資料7  獣医学教育の改善・充実に関する論点(案)

1.現状と課題 

○ 教育内容に関する小委員会の分析作業により、我が国の獣医学教育における以下の課題が浮き彫りとなった。

1.導入教育の不整備

獣医師の職域や社会的役割、関連法規、獣医倫理等を扱う導入教育について、各研究室の紹介に留まるなど教育内容が不十分であるとともに、多くの大学で導入教育を担当し、教育内容を統括する教員がいない。そのため、学生への動機付けや当該大学での獣医学教育に対する理念を伝える機会が十分確保されていない。

2.実務教育の不足

基礎・応用・臨床の全分野を通して、講義科目に比べて実習科目の教育内容が不十分であり、理論を実践に結びつけるような科目の教育が十分でない。実務教育の充実の観点からは、実習科目で取り扱う内容の充実とともに家畜病院・食肉検査場・農業共済等の関連施設におけるインターンシップや施設見学の充実が重要であると考えられるが、衛生上・管理上の問題や受入れ要件の未整備等の問題から、そうした機会を十分の確保することが困難である。

3.新たな分野への対応

基礎分野をはじめとした学問的に歴史のある分野に比べ、近年の学問の進展や社会ニーズの高まりから新たに必要性の高まった分野は、教員の絶対的な不足や共通的なテキスト等の未整備等の理由から、教育内容・教育体制がともに不十分である。

4.大学間の教育内容のばらつき

 我が国の獣医系大学全体を通じての共通的な課題の他に、大学ごとに教育内容にばらつきがある。

 ○ 大学における獣医学教育は、ライセンス教育として獣医師に最低限共通的に必要な教育内容を提供すると共に、社会ニーズに対応するため大学の特性に応じた特色ある教育が求められる。

 ○ そうした教育内容を提供するためには、学内の関係学科、関係大学、学外の関係機関と連携・協力し、専門性を有する教員を確保するなど教育研究体制を構築することが求められる。

2.論点例  

 獣医学教育の導入教育においては、獣医師を目指す学生に対して、獣医師の職域や社会的役割、関連法規、獣医倫理等を体系立てて学生に伝える必要がある。

<検討の視点例>

・ 小委員会報告では、導入教育の意義の明確化とともに、導入科目の幅広い教育内容を統括し、コーディネートができる教員が必要と指摘されている。幅広い内容の導入教育を体系だてて実施することのできる教員を育成・確保するためには、どのような改善が必要であるか。

 実務の現場に関する実習は、講義で学んだ理論を実践につなげ、実務に必要な技能を身につけると共に、獣医師の活躍する様々な職域に関する知識や関心を高める重要な機会として、充実が求められる。

<検討の視点例>

・ 実務教育の充実を図るためには施設見学、インターンシップ等の実地における実習の充実が重要であるが、特に公衆衛生関連施設では衛生上・管理上等の問題からその実施が困難となっている。

実地における実習を行う際の実施条件や実施方法についてどのような整備が必要であるか。

・ 産業動物に触れる機会を確保することが、産業動物診療分野への就業意欲を高めるきっかけの一つとなっていると考えられるが、特に都市部の大学の場合、農業共済などの農業団体の協力が無ければそうした機会を確保することは困難である。

農業団体と連携し、実習を実施・充実させるためにはどのような条件整備が必要であるか。

・ 獣医師の臨床技術の向上を図る上で、附属家畜病院における臨床実習は重要であるが、現状では見学に終始し、効果的な実習が行われていない等の指摘がある。

学生が一定の条件の下、一定程度の獣医療行為に関わる実習を行えるようにするなど、附属家畜病院における臨床実習を充実させるためにはどのような条件整備が必要であるか。

・ 附属家畜病院は、地域における高度診療機関であるとともに、獣医学を学ぶ学生の教育機関であるが、現在の我が国の附属家畜病院は専任の獣医師や補助職員、患畜に大きな差があり、受け入れられる学生数や教育内容に大きな開きがある。

充実した臨床教育を提供するために附属家畜病院には、どのような体制が必要であるか。

獣医師への社会ニーズが高まる中、獣医学教育において教授すべき知識や技能等が高度化・多様化しており、新たに必要となった新興分野に対応できる教育体制の充実が求められる 。

<検討の視点例>

・ 伝統的な分野に比べて、近年、新たに必要性の高まった分野は、多くの大学で教育内容にばらつきがある。

そうした分野の平準化を図るため、小委員会報告では、共通的な教育内容(コア・カリキュラム)の整備や共通テキストの作成等の取り組みの必要性が指摘されているが、その他どのような取組が必要であると考えるか。

・ 近年、新たに必要性の高まった分野の教育を充実させるためには、当該分野における専門性を備えた教員を確保することが求められるが、そうした教員をどのように育成・確保するか。

 獣医系大学全体として社会のニーズに対応し、国際通用性のある質の高い教育を実現するためには、大学において共通的に最低限実施することが求められる獣医学教育の水準を確保するとともに、複数の大学が優位な教育資源を結集して連携を進めることが求められる。

<検討の視点例>

・ 小委員会報告では、すべての学生が共通的に修得すべき知識・技能について明確化し、獣医学教育の共通的な到達目標(モデル・コア・カリキュラム)を策定することが有効であると指摘されている。

その策定方法や活用方法についてどのような取り組みが必要か。

・ 複数の大学がそれぞれ優位な教育資源を結集して共同教育課程を設置するにあたっては、大学設置基準に開設すべき授業科目や履修すべき単位などの定めがあるが、実際に教育課程を編成する際にどのような課題を解決させなくてはならないか。

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高等教育局専門教育課企画係

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