資料1 これまでの主な意見

歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議これまでの主な意見(検討用メモ)

1.歯科医療・歯科医師に係る現状認識

・歯科医師の現状のレベルは低下しているといえるか。
・大学の臨床実習等の内容や期間にばらつきが大きく、臨床研修開始時点の技能に差があるのではないか。
・高レベルの医療を求める患者のニーズと、経験が必ずしも十分ではない若手歯科医師の臨床能力との乖離はないか。
・歯学部学生は概ねの症例は経験するが、実際に診療に携わることは少ない。昔は卒後に開業医の下で腕を磨いたが、今は臨床研修修了後のキャリアが途切れ、後期研修のある医科と比べてもキャリアパスが不明確ではないか。

2.学生の質の向上

学生の質の向上について

・大学入学時と卒業時の成績についての相関性はどうか。偏差値と歯学の知識技能の高さとの関係は希薄ではないか。
・今日の学生は、知識量はあるが考える力が足りないのではないか。
・最近の入学者の倫理観、素養教育の見直しが必要ではないか。

入学者の質の確保

・志願倍率の低下が入学時の基本的資質の低下に与える影響を懸念。
・ゆとり教育を受けた学生の学力低下を危惧。
・面接試験の導入によって入学後問題を起こす学生が減っているが学力担保が課題。
・面接対策マニュアルも作成されるなか、面接の在り方、有効性の検証が必要ではないか。(教授ではなく実際に学生に教えている講師が試験官を務める。志望動機は質問せず、コミュニケーション能力をみる方法もある。)

3.教育の質の向上

改善の視点

・モデルコアカリキュラム導入によって詰め込み教育から脱却した中で、教員が学生の能力を引き出すような教育が必要ではないか。
・歯科医師の資質をさらに向上させる必要があるという視点からも、学習意欲を刺激するカリキュラムを重視すべきではないか。

到達目標

・卒業時に臨床能力に自信を持てるようにすることが必要ではないか。
・資質向上を図る目標を関係者に明示することが必要ではないか。

カリキュラム

・臨床現場のニーズを学部教育に反映していく方法を考える必要があるのではないか。
・自己学習能力が低いため、学生の段階で学習方法を教えることが必要ではないか。
・チュートリアル教育で個々の学生の考える能力の出来不出来が明確になるのではないか。
・問題解決能力のある医師を養成することが重要ではないか。
・情意教育をもう少し重視すべきではないか。

臨床実習と臨床能力の質

(問題点)

・共用試験、国試対策に追われ、臨床実習が減る傾向にないか。
・臨床実習期間にバラツキがあり、臨床研修開始時の技能の差が大きいのではないか。
・モデル・コア・カリキュラムで定める参加型臨床実習が十分行えていないのではないか。

(背景・原因)

・患者も大学病院には高度な診療を期待しており、さらに歯科医師過剰で患者数そのものも少ないことが影響しているのではないか。
・医行為の法的根拠の問題があるのではないか。
・学生が診療する患者の医療費が軽減されるアジアや米国との違いが影響しているのではないか。
・マッチングを7,8月に実施するため、学生の関心が卒後臨床研修に移り、浮き足立っていないか。
・国民の理解・協力がなければ臨床実習はできず、患者と医療人が双方向的に理解できるようにすることが必要ではないか。

(方策)

・カリキュラムだけではなく臨床能力の質の確保の観点から、コアカリ、共用試験、国試、卒後臨床研修の到達目標の整合性に関する検討が必要ではないか。
・卒前の臨床実習は、卒業時の技能をしっかりと担保した上で卒後臨床研修につなげていくこととすべきではないか。
・臨床実習の充実には、国として患者の理解を求めるという視点も必要ではないか。

教員の教育能力

4.歯科医師養成規模

・従来の調整方法には限界があり、新たな切り口が必要ではないか。
・大学で教育し、卒業させた学生の3人に1人が歯科医師になれないのは憂慮すべき事態。需給調整を国試で行うのは不健全ではないか。

