薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第12回) 議事録

1.日時

平成24年11月8日(木曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 質の高い入学者の確保について
  2. 4年制博士課程教育のフォローについて
  3. 今後の薬学教育モデル・コアカリキュラムの在り方について
  4. 医療人養成としての薬学教育の在り方について
  5. その他

4.出席者

委員

永井良三座長、市川副座長、井上副座長、太田委員、北澤委員、北田委員、倉田委員、高柳委員、竹中委員、永井博弌委員、橋田委員、平井委員、村上委員、望月正隆委員、望月眞弓委員

文部科学省

山野大臣官房審議官、村田医学教育課長、伊東薬学教育専門官、日下部技術参与ほか関係官

オブザーバー

厚生労働省 医薬食品局総務課 中井薬事企画官、田宮課長補佐

5.議事録

      【永井(良)座長】
       それでは、定刻になりましたので、第12回目の検討会を始めさせていただきます。委員の皆様には、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。
       最初に事務局から本日の委員の出欠状況の報告、事務局の交代の紹介、配付資料の確認をお願いいたします。
      【伊東薬学教育専門官】
       委員の出欠状況でございますが、欠席は生出委員、長野委員、正木委員の3名でございます。なお、竹中委員は遅れていらっしゃることになっております。
       また、事務局の交代でございますが、大臣官房審議官が奈良から山野に交代しております。また、本日、オブザーバーといたしまして、厚生労働省医薬食品局総務課から中井薬事企画官と田宮課長補佐においでいただいております。
       それでは、資料を確認させていただきます。議事次第に続きまして資料1-1が平成24年度質の高い入学者の確保に向けてのフォローアップ状況(まとめ)、資料1-2が、平成20~24年度の入学試験・6年制学科生の修学状況、資料1-3が「ヒアリング調査対象大学 今後改善すべき事項」。資料2が平成24年度に行われた『大学院4年制博士課程』における研究・教育などの状況に関する自己点検・評価について(案)というものがありまして、次のページは両面刷りとなっております。資料3が4年制博士課程のフォロー 平成24年度自己点検・評価の公表のイメージでございます。資料4が薬剤師として求められる基本的な資質(案)。資料5が薬学教育モデル・コアカリキュラム大項目。資料6が、薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂方針に関する決定事項について。資料7が医療人養成としての薬学教育の在り方について(論点メモ)。それから、参考資料といたしまして、学部教育・大学院教育に関する基礎資料というもの用意しております。落丁等ございましたら、事務局までお申しつけください。以上でございます。
      【永井(良)座長】
       ありがとうございました。
       本日はワーキング・グループに検討をお願いしておりました質の高い入学者の確保について及び4年制大学院博士課程のフォローについて、検討結果が取りまとめられているということで御報告いただくことになっております。また、薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂についても、その後の進捗状況について御報告を頂き、その後、医療人としての薬学教育の在り方に関して御議論をお願いする予定でございます。
       では、最初に質の高い入学者の確保について、これはワーキング・グループで御議論いただいておりましたけれども、平成24年度のフォローアップ結果の報告について御提出いただいたということでございますので、その議論の経緯等を含めまして座長の井上委員に御報告をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
      【井上副座長】
       井上でございます。昨年3月開催のこの検討会以降、3回にわたってワーキング・グループの会合を開催いたしました。それから、2日間にわたるヒアリングもやっております。7回目が本年6月、8回目が8月、9回目が本年の10月ということでございます。この間にヒアリング調査が入っているということです。そういう検討をいたしまして、質の高い入学者の確保について平成24年度のフォローアップ、一応、終了いたしましたので、本日、御報告させていただくということでございます。このフォローアップは入学者の確保に大変御苦労されている大学に対して状況を伺いながら、最終的には今後の薬学教育全体を良くしていきたいという趣旨でございまして、フォローアップの内容を踏まえて今後の改善方策等を取りまとめるということになっていたものでございます。
       資料1-1から1-3までは平成24年度に行ったフォローアップの内容を取りまとめたものであります。本年度のフォローアップは資料1-1の1ページ目の2に記載しておりますけれども、書面調査とヒアリング調査を行っております。もう少し具体的に申しますと、3月の本検討会で決定いただきました23の大学、学部に対して書面調査、自己点検のようなものでありますけれども、お願いし、提出いただいた書面をもとにこの1ページから2ページにかけて記載してございますような分析を行いました。その結果、書面調査対象大学のうち、平成18年度に入学した学生の卒業率、平成18年度というのはこの6年制最初の学生でありますが、18年度に入学した学生がどれだけ卒業まで来たかという卒業率が60%以下の大学を対象にヒアリング調査を行うことといたしました。そして、ヒアリング調査は7月30日と8月3日の2日間ですが、2班に分かれて9学部を実施しました。
       2ページに記載しています事項について、1大学約1時間かけてヒアリングを行ったということでございます。その結果がこの3ページに記載してございます。取りまとめて言いますと、留年者の多い大学、その要因はいろいろなことがあるわけですけれども、主な要因は明らかに基礎学力が不足である。学年進行に応じた学力の向上が容易には期待できないという状況であるということが判明いたしました。いずれの大学も国試対策などには大変熱心なわけでありますけれども、それだけでは問題発見、解決能力を身につけた質の高い薬剤師の養成ということを考えますと、とても十分とは言えないと思います。入学時の学力だけではなくて、薬学を学ぼうとするモチベーション、意欲、あるいは学習を継続できるような、そういう能力なども要因となるわけでありますけれども、学力を軽視することは到底できないはずでありまして、入学させた全ての学生に対して十分教育し、卒業させる。これが大学の務めであると考えますと、どのような選択方法が適切であるのか検証することが必要であろうと思われます。
       また、リメディアル教育というのを多くの大学がやっているということになっているわけですけれども、これは高校の復習ではないということをよく認識していただきたいと思います。受動的な学修を強要する、これもいずれの大学もやっているわけでありますけれども、このことだけで事態の改善にはならない。この受動的な学修だけでは駄目だということに関しましては、先の中教審の答申でも「主体的に考える力を持つ人材は、受動的な教育の場では育成することができない」という答申がございまして、そのことと対応するものであります。
       きめ細かい支援が必要な学生が非常に多いということになるのですけれども、そうだとすると、質・量両面にわたって教員体制の大幅な是正が求められるわけです。留年、あるいは卒延生の対策というようなこともされてはいるのですけれども、極めて不十分な状況である。試験では測れない能力も重要であるということをよく認識して、卒業研究、あるいはPBLなどの充実を是非お願いしたい。この点も中教審答申では能動的な学修、これは学生の能力を引き出し鍛える双方向の講義、演習、実習などということになっていますけれども、こういう学修への転換が不可欠、という答申になりますが、これと対応いたします。卒業判定についても国試を想定したものになっている大学が非常に多いというところが気になります。
       今後の取扱いですけれども、ヒアリング調査対象大学には資料1-3にあるとおり、今後改善すべき事項を伝達し、改善状況を報告いただくとともに、来年度も引き続きフォローアップを実施することを予定しております。ただいま説明した内容はフォローアップ対象大学だけの問題ではどうもなさそうでありまして、多くの大学に共通する事項であるということを鑑みますと、その他の全ての薬学系大学についても引き続きフォローアップを実施する必要があろうかと思われます。社会に対する説明責任が極めて重要でありますので、特に受験生、さらにはその保護者などに対しては各年次の進級者数、入学者に対する標準修業年限内の卒業者数、そして国試の合格者数などについても各大学が公表していっていただきたいと思う次第であります。
       以上でございます。
      【永井(良)座長】
       ありがとうございました。
       ただいまの御説明に対しまして御質問、あるいは今後の議論の方向性等について御意見をいただければと思います。どの点からでも御発言いただければと思います。どうぞ。
      【倉田委員】
       倉田です。資料1-3入学者の選抜の在り方というのが、どこの大学にもみんな書かれていたのですが、この選抜の在り方というのは推薦入学ですとか、AOの割合が高いということが裏付けられるんですか。
      【井上副座長】
       今、御指摘のように入試のやり方が推薦もあり、AOもあり、一般入試もある。その中で各大学とも来年以降はAOをもっと増やすとか、多くの場合、減らすようなところが多いと思うのですけれども、いずれにしても一体どれが、どのような入試の形態をとるのが一番質の高い学生を入学させているのかとか、そういうフォローアップが余りきちっとされていないように思います。ですので、そういうようなフォローアップを各大学がきちっと努力して、できるだけいい学生を集める方策を求めてほしいと、そういう意味でございます。
