資料2-1 学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標について【高知女子大学看護学部長・教授 野嶋佐由美氏】

学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標について
-看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査結果-

中間報告資料

看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究班 

 組織

野嶋佐由美  高知女子大学看護学部看護学科

中山洋子   福島県立医科大学看護学部看護学科

横尾京子   広島大学大学院保健学研究科

髙橋眞理   北里大学看護学部看護学科

小西美智子  岐阜県立看護大学看護学部看護学科

宮﨑美砂子  千葉大学看護学部看護学科

片田範子   兵庫県立大学看護学部看護学科

太田喜久子  慶應義塾大学看護医療学部

井上智子   東京医科歯科大学医学部保健衛生学科

小山眞理子  神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科

佐藤エキ子  聖路加国際病院 副院長・看護部長

    協力者

宮武陽子   高知女子大学看護学部看護学科

池添志乃   高知女子大学看護学部看護学科

現在作成中のモデル・コア・カリキュラムの基盤となる「看護実践能力・卒業時の 到達目標・教育の内容・学習成果」調査に関する進捗状況の報告

 本調査は、文部科学省「平成21年度 先導的大学改革推進委託事業」の委託研究「看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究」の一部であり、日本看護系大学協議会高等教育行政対策委員会の活動でもあります。

“モデル・コア・カリキュラム”の導入に際して、看護学士課程における保健師、助産師、看護師に共通する基盤となる看護実践能力・卒業時到達目標・教育の内容を抽出するための調査を行った。

第一次ヒアリング調査  日本看護系大学協議会の加盟校、参加希望のあった35校(2010年2月20-22日検討会)

第二次書面調査     第一ヒアリング対象校に再度書面による調査、21校の参加(2010年4月) 

第三次書面調査     日本看護系大学協議会の全会員校を対象(2010年5月20日~6月14日 )124校の参加

第四次書面調査     日本看護系大学協議会の全会員校を対象(2010年月25日締め切り )121校の参加   

看護管理者対象のヒアリング

国立大学付属病院、 看護部長4名 副看護部長2名

私立大学付属病院  看護部長1名

県立病院      看護部長2名

私立病院      看護部長5名 

◆20看護実践能力について

◆卒業時の到達目標について 

◆期待する学習成果と実践との関連について

◆大学卒業時の「学習成果」として、臨床側からみての妥当性について

◆看護実践能力を育てるために臨床と大学の連携について

モデル・コア・カリキュラムでは、以下のような基本的な考えに基づいて、看護学士課程を修了する学生が習得すべき必要不可欠な、コアとなる看護教育を示すことを目指している。すなわち、モデル・コア・カリキュラムは、看護師・保健師・助産師のすべてに共通する能力を中心として構成している。また、各能力を育成する教育の内容を例示するとともに、卒業時の到達目標も提示している。看護実践を構成する5つの要素と、そのコアとなる20能力、卒業時の到達目標、教育の内容、学習成果を示している(別添1)

モデル・コア・カリキュラムは、看護学士課程を修了する看護学生が展開する看護実践に焦点化したものであり、その看護実践は常に「ヒューマンケア」「根拠に基づく看護」「特定の健康課題に対応する看護」「看護ケアの改善とチーム医療づくり」「専門職としての研鑽」が不可分に統合されて実践されることが必要である。また、これらの看護実践能力は学士力を基盤として、さらに看護学の知識と技術を融合し統合させることによって可能となる。

教育にあたっては、統合された看護実践を目指しつつ、看護実践を構成する上記の要素を実現可能とする能力を育成するのであり、これらの能力の習得の順序性や優先性を表しているわけではない。統合体としての看護実践を教授するためには、従来の教育方法や教育組織では限界があり、教育方法を開発し、教育組織を変革していく必要があり、さらに調査を進めていく計画である。

1)各大学が独自の教育理念や目的に応じて教育課程を編成し、かつ社会に対して必要

不可欠な看護実践にかかわる教育の質を保証することを可能とする。

 本調査で示している能力や教育内容を、どの科目で、どの程度の時間数や単位数で履修し、またどのような授業形態で教授するかは、各大学の責任において教育理念に基づき決定すべきものである。すなわち、各大学がその教育理念や特色に基づいたカリキュラムを作成する。また、看護学学士課程を卒業する学生の実践能力を中心として、必要不可欠な看護実践能力に焦点を当てて概念化していることが特徴である。

2)平成16年度の基本的な考え方や前提を踏襲しつつ、社会や医療、看護の変化に対応するために変更する。

 「看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の到達目標」(看護学教育の在り方に関する検討会報告)には、看護教育の前提として以下の点が記載されている。

  1.保健師・助産師・看護師に共通した看護学の基礎を教授する課程であること

2.看護生涯学習の出発点となる基礎能力を培う課程であること

3.創造的に開発しながら行う看護実践を学ぶ課程であること

4.人間関係形成過程を伴う体験学習が中核となる課程であること

5.教養教育が基盤に位置づけられた課程であること         

文部科学省:大学における看護実践能力の育成の充実に向けて(看護学教育の在り方に関する検討会報告),2002(平成14年3月26日)

文部科学省:看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の到達目標(看護学教育の在り方に関する検討会報告),2004(平成16年3月26日)

 

3)看護の国際的な動向、今後の社会や医療、看護の変化に対応可能なコアとなる看護

実践能力を中心として構成する。

American Association of College of Nursing(米国看護大学協会):The Essentials of Baccalaureate

Education for Professional Nursing Practice(2008)。教育の質の評価の枠組みに活用されている「The Essentials of Baccalaureate Education for Professional Nursing Practice」の考えを取り入れることにした。

4)看護学士課程卒業者の看護実践の要件

現在、以下の要件について検討中である。

  1. 個人―家族―集団―地域を対象とする看護実践
  2. あらゆる年代の人々に対する看護実践
  3. 多様な場で、継続的なケアを提供できる看護実践
  4. 健康―疾患の連続性を踏まえての看護実践
  5. ヘルスプロモーションや予防を促進する看護実践

お問合せ先

高等教育局医学教育課

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電話番号:03-5253-4111(内線2509)