薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第8回) 議事録

1.日時

平成23年6月10日(金曜日)18時~20時

2.場所

文部科学省東館6階 6F3会議室

3.議題

  1. 教育内容と教育体制の改善充実について
  2. その他

4.出席者

委員

永井良三座長、市川副座長、井上副座長、生出委員、太田委員、北澤委員、北田委員、倉田委員、高柳委員、永井博弌委員、橋田委員、平井委員、村上委員、望月正隆委員

文部科学省

新木医学教育課長、小野医学教育課課長補佐、伊東薬学教育専門官、大林技術参与ほか関係官

オブザーバー

厚生労働省 医薬食品局総務課 中井課長補佐

5.議事録

【永井(良)座長】
 それでは、定刻になりましたので、第8回の薬学系人材養成の在り方に関する検討会を始めさせていただきます。 まず、事務局から委員の出欠状況と配付資料について御確認をお願いいたします。
【伊東薬学教育専門官】
 本日は5名の先生、大阪大学の小林委員、アステラス製薬の竹中委員、東京大学の長野委員、それから千葉大学の正木委員と慶應義塾大学の望月委員が御欠席ということで伺ってございます。
  それでは、本日配付させていただいております資料につきまして確認をさせていただきます。会議次第に続き、資料1といたしまして「薬学系大学院博士課程(4年制)についての議論の経緯」、資料2といたしまして「薬学系人材養成の在り方に関する検討会第一次報告(概要)」、それから、「グローバル化社会の大学院教育」という中教審の答申のポイントが資料3となっております。
 資料4は、日本学術会議の薬学委員会の「日本の展望」の抜粋でございます。
 資料5は、橋田委員からの提出資料でございます。
 また、前回の検討会で頂きました主な意見を取りまとめたものを参考資料の1として、参考資料2は、望月委員から厚労科研の報告書の提出がございましたので、それを配布させていただいております。
 落丁等ございましたら事務局までお申し出ください。
 以上でございます。
【永井(良)座長】
 前回は、薬学教育の現状についてのデータを基に薬学教育の全体像、そして薬学教育の質の保証の在り方、改善方策等につきまして自由に御議論いただいたところでございます。今日は、前回の検討会で出ました意見を簡単に取りまとめたものが参考資料の1として配付されております。
 本年度6年制を基礎とする学部が完成年次を迎えるということで、様々な問題点が上げられておりますが、来年度開設予定の大学院博士課程が申請の時期を迎えているということでございます。多くの6年制の学部が大学院設置に向けて準備をしているという話を伺っておりますが、既に大学院を設置している大学については届出の手続のみで、実質的な審査が行われないということもあるそうです。したがって、その教育内容について懸念する声も上がっていると伺っております。
 今回は、薬学教育の質の保証の在り方と改善方策につきまして、関係者のヒアリングを踏まえて御議論するということにしておりましたけれども、副座長の先生方、また事務局とも相談しまして、設置に向けての大学院の留意点について御議論を頂きたいと考えております。
 井上先生、市川先生、何かコメントいただけますでしょうか。
【井上副座長】
 急に言われてもあれなんですけれども、結局今ここで、内容について非常に心配であるということが、どういうことを根拠に非常に心配であると言っておられるのかをちょっとお伺いしたいなと思うんですけれども。
【伊東薬学教育専門官】
 大学院6年制の上の博士課程というのは、今回、例えば4年制の上の大学院であれば、2年の修士、それから3年の博士ということで5年間の研究の期間が設けられていると。ただし、6年制の上の博士課程については、修士課程ということではなく、薬学学士を取った後4年間で博士課程ということで、博士という学位を授与するような研究内容が担保されているのかというようなお声もございます。また、特に、6年制ということになりまして実務実習などで半年間なり実習をしておるというようなこともあり、実際の修士2年間分の研究のようなものが行われているかというようなお話をされている方もいらっしゃるということもございます。
【井上副座長】
 従来の4年制の後に修士課程、後期博士課程ですか、そういうのがあるのと、それから、6年制があって、そこの後の4年制というので、一つは、両者の区別、差別化というのを皆さん非常に苦労されておられるんだと思うんです。そこの辺をどこまで厳密に区別化しなければいけないのかというところが多分1点あるだろうという気がするんですけれども、臨床の現場での何らかの関わりのあるような研究テーマとかそういうことが非常に強く要求されるというようなことをイメージすると、現実の問題としてはなかなか、教員も足らないとか、あるいは人材が足らないとか様々な問題があって、どちらかというと今までの薬学は基礎系の先生が非常に多いので、臨床というのが少し薄らいだような話になってしまうというところもあるだろうと思うんです。今度極端に逆の方へいくと、恐らく病院なり何なりで研修をすごく重視して、研究というところが少し薄くなっちゃうとか、その辺のところのバランスをきちっと考えなければいけないということなんではないかなと思うんですけれども、いずれの大学も私は非常に苦心、苦労されて申請を出そうとされてはいるんだとは思いますけれども。
【新木医学教育課長】
 ちょっと追加でよろしいでしょうか。
【永井(良)座長】  
 はい。
【新木医学教育課長】
 本検討会におきまして既に、資料2にありますようにこの差別化ということについて随分御議論を頂きまして、1次報告をおまとめいただきまして、これを我々各大学にお示しして、その趣旨にのっとってということで、目的のところは、ここでの御議論で整理をしていただきましたのでかなり明確になったのではないかなと思っております。一方で、今度は実際にその目的にふさわしい教育をしていただくという段階になりまして、特に4年制博士課程というのが初めてのことですので、4年の学部の上の5年というのはずっとこれまでの経験もありますし、また、いろいろほかの分野でも多く行われておりますが、6年というのが初めて、更にその後の4年というのも初めてということで、そういう意味では、目的にふさわしいことが行える体制、また内容になっていくのかどうかというのは、ちょっと我々事務局といたしましても、ちゃんと所期の目的に合った育て方をしていただくようなというのが大変重要だと思っておりまして、そこのところが少し、そうなるのかどうか、初めてのことなので心配をしているという事務局としての心配ではございます。 
【井上副座長】
 それで、この間、新木課長さんが先日、私立薬科大学協会の総会で御発言になったのは、フォローアップをした方がいいんじゃないかというようなお話をされたと思うんです。私も今これ、ここでまさに問題になっておりますように、野放し、自由に申請書を出してやっていくということで、それで成功すればいいんですけれども、様々な形、あるいは余りふさわしくないというようなものも出てくる危険性も確かになくはないだろうと思うんです。そういう意味で言えば、何らかのフォローアップというのがあってしかるべきだとは思うんですけれども、ただ、大学院の教育の評価というのは恐らく日本では、専門職大学院の評価というのがあるわけですから、あってもしかるべきなんでしょうけれども、我々の評価機構にやれと言われても、ちょっとそれは余力はないというのが。
【新木医学教育課長】
 ちょっとよろしいですか。
【井上副座長】
 はい。
【新木医学教育課長】
 先生がおっしゃったように、何らかの形で見ていくということが必要だという議論と、それを具体的にどうやって見ていくのか。第三者評価のような形が一番いいのかどうか、その辺はまさに御議論を頂いて、ふさわしい方法で、また、ふさわしい観点といいますか、指標で見ていくというようなことじゃないかなと思っておりまして、必ずしも、第三者評価というのも、もちろん出てくればなんですが、それありきというふうに絞り込んで御議論をお願いしているというわけではございませんで、もう少し広くお考えいただいてよろしいかと思います。
【永井(良)座長】
 市川先生。
【市川副座長】
 今ほとんど井上先生が発言された内容が一番、私もこの問題のときに考えたことです。特に6年制の上の4年制の博士課程に関しては薬学としては初めての経験であって、薬学全体として博士課程の卒業生に対する社会ニーズを正確に捉えながら対処することが必要です。今6年制の定員数は私学が多いです。それで、その上の、大学院の数としては国公立が多くなるかと思います。まだ正式な数はもちろん出ていませんが、多分私学の数の全体を集めればほぼイーブンになるかもしれないけれども、国公立の割合がかなり多くなると思います。その辺を考慮する必要性があると思います。社会ニーズについて十分なお互いの認識を国公立、私立大学で議論しておかないといけない。ある領域、分野だけに集中すると、そこでの博士過剰の問題が起きる。それによって高度な薬学教育の混乱が起こると思います。
 大学院は、どの専門でもそうだろうけれども、大学院生がいることによって研究分野はどんどん発展することは事実なので、その必要性は非常に高いが、4年制博士課程の研究とはどうあるべきかについて話を煮詰めておいた方がいいのではないかと思います。
【永井(良)座長】
 今日おいおい御議論いただくということで、それでは早速議事に入りますけれども、大学院の留意点についてということです。事務局で用意していただいた資料の御説明をお願いいたします。
【伊東薬学教育専門官】  
 それでは、資料の1をごらんください。本日は薬学系大学院について御議論いただくということで、事務局からペーパーを用意させていただきました。まず1といたしましてこれまでの議論ということで、先ほど新木課長の方からもお話しさせていただきましたが、第1次報告をお取りまとめいただきました。こちらでは、薬学系大学院教育の基本的な考え方として目的の方を明確化していただきました。具体的な方策といたしましては、資料2の方にございますとおり、下段の(1)から(5)までの御議論を頂いているところです。
 また、報告書においては、中教審の審議状況や大学院での実績を見つつ将来に向けた課題について逐次検討を行うことが必要とされておりまして、薬学教育の質保証の方策と課題について引き続き議論を行うべきというようなこととされたものでございます。
 現状といたしましては、先ほど説明させていただいたとおり、博士課程の申請が準備されておりまして、実際申請書など、主としては大学教員、研究者等の養成、また、がん専門薬剤師等の高度専門職業人としての薬剤師の養成というような大きく分けると二つぐらいのメインのコースというようなものが設定されているような大学院が多いということでございます。
 また、現状といたしましてはそういう状況でございまして、求められる博士課程教育について、検討会での御議論の後に出されたものにつきまして御紹介をさせていただこうと思っております。まず一つ目といたしまして、中央教育審議会のグローバル化社会の大学院教育(答申)が平成23年1月31日付けで出されております。こちら、ポイントとしまして資料3の方を御用意させていただきました。
