資料7 獣医学教育の質保証の在り方に関する論点(案)

1.現状と課題 

○大学教育の質保証の事前評価システムとして、大学を設置するのに必要な最低の基準を定めた大学設置基準がある。

○大学設置基準上、獣医学に関する学科の卒業要件となる単位数は182単位以上とされており、現在、各大学の卒業要件単位数は182単位~223単位となっている。また、平成3年の大綱化以降は規定されていないが、各大学の専門教育科目の内訳の現状については基礎分野(25単位~62単位)応用分野(16.5単位~74単位)臨床分野(27単位~64単位そのうち実習9単位~24単位)と多様な状況となっている。

○大学における獣医学教育の水準を確保するとともに、学生が修得すべき学習成果を保証するために、モデル・コア・カリキュラムの作成や臨床教育の充実等の取組が求められる。

○また、大学設基準上、獣医学に関する学科について必要な専任教員数は、1学科で学部を組織する場合は収容定員600名につき28名以上、2以上の学科で学部を組織する場合は収容定員480名につき16名以上とされているが、現在各大学の専任教員数は24名~58名となっている。

○獣医学教育に対する社会ニーズへの対応や国際通用性を確保するためには、教育内容を充実させるとともに、専門性を備えた一定数の教員を確保することが求められる。

○大学教育の質保証の事後評価システムとしては、大学による自己点検評価や情報公開、大学間の相互評価、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による認証評価等がある。欧米では従来より、獣医学教育分野における第三者評価が実施されており、特に米国では適格認定(アクレディテーション)を満たしていない大学の卒業生には獣医師資格試験の受験資格が与えられないこととなっている。

○獣医学教育分野の教育の質を保証し、国際通用性を確保するためには、適切な評価の実施が必要とされる。その際、分野別の第三者評価制度の実施や、その前提となる自己点検・評価や大学間の相互評価の充実が求められる。

2.論点例 

大学における獣医学教育の水準を確保するとともに、学生が修得すべき学習成果を保証するために、モデル・コア・カリキュラムの作成や臨床教育の充実等の取組が求められる。

<検討の視点例>

  • 大学における専門教育科目の内訳については基礎分野・応用分野・臨床分野(臨床実習)ともに大学によって大きな差がある。学生が修得すべき学習成果を保証するためには、例えば医学・歯学・薬学教育分野の様に、学生が到達すべき共通の目標を設定したモデル・コア・カリキュラムを作成することが考えられるが、その際どのような点に留意する必要があるか。特に大学の個性や特色の在り方をどのように尊重していくか。
  • 特に臨床分野の教育については、欧米と比較して不十分であり、卒後の研修に大部分を頼らざるを得ないという指摘がある。幅広い職域に就職する獣医師を目指す学生が、在学中に最低限身につけなければならない臨床の知識や技術を身につけるためにはどのような内容の臨床実習が必要とされるか。その際、臨床実習実施にあたっての制度上の隘路や獣医師免許を持たない学生が行える行為、学生が臨床実習開始時までに身につけておくべき知識・技能について、どのように考えるか。

獣医学教育に対する社会ニーズへの対応や国際通用性を確保するためには、教育内容を充実させるとともに、専門性を備えた一定数の教員を確保することが求められる。

<検討の視点例>

  • 獣医学教育における主要授業科目については、専門性を備えた専任教員が担当する必要があるが、その際、欧米諸国の獣医学系大学や我が国の獣医学に関する学科の教員数の実態を踏まえた上で、我が国の獣医学教育の基準における必要な教員数をどのように考えるか。
  • 必要とされる教育を行うための教員数を確保するためには、複数の大学が優位な教育資源を集結した教育課程の共同実施制度の活用が有効であると考えられる。その場合、教育課程の構成や教育方法、学生や教員の移動方法等についてどのように考えるか。

獣医学教育分野の教育の質を保証し、国際通用性を確保するためには、適切な評価の実施が必要とされる。その際、分野別の第三者評価制度の実施や、その前提となる自己点検・評価や大学間の相互評価の充実が求められる。

<検討の視点例>

  • 現在、大学に対しては認証評価制度に基づく機関別の評価が行われているが、分野別評価については専門職大学院のみが認証評価を受ける義務が課されている。その他、分野別の第三者評価の現状としては、工学分野におけるJABEE(日本技術者教育認定機構)等の一部の団体による評価にとどまっている。教育の質の保証の観点から獣医学教育分野における第三者評価の在り方についてどのように考えるか。
  • 当面は、各大学における自己点検・評価を充実・深化させPDCAサイクルを稼働させることや、大学間の連携による相互評価の活用が有効であると考えられる。こうした質保証の取組を充実させるためには、例えば、統一的な評価基準の在り方の検討が考えられるが、他にどのような取組が必要と考えられるか。

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