありがとうございました。
厚生労働省からもご説明をいただきましたけれども、先ほどの文部科学省の説明も含めて、何かご質問があればいただければと思いますが、いかがでしょうか。
【濵口委員】 よろしいでしょうか。
【安西座長】 どうぞ、濵口委員。
【濵口委員】 ちょっと思いつきの発言なんですけれども、医師不足で特に最近問題になっていますのは、地域の基幹病院が医師が足りなくて非常に厳しい状況にある。それがさらに地域差があるという問題があります。そういう実態をつかむようなデータというのは出せないものなんでしょうか。
【安西座長】 ありがとうございます。両省、いかがでしょうか。どうぞ、文部科学省さん。
【茂里視学官】 これは厚労省からいただいているデータをもとに簡単に整理したものでございますが、お配りさせていただいた「文部科学省の医師不足対策」という冊子がございます。こちらの32ページに、簡単ではございますが、一番充足率が高いところと低いところだけをとったデータをご用意させていただいています。なお、濵口委員からのお話を受けて、必要なものがありましたらまた改めて整理をしたいと思います。
【安西座長】 ありがとうございます。データもやはり大変大事でございますので、ご希望の何かデータが欲しいということがありましたら、今手元になくても両省のほうで考えていただくようにいたしますので、どうぞご遠慮なくおっしゃっていただければと思います。
【桑江委員】 大体、医師の数というのは、やはり病床あるいは在院日数というところが非常に大きなデータだと思うんですけれども、各国のそのデータを比較したのをいただいたんですが、病床利用率に関して、ベッドはこのぐらいあるんだけれどもどれぐらい利用されているかということが、どうしてもこのデータではないので、ちょっとそこで立ちどまってしまうことがありまして、もし持っていらしたらお願いできたらと思います。
【村田医事課長】 ちょっと今、手元にはございませんので、次回、ご提出させていただければと思います。
【安西座長】 ほかには。どうぞ。
【山本委員】 大学の定員を増やすという話は、マクロの指標はよくわかりますが、研究、教育、臨床をやっている大学病院の、メインの大学病院だけで結構ですが、学生を教育し病院で働き研究にも携わっていると、一体医師が何人働いているのか。各大学別の数字が、文部科学省、厚生労働省を見てもなかなか見つからないものですから、もしわかりましたらぜひお願いしたいと思います。
【黒岩委員】 全国医学部長病院長会議会長の黒岩でございます。今、医学部の学生は全国に45,000人おりまして、医師の資格を有する医学部の教員あるいは医科大学の教員を合わせますと46,000人と言われております。医学部卒業でない教員の方は含まれておりませんが、そうしますと、学生1人に対して教員が約1名、1対1、平均いたしますとそういうふうになっているかと思います。
【山本委員】 今の問題に関しまして。そこは数字が出ておりますので私どももわかるんですが、1つ1つの大学が何床の病院を持って、どのぐらいの医師が関与しているかの数字が見えないので、もしわかればということでご質問させていただきました。
【安西座長】 やはり各地域ごと、あるいは大学病院ごとのそういう数字も大事だと、私も思いますね。
よろしいですか。じゃあ、今井委員、どうぞ。
【今井委員】 先ほどのご説明の31ページですね、この青い色の、人口10万人当たりの医師数の分布というものがございますけれども、こういう人数で分布を見ざるを得ないというのはよくわかるんですが、実際に私、札幌医大の学長を6年間していましたけれども、その広さの要素というのが全くここには出てこないんですね。ですから、一見、随分多いように見えるんですが、全くそうではなくて、広いということはここには全く出てこないですね。ですから、そういう要素をやはり加味していかないと、これからは実態と合わないのではないかと思われます。
それからもう1つ、似たようなことなんですが、医師数とそれから人口何人に対して医師数が何人という場合のもう1つのファクターは、先ほど女性医師の数のことが出ていましたけれども、今はもう三十数%になってきているわけで、これからどんどん女性医師が増えてきますよね。そうすると、実労働として女性医師の働く生涯の時間というのをきちんと計算すると、おそらく男性に比べて数字的にはかなり下がるはずなんですね。ところが、女性医師が増えてくるということで、ほんとうにこれ、実際に医師の実働時間として増えているかということについては、やはり疑問がありますので、そこも計算をちょっとし直す必要があるのではないか。育児とか出産とかにかかる時間は相当なものがありますので、そういうのを加える必要があるのではないか。
それから、医師免許を持っていても行政の方とか、そういう方もみんなここに入っているわけですね。そこも少し区別する必要があるのではないか。
ということで、結構大変ですけれども、もうちょっと実態に近いほうが、数字を見るときにわかりやすいと思います。
【安西座長】 ありがとうございます。それじゃあ片峰委員、それから平井委員、それから矢崎委員でお願いします。
今日は、15時近くまで、第1回でもございますので、それぞれの方からご意見を伺うという時間をかなりとりたいと思っております。データにつきましてはいろいろとあると思いますので、個別にでもよろしいんじゃないかと思うんですね。今、3人の委員にそれぞれコメントいただければ。どうぞ。
【片峰委員】 厚生労働省データの12ページ、13ページ。これは、医師数の地域格差の問題とかあるいは診療科間格差の問題を抜きにしたところで、要するに日本全体として需要と供給がどうかという非常に大事なデータだと思いますね。ただ、需給予測というのは非常にいろんなファクターが関与するのであって、どういうファクターを予測に採用するかということでもう全然変わってくると思います。このデータだと、2020年ぐらいを境に供給と需要が逆転するということになりますが、この長谷川先生のシミュレーション以外のシミュレーションもおそらくあるんではないかと思うんですが、別のシミュレーションではどうなんでしょうか。
【村田医事課長】 正直、私も全部把握しているわけではございませんけれども、今のお話のとおり、需給については、どういう前提を置いて計算をするか、どういう医療の提供の姿を想定するかによって、ある意味ではかなり変わり得るというのが正直な感想でございます。
【安西座長】 どうぞ、平井委員。
【平井委員】 鳥取県知事の平井です。全国知事会を代表しまして今日は参加をさせていただいております。今日、こうして国のほうで文科省それから厚生労働省さらに総務省をまたぎまして、各地域で大変な問題になっております医師確保の問題につきまして、医学部の定員などを中心とした議論を始めていただいたことを、高く評価をさせていただきたいと思います。私は鳥取県、山陰からやってまいりました。先ほど、竹中会長に名刺を差し上げましたら、カニの写真がございまして、おいしそうだなとおっしゃるんですが、おいしそうではなくておいしいんです。ぜひ皆様にまた山陰のほうにもお出かけいただきまして、医療の実態も含めてごらんいただければなと思います。
今、ライフ・イノベーションということを鈴木副大臣がおっしゃいました。大賛成です。これから、そういう生命科学だとか健康づくりを国の柱として成長戦略に据えるべきではないかと思います。鳥取県でも、鳥取大学の中で、実は、マウスに人間の遺伝子を組み込みまして薬剤に対する反応をマウスの段階で検証してしまおうという、そういう遺伝子工学に基づく研究実証事業が始まっております。4月にその実証棟といいますかインキュベーション棟がオープンするわけでありますが、全国で初めて県が設立して国立大学病院の中に設置をするというような形態をとらせていただきました。これが完成しますと、マウス、ラット、さらにサルと順番にやっていました臨床実験が、1回のマウスの実験で終わってしまうわけでありますから、医薬品開発に大変な影響があるんじゃないかと期待をいたしております。こんなようにさまざまなアプローチをして、これからの国づくりにかかわるような医学の実用化ということを目指していくべきではないかと思います。