      【倉田委員】
       例えばAOや推薦入試で入られた学生さんたちが、後に休学したり、留年したり、退学したりというようなことはお調べになっていらっしゃるんですか、この大学の方たちは。
      【井上副座長】
       そうですね。調べています。一般的にAOや推薦入試で留年生が多い傾向は確かにある。一般入試に比べると多い。ただ、それも大学によって随分違いまして、一律にAOが駄目、推薦が駄目とは言えないと思うんですね。推薦も大学、大学によって、その推薦の仕方が違いますので端的には言えないと思うのですけれども、そういう調査と、それから、成績がその後どうなっているのか、1年、2年、3年それぞれで留年率がどうなのかというフォローアップが完璧にはなかなかなされていなくて、そこのところで明確な、こうすべきだというような線が各大学から出されているわけではまだない。データも十分そろっていないという点はあるかもしれません。6年やっとたっただけですので。
      【高柳委員】
       よろしいですか。
      【永井(良)座長】
       はい。
      【高柳委員】
       今と関連するのですけれども、推薦にもいろいろあって、試験を課す推薦とか、そうでないのとか、指定校とかいろいろありますけれども、今の休学、退学の問題ですけれども、要するに試験を全くしないで、学力試験をしないで入ってきた学生との比率というか、その辺が一番重要なのだろうと思うんですね。推薦については、それぞれ各大学、いろいろな考えがあって、やり方が微妙に違うと思いますので、その辺のところは調べてございますか。
      【井上副座長】
       先生がおっしゃっている意味としては、全入に近いようなやり方で入学者を受け入れているとどうなるかとかというような御質問だとすると、必ずしもそれだけが問題ではない。つまり、全入のように競争率が非常に低くて学生を入れているというような場合であっても、非常にきめ細かい教育をしている大学もあるわけですね。そういう大学の場合には現実において留年率は非常に低くて、共用試験もかなりの確率で通っている。卒業も比較的順調にいっているというようなケースもございますので。
      【高柳委員】
       ただ、一般的に現在の私立の薬学部で学力試験を経ないで、全く学力試験を経ないで入ってくる学生が一体どの程度いるのかという、その辺のところを各大学も含めて、全体も含めてやっぱり把握しておく。
      【井上副座長】
       そのデータはあります。それに基づいて、ここにも書きましたように学力だけではなくて、入ってくる学生の薬剤師になりたいという意欲とか、そっちを重んじて入学させているというようなことをお答えになる大学もあるのですけれども、そういう場合に、学年進行に応じて学力がついてこられなくて留年という傾向は確かにあるわけで、入学時の学力が極めて重要であるということは、ここにも明記させていただいています。
      【永井(良)座長】
       どうぞ。
      【平井委員】
       質問なのですけれども、1-3のところに教員の指導体制について検討することという文言があるんですけれども、これは具体的にどういうふうなことを想定して言われているのか教えてください。
      【井上副座長】
       結局、レベルの余り高くないといいますか、今の御指摘のように入学試験も必ずしもきちっとしていないで入学させている、そういう学生に対して、じゃあ、どういうケアをするかということだと思うんですね。それなりにやっているというお答えを皆さんされるわけですけれども、具体的にこれだけで十分なのかと言われると、まあ、とてもではないけれども、これでは足らないでしょうという場合が多い。そこの要因としてはやっぱり、教員数が足らないといいますか、そうでなくても6年制というのは非常にたくさんの負担がかかって、教員が普通にやっても大変負担が大きいわけで、そこに更にリメディアルとか、レベルの低い学生に対するケアとかというのが入ってくると、よっぽど教員数を増やさないことには、とても対応できないのではないか。そういう意味で、是正をすべきであるというふうに書いたわけでございます。
      【平井委員】
       はい。
      【望月(正)委員】
       この1-1の資料の最後のところですけれども、ここで大学情報としてホームページや大学案内等にて公表することと書いてありますが、この内容としては各大学にお任せするという形でしょうか。
      【井上副座長】
       いいえ。
      【望月(正)委員】 
       細かく規定するわけですか。
      【井上副座長】
       ここに書いてありますように公表していただく。今年の場合と同じように。
      【望月(正)委員】
       そうですね。
      【井上副座長】
       特に重要なところは、入学者に対する標準修業年限内の卒業生の数、あるいは国家試験というのはどこまで問えるかというのはよく分かりませんけれども、こういうようなことを今年の場合には自動的に出たんですけれども、来年以降は留年生数が入ったりしてもっと複雑になりますので、大学が出してくれないことには分からないわけです。これを公表することを、文科省として要求するということになりますと、結構、厳しい注文を各大学に出しているということになろうかと思います。
      【望月(正)委員】
       最低要件としての項目はこちらから指定するということですね。
      【井上副座長】
       はい。
      【望月(正)委員】
       それから、各大学というのは、要するに全大学のことでしょうか。
      【井上副座長】
       全大学。
      【望月(正)委員】
       はい。わかりました。ありがとうございます。
      【永井(良)座長】
       はい。
      【望月(眞)委員】
       先ほどのお話に戻ってしまうかもしれないのですが、入試をどういうふうに課しているかというところに関してなのですけれども、入試の科目の内容というか、それも結構影響するのではないかと思います。入試をしているといっても、面接だけの場合もあるでしょうし、あるいは入試を1科目だけとか、その科目もどういう科目をさせているかとか、そういうものによっても基礎学力というのは影響されるような気がしますので、そこも併せて御調査いただけると、と思います。
      【井上副座長】
       それも一応聞いております。大学によっては化学も問うていないような大学もありますし、御指摘のようにペーパーテストのようなものが全く課されていないということもありますし、トータルとしてやはり学力が重視されないで入学させてしまっているという大学が相当あったということだと思います。
      【永井(博)委員】
       先ほどの教員の指導体制のところで、先生、数と質ということですが、これはそれだけの資質を持つ教員の数というのも限られてくるのではないかと思うんですね。そうなってきたときに各大学で教員の基準というのは、それも調査の対象になるんですか。
      【井上副座長】
       例えば高校の先生にお願いしているとか、そんなようなケースもありました。果たして高校の先生に薬学で学ぶべき基礎的な教育が、本当にできるのでしょうかとか、そういうような問いかけはさせていただいています。
      【永井(良)座長】
       高柳委員、御意見ありますか。
      【高柳委員】
       学生の定員の未充足というのが一つ話題になっていますけれども、今、教員の話が出ましたので、今、各大学、世代交代で、団塊の世代が退職して教員をどこも募集しているところが多いと思うんですね。私のところもかなりの数が毎年やめるものですから、教員公募というのもスタートしているわけですけれども、東北地方あたりでは、聞くとなかなか教員が今度見つからない、教員が来ない。学生も定員割れしている。いろいろなことで経営状態も悪いということになりますと、教員が来ないという、学生の定員未充足ではなくて教員の設置基準に満たない大学がこれから出てくるのではないかなというのを思うんですけどね。
      【井上副座長】
       今回の場合には設置基準に満たないという大学は基本的にはなかったのですけれども、その設置基準というのは随分低いところですので、私たちは、その設置基準よりも大幅に上回った教員でなければ、きめの細かい教育ができないでしょうというようなサジェスチョンをさせていただいているわけなので、先生がおっしゃるような意味で、そういう教員を本当に確保できるかと言われるとなかなか難しいことは確かに難しいのだと思います。そうなると、学生の定員を思い切って減らすとかということでもしないことにはなかなか手段がないのかなというふうには思いますが。
      【永井(良)座長】
       ほかには。北澤委員。
      【北澤委員】
       北澤です。少し観点は違うかもしれないのですけれども、今回、定員に満たなかった大学の分布を見ると、東北地方とか、四国の方とか、どちらかというと都会はいいけれども、地方で定員割れが多く、それ自体も問題なのかなと思います。というのも、全国津々浦々に適切な数の医療者がおられて医療を提供する必要もあるわけです。先生も足らなくて学生も充足していないのだから、定員を減らすというのは当然考えられるのですけれども、その一方で、いわゆる各地の均てん化といいますか、そういう観点からどのように対策をしていけばいいのかお聞きしたいです。
      【井上副座長】
       ローカルな地域医療みたいなものをもっと促進する。それぞれの大学がそういう特徴を明確に出して、その地域の方々が非常に来やすい、魅力を感じるようなやり方を考えられたらどうですかというようなサジェスチョンはさせていただいております。それでどれだけ効果があるかは別として、一つの方策としては、そういうような方策があるのではないかという、そういう指摘はさせていただいております。