 こちらは当検討会の先ほどの報告でも言及されていたまさに中教審での議論だったわけです。平成17年9月に出されました新時代への大学院教育答申を踏まえて、大学院教育の実質化などの進捗状況でありますとか課題を学問分野別に検証を行い、それで、学問分野別に行った結果というものが資料1に3点落とし込んでおりますけれども、医療系の大学院の特性に応じた改善方策といたしましては、ここに3点書きました。学生の専門資格志向、医師・歯科医師臨床研修制度の導入など医療系大学院を取り巻く近年の変化が研究者を志す学生の減少など各分野の大学院学生のキャリア形成に大きく影響、また、生命科学や医療技術等の発展が著しい中、生涯を通じた研究マインドの涵養(かんよう)が求められており、医療系大学院には生涯にわたる医療人のキャリア形成の中核的な役割を果たす必要、また、高度化、多様化する医療の動向等を見据え、課程終了時の到達目標を明確化し、他の医療機関や研究機関、他専攻等と有機的に連携し、面的に広がりのある体系的、実践的な教育を展開というような改善方策が出されているところでございます。
 この医療系ワーキング・グループにおいては、検証が書面調査やヒアリングなどを通じて行われ、こういった結果が出てきておるということでございました。
 資料3として答申のポイントということで用意させていただいていますが、全体といたしましては大くくりな部分ということで、こちらの資料3の2枚をおめくりいただいた裏面に今後の大学院教育の改善方策というものが出てございます。
 まず、それといたしまして2点上げられておりまして、一つは、学位プログラムとしての大学院教育の確立として、改善方策が、コースワークから研究指導への有機的につながる体系的教育の確立など5点が上げられております。
 また、もう一点といたしましては、グローバルに活躍する博士の養成ということで3点上げられておるところでございます。改善の方向性といたしましては、次のページにありますとおり、修士、博士の課程を通じて一貫した学位プログラムを構築し、今後は一貫して博士課程の教育を確立する必要があるということで、全体としては博士課程がこうあるべきというようなことで答申がなされておりまして、また、今期の中教審の大学院部会においてもさらなる検討が始まったところでございます。
 引き続きまして日本学術会議の方に入りますが、こちらは、日本学術会議薬学委員会の報告ということでございます。こちらにつきましては、求められる博士課程教育について言及されたものとしては、資料4にございますとおり、特に大学院教育ですとか研究者の養成につきまして取り上げられてございます。
 また、第6回の検討会においても橋田委員の方から詳細な御報告を頂いておりまして、前回検討会で資料をお配りさせていただいておりますので、ごらんいただけたらと思いますが、こういった形で新しい6年制を基礎とする大学院教育ですとか研究者の育成につきましての言及があるということでございます。
 薬学系の大学院博士課程、とりわけ4年制課程についての最近の議論の経緯について説明した資料は以上でございます。
【永井(良)座長】  
 ありがとうございます。
 それでは、橋田先生から資料の提出があるということですので、御説明をお願いしたいと思います。
【橋田委員】  
 橋田でございます。今、伊東さんの方からも御紹介を頂きましたが、日本学術会議は科学者コミュニティーを代表する立場で、いろいろ学術の在り方、あるいは高等教育の在り方について議論をしています。その中で薬学委員会は、薬学に関する問題を議論しまして、適宜、提言や報告を出させていただいております。
 既に御紹介いただきましたように、昨年、学術会議全体として「日本の展望」と提言を出し、その一部として「薬学分野の展望」という報告を発出させていただきました。今日は、薬学教育、特に6年制学部教育の上に立つ博士課程の在り方、またその質保証の問題等を議論するということですので、一「日本の展望」等々以前と重なる資料もございますが、少し用意させていただきましたので、説明をさせていただきます。
 ただ、先日お話を頂きましてから、ずっと学会等で出ておりましたので、一部内容が欠けていましたり、新しい資料というよりは、これまでのものの焼き直しもございますが、順次説明をさせていただきます。
 資料5のように、今日の内容は1から7まで番号を振らせていただきましたが、薬学教育の充実に対して学術会議でどのような議論をしているか、大学院の在り方、更に将来に向けてサイエンスとしての薬学を今後どのように構築するか、またそれを教育等とどのように一体化していくかという議論について紹介させていただきます。それから、前回永井座長から外国の情報は考慮する必要があるかという質問も頂きましたので、少し関係資料を入れ、あとはコアカリキュラム、入学定員等々に関する問題についても、少し触れさせていただけたらと思っております。
 最初にありますのが、前回も御報告させていただきました、「日本の展望」の中の「薬学分野の展望」として出ているものでして、これは、生命科学の各分野例えば臨床医学、基礎医学、農学、食料科学等の間で、それぞれ同じフォーマットで議論をまとめております。その中で、4.社会のニーズへの対応、それから次のページの5.これからの人材育成という問題に対して各分野で議論をし、更に分野横断的に意見交換をしてまとめましたので最初に説明させていただきます。
 2枚目の人材育成のところは、先ほど御紹介いただきましたが、先に社会のニーズという論点を見ていただきますと、最初に薬学を社会に対して非常に大きな責任を持つと位置付け、そういう役割を果たすために、専門職としての薬剤師職能に対して諸制度が整備されていること。それから、いわゆるチーム医療における薬剤師・薬学の役割が3番目。地域医療における薬剤師の役割、専門薬剤師制度、それから、社会構造の変化としての少子高齢化社会における薬学の在り方と議論を進めています。そして、最後は生命科学、医療に関わる専門職として倫理面への意識を強く求める内容になっており、これが箇条書にまとめられています。
 人材育成につきましては、先ほど紹介されましたが、学部から大学院への一貫した教育体制の構築、またこれは後ほど触れさせていただきますが、将来における薬学生の数の適正化についても十分な検討が望まれるということで、これは、臨床医学の先生方からも強く御意見を頂きました。
 研究者の育成につきましては、育成体制とキャリアパスの整備を提言し、これも後ほど議論させていただきますが、いわばpharmacist-scientistsと呼ぶべき人材の育成にも期待を寄せています。また、生涯教育も大事な視点であります。
 次に移らせていただきまして、これは更に前に、紹介をさせていただいておりますが、平成20年に薬学委員会の中の医療系薬学分科会、この場合の医療系薬学というのは、例えばこの検討会の第1次報告で臨床薬学・医療薬学という言葉で定義されているものにほぼ相当すると考えていますが、そこから「医療系薬学の学術と大学院教育の在り方について」という報告を出しております。
 その中では、医療系薬学をどう捉えるかについて、もちろん臨床に基盤を置いた薬学研究、あるいは薬剤師の活動は医療系薬学の中核ですが、併せまして、非常にすそ野の広い薬学諸分野の中で、少なくとも最終的な医薬品の開発、生産、供給、あるいは安全性の担保ですとか、そういう医薬品に直接関わる分野、領域は全て広い意味での医療系薬学として考えて議論するというのが我々の立場であります。そういう意味で、ここにある関連学問領域、これらを広い意味での医療系薬学として捉え、その目標・課題として、それぞれの研究の推進、研究者と教育者の育成、専門薬剤師の育成、個別化医療の推進、人材育成、トランスレーショナルリサーチ等の推進を上げました。
 我々の立場からしますと、大学院の在り方という意味でも関連する学問領域としてこれを提案させていただいたわけですけれども、実際の大学院の設置においては、各大学においてこういうものを基盤として更に先端的な領域の研究分野を計画されると思いますし、また例えばこれを大学院教育の中に組み込むということになりますと、例えば30単位の中に当然座学的なものも入ってきますので、その際はこういう領域をもっと融合的に、あるいは出口である医療や医薬品開発を見据えた形でカリキュラムの設定が行われると一応認識しております。
 その次は、医療系薬学教育が目指す養成人材像ということで、学部と大学院を書いておりますが、学部は6年制教育で、いわゆる薬剤師教育を意識しておりますので、医薬品の適正使用、健康管理、介護、開発、生産――生産は、この前の資料にもございましたけれども、総括製造販売責任者は薬剤師であることが薬事法で定められておりますから、更にほかの分野、行政、マスコミ等々にもやはり薬剤師の働く場があると考えます。
 6年制学部の上に立つ4年制の大学院では、そうしますと、ここにありますように、広くそういう領域で活躍する研究者――研究者というところで広くとっておりますが、それから教育者、個別化医療に関わる専門薬剤師、国際社会での活躍、トランスレーショナルリサーチ、いろいろな分野との連携、行政での活躍等々を上げております。 そういうことで、我々としましては、ちょうど6年制がスタートして2年目、3年目ぐらいのタイミングでしたので、次の大学院はどういう形でつくるべきかという観点からまとめさせていただきました。
 ポイントは、各大学においていろいろ御事情があると思いますので、できるだけ柔軟に考えられるように、大きな可能性の下に各大学でミッションを絞り込んでいただいて個性化を図るというスタンスを提案するのがその趣旨であります。
 その次をめくっていただきまして、これは望月眞弓委員におまとめいただいたもので、「専門薬剤師の必要性と今後の発展」という提言です。これも平成20年に出しております。簡単に説明させていただきますと、専門薬剤師は何を担うかということで、1から4まで、ハイリスク医薬品、ハイリスク患者の管理や副作用の問題とか、医薬品情報、先端的な薬物療法の導入等々、そのために必要な方策として、第三者機関による認定制度や社会による認知に向けて広報を挙げています。この専門薬剤師の提言は先の医療系学術の在り方に関する報告と教育の問題で連動した構造になっています。
 ただ、これについては、医学の方で専門医制度が進んでいるわけですが、薬学の方も第三者機関による認定制度の制度化等についても議論しておりましたけれども、まだ残念ながらこれはそこまでは動いていないのが現状です。
 ここまでの資料の後に、実はこれを忘れたのですが、先ほど中教審の答申で大学院の実質化の話がありましたけれども、その前に学部教育の質保証や学士力についての答申もありました。これに対して、これは学術会議全体の議論ですが、結局学士力を上げるのに、医療系の資格がある分野は、いわゆるコアカリキュラムがあるのでそれで教育の質は担保できるだろうと。それから、いわゆる認証制度、アクレディテーション等の制度、工学系にはJABEE等がありますので、その活用も考えられる。それとは別に、参照基準という言葉だと思いますが、イギリスの制度に倣って日本でも標準的な学部教育の内容の制度化を学術会議として手がけると。薬学にも4年制の学部があるということが必ずしも十分認識されておりませんので、そのあたりは我々もきっちり説明をさせていただいて、6年制教育についてはコアカリキュラムできっちり質を担保し、4年制の方は参照基準の制度に我々も乗っていくという形を今考えております。
 次にお話しさせていただきますのは、前回の委員会で少し申し上げました、今薬学委員会で作成しています提言でして、「国民の健康増進を支える薬学研究―レギュラトリーサイエンスを基盤とした医薬品・医療機器の探索・開発・市販後研究の高度化を目指して―」というものです。これは、先ほどの「薬学分野の展望」というのがいわゆる総論的な話でしたので、もう少し具体的な話を詰めたいということでこれに取り組んでおります。これは現在学術会議の幹事会にかかっておりますので、願わくば近々表出できればと考えております。
