歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第11回) 議事要旨

1.日時

平成23年5月25日(水曜日)17時30分~19時30分

2.場所

文部科学省16階 16F2

3.出席者

委員

江藤座長、中原副座長、葛西、金子、北村、古谷野、福田(仁)、前田、前野、俣木、宮村、米田

文部科学省

新木医学教育課長、岩瀬医学教育課課長補佐、小野医学教育課課長補佐、大原技術参与、菊池医学教育係長、ほか関係官

オブザーバー

宮地、安井、厚生労働省医政局 上條歯科保健課長

4.議事要旨

(1)フォローアップ小委員会からのフォローアップ状況等の報告について

委員より、ヒアリング報告書に基づき、フォローアップ小委員会が1月~3月に18校に対して行った実地調査の実施状況の報告を行った。

以下、実地調査報告書の内容に関する意見等

(委員)実地調査における委員の所見において「重点的フォローアップ」と「継続的フォローアップ」の違いは何か。

(事務局)「継続的なフォローアップ」については、書面調査、ヒアリングを実施し、その内容によって実地調査を実施する。「重点的なフォローアップ」については、書面調査、ヒアリング、実地調査を実施する。

(委員)文部科学省が実施している七年に一度の認証評価で、歯学に関する指摘がある大学はあったのか。

(座長)当該評価は分野別評価ではないのではないか。

(委員)実地調査により本質的な部分が見えてきたので、実地調査の効果は大きい。評価者によって評価の差はあるが、そこを是正しつつ、今後もフォローアップを継続することが重要。

(委員)大学によって、診療参加型のレベルが大きく違う。それは、ほとんどが患者数の問題に起因するのではないかと感じた。

(委員)フォローアップ調査によって各大学の現状が浮き彫りになった。この分析を元にいかに各大学が改善していくかが課題。また、最後に落とし所をどこにするのかが少しまだ見えない。

(委員)今回の指摘事項に対して各大学が改善しなかったらどうするのか。落とし所が見えない。やはり行政の文部科学省が適切な指導をしていただく必要性があるのではないか。

(委員)フォローアップは毎年又は定期的に行うということでしょうか。これは、形成的評価であるから、各大学での改善の度合いが問題です。前よりも良くなれば、それでよしとするのでしょうか。その姿勢が見えるか見えないかということで、評価が大きく変わってくると思います。

(座長)「このままフォローアップ調査を継続する」という話ではなかなか改善は望めないし、また大学の自主努力だけでも無理だろう。この辺のところを今後どうするのかについて御議論いただきたい。

(委員)改善努力は認めるものの効果が現れていないものが多い。国家試験の合格率とか、留年率だけでは測れないのは重々承知しているが、受験生の数と合格者の数が同一というのは驚きだし、そういう大学が少なくない。恐らく国民や患者さんもこの数字を見れば非常に驚くのではないか。もう少し別の視点、文部科学省のイニシアティブなど、もう一つ抜本的な対応策を考える必要があるのではないか。

(委員)できないなりに努力している大学とできないからあきらめている大学が両極端だった。国家試験やCBTがあるから座学指向になる大学がある。3,4年生になると全て選択式問題になっている私立大学がほとんどだった。

(委員)ヒアリングのポイントの一つ「入学定員の削減率が低い大学」との指摘について、今回の入学試験の状況では、文部科学省が要請する入学定員の削減率より、実際の入学者数ははるかに下回っている。実質的に入学定員が削減されているのであれば、私立の入学定員の削減は必要ないのではないかという感じがする。ただし、昨年と比べると受験生は増加しており、私立歯科大学協会の見方では下げ止まりという楽観的な気持ちになっている。来年度も今年度と同じような状況になると思うが、入学定員削減の問題は、数年の様子を見ないと答えを出すのは難しいのではないか。

(委員)「入学者選抜における試験競争倍率が低い大学」との指摘については理解できるが、18歳人口の絶対数が減少している中で歯科の受験生だけが減らないという理屈は成り立たない。更に近年、歯科医師が過剰と言われている中で、受験生が歯科を志望するという状況は厳しいと思う。試験競争倍率の低下は当分の間は避けられないのではないか。

(委員)臨床実習について、患者数が絶対的に少ない、又は最小限の大学がある。そういう大学に診療参加型臨床実習を課すこと自体なかなか厳しい要求なのではないか。また、診療参加型臨床実習の定義、考え方がみんなバラバラであり、どこかで定義をまとめる必要があるのではないか。その際、全ての大学が患者数が潤沢にあるわけではないということを念頭に考える必要がある。

(委員)参加型臨床実習に関しては「地域性」、「構造上の問題」などで実習ができる大学とできない大学があると感じた。新しいコアカリキュラムの中に参加型臨床実習の定義になるようなところが出ているのだと思うので、そのあたりを少し議論するといいのではないか。