      【永井(良)座長】
       はい。
      【望月(眞)委員】
       資料の1-3で今後改善すべき事項ということで、「何々に努めること」は良いとして、「検討すること」とか、「整えること」とかなっていることに関しては、向こうが検討した結果とかというのは、いつの時点かでお集めになられる御予定は、どのような……。
      【井上副座長】
       ここに書いてございますように、どういう検討をしたのかというのを御報告いただくということと、フォローアップも続けます。
      【望月(眞)委員】
       両方するという。
      【井上副座長】
       はい。
      【望月(眞)委員】
       その期限とかはもう何かあるんでしょうか。
      【井上副座長】
       それは文科省にお任せしてありますので。
      【伊東薬学教育専門官】
       来年5月時点、入学者が確保できた段階で、御報告を頂くということでお願いをする予定となっております。
      【望月(眞)委員】
       わかりました。
      【永井(良)座長】
       そのほか、いかがでしょうか。
      【伊東薬学教育専門官】
       資料1-2の見方を一応御説明させていただこうと思います。まず、国公立の大学の表でございますが、4年制学科と6年制学科を一括募集している大学、また、東京大学、北海道大学のように理系の学部をまとめて入試を行っている大学がございますので、そういう大学については入試の充足率とか、そういうところを「‐」で表示させていただいております。
       また、裏面には、私立大学の一覧が出ております。左側に二重丸と丸がございますが、◎が今回ヒアリング調査を行った9学部でございます。○は書面調査のみで終わった大学ということになってございます。また、入学定員については、4年制を含めた数を書いておりまして、入学定員充足率の母数になります入学者につきましては、便宜的に4年制学科も合わせた数で計算をしておりますが、6年制学科の修学状況、右側の18年度入学生、19年度入学生、20年度入学生につきましては、明らかに6年制学科に進学したという学生の数で計算をしております。したがって、卒業率などは6年制のみでありまして、途中から編入等で入学した学生も入っておりません。18年度に入学をして6年間大学に在籍した学生の数で計算をしたものとなってございます。
       以上でございます。
      【永井(良)座長】
       よろしいでしょうか。そういたしますと、今年度の結果を踏まえて来年度、引き続きワーキング・グループでフォローアップをしていただくことになりますけれども、具体的な方法等につきましては新体制になってから改めて御検討いただくということにしたいと思います。
       では、次に参ります。4年制博士課程教育のフォローにつきまして、昨年12月にこの検討会で取りまとめた自己点検・評価の提言に基づいて、平成24年度開設の4年制博士課程を有する大学院に自己点検・評価を行っていただいております。その結果についてワーキング・グループで検討いただいた結果の報告がございました。内容につきまして、ワーキング座長であります井上委員から御報告いただきたいと思います。
      【井上副座長】
       それでは、4年制の大学院のフォローにつきましては、今、永井先生がお話になったように12月に本検討会で決定した提言に基づいて、今年の春に設置された55大学において、8月の末までに自己点検評価を行っていただいて、それが各大学のホームページにアップされております。現在、この資料3にありますように文科省のホームページからのリンクも張っておりまして、ここからでも閲覧が可能でございます。ワーキング・グループでは、この内容を分担してレビューしました。資料2を1枚おめくりいただいたところに報告が取りまとめてございます。既に委員の先生方へは事前にお送りいたしておりますので、お目通しいただいたかと思いますけれども、ごく簡単にポイントだけ説明させていただきます。
       枠の中に総評を取りまとめてございますけれども、大学によって若干の差はあるものの、おおむね提言の趣旨が理解されているということが確認されました。ただし、今後、時間をかけて教育効果、あるいは実績というのを見ていかなければならないだろうと思います。この枠の外側には個別の事項について主な課題点を挙げてございます。理念のところにありますように、臨床研究を担うというふうにしていながら、創薬科学をも包含して、それを最重要視するというようなことで、余り従来の大学院との差別化が意識されていないような大学も見受けられました。薬学以外の大学院修了者をほとんどの大学が受け入れております。その場合に理念、ミッションが十分に配慮されているか少し不明確な感じでございます。
       医療提供施設との連携体制なのですけれども、社会人学生を受け入れるという場合に日常業務と、それから、大学院教育との関連、あるいは具体的な大学と医療提供施設との連携の具体的な形が不明確だというような場合もございましたし、それから、医療現場に教育・研究全て任せてしまって、大学がどう関わるのかというのが見えないというような大学も見受けられました。また、学位の審査体制ですけれども、これは4年後ということで、今の段階でまだ余り具体的でないのかもしれませんけれども、修了要件についてほとんど全くと言っていいほど明記されていない。非常に曖昧な大学も中にはあったということがあります。今後、自己点検・評価については中間評価として2年後、それから、完成した年度にもう1回行うというように予定しております。
       また、今後、設置予定の大学に対しても開設年度、今年の55大学と同じ開設年から2年後、それから、完成年次の翌年、3回にわたって自己点検・評価を行っていただくということにしたいので、該当する大学に周知していただきたいと思います。
       以上でございます。
      【永井(良)座長】
       ありがとうございました。
       ただいまの御報告は資料2の1枚目を本検討会としてのコメントとしてワーキング・グループの報告書に添付して、大学へフィードバックしたいと考えております。その内容について御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
       事務局に、これ、1枚目のみですか。
      【伊東薬学教育専門官】
       2枚目以降もつけてということでございます。
      【永井(良)座長】
       つけて出すのですね。
       いかがでしょうか。どうぞ。
      【望月(正)委員】
       最初の1ページの理念、ミッション及びアドミッションポリシーの中で、臨床研究を担うのは当然ですけれども、「創薬科学をも包含し、重要視して」とあります。どうしても創薬科学というのをある程度意識をした臨床研究というのが行われるかと思いますけれども、このあたりのすみ分けがこの文章だと少しはっきりとしない点があります。それについてはどういうような考え方でこの創薬科学と臨床研究を区別されているのでしょうか。
      【井上副座長】
       本来すごく厳密に言えば6年制と4年制とがあるわけですから、4年制と6年制とが明確な差別化があってしかるべきだと、そういう議論もあるわけですが、6年制しかない大学もある。そういう大学でどういう教育をとなりますと、ある程度は許容せざるを得ないという部分もあろうかと思うんですね。ただ、理念のところ、あるいはミッションのところには、臨床研究というのが明記されているにもかかわらず、後ろの方のカリキュラムポリシーはそれとは随分違う、明確に創薬のみを考えてるとしか思えないケースがあった。創薬の内容もいろいろとあると思うんですよ。もちろんあると思うんですけれども、この視点の創薬だったら、4年制大学院のテーマだなというのをはるかに超えたようなものも中にはありまして、やっぱり少し曖昧になっていると言わざるを得ない場合もあった。全ての大学にあったわけでは決してありません。
      【望月(正)委員】
       はい。ありがとうございます。
      【竹中委員】
       よろしいですか。
      【永井(良)座長】
       はい。
      【竹中委員】
       どうも遅くなって申し訳ございません。関連しての質問になるかと思う。今、企業、特に製薬企業においては相当グローバル化が進んでおりまして、従業員の50%以上が外国人である会社が多くなってきております。そうしますと、その中で、ある例えばファーマコビジランス部というのをグローバルで一つにしますと、その企業の中、あるいは外から応募をかけまして、日本人でも外国人でもどなたでも応募できて、その中のコンペティションが始まっています。そうした場合に、ある事例では日本の方々で企業にいる方、修士で入ってきて学位を持っていない、こういう場合、特にレギュラトリーアフェアなどを務める方にはやはりハンディになりまして、Ph.D.、あるいはM.D.を持った方が、そして外国人もどんどん登用される時代になってきております。
       そういう背景では非常に社員が、これは夜学、あるいは大学院、夜間のもし、あるいは土日の博士課程があったら是非やりたい。その場合に彼らのテーマになるのは、ウエットな実験をやってくることはちょっと無理なので、そうすると習いたいのはレギュラトリーサイエンスとか、あるいは医療経済、薬剤経済、疫学というようなドライなサイエンスを非常にやりたい。そういうことが、要望が非常に強く出ておりますので、もちろん創薬と医療、臨床研究というのはよろしいのですが、こういう何か、私、うまく表現できないのですが、そういうニュアンスも今後御配慮いただけたらと思います。