それで、この医師の問題でありますが、地方の立場から申しますと、全然足りないです。厚労省の村田さんのほうからお話がございました。先ほども片峰先生がご指摘をされましたけれども、12ページのグラフ、大変によくできていると思います。こういうグラフを見ると、この検討会は要らなくなるということではないかと思うんですが、大切なのは現状がどうかです。現状を見ていただきたい。2010年、このあたりが現在の数字だと思います。これをごらんいただきますと、どんな需要形態をとったとしても医師が足りないんです。この実態に基づいてどういうふうに解決をしていくかということでありまして、13ページの下のほうに、需要モデルの前提条件が置いてあります。これを拝見させていただいて、私は幾つか問題を感じます。
これは今後の審議の中で議論していただければ結構かと思いますけれども、先ほど来お話がありますように、1つは、医師の構成が変わってきております。構成は男女別がまず変わってきている。女性の医師が増えてきておられます。これは社会全体で当然ながら受け入れるべきだと思いますし、女性医師を活用して、そして男女共同参画のもとに医療現場を導いていく、そういう努力をしなければなりません。それにふさわしいことで、片方で厚生労働省がワーク・ライフ・バランスということを、内閣府を含めてやっているわけでありまして、この医療の現場もまさにそのワーク・ライフ・バランスを求められるところです。そのことがここの需要モデルの中に入っていません。
それから、2つ目に、専門医制度が大変に発達してきております。これは地方の現場として、それは当然だとは思いますけれども、ただ、何か治そう、いいアプローチをしようと思うと、専門医さんのいろんな細分化された領域が出てきておりまして、昔であれば外科の先生にかかったら何でも治してくれたとか、内科に行ったら何とかなったということではなくなってきておりまして、こういう先生、こういう先生、こういう先生と複数取りそろえないと医療的なサービスが供給できないということになってきております。こういうような状況を入れますと、この需要データというのはおそらく変わってくるだろうと思います。
それから、トリッキーなのは、こういうマクロの問題だけでなくてミクロの問題だということです。国全体で医者が足りるか足りないかで割り切ってやっておられるわけでありますが、今、現実問題、研修医制度がうまくいっているかというと、地方部に行くほど、うまくいっているという評価は低くなっております。それは、結局、お医者さんが都会に逃げてしまっている材料になっているからです。こういうように地域に差があるわけでありまして、その辺もやはり配慮の中に入れないと正確な議論ができないと思います。
そういうことで、ぜひ皆様にもミクロの状況、それぞれの病院が果たしてちゃんとした医療サービスを提供することができるだろうか、それも、さまざまな要件を入れてできるかどうかというところで、ご判断いただくべきだと思います。
【安西座長】 地域医療の問題は非常に大事でございます。副大臣も言われたとおりで、またデータについても、ある程度のミクロなレベルのデータで議論しないと解決していかないとは自分も思いますので、両省はよろしくお願い申し上げます。
今はちょっとデータのことについて、先ほどの資料についてのご質問を受けたいと思いますので。
矢崎委員。
【矢崎委員】 医学部の定員につきましては、先ほど副大臣がおっしゃられた医師不足や医師の偏在などのこのたびの事態を深刻に受けとめつつも、その時々の一時的な趨勢に流されることなく、深い現状分析を行ってかつ冷静に議論を行っていただければと存じます。
さて、その医学部の現状の定員でございますが、この文科省のグラフで、定員が相当多くなっています。そのときに、私は現在の医学部定員は設備、スタッフ数から見て限界に達しているのではないかと危惧しています。そこで、この医学部定員の増加に従って教員のスタッフ数がどうなっているか。確かに地域医療に関する寄附講座などで手当てが出ていると思いますが、実際にスタッフ数がどうなっているかという数字があれば教えていただきたい。
【安西座長】 これもよろしいですね。スタッフというのは、支援というとあれですけれども医師ではない、そういう意味ですね。
【矢崎委員】 教員数と、プラス、サポート体制。
【安西座長】 サポート体制ということですね。
ほかにはよろしゅうございますか。先ほど申し上げましたように、データ等々につきましては、個別にでも事務局におっしゃっていただければ、対応していただくようにこちらからも依頼をいたしますので。どうぞ。
【中川委員】 最初なのでお聞きしたいんですが、この検討会は何回ぐらいを予定していますか。
【新木医学教育課長】 回数は、これからご審議いただきながらと思っておりますが、大体1年ぐらいで意見の取りまとめをいただければありがたいなと、現時点ではそう思っておりますが、またこれからご審議の状況をご相談しながらと思っております。
【中川委員】 その上で申し上げたいんですが、本日の第1回のこの検討会は全国的に非常に注目度が高いです。この検討会の位置づけを委員の皆様と共通認識を持ちたいんですが、鈴木寛副大臣が冒頭おっしゃったライフ・イノベーション、新成長戦略の中の位置づけでこれを検討会で議論することではないと思いますよ。地域医療が崩壊しているという現状の中で、ほんとうに緊急の課題だということで検討する会で、そのことはやっぱり共通に認識していただきたいなと思います。
それで、今日、第1回目ですから座長の進め方はブレーンストーミングされてるんだと思いますが、現在の医療、医学を取り巻く状況について、もう少し詳細に両省から説明が必要だと思います。それで、不足はどこにあるのか。地域間なのか診療科間なのか、大学病院なのか基幹病院なのか、すべての医療機関なのか、それから原因は何なのか、絶対数なのか偏在なのか、新医師臨床研修制度もありましょう、そういうことの整理をまず第1回目にしないと、論点が分散するんではないかと思います。
その上で一言申し上げますが、厚生労働省の資料3の11ページの平均在院日数の、日本が33.8日とあります。以前から申し上げているんですけれども、慢性期も全部含めた平均在院日数と急性期だけの諸外国と比べてどうするんですか。そういうことを出しているから文部科学省のこの青い冊子にも同じものが出るんです。14ページ。こういう資料を前提には議論はできませんので、ほんとうに注意してください。
【安西座長】 両省からのそういう地域医療等々に密着した説明というのは非常に大事だと思いますし、また、正確なデータが大事だと思いますが、第1回といたしましては、もちろんいろんなバックグラウンドの方がおありだと思いますので、本日はそれぞれの委員の方から少しずつでも、はっきりしたご意見でも結構でございますので、伺うべきではないかと思います。よろしゅうございましょうか。
先ほどから何度も申し上げておりますように、データにつきましては個別におっしゃっていただければ結構ですので、貴重な時間でございますので、ご意見を伺うステップに入らせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
【濵口委員】 医師の需給も重要なんですけれども、実際、病院を動かす場合、コメディカルの需給も見ながら物事を考えていかなきゃいけないと思います。特に、ナースは今非常に不足している現状がありますので、そのデータも織り込んでいただければと思います。
【安西座長】 そうですね。それもおっしゃるとおりだと思います。
【茂里視学官】 ありがとうございました。それでは、ただいま頂戴いたしましたご意見を厚生労働省と文部科学省のほうで一旦整理させていただきまして、どのような形でご説明申し上げるか、また座長と相談しながら、次回以降、進めてまいりたいと思っております。よろしくお願いします。
【安西座長】 私ばかり申し上げるとあれですけれども、この検討会で扱う内容というのは国民的にもまた地域的にも大きな関心事であることは理解しておりますので、できるだけ早いスピードでしっかりした議論ができるようにやらせていただければと思います。ぜひご協力をお願いできればと思います。
それでは、今申し上げましたように、今日はそれぞれの委員の皆様からのご意見を伺えればと思います。3時までということになっておりますので、すべての方にご発言いただきたいので、大変恐縮でございますが、その時間は事務局によると3分とこの手元に書いてあって、誠に申しわけありませんけれども、お互いにご協力をお願い申し上げます。
それでは、今井委員から聞かせていただきます。
【今井委員】 私は、今の、どういうポイントで話を進めるかということが非常に重要だと思うんですが、地域医療が直ちに困っているという現状を十分認識した上で、全体の枠組みについても少し発言させていただきたいと思います。
