資料6 獣医学教育における教育内容・方法の在り方に関する論点(案)

1.現状と課題 

○大学設置基準上、獣医学に関する学科の卒業要件となる単位数は、182単位以上となっている。現在、国公私立大学の平均卒業要件単位数(平成20年度)は188.9単位であり、専門教育科目の単位数は147.8単位となっている。また、そのうち実習科目の単位数は31.8単位となっている。(平成3年の大綱化前の大学設置基準では、卒業要件となる専門教育科目の単位数は134単位以上)

○卒業要件となる専門教育科目の分野別の平均単位数は、基礎分野が41.6単位、応用分野が38.0単位、臨床分野が41.2単位となっており、その他の分野が27.1単位となっている。

○獣医師に求められるニーズが高度化・多様化する中で、大学の獣医学教育においては、全ての学生に対し、職域にかかわらず、獣医師として最低限必要とされる知識・技能を身に付けさせる教育を行うとともに、併せて専門分野別又は職域別に必要とされる高度な教育を行うことが求められる。

○また、社会的ニーズへの対応や国際的通用性の確保の観点から、特に、産業動物に関する教育や公衆衛生に関する教育、臨床に関する教育の充実などが求められる。あわせて、コミュニケーション能力や身に付けた知識・技能を応用し、様々な課題を解決する能力、獣医師としての社会的責任や倫理観を身に付けさせる必要がある。

2.論点例 

獣医学教育においては、職域にかかわらず、獣医師として最低限必要とされる知識・技能を身に付けさせる教育を行うとともに、併せて専門分野別又は職域別に必要とされる高度な教育を行うことが求められる。

<検討の視点例>

  • 大学の獣医学教育において共通的な水準を確保するために、最低限必要とされる分野やその範囲をどのように考えるべきか。
  • コース制の導入など各大学の工夫により、専門分野別又は職域別に高度な教育を行うことを明確化し、教育課程の体系化を図ることが考えられるがどうか。

社会ニーズへの対応や国際通用性の確保の観点から、特に、産業動物に関する教育や公衆衛生に関する教育、臨床に関する教育の充実などが求められる。

<検討の視点例>

(産業動物に関する教育について)

○産業動物の学用患畜がなく、産業動物を対象とした実習がほとんど行われない大学が存在するなど、産業動物に関する教育の機会が得にくい状況にある。畜産物の生産性の向上や家畜衛生の重要性が高まる中、産業動物に関する教育についてどのような改善が考えられるか。

  • 産業動物に関する教育の機会を確保するためには、自治体や関係団体、学用患畜を有する他の大学との連携が必要であると考えられるがどうか。また、その場合、どのような連携の在り方が考えられるか。
  • 生産構造の変化に伴い産業動物の個体管理から群管理への転換が進む中、群単位での疾病予防や診療など集団衛生管理に関する知識・技術を身に付けさせる教育の充実が求められるのではないか。
  • 家畜衛生・畜産振興分野に従事する獣医師の確保が課題となっているが、家畜衛生・畜産振興分野に対する学生の関心を高めるためにはどのような取組が必要か。

(公衆衛生に関する教育について)

○獣医公衆衛生学の平均単位数は7.1単位となっている。食の安全への関心の高まりや人獣共通感染症の予防など、獣医公衆衛生分野の範囲が広がるとともに、その重要性が高まる中、獣医公衆衛生分野に関する教育についてどのような改善が考えられるか。

  • 獣医公衆衛生分野には感染症・食品衛生・環境衛生・疫学等といった幅広い分野が含まれるが、今日の社会情勢の変化に対応するため、特に充実が求められる教育内容とはどのようなものか。
  • 実践的な教育を行う観点から、研究機関や保健所等の関係機関との連携が必要と考えられるがどうか。また、その場合、どのような連携の在り方が考えられるか。
  • 公衆衛生分野に従事する獣医師の確保が課題となっているが、公衆衛生分野に対する学生の関心を高めるためにはどのような取組が必要とされるか。

(臨床に関する教育について)

○臨床教育分野の平均単位数は41.2単位、そのうち臨床実習の平均単位数は12.8単位となっている。疾病の多様化や求められる技術が高度化する中、臨床に関する教育についてどのような改善が考えられるか。

  • 内科学、外科学の平均単位数はそれぞれ11.2単位、8.9単位となっている。診療の高度化・多様化に対応するため、内科学や外科学に関する教育についてはどのような改善が考えられるか。
  • 臨床技術の向上の観点から、臨床実習ではどのような実習内容・方法を提供すべきか。また、臨床実習に必要な単位数についてどのように考えるか。
  • 欧米ではローテーション形式の総合臨床実習が高学年次の学習の中心である一方、我が国の大学においては卒業研究が中心となっているとの指摘があるが、高学年次の学習の在り方についてどのように考えるか。

コミュニケーション能力や身に付けた知識・技能を応用し、様々な課題を解決する能力、獣医師としての社会的責任や倫理観を身に付けさせる必要がある。

<検討の視点>

  • 獣医倫理・法規科目の平均単位数は2.3単位となっている。獣医師に求められる高い倫理観や責任感を備えた人材を育成するため、獣医倫理・法規、動物福祉に関する教育内容・方法の在り方についてどのように考えるか。
  • 獣医師に求められる問題解決能力を身に付けさせるためには、例えば、プロブレム・ベースド・ラーニングやインターンシップなど実践的な教育方法の導入が有効であると考えられるが、教育内容・方法の在り方についてどのような改善が考えられるか。

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