       それからもう1点、少し脱線したお話で恐縮ですが、そういう大学院を東京、まあ、企業が比較的、製薬企業って都会型の集中した経営をしておりますので、東京、あるいは関西地区、名古屋地区ぐらいで、それほど地方にはないのですけれども、それでもそういうサイエンスは大学でまだこれから発展していくところで、新しい薬学教育の中で芽生えていますので、1校ではとてもいい教授はいないという、恐縮なのですが思っております。そうすると、そういうのを連携で、あるいはお互いにどこかで考えていただきまして、今度は運営の面で恐縮ですが、そういう連携を強めていただいて、東京地区にそういうようなものが入る。また、そこにはレギュラトリーサイエンスのようなものでしたら、行政の方も一緒にやって議論できるような、また、入っていただける。こんなことを思っております。こんなことのニュアンスをどこかに入れていただけたらと思っております。
      【井上副座長】
       ありがとうございます。レギュラトリーサイエンスの重要性というのは、この会議のときにも十分議論いたしました。ただ、レギュラトリーサイエンスを本当にきちっと教えられる人材がどれだけいるかというのは御指摘のとおりでして、薬学出身者の中には残念ながらなかなか見当たらないというのも現実です。したがって、PMDAと連携大学院とやって、少しそういうところを取り入れるとか、あるいは各大学ともレギュラトリーサイエンスに関わるような教員を少しずつ、現在、採用しつつはある。間違いなくあると思うのですけれども、それが全体的に行き渡るところまでは到底、現在はまだいっていませんし、それからもう一つは、薬学に来る学生がなかなかそういうレギュラトリーサイエンス的なことに現時点では必ずしも興味を示さないといいますか、今までの薬学の学生は割と、数学が余り得意ではない学生が多かったですね。
       今、レギュラトリーサイエンスは医療統計とか、いろいろな意味での数学的な処理、確率論的な取扱いとか、そういう部分が必要だと思うのですが、そういう部分に関して比較的講義も少なかったし、そういうような重要性は余り意識してこなかったということもあって、おっしゃるとおり、それは企業だけではなくて病院における医療の安全性とか何かをいろいろ論ずる上でも絶対重要ですし、そういうことに関して、それが重要だという認識はかなりいろいろな大学、かなりの多くの大学がしつつあるという状況ではあると思います。それが簡単にはなかなかいかない。おっしゃるように、連携する、あるいは大学が幾つかまとまって、それが新たな大学院を作るという挑戦、面白いけれどなかなか難しい。連携の、そこを集中的にやるような大学院を組織として構築する、それはとてもいいアイディアではないかと思います。その辺はまた文科省の方でも指導していただいてということは可能ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
      【伊東薬学教育専門官】
       それでは、今、竹中先生からお話がございましたところにつきましては、資料2のところに少しつけ足すような原案を作りまして、御相談させていただければと思います。
      【永井(良)座長】
       レギュラトリーサイエンス以外にも薬剤疫学とか、医療経済学、そこも非常に重要だという御指摘だと思いますので、よろしくお願いいたします。
       ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ、ただいま御発言いただいた件については、私と座長の井上先生に御一任いただいて、修正した上でまとめたいと思います。また来年度以降、開設された大学院がある場合には、開設年次から同様に同じフォーマットにしたがって自己点検・評価をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
       それでは、次に今後の薬学教育モデル・コアカリキュラムの在り方についてであります。その後の改訂の進捗状況につきまして、専門研究委員会の座長であられます市川委員からお願いいたします。
      【市川副座長】
       市川でございます。それでは、専門研究委員会のその後の活動、前回は本年3月に行われたこの検討会で説明させていただいたわけですけれども、その後の活動状況についてもお話をしたいと思います。この専門研究委員会は、その後2回開きまして、第6回が4月16日、第7回が7月9日という2回行いました。2回の会議の主な議論について、簡単に要点だけ資料をもとに説明したいと思います。その第6回、4月16日に行われた会議では、資料4にある薬剤師として求められる基本的資質ということについて、委員間で議論をしましてここにある資料の案を作成いたしました。この案については、資料の次の5というものとペアになっているわけですけれども、これに関しては既にここの委員の先生方には御覧いただいた内容でございます。
       少し簡単に触れると、資料4は、いわゆる今までのモデル・コアカリキュラムには大項目、中項目、小項目、GIO、SBOという組合せがあるわけですけれども、その上に全体に立つ教育の理念というか、その全体を縛るものというのはなかったもので、それに該当するものとして、この薬剤師として求められる基本的な資質ということで、これは医学のモデル・コアカリキュラムに医師として求められる基本的な資質というのがございまして、それがこの間の改訂でつくられたということで、それに対応するものとしてここにつくったものであります。
       この一番上に頭書きがありますけれども、その後に薬剤師としての心構え、それから、患者・生活者本位の視点うんぬんということで10項目、ここに記載しているものであります。このものは先ほどの大項目というのは、そのモデル・コアカリキュラム全体の詳細でありますけれども、A、B、C、D、E、F、G、資料5のところにありますこの大項目がこれを受けてつくられてくるということになります。その大項目の中に更に中項目として、あるいはGIO、SBOという従来のものが入ってくるということであります。今後のこういう資質についての内容ということについては、これからモデル・コアカリキュラムの作業が進んでいくことに伴って、少し文言を変更する必要があるかと思いますので、その余地を残すために、ここにある案という状態で、決定はしたのですけれども、一応、案という格好でまた引き続いてこれを残しておくということになりました。
       次に7月9日に行われました第7回の会議では、日本薬学会において、実際にモデル・コアカリキュラムの作業が開始されたわけです。その開始の具体的な作業の説明をこの7月9日の会議で受けまして、それでその改訂方針に関して議論をいたしました。その結果、資料6にありますように、このような案、作業に必要な要件ということをまとめて、これを日本薬学会の方にお渡ししたということであります。その中でのポイントは、その真ん中あたりにありますようにFというところに薬学臨床教育というのがございます。これは従来の実務実習のモデル・コアカリキュラム、これは病院版と薬局版というのがございますけれども、それをここの臨床教育という格好で入れた項目がFであります。それに関して、内容に関し、全面的に改訂してほしいということであります。
       それから、その中に医薬品の安全性ということに関しては、従来のモデル・コアカリキュラムにおいては記述が少なかったということを含めて、それを項目として取り入れてほしいということを決めました。2番目においてはAの基本事項、導入教育ということでありますけれども、これは従来でいくとイントロダクションとか、あるいはモチベーション、生命倫理、その他が入っている部分でありますけれども、それについてより広い視点から整理をし、見直してほしいということであります。
       それからもう一つは、大項目という、先ほどA、B、C、D、E、F、Gとございましたけれども、資料5の大項目でありますけれども、その大項目とFの今申し上げた実務実習に相当する薬学臨床教育、それの関連性をできる限りつけた形で考えていただいて、その内容の整理、削減ということを行ってほしいということで、今度の改訂作業の一つのポイントであるスリム化というときに、ただ減らすだけではなくして、その内容をここの趣旨に合うような形にしてほしいということをお願いしたという文章がこの資料6でありまして、これを日本薬学会の方にお渡ししたということであります。
       それで、日本薬学会の改訂作業は、昨年度から続いているわけですけれども、昨年度中に、2月にアンケート調査というところで各大学に対して、この基本的な資質、あるいは先ほどの大項目等々についてのアンケートをとったわけでありますけれども、そこのアンケートの結果、あるいは専門研究委員会で行われた議論等を踏まえて、薬学会の方で作業を行うということが進められていったわけであります。それは薬学教育委員会の下にある薬学教育モデル・コアカリキュラム、あるいは実務実習モデル・コアカリキュラム改訂委員会という少し長い言葉の委員会ですけれども、ここは今日いらっしゃる太田委員が委員をされていらっしゃるということでありまして、松木委員長が教育委員会の委員長ということであります。そこで作業が今進められてきたということであります。
       その作業はこの資料5の大項目について、これを基盤にしてその内容を、スリム化というのを念頭にしながら整理がなされてくるということでありまして、ここにあります七つのグループに分けて作業を進めているということであります。これは9月から開始されていると伺っておりまして、今、ある程度のところは進んでいるというように伺っております。その作業は実際には大学の教員が主体になっておりまして、それは各大学に3名の教員、特に若手教員の推薦を各大学から求めて、そして各大学の中から1名ずつ選ばれる。それは専門性等々を配慮して、この七つのグループに分けて編成する。それから、各グループには日本薬剤師会及び日本病院薬剤師会のメンバーが加わったという形で総勢約120名の体制で改訂作業を今現在進めていて、少し進展したというように伺っております。現在、その原案が作成されつつあって、その原案が作成されたら専門委員会の方にフィードバックされてくるという手順になっております。