 ここでは、今後の薬学研究の在り方を議論しているわけですが、そのときの一つのキーワードとしてレギュラトリーサイエンス、これはこれまで使われてきた意味よりも広い意味で使っておりますが、これを薬学研究の土台の一つに位置付けるということが提言の柱になっています。
 次にめくっていただきまして、これがその提言の目次、全体では28ページ程度の文章ですが、下の方から申しますと、今後薬学が集中的に取り組むべき課題として、1から9まで、個別化医療、再生医療、ファーマコインフォマティクス、抗体医薬品、がん治療等々を挙げております。これが各論となるもので、それに対して、薬学研究をもう少し大きく見る立場から、医薬工連携のような連携の視点とか、トランスレーショナルリサーチの視点、それから国際調和の問題もあろうかと思いますが、そういう問題ごとにこれまでの薬学では十分に担えていなかったという反省の下に、そのような問題にきちっと取り組むという姿勢から議論をしております。
 そのときの一つの柱として、1ページ戻りますけれども、レギュラトリーサイエンスを取り上げておりまして、これは医薬品の承認申請に関わる知識や制度、評価手法であったりというのではなく、上に定義を書いてありますが、科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予想、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学をレギュラトリーサイエンスと位置づけると。当然そうしますとこれはいろいろな、食品の分野も工業製品の分野も全てに関わるわけですが、その中でも医薬品、医療機器は非常に関連が深いので、我々のところでまず議論をさせていただいたという構図であります。
 こういう議論をしておりますので、薬学教育においてもこれを反映した、しかし狭い意味で薬事行政の知識を深く教育するというのでなくて、もっと薬学の出口、医薬品の本当の開発とか実用化、患者さんへの適正使用、育薬、そういったことまでを全部包括して構築していくような新しい発想に基づくサイエンスを薬学の中につくりたい、その一つのキーワードとしてレギュラトリーサイエンスというものを位置づけるという趣旨です。
 まためくっていただきまして、今申し上げました話を、私が作りましたポンチ絵で簡単に説明させていただきます。左側に過去と書いてありますが、薬学は非常にすそ野が広く結果として何々学というのが横に並んでいまして、最終的にはみんな薬を意識しているわけですが、実際に教育においてアウトプットとして育てた人材は、この各何々学の上に出てくるぐらい、薬剤師さんにしましても研究者にしましても。これを職場教育と申しますか、社会に出た後の現場教育で育てていただいたというのが、これまでの体制だと思います。
  これに対して、最近では例えば創薬、あるいは医療とか薬剤師さんの病棟活動とかを旗印にして、大学の転換を図っていく、あるいはこれは4年制、6年制に対応するとも考えられますが、そういうことを進めているわけで、その上には当然医薬品開発や充実した医療があると信じられています。
 しかし、頂点のあたりについては、実は医工連携という形で非常に今動いておりますし、橋渡し研究も、最終的には医薬品開発がありその上に更に患者さんがおられる体制の中で進められています。我々は、実はこういう構造の中で薬学が十分責任を果たし得ていないという認識を持っていまして、特にこの横並びの学の集団と創薬、病棟活動あるいは臨床という間のギャップがまだ埋められていないんではないかと危惧しています。ここを埋めるために、レギュラトリーサイエンスを、一つあくまでも一つの柱ですけれども、取り上げることによって、総合的なアイデンティティーを持ったサイエンスに薬学が変わっていこうというのが提言の趣旨です。
 あと、図は4枚ですが、以上で学術会議の話を終わりまして、以後外国の話を前回話題になりましたので説明させていただきます。
 次の資料は、Education of Pharmaceutical Scientists and Pharmacists in Europeというタイトルがついていまして、ヨーロッパの薬学教育の話です。これは実は、私が十分資料を集められませんでしたので、内容も曖昧なものになります。一つは、ボロ-ニャデクラレーションの話で、ヨーロッパが高等教育の統一を図っているということ。制度を統一して、学生も教育者に対しても非常に流動性を保証しているということがありますし、英語を基本にして教育をするというような形もあり、教育改革が進んでいるというのが一つ目の話題です。
 二つ目は、これはオランダの薬学教育システムということでよろしいかと思いますが、今このボローニャ宣言のもとで、一般の学部教育は3年でバチェラーの学位を与えその後2年間マスターコースで学んで、この両方を組み合わせて一般の学部では高等教育の単位にするというような感覚かと思います。もちろんその上にドクターコースがあります。それに対して、薬学は3年のバチェラーの上に3年のPharm.D.プログラムがあり、合計6年ですから日本の制度とも合っております。研究者になる場合は、それぞれから更にPh.D.コースに入ることになります。それから、下にはコンテンツ・ディベロップメントと書いてありますが、これが教育内容であり、更に右側にスキルズ・ディベロップメントと書いてありまして、いろいろなスキルも含めた教育、これは恐らく6年制の方のPharm.D.の教育の中身と御理解いただいたらいいかと思いますが、そういうシステムになっております。それから、資料にはありませんが、カリキュラムの統一、コアカリキュラム、それの見直し、評価の問題等が体系化されていることをお話を伺っております。それが内容でございます。
 それから、次のページに移っていただきまして、これはますます曖昧な話になってしまうのですが、ヨーロッパで、特に医薬品の効率的開発何を目指して人材育成を横断的に進める方針が立てられているということ。それがInnovative Medicines Initiative(IMI)という名前になっているのですが、Strategic Research Agendaというものを出していまして、その2行目の後半ですが、European Medicines Research Academy(EMRA)という組織をつくって人材育成を一緒に、統一的に進めるという、幾つかのヨーロッパの主だった大学が連携しているという資料がありました。
 トランスレーショナル・アプローチとかあるのですが、要するに、下に書いてあるように、ターゲットグループはプロフェッショナルだと言っていますから、いわゆる学生の教育というよりも、サイエンティスト、もう既に社会へ出ている人も含めた養成プログラムだと思います。ワーキング・イン・ファーマシューティカル・リサーチ・アリーナですけれども、レギュラトリーサイエンティストも含まれるということで、特にこれは医薬品の開発に向けた人材育成のプログラムのようですが、ヨーロッパ全域が今ライフサイエンス、医薬品開発に非常に力を入れておりますので、人材育成をこれで図ろうとしているようです。
 それから、その次の資料ですが、これも前に少しお話しさせていただいていると思いますが、pharmacist-scientistsといつも学術会議の報告で書いている内容に相当する話です。pharmacist-scientistsという言葉に対してもいろいろな捉え方があるかと思いますが、当然、薬剤師にはリサーチマインドが必要だということで、例えば先日ある学会で、それこそ永井委員長、先生のチーム医療の報告を踏まえて、これは東京大学の薬剤部長の鈴木先生のお話でしたけれども、チーム医療の現状と、その中で病院の薬剤部の薬剤師さんが、問題意識を持って取り組むことによって新しい副作用を見つけたり、医療の改善に参加しているというお話でした。これが当然一つの方向性であります。
 それに対して、もう一つはここに資料がありますが、アメリカの労働統計で、中にMedical Scientists, Except Epidemiologistsという分類があります。これを見ていただきますと、メディスン、医学を基盤としてリサーチをする職種。医療現場の医師ではなくて、リサーチをする人たち。その人たちは、メディカルサイエンティストと呼ばれ、結局医学の教育制度が日本とアメリカで違いますので意味が違うのですが、上の方の文章の3行目、includes physicians, dentists, public health specialists, pharmacologists, and medical pathologists等々のバックグラウンドを持ち研究を職業としている人がこう呼ばれています。学位は、Ph.D.もM.D.もいて、両方を持っていると望ましいという文章もあります。
 その人たちが、アメリカの統計でいいますと106,700人いて、各方面で研究に従事している。教育機関にも3万人おられる。それからヘルスケアの関係にもおられるということですけれども、ファーマシューティカル・アンド・メディスン・マニュファクチャリング、これは実際には製薬会社だと思いますが、製薬会社に14,000人そういうバックグラウンドの教育を受けた方がいる。それから、ホールセールといいますか、そういうところにもいる。それから、ガバメントには、これは2,100になっておりますけれども、これは中央政府でして、2006年の前の資料では州レベルにも同じぐらいおられましたので、恐らく合わせると4000人ぐらいいるのではないか思っております。
 これで申し上げたいのは、教育制度や医療制度が違いますけれども、アメリカではこういうバックグラウンド、結局医学、特に基礎医学と言っていいのかもしれませんがそういう教育を受けて、かつPh.D.を多くの方は持っている、そういう人がいろいろな職場で働いて社会に貢献している。
 それに対して、もちろん日本も同じ構造になっていればいいのかもしれませんが、教育のシステムが違い、医師のキャリアパスも違いますので、例えば薬学で6年制の学部教育を受けて、更に大学院へ進んでPh.D.を取った人は例えばこういう職種を一部担っていくこともできるんではないかと。こういうことを、提言させていただいているわけであります。
 最後に、論点整理という観点から、最初に上げました7つを観点について若干意見を述べさせていただきます。繰り返しになる点は省略するようにいたしますが、薬剤師養成につきましては、これはもう我々薬学教育に携わる者が頑張ることでございます。それから大学院。サイエンスとしての薬学のアイデンティティーの一つの在り方としてのレギュラトリーサイエンスにつきまして今後も議論を続けていきたいと思っております。
 外国は、余り具体的なデータではありませんでしたけれども、いろいろな、恐らく我々が議論していることと関係の深い話題、プログラムもあるように思います。
 養成人数につきましては、これは先ほど市川委員がおっしゃったことと一緒でございますが、本当に社会のニーズとして、どれだけの数が特に大学院に関しては求められているかということを意識した形で、大学院をつくっていくとことが必要かと思います。ただ、同時に例えば薬科大学は現在七十数大学ありますので、それぞれ数人の定員をつくってもそれだけでもう何百という数字になるという現状もありますので、そのあたりをどう考えていくか。ただ、ある程度中身を伴ったものにしませんと、まさに先ほど市川委員がおっしゃったとおりで、つくっても実質が伴わなかったり、あるいは実際に数が多いのか少ないのか分からないところもありますので、その辺の議論は是非必要かと思っております。
