モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(平成27年度~)(第3回) 議事録

1.日時

平成28年7月6日(水曜日)13時00分~15時05分

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎)13階 13F1・F2会議室

3.議題

  1. 調査研究チームの検討状況について
  2. その他

4.議事録

【齋藤委員長】  定刻になりましたので,それでは,ただいまよりモデル・コア・カリキュラムの改訂に関する専門研究委員会を開催いたします。

私は,医療系大学間共用試験実施評価機構,長い名前でございますけれども,の副理事長を仰せつかっております齋藤宣彦でございます。本日は,医学教育について集中的に議論を行いますが,まず議事に入る前に事務局から,配付資料についてお願いいたします。

【佐々木企画官】  医学教育課の佐々木です。

お手元にクリップ止めをしておりますので,外していただければと思います。本日の資料は10種類,また,それとは別に参考資料が2種類,そして委員の先生方のところには,机上資料として5種類とファイルが置いてございます。一つ一つの説明は現段階ではいたしませんが,資料1から資料5までが,この後,北村先生の御説明の中で用いられる資料でございます。資料6から9までが,その後,奈良先生,田中先生,そして厚生労働省の武井課長からの御説明の際に用いる資料でございます。資料10につきましては,最後のスケジュール確認の際に使用する資料でございます。また,委員のお手元に追加で配っておりますのは,机上資料1の中で非常に見にくいマスキングのようになってしまっている資料の部分がございますので,そこの部分の差し替えですので,内容的には同じでございます。

合わせて,オブザーバーの交代がございましたので,御紹介したいと思います。先月6月21日付で,厚生労働省医政局医事課長に武井貞治課長が着任されましたので,御紹介いたします。

【武井医事課長】  どうぞよろしくお願いいたします。武井でございます。

【佐々木企画官】  本委員会の委員長は,先ほど委員長がみずからおっしゃってくださったんですけども,齋藤宣彦先生でございます。これは3月30日に開催いたしました連絡調整委員会・専門研究委員会の合同会議において,連絡調整委員会の永井良三委員長から御指名がありましたので,齋藤宣彦先生に委員長をお願いしております。

合わせて本日,前田健康先生からも御出席いただいております。前田先生も同様に,3月30日の会議で歯学の委員長の御指名がありましたので,3月30日の方針で医学と歯学をクロスと申しますか,多くの部分は共通のものとして整理するということから,前田先生にも本日御出席いただいているところでございます。

以上でございます。

【齋藤委員長】  ありがとうございました。それでは,早速議事に入りますが,お手元の議事次第にございますように,調査研究チームの検討状況について御議論いただきたいと思いますが,まず,そのリーダーを務めていらっしゃいます北村委員から,現在の検討状況について御説明を賜りまして,それについての質疑,意見の交換をしたいと思いますので,北村先生,よろしくお願いいたします。

【北村委員】  北村です。よろしくお願いします。

資料1を見ていただいて,順次いろんな資料が必要なんですが,資料5,これが現在のコア・カリキュラムです。机上資料1並びに机上資料3,このあたりが,今たたき台になっているものです。

まず,1,全体を通じて,今回の改訂のコンセプトは,単に「医療ニーズ」とせず,医学や社会の視点から広い意味のニーズもあるため,「多様なニーズに対応できる医師・歯科医師の養成」としたいと思います。

前回は,「多様な医療ニーズに対応する医師・歯科医師の養成」ということになっていたんですが,医療だけでなく,医学研究やいろいろあるんじゃないかというので議論しましたら,かえって医療ニーズと限定する方が動きにくいということで,医療を取りまして,「多様なニーズに対応できる医師・歯科医師の養成」としたいと思います。

従来から目標が「一般目標」と「到達目標」,GIO,SBOを念頭に置いた目標になっていましたが,また,そういう概念の変化もありますので,今回はねらいと学修目標に変更したいと思います。学修の「修」は,こういう字を文科省は広く使っているということで,学び修める目標ということにさせていただきたいと思います。