       一応、専門研究委員会の予定は、聞くところによると、年明けに予定しておりますから、そこのあたりまでに少しフィードバックは来るのではないかと考えております。それが1点。それから、専門委員会では、これからやる作業として基本理念と利用上の留意点、これに関しては従来余り検討が進んでいなかったので、これを主にこれから作業を進めていきたいというように思っております。
       ということで、以上、経過の説明を終わりにしますけれども、何か薬学会の方の、特に経過に関して補足を太田委員からお願いいたします。
      【太田委員】
       太田でございます。具体的に薬学会で作業をやっている、その現状報告を若干させていただこうと思います。専門研究委員会から、市川座長から依頼を受けまして薬学会として9月から開始しております。専門領域ごとのグループに分かれて、全てのグループが2回あるいは3回の会合の中でSBOの見直し、あるいはGIOの見直しなどコアカリキュラムの改訂に向けてやっているところです。特に薬学臨床教育に関して若干の説明をさせていただきます。御存じのように今までのコアカリキュラムでは方略が入っておりましたが改訂の作業の中でコアカリキュラムからは外すことといたしました。
       それからもう一つは、病院と薬局、それぞれのコアカリキュラムが別立てでつくられていたということがありまして、それを一体化するということが大命題になっております。具体的には先ほどお示しいただきましたような基本的な資質というものを基にして、それで特に薬学臨床教育には、その資質を出発点にして、それで両方合わせたもの、薬局と病院のそれぞれのコアカリのSBOを合わせたものを再配置するというような形、かなり根本的に構造を変えるという形でわかりやすい、見やすいようなものにする作業を今やっております。
       それからもう一つ、改訂後のカリキュラムで学んだ学生が社会に出たときに薬剤師が必要とする新たな内容を含まなければいけないということで、10年後の薬剤師像としてこういうものがコアカリに必要であろうということも議論に入れて、全体のコアカリを一体化するという形で動いているということでございます。今後のスケジュールは、全てのグループは12月の下旬に第1案を完成させまして、それで、その間、今はそれぞれの専門領域で主にやっておりますが、それ以降はそれぞれのところで出てきた問題点を共有化して、それですり合わせをして、最終的には年明けに開かれる専門委員会のときまでに薬学会としては原案を出したいと思っております。
       以上でございます。
      【永井(良)座長】
       よろしいでしょうか。御意見をいただけますでしょうか。
      【北澤委員】
       すみません、質問ですけれども、新しいコアカリが使われるのはいつからになるという予定はどうなったのでしょうか。
      【市川副座長】
       今の予定は、先のことはまだはっきりしませんけれども、非常に早くいけば26年度、そして少し延びると27年度の入学者からということを今考えております。それは先ほどの薬学会の方の作業と、それから、うちの方の専門委員会とのフィードバックで最後の成案ができるまでの時間を考えると、そんなことになるということです。
      【永井(良)座長】
       何か御意見ございますか。どうぞ。
      【平井委員】
       平井ですけれども、実際、私も各部会に参加してやっていて、全体のときには余り気がつかなかったのですけれども、実際にやり始めて気がついたことというのは、現状のコアカリキュラムが、量が多いという意見がすごく多くて、スリム化しようとしていますが、量が多いというのは書き込み過ぎだということが一つはあると思うんです。こういう話をここでやっていいのかどうか分からないのですけれども、コアカリキュラムとしては、医学のコアカリキュラムを見ますと非常に参考になり、結局、その芯になるところを押さえて、具体的なところはやはりそれは現場で実際に教育をする大学の自由度に任せる。それと10年先の薬剤師を見据えてということなのですけれども、10年たったらもう全然変わっていると思うので、それを今とても予測はできない。
       そういうことを入れ込んだりできるような大学の自由度を持たせたようなやり方にする方がいいのではないかなということを考えました。確かに現モデル・コアカリをつくったときは何もなかったので、各大学がぽんと投げられても困るというのはあったと思うので、ああいう書き方になったというのは、それはそれで重要なことですし、いいと思うのですけれども、もう既に6年以上やってきた、各大学経験があるので、そういう経験を踏まえて各大学で自由度を持たせてカリキュラムをつくっていく。コアカリキュラムは学生が見てわかるようにという文言がどこかにあったと思うのですけれども、私はそれは違うと思うのです。学生が見てわかるのは、各大学がつくっているシラバスとか、そのカリキュラムの詳しい説明など、そちらの方でいいのではないかなと思います。
       ということで、そのコアカリキュラムが、学生が読んで全部がわかるようにとなると、それこそ現状みたいな細かく書かないといけないものになってしまうと思うので、そのあたりは少し御検討いただいた方が有り難いなと思いました。
      【市川副座長】
       大変適切な御指摘だったと思います。実際の作業をしている薬学会の方では、そういうことを意識して多分進めていると思いますけれども、一番、今回の改訂の大事なスリム化というのは、ただ減らすという意味ではなくして、先生がおっしゃるとおり、各大学の、あるいは各教員の教育に対する理念というか、そういうものをかなり含めたような形の自由度を与えるということになるかと思います。その意味で、言うなればガイドラインということであるわけです。それで、前回のモデル・コアカリキュラムも本当は7割ぐらいがそれであって、あと3割ぐらいは各大学の選任したものを使ってほしいというような記載になっているわけですけれども、どうしても最初にあって、6年制が急に始まったということもあって、先生方がSBOに注目し過ぎたんですね。SBOにはかなり細かいことが書かれていて、到達目標がずっと書かれている。
       それに非常に関心が強いというか、それを1科目でやらなければいけないということになると、あそこにある1,500近くの科目は全部同じようなトーンでというか、同じ重さでというか、そういう形で教育がなされたがために非常に重く感じてしまったということだと思います。そこで6年制教育が一回りしたことによって、先生方もモデル・コアの使い方ということにもかなり慣れてきたのではないかと思います。でも、実際にはおっしゃるとおりで、SBOの記述を細かくしていくと、それにどうしても目が移ってしまう。一番大事なのはGIOであるということだと思うんですね。改訂により、一般目標のGIOの上が今回できた基本的な資質となります。それからGIOがある。そこのGIOのところをできるだけ重視するような格好に持ってくると、先生のその教育に対しての思っていることというのがずっと入ってくるのではないかということがあります。そういうようなことも薬学会の方とも密に連絡をとりながら進めていきたいというように思っております。
       それからあと、学生の目から見て分かりやすい書きぶりというのはなかなか難しいところで、これはこれからの議論が必要かと思いますので、先生の方から主体的に教育するというのではなくて、できたら学生の方が予習、復習を含めて、この到達目標を見ながら自分の理解度を高めていくというのも必要かと思うので、その表現、どちらかでうまく合わせていく必要が、両方向から合わせていく必要があるというように思っています。その辺で、特に薬学会の方でも大きなそういう問題点があるかどうか。
      【太田委員】
       それに関しては議論を進め始めたところでして、すり合わせの中で、SBOの範囲とか書きぶりとか、なかなか領域によって難しいところはあるのですけれども、余り細かくならないようにというところは、それぞれのところで自覚をしていると思いますし、それはプロダクトとして、そういうものになるように努力をしたいと思います。
      【永井(良)座長】
       よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、ただいまの御意見も踏まえた上で引き続き御検討をお願いするということにしたいと思います。
       最後に、医療人養成としての薬学教育の在り方という議題を挙げさせていただいております。これはただいまの市川先生の御報告にもありました薬剤師として求められる基本的な資質、これにも関わるわけですが、この検討会で18年度にスタートした新薬学教育制度のうち、臨床に係る実践的能力を培うことを主たる目的とする課程である6年制の学部教育、そしてその上の4年制博士課程教育について検討を行ってきたわけであります。私が少し気になりましたのは、先ほどの資料4の最初に「豊かな人間性と医療人としての高い使命感を有し」とあります。ここでしっかり医療人としての重要性ということがうたわれていますが、これを現実にどういうふうに薬学教育の中で行っていくかという問題です。これは医学では、いわゆる科学的な医学の上に臨床医学というものが構築されてきたわけですけれども、そこの問題がいろいろとあります。
       日本の近代医学は、明治時代、ヨーロッパが学問の専門分化が進んだ時代、あるいは厳密な科学が一世ふうびしていた時代に導入されたわけです。しかし医学は必ずしも自然科学的な面だけではありませんし、人文科学や社会科学を踏まえないといけないわけです。更に個別の患者ということになると極めて曖昧な部分があります。科学というのは普遍性、法則性を追求しますが、個人にはだんだん興味を示しません。これは薬学も同じだと思います。薬の科学を追求していけば、そこには個人はほとんどなくて、いわゆる均質な薬、物質の世界ですけれども、人は様々なわけで、そこにどう対応するか。一方、疫学は、薬剤疫学もそうですが、集団についてはものを言いますけれども、個人については語れない。むしろ、個人は偶然に左右されるということになります。