5.研究者・教育者の養成

現状

・歯学系大学院では、医学系に比べると学位をとる学生は多い。
・医科は一度外に出て戻ってくるため臨床マインドを備えているが、歯科は大学院にすぐ進学するため、臨床マインドに乏しいのではないか。

基礎と臨床の関係

・縄張り意識が強く、基礎と臨床が乖離し、対立の構図で捉えられていないか。
・Research-Orientedなマインドが必要ではないか。臨床家でありつつも、サイエンティフィックな視点がなければ、良い医療は行えない。基礎と臨床は車の両輪である。
・臨床を念頭においた基礎研究者の養成、臨床と基礎を融合した指導者の養成が問題。共用試験においても臨床基礎の問題が少なく、日本では臨床基礎問題を作成できる者が少ないのではないか
・基礎的研究の視点を持った臨床医を育成するべきではないか。今は、資格さえ取れればいいという考えが広まりすぎている。
・生物学的基礎知識や基礎科学の履修については、コアカリの準備教育の段に記載がある。日本は、米国に比して非常に弱く、基礎の先生でもこの分野の良問はなかなか作れていないのではないか。
・臨床のライセンスを取得した者が臨床に進むのは当然。すぐに基礎研究に従事する必要はないのではないか。
・臨床に進んだ者でも興味のある分野を伸ばせばよく、臨床から基礎へ転向した教授も多いのではないか。
・臨床の教室で基礎的研究を行うことは向かず、臨床教室ではPOR(Patient-Oriented Research)を重視すべきではないか。

臨床研究

・臨床を前に進めるという気持ちを持って研究をしている臨床家は多くないのではないか。
・臨床研究に課題は多いのではないか。基礎研究の方が学位を取りやすく、臨床に戻っても基礎研究を続けている者が多い。補助金も基礎研究の方が取りやすい。
・米国のNIHのような機関を作るべきではないか。

6.学部、大学院教育体制

機能分化と連携

・各大学、教員組織や学生の質が違うため、大学院の存在意義も違う。機能分化が大事ではないか。
・研究科長や学部長がリーダーシップを発揮し、ビジョンを明確にすべき。学生がなかなか戻ってこないのであれば、基礎と臨床をミックスした講義で学生のモチベーションを上げるなどの仕掛けが必要ではないか。
・1大学のみで完結する研究が難しくなっており、複数の大学が集まって講座を運営している例も多くなっているのではないか。
・1人の教員が教育・研究・診療全てを行うのは不可能になってきていないか。

他分野との連携

・高齢化社会となり予防医療が重要となる中、歯科単独ではなく医科との連携の在り方を含めた議論が必要ではないか。
・医工連携のように理工系出身の研究者養成の道を開くのも一つの手ではないか。

大学院教育の充実

・大学院教育をいかに充実するかが重要ではないか。基礎研究と専門医研修とのバランスをどうとるかについて議論を深めることが必要。
・Ph.D.でないと国際的に差がつく=キャリアにも差がつくようになるのではないか。
・基礎の学生には臨床の、臨床の学生には基礎の教員を必ず1人つける。基礎・臨床融合型ボーダーレス教育が有効ではないか。
・専門医取得を掲げる大学院もあるが、大学院在籍中は経験年数に含めないなど制約が多いと学生は集まらないのではないか。
・臨床系大学院のほか、研究者養成、指導者養成を目的とした大学院についての検討が必要ではないか。

7.歯学教育の質保証システム

・OSCE等で臨床実習開始前の技能を担保する必要があるが、共用試験は本来の目的を達成しているか。
・卒業時の臨床能力を如何に担保すべきか。
・大学が提供する歯学教育の質を評価するシステムについてどう考えるか。

8.附属病院等

・病院収入を含めた大学全体の総収入に占める授業料の割合が医科と歯科では全く違う。
・大学病院は、臨床実習生・研修歯科医が多く、指導する側のマンパワーが足りないのではないか。
・医学部附属病院と異なり、歯学の医育機関としては認知されているが、医療機関としては十分認知されていないのではないか。

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