資料3 事務局提出資料(これまでの検討会において出された主なご意見)

第6回終了時点

1.「数」や「質」に関する論点

[1]医師数の推計について

○人口は今後減少するが、病気が多くなる65歳以上の人口は今後増加してくることを考慮に入れるべき。

○地域偏在や診療科偏在といった問題をマクロの数の理論で解決することは困難。それぞれの地域の医療ニーズの実態に沿って解決していく必要がある。

○医師需要の将来予測を行うことは困難であり、米国を除いてどこの国もやっていない。

○需要は予測できないことを前提に、定期的に医師の定数を見直していくという仕組みを作るべき。

[2]将来の医療ニーズについて

○将来的には若い人が減って高齢者が増え、ケアの内容が大きく変わってくる。また、要介護者が増えていく。

○医療が高度化して複雑になればなるほどより多くの医者が必要。

○日本人の8割が病院で亡くなる時代となっており、かつては開業医が担当していた看取りは、病院の勤務医が行うようになってきている。

[3]財政、社会保障からの観点について

○地域のニーズを議論した上で、国民の税金としてどこまで払うのか、地域のお金でどこまでやるのかという議論をしていくことが必要。

○米国並みの医療サービスを日本で提供するならばもっとずっと医療費がかかるだろうが、医療費にそこまで支出することは難しいのではないか。

[4]医学部定員増に伴う質の問題について

○留年生が増えつつあるなど、医学生の学力低下という問題を考えなければならない。

○入学のときのレベルについてもよく考慮すべき。

○入学定員が増えればそれに見合った教員増が必要。教員候補者は、周囲の三、四十代の病院勤務者であり、これにより地域医療の崩壊を加速するおそれもある。

[5]医学教育の改革について

○各大学のミッションに合わせた教育改革をすべき。

○非常に多様なニーズがこの十年ぐらいで出ており、それに対応して医学部も機能的な分化をしていく必要がある。

○アメリカ型のメディカルスクールについては、賛否両論がある。

○米国のECFMGなどから要求される国際基準にこたえるためにも、我が国の既存の医学部の基盤を強化して、国際的に通用するような医学部としていくことが非常に大切である。

○国民がどういう医療を望んでいるかという視点が重要。

[6]今後の定員増について

○既存の医学部の体制を強化しながら、医学部定員増で対応をしていくべき。

○2022年以降は、医師が余って来ると推計されている。この余った医師をどうするのか、我々は将来にも責任を持たなければならない。

○現在の不足数をどうするかということと未来をどうするかということは分けて考える必要がある。

○東日本大震災による医師喪失・不足に対応する目的で、10年間の時限つきで東北大学医学部の入学定員増を提案したい。

[7]新設による対応について

○既存の医学部の入学定員を増やしているが、教員も増えておらず、周りの施設もないという状況である。この対応を現場に強いるのは限界があり、医学部を新設すべき。

○医学部が東西に偏在しているため、医学部を東日本に新設するべき

○しっかりした医学教育ができるようなシステムを作るために医学部新設を検討するのもよいかと思うが、医師数を増加させるためだけに医学部を作るのはいかがなものか。

○医学部を新設してから医師が働くようになるまで時間がかかることを考えると、教員などを増強しながら、今の医学部の定員増で対応して医師を育てていくべき。

○将来的に医師数が過剰になった場合を考えると、既存の医学部の定員数の調整でやっていくべき。医学部新設は到底考えられない。

2.医師の配置システム等に関する論点

[1]地域偏在について 

○地域偏在の問題では、人口に加えて面積も考慮していくべき。

○同じ県内でも相当の格差があり、都道府県ごとに見るだけでは不十分。

[2]診療科偏在について 

○救急や産婦人科、麻酔医が不足している

○日本学術会議や日本医学会などのレベルで専門医の数と質の規制をしてほしい。

[3]医師のキャリアパスに関する論点

○地域で働く若手の医師に、例えば専門医となれるようなキャリアパスを見せることで、地域医療へのモチベーションを働かせる必要がある。

○将来の医師数を考えていく上では、医師のキャリアパスに基づくモデルを考えるべき。今後は、研究や留学、場合によってはそのほかの職業に変わっていくということもあり得る。

