6年制薬学部への編入学・転学部について

平成27年2月24日
薬学系人材養成の在り方に関する検討会

1 はじめに

 編入学制度は学生の多様な進路を考慮し制度に柔軟性を持たせるためのものであり、大学側としても多様な学生を確保できるという意義がある。
 その一方で、6年一貫の薬学教育において、受入れの枠組みや受入れ後の教育が適切に行われているのか等について確認が必要であると考えられることから、今回、「新制度の薬学部及び大学院における研究・教育等の状況に関するフォローアップワーキング・グループ」において、編入学及び転学部の状況について調査を行い、課題等について整理した。
 今回のフォローアップにおいては、【1】大学、短期大学、高等専門学校等を卒業した者(卒業見込みの者を含む。)、【2】大学にある一定の年限在籍し一定の単位を取得した者を、6年制薬学部の途中年次に受け入れるものを「編入学」としており、自大学内で他学部から6年制薬学部に受け入れるもの(薬学部内での転学科は除く。)を「転学部」として、フォローアップの対象としている。 

2 調査の概要

【1】全体を通じて
 平成25年12月に、6年制薬学部を置く全国の大学に対し調査を行った。調査項目は、平成19年度から25年度までの各年度の編入年次別の受入れ人数、出身学科、選抜方法、卒業状況、単位認定の考え方・基準、単位認定方法、指導・教育上の配慮等である。
 編入学については、1年次編入から4年次編入まで行われており、29学部において7年間で540人の編入学生の受入れが行われている。また、転学部については、3大学において7年間で5人の転学部が行われている。
 編入学生の出身学科は、薬学科、薬科学科のみならず、人文社会系の学科も含め非常に多岐にわたっている。
 なお、編入学定員の枠を設定している薬学部は4学部であり、それ以外の大学では通常の定員枠で受け入れることになるが、いずれにせよ定員の範囲内で行われる必要がある。

【2】受入れ
  2年次と3年次に多様な学科から受け入れており、特に3年次においても、文系を含む他分野から受入れを行っている大学がある。また、4年次編入は、薬学科のほか、薬科学科や薬学以外の学科からの受入れが行われている。(主な出身学科は別紙のとおり。)
  受入れ年次について、受け入れる年次をあらかじめ決めている大学や、年次を決定する際の基準を設けている大学がある一方、基準の設定状況が不明である大学もある。
 編入学の試験は、多くの大学で、専門基礎に関する知識を問う筆記試験と、面接、小論文、書面審査により行われているが、一部の大学では、面接や小論文のみで合否を決めている場合もある。
【3】単位認定と受入れ後の科目の履修
 既修得単位の認定方法については、単位取得証明書とシラバスを参考に科目ごとに受入れ大学の開講科目に読み替えて認定を行っている大学が多いが、科目の内容を確認せず、出身大学で取得している単位数を一定の範囲内で既修得単位として認定していると考えられる大学も、一部に存在する。受入れ後の編入生への配慮として、個別の履修指導や必要科目未履修者に対する集中講義の実施等を行っている大学がある一方、特に対応していない大学もある。

3 フォローアップの結果

【1】全体を通じて
 6年制薬学教育においては、モデル・コアカリキュラムに基づいた教育が行われており、医療人養成のための、全学年を通してのヒューマニズム教育、早期体験学習、実務実習事前学習、薬学共用試験、病院・薬局実務実習の実施など、薬剤師を養成するための体系的な教育が行われている。
 各大学において編入学制度を運用するにあたっては、6年制薬学教育の質が担保されるよう、以下に述べるような配慮が必要である。

【2】受入れについて
 6年制薬学教育においては、モデル・コアカリキュラムに基づき各科目が順次的・体系的に編成されることから、受入れ大学において編入年次よりも低い学年に配当されている科目を、出身大学において履修していない場合、編入学後に当該科目を基礎とする他科目の履修に支障が生じる恐れがある。このため、編入学生の受入れ年次を決める際の基準を明確に設定しておくことが重要である。
 そのためには、まず、カリキュラム・ポリシーに基づき、6年制薬学教育においてどの年次にどこまで達成するのかといった年次ごとの体系を明確にする必要がある。
 それを踏まえて、編入学に関するアドミッション・ポリシーを明確化し、受入れ後に必要と見込まれる学修の量を踏まえて、例えば、受入れ年次毎に最低限履修しておかなければならない科目や必要な単位数を明確にし、それに基づき受入れ年次を判断することが適当である。
 編入学試験についても、志願者の学修歴を精査し受入れ後の学修の見込みについて判断できる試験を実施することが適当である。

 4年次編入については、主として薬学科、薬科学科出身学生の受入れが行われているが、ディプロマ・ポリシーに照らし、残りの3年間で大学として学位を授与できる見通しがあるのか、学修歴や卒業までの見込みについて厳格に判断する必要がある。特に、実務実習の前提条件となる共用試験までに、実務実習に必要な知識・技能・態度を修得することができるか、また、卒業時までに「ヒューマニズム」の科目や改訂モデル・コアカリキュラムの「基本事項」「薬学と社会」など、医療人としての薬剤師を養成するために必要であって、入学後早期から卒業時まで時間をかけて技能や態度を醸成するような科目を修得することができるか考慮した上で、適切な判断が求められる。

