資料1 北原茂実氏ヒアリング資料

配布資料 : 平成23年6月13日

 今後の医学部入学定員のあり方等に関する検討会(第6回)

株式会社 北原脳神経外科病院  代表取締役社長 北原茂実 

A)適正な医学部入学定員をどう考えるか

1.立場によって当然見解は異なる

(1)病院経営者としては定員増による医師給与の値崩れは望むところかもしれない

(2)多いか少ないかの判断は、社会環境や医療制度、医療者の能力などによって変わる相対的なものに過ぎない

(3)いずれの指標も、制度や慣習の異なる他の地域との比較には役に立たない

2.なぜ入学定員に関して場当たり的な議論しかされてこなかったのか

(1)真の市民革命を経験せず、あるべき社会を突き詰めて考えてこなかったから

(2)全てにおいて民度を高める努力も、民意を反映するシステム作りも怠ってきた

(3)そもそもマクロの経済に立脚したロジカルな議論は日本人の不得手とするところ

3.一筋縄ではいかない未来予測

(1)人口も、少子高齢化率も経済環境も実は将来どうなるかわからない

(2)政治の力、安定した電力供給という、企業にとっての数少ないメリットを失った日本

(3)ますます共産主義的になり活力を失う社会から富裕層が逃げ出す日

(4)日本人は国民皆保険、時代にそぐわなくなった医療法などの呪縛から逃れられるのか

4.流砂現象にどう対応するか

(1)今は世界が大きく変わるとき、既存の概念やシステムは全て意味を失う

(2)これから真のグローバル化が始まる

(3)新しい秩序を生み出すために、従来の制度を葬り去る勇気を持てるのか

(4)きちんとした未来像を提示できるか否かが国や組織の発展の鍵

5.大切なのは強いリーダーシップ、引き受ける覚悟

B)医学部入学定員を増やすことは可能か

1.現状では答えはNO.