まず、地域医療を担う医者が重要であることはもう現場の医者ですから間違いないんですが、そのほかに、今後の医療を担うような研究をする方も非常に重要であると考えております。ここにはちょっとしか出なかったですけれども、そこも非常に我が国では枯渇しつつあるという現状がございます。これを考慮に入れないでやっぱり議論はできないと思います。
それからもう1つは、行政に携わる方とか、ちょっと一見直接関係ないように見えるけれども我が国の医療ということを考える場合には非常に重要な役割を担っている方、そういう方のことも十分に考慮に入れながら考えていく必要があると。なかんずく、現場で困っている地域医療について、その全体のプロポーションを見ながら、しかもある程度成熟した国としての医療の体制をきちんと整えていくためには、やはり展望を持ちながら地域医療に従事する人たちを、今ではとても足りないので十分に増やしていくということが大事だろうと思います。
今、既存の医学部に何人かずつ増やしていますけれども、これは先ほど矢崎委員からも出ましたが、教員も増えていなければその周りもなければ施設もないという状況の中で、そこを現場に強いるというのはやはり限界があると思います。先ほど私が申し上げたような観点に立てば、むしろ新たな医学部として立ち上げていくほうがずっと早いのではないかと考えております。
以上です。
【安西座長】 ありがとうございます。
それでは片峰委員。
【片峰委員】 先ほども申しましたけれども、医師の総数の問題も1つあると思うんですが、やはり医師のアロケーションの問題というのが非常に大きいと思いますね。1つは地域の問題、それから診療科の問題、2つあると思います。私のところは長崎という土地柄なんですけれども、やはり本学の卒業生、なかなかやっぱり残ってくれる学生は少ないですね。その結果として、やはり地域医療――特に長崎県は離島、僻地というのをたくさん抱えてございますので、大変な状況になっております。その中で、先ほど文科省からもございましたけれども、地域枠をどんどん増やす。あるいは、うちの場合、すべての医学部の学生は1週間から10日ずつ離島に出すんです。そういった離島医療実習等々の効果も確かに上がっています。またおいおいデータをご説明する機会があればと思います。
だけど、抜本的なところは出口の問題だと僕は思います。だから、ぜひお願いしたいのは、これは医学部定員の検討委員会ですから入り口ということになると思うんですが、やっぱり出口です。ここも一緒に議論しないと、おそらく問題の解決にならない。もう少し突っ込んで言わせていただきますと、これだけ医療崩壊、医師不足が言われている中で、国民の税金を使って医師を育てているわけですね。その中でやっぱり公益を観点にして、ガバナンスを発揮するべき時期に来てるんではないかという気が僕はします。それは多分なかなか難しいんだろうと思うんですけれども、出口のところで何らかの対策を打つことと一緒に入り口の問題を考えるということが、重要じゃないかと考えます。
【安西座長】 ありがとうございます。
それでは栗原委員。
【栗原委員】 今までのご議論の中で出てきた重要なことが幾つかありますが、私は、入学定員の問題は数だけの問題ではなくて、医療制度全体に係ってくると考えています。医師の数が削減されてきたのは、医師が増えると医療費が高騰するという理由からでした。従って、人口1,000人に対して医師は1.5人という基準に従って医科大学・医学部は医師削減に協力してきました。しかし、診療科が細分化され、地域や診療科における医師の偏在が問題となり、医師が不足しているということで入学定員を増やしつつあります。医師を増やすということは、単に数だけの問題だけではなく医療制度そのものに係わる重要な問題だと思います。
また、どのような医師を育成するのかということも重要で、これは医学教育の質ということになるかと思います。医学部入学定員を増やして多くの医師を育成するためには、質の高い教員を増やし、相応の施設あるいは設備等が必要だと思いますので、これらの点についても十分配慮する必要があります。また、医師の育成には多額の資金が必要です。日本私立医科大学協会の調べですと、医師を1人育成するためには1年間で約1,700万円ぐらいかかります。また、国公立医学部・医科大学と並んで、私立医科大学にも多額の公費が投入されています。医学部の入学定員が増えれば公費の負担も相応に増えます。入学定員増を考える前に、先ず今の医療資源をどうやって有効に活用して、問題を解決するかということについても十分考慮すべきと考えます。
【安西座長】 ありがとうございました。
黒岩委員。
【黒岩委員】 全国医学部長病院長会議の黒岩でございます。
この検討会におきまして重要なテーマとしては2つあるかと思います。地域における医療崩壊に対してどういう対策が立てられるかという問題が1つと、あともう1つは、医学部の入学定員の適正数はどこら辺にあるかという、この2点かと思います。
まず、第1点目の医療崩壊の問題は、特に地域の公的病院を中心とした医師不足というものをいかに解消するかという問題からスタートしたものでございます。これにつきましては、医師の数の問題だけではなくて先ほども話題となったコメディカルの問題、それから地域格差の問題、診療科間の格差の問題、あるいは勤務医の労働環境の問題など、複合的な要因を総合的に考えて、広い視野に立った総合的な対策が必要ではないかと考えております。
それから、第2点目の適正な入学定員のことに関しましては、医師数がどれぐらいに将来なるかという問題、入学する学生の質の問題、それから地域にどれだけ定着するかという、三つの問題点があるかと思います。
医師数の問題につきましては、今、人口1,000人当たりの医師数は2.1人でございますが、2008年以降の1,221名の定員増によりまして、人口1,000人当たりの医師数は2032年には3人、2040年には3.4人、2050年には3.9人になると推定されております。現在のOECD加盟国の平均値3.1人を超える時代が来るであろうということであり、これについては慎重な検討が必要かと思います。
次に医師の質に関してでございますが、1960年代は医師が3,000人で、18歳人口が200万人でございましたので、18歳人口500人ないし700人に1人の学生が医学部に入ってきたわけでございます。今現在は、2010年現在で18歳人口が122万人、入学定員が8,846人でございますので、18歳人口138人に1人が医師になるという時代になってきております。今後も18歳人口は減少していきますので、いずれは18歳人口100人に1人の学生が医学部に入学するということになります。従って、学生の質の確保という面から考え、先ほど鈴木寛副大臣もおっしゃっていましたように、WHOで世界最高水準と自負していい医療水準を持っている日本の医療を守り、国民の安心・安全、利益を守ることを考えますと、医師の数だけではなくて質の確保ということが非常に重要であります。
そういうことで、将来は現在の入学定員8,846人がそのまま維持できるのか、場合によっては3,000人以下に大幅に削減する必要があるようなそういう時代が来るかもしれないという観点に立って、総合的な視野に立って考えていくべきかというように思っております。
【安西座長】 どうもありがとうございます。
桑江委員、お願いします。
【桑江委員】 都立多摩総合医療センターといいまして自治体立病院の産婦人科に勤めております。私、今、管理的立場の名前なんですけれども、ほとんど研修医時代と変わらない生活をしておりまして、当直も月3回やっておりますし、手術も帝王切開から癌の手術までやっておりますし、16年からこっち新しい医師研修制度になってからは若い方たちと日々やっておりまして、この20人の委員の方たちの中で、多分1病院勤務医としての立場でやはりお話をさせていただきたいと思っております。お手元に、今日、追加で1つ資料を急遽つくっていただきました。私が考えたことを短時間で皆様に説明するわけにはおそらくいかないと思いましたので、お時間のあるときにお目通しいただければと思います。
病院のある場所も多摩地域で、東京はかなり医者が多いと思われているかもしれませんけれども、その中でも多摩地域というのは、例えば産婦人科だけとってみても全国平均よりも少ないという、比較的過疎に近いようなところで働いておりますので、現場の危機感は日々身にしみております。それで、これは医学部の定員の話の会議ではありますが、根底にあるのは医師不足ですので、これから何人入れてそれが将来的にどういうふうになっていくかという話は、もちろん大きな視点では必要だと思うんですが、今現在、ここから10年、20年の間をどのようにして、そんな地域の方たちの命、健康を守っていくかという視野に立って、ぜひご議論いただきたいし、私も参加させていただきたいと思っております。