 それから、学部につきましても、学術会議でも他の分野からも薬学の入学定員に対する御意見を頂いておりますし、これは論点整理でもそういう方向になっておりましたけれども、問題意識を持っております。自然にといいますか、自由な競争の中で当然そういうふうに動くということは一つの考え方ですが、同時に、例えば平行して、少し全体で数の議論をすることも、場合によっては薬学の当事者能力を示すという点において、必要かなと思っております。
 次の話は人的資源の問題ですが、これは6年制に移行して以来、国立大学からは是非文部科学省にもサポートをお願いしたいと、申し上げてきたわけです。しかし、これを離れて、今学部の中で特に若い先生方が教育の負担が重く非常に疲弊しているという問題も提起されているわけで、それを受け身の形ではなくて、全員が前向きにもっと教育に参加していく形の改革を通じて、人的資源を有効に使うような手だても、これは各大学の中でのリーダーシップの問題かもしれませんが、考えていいのではないかと思っております。
 そういうことで、ちょっと最後にまとめようと思いましたのは、薬学が非常に大変だ、将来が暗いという話は出るとおりでありますけれども、でも、優秀な若い先生方も大勢おられますし、社会に対して、あるいは入学してくる学生さんに対して、やはり我々中にいる人間としては夢を語りたいと思っています。そういう意味で、定員の話もそういう方向につながればと思いますし、それから、コアカリキュラムの問題も、非常にすばらしいモデル・コアカリキュラムをつくっていただいたことでこのように6年制教育が離陸したわけですけれども、一回りしましたのでその見直しというのは是非考えていただければと思います。それに若い先生が加わることによって、モチベーションも上がると思いますし、人的資源の問題も、若い人たちを入れて全員で何か工夫する中で、モチベーションも上がって、いい形で教育改革ができればと思っているところでございます。
 以上でございます。どうも長くなってしまいまして申し訳ありません。
【永井(良)座長】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局から御説明いただいて、橋田委員からも問題提起いただきましたので、併せて自由に御議論いただければと思います。
 私の印象ですけれども、医学研究もそうなんですが、今度の原子力での事故も見ていて思うのは、やはりフィールドワークの重要性です。メカニスティックな研究は皆するのですけれども、また、それが一番大学で大事ですけれども、もっとフィールドワーク、例えば疫学研究などが必要です。医療では臨床疫学研究が非常に盛んになっています。現実に現場にいる人たちができるのはそういう研究です。もちろん両方するのが望ましいですけれども、なかなかそれは大変です。教室としては両方やらないといけませんし、ある程度分担してもやっていかないといけない。
 そうしますと、薬学の研究の中で、薬剤疫学であるとか、もっと踏み込んだ医療と統合した疫学研究、こういうものが恐らくとても重要になってくるだろうと思います。そのときに、教育病院をしっかり持っているところと持っていないところではきっと差が出るだろうと思います。その辺はいかがでしょうか。
【橋田委員】
 私がお答えする立場かどうか分かりませんけれども、医学教育と違いまして薬学の場合は設置基準の中に教育病院とか、必要と思われるものが制度的にないということが一つの問題点としていつも議論されているかと思います。その意味で、我々国立大学の場合は幸いに大学に附属病院がありまして、実務実習等々、あるいはふだんの疫学的な問題とか薬物治療の問題等も含めまして全面的に協力を頂く体制になっておりますので、これはうまく機能していると思います。
 それに対して、そういう教育病院がまさに制度化されていない場合、それは必要条件ではないのだと思いますけれども、そのような環境の大学がフィールドワークに相当する研究の場を、どのようにしておつくりになるか、その協力関係の構築が問題だと思います。医学部ではもちろん附属病院があるわけですが、それに加えて学外にも教育の場をお持ちになっていて、臨床教授とかいろいろな称号を出されてやっておられると思います。そういうシステムを、我々のような国立大学の薬学部でも更に広げる必要があると思いますし、特に直接病院をお持ちでないところは何かそういうシステムの制度化、それをこの大学院の設置と並行して考えるというのは大きな方向だと思います。
【市川副座長】 
 違う問題でちょっと橋田委員にお聞きしたい。資料の中で一番最後のアメリカのシステムの中で、ファーマシューティカル・アンド・メディスン・マニファクチャリングというか、いろいろな領域の博士を持っている人たちが創薬という広い意味での製薬業に関与している。これは非常に日本と違うような感じがするのです。アメリカの製薬業にはM.D.、Ph.D.の方々が非常にたくさん入っているけれども、日本では余り入っていない。しかし、日本の製薬業では、大学の医学部のいわゆる先生が言うフィジシャン・サイエンティストが中心となって、製薬業研究所と連絡をとりながら研究を進めていくという独特のシステムをつくっています。薬学の博士をつくっていったときに、本邦の製薬業では絶対数が少ないフィジシャン・サイエンティストの埋め合わせができるだけのファーマシスト・サイエンティストが必要とも言えますが、それでは受皿の製薬業研究所にその要望がどの程度あるかについて伺いたいし、その数が多いことを期待したい。いかがでしょうか。
【橋田委員】 
 先生がおっしゃるとおりでして、我々としてはそういう人材を養成して社会に供給していきたいと思っております。ただ、受皿の問題もありますし、そうした人材が社会からまず認知されないといけませんので、それをどういうふうに進めるか。我々が幾ら観念的に主張しても限界がありますので、やっぱり実績というものが最終的には必要になると思います。
 そのときに、そのファーマシスト・サイエンティスト、Ph.D.でもあるわけですが、あるいは今の6年制度のもとでの卒業生でも、卒業実習もしましてかなり研究者マインドも持って、実際には研究ができる人が育ちつつありますが、そのことがやはり企業の側でまだ十分認識されていないところがあると思いますので、まずそこから努力していかないといけない。その上で更にPh.D.ということで、これは頑張ってやらないといけないと思っていますし、是非例えば国公私立学部長会議のような場でも取り組んでいただけたらと思っております。
【井上副座長】  
 よろしいですか。
【永井(良)座長】 
 はい。
【井上副座長】  
 レギュラトリーサイエンスということを非常に注目されていて、まさに私もそういう方向というのは極めて重要だとはよく認識しているつもりです。恐らく社会的ニーズ、特にM.D.からの要望とかいろいろなことを考えても、薬学の目指す一つの方向であるということは間違いない、それを推進しなければいけないというのも本当に間違いないんですが、なかなか、では人材を、教える側の教員の確保とか、そういうのにもかなり難航するというのが実態ではあると思うんです。そういう人材を育てていかなければいけないということは間違いなくそうですし、そういうことを積極的にやろうとすると、とりあえずは薬学の外から人材を確保するとか、そういうことをやっていかなければいけないだろうなということを非常に強く感じております。それを冒頭の今の大学院をつくるという段階でどこまで浸透しているかというと、なかなか現実には難しいところもあるんだろうなとはちょっと実感しているんですけれども。そこをどうするかですよね。
【橋田委員】  
 そうです。おっしゃるとおりだと思います。ただ、本当に鶏と卵の関係ではありませんけれども、育てる人材ということもあり、だけれどもそれを教育する人間もいるということで。本当に固定的に考えればなかなか大変なんですけれども、ただ、これも我々なかなか十分参加ができていないのですが、例えば医工連携とかトランスレーショナルリサーチとかスーパー特区とか、そういうプログラムではかなりこういう領域がサイエンスとつながる形で動いております。恐らくそういうところへ薬学の研究者がより積極的に関わっていければ、ある程度そういう素養といいますか、知識といいますか、そういう力がついていくと思います。その辺への、進出と言うと言葉が違うかもしれませんが、そういうことも含めた提案として考えております。
【永井(良)座長】  
 ほかにいかがでしょうか。望月委員どうぞ。
【望月(正)委員】  
 レギュラトリーサイエンスということですと、治験、薬剤疫学、薬剤経済学、生物統計、臨床試験、そういうのは全て薬学教育モデル・コアカリキュラムに入っています。ただし、入っているけれども共用試験の範囲外になっています。範囲外になっている非常に重要なモデル・コアカリキュラムの内容をいかに、また誰が教えるかが問題です。大学に教える人がいなければ、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)とか国立医薬品食品衛生研究所に勤めている人を引っ張ってくる。また、一時的にでも学生を、又は教員をそのような機関に入れて少なくとも数年間は人を育てるしかしようがないと思います。
【井上副座長】  
 それは、PMDAに関してはPMDA側から実際に薬学にアプローチして連携大学院とかそういうことをやろうじゃないかと言ってきているわけなので、チャンスだと思います。実際に岐阜ではもうそういうスタートを切っておられるわけなので、それをもうちょっと各全体に広げるということは多分必要であろうと思います。
【永井(博)委員】  
 今、先生御指摘いただいたように、私どものところではPMDAと連携大学院をつくって、それで人材養成ということで、できるだけレギュラトリーサイエンスの部分を強化したいということがあります。
 もう一つは、我々のところは単科大学ですので、総合大学、岐阜大学とも医学部、工学部と連合大学院を、こちらは連合大学院をつくって、やはりレギュラトリーサイエンスを入れていこうということでやっておりますけれども、一番もとにある本質は何かというと、薬学6年制になったときのスタートに人と物という考え方があって、今の薬学の教育が、全く物の教育が主体であって、人に対する教育がなかったと。今4年制、6年制それぞれの学部の上の大学院のことも、非常にモノの教育は4年制学部の上の大学院の方、そちらでどんどん育てていって、人に、患者さんに対していかにスキルフルな、あるいはベネフィットの多い教育者あるいは研究者を育てていくか、現場の人を育てていくかというのは恐らく6年制学部の上の大学院の教育の目的になると思うんですけれども、ただ、レギュラトリーサイエンスは両方とも要るんだと。多分薬学の一番大きな特徴は人も物も両方ともわかる、両方わかる人たちが非常に多くいるということが非常に大きなところだと思うんです。
 それですから、やっぱりレギュラトリーサイエンスの部分というのはやはり薬学の一つの特徴ではある。一番典型的な例が環境の問題の、厚労省なんかでも環境問題の関係のところには薬剤師さんが大変非常に多いし、そちらが得意分野になっているということで、人と物の両方を非常に詳しく知っている人たちが育っていくという、それが最終的にはレギュラトリーサイエンスの方に結びつくのかなと思ってはおります。
 我々としては、今のお話じゃありませんけれども、どう教育をするか。教育者がいないので、PMDAにお願いして連携大学院を組んでいろいろな情報を、そしてこちらももちろん提供をするという形でやっていっております。成功するかどうかはまだ今分かりませんけれども、何とかしてうまくいきたいと思ってやっています。