それから,丸の3つ目,全体量のスリム化を図るために,項目は原則一増一減ということで検討したいと思っております。増やしたい場合は改訂担当者がチームに相談することしております。

次の丸,一部の到達目標に付けられているアスタリスクですが,これは,従来大体4年生で受けているCBTには出ないというようなお約束でしたが,教育で軽視される傾向があったり,あるいは4年生以降にやるということで,実はやらなかったりとか,いろいろ誤解を招くことがあるので,目標としては同じということで,全てのアスタリスクを取りたいと思っています。

次の丸,用語の点ですが,日本医学会用語集にのっとって「Cushing病」,「Sjögren症候群」というふうに統一したいと思っています。

次の丸,A項目からF項目について,可能であれば教育方法(ストラテジー)も入れ込んで記載すると,カリキュラムというのを最初に齋藤先生に習ったときに,カリキュラムというのは目標と方略と評価があって,それを全部まとめてカリキュラムと言うんだと,これがカリキュラムかというと,目標集になっていて方略がほとんど書き込まれていないと,評価法に関しては,CBTやOSCEなど評価法としては確立しているので,方略を指定したり,お勧めのものがある場合は,教育方法として入れ込めたらと,希望段階ですが,そう考えております。一部,診療参加型臨床実習というような形で書いてある部分もございます。

次の丸ですが,今後,モデル・コア・カリキュラムとモデルコアコンピテンシー,国家試験,臨床研修制度,さらには生涯教育制度等の目標等で一貫性を持たせられるよう,各担当者間で連絡を取り合ってやっていきたいと思っています。

その次は,班員,仮の分担を決めて,そこに責任持ってやろうということで,班員で分担を決めてやっております。今の段階ではメールなんかでやりとりしている段階です。

さらにチーム外に作業協力者をお願いして,細かい点を見ていただいたり,つなぎの部分を見ていただいたりお願いしようと思っています。

最終的には,骨子案を作成する前に,できれば広く関係者の意見を募り,骨子案を策定したら,今度はパブリックコメントということで,さらにまた御意見を募りたいなと思っております。

以上が全体を通じてです。

2.医師として求められる基本的な資質,資料5の11ページ,あるいは机上資料1の11ページあたりですが,資料3もそうです。

現在,資料3の1ページ目の下にあるような(第2案)というものをたたき台にして,いろいろやっております。まず,タイトルですが,「医師として求められる基本的な資質」で止まっていたものを,コンピテンシーという言葉を意識して,「医師として求められる基本的な資質と能力」としたいと思っています。これ自身9項目ありますが,Minimum requirementということで,できれば各大学においてはがさっと削って3つだけというようなことのないよう,できるだけ9項目は採用していただきたいなと思っております。

さらに各大学で独自に項目を追加したり,詳述したり,言い換えたりすることは構わないとは思いますが,将来的には全国医学部長病院長会議でカリキュラムのデータベースをお作りになるということで,そういうのができた場合は,WEB入力でそれぞれの大学のコンピテンシーを入力していただいて,各大学が比べ合えるようなことも,夢みたいですが,あったらいいかなと思っております。

見てお分かりのとおり,9項目のうち2番から8番あたりは測定可能とは思いますが,プロフェッショナリズム,そして9番の「生涯にわたって学ぶ姿勢」などは,測定が難しいものであることは重々知った上で,でも,あえて入れ替えると考えております。

次,3番,Aの基本事項です。A1医の原則の1番,医の倫理と生命倫理,これの言葉ですが,例えば「医療の倫理の歴史について概説できる」,「生と死に関わる倫理的課題を列挙できる」など,その目的を書く言葉としてはいいんですが,もうちょっと深いんじゃないかと,列挙できればいいというものもないでしょうというようなことで,もし可能ならば,構成主義的な文言と書いてありますが,どんなのと言われても困るんですが,例えば「生と死に関わる倫理的課題を考察し述べることができる」とか,分かりませんが,深く考えていただけるような言葉がもし見つかれば,そういうものを入れてみたいなと思っております。