すごく危惧しているのは、一番最初に書きましたように、福祉的な面の医療はやっぱり圧倒的に不足しているわけで、同時にライフ・イノベーション的な成長戦略もやっぱりやっていかないと、おそらく世界の中で取り残されていくでしょうというところもありますし、人口が急減していく中で医療にどれぐらいお金を費やせるかという問題も同時にあるわけで、やっぱり直近の問題と長期的な問題、それから福祉的な問題と産業成長戦略的な問題を少し別途に考えていただいて、喫緊で何ができるかという問題の中にその医学部の定員の話をぜひ議論していただきたいと思って参加いたしました。
よろしくお願いいたします。
【安西座長】 ありがとうございます。
それぞれに貴重なご意見をいただいております。時間が短くてまことに申しわけありませんが、個別のご意見は事務局に直接メール文書でおっしゃっていただけるようにいたしますので、よろしくお願い申し上げます。
坂本委員。
【坂本委員】 私は、今133万人と言われている就業看護職の代表として、日本看護協会の副会長として参加させていただいております。病院勤務も随分長かったので、ドクターと一緒に働いている期間も長かったのですが、一緒に働いていてドクターたちを見ていると、看護師も同じですけれども、1点はやはり、やりがいのある仕事というところがきちんと議論されなくてはいけないのではないかと思っております。それとともに、女性のドクターが増えてきていますが、女性のドクターのワーク・ライフ・バランスは全く解決されずにこれまでずっと進んできました。そういう意味では、今この時点でこういう視点からもきちんと話さなくてはいけないと思っております。そして、すぐ医師を増やすかどうかということも大変大事なことですけれども、やはり医療全体から考えて、どのように医療を提供していくかということも大変重要な視点だと思っておりますので、一緒に働く仲間としていろいろなことを言わせていただきたいと思っております。
以上です。
【安西座長】 ありがとうございます。
それでは妙中委員。
【妙中委員】 私は国立循環器病研究センターから来ておりまして、大学とはちょっと距離を離れておりますけれども、先端医療の臨床及び研究をやっている立場から、あるいは、今日ちょっと鈴木副大臣も言われましたけれども、将来の日本の産業といいますか、ライフ・イノベーションといいますか、そういうようなことの振興という立場でちょっとお話をさせていただきたいと思います。
今日はあまり触れられませんでしたけれども、私の立場から非常に最近危機に感じておりますのは、研究医というか、研究に参加する医師たちが非常に減ってきているというのは、身をもって感じておるわけです。特に、我々、大学と直接関係がありませんから、MDが基礎研究なり開発研究に入ってきている数というのはどんどん減ってきているという現状があって、おそらくこれは将来10年、20年後にものすごくきいてくる問題だと思っております。
その危機意識からちょっとお話をさせていただきますと、やはりこの文科省の資料の11ページの「研究医枠について」というところで、あまり触れられませんでしたけれども、ここに取り組みが書かれています。その次のページに、東京大学における研究者育成プログラムというのが書かれていて、確かにこういうふうな、若いときから基礎研究をやれるような力をつけていくということも、それは1つ大事なことだとは思うんですけれども、ほんとうに我々自身、研究所でやっておって足らないのは、臨床の経験を持っておられる先生方で基礎研究に入ってこられる方が非常に少ない。これはもうものすごく、臨床のニーズというか現場を知らずに研究をするという危うさといいますか、目的をしっかり見定めることができないというところで、大きな問題があろうと思っています。
これは、全体的な医師数の不足もあります。それから、研修制度が変わったということもあります。それから、専門医制度の問題もあります。そういうようなこともありますけれども、やはり私は、そういう先生方がたくさん基礎研究に入ってこれるような環境というのがすごく大事なことだと思っています。桑江先生も、「優れた研究医の養成」ということでちょっと書かれておられますけれども、私もこの意見に非常に共感するところがあって、やはり臨床経験を持っておられるような方々が入ってこれるような制度というのがすごく重要なんじゃないかなと思います。
この「文部科学省の医師不足対策」のところで、25ページに「学士編入学の状況」というのが書かれていて、これはちょっと「地域医療を担う人材」のところに書かれていますけれども、私は、ちょうどこの制度が始まった時期に大阪大学で学生をしておりまして、ほかの学部を卒業された方々が編入してこられたのを経験しております。ねらいはこういういろんな多様な知識を持っておられる方が医学研究に将来入ってきたらというようなことで考えられたんだと思うんですが、実は、入ってこられた方々はほとんど臨床の先生になって出ていかれて、基礎研究をやっている人なんか全然いないというのが現状だったように思います。
これはお願いでもありますけれども、この学士編入学の状況というところの調査、これはおそらく地域への定着という観点で書かれたんだと思うんですけれども、別の観点で、研究医としての例えば学士編入学の方々の問題意識であったりとか進路であったりとか、できたらそういうのも調べていただけたら、将来的に役に立つんじゃないかなと思います。繰り返し言いますけれども、地域枠としての学士編入学と、多様な人材を育成するという意味でのものは、ぜひ分けて調べていただいて、将来のこういう研究医の良質なものにつながっていければと思っています。
以上です。
【安西座長】 どうもありがとうございます。
それでは竹中委員。
【竹中委員】 私はアステラス製薬の竹中でございます。私自身、医薬品での研究開発を経て、今、経営を担当しております。
医薬品の医療における重要な役割というのは皆さんもご認識いただいていると思いますが、医薬品の研究開発において、欧米で、FDAとかEMEAのような行政機関あるいは製薬会社で多くのMDが現在働いており、医薬品の研究開発の促進をしております。日本におきましても、最近行政機関、製薬企業で働くMDが少しずつ増えておりますが、PMDAではMDを募集していてもなかなか集まらない。一方、製薬企業のほうも、欧米に比べてMDが非常に少ない。それが一因かもしれませんし、全部の原因ではございませんが、日本での未承認薬の開発とかいろんなところでの重要な医薬品の開発に後れも出ております。医薬品の研究開発におきましてMDがより必要になっています。したがいまして、今後、この会において、PMDAのご意見、あるいは日本製薬医学会という製薬会社で働くMDの会からご意見を聴取していただいて、我々の産業におけるMDの活躍をご理解いただけたらと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【安西座長】 ありがとうございました。
いろいろな立場、いろいろなご意見をいただいて、ほんとうにありがたい限りであります。これをまとめていくのはかなりのエネルギーが要ると思いますので、よろしくお願い申し上げます。
それでは丹生委員にお願いします。
【丹生委員】 兵庫県丹波市で住民活動、地域医療を守ろうと活動をしております、県立柏原病院の小児科を守る会の丹生と申します。どうぞよろしくお願いします。
医学教育や医療に関しては、私、全くの素人でございまして、この検討会では、皆様のさまざまなご意見を伺いながら、守る会の活動を通して感じたことなどを含めて私なりの発言ができればと思っています。また、今回、この委員を引き受けるに当たって、地元の新聞記者さんに、どのような視点で検討会に臨みたいですかということを尋ねられたんですね。そのときにぱっと浮かんで、「これから子供が大学医学部に入る母親としての立場、母親としての視点を持って」と答えたんです。それをよくよく考えてみると、実際自分の子供がお医者さんになることはまずないとは思いますが、大学医学部というところでどのような知識や技術やまた考え方を身につけて、そしてお医者さんになってもらいたいかということを、大事に考えていきたいと思います。
