歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成20年12月15日(月曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議事要旨

(1)事務局より資料1について説明。

(2)資料1に基づき、各項目ごとに議論を行った。

●検討の視点について

○:医学部定員増は、歯科の資質確保に影響しているのか。

○:予備校の調査では、影響あると言われているのを聞いたことがあるがどなたか詳しい方がいれば説明いただきたい。

○:後期試験で医学部に受かったために、授業料返還手続をする学生は毎年上位合格者からでている。医学部定員増で一番影響を受けるのは国立の歯学部ではないか。私立の歯学部の上位校も多少影響あるだろう。

○:臨床実習時間数の減と卒業時の臨床能力の格差が生じていないか、ということについて、何か意見はないか。

○:この点についてはご指摘のとおりだと思う。臨床実習時間数の減少の一番の理由は大学病院の患者数が減少していることである。その影響で、十分な数の患者を学生に担保できなくなっている。もう一つは大学病院だからよい治療をしてもらえると思って来院する人がおり、こういう人は学生が診ることを嫌がる。また、開業医から紹介されてくる患者は治療が難しいため、学生には向かない。学生に診せたい患者は開業医が診るため、大学病院での症例としては非常に少なくなっている。これらを改善しなければ格差解消は困難。30ある大学病院のうち、潤沢に患者を確保できているのは5,6病院ではないか。

○:患者実習が困難な理由は患者数の減少ということだが、打開策について意見はないか。

○:患者の誤解と病院側の説明不足が原因。大学病院は、難治性治療のための病院であるとともに、教育病院でもあるという事実を患者に理解してもらうことが必要。難しいことではあるが病院側はきちんと説明しなければならない。

○:患者の意識が変わってきているため、協力を得るのが難しくなってきているというのは、医科も同じ。医科ではシミュレーション実習なども実施しているが、協力してくれるSP(模擬患者)の意識も変わってきている。臨床実習の量、質ともに確保することは難しくなってきている。何かあったときどうするかなどは、患者の立場からの意見を伺いたい。

○:患者の意識が変わってきていることは確かである。患者の絶対数も少ない現状で待っているだけでよいのか。老人など受診したくても行けない患者もいる。ボランティアを活用するなど工夫が必要ではないか。

○:診療報酬上の優遇など、何らかのインセンティブが必要という話になると厚生労働省の話になるが、これまでも現在の制度ではできないと伺っている。前野委員のご指摘のとおり、待っているだけではなく大学病院は教育病院であるということを周知徹底するという前提のもと、もっと突っ込んだ意見はないか。

○:普通の歯科医師に対してもかなり不信感があり、患者が学生を嫌がるのは当然。診療費減額は効果大だが、無理なのか。また、大学の制度設計も必要であり、患者に被害を与えないようなシステムになっているということをアピールしていくことが必要。

●:診療報酬上の優遇措置は、現在の制度ではできない。特例措置を設ける等をしないと無理。

○:これについては、何度も議論しており、現行制度では無理との回答であるが、特例措置を設けることも念頭にもう少し議論を続けていくということにしたい。

●歯科医師となる者の臨床能力の向上

○:臨床参加型実習の解釈に問題があるのではないか。チーム医療の一員としてそこにいればよい、という風潮がある。国試や共用試験が難しくなると、臨床実習の時間を割いてその対策に充てるという教員の意識が問題なのではないか。

○:医科でも同じ問題があると思うが、一つを精緻にすればするほど、どこかにしわ寄せが来る。

○:臨床技能をきちんと評価するシステムが構築されていないことが問題である。ステップ毎の評価が必要であり、ステップ毎にどのような臨床技能教育を行っていくのかを確立しなければならない。

○:29校で統一されたフォーマットは作られているが、臨床基礎実習は各大学バラバラに行われている。これを統一するのは無理ではないか。

○:統一する必要はない。ディプロマポリシーを確立すればよい。

○:前回、古谷野委員が指摘したようにコア目標は提示されているが、やり方は決まっていない状態である。到達過程は自由なのだから、ここに各大学の独自性を出すべきではないか。