       科学が進歩すると、世の中は決定論的に考えます。科学が進歩するということは将来を予測できるようになると思いがちです。中には決定論的にわかることもありますけれども、多くの科学研究は偶然性の世界に入っていって、統計でないとものが言えなくなります。ここに社会と研究者、あるいはアカデミアとの間にギャップが起こってきます。その辺の教育をしっかりしておかないと、数字で患者さんを語ることになります。しかし、それでは世の中は納得しません。人を数字で語るとは何事だと言う人もいますけれども、その辺を含めて医療人としての薬学教育を早めに考えておきませんと、すぐ50年、100年たってしまって、いろいろなひずみが蓄積します。このような問題をどうしたらよいのかということを委員の先生方から御意見を伺えればと思います。
       現場を見ている方は分かるのですけれども、学術が確立してから実践教育をしようとすると、どうしても科学的薬学がまずあって、その上に臨床薬学ができてしまいます。しかし臨床医学から見ると科学的医学というのは臨床医学を支える一つの重要な柱であるのですが、そうではない部分もあります。これは疫学や統計的な理解の部分とか、あるいは個別対応の部分です。その辺の構造を最初に教えておかないとひずみができるという感じがしますが、いかがでしょうか。
      【平井委員】
       はい。今の永井先生のおっしゃったことはとても重要なところで、私も常々そういうことを感じているのですけれども、それを実際に学生さんの教育に落とし込むとなると、これは非常に難しいなという実感はあります。ただ、今、永井先生のおっしゃったことというのは医学教育でもすごく問題になっているところだと思うのですけれども、医学の場合、早期体験とかで早い時期に患者さん、あるいは臨床現場に行って、そこで実際にその現場を見た学生さんたちの感想を見ると、医学を学ぶためのモチベーションが上がったという感想が出ているんですね。それで、それをもっと長くやってほしいという要求もすごくあります。
       それに応えようと思うと、また今の倍ぐらいの教員が必要になってくるとは思うのですけれども、でも、元来、医学とかはそういうものだと思うんですね。一人の患者さんがいて、その人にどういうふうに接していくかということを専門的な知識だけではなくて、そのコンテクストに依存して考えていく。その患者さんと自分との相互作用でやっていくというところがあると思うので、そういうことを薬学の場合もできれば教える必要があるということになると、薬学部の教員は全員臨床体験すべきだということに、乱暴な結論になってしまいますけれども。だから、このあたりはコアカリキュラムを考える上でも非常に重要な議論になるかと思っています。ごめんなさい。具体的なことは何も申し上げられなくて申し訳ございません。
      【永井(良)座長】
       昔、ヒポクラテスという大先生が大切な教訓を残しています。当時でも科学者、自然学者がいました。そういう人たちの言うことは気をつけなさいと言う言葉を残しています。それから二千数百年たったときに、物理学や化学が19世紀になって非常に発達して、科学革命が起こります。そこまで距離を置いていたのですが、Medicineは科学ではないので生理学に基づく医学をつくろうということになります。それが150年前です。
       そして今の医学という体系ができてきたわけですが、長い間、科学的な考え方と医学は、実は2,000年以上の間、距離を置いてお付き合いしていたんですね。欧米の場合は歴史がありますから、専門分化してもそこをわきまえていたと思うのですが、日本はちょうど専門分化したときに文明開化したものですから、それを金科玉条にして、かつ日本的な縦割りの中に入っていったという経緯があります。ですから、その辺をしっかり臨床薬学についても理解して、その専門性を高めないといけないと思います。
       医療とか医学の歴史を教えつつ、それぞれ専門性を深めるというような、そういうことも必要と思います。こういうことに早く気がついていたのは看護学です。そこを踏まえて、非常に幅広い視点で体系を作っています。そうした医療人としての視点は、看護学は深いところがあります。そういうことを早めに薬学の中にも取り入れていた方が後で混乱が起こらないと思うのですが、いかがでしょうね。
      【井上副座長】
       いや、看護のお話があって、確かにそうだと思うんですね。看護の研究課題や何かを見ますと全く文系。これが同じ医療の科学、サイエンスのフィールドなのかと思うほどの課題がずらっと並んでいますよね。それを薬学が取り入れるとなると、薬学の教育というのは本当に大きく変わることになって、それができる先生がどれだけいるかということもあります。ある部分に関しては確かに看護がやっているような、ああいう文系的なカリキュラムとか、そういうのも導入、確かに具体的な対策の一案を今お聞かせいただいたという感じはします。その辺は考えていかなければいけないだろうと思うのですけれども、薬学全体的に見たときには随分抵抗があるのではないかなという恐れはありますけれども。
      【平井委員】
       すみません、私が最近聞きかじったことなのですけれども、先ほど永井先生が個人は偶然性に支配されるということで、要するにころころ変わるから科学的に測定できないみたいなところがあると思うんですけれども、ある手法を使いますと、それが客観的に評価できるという、調査の方法があるようなんですよ。科学というのは法則性とかいうことを重んじますけれども、偶然である、あるいは非常に恣意的な個人であっても大きく見ると科学的に測定できるというような、そういう研究の手法があるそうなので、そういった形でどこまでも科学というのは小さいものではないと思うんですね。だから、先ほど永井先生がおっしゃった未来の予測ということですけれども、決定論的ではないようなものも科学の中に入ると思うので、そういう視点で早期から学生さんに教えるというのはなかなか難しいと思うのですけれども、じゃあ、何なのだと言えば患者さんだと思うんですよ。患者さん、あるいは人間というものに対する視点を早期から教育するということが一つの取っかかりになるのかなと思っています。
      【高柳委員】
       この医療人としての資質、なかなか難しいなと思っているのですけれども、「豊かな人間性と医療人としての高い使命感を有する」と、こういうことですけれども、それに当てはまる薬剤師として求められる基本的な資質の上の方の薬剤師としての心構えとか、患者生活者本位の視点とか、コミュニケーション能力とか、医師としての基本的な資質と同じものですけれども、先ほど薬学でもこういうものを早期に教育しようということで、早期体験学習とかいろいろなことをやっていますけれども、どうも見ているとやっぱり、そもそも人間に興味がないというような人がかなりいるように思うんですよ。そういう人を今のやり方の入試では選別できない。ですから、今、入試改革というのが言われ始めていますけれども、入試改革というのを特に医療人養成の場合は、学力検査以外にもう少し何か必要なのではないかなと、こういうような漠然とした気持ちを持っているのですけれども。
      【永井(良)座長】
       人間が嫌いで薬学に入ってくるとどういうことが起こるかというと、まず薬についてはよく知っている。どういうメカニズムで、どういうふうに効いて語ることができる。それから疫学もよく知っている。何%の確率でこちらの方がよいなどです。だから、あなたはこの薬を飲みなさい。これも飲みなさい、あれも飲みなさい、よいといわれることは全て行いなさいといったときに、果たして患者さんは納得するか。人を相手にすれば、当然、人間に関心がないとそこは乗り越えることができないわけです。
      【永井(博)委員】
       おっしゃるとおりだと思いますが、結局、看護などと比較した場合、ナイチンゲールから始まって精神論があって、薬学の場合はなかなか、まず患者さんが初めにあるということの考え方がないまま学生が入ってきて、それを大学で教えなければいけないとなると、やはりアーリー・エクスポージャーとか、そういうことを積み重ねないと積み上げられていかないと思うんですね。一つは教育のマトリクスのつくり方がサイエンスを中心につくられているのが実際にやりやすいといいますか、前の経験から一番やりやすいことができている。新しいそういう――新しいといいますか、精神論的なことというか、人が嫌いな人になれといっても、それは無理だと思いますので、それでも使命としてこういうことが非常に、薬学で薬剤師としてこういうことは大事なんだよということ、できるだけ早い時期からそういう教育をするマトリクスを作る必要があるだろうと思いますけどね。もう一つは、精神論的にバックボーンが少し欲しいなと考えますけれども、何がいいのか具体的には分からないのですけれども。
      【永井(良)座長】  
       望月先生。
      【望月(眞)委員】
       少し視点が変わってしまうのですけれども、EBMというのがきちんとやっていかなければいけないこととしてかなり皆さんに注目され、できるだけ再現性の良い方法で研究したエビデンスに基づいて医療提供するということがかなり強く言われたころに、科学的にそのエビデンスがどのぐらい信頼性があるのかということをきちんと評価をするということは、かなりみんな一生懸命に教えてきています。けれども、それを結果的には目の前の患者さんにどう適用するかということになったときには、その論文がそのまま適用されないこともあるという、患者さんの気持ちや置かれた環境とかに配慮しながら、その論文の結果をどう適用していくかを考えるというような形の教育は余りされてきていません。論文の結果を患者にどう適用するかを症例研究みたいな形で事前に大学で教育するというのは、臨床を意識した形で学生たちに教育をしていく方法の一つとしては考えられるのかなと思います。