また、それを取り巻く環境、特に指導するお医者さん、先生方の労働環境ですとかコメディカルを含めた教育環境について、大変関心を持っております。また、大学の入学定員を増やすということで地域枠というアイデアが取り入れられていますが、ほんとうにこれはとてもよいことだなと私なりにも感じております。そのような医学生さんが実際にお医者さんになって地方で勤務するというきっかけになるということで、とても有効だと感じています。しかし、やはり都会でも勤めたいとかそういうふうに思うのは当然のことでもあると思いますので、定着ではなく、定着しなくてもそういうことも経験した上でさまざまな病院で循環できる、国としてのそういう制度づくりを考えるようなこともできたらいいなと感じております。
これからよろしくお願いします。お世話になります。以上です。
【安西座長】 ありがとうございます。
永井委員にお願いします。
【永井委員】 私は全く医学部も持たない大学の責任者であります。医師養成に貢献したとすれば、法律ですけれども私のゼミから3人医学部へ入って医師になった、子供1人を医師にしたと、そのぐらいの寄与しかしていませんけれども、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。
中川委員が先ほど、ここでの近々の課題として、地域医療における医師不足だという問題提起をされておりますが、それに絡んで、どういうような医師の数と、それからどういうような専門性とか人間性とか。今、人間性については丹生委員からちょっと、地域医療における医師の人間性とか、違うのかどうかわかりませんが、その特異性というのがあるのか。それから、専門分野でも地域医療についての専門分野、かなり汎用的な医師が必要なのか専門的な医師が必要なのか。そういうところによって全部、養成するシステムが違ってくるのではないかと思われるわけで、先ほど広域性ということもどなたかおっしゃっていました。やはりこれは単に数だけじゃないと。広域医療に当たる地域医療となれば、その移動の時間等によって単に人数比の問題ではないと。というような形で、地域医療の場合は需要の特異性をもう少し絞っていかないといけないのではないか。
それから、供給の特異性という場合でも、そういった地域医療の場合の医療システム、体制というのを、そのサポートも含んでどういうようなものがいいのか。それは医師の数だけでは割り切れないのではないかというような問題がございます。さらに、供給の問題では、その定着性が。もし定着が悪いのなら、いくら供給してもこれはイタチごっこ、賽の河原積みみたいなものになってしまう。そうすると、定着性を図るための体制、これは待遇面も含んで社会全体のサポート体制が必要なのではないか。鈴木文科副大臣がいますけれども、財政も含んで地域医療に当たる人たちの待遇面も考えないと、定着性がなければいくら供給しても意味がないんではないか。そういうふうに、地域医療に限っても需要の特異性、供給の特異性というものを絞った議論が必要なんじゃないか。
さらに、もうちょっと広く言いますと、先ほど鈴木副大臣がおっしゃったような点から言えば、我が国の国際貢献ということからの医師、医学教育といったものも考えていくと、例えば発展途上国におけるインフラ整備として、衛生面、環境面というのは大変な問題で、そのあたりにお金が使われているのではなかなか経済発展とか社会発展に結びつかない。そういうODAの一環としての医師というものも、やはり今後の我が国の医師養成の中において必要なのではないか。国際的な問題というのは、先ほどちらっと意見も出ておりましたが、薬開発だけではなしに、もっと医師の業務拡大という広い意味で、そのあたりも考えて医師養成をどうしていくのか、我が国における医学部の人数をどう考えるかを考えていくという、そういう大きな視点も、近々の課題ではないかもわかりませんので、地域医療だけではなしにもう少し広くここの審議がなされればと思っております。
【安西座長】 ありがとうございます。
それでは中川委員。
【中川委員】 第1回目ですので、各論の細かいことは申し上げるつもりはございません。
今回、厚労省の資料の15ページにありますが、必要医師数の実態調査で、1.1~1.2倍という結果には、現場の感覚からいうと驚いたと思います。ところが、やっぱりこれは、短期的な対処方針としては、絶対数ももちろん十分ではありませんが、日本の医師不足の特徴として、偏在というものが一番大きいんだと思います。その解消策をどうするかが、この検討会の1つの重要な論点かなと思っています。これは医学部の入学から5年生、6年生になった臨床実習をどうするか、それから臨床研修も含めた一体的な改革で、偏在をどう解消するかということの知恵を絞るんだろうと思います。
それから、来年度から8,923名という医学部定員で行けば、2020年、2025年には、例えば目安としてはG7の平均並みにはもう到達するわけですね。そのとき、黒岩委員が言ったことに賛同するんですが、将来的に医師数が過剰になった場合を考えると、やはりこれは既存の医学部の定員数の調整でやっていくべきだと思います。事務局に次回資料を出していただきたいんですが、歯科の先生方、非常に苦労しています。語弊を恐れずに言うと、非常に悲惨な状況というか大問題になっています。定員割れの大学が続出しているわけですね。そういうことも考えれば、今井委員はおっしゃいましたけれども、医学部を新設するということは現時点においては到底あり得ないと、第1回目なのであえて申し上げたいと思います。
以上です。
【安西座長】 ありがとうございます。
それでは中村委員にお願いします。
【中村委員】 私の立場は国立大学の病院長ということで今回ここに出席させていただいていると思いますが、今回幾つかのデータを見せてもらって、それから、これまでの資料を少し拝見したんですけれども、まず全般的な話として、大学の医学部の使命というのは、基本的には医師を養成、人材を養成することと、それと、新しい医療をつくっていくことですね。そして、地域に安全で高度な医療を提供するという、3つの使命があるということは基本だと思うんです。今一番言われているライフ・イノベーションということの中で、戦略をすすめるには新しい医療をつくるというそのエネルギーが非常に重要であると思います。しかし、その中で、医師が不足している、偏在しているという問題が起こっており、非常に難しい状況に来ています。
そこで、今回データを見ていて一番印象に残ったのは、地域枠をつくったことで、やはり地域に定着する人が生まれてきているということで、それは国立大学病院が非常に頑張って努力しているということだと思うんですね。一方それだけ学生が増えたけれど、医学教育には1人の学生に1名の教官がいるという状況に対して、とてもじゃないけどそういう形で教官は補えないで、ある意味でいったら、既存の定員を法人化してずっと増やさないで頑張って医師を養成しているというのが、国立大学だと思うんですね。その中で、国際的な競争をしながらイノベーションに勝っていくということをどうやっていくかということが、非常に課題になっている。
僕が資料として見たいのは、一般的なデータで大学生が何人増えたという話だけではなくて、この5年間で例えば一流誌に出している内科の論文が日本からどのぐらい出ているか。それから、特に韓国と中国からどのぐらい出ていて、日本はどこの位置に来ているか。で、大学のランキングの中で日本の大学はどこもランクを落とされている。評価の仕方に問題があるということで批判はしているんですけれども、医療に関する限り、非常に大規模化して戦略的に高評価を獲得する方策が諸外国では講じられている。
そういう状況がある中で、医師不足で学生を20名とか10名増やしたらいいと実施されていますが、僕は、地域の偏在の解決に関しては、若手の医師が、地域で仕事をしていてキャリアパスで自分がどんな医師になっていくか見えなければ、みんな、都会で安全な、人の多い場所に集まるのは当然だと思います。地域に居てもそこで次のキャリアとして、例えば専門医の資格を取っていけるようなシステムを見せてあげて、そしてはじめて、自分が生まれたところで医者をしていきたいというモチベーションが働くような形のプランをつくらない限りは、そこには行かないと思います。滋賀医大などを見ていると、少しそういうふうな芽が出てきていて、既存の医学部が努力していることを地道に育てることが、やっぱり一番早いのではないかと思っています。
そういう中で、先ほど中川委員の、医師を増やすこととライフ・イノベーションということとは切り離されるということは確かに1つの見方として必要だと思うんですけれども、今の大学が置かれている環境の難しさというのは、医師養成と新しく医療をつくっていく研究的な課題と両方を解決しなければ、片方だけ解決したら日本の将来がよくなっていくということはない。