(委員)実地調査を行うことにより、その大学で考え直したり整理したりといった対応がなされ、一定の効果があると感じた。その中で大きなポイントは、「診療参加型臨床実習の取組の度合い」が大学によってかなり差があるという点と、もう一つは「国家試験の合格率」「入学者の確保」「競争倍率」、「留年率」、「最低修業年限での合格率」で苦しんいる大学がかなりあるという点で、破綻と言ってもいいくらいの数字もあり、現場の努力が焼け石に水という感じになっている。

(委員)学生も、共用試験までの間はとにかくCBT合格が目標で、それが終わると国家試験に目標が変わる。そういう大学は結局、入学の時から学力不足があって留年が増えてしまうし、国家試験でもなかなか通らない。ドミノ倒しのようなことになっていると感じた。

(委員)今の卒業生は、6年前はまだ入学時の充足率、競争倍率も今のような数字ではない学生だった。今の状態での入学者が6年後ということになると、一段と学力が大きな問題となっている可能性が高い。今苦しんでいる大学は、今後かなり辛(つら)くなるのではないかと実感した。

(委員)国家試験を通っていれば知識はあると思うが、臨床能力の差が学校によってこれだけあったら、臨床研修がやりにくいのではないかと不安になった。

(委員)また、大学病院の教育病院としての機能が両極端だった。臨床実習の学生のところに患者が一人もいない。大学病院の教育病院としての機能もフォローアップ調査する必要があるのではないか。

(委員)さらに、留年者等成績不振者に関しては、2年生、3年生くらいで、解剖が多かったと思うが半分の学生が不合格の大学もあった。学生の責任かもしれないが、教員もちゃんと教えてないのではないか。FDの実質化がもう少し必要と感じた。

(委員)自主的な改善だけに任せていいのか、あるいは他動的にある種の強制力が必要なのか。問題はやはり入学者の質に収斂(しゅうれん)していくのではないか。入学の時点で競争が働いていない状況で教育が推移していっていいものなのか。フォローアップ調査の結果をどうするのか。公表するという考えはあるのか。

(事務局)ホームページで細かいデータも公表する。

(委員)実地調査で少なくとも23年度から全ての大学が診療参加型臨床実習に入ったということなので、今回の実施調査はそういう意味でも価値があった。実地調査される側(がわ)も、外部からの圧力ですんなり改革が進むという現状もある。それをうまく使って、今後すべての歯科大学・歯学部のカリキュラムが充実していけばいい。

(事務局)調査結果に基づき各大学への働きかけを強めていきたい。我々としては、進展・改善がない場合、法的な問題もあるのでその範囲内でということにはなるが、どういうアクションを続いて取れるのか、先生方のお知恵を拝借しながら進めていきたい。

(2)今後の進め方について

事務局から資料6についての説明がなされ、今後の進め方の案が提示された。

(座長)書面調査とヒアリングと実地調査を引き続き行うことは質を管理する基礎的、基盤的な措置だと思う。入学者の質低下というのは明らかであるという認識は共通になった。これを今後どうやって質の管理をしていくのか。入学時の質の管理は各大学に任されている。共用試験や国家試験では質の管理をしているが、この会議で議論することではない。この会議では、今後の方向性として、臨床実習に関するバラバラな認識をまとめていくこと、臨床実習の到達目標を明確にすること、成績評価の基準を明示すること、それから臨床実習修了時のOSCEの実施といった全国的な臨床実習の標準評価を考えなければいけない。

(事務局)座長とりまとめのように、この会議では質の議論を最大限尊重していきたい。一方で量の管理については、実質的に入学者が減ったということで、歯科医師の新規参入の削減がなされたとは認識していない。制度的に管理していく上ではやはり入学者の数にあった募集定員を設定し、入学定員レベルで管理していくことが必要であると考えている。結果的に入学者が減ったということでは、入学定員削減問題が達成されたということは言えないと考えている。

(座長)先ほど各委員の先生方から頂戴いたしました御意見を取りまとめまして、それについての取扱いは、座長一任としたい。意見についての若干の修正等につきましては、また後日としたい。

(3)その他

(委員)平成21年に第1次報告を受け、各大学は努力をしてきた。1、2年で教育的な効果を上げるのは難しいと思う。このまま公表されると各大学が何もしていないようにも受け取られる可能性もある。各大学ともそれなりの努力をし、それなりの成果を出してきているので少し考慮していただきたい。

(座長)法科大学院が公表しているのに歯学は公表しないということはないのでご理解いただきたい。改善には時間がかかるという点も念頭に置きつつ引き続きのフォローアップをしていくので御理解いただきたい。

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