【3】単位認定と受入れ後の科目の履修について
 上記で述べたとおり、薬学教育では体系的な医療人教育が行われている。既修得単位の認定については、単位取得証明書とシラバス等を基に個別の科目ごとに内容を確認し認定する必要があり、科目の内容を確認せず、取得している単位数をもって既修得単位として認定するといった方法は適切ではない。専門科目は当然のことながら、「ヒューマニズム」の科目や改訂モデル・コアカリキュラムの「基本事項」「薬学と社会」など、早期から卒業時まで体系的に履修されると考えられる科目の認定についても、適切に行う必要がある。
 その上で、学生を受け入れた後、既修得として認定した科目と受入れ大学における教育課程を比較し、未履修科目等必要な科目を教育課程の体系上支障のない形で履修できるよう大学として配慮する必要があり、履修について困難が見込まれる場合は、受入れ年次について見直す必要がある。

4 おわりに

 編入学を実施する大学においては、編入学生のその後の履修状況や成績をフォローし、受入れ基準や選抜方法、単位認定方法等当該大学における編入学制度について自己点検・評価を行うことが重要である。
 また、薬学教育モデル・コアカリキュラムが改訂され、学習成果基盤型教育の考え方に基づき体系的な教育プログラムの設定や繰り返しの教育の実施が求められている中で、編入学の実施においても、受入れや単位認定、受入れ後の教育をこれまで以上に適切に行う必要がある。
 冒頭で述べたとおり、編入学制度は学生、大学の多様性を得る手段である。各大学で多様性を確保しつつ編入学生の質や教育の質を保証するために、本報告を踏まえ大学関係者が協力して自主的、自律的な取組を進めることが期待される。

 

 (別紙)編入学生の主な出身学科

【1年次】
機械情報工学科、英文学科、社会学科、法律学科

【2年次】
薬学科、薬科学科、医学科、歯学科、臨床検査学科、保健学科、歯科技工士学科、口腔保健学科、放射線学科、臨床工学専攻
物理学科、数学科、数理科学科、生命科学科、生物学科、生命理学科、分子生命科学科、化学科、生命・物質化学科、応用物理学科、情報数理学科、応用数学学科、応用生物科学科、応用生命科学科、応用科学科、応用化学科、工業化学科、物質応用化学科、応用分子化学科、応用生物化学科、自然情報科学科、情報科学科、数理情報学科、理工学科、物質生物工学科、物質生命理工学科、物質理工学科、物質工学科、生体工学科、応用生命工学科、環境土木工学科、建築学科、建築・社会環境工学科、機械航空工学科、産業システム工学専攻、情報システム工学科、情報工学科、精密機械工学科、機械システム工学科、機械工学科、電気工学科、電気電子工学科、電子システム工学科、電子情報工学科、生物工学科、生物生産工学科、物質化学工学科、化学応用工学科、管理工学科、生物機能学科、生命医科学科、バイオサイエンス学科、農芸化学科、生物資源学科、食料生産科学科、環境科学科、地球環境科学科、生命環境学科、生物生産環境学科、生物生産科学科、国際資源管理学科、総合農業科学科、海洋自然科学科、水産学科、獣医学科
人文学科、コミュニケーション学科、英語科、フランス文学科、ロシア学科、日本史学科、国際文化学科、地域文化学科、比較文明学専攻、神学部、心理学科、臨床心理学科、教育学科、キャリアデザイン学科、社会学科、人間社会学科、観光学科、社会福祉学科、福祉情報学科、法学科、政治学科、経済学科、総合経済学科、国際経済学科、現代経済過程学科、経営学科、ビジネス学科、商学科、経営情報学科、アジア太平洋マネジメント学科、コミュニティデザイン学科、家政学科、生活文化学科、生活科学科、食物学科、食品学科、栄養学科、国際ファッション文化学科、健康科学科、健康・スポーツ教育科

【3年次】
薬学科、薬科学科、医学科、看護学科、保健学科、作業療法学科
物理学科、数学科、環境数理学科、総合科学科、物質科学科、物質生物科学科、環境情報学科、生物情報科学科、生命情報学科、生命科学科、生物科学科、生体制御学科、生物地球圏学科、バイオサイエンス学科、化学科、基礎生命化学科、応用化学科、材料創造工学科、物質工学科、製薬工学科、物質理工学科、化学応用工学科、物質化学工学科、生物工学科、応用生命工学科、生命バイオ工学科、合成化学工学科、経営工学科、建築学科、土木工学科、冶金学科、応用電子工学科、電気電子システム工学科、機械工学科、動物応用科学科、生命環境学科、資源循環学科、生物生産科学科、生物資源学科、生物資源利用学科、生態環境科学科、森林総合科学科、海洋生物生産科学科、海洋環境学科、海洋生産システム学科、水産科
総合人文学科、英文学科、国文学科、日本語・日本文学科、国際関係学科、教養学部、応用社会学科、臨床福祉学科、法文学部、経済学科、経営学科、食品栄養学科、食品科学科、スポーツ健康科学部

【4年次】
薬学科、薬科学科、医学科、情報学科

 

お問合せ先

高等教育局医学教育課薬学教育係

電話番号:03-5253-4111(内線3326)