       私どもの大学ですと、その論文のいわゆる内的な妥当性を評価した上で、その外的な妥当性をどう考えるかというところに医師に加わっていただいて、そのケースを医師の立場からどう考えるか、それから、薬学の立場からどう考えるかというのを併せてディスカッションした上で、この人にとって最良なのはどれだろうかというような、そういうようなこともやっています。結局、薬学の学生たちというのは、薬理とかいろいろなことを勉強してはいますが、今の試験が○か×かの試験ばかりですので、正解がない医療現場の世界というのがリアルには分からない部分があるようなところがあるんですね。そこを一応、大学側で事前に教えるときはそういう形の症例研究などで教えるのですけれども、最終的には実務実習等で医療現場に行ったときに0、100ではないということを学生たちが受けとめられるような、そういう実習の在り方というのも非常に大切なところではないかなと思います。
      【永井(良)座長】
       おっしゃるとおりで、そこはとても大事なポイントですね。EBMというと、臨床統計に基づいた医療と思われているのですが、そうではないということは昔から言われています。患者さんの価値観、医療者の経験など、それらを踏まえて、その人に最適な医療をするということです。そこで人間が出てくるわけですね。人間の見方、価値観です。そこを教育で強化するだけでも随分違います。必ずしも数字どおりいくわけではないという教育ですね。
      【井上副座長】
       今、チーム医療ということが盛んに言われていて、そのチーム医療、例えば病院におけるチーム医療を本当に推進しようとしたら、薬学の中に、今、望月さんがおっしゃったような個人、個人を知るというような要素がうまく入ってこないと、医師、看護師さんときめの細かいディスカッション、薬をどうするかというようなことに関してもディスカッションできないだろうと思うんですね。じゃあ、それを具体的に薬学の中でどう進めるのかというのは、本当に難しいなと。
       そういうことができる環境が医学の場合にはほとんどの、少なくとも医学部の半分の先生は臨床を実際にやっておられるわけですから、その臨床の声というのは本当に学生にすぐ届くわけですね。ところが、薬学の場合にはなかなかそういうふうにはいっていないし、これから先もかなり長い時間をどうしても要するだろうと思うんですね。だから、そこを今の時点で、それにできるだけ近づけるためにはどうしなければならないかということを本当は我々が考えなければいけないだとは思います。
      【平井委員】
       先ほどもちらっと出ていましたけれども、学生の数と教員の数のバランスということをやっぱりこれから考えていかなければいけないと思います。それから、医学部の場合は附属病院を持っていますけれども、薬学も必ずしも附属病院を持つ必要はないとは思いますが、人と接するようなフィールドを作る。例えば保育園でもいいと思うんですよ。あるいは老人の施設などでもいいと思うのですけれども、そういったものを薬学もそういうところと、経営と言っていいのかどうか分かりませんが、実際に自分のところで教育するのに使えるような施設を持つというようなことも考えた方がいいのではないかなと最近思っています。
      【市川副座長】
       この問題は、カリキュラム上は、科目としてはあるんですね。例えば今の話では早期体験として、1年次に入ってきて薬局、あるいは病院を見学して薬剤師や医療を感じ学習する。それをできるだけ通年かけてやるのが一番理想なのだけれども、実際は1週間とか2週間とか、長くて1か月ぐらいしかやっていないというところに一番基本的な問題があるような気がするんですね。それとか生命倫理とか、生と死というのも一応教育上はあるんですね、カリキュラムには。ところが、それが医療現場で生きた言葉にはなっていないということがある。それは教える人が、おっしゃるとおり薬学の中に十分にいないということにあるかと思うんですね。
       その基盤をなすのは、先ほども少しあったように、医師、看護師、歯科医師その他の医療関係者と薬剤師からなるチーム医療という言葉の中の実体、これが十分にカリキュラムの中に生かされていないというのが問題ですね。それぞれの役割というのは絶対あるとは思いますが、役割の中にある共通する基盤のものは何かという議論だと思うんですね。薬学部も共通する基盤に教育の基本を置かなければいけない。でも、その基盤ではないサイエンスを主体に、まだやっぱり動いているのではないか。
       これも役割としては大切な部分なのだけれども、人という部分のところを基にチーム医療というのが実際に将来ずっと行くわけですから、そのところ、そのカリキュラムが実は余りちゃんと組まれていないし、実践もなされていないというのは明らかに欠点だと思うんですね。そのためにさっきあったモデル薬局をつくったり、いろいろな施設をつくるということも一つだし、それから、もう少し交流する病院、あるいは薬局を十分に確保する。そのためにはかなり高いハードルが実際問題あると思うのですけれども、その辺を何か、何だろうな、チーム医療に関わる学問、薬学、看護学、そういうところで何か話し合って、何か一つのものがこういう形でお互いに協力し合いましょうということがあれば、薬剤師を目指していく人たちが自分たちの役割は、その全体の中でこういう位置付けなのだという見方ができるのではないか。
       今は最初から薬剤師は薬と生体というものの化学反応というところから実はあるイメージをつくっていくわけですよね。そこで人の命何とかかんとかという言葉を覚えていくというところに、少しそこに乖離(かいり)が起きているのではないかなという、それも指摘されて、誠にそのとおりであるというような言葉になってしまうと思うので、その辺何か、これからの話だと思うけれども、こういうカリキュラムをつくっていったときに、もう少しそこの、例えば患者中心の医療チームという言葉において、お互いに何か協力し合う、あるいは何か授業をシェアできる何かがあると非常にいいなと思いますね。
      【永井(良)座長】
       一つの提案は、医療の歴史や薬物療法の歴史を教えることです。看護学では看護の歴史に関する教科書がたくさんあります。医学では最近余り関心を持たれていませんが、本はたくさんあります。例えばいかに人類というのはばかばかしいことを行ってきたかという歴史を知るだけでも随分勉強になるのではないかと思います。薬物療法に限っても、面白い話はたくさんあります。そこからどういう価値観が生まれたかとか、あるいは科学の進歩がどのように薬物療法に影響を与えたか、考え方がどのように影響を受けたか、そういう教育も重要と思います。
      【市川副座長】
       そうですね。
      【井上副座長】
       そういうような講義をしていないわけではないと思うんですね。だけど、大体ペニシリンとか、化学的にきちっとしたことがいえるあたりになってくると薬学は熱心にやるという、どうしても今はそうなっていますね。
      【永井(良)座長】
       近代科学以降だけの教育だと少しずれるところがあるのです。その前の長い間の人類の歴史が非常に重要ではないかと思います。これはすぐに一斉にというのはとても難しいとしても、意識の底に置いておく必要があります。数字と科学のしっかりした薬剤師さんが現場に行くとうまくいかないということは起こりかねないということなのですが、何か御発言ございますでしょうか。
       あとは、6年制学士課程と4年制大学院博士課程で医療人として求められる資質ですね。また、学生と卒業後では随分違うと思うのですが、例えば今みたいな話は大学院の中でも教育してもいいのかもしれないですね。初めにまず科学をしっかり教えて、その上でリーダーとして育っていくためには、そういうことも知っておかないと駄目だよという教育ですね。
      【井上副座長】
       だから、医療系の4年制大学院博士課程のカリキュラムを読ませていただくと、多くの場合には、まず最初に臨床体験といいますか、少し高次の病院における実務実習のちょっとアドバンストのようなものをやった挙げ句に後の3年間で研究をやらせるとか、そんなふうな大学に多いんですけれども、もしかすると逆なのかなと。基礎的なことを少しきちっとやり、それで博士論文の骨子になるような仕事をやって、最後の年度に臨床体験を深めるとか、そういうふうにした方がもしかしたらいいのかななどというのを少し読んでいて感じたんですけれども。
      【平井委員】
       よろしいですか。私たち、がんプロの大学院教育をやっているんですけれども、いわゆる講義もあるんですけれども、講義だけではなくてワークショップ的なことを結構取り入れているんですね。例えば模擬患者さんと一緒にシナリオを考えるとか、あるいは今度は教育の専門家の方に来ていただいて、教育学から見たチーム医療というようなワークショップとかも計画していますし、大学院はやはり将来アカデミアで教育できるような人も養成していかなければいけないと思うので、教育学的なことの教育も必要だと思いますし、それから、我々マネジメントとかリーダーシップとか、余り習っていない。医療人、余り習っていませんので、そういったものを大学院の中では教育していくべきではないかなと常々思います。
      【永井(良)座長】
       よろしいでしょうか。何か御発言の方いらっしゃいませんか。
      【北澤委員】
       いいですか。
      【永井(良)座長】
       はい。どうぞ。
      【北澤委員】
       私は薬剤師の取材をしているのですけれども、そこで感じるのは、今、人間が先にあるというお話があったのですけれども、現時点で現場の薬剤師は、やっぱり処方箋が来て薬から始まっています。この薬が出ているから、この患者さんは何という病気だろうとかいうふうに常に逆引き、逆引きで業務を考えているのではないかと思うんですね。私は薬剤師ではないので、どうして処方箋に患者の情報がないのかと、常々思っています。薬剤師の方々は昔からそれでやってきているから、特にそこに疑問はないみたいなのですけれども、やっぱりこれほどチーム医療と言われているのに、患者の情報を薬剤師だけがチームの中で持っていないということが現実には起こっているのではないでしょうか。薬学教育を変えていくことも重要なのですけれども、その人たちが卒業した後の薬剤師の業務の方ももっと変えていっていただかないと、結局、薬学部で6年間、人間について、あるいは人間と薬について学習しても、会社とか病院に入ったら薬のことだけやっていればいいのだみたいなふうになってしまうと、意味がないのではないかと思っています。