A1医の原則3医師としての責務と裁量権に自己決定支援についての記載を追加したいと,自己決定するのは患者ですが,その支援を追求するというようなことです。選択肢が多様な場合でも適切に説明を行い患者の価値観を理解して,患者の自己決定へと導けるという感じです。

その次の丸のA4課題探求・解決と学修の在り方の2学修の在り方の「ねらい」に,近年の医学・医療ニーズにおける医学英語の重要性を鑑みて,英語学修についての一文を追加したいと思っています。学修や診療に求められる一般的な医学英語の能力を身につけると,そういう一文です。

4番目,医学・医療と社会の項です。B1社会・環境と健康の4と8を統合整理して1つの項目にすると,こういう環境について概説できる,ここが適当かどうか分からないんですが,ソーシャルデターミナントオブヘルスというような概念もあり,貧困と健康とか,そういうような社会的な現代的な課題も書き込めたらと考えております。

Bの1社会・環境と健康に,長時間の職業的・専門的な行動に由来する健康問題も取り入れたいと,作業医学やスポーツ医学の記載になります。例として,特異な労働環境や過度の運動負荷に起因する健康問題を概説できるというような形になります。

5番目,医学一般です。Cの4病因と病態,遺伝子異常・遺伝子疾患は,これらのエリアが非常に進歩が大きいため,いろいろいじりたいと,関係する家系図をかけるなどの記載を入れ,一般臨床でも使うような遺伝子異常・遺伝子疾患を取り上げたいと思っています。

行動科学は新しいカテゴリーなので,項目の増加は構わない。行動科学をしっかりと取り上げることで送れるメッセージは大きいものと思っています。

6番,D.人体各器官ということで,分野ごとに項目数がかなり違っております。平成30年版国試基準のブループリントを参考に,それに似たバランスにして,適正さを担保したいと思っています。

D9生殖機能,妊娠と分娩で育児や閉経についての記載を追加する。B1社会・環境と健康,各ライフステージの健康問題にも関係すると思います。例として,育児に伴う母体の構造的・生理的な変化,身体,精神問題について説明できる。閉経の過程と疾病リスクの変化を説明できるというような内容になると思います。

7番,Eの7人の死について充実が求められていると思います。超高齢化社会ですので,医師に求められている内容も随分このエリアのことが多いと思います。例としては,死に至る心の過程を説明できる。終末期患者とのコミュニケーションを説明できる。終末期における本人の意思決定・表示及び延命治療,DNAR,尊厳死,安楽死の概念を説明できる。終末期の補液,栄養管理について説明できる。患者の死後の家族のケア(悲嘆のケア<グリーフケア>)を説明できる。言葉ですが,終末期ケア,ターミナルケア,エンドオブライフケア,人生の最終段階など用語が幾つか出ておりますので,そういうのも整理したいと思っています。

8.F.診療の基本です。次のページになりますが,F1症候・病態からのアプローチの項目の見直しを医師会が出されていらっしゃる生涯教育カリキュラム,平成28年4月改訂のものや国民生活基礎調査など,ここは症状ですね,受診するときの症状があったりしますが,それを参照して増減を引き続き進めたいと思っています。齋藤先生と共用試験機構で現在臨床実習終了時OSCEを念頭に入れて検討が進められていますが,その際の課題の候補にここのF1に挙げられた症状が当然入ってくるものと思いますので,厳選した意味のある症状を書いていきたいと思っています。

F2基本的診療知識,薬物治療の基本原理に,高齢者増加など社会ニーズを鑑みて,多剤投与,禁忌,また,アンチドーピングに関する記載を追加する。多剤投与,使用禁忌,特定条件下での薬物治療(アンチドーピング等)について説明できると加えたいと思います。