2.財源を見出せない皆保険下での増員は致命的

C)そもそも増員は必要か

1.医療、ましてや医師数と健康寿命に直接の因果関係はない

(1)先人は沖縄やコーカサスで脳ドックや癌ドック受けてきたか、高度先進医療の恩恵に浴してきたか

(2)スカンジナビアでの研究が意味するもの

2.OECD加盟諸国との対比などほとんど意味がない

(1)支払い体系や、専門医制度、コメディカルの役割などそもそも制度がまったく異なる

(2)むしろ必要とされるのは独創的なシステム、独自の社会科学上の概念の開発

3.いかにも異常な医療職の養成数

(1)  子供の数1690万人に対して医学部定員9000人、看護師定員5.5万人

 准看護師定員1.4万人、介護福祉士定員2.5万人

(2)  現場で不足しているのは医師と看護師のみ

 しかも、本当に必要とされているのは高い見識と既成概念にとらわれない柔軟性を持つ一握りのみ

4.やがては過ぎ去る少子高齢化の波

5.医療崩壊の主たる原因は医療財源の不足と社会の崩壊であって、医師の頭数の問題ではない

D)今何を考えるべきか

1.あるべき社会の姿をどう考えるか

2.医療というものをどうイメージするのか

 定義、システム、根底になければならないボーダレスの思想

3.必要とされる専門的知識や技能の見極め、養成システムや資格制度の見直し

4.ビジネスとしての可能性の検討

5.財源論や医師法、医療法の問題、ましてや必要とされる医療職の養成数などは結果として最後に考検討されればよい

E)八王子まちおこし ~医療と教育の国際都市・八王子を目指して~

1.八王子共和国という思想

2.動き出した医療のまちづくり

(1)ボランティア&はびるすシステム

(2)生活と健康のためのネットワーク、 八王子FM設立

(3)ファームプロジェクト 

(4)物忘れ共済 

(5)国際病院構想

(6)大学院大学設立構想

(7)八王子レスキュー 

3.独自の電子カルテ、遠隔診療システム、手術及び介護用ロボットの開発

4.医療の脱保険診療化、産業化、ボーダレス化

F)医療の海外展開

1.医療の海外展開は世界の常識

(1)タイ、韓国、イギリス、アメリカ、フィリピン、キューバの現状

2.インバウンドのメディカル・ツーリズム

(1)インバウンドのメディカル・ツーリズムは誰のため

(2)周辺国のみならず、自国の医療をも崩壊に導く考え方

(3)韓国の失敗とその後の方針転換に学ぶこと

(4)日本の医療の売り物は何か ~人は人に何が出来るか~

3. アウトバウンドのメディカル・ツーリズム

(1)本来医療は地産地消であるべき

(2)あるべき医療の海外展開の仕方

(3)カンボジアHHRDプロジェクト

4.そもそも医療を産業と捕らえない限り海外展開など夢のまた夢

(1)語学が出来れば、海外事情に精通していれば外国人相手の、あるいは国外での医療ができるのか

(2)医療は国を支える基幹産業・戦略産業

(3)中国、韓国のおそろしさ

5. 医療はツールと捉えるべきもの

(1)医療はシステムで論じられるべきもの

(2)システムで輸出して相手国の社会開発に寄与すべき

(3)利益は周辺産業を含むシステム全体であげられればよい

G)医療の海外展開は、今後の医療専門職の需給に影響するか

1.答えはNO

(1)そもそもメディカル・ツーリズムは医療者の需要を増すほどには成長しない

(2)インバウンドではシステムを学びに訪れた外国人医療者を活用すべき

(3)アウトバウンドについては相手国の事情もあるが、シニアの活用を考えるべき

2.海外からの医療者、特に看護及び介護職の受け入れは論外

(1)輸入産業であるが故にお荷物扱いされる医療、その上労働力まで輸入するのか

(2)少しは相手国のことも考えよう

H)カンボジアHHRDプロジェクト

1.グリーンホスピタル・日本のショールームの建設

2.プロジェクト早期からの研修センター、大学院の設立

3.カンボジアの医療立国支援

4.カンボジア一国丸ごと請け負います

5.ODAに変わる新たな日本の国際貢献

6.世界で活躍できる医療人、医療産業の育成

7.日本の医療、日本という国を崩壊から救うために

8.日本人、日本企業のカンボジア進出を促進し、両国の発展に寄与できる

9.今、時代のうねりになりつつあるカンボジアHHRDプロジェクト

I)医学部定員をどうのこうの論じる前にするべき事がある

1. 現在の国民皆保険の廃止

(1)  少子高齢化が進む中、皆保険に執着すれば医療費の抑制による医療の崩壊は免れない

2. 医療法の見直し、医療法人制度の廃止、経営主体の株式会社への一元化

3.ばら撒き政策の廃止、過度に過ぎる高齢者や弱者の救済措置の廃止、自立への促し

4.プライマリーバランスを改善し、この国を崩壊から救うには医療費の値上げしかない

5.“税と社会保障の一体改革” は本来どうあるべきか

J)医療を崩壊から救うために文部科学省は今何をなすべきか

1.医療・社会保障などに関する実践的教育の検討

(1)対象は主として小・中・高生だが、社会人に対する啓蒙活動も大切

(2)健康や疾病に関する知識、応急処置や医療機関の正しい利用法などを学ばせる

(3)医療や社会保障のあり方について、現状を伝え、考えさせる

2.医療職養成課程の全面的見直し

(1)そもそもの敗因は不必要な医療職の専門化、医療資格の細分化にある

(2)医学教育を医学部(医・歯・薬学科)、保健学部、の2学部制とする

(3)前者の修業年限を基礎2年・専門4年の6年生、後者を基礎2年・専門3年の5年制とし、基礎教育の2年間においては学部を分けない

(4)医学部専門課程においては多くの単位を共通とし、薬学出身者にも簡単な診察と処方の権限を与える

(5)保健学部においては看護学科を必修とし、さらにどの単位を取得するかによって看護師以外の資格を取得するダブル・ジョブ制を採用する

看護のみを専攻しようとするものには単位の取得によって、従来の保健師・助産師、救急救命士などの他に麻酔師などの高度な資格が取得できるようにする

3.カンボジアHHRDプロジェクトへの参画

(1)本事業には様々な個人・団体・企業が参画してコンソーシアムを形成している。

公的機関としては、経済産業省、外務省、JICA、ADBなどが本プロジェクトに関与しており、従来国内ではありえなかった形でのコラボや共同研究が生まれうる

(2)縦割り行政や政治システム、企業間競争などの問題により国内では実行が困難なシステムを、試験的に運営できる可能性がある

K)拙著の紹介

“「病院」がトヨタを超える日 ~医療は日本を救う輸出産業になる!~”
北原茂実著 講談社 +α新書

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