そういう意味では、今の大学が置かれている状況がわかるようなデータが欲しいということと、この10年間、15年間に新しい講座ができているんですけれども、ほとんどの国立大学は人を増やさないで定員を回している。それから、定員がないので5年の有期で雇うというような形でやってきている。それで諸外国と対抗しながらどうにかやっている。その結果、規模としては大きくならないから、臨床試験をするためには大学の規模が外国に比べて小さいので、非常に経費がかかって共同研究ができない状況になっている。このように、今置かれている状況は非常に難しい。そういう大学の置かれた状況を横に置いておいて、20名増やすのは既存の大学では難しいんじゃないかという話じゃなくて、トータルな意味で今の既存の医学部を強化していくことで、学生定員も少し増やしていくことを考えていったらいいと思っています。
また、僕は、さきほども申しましたが、一番重要なのは、若い人たちにキャリアプランが見えるようにしてあげないと、やはり地域には行かないだろうと思っています。それはネットワークでもいい、大学の大きな病院と地域の病院とのネットワーク、それから地域のネットワークをつくっていく。先ほど鳥取の例がありましたけれども、地域と大学が連携しながら、イノベーションも含めてアトラクティブにしていくことが重要なんじゃないかなというような感じがしています。
【安西座長】 ありがとうございます。
それでは西村委員。
【西村委員】 国立社会保障・人口問題研究所の西村と申します。委員の皆さん、大変すばらしいご意見をおっしゃったので、繰り返すことがないようにしたいと思っております。
結論を先に言うと、若干矛盾したことを申し上げます。どうしてかというと、この検討会は入学定員の在り方に関する検討、「等」がついておりますが、在り方、最終的には数だと思います。先ほどから意見が出たように、この問題は数の問題だけではないというのはまさにそのとおりであろうかと思いますが、しかし、数以外、あるいは数で解決できない問題を取り上げて議論したら、おそらく100以上の論点を議論する必要があって、座長が先ほどからおっしゃっていますが、最終的にまとまらないんではないかという印象を私は持っております。したがって、これからの会議の進め方については、まずやっぱり数から出発して、そこで数で解決がつかない話に一回ずっと深掘りして、最終的にはやっぱり数に戻るような議論の進め方をする必要があるんじゃないかという、ちょっと方法論の問題であります。
それに関して、どうしてこういうことを申し上げるかというと、実は私は、先ほどから少し話題になりました長谷川敏彦先生の18年度報告について、当時から若干違和感を持っておりました。おそらく当時の情勢から考えて、この後日本の医師がこれぐらいで済むというふうな予想は違うんじゃないかと思っておりましたが、結論を先に申しておきますと、別に長谷川さんを血祭りに挙げるつもりはないんですが、どうしてこういう数字になったかというどこが、例えば高齢化の影響はどの程度考慮されていたか、あるいは業務時間はどういうふうに考えられていたか、当時、男女の比率の話はどの程度真剣に考えられていたか等々、少しこれをチェックすることによって――くどいようですが、長谷川さんを非難するつもりはございませんが――どこが違っていたかという話をやっぱり検討すべきではないかと思います。それが1つのお願い。
それと関連して、私どもの研究所では、相当昔から少子化の話を皆さんにお伝えしてまいりました。しかし、残念ながら、わりと表面的な感じでこれがとらえられて、その結果、小児科医、産婦人科医が、確かに子供さんが減るということを通して、若干減ると。それが、ちょっとこの次の言葉は非常に注意深く聞いていただきたいんですが、過反応、つまり、お医者さんが過反応したという意味ではございませんが、結果的に必要以上に減ってしまうということになった。一体どういうふうな経過でそういうことが起きたかという過去の経緯も、少しチェックしたほうがいいんじゃないかと思います。
それからもう1つは、今申したように、数でっていうことで、あえて数だけではないということを前提に申し上げますが、先ほどから中川委員がおっしゃるように、私も、必要医師数実態調査の結果はとっても驚きでございます。やっぱりもう少しこの調査については、時間があればで結構ですが、精度の高い調査を目指すことが必要ではないかと思います。
以上です。
【安西座長】 ありがとうございます。
濵口委員。
【濵口委員】 現場で学生教育をやっていた立場で少し、今までの議論で出てない部分を主に話させていただきたいと思います。まず申し上げたいことは、医師の養成は非常に時間がかかるんですね。医学部6年出たらそれで役に立つわけではないんですね。そこから10年ぐらい現場でキャリアを踏んで、いろんなぎりぎりの条件の中で治療をやってて、ようやく一人前、ひとり立ちになってくるんですね。ですから、今、例えば医学部の定員を増やしても、これが、結果がエフェクティブな人材として使えるようになってくるまで15年から20年後になるんですね。ですから、その長期スパンの予測を立てて動いていかないと、数の議論といっても、単純に今100人増やしたら100人効果が出るかという話では全くないということをご理解いただきたいんですね。
もう1つは、おそらく日本はこれからどんどん人口減少になってきます。現在1億3,000万ぐらいありますけれども、2050年は9,000万ぐらいになってきますよね。そのとき一体どうなるのかということを想像しながら考えていかないといけないんで、今2010年に学生を採っても、この人たちが実際に使えるのは2040年ぐらいになってくるわけです。そのときはもう人口が随分減ってるんですね。こんなはずではなかったというふうにならないように考えていかないといけないと思います。
ですから、医師の養成というのは、現時点は従来の右肩上がりの日本社会の構造に基づいて設計していってはいけないと思うんですね。もっと柔軟なシステムを今新たに開発しなきゃいけない。そこのところでどういうことを考えていかなきゃいかんかといったときに、今この直近で1,500人程度増やしているこの人材の効率的な使い方というのを、まず検討していかないと、公共性というのは常に税金をどう使うかという問題もありますので、そこをご理解いただきたいと思います。
現場は今非常に疲弊しております。それはもともと100人の医学部に120人採ってますから。ですから、まずそこのところのカバーをしっかり手当てをしていただくということをやらないと、粗製乱造にどんどんなってくるだろうと。粗製乱造の究極の姿が、あまりこういうことは具体的に言ってはいけないと思うんですけれども、北のほうの旧共産圏の国にあります。戦中には4年生でだーっと出して非常に効果的だと言っておりましたけれども、この前も向こうの医学部の方と話していて、今の最先端の医療はそれではもう役に立たないと。ですから、質のコントロールが非常に大事なんです。
で、質のコントロールということを考えたとき、2番目に、先ほどから少し出ている議論ですが、キャリアパスの問題がございます。例えば、今、地域医療を支えるといって金銭的に縛りをかけて、6年の学業を終えたら9年その地域で働きなさいといったときに、僻地で1人、2人の立場でやっていた人間が、10年たったら最先端の医療は理解できないんですよ。まして、例えば、外科をやれといったら、一番不足している外科医はそこではつくれないんですね。学士入学も同じなんですね。30過ぎて入ってきたらもう外科医にはできないんです。20代にもう徹底してしごいてようやく一人前の外科医になる。ですから、質のコントロールというのがものすごく大事で、効率的に税金が使われるようなコントロールが必要だと思います。
女性医師の問題も出ていますけれども、これ、ネガティブな要素で考えてはいけないと思います。現場の女性の患者さんは、やっぱり同性の医師に見ていただきたいというのが9割方の要望なんですね。問題は、なぜ35歳でV字になるかといったら、ライフ・バランスが崩れてくるわけです。そこのところのバックアップを社会的にうまく進めないと、ただ税金を使ってコントリビューションがないファクターが増えてくるようになってきますから、今、そういうところもどういうふうな設計をやって、大学のシステミックなサポートをやるかということ。