F2基本的診療知識,薬物治療の基本原理で,4から11,各疾患がずらっと書いてあるんですが,それを同じ文言ですので,括弧の中に中枢とか末梢神経,循環器,呼吸器と全部入れ込みますと,1行になりますので,そういうふうに行を減らすんじゃなくて,行をまとめたということです。

F2の6医療機器と人工臓器は,旧薬事法から薬機法への改正に伴い,「医用機器」を「医療機器」に変えて記載する。

F3は,基本的診療技能に「診療時の患者の体位」を追加すると,漏れ聞くところによると,歯科はすごく体位が重要なので,医科はどうなのかなと,難しいんですが,しっかりとやっぱり書き込むことによって,患者さんと自分の立ち位置等,体位について検討できればと思っています。

9.臨床実習,G臨床実習と「診療参加型臨床実習の実施のためのガイドライン」を統合的に大きく改訂したいと思っています。福井先生と吉田先生が作られたものですが,また検討させていただきたいと思っています。

平成23年度に医学・歯学教育の改善・充実に関する調査研究・医学チームというものがありまして,そこに「経験と評価の記録(案)」というログブックの案を作って報告書に入れて,一部サンプルとしてファイルにしたものがあります。それは非常に好評なので,ここにも入れさせていただきたいなと思います。

その次,平成19年度まで記載のあった臨床実習に関する「実習形態」と「症例」については,臨床研修や生涯教育等の卒後との一貫性も考慮し再掲載を検討したいと思っています。

G2臨床検査の記載を充実させると,検体採取,検体保存,有効性と効率性の概念についての記載をする。ここに例がありますが,基本的には臨床検査を有効に,かつまた効率的に費用対効果も考えた選択ができるような記述にしたいと思っています。

10番,準備教育モデル・コア・カリキュラム,これを全部医学教育に取り込みたいなと,教養教育を含めて準備教育は医学教育との関連性を重視するために,「生命現象の科学」は既に入っていますし,「物理現象と物質の科学」,「情報の科学」を取り込んで全てを含めて医学教育にしたいなと考えております。

11番,その他,褥瘡は老年医学及び多職種連携の観点で重要なので,処置・治療について記載を設ける。【高齢者の診療】の部分に褥瘡の処置・治療というものを入れたいと思っています。

今後の予定ですが,各論の小項目を加えること,除去すること等を検討するために,7月,8月,9月には小グループミーティングを順次開催して,顔を見せ合って1項目ずつ検討するというようなことをやりたいと思っています。ただ,全員がそろうというわけじゃなくて,小グループでやっていきたいと思います。また,国家試験との用語のすり合わせについては,7月,8月にまた検討させていただきたいと思います。

最後の図は,スキルとか,認知とか,態度,こういうものを下の,ここではYear1,Year2,Year3というふうに上がっていますが,卒前教育,卒業時,そして研修,専門教育というように,スパイラルに同じようなことを勉強するというイメージをページが空いたので書かせていただきました。

以上です。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。まず,山口委員がそろそろお忙しくて御退席。

【山口委員】  まだもうちょっとおります。

【齋藤委員長】  大丈夫ですか。でも,どうぞ最初に御意見をおしゃっていただければ。

【山口委員】  御配慮ありがとうございます。3つほど質問と意見とございます。まず,1つ目ですけれども,先ほど資料3のところで,医師として求められる基本的な資質と能力ということで,資料5の現在の書かれている項目を拝見しますと,かなり変化しているようにお見受けいたしました。これは用語の整理をされて変わって,ポイントは余り変わっていないということなのか,根本的に何か変化があったということなのか,どういう視点によってこういう変化がなされたのかということを質問というか,確認させていただきたいというのがまず1点です。