○:臨床技能評価システムは、各大学で見える形にする必要がある。

○:基本的な能力を高めるためにあるのが共用試験。職業人教育に求められるものについてのガイドラインを作るべきである。

○:「最低限必要な臨床能力」とは何か。これを明示することが必要ではないか。

○:「水準」とすれば分かりやすいのではないか。座学、基礎学習と違い、臨床は指導医と患者の間に学生が入る。教育熱心な指導医であれば、患者に説明できるはずである。教育に対する評価をすることが必要ではないか。

○:指導者がいなくなってきているという話は聞いている。臨床技能教育の指導者養成を入れるべき。

○:患者数に全て直結している問題である。そうでないと机上の空論。我々が学生のときは12月まで実習をやっていたが、現在は、国立の一部、私立のほとんどが前倒しになっている。5年の終わりにOSCEを終了するというところも出てきかねない。OSCEは、国家試験を受ける前に、臨床研修に入る前に受けるのがよいのではないか。OSCEの実施時期がベストになったとしても国試との兼ね合いもあり、難しい問題である。

○:歯科の国家試験は難しくなっているのか。医科は専門医試験のようになっているが。

○:合格率は約70%である。

○:大学人が作っているのに、自分で自分の首を絞めているのではないか。ここまで必要ないのではないかという問題がある。

○:臨床実習修了時のOSCEと臨床技能担保は別物。臨床実習修了時のOSCEは、臨床実習の効果がどの程度あったのか検証するためのもの。臨床技能の担保については、国家試験の後に実施することも視野に入れて検討すべき。また、歯科診療所からも卒前教育をしっかりやってほしいとの声が上がっている。医科歯科では、研修歯科医採用時に技能試験を実施しているが、私立大学歯学部出身者からは実技を離れていたため手が動かないという感想があった。

○:臨床実習→OSCE→国家試験→臨床研修という流れがベストでは、という提案。OSCE後に座学が入ってしまうのはよくない。

○:国家試験対策に時間をかけすぎということか。

○:参加型実習は、1年から段階を踏んで、6年間やっていくべきではないか。

○:6年間でということになるかは分からないが、米国では臨床と座学の乖離が少ない方法をとっている。侵襲性の低い臨床実習であれば、座学の後、すぐに行わせている。日本では、座学の後に臨床実習を行うため、学んでから時間が経って行う実習もある。

○:米国では1年後期から病院に入る。座学で習わない段階から実習をしている。患者とのコミュニケーションはできるようになって病院に入っている。低所得者を相手に安い費用で診療しているため、多くの症例を経験できる。

○:技能教育でも、入学当初からできることはあるはず。どの段階でどの技能を修得したのか記録を残すべき。

○:臨床実習を早い時期にやるためには、日本は知識対技能が7対3だが、EUのようにこの割合を逆転させるくらいの思い切った措置が必要。

●臨床能力を育成する歯学教育の充実

○:臨床研修歯科医が役に立たないというが、昔も今も同じではないか。周辺事情は違うかもしれないが、そのうちできるようになる。知識、技能、コミュニケーション能力を統合した形で使えないため、役に立たないと言われる。しかし、これを統合した形で使えるようにするのが臨床研修ではないのか。研修歯科医が多すぎて実習が阻害されているのは事実だが、何を目的としているのかはっきりとさせる必要がある。

○:臨床実習いわゆる基礎実習は、昔は患者数が多かったため、統合できたが現在は難しい。資質向上の観点で議論したいと思うがいかがか。

○:医科歯科では、3年生から参加型臨床実習を行っている。低学年から臨床実習を行わせるには準備もいろいろとあるが、指導医や先輩に患者とのコミュニケーションの取り方に関して評価してもらっている。4年生は、6年生が指導する形をとっている。