それから、もう1つ、3番目の問題として、現場で一番問題になっていますのは、愛知県なんかで見てみますと一番今矛盾が生じていますのは、中小都市の基幹病院なんです。ほとんどは市民病院です。そこが医師が足りなくなる。大変はっきり見えているのが立ち去り症候群だとか燃え尽き症候群。40代半ばで、ある日バーンアウトしちゃうんです。もう耐えられない。土日もずーっと夜中まで働いている。1週間のうち4日も5日も当直するような状況がある。それは2つあって、1つはコメディカルを含めてバックアップするシステムがうまく働かないと、それから市のサポートなりいろんな公共的なサポートなしでありますと、医師をいくら投入しても、私たちの実感では、ざるに水を盛るだけですね。どんどん消えていきます、そこで。私達としては、貴重な人的資源をそういう形で消耗させてはいけないと思います。ちゃんと、そこへ投入したら生涯働いていただけるようなバックアップをさせないといけないと思います。
ですから、質の議論というのは非常に深いと言われて、難しいと言われますが、これを抜きにしてやったら、膨大な青天井の医師養成になってしまって、一体何をやってたかわからないという状態になりますので、やっぱり正確な議論が必要だと思います。
【安西座長】 ありがとうございます。
平井委員。
【平井委員】 先ほど若干話もさせていただきましたので、あまり重複しないように申し上げたいと思います。
マクロとミクロの話はぜひシミュレートしていただきたいと。マクロで確保されたからといって、地域のそれぞれの病院が確保されるとは限らない。例えばアジサイの花のようなものでありまして、1つ1つ小さな病院がきれいに咲かないといけない。そういうのがございますので、基本的には最後は現場の目線で考えてもらう必要があるだろうと思います。この辺は先ほども議論いたしました。
あわせて、数の議論だけでは解決ができないと思います。定員の話をするのとあわせてその周辺の話も我々はしなければならない。その中で解決策を見出す必要がある。特に、現在は明らかに足りないんですから。これに対するアプローチをまずは考えながらも、さらに定員増で回復できてくるところ、解決できていくところを整理しながら議論をしていくべきではないかと思います。
現場ではいろんなことをやっています。例えば、私どもで県立病院を抱えていますが、医師の現場の人たちからも評判がいい、やる気が出るのは、意外なことですけれども論文を書かせることです。実際に臨床もやりながら論文を書いてもいいよと、どんどん学会で発表してもいいよと、そういうのを支援する体制を組みますと元気が出ます。これはそういうものだと思いますね。人間は伸びたいからだと思います。あるいは、地域医療ということでいろんなことをやっていますが、日南町というところの病院では、福祉と連携をしまして、往診だとか対応だとかあるいは日ごろの健康相談なども含めて、地域全体で病院と結びついてどうやって患者をケアしていくかというシステムをやろうとしています。こういうようなこと。
あるいはITの時代です。ですから、県立の1つの病院で最近始めたんですけれども、アップルのiPhoneがあります。あそこに画像診断データに当たるようなものを送付して、現場を離れていても解析ができるようにして、実際に診断を下してもらうというようなことも可能にするとか。そうやってさまざまなシステムとあわせて、この医師不足の問題にどういうふうにアプローチしていくかを考えるべきだと思います。
それから、あと大切なのはカリキュラムのことでありまして、専門医をつくっていくのは1つの大きな筋道だと思います。今の濵口先生がおっしゃったように、質を高めるためにはそれは絶対必要です。例えば癌だとかそういうところにきちんとアプローチしていこうと思うと、専門の話が重要です。それとあわせて、先ほど、僻地医療をやっていても外科医はよくならないという話もありましたけれども、地域で医療をする、地域で一通り大体の病気は治す、大体の相談には応じられるという医師を育てるという地域医の養成のところは、1つの柱として、これから医学の1領域として認知をしていただきたいと思います。育ててもらいたいと思います。鳥取県でも鳥取大学の寄附講座をやりまして、そういうことを始めました。こうした周辺領域とあわせて、定員の議論はしていただきたいと思います。
【安西座長】 ありがとうございました。
矢崎委員。
【矢崎委員】 医師数とともに、最初に副大臣がおっしゃられたように、やはり幅広い分野で活動する医師の育成も、今日、大きな課題ではないかということです。専門領域において活躍されることも欠かせませんけれども、地域医療の立て直しや医学研究への貢献、あるいは製薬などの医療産業や、先ほどお話があった、我が国にとどまらずに国際的にも活躍する医師の育成が求められていると思います。
現在、文科省の医学教育のコア・カリキュラムも基本理念として3つの点が挙げられて、総合的診療能力の習得、地域医療への意欲・使命感の向上、そして、基礎と臨床の有機的連携による研究マインドの養成というふうになっています。しかし、今、アウトカムベースでの評価になりますと、必ずしもそれが実感されていないということが指摘されています。それはやはり、スタッフのサポートが乏しいということが大きな起因ではないかと思いますけれども、私としてはこのような視点からひとつ提案したいと思いますのは、モデル事業として、新しい構想の医学部創設もその対策の1つになるのではないかということです。その内容につきましては、私なりの考えもありますけれども、慎重に検討すべきではないかと思います。
そして、人材育成のアウトカムを比較しますと、おのずから医学教育の抜本的な改革への大きな推進力になるのではないかと期待されていますので、その方面からの検討もぜひお願いしたいと思います。
【安西座長】 ありがとうございました。
山本委員。
【山本委員】 最後でございますので、皆さんのご意見と当然重なることになると思いますが、私の立場を申し上げますと、この3月まで日本病院会という病院団体の長をしておりました。ですから、医師不足の問題はメインのテーマとして何年にもわたって議論をし、提言をしてまいりました。この4月でその長を去りましたので、比較的、個人で自由な立場で発言させていただけると思っております。
まず、医師が足りない、定員を増やしたらどうだという話でございますが、もう少し具体的にいうと、医師が足りないというのは、病院で働く医師が足りないということであり、さらに言うならば、急性期の病院で働く医師が足りない、これが実態だと思います。例えば、救急医療など交代制を要する診療科でも2交代制すらできない。すなわち、労働基準法が守れないといったような環境の中で医師が働いてきました。こういう問題をどう解決していくのかということが前提にあるわけです。その中ですでに話にでました地域偏在とか科の偏在といった問題は大きな問題でございますが、これをマクロの数の理論だけで解決することはできないだろうと思います。
臨床をやる医師は何のためにいるのかといえば、患者さんのためにいるわけですから、例えば、それぞれの地域の医療ニーズの実態が把握できているのかという問題があります。こういう病気がこれだけあって、この地域ではこのような治療や手術を行う環境が求められているとすれば、それを踏まえて医療資源の適正配置という仕組みの構築も一緒に考えていかないと、この問題は解決できないと考えています。 それからもう1つ大事なことは、研究者、特に研究者の途を志望する若手の医師が非常に少なくなったという問題です。この問題は非常に重要で、未来を考えたときに、研究が進まなければ日本の医療の未来は暗くなるわけですから、若手の研究を推進する体制の構築こそが大学の一番大きな問題だろうと思っています。そういう意味では、こういう場で大学病院の医学教育、研究、診療の在り方の見直しも含めて議論したほうがいいと考えています。そうしたことも視野に入れて、幅の広い議論の中で、最終的には定員の数に還元されるような形での議論をしていただきたいと、思っております。
【安西座長】 ありがとうございました。
それぞれ大変貴重なご意見、思いのこもったご意見をいただきまして、また、お医者様だけでなくその分野以外の方からも、しゃべる時間をきちっと守っていただきまして、ありがとうございました。いろいろご意見が出まして、需給の問題でありますとか、あるいは働く場のことでありますとか、あるいはもちろん看護師さん等々とのことも含めてサポート体制のことでありますとか、特に地域医療と高度先端医療またその人材、両方ですね、そういう問題、あるいは偏在のこと、あるいは、最後にありましたようなやっぱりこれからの医療ニーズの問題等々、もちろん税金の使い方等も含めて、あるいは女性の医師のことも含めて、大変貴重なご意見をいただいたと思います。