【永井(良)座長】  
 医療の側から申し上げますと、レギュラトリーサイエンスは大事ですけれども、レギュレーションがやたら厳しくなってもしようがないわけです。ですから、現場の患者さんに接したときの思いをベースにしたレギュラトリーサイエンスでないといけないわけで、そこの教育をどうするかというのはなかなか大きな課題ではないかと思いますが。
【永井(博)委員】  
 それが非常に、先生御指摘のとおりでして、そんなファーマシストが欲しい。すなわち現場を知っている、患者さんを知っている人たちがそのレギュラトリーサイエンスに入ってほしいというのがもともとPMDAの考え方なんです。ところが今、方向としては、我々がつくった連携大学院も創薬科学の方の大学院の連携大学院なんです、まだもちろん6年制の上の大学院ができおりませんので。ただ、将来的にはやはり臨床現場で患者さんに接して、そのマインドを持った人たちがそちらに入らないと本物ではないと思っております。
【市川副座長】  
 今PMDAの話で、結局今そのとおりで、モノの方が中心になって、製薬企業も途中で開発その他が全部わかる人、そういう人が主に入ってきていらっしゃると思うんだけれども、問題は、その入ってこられた方が再び、どうなんだろう、ずっとPMDAにいるわけではないから、また次に動くというその動き、人の流れ、要するにPMDAの経験、あるいはその前に製薬企業での開発の研究、それからPMDAでのレギュレタリーを含めたいろいろなことの知識、それをまた誰にフィードバックするんだというところですよね。そこのところで、例えば製薬業にはすぐ戻れないから、3年間とか4年間とかあるルールがあって、戻れないというルールがある。そうするとそこに大学がクッションになるはずであろうというようにして考えるわけだけれども、実際には大学が受皿を持っていないからそういう人は入れないと。ということは逆に言うと教育がそこがなされてこないという、そこに悪循環が起きているような気がするんです。
 もちろん人を対象とするM.D.の方がどんどん入ってくることも非常に大事だと思うんだけれども、実はその流れ、流れがどうも日本の場合うまくいっていない。薬学だけの問題ではないと思うんだけれども、大学と、それから企業と、それから今のPMDAを含めた行政的なところ、そういうところがぐるぐると回るような組織が一つでき上がったら、博士という非常に高いレベルを持っている人においてもそれを発揮する場所が出てくるということになって。今はどうしてもそれが自由に動いていないから何か出口が非常に狭くなっちゃっている。出口というか受皿が狭くなっているという。
【永井(良)座長】  
 いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【生出委員】  
 製薬企業の話とか出ていますが、薬局でもやはり6プラス4の薬剤師、スーパー薬剤師のような在り方で、地域の指導者になれるという形のスーパー薬剤師の誕生を望んでいるのですが、そのためには、大学院のときに疫学研究だとか、例えばレセプト・データとか特定健診のデータの提供を基にした現場ならではの研究であったり、それから、安全性対策ということではメトトレキセートの安全対策の効果や影響を検証したりというような、橋田先生の報告書の中には専門薬剤師という言葉が多く出て参りましたが、どちらかというとジェネラリストとして幅広く、技能、知識、態度というのが優秀な薬局薬剤師が業務に当たれば国の医療安全にも薬剤師が貢献できるのではないかというような在り方にしていってほしいと思っています。
【永井(良)座長】  
 臨床研究をするときに、医師とのパートナーシップが大事です。中核病院でも大学病院でも、大学院生が来たときに「何しに来た」みたいなことが起こりかねない。あるいは、患者さんの情報にアクセスするにもいろいろなバリアがあります。そういうところを薬剤師さんたちがどうやって臨床研究に参加できるかという仕組みを考えないといけないだろうと思いますけれども。一番簡単なのはパートナーを組んで共同研究というような形にしていくということだろうと思います。
【永井(博)委員】  
 そのことに少し関連するんですが、これはお願いなんですけれども、例えば医学の学会の中で、私が所属しているようなアレルギー学会なんかですと、一応学会の中にコメディカルのというか、薬剤師の人たちを中心にした医師と薬剤師の間の共通の問題を話し合う学会をオフィシャルに行っているんです。そういうことで、恐らく医学部の中でも、特に、薬剤師の場合の専門薬剤師制というのは今ほとんど疾患別のような薬剤師なんです。がんとか、あるいは感染症とか、あるいは生活習慣病とかそういうような専門性が、医学部の専門医の2階建ての部分の人たちのところがきているんです。内科とか外科とか小児科ではなくて、2階建てのところで薬剤師が入っていっている。ですから、特にそういう学会では、リウマチにしろアレルギーにしろ、あるいはがんにしろ、そういうところでは是非ともお願いできれば、コメディカルとのジョイントした学会の在り方というのか、そういうのもどんどん推進していただくようなことをお願いできたらと思います。
【永井(良)座長】  
 今、いろいろな医学会でそういう委員会ができております。それは医療をどうやってチーム医療としてやっていくかということですが、研究や人材育成ということでは多分それほど行われていないのではないかと思います。
【平井委員】  
 先ほど永井先生がおっしゃったパートナーシップという部分なんですけれども、大学病院の中で自主研究をドクターがやりますが、その場合、治験であればCRCがついてできますけれども、自主研究の場合は、CRCをつける余裕のある研究もありますけれども、なかなか難しい。そういうところにCRC的役割で、例えば大学院生がそういうところに入っていってやっていけるような制度を、もちろん共同研究ですけれども、そういうのができると非常に効率的かつ効果的じゃないかなと思います。
【永井(良)座長】  
 そうですね。実際看護師さんたちはそうしています。大学院生であったり、あるいは既に教員になっておられる方が来られていますし、患者さんの情報も随時見ることはできます。その辺の手続を踏めば問題ないと思うんですが、単独ではやはり難しいのではないかという気がいたします。
【平井委員】  
 そこはだから大学院として連携するといったような形を持っていくと、我々としてもそういう形で人材が来ていただけると非常に有り難いですし、そういう方向性ができないか。この辺は村上先生に伺ったらいいと思うんですけれども、結局新しい承認をするときに治験というのと自主研究というのとスタンダード二つございますよね。だから、それを将来的には一つにしていくためにそういったところの自主研究の精度を高めていく、あるいはそういうものの制度を考え直すという、そういうところにつながっていけばいいんじゃないかなと思っているんですけれども。
【村上委員】  
 振られましたのでお答えさせていただきます。制度の話となると今回の議論とは別な話になるので、ダブルスタンダードの現状をどうするのかという話を議論するよりも、臨床研究あるいはトランスレーショナルリサーチといったものを推進できる基盤が今、日本ではしっかりでき上がっていないことを話題にする方がよいのではと考えます。この基盤ができ上がっていない大きな理由は、それに関わる専門家が余りにも少ないということに尽きると思うんです。専門家といっても1種類じゃないんです。先ほどからいろいろ議論されていますけれども、薬剤を中心にすえた研究者が一人いれば臨床研究ができるわけじゃなくて、それを支えるいろいろな専門領域の人たちが必要なのに、圧倒的に少ないのが現状だと私は思っていまして、その部分をどこか大学等々から供給していただくというのも一つの大事なポイントだと考えております。
 大学院ですから、当然ながら研究をしないといけません。臨床的課題を対象とする研究をやっていただくことで、将来は研究者になっていただくという道を示すことになりますが、一方で、具体的に言いますと、先ほど名前が出ましたCRC、それだけじゃなくて、モニターと呼ばれるCRA、データマネジャー、さらにはスタティスティシャンの生物統計家、もっと言うならば安全情報管理の専門家とか、薬事の専門家や品質管理の専門家とか、言い出せば切りがないんですが、こういう専門家を育てていただきたい。実のところ、この部分は、業界の方で苦労をして品質を維持されている、例えば認定制度をつくられたりして品質を維持されているんですが、そういったことを大学院の中での教育とマッチングさせることによって円滑に行い、専門家の人たちを育てていただけると非常に有り難いと思っております。
 ただ、この議論、今日の検討会で話題になるとは思っていなかったので、(十分練れたものではありません。)これを6年制の上に乗せる大学院でやるのでなく、今までどおり4年制の上の大学院でやればいいじゃないのか、といったことも検討しないといけないだろうと思います。ただ、やはり臨床的な部分が非常に大きく入ってきますので、今回の6年制の上に乗せるというのは一つの考え方だろうと思います。
【井上委員】  
 まさにすごくいい方向がある意味では出ているんだと思うんです。それが、現実にそれをやっていこうとするとここの難しさが何とも我々の悩みなわけですけれども、それはそれとして、こういう議論を、今ごろ出てきて、これはどういうふうに実際問題として、今もう既に動いているところで反映できるかと。こういうことのメッセージがプラスに伝わって、それが浸透できるかというところはどう考えていけばいいんでしょうか。そこを考えないと、ここで議論していても、なかなかそれが全体的な薬学のあれにつながっていかないと困っちゃうと思うんですけれども、その辺は。
【高柳委員】  
 ちょっと何か次元が違う話かもしれませんけれども、学部の実務実習が終わりまして、それは順調に進んでいると、余り大きなトラブルもなく進んだということで、非常に喜んでいるんですけれども、今回の6年制の上の大学院、これを改めて考えると、先ほど出ましたけれども、大学院生が臨床現場でいろいろ働きというか仕事しながら、そこから臨床的な課題を見つけてやるときに、やっぱり先ほど出たドクターなりいろいろな回りの教育するパートナーが必要なわけです。
 そういう点を考えると、先ほど最初に橋田先生が言ったんですけれども、6年制の上の大学院教育をするようなところは、やっぱり附属病院というか病院を持っていないとこれはなかなか実質的には非常にやりにくいだろうと。学部教育のときには、関連病院と密接な連携を持ってやっていけば大丈夫だというような言い方をしたわけですけれども、そういう考え方で実際我々、うちの大学もやってきて、まあまあやってこられたんですが、いざその上の大学院ということになると、本当にドクターからコメディカル、ナースも含めて、大学院生の薬剤師が行ったときに、そういう研究をしていることをやっぱり理解してくれるような環境でないとなかなか大きな問題だろうなと。
 先ほど、薬学部は附属病院が必置でないということですけれども、根本的な話になっちゃいますけれども、実は私のところは、病院を取得したいということで数年前から考えているわけですけれども、残念ながら仙台には取得できるような病院がないと。要するにほとんどが半官半民なんです。ですから、病院を持てないというのが今最大な課題なんです。これはその辺のところを何か、むしろ、薬学部はそういう附属病院を設置することが望ましいというか、これは前もこの委員から出ましたけれども、私はあえてそのときは言わなかったんですが、大学院教育に進んできて改めて、教官も含めてそういう研究の場、臨床研究の場が、やっぱり自分の大学の病院でないとなかなか難しいだろうなということを感じているんです。