○:技能教育をシステマティックにやっていく必要がある。人の前に出なければならない職業なのだということを教えるための教育を早くから取り入れていくべきである。

○:患者数は増えていないのに、教育に必要な患者数は増えている。歯科診療所に研修歯科医を振り分ける等の措置が必要である。

○:臨床研修を学外に任せるなどしてはどうかとのご意見。システムを変える必要がある。

●未来の歯科医療を拓く研究者養成

○:高度な専門技術者の養成と研究者の養成を4年間で行うのは無理であり、この二つは基本的に異なるものである。臨床医と研究者養成は切り分けて行うべき。

○:これについては、中教審の答申でも言われている。専門医育成との乖離が生じてはならないが、臨床研修による学位が必要と思われる。大学院の長期履修制度の利用など、現実に合わせてやっていったほうがよい。

○:医学の議論をみながら歯学に特化したものが必要、ということだと思うが、医科と歯科では違う部分も多い。医科は研究施設が多いが、歯科は若手研究者をプールという言い方はよくないかもしれないが、養成する場所が少ないことが問題である。

○:九州大学では、臨床歯学、学術博士は必要に応じて授与している。メリットが分かりにくく、キャリアパスが見えないことが問題。加えてプールする場所もない。口腔外科で20年いてもポストがないため開業せざるを得なくなる。しかし、口外で20年もいたら、齲歯が削れなくなっているということもある。

○:研究者のうち何割くらいの者に臨床を課すのか。

○:各診療科に任されている。所属している診療科の業務を手伝いながら臨床に基づいた論文を書いて審査を受けるのが通常である。

○:歯科医療が遅れていると思うのは、臨床に直結した、国民に分かってもらえる治療が少ないからではないか。

○:研究者の養成には、基盤整備と革新的な研究者養成の二つあると思うが、これについてはどのように考えているのか。

○:人材を確保育成できるシステムが必要である。

○:私立歯科大の大学院では8割の学生が臨床医であり、開業が目的。歯科の研究者になり得る人をどうやって育てるかということが問題。研究者としての修練を経ないで大学に残っている人はいないと思うので、研究者養成と臨床系を分けるのは損ではないか。国立は大学院重点化を行ったがその成果はどうか。そこに人材を送り込んで研究者を育ててはどうか。がんプロについても、かなり時間をとられると思うが学位はどうなっているのか。

○:研究者養成と臨床系を明確に区別すべきではない。安易に臨床系のみのコースができるのは問題。医科も歯科も6年の教育課程で論文を書かないのは問題であり、助教採用時の条件に博士号取得を義務づけるなどすべきである。

○:臨床系大学院をどう整備するか、論文と専門医取得のバランスはどうするのか。現在は過渡期にあり、中教審の議論を見ながら検討していくべき。研究者養成と若手研究者をプールする機関については、重点化している大学に作るのか、全く別の機関を作るのか、やり方はいろいろある。

●質の高い教育体制の確立

○:医科には既にいる教育担当の専任教員とはどんなものか。

○:教育全体をコントロールしている。京都大学など大学院にも置いている例がある。

○:医科は基本講座数が多いため、「第二」と名の付く講座を教育担当に作り替えている。歯科は講座が少ないためできなかった。

○:ティーチングスキルの醸成が問題ではないか。

○:(参考資料について説明)19年8月に厚生労働大臣と文部科学大臣の間で交わされた確認書について、その後進展が見られないため、今年11月に日本歯科医師会から要望書を提出した。国家試験の不合格者が3割もいるというのは資源の無駄であり、入学定員を絞って少数精鋭にすべき。学生が診療できる患者数を確保するためにもその方がよいのではないか。

(3)事務局より次回の会議日程案について1月15日(木曜日)10時より文部科学省13F1会議室で開催する旨、説明がされた。

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