      【井上副座長】
       病院では電子カルテがかなりきちっと見られますから、今恐らく薬剤師さんたちも患者さんの情報というのは相当詳しく見ていると思うんですね。電子カルテを地域の薬局や何かでも、ある程度見ることができる段階になればある部分解決するだろうと思うんです。地域によっては電子カルテを大学病院がある程度出しているような地域もだんだん増えてきていますね。だから、それがもっともっと普及していけば、今の先生の御指摘がある程度はクリアできるのではないかなと思いますけれども。
      【永井(良)座長】
       はい。
      【倉田委員】
       私のような一般の者が薬を買いに行っても、薬剤師さんたちというのは薬の説明は本当に上手に立て板に水のごとく説明してくださるのですが、私の情報というのを聞き出すのはとても苦手なようで、さっき北澤さんもおっしゃったように、私の情報を聞いてと思っているんだけれども、自分の知っている薬情報をずっと述べてくださるというパターンが非常に多いです。
       ですから、私の、納得して医療を選ぶ会という会なのですが、その会が何年も前からやっているのは、アーリー・エクスポージャーで、専門の知識をまず得る前に人は人として何をできるかというのを1年生や2年生の学生たちと一緒に勉強してもらうのですけれども、病院でボランティアをしてもらって、もう末期の癌(がん)の患者さんたちの手をさすってあげたり、足をさすってあげたり、また、足を洗ってあげたりというのを実際やってもらうのですが、そうすると、言葉だけでは通じないんだけれども、気持ちが通じるというのを彼らは学んでくれて、とてもいい体験をしてくれるのですが、そういう先ほど皆さんがおっしゃっている、ちょっと乱暴かもしれないというようなことも考えて、専門の前の「人として」というところももっと教え込まなければいけないのではないかなと思います。
      【井上副座長】
       コミュニケーション能力を最近すごく薬学は重要視して、コミュニケーション、コミュニケーションと言っているわけですけれども、そのやり方として、今、先生がおっしゃったような人としてのコミュニケーションという、言葉ではないような部分も含めたコミュニケーションがきちっと教育できると一番理想的なんだと思うんですね。でも、それはなかなか難しい。テクニカルにも難しいので、どれだけそういうことができる先生が日本の中にいるのかというのもなかなか難しいところがあって、我々も一生懸命、そういうのを求めてやろうとしているのですけれども、非常にたくさんの学生を相手に、どうすればそれが実現できるのかというのは苦心、苦労しているという状況です。
      【平井委員】
       今の倉田委員の御発言は、薬学部というものが元々薬剤師は患者さんに触れてはいけないというような、どこかでそういう文言がずっと流布してしまったのと、それから、お薬の説明は服薬指導という言葉を使ってしまったのが余り良くなかったのかなというふうに私は思っていて、私自身は服薬指導という言葉は嫌いなので使わないのですけれども、Narrative Based Medicineという言葉がありますように、語るところを聞くということから入るというのはとても大事だと思いますし、井上先生が今おっしゃったように、薬学のコミュニケーションというのはかなりそういうことをやってきているので、実際に今働いている大多数、多くの薬剤師の意識も徐々に変わりつつあるので、もう少しすると、もうちょっと良くなるかなというふうに思っています。
      【倉田委員】
       期待しています。
      【永井(良)座長】
       はい。
      【高柳委員】
       平井先生もドクターとして経験しているから、患者さんとのコミュニケーションというのは十分知っていらっしゃると思うんですね。
      【平井委員】
       知っています。
      【高柳委員】
       ですから、やはりこの薬剤師さんの患者さんとのコミュニケーションということを実際に身につけさせられる、あるいはスタートさせるには、やっぱりどうしても医師のそういった教育ですか、それが必要なのではないかなと。スタートのときにですね。実際に医療現場でどういうふうな形でドクターが診察して患者さんに問いかけていくかという、そういうところを見せないとなかなか、教育しないと難しいのではないかなという感じがしますけれども。
      【望月(眞)委員】
       先ほどの倉田委員のお話に関連してなのですけれども、今、日本の薬局が、ほとんどが保険薬局というか、調剤を中心にした薬局が多くなってしまっているということがありまして、大学の方でも実は調剤以外の薬局の機能、例えばOTCを扱うとか、そういうところに関して従来のコアカリキュラムではかなりざくっとした扱いになっていて、細かなことまではほとんど多分教えられていません。患者さんにいろいろな質問をして、症状とか経過とかいろいろなのを聞いた上で、それがOTCの範囲なのか、受診勧奨の範囲なのかということに関して、従来余り教えられてきていなかったんですね。
       今やっと少しずつそれが広がり始めていて、既卒の薬剤師さんたちで自分たちでそういう研修を受けて積極的にやっていらっしゃる方は、そういうことが多分できるのですけれども、調剤だけを中心にやっていらっしゃる薬局ですと、かなりそこが厳しいのかなというふうに思うんですね。新しいコアカリには絶対そこは入れなければいけない。やっぱり患者さんから症状等を聞いてしまったら、何かリアクションしなくてはいけないんだけれども、聞いた後、どういうふうにするのかというところがまだうまく身に付いていっていないところも原因になっているかもしれないのではないかなと思います。
      【永井(良)座長】
       よろしいでしょうか。今回頂いた御意見を踏まえて、また次回までに整理しておきたいと思います。
       その他、何か御意見、おありでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ、事務局から今後の連絡事項等をお願いいたします。
      【伊東薬学教育専門官】
       次回の検討会につきましては、今日頂いた御意見などを整理させていただいて、年明けにできれば2回ぐらい開催できればと考えているところでございます。
       山野審議官より、ここで御挨拶させていただきます。
      【山野審議官】
       8月から担当しております、審議官をしています山野といいます。よろしくお願いいたします。こういう遅い時間まで非常に闊達(かったつ)な議論を頂きまして、ありがとうございます。私、今日の会議に出て、また、実はワーキング・グループも出していただいて、いろいろ外から見ていたら分からないことであるものの、いろいろ課題を抱えているということを実感しています。薬学は人の健康とか安全、命、直接関わる分野でありますし、まさに今日の議論で言えば単なるサイエンスだけではなくて、人と関わりがある学問であるというようなことから、そういう教育の質というのは非常に重要だなというのはそのとおりでございます。
       それで、今日の資料でもいろいろ大学の一覧表とか眺めながら、思ったのですけれども、総論はともかくも、各論になれば難しいんだろうと思いつつ、今日出た話から言えば、やっぱりそれは入学をどうするかというのも含めてなのですが、そこで適切な人が入って、6年間、その課程を過ごせば最後は単に薬剤師になるのではなくて、国民から安心していただけるような薬剤師になってもらえるような仕組みをちゃんとつくっていくというようなことが重要であるというのを痛感したところでございます。それと、こういう大学の一覧表を見ながら、最近、入学定員が増えてきたとか、6年制が入ったという、いろいろな意味でトランジェントな時期だと思うのですが、そういう意味で、今の時期にいろいろな手を打っておくことが非常に重要だと思いますので、引き続き教育の質の向上ということについて御議論していただきたいと思いました。
       それと、最後に、せっかくの機会なので、少し薬学にも関係して、私、最近、気になっていた話があって、日本の薬の輸入超過というのはものすごく多いということで、最近見たデータでは2.5兆ぐらいあるんですね。だから、これは別に薬学部だけの話ではなくて、当然、医学部であるとか、ほかの学部も全部関係している話なんですけれども、それもものすごい勢いで増えているというような状況があるということで、日本国という国を考えた場合にも、薬をそれだけ輸入しているということですから、日本の中の足腰を鍛えるという意味で、当然、別に研究がどうのこうのだけではなくて、規制がどうのこうのという話もあれば、産業政策がどうのこうのというのもあるんですけれども、最後は日本としてそういう分野を強くして、創薬を作る能力を強くしていくというのは、最後は人なものですから、そういう意味では、当然、薬学部だけではなくて、薬剤師だけではなくて製薬会社に行く人であるとか、そういう規制の方に入る人とか、大学の中でトランスレーショナルリサーチをやる人、当然、いろいろな意味で関わりがあるのだと思うんですけれども、そういうことも日本としても、薬としてそれぐらい大きな赤字を背負っているということは、日本としては、産業として弱いということだと思うのです。そういうことを少しでも改良していくというようなことも少し念頭に置いて議論していただければ有り難いと、それは個人的な思いでございます。ということを言わせていただいて私の挨拶にいたします。引き続きよろしくお願いいたします。
      【永井(良)座長】
       本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

 

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