【永井(良)座長】  
 それは結局最後に大学院の評価の問題になるわけです。もちろん研究はどこかにお願いすればできるかもしれませんけれども、その大学の成果では多分なくなってしまいますね、自分たちのところで主体的にやらなければならない。論文をきちっと主体的に出していくということを、どうやってこの枠組みをつくるかということを考えないといけないだろうと思います。
【市川副座長】  
 そうですね。それと、そのパートナーになる病院組織のコメディカルを含めていろいろな方の協力関係がそろっていなければいけない。加えて、研究に適した環境、設備がそろっていなければならない。そのため、大学と連係する相手は、どの病院であってもいいというわけでもないというあるクライテリアみたいな何かがあります。その上に立って、今、先生がおっしゃったような連携の仕方はどうしたらいいかを考えることが必要です。しかし、設置の申請段階で、いろいろな病院と連携しますという場合あるかもしれないというときに、これはいい、これは駄目というような基準がつくれるかどうかという問題、研究内容と、連携の仕方にかかってくると思いますが、大変に難しい問題があります。
【高柳委員】  
 学部学生のときの実務実習だと割と小さな病院でもある程度いいというようなことでやっていますけれども、大学院の臨床研究をやっていくということになると、やっぱりある程度の規模のレベルのそろったところでないとなかなか難しいだろうと私は思っています。
【井上副座長】  
 そうすると病院薬剤師のことしか考えていないようなことになって、なかなか、生出先生がさっきおっしゃったようなことからすれば、レギュラトリーサイエンスか何かの視点からすれば、もしかすると非常に意欲的な薬局とかそういうところでかなりのサイエンスが展開できるかもしれないという気もちょっと私はするんですけれども。だから。
【生出委員】  
 センチネル・プロジェクトみたいなのにも博士課程を出た薬剤師が積極的に参画していってというようなイメージもありましてそのようなお話をさせていただいたのですが。
【平井委員】  
 薬局に関しては、一つの薬局だけでというとなかなか難しいかもしれないんですけれども、いろいろなリサーチ・クエスチョンを解決するために例えばその地区の薬局とかそういう形でやればいろいろなサイエンティフィックな研究ができるので、そういう形で、必ずしも病院だけではなくても、本当に薬局でお願いしたいようなことっていろいろいっぱいあるんです。だから、そういうことを、私たちはなかなか時間も人手もないのでできないんだけれども、例えば大学院生がそういうことをテーマを持って取り組んでいくということができれば非常に効果的だと思います。
【生出委員】  
 そうですね。
【永井(良)座長】  
 ですから、その実習の場をどう確保していくかということですね。これは上手にやりませんと縄張り争いのようになっていく可能性があります。できるだけオープンに、透明性のあるシステムをつくらないといけないだろうと思います。
【平井委員】  
 例えば村上先生のところなどで薬科大学と連携して研究室を先生のところに持ってくるような形ができるのかどうか分からないんですけれども、そういうことは可能なんでしょうか。
【村上委員】  
 非常に答えるのは難しいですね。フィールドと言ったときに、一番なくてはならないものは患者様です。診療の現場です。ですから、病院がないと、あるいは病院に関連した施設がないといけないということです。その部分は置いておいたとして、臨床研究ということに限って話をいたしますと、それを支えるような、先ほども言いましたが、基盤たるいろいろな組織が必要になってきます。そういう組織の中へ学生さんに来ていただいて、お手伝いをしながら学んでいただくという、これは実現性が非常に高いと思いますし、難しい話ではないと思います。このときに、先ほどリサーチ・クエスチョンの話が出てきましたのであえて言いますと、自分がリサーチ・クエスチョンをつくって臨床試験を計画し、実施のマネジメントをするというところまで大学院生にさせるのではなくて、人のリサーチ・クエスチョンを検証する、あるいは探索するためのお手伝いを、ある臨床試験のスペシャリスト、プロフェッショナルの人について学んでいく、というのであれば非常に簡単にできると思います。
 一方で、自分のリサーチ・クエスチョンがあり、こういうことを検証したいんだということで、どこかよろしくお願いします、ということをしようと思うと、先ほど永井先生がおっしゃったように、しっかりとした整合性をとった形のフィールドをきっちりとつくっておかないといけないと思います。ただ、こういう話はあると思うんです。新しい医療技術を開発するとか、臨床研究で評価をするとかいうのは、今、日本の国の制度でいくと、特定機能病院がそのミッションを担っているのです。ほとんどの大学病院、ナショナルセンターの国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、あとプラス1ぐらいですか、それぐらいあるのですよね。そういったフィールド、本来それをやるべき病院たるものがあるのですから、それをうまくシェアをして連携を持って大学院教育をしていただくというふうな考え方も一つあるのかなと思いました。
【永井(良)座長】  
 それからもう一つは、先ほどちょっと申しましたけれども、大学院の評価をどうするかという問題になります。最終的には論文ということです。もちろん画期的な発明、知財の体制とかあるとは思いますけれども、それはそれとして、どうやって論文をつくっていったらよいかということですね、今の問題とも関わりますけれども。一番簡単なのは薬の研究です。動物実験も論文作成に重要です。それはそれで非常に大事だと思いますが、そればかりでもいけないわけで、臨床研究とのバランスをとらないといけない。その辺をどうやって進めるかということが非常に大きな課題になっていくだろうと思います。薬の作用を動物で調べるというのは、これは幾らでも研究できると思います。ただ、それだけの世界で人材を育てたときに、6年制の意味自体も揺るがしかねないことが起こりますね。
【市川副座長】  
 その評価で一番難しいのは、大学の先生としては基礎系の先生が多い。一部、臨床系、医療系の先生がいらっしゃる。その場合に問題となるのは、臨床系、医療系の論文の評価の仕方です。これまでも、基礎系の先生から見る判断と、医療系、臨床系の先生が判断されることがわりと食い違うというか一致しないことが今問題です。
 だから、今度新たに6年制の上に4年制をつくっていったときに、その評価をどうするかという問題です。例えば医学部の場合には、私もはっきりは分からないけれども、実際に人を対象として行われているわけだから、例えば極端な言い方、よく言われる1症例報告という論文でも非常に重要な意味を持っているものがある。薬学の場合にはどちらかというといつもサイエンスというのが基盤となり、サイエンスとしての普遍的なことがどう言えるのかということになります。
 だから、学位を評価するシステムが重要となります。薬学とそれ以外のほかの領域の人とも一緒になってその論文を評価できるシステムを作らないといけない。薬学領域の関係者だけの評価には無理がでてくる論文がおおくなると予想されます。だから、実際に、病院あるいはいろいろなところへ行かれてデータがつくられているときに、そこの人々とともに学位の認定をするとか、何かあるシステムをつくらないと難しいと思います。
【永井(良)座長】  
 確かに分かってくれる人がいないと臨床的な、あるいは疫学的な研究というのは全く評価されない。これは集団を扱うわけですから。しかも個人個人は分からないわけです。集団ではこういう意味があるということを明らかにするわけで、一人一人については分からないわけですから、これはメカニスティックなリサーチをされる方にとっては価値を見出(いだ)せない。昔、クロード・ベルナールという人が『実験医学序説』の中に書いていることです。統計的な法則は何の意味もないと。一人一人のことを予測できないものは全く意味がない。今でもそういう方はたくさんいらっしゃるわけです。それを理解してくれる人がいなければ絶対育ちませんし、領域全体としても変な方向へ行ってしまうだろうと思います。
【北澤委員】  
 ちょっとよろしいですか。
【永井(良)座長】  
 はい。
【北澤委員】  
 今先生方の御議論を聞いていて、基本的なところで文科省に聞きたいんですけれども、この6年制の上の4年の大学院というのは、6年制の薬学部を卒業した薬学士しか入れないんですか。
【伊東薬学教育専門官】  
 6年制の薬学部を出た人が、一般的な考え方としては基本ですけれども、4年プラス2年の大学院を出て、マスターを出て臨床系に行きたいという学生さんを入れるということも考えられます。
【北澤委員】  
 例えば理学部とか農学部で修士を取った人が薬学の4年の大学院へ行きたいと言ったら入れるんですか。
【伊東薬学教育専門官】  
 制度的には入れます。ただ、その大学の受験資格の中で、うちの大学は薬剤師の資格を持っている人が欲しいという大学も、取った人とかそういう人をとりたいという受験資格というふうに大学で設定すればそういう形になると思います。
【北澤委員】  
 逆に、6年制薬学部を出た人が医学部の4年の博士課程に入ることはできるんですか。
【伊東薬学教育専門官】  
 できます。
【北澤委員】  
 6年制の薬学部を出た人が、例えば東大なんかに公衆衛生大学院がありますよね。そういうのに入るときは修士課程からですか、それとも博士課程に入れるんですか。
【伊東薬学教育専門官】  
 修士からとなります。
【北澤委員】  
 修士から。
【伊東薬学教育専門官】  
 あと学力認定などをして、その研究歴とか別に個別認定をするという形になるかと。
【北澤委員】  
 分かりました。医学部、あるいは公衆衛生大学院は、そんなに数はないけれども、その中で薬剤疫学や医療経済だとか医療安全だとかレギュラトリーサイエンスっぽいことをやっている方もいますよね。なので、みんなが頑張って6年の上には4年の大学院をつくらなくちゃいけないんだと考えるんじゃなくて、本当に行きたい6年制を卒業した学生は医学部の大学院とか公衆衛生大学院に行くという選択肢もあるんだから、行ける人はそっちに行けばいいんじゃないかと思ったんです。
【平井委員】  
 うちの医学部の大学院のことを言わせていただけたら、今言ったような目的の人を入れる講座がまだないんです。なので、つくればありますということなんですけれども、つくればいいのかもしれないんだけれども、もしつくるんだったらやっぱり薬学の協力が得られたらうれしいなと。というのは、新しい講座をつくるのに人材を新しく雇う余裕がうちのような地方大学ではありません。なので、寄附講座にしていただくとか、何かそういうようなことをしていただくと非常に有り難いということがあります。
【永井(良)座長】  
 やはり大学院で研究している教官がいるから学生も育つと思います。ただ学部教育だけではなくて。また、大学院ができればそこにポストも増えるでしょうから、そういう人たちは研究と一緒に教育もすることによってスタッフの足りないところも随分補われるのではないかと思います。
【北澤委員】  