短期、もう今、緊急の課題だということもあるし、それから、長期的な課題もあって、またそれは予測が絡みますので、データといっても今あるデータだけで予測ができるのかということもあると思いますし、いろいろ難しい課題はあるかと思いますが、一言だけ私からも申し上げますと、私の周りには中学生、高校生等もいろいろいるのですが、医師になりたいってほんとうに心から思う子供たちが減ってくると嫌だなと、そういう感覚を多少持っております。今までは、医師になりたいと思う子供が多いのは当たり前だと思われていたかもしれませんけれども、だんだん現場の状況があらわになるにつれて、それよりももっと楽してもうかるところがあるんじゃないかというふうな風潮が広がってくるのは大変よくないと思います。
私の見た感じで申し上げますと、この検討会が、ほんとうはもっと早く立ってもよかったかもしれないところを、文部科学大臣のもとに、特に鈴木寛副大臣が推進をされて、非常にタイムリーにできたと思うんですね。この検討会への期待は非常に大きいと思いますので、今日いただいたご意見だけではなくこれからも出てくると思いますが、先ほどからありますように、これをまとめていくのは大変いろんな方向があり得ると思いますけれども、ジグソーパズルを全部はめ込んできちんとした絵にしていかなきゃいけないと思います。再三でございますけれども、ぜひご協力を賜りますようお願い申し上げます。
副大臣、何かあったら。
【鈴木副大臣】 すみません、ちょっと中座をいたしまして。まず来年の医学部教育を支える予算獲得に、及び大学附属病院の機能維持にちょっと携わっておりまして、中座をいたしました。
ほんとうにこの問題はいろいろな観点からの議論を積み重ねていかないといけないと思っています。皆様方のご協力でやっとこの検討の場ができましたことは大変ありがたく思っておりますし、忌憚のないご議論をいただいて、将来に禍根を残すことのない議論づくりに私どもも全身全霊頑張ってまいりたいと思っております。
私も高校生の状況等とも聞いておりまして、医学部志望者というものが潜在的にはかなり少なくなりつつあって、私がこの医療問題にこの5年ぐらい取り組んでおりますのも、そういう声を聞いて、いや、そんなことないと、もちろん職業に貴賤はございませんが、医師というのはすばらしい、かつ大事な、やりがいのある仕事で本来あるわけであります。しかし、残念ながら、さまざまな要因によって、若者たちに夢と希望を与えられてないというところを、何とかしていきたいということ。
それから、繰り返しになりますけれども、やはり日本の医療というのは、これまで大変なご努力の結果、世界に冠たる医療になっているということでございます。ここで育てた人材をということももちろんあります。もちろん、ここで生んだ付加価値、知恵というものを出していくということもありますが、それ以外にも、やはりアジアの中の一員として――先般もインドの首相顧問から話がありまして、ぜひアジアの若者も日本が育成をするという視点も持ってもらえないかと、こういうことも聞きました。かつ、研究もそうでありますけれども、医療のマネジメント、ガバナンスという視点も医学教育の中で入れていかなければいけないとも考えておりまして、そうした幅広いご意見をぜひ楽しみにいたしておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
【安西座長】 ありがとうございました。
それでは、最後のほうに移りたいと思いますけれども、特に今まで言い残した……。さきのほうにしゃべった方、こう言えば……。これが始まるとまたと思いますが。じゃあ、手短に。
【今井委員】 手短にいたしますが、大分論点が出てきましたんで、私、データとしてちょっとお願いしておきたいのは、確かに人口は少しずつ減るわけですが、高齢者は増えていくわけですよね。そういう、医療を受けなければいけない――もちろん小児だって医療を受けなきゃいけないですけれども、まあ、医療を受ける人口数、特に65歳以上の高齢者の数も非常に重要だと思いますので、より的確なデータがあれば、そういうのも出していただきたいと思います。
【安西座長】 ありがとうございます。
ほかにはよろしいですか。
【桑江委員】 少し言い残したことということで、1つには、ここでそういうことを言うと、また多分、質の問題になってしまうんですが、現場の医者としてすごく感じていることは、労働条件のことと、もう1つはやはり医療訴訟の問題なんですね。周産期に携わっておりますので、そこまで言ってしまうときっと大変なことになるというのは承知でちょっと言わせていただきますと、いつもその問題が頭にあって、それで結局去っていく方が後を絶たないと。
あと、もう1点は、やはり患者様側のニーズと私たちが提供できる医療の中で、どんどんその差が年々激しくなっているんですね。例えば、先日あった症例ですと、それは双子のお子さんで、片方の赤ちゃんがすごく小さいと。しかも8か月の前に破水をされて、私たちの周産期センターにお見えになりました。ですが、やっぱりその方のご家族が開口一番おっしゃったことは、「こうなったのは診療所の対応が悪いんですよね」ということなんですね。そうすると、やはりそれは仕方がないことなんだけれども、何といいますか、私たちとしてはやりがいがないなと。NICU満床なのに、何とか動かしてやっととった。けれどもやはり満足していただけないということが、現場としては年々その差が激しくなっている。これをどういうふうにしたらいいかは別として、今の不足している場所――確かに急性期病院であったりとか自治体立病院であったりということはあるんですが、そういった難しい症例を受けているところで、皆去ってしまうということは、やはり不足していることの大きな要因であると思いますので、一応述べさせていただきました。
【安西座長】 ありがとうございました。
それではよろしいでしょうか。まだまだ言い足りないということがあるかとも思いますけれども、先ほど申し上げましたように、個別にご意見をメールあるいは文書で事務局にお寄せいただければと思いますので。それは随時でよろしいですね。よろしくお願いします。
それでは、議事の最後に入らせていただきます。3つ目の、今後の進め方ということでございますけれども、今日、第1回でありますので、それぞれの委員の皆様からご意見をいただきました。次回以降につきましては、よろしければ、各分野の有識者からのヒアリングを行わせていただければと考えております。医師養成にかかわる大学の具体的な取り組みでありますとか、あるいは医師養成に対する社会のニーズでありますとか、あるいは国際的な諸外国のいろいろな状況でありますとか、そういったことについてヒアリングを受けられればと考えております。もちろん、そこでも、それぞれのご意見を伺える時間、場は当然あると考えています。
よろしいでしょうか。そういうやり方を第2回以降はさせていただければと思っております。現場が大変だということはもう自分としてもよく理解しておりますので、できるだけのスピード感を持ってまとめるように頑張れればと思います。よろしいでしょうか。よろしければ、ヒアリングのご希望があれば、それも事務局におっしゃっていただければと思います。ただ、そのコントロールはやらせていただきたいので、ヒアリングの人選あるいは日程調整等につきましては、私のほうに一任とさせていただけないでしょうか。そういう形でやらせていただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【安西座長】 ありがとうございました。
それでは、ヒアリングのご希望がありましたら、ぜひ事務局のほうへおっしゃってください。ヒアリングの人選、日程調整等はこちらに一任とさせていただきます。ありがとうございました。
それでは、最後になりますけれども、事務局から今後の日程等をお願いします。
【茂里視学官】 それでは、最後に事務局から今後の日程をご連絡いたします。大変申しわけございませんが、現在、各委員の先生方の日程を頂戴しているところでございまして、調整中でございます。年内のできるだけ早い時期に再度調整いたしましてご報告申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
【安西座長】 何か特に。よろしいですね。それでは、これで終わらせていただきます。お忙しいところ、ありがとうございました。
医師養成係
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線3683)、03-6734-2509(直通)
-- 登録:平成23年02月 --