○基礎研究志向の強い学生も、将来のことを考え卒業時点で臨床研修を終えておこうとする傾向があり、このことにより、基礎研究医の不足を招いている。

[4]医師派遣システムの再構築について 

○大学病院と地域、地域の基幹病院が密なネットワークをつくりながら、循環型の医師養成システムをつくっていくことが大事である。

○透明性を確保しながら、地域の大学が医師派遣システムに関与していってほしい。

○大学や住民など様々な関係者が集まったシステムを作るという意味で、都道府県が責任をもって医師を配置する機能を果たすことが重要である。

[5]医師の勤務環境の改善について

○勤務医の労働環境は苛酷。

○女性医師のワーク・ライフ・バランスは全く解決されていない。

○女性医師が現場から立ち去るきっかけは、妊娠や出産である。院内保育所の整備や24時間保育の実施など、女性が働きやすい環境が必要である。

○健康や医療に対する正しい知識の普及が我が国では十分になされてない。

[6]他の医療職種等との連携について

○医師は医学部を増やしても現場にはすぐに増えない。医療クラークやコ・メディカルの方をできるだけ現場に増やして、医師や看護師をサポートできる体制が必要。

○医工連携とか、医療経済論とか、医療政策論とか、つまり、学際的分野の人材を養成することも医学部のミッションの1つである。

○専門看護師や保健師、医療クラーク等の様々な高度な専門性をもつ医療人を修士課程で養成し、医師不足、医療過疎に対応すべき。

○今後の医療は、様々な資源とネットワークを組みながら、患者中心のシステムを作って1人の患者さんを追っていくというケアが必要となってくる。

3.新しい医療ニーズに関する論点

[1]基礎研究、イノベーションを担う医師の養成について

○卒後に研究に進む医師への直接的な支援が必要。

○基礎研究医の待遇を改善する必要がある。研究ポストを拡充するとともに、研究費の将来の不安を解消することが必要である。

○製薬会社といったイノベーションに関わるような研究部門において、医療に関わった経験のある研究医を増やして行く必要がある。

[2]国際貢献等グローバルな視点で活躍する医師の養成について

○海外の貧しい地域への医療提供など医療における国際協力も必要な論点である。

○発展途上国におけるインフラ整備として、衛生面、環境面の改善に貢献する医師を養成していくことも必要。

○優秀な医学部の卒業生をWHOなどの国際機関のヘッドクオータに送り込んで、そこで活躍できる人材を大学は養成していかなければならない。

○国内に患者を呼び込むようなメディカルツーリズムでは、国内外の富裕層だけを相手にした医療が展開され、多くの国民が全うな医療を受けられなくなる。外国に出て行って、相手国で医療を行ったり、医療職を育てたりするようなメディカルツーリズムが重要。

[3]総合的な診療能力を持った医師の養成について

○地域で一通り大体の病気は治す、大体の相談には応じられるという医師を育てることを、これからの医学の一領域として認知していっていただきたい。

○専門医でも、ジェネラルに診ることができるような医師を育てていかなければならない。

○専門医と総合医をどのような割合で養成していくかということも課題。

4.これまでの取組の評価

[1]医師養成方策の検討について

・地域医療人材養成について

○大学の入学定員を増やすうえで、地域枠というアイデアはよいことだと感じている。

○地方ではまだまだ医師は足りていない。

○地域枠の学生を奨学金だけで縛るのでなく、システムとして定着するような政策が必要。

○地域枠を自治医科大学並みに実質化していくことが重要。

○地域枠の学生が一定期間地域に留まるようなインセンティブが付与されるような、地道な対策が必要。

○地域枠の学生のみならず、学生が卒後に様々な地域で働くことができるようなことが重要。

・研究医となる人材養成について

○研究医となる医師の不足は深刻。このままでは10年後、20年後に基礎研究医はほとんどいなくなってしまう。

○臨床経験をもった医師が基礎研究に入って来ることができる環境が必要。

○欧米では多くの医師が行政機関や製薬企業で働いているが、日本では医師がなかなか集まらず、重要な医薬品の開発に遅れが出ている。 

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