 別にアンチで言っているわけじゃないんですけれども、大学院を設置して6年足す4年で10年、10年間その人は学生として過ごすわけです。今、文系の学部とかで何が起こっているかというと、高学歴ワーキングプアの問題が大きくなっているわけです。そのことを余り軽視しない方が学生のためにもいいんじゃないかなと思ったんです。
【井上副座長】  
 だから、ともかく4年間研究をしてくれて、その後どうなるかということは考えないで、研究者、筋肉労働者が足らないから、それ的な意味で誘うことは誘うけれども、挙げ句の果てに、4年間たってドクター取ったのはいいけれども、職としては必ずしもケアしないとかできないとかというようなことになると確かにそれは大きな問題になりますので、そういうことも踏まえた上で責任を持って教育しなければいけないと。それはもう間違いなくそうだと思います。
【永井(良)座長】  
 あとは、何人育成するのが適当かという問題にもなりますね。これは、大学院生を支えるのは奨学金だと思いますから、その枠がある程度確保できるように。余りに多くても問題が起こるだろうと思います。そこはむしろ事務局はどう考えているのですか。申請のあった数だけ養成してよいということでしょうか。
【新木医学教育課長】  
 今の仕組みですと、基準に合えば、全体の、仮に全体で500人までとして、これを割り振るというんではなくて、今の大学院のつくり方、大学もそうですが、いい悪いに限らず基準を満たせば認めるという仕組みになっておりますので、そんな中で就職の問題や生活の問題いろいろ、ということで大変心配な点が多いのは事実なんですが、制度上は基準を満たせば認可、人数も申請した人数でつくれるということになっています。
【永井(良)座長】  
 ただ、いろいろな大学で定員割れの問題がありますね。大学の運営を見ていますと、余りにも定員割れが激しいとやはり問題であるという認識はあるようですけれども。
【新木医学教育課長】  
 定員割れの問題は既に学部の方で出ておりまして、これは先生おっしゃるように大変深刻な問題で、この定員割れをどう解決するのか。受験生を増やすか、若しくは定員を減らすかしかないと思っておりますが、これをどう対応していくのかというのは是非また次のここで御議論を頂く重要なテーマだと思っておりますが、大学院が同じようにならないということは大変重要だと思っているんですが、制度上それを防ぐ仕組みがないというのが我々の悩みであります。そういう意味で、せめてそのフォローをしていくと。そのフォローの中で、今出てきた研究する病院だとか医療の場が必要ではないか、それから、多種多様な教員が必要ではないか、そのほか、論文が必要ではないか、更に今出てきた、就職のみを指標にするというのも何となくどうかなという感じはしないことはないですが、更に定員割れの問題だとか、我々は、制度上基準を満たせばつくらざるを得ない。つくらざるを得ないと言うとちょっとネガティブ過ぎるかもしれませんが、つくると。できるという仕組みになっていますので、その裏腹として、見ていく指標として、今いろいろ御議論いただいたようなものをもう少し具体的に、病院のあるなしといった単純な指標ではないと思いますので、もう少し具体的なところも含めて我々が行政的にフォローして、これだったら、見られる方から言うと見られても仕方がないなというか、逆に受け取る方の学生や国民の方から見てこれだったら大体わかるなというような指標、観点、そういうものを出していただけると大変有り難いなと思っております。
【高柳委員】  
 国立大学は4年制が主で、6年制は余り人数がいませんが、私立大学の方は、大学院の定員は、それぞれ各大学、今言った定員割れということをかなり慎重に留意して、すごく少なく検討していると思います。法科大学院みたいに大学院をつくって定員割れて、すぐどうのこうのと、こう言われることが非常に一番皆さん各大学心配していますので、非常に数は慎重に、私が聞いたところでは各大学数人程度だと聞いていますけれども。
【永井(良)座長】  
 大学院の評価の指標というのはどうお考えでしょうか。論文の数だけではないとは思いますけれども、数がないとまずはしようがないです。例えば、論文がどれだけ引用されているかというようなことも簡単に調べられます。それが役に立つかどうかは少し時間をかけて見ないと分かりませんが、やはり数だけではなくて、その教室、大学から出た、責任を持って出した論文が1年後、2年後、3年後、あるいは5年後、10年後でもいいのですが、どのくらい引用されているかということはフォローする必要があるのではないかと思います。今いろいろな研究機関でそれが指標になりつつあると思います。ですから、数が少なくても非常に引用される論文を書けばそれは評価される。
【井上副座長】  
 それが、医療薬学というのがまだまだ未熟といいますか、なかなか多分、例えば今、先生がおっしゃるような意味でのインパクトファクターとか、あるいはピア・レビューが明確にある英文誌に必ず論文がなければドクターとして認めないとかそういうようなことをもし設定しちゃうと、医療薬学というところでは多分今までのところ結構難しいといいますか、なかなかなところがちょっとあるんですけれども、そこまで明確に要求しちゃえば医療薬学というのもかなり高度なことをやらないと駄目だということになるから、思い切ってそうしてもいいのかもしれないんですけれども、どっちにしても、どういうものを指標とするかというようなことを今ここで一般的に議論していてもなかなかあれなので、例えばワーキング・グループをつくって小委員会なり何なりで少しそういうことを検討するとか、そうしていただいた方がいいんじゃないかなと思いますけれども。各大学にとっても、こういうのがフォローアップのときの指標になるんだというようなことをある程度示していただいた方がいいのかもしれないなとは思います。
【市川副座長】  
 そうですね。私も本当にそう思います。基礎研究の場合には歴史があって、その上に、ここまでは分かっていて、論文内容の価値判断がある程度できる。もちろん今のお話で、論文のインパクトファクターとかサイテーション数とかいうことでも数字的にも出てくると思います。だけれども、6年制の上の4年制の博士の論文領域はどちらかというと、多くが新しい領域だと思うのです。ですから、その評価をどうするかは非常に難しいし、数字的な基準に基づいた評価はできない。
 私が思うのは、医療系、臨床系の論文の評価は医師を含めてその医療関連の専門家で密接な領域の研究者を入れて行うべきだと思います。評価のときにできるだけ多くの方々が入っている組織をつくって、そこの中でみんなの討論で評価する。もちろん論文があるというのは絶対であって、それには語学力も含まれるし、グローバルな見方をすれば、それは世界の人にもちゃんと理解され得るものがなければいけない。
【永井(良)座長】  
 大事なのは、この領域の英文誌が必要ではないでしょうか。これがないとなかなか外から評価できない。別に、いろいろな発達段階はあると思いますけれども、そういうものをこのコミュニティー全体で育てていかないといけないだろうと思います。医学系でも日本の学会誌がかなり英文誌になってしまって、発表も英語で行われるようになりました。それにはかなり時間かかりましたけれども、まずは英文誌をみんなで育てるということが必要でしょう。一つでよいわけですから。
【高柳委員】  
 先ほど市川先生も言っていましたけれども、基礎と臨床系で評価の仕方がどうしても違いますよね、ジャーナルにしても。ですから、医学部でもそうですけれども、最初は臨床でも、だんだんそういう評価という面からジャーナルの対象が基礎志向になってしまうという、インテンションは臨床でも、やっていることはほとんど基礎と変わりないというような、境界が不鮮明になってくる場合もあると思うんです。ですから、その辺のところはなかなか難しくて、これから評価に耐え得るような臨床研究が出てくるのには何かやっぱり大分時間がかかるのかなという感じがいたしますけれども
【井上副座長】  
  ここで今議論しているような議論が、各大学の大学院をつくるに当たって、本当にそこまで皆さん議論した上で考えているかというと、どうかなと心配になるんです。
【市川副座長】  
 それは心配されている。
【井上副座長】  
 だから、それをどういうふうな形でメッセージを明確に出すかというのは極めて重要なんです。ちょっと時期的に、もっと前に明確なのがあればもっとあれだ、出ていたんだけれども、何となくこれがそんなに重要視されたのかなとちょっと。だから、これからどうすればいいかということだと思うんですけれども。
【北田委員】  
 ちょっとお伺いしたいんですが、先ほど、制度上は基準を満たしていれば認可しているとのお話でした。それはよく僕は理解できるんですが、例えば今の議論のあった、大学院の評価の指標といったもの、ドクターを授与するというその中身についての何かクライテリアみたいなものはその基準の中に入っているんでしょうか。例えば、今のお話の中で、論文の本当の評価はなかなか難しいとの御意見がありました。これまでの博士課程でも行われてきたことかと思いますが、査読性のあるところに出して、これからグローバルにとなると、やっぱり少なくとも英文の査読性のあるところの論文を持っているということを条件に最低でもしておくことが質の担保に必要な気が致します。つまり専門領域のレフェリーに評価を受けたというところで最低の保証をとるというか、そういうやり方が普通なのかなという気がちょっとしました。
 それからあと、質の高い論文も重要かと思いますが、やっぱり研究者としての資質を高くしておかないと社会的な評価を受けたときに、その将来、社会に出た後。その人がどういうニーズのある現場に行ってどれだけの力を示したかというのが教育した大学の評価にもなるかと思います。ドクターを世の中に出すためのドクターコースではなくて、今世の中が必要としている、さっき橋田先生がおっしゃったような、そういうニーズにこたえられる人材をつくっていくというところに意味があるので、是非その辺のところを余りハードルを低くするような議論ではなくて進めていただきたいなという気が病院側からしますと思います。
【永井(良)座長】  
 いかがでしょうか。
【井上副座長】  
 国立大学は、結局6年制と4年制で言えば4年制の方が主体になっているんだから、6年制に関してはドクターコースをつくらないとかって、そんなことはある?そんなことは。
【太田委員】  
 私どものところは6年制の方が学部課程で人数が多いんです。4年制の方が少ない。だから、そういう国立大学も数校あるということはまず前提として置いておいて、それで、6年の上の4年の大学院と、それから、従来型と言ってはいけないかもしれませんけれども、4の上の2プラス3というのの切り分けについて、要するに4足す2足す3を持っているところというのは、そこで育成できない大学院生を6プラス4でやるというところで、わりと明確に、入り口から明確に分けられるというところはあるだろうと思うんです、実態として。そういう意味では、要するに4プラス2プラス3で育成できる出口が、そういう人物像、学生像というのは6プラス4ではつくるつもりがないというのは、ほぼどこでもそうなんじゃないかと思っているんですけれども。
【井上副座長】  
 抽象的だね。
【太田委員】  
 抽象的ですかね。ですから、要するに従来型の大学院、研究者養成というのみになっているようなところというのは4プラス2プラス3でも十分に今までどおり育成できると。6プラス4で研究者養成がないということはもちろんないんですけれども、やっぱり臨床の中で、医療研究がそこでなされるというところは担保しないと6プラス4の大学院生というのはつくる意味がないとは。それは国立大学を問わず、どこでもそう思っていると思っているんですけれども。