それから,資料1の2ページ目のところに,4医学・医療と社会でございますけれども,これは歯科のところでも申し上げたんですが,地域医療構想とか,事故調のこととかは今回盛り込むというようなことを資料を拝見していると書いてあったんですけども,ほとんど医学部で社会保障面とかというのが教育の中では余り充実されていないように思うんですけども,そういったものをそろそろ入れていくような検討というのが話の中で出てこないのかなということがちょっと気になりましたので,もし余裕があるのであれば,そういったことも盛り込んでいただきたいなというのが2つ目です。

それから,3つ目として,同じ資料1の2ページの7のところで,例としていろいろ挙げられている,例えば例の3つ目の概念を説明できるとか,4つ目の栄養管理について説明できるという説明できるというのは分かりやすかったんですけど,それ以外のところが,死に至る心の過程を説明できるとか,それから終末期患者とのコミュニケーションを説明できる,あるいは最後のグリーフケアを説明できるという,客観性が余りなくて個別的なもの,個別性のあることに対して,どういうことをすれば説明できるということになるのか,これを説明できるという目標が,具体的にどういうふうになることが説明できるということになるんだろうと,ちょっと違和感があったので,こういう用語というのは説明できるに統一しないといけないものなのか,もう少し言い換える必要があるんじゃないかなという気が少ししましたので,その3点でございます。

【北村委員】  ありがとうございます。

ありがとうございますと言ったけど,鋭い質問なので,まず,医師として求められる基本的な資質と能力,新しい第2案というのに変えたものは,決して言葉だけの改訂ではなく,かなり深く考えております。特に職責とされているものをプロフェッショナリズムと,ある意味分かりにくくなったかもしれませんが,職責というと,仕事のオンタイムだけのもののようにもうかがえるので,プロフェッショナリズム,議論があるところですが,医師という職業を選んだ人間が持つべき意識であり,倫理性であり,そういうものを深く含んだというようなことで,海外もこの言葉を広く使われていますので,是非使いたかったということがあります。あとはかなり整理して,同じ内容のところもあるんですが,いろいろちょっと意識があって,考えて,実はこれは今やっているんですが,それぞれに二,三行くらいの説明文章を入れて,この資料5の11ページにあるような形に持っていきたいと思っていますが,まだこの二,三行の部分が議論百出で今日お持ちできなかったんですが,大体は内容的には同じなんですが,むしろ分かりやすい言葉でどうだろうと思って改訂しました。

2つ目の御質問ですが,2ページ目の社会医学,当たり前ですが,医学・医療は社会医学がなければ,社会のニーズを捉えてやっていかなければ立ち行かないくらいの認識は持っているので,おっしゃるように,もうちょっと社会医学を膨らますことはいいかなとは思います。

7番,確かに非常に重いところなんですが,例の1,「死に至る心の過程を説明できる」で定めにあるのは,キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』というような本があって,そこでは告知されたときに,治らないと言われたときに拒否があって,そして最後には認めていくというような心の流れなんかが書いてあります。それをさらさらと言えればいいとは思っていなくて,本当は『死ぬ瞬間』みたいなのを必ず読んで,そしてレポートを書いて,死ぬということを実感というか,ちゃんと考えてほしいという意味ですが,動詞が思い付かない。よく考えて説明できるというふうにしたいくらいなんですが,動詞が思い付かないで,もうちょっとそこを軽くないように,ここの部分で全部いろいろありますけど,変えていきたいなと。現在のところそのすぐ下の丸の言葉ですね。終末期というのは,個人にもよるんですが,余りイメージのいい言葉でもないので,やめたいなとか,現在「人生の最終段階」という言葉がよく使われているので,いいかなとも思うんですが,定義しろと言われても困るしというような,言葉だけでうろうろしています。

【山口委員】  できればこういうところというのは,患者から見ますと,例えば死の瞬間にある何段階というものに,それなんだというふうに思われるところを当てはめることしかしなくて,個別性があるんだということをもっとちゃんと理解してもらいたいという思いがありますので,それだけで済んでほしくないなというようなことで,少し,じゃ,考えていただいて,また何か提案ができるように私も考えておいて。

