薬学部教育の質保証専門小委員会(第5回)議事要旨

1.日時

令和4年5月17日(火曜日)10時00分~13時30分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 薬学部教育の質保証の調査について
  2. その他

4.出席者

委員

伊藤委員、乾主査、入江委員、亀井委員、北澤委員、後藤委員、西島委員、長谷川委員、平田委員

5.議事要旨

○冒頭、本日のヒアリングの実施要領等について確認を行った。
○医学教育・歯学教育に関する専門家、薬剤師の確保等に関する取組を行っている専門家にヒアリングを行った。
 
※ ヒアリングにより把握した取組事例等(○)及び課題(●)の概要をそれぞれ記載した。
 
1 医学・歯学教育に関するヒアリング
○ 医学教育では、平成 20 年度から医師不足に対応するため臨時的に定員を増加させているが、一度増やした定員の見直しは容易ではない。将来的な需給の動向を見据えながら、定員を管理することが必要。また、歯学教育においても定員削減を行ってきたが、一度増加した定員を減らすためには大きな労力が必要であり、速やかな対応が求められる。
● 薬学教育においても国が法令により入学定員を抑制する仕組みを早急に検討すべきではないか。
○ 地域の医師確保にあたっては、地域ごとの医師の偏在指標をもとに医療計画や医師確保計画において養成すべき医師数等を位置付け、医師確保対策が検討されている。
● 地域における薬剤師の需要見通しの精査や偏在指標の導入、大学と地方自治体等が連携する卒前・卒後の取組に対する支援等を通して薬剤師の確保を考えていくべきではないか。
○ 地域に定着する医師の確保にあたっては、臨時定員による地域枠を設けた地域偏在対策が行われてきている。
● 薬剤師の偏在対策に資する地域枠等の定員枠の設定等により、地域に貢献する意欲のある学生を選抜し、卒後のキャリア形成につなげていく必要があるのではないか。
○ 歯科医師国家試験における合格率が近年低下しているが、薬剤師の質の確保にあたってはどのように考えるべきか。
● 国家試験合格率で薬剤師数を制御せざるを得なくなれば、6年間薬学を学修しても薬剤師になれない学生(25 歳前後になって進路変更しなければならなくなる学生)が現在より更に増加することが懸念される。薬学部に入学した学生は薬剤師になれるようにすべきであり、国家試験合格率をコントロールすることにより対応すべきではないのではないか。
○ 歯学教育において、標準修業年限での国家試験合格率の低下など、教育の質の低下が課題となっている点は、薬学教育と共通している。
● 留年率や退学等の割合が高い大学や標準修業年限内での卒業率及び国家試験合格率等に改善が見られない大学は、重点的かつ組織的にその要因の特定に取り組む必要がある のではないか。
○ 歯学教育の質保証においては、文部科学省におけるフォローアップ調査と分野別の第三者評価が実施されているが、薬学教育ではどのように考えるべきか。
● 薬学教育評価機構においても本小委員会において指摘した各課題について各大学の取組や改善を評価していくべきではないか。また、同機構において従来から実施している評価事業に加えて、薬学教育の質保証に係る啓発活動等に着手してはどうか。
 
2 薬剤師の確保等に関するヒアリング
○ 公立大学において学費を抑えた薬剤師養成へのニーズは高く、入学試験において地域枠を設けている事例がある。
● 地域枠については、地域偏在対策として有効であると考えられるが、地域偏在の解消にあたっては、大学と地方自治体等が連携して対応することが重要ではないか。また、薬学部で地域枠を設けた場合であっても、入学段階で入学者に求める力を適切に確認しなければ、国家試験に合格できず、地域医療に従事することもできない、という悪循環になるおそれがあるのではないか。
○ 学生の就職活動においては、「仕事のやりがい」と「待遇(給与・福利厚生)」を重視している。学生は、業務内容・やりがいと給与水準の比較で就職先を決定しており、特に奨学金を利用する学生にとっては、給与水準が選定理由となっている傾向がある。
● 学生の就職支援・進路指導にあたっては、薬剤師の地域需要や薬局・病院等の多様なキャリアについての十分な情報提供がなされていないのではないか。地方自治体等による奨学金制度や卒業後のキャリア形成支援等の取組の一層の充実を図るとともに、大学においてもその取組を学生に対して十分周知する必要があるのではないか。
○ 一部の県においては、薬剤師確保のための様々な取組みがなされており、例えば同県の薬局又は病院に一定期間就業した後に奨学金の返還額の一部を助成する制度等がある。
● 自治体における薬剤師確保の取組として、奨学金の返還額の一部を助成する事業等があるが、こうした取組については、全国的な周知が必要ではないか。
○ へき地医療、離島医療など特徴のある医療システムを持っている地域の取組は十分に知られておらず、大学において薬剤師の地域偏在や業態偏在(病院薬剤師の不足)への関心が低いと考えられる。
● 地域偏在や業態偏在(病院薬剤師の不足)等に関する教育プログラムの策定・実施を通して、薬剤師の果たす役割に関する教員及び学生の意識を醸成していくことが重要ではないか。また、オンライン診療・服薬指導等を活用することで、地域の特性に応じたチ ーム医療が可能になるとも考えられる。必ずしも薬学部の新設が地方の薬剤師不足の解 消につながらないと考えられるが、他県から距離的に離れている場合など、薬学部の設置等が必要な場合もあるかもしれない。
 
3 その他(これまでのヒアリングを踏まえて)
○ 国家試験対策に偏重し合格率を重視した教育が行われるなど、学生のキャリア形成や卒業生のフォローアップに積極的に取り組んでいる様子が感じられなかった。
● 社会のニーズに対応した課題発見・解決能力を養う教育が不十分ではないか。また、卒業生に対するフォローアップ調査等を行うことを通じて、卒業後の状況を把握し、ディプロマ・ポリシーの評価等を行い教育活動にフィードバックするとともに、各大学の教育成果、卒業生の活躍の状況を広く周知し、卒業生の社会的評価を高めていく必要があるのではないか。
○ 私立大学の薬学部において定員未充足の大学が多く見られた。
● 18歳人口の減少が続く中で大学に定員確保を求めても、大学・学部の新設が続けば、定員割れの大学が増えることが想定され、根本的な解決にはならないのではないか。
○ 現在の薬学教育、薬剤師養成の在り方に危機感が足りないと考えられた。
● 教学マネジメントの確立、内部質保証を改めて大学に問う必要があるのではないか。
○ 18歳人口の減少に鑑み、大学の自主的な定員削減だけでは対応が困難と考えられる。
● 個々の大学における教育プログラムの改善(三つの方針に基づく教育、入試における学力の担保等)なく、単に現状に合わせた定員削減のみでは真の改善は望めないのでは ないか。
 

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