【望月(正)委員】  
 今ちょっと昔を思い出すために最初の資料を見ました。6年制学部に基盤を置く4年制大学院をつくるときの基本になったのは、橋田先生が今日も資料5としてお出しになりましたけれども、「医療系薬学の今後の展開」で、「関連学問領域」からどういう「目標、課題」を見るかです。その次のページの「医療系薬学教育が目指す養成人材像」というところで、学部の6年制薬学教育から大学院に行って、このようなテーマでいくということを示されたときには、非常に広いお考えを持っていらっしゃいました。それがスムーズに6年制はこういうのでいいのではないかというところに進んでいったと思います。ところが、今、臨床薬学・臨床研究だけが6年制の上の大学院で、ほかは違うとすると何か大変混乱しそうです。大学院をつくるときの意識は橋田先生の示されて方向でいいと思いますし、これに沿って申請していると思います。もちろんそれらの核になるのは、先生方がおっしゃるような医学と組んだ臨床研究ですけれども、そのほかにもこういう広い領域でもいいような気がします。そのうちに自然にどこかに集約し、ターゲットができると思いまう。今、これを急に狭いものにして、申請したのを書き直せと言う、そのようなことではなく、もう少し広い目で見ないといけないと思います。
【井上副座長】  
 広い目で見るのはいいんだけれども、そのときに、ちっとも、要するに4年制の後の従来型のものと余り変わらないというのを……。
【望月(正)委員】  
 いや、変えるのです。その辺の違いというのを最初のときに議論したような気がします。ただ、完全に別々なものにはしない、多少はオーバーラップし得るものです。薬剤師という資格を持った人間の見方による創薬と、薬剤師ではなくずっと創薬科学だけできた薬科学の人の創薬とやっぱり違うということです。患者を診た経験のある薬剤師さんが6年プラス4年で進んで、やはり違うものが出るだろうという、そういう楽しみもあったと思います。
【太田委員】  
 いいですか。実態論として考えて、6年制しか持たない大学が大学院を構築するときに、その構築した教員はどうしても基礎系がかなりの部分入ってくる、実際まだ出てきていないので分からないですけれども、それが見えていない段階で、推論で、例えば人数にしても、それから構成比にしても、それからその設置構想にしても、そういうのが全部推論で今考えざるを得ない状況なわけです。だけれども、今考えておかないと、できてからでは、遅くなってしまうというところも一方ではあるというところで今この議論なんだろうなと思って聞いていたんですが、その場合、恐らく出てくるのは、6年制しか持たない大学の大学院というのは、作文はいろいろ書いてあるかもしれませんけれども、実態として教員構成はかなり基礎系の人が入ってきていると私は推測しているんです。
 それで、だけれども、議論の中心は医療系というと、そこにどうしても実態との乖離(かいり)が生まれてしまって、そうなると、それをだから後で、フォローアップというのはその辺をどう実態と結びつけていくかというところに焦点が置かれるべきだと思うんですが、そのフォローアップの指標というのをかなり厳密にすると、ぼろぼろになってしまって、非常に収拾がつかなくなってしまう。収拾つかなくたって、こうあるべきだというんだったらそれはそれでいいとは思うんですが、ただ、余りに乖離(かいり)し過ぎる議論というのはちょっと難しいのかなと思って、どの辺までどういうふうに、現実を見据えて、だけれどもいい方向に持っていくかというのが必要だろうと思うので、その辺がまだ私として見えていないところで議論するのはちょっと、なかなか難しいところがあるのかなと聞いていたわけです。
【永井(良)座長】  
 4年制と6年制のそれぞれの学部の上の大学院の両方を持っている大学では誰が人事をするのですか、教員の人事を。価値観が随分違うわけですね。ですから、6年制、6プラス4の教員の人事の在り方と4プラス2プラス3の人事の在り方とはかなり違うだろうと思いますが。
【太田委員】  
 それは先生がおっしゃるとおりだと思います。ただ、歴史的な経緯から言うと、全て4年制のところから出発してきているわけですので、その段階で6年制をつくるとき、6年制にシフトしたときに、全て4年制の大学が6年制に全部したシフトした、多くの私立はそうなっています。それで6年制でやってきているわけですから、要するに4年制も6年制もいっしょくたで今人事を考えざるを得ない状況ですし、4年制は4年制の人事、6年制は6年制の人事というのは、それを実行している大学は恐らく国公、私立含めてないだろうと思う。
【井上副座長】  
 だから問題なので、やっぱり理想は理想なんであって、今はしようがないと思うんです。太田先生のおっしゃるとおり。だけれども、やっぱり全体としてはこういうことを……。
【太田委員】  
 あるべしという。
【井上副座長】  
 考えていこうよという、その姿勢がどこかできちっと明確に出ていないとやっぱりこれずるずるっとなっちゃうだろうなというのはちょっと心配します。
【北澤委員】  
 でも、それは2年前につくったこの第1次報告で、ちゃんと書いたんじゃなかったんですか。
【井上副座長】  
 ですよ。
【永井(良)座長】  
 具体的な運用までは余り踏み込んではいないと思います。大事なのは運用の仕方で、枠組み間違えると100年、200年ぐらい影響出る、教育制度というのは。できたら今からでもしっかり議論すべきだと思います。
【高柳委員】  
 結局あのとき問題になったのも、私立は6年制だけがほとんどですから。その6年制を卒業したけれども、もう臨床はやりたくないと。純粋に基礎をやりたいというような人も出てくるだろうと。そういう人はどうしたらいいのかと、大学院へ行く場合に。そのときに、4年制の上の後期課程に行けるのか行けないのかといって、結局行けないということですよね、6年制を卒業して、4プラス2プラス3の3年生の後期課程の、4年制の後期課程の方には行けない、あくまでも学士だから博士課程には行けないと。
【井上副座長】  
 そんなことないですよ。それは駄目とは言えないんだと思いますよ、文科省は多分。
【伊東薬学教育専門官】  
 制度上としては駄目とは言えないです。
【井上副座長】  
 言ってほしくないですけれども。
【高柳委員】  
 あれはあのとき随分問題になりましたよね、議論して。制度上だと駄目だとか。結局運用上でどうにか対応すると、非常に曖昧なことでいるわけで。そこからいろいろ非常に曖昧な状況になっているんじゃないかと思うんです。6年制だけのところは今言ったように基礎系の分野の方がむしろ多いわけですが、そこの中でむしろ臨床系の大学院を構築していくという形になるわけですよね。
【市川副座長】  
 今までの議論は、特化したものはこういう形のものが良いという意見と、社会ニーズからこのような大学院があるという意見であると思います。そういう意味で考えると、6年制の上の4年制の大学院は理想としてこういう大学院を欲しい、そのために申請書類に関しても、今の時点から言うならば、フォローアップを重視する必要があると思うのです。今日の中でも幾つかの議論があって、論文の問題とか、それから評価の仕方、それから、実際に具体的にどうするかという学位の認定の問題、そういうことに対して少しはっきりしたものを今ここでまとめていって、それを何かの形で出すことが良いのではないかと思います。
 個人的な興味ですが、今度の申請で、4年制の博士課程、3年制の博士課程の学生数はどの程度あるかです。大学院の博士学位取得者の需要先の一部は大学の教員だと思うのです。6年制の薬学教育で、特に臨床、医療系の科目を担当する教員は、必要時に十分賄えるだけの育成が行われるかが問題と思うからです。特に、4年制の薬学博士の可能性が非常に高い。実際どのぐらいの数が供給されるのか、オーバーでも困りますが、教員の必要時に的確な人材供給が大事になると思います。その辺がニーズとのバランスを少し自分の頭の中で整理したい、数値としてはほしいなと思うのですが。
【新木医学教育課長】  
 まだ正確な各校からきちんとした数字というので把握しているわけではないですが、聞いているところでは、4年制と6年制合わせて全部で従来の4年制を上回るということはないんじゃないかなと思っています。それから、4年制と6年制の比率は、やっぱり大分4年制に基づく大学院の博士課程の入学定員の方が多くて、6年制に基づく博士課程はそれに比べると大分、何対幾つになるかはちょっと全体は分かりかねておりますが、大分、何分の1かになるんじゃないかなというふうな感じで聞いております。また予算の編成過程でその数がだんだん明らかになりますので、それがまとまり次第また御報告させていただきたいと思いますが、全体の博士課程定員数としては従来よりどうも小さくなるんじゃないかなという感じを持っております。
【橋田委員】  
 数の議論というのは非常に大事ですし、是非一度きっちりした形でできればと思っております。それで、例えば、先ほども出ましたけれども、ここのワーキング・グループとかそういうところでも、もし何かの議論で数がつくれるのなら参考としてもつくってみる。おっしゃいましたように、例えば6年制の上で4年、基本的には4年の大学院へ行って学位を取る人というのが社会でどれだけニーズがあるかというのは、やはりきっちり予測する必要があると思います。
 それで、やはり教育の本質は、同じ教育を受けて育った人がまた後継者を育てるというのが基本の形だと思いますし、そうなりますと、6年制を出て学位を持っている人というのが例えば教育界だけでもかなりの人数必要となる。大きな計算の仕方ですけれども、70大学行って教授何人おられるか、掛ける何十で、20年でターンオーバーされるから何とかというとおのずと数字が出てくると思うのです。それに、やはり産業界でもPh.D.を持った6年制薬学出身者、薬剤師はある程度数がいると思いますし、学位を持った医療現場の薬剤師、そのリーダーの人たち。行政にもいる。そうすると、ある程度のニーズの方からいくと数というのは出てくると思うのです。それをちょっと出して、それに対して各大学から積み上げてくると、確かに今のような議論の下に、国立大学はこれで社会的責任を果たしたことになるのか、といったことが見えてくると思います。
 それが足りるか足りないかということがあるのと、同時に最初に市川先生のお話に対して申し上げたように、実態が合うかどうかという問題もあると思います。数だけ、400対400でいい、だからいいんだという話でもなさそうなので。だからといって強制もできないと思いますし、難しい問題ですが、少し何かみんなで共有できる情報はあってもいいと思っています。
【永井(良)座長】  
 よろしいでしょうか。大体時間になりましたので、また引き続き議論をしていただくということで、本日はここまでとしたいと思います。事務局から連絡事項をお願いいたします。
【伊東薬学教育専門官】  
 本日は御議論いただきましてありがとうございました。
 本日の議論を踏まえまして、あらかじめ本日の議論を取りまとめたものをお送りさせていただこうと思っております。それをお示しして御意見いただきながら次回検討を進められればと思っております。次回は6月27日、月曜日、3階の3F2特別会議室で14時30分から行う予定にしております。また御連絡差し上げますのでどうぞよろしくお願いいたします。
【永井(良)座長】  
 それでは、これで終了いたします。どうもありがとうございました。

 

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