【北村委員】  よろしくお願いします。

【山口委員】  すみません,もう一つだけ。コアカリを拝見していたときに,2人に1人がなると言われているがんというのはどこにも悪性腫瘍とか出てこないんですけど,それはちりばめられている,各疾患ごとにという理解で。

【北村委員】  はい。実は前回の改訂で,前回か前々回でちょうどがん対策基本法かな,があったときに,がんだけ取り出して,がんというのを書いたんですが,そうするとかえって学ぶ方は分かりにくいということで,今回はがんは全診療科のところに入れて,さらにがんだけまとめと,がんに関しては二重記載になっても,それでいこうかと議論している最中です。

【山口委員】  はい,分かりました。

【泉委員】  付け足しですが,最初の御質問の,医師として求められる基本的な資質というところですが,これについては,資料3をごらんください。最初に担当の北村先生と錦織先生の方でまず討議していただいて,それから臨床研修の到達目標とすり合わせていただき,その後錦織先生の方で国立大学医学部長会議に御出席していただいて,そこでまた国立大学の医学部長会議で検討されているコア・コンピテンシーとすり合わせていただいて,それを今度は私が担当しました。このモデル・コア・カリキュラムの12ページから,Aの基本事項1の医の原理から4の課題探求・解決と学修のあり方というものが1から4まであります。「医師として求められる基本的な資質」が,実はここの「基本事項」とほとんどかぶっているということで,これもまとめた方がいいと北村先生からご提案いただきまして,私の方で9項目の中にこれを落とし込んで,1つのものとして一応ドラフトだけ作り,今,北村先生などに見ていただいているところです。一応そういったいろいろと散逸していた目標などを1つにするということで,次回には御提示できるかと思っています。北村先生,それでよろしいですか。

【北村委員】  はい。分かりました。

【邉見委員】  私,医学部の入学式に行って,どこの大学でも,勉強もいいけれど体を鍛えておけと言っているんですね。やっぱり過労死とか,自殺の医師がものすごく多いんですね,医療職。そういうことからしますと,ワーク・ライフ・バランスとか,自分のことに関してはどこでも教えなくていいんでしょうか。職業的な病気とかというのを,意外と小児がんの人なんかを診た後鬱になるとか,いろんなこともありますので,これは医師に特有の病気じゃないかなと思ったりすることがあるんですね。そういうふうな医療者の健康というか,心身的なものというのは,やっぱりどこかで心構えか,プロフェッショナリズムでもいいんですけれども。

【北村委員】  あ,そうですね。

【邉見委員】  ちょっとお考えいただいたら。

【泉委員】  実際,今,医師としての職責というところで,それを包含するということで,名前がプロフェッショナリズムとなりましたけれども,この中にそういったことを入れようかとは思っていました。

【北村委員】  自己管理とか,そういう言葉はどこかに出てくるので。

【邉見委員】  あれば結構です。

【北村委員】  ありがとうございました。

【齋藤委員長】  大変貴重な御意見,ありがとうございます。医師として求められる基本的な資質と能力というののオリジンは,1987年の文科省の医学教育の改善に関する調査研究協力者会議を覚えていらっしゃいますでしょうか。あそこに期待される医師像が11項目あります。あのあたりがこれの基本になっていると思いますが,時代が随分変わりましたので,ここでもう一回意識をする必要があると思っています。ありがとうございます。

それぞれの質疑応答に入る前に,奈良委員と田中委員,それから厚労から最近の医学教育に関する動きについて資料を頂いておりますので,それについて御説明を順次頂きたいと思いますが,奈良先生,よろしくお願いいたします。

【奈良委員】  それでは,資料6をごらんください。これからモデル・コア・カリキュラムを改訂するに当たって,現在の医学部の教育がどうなっているかということはとても参考になるかと思いますので,資料を用意させていただきました。

それから,もう一つは,現在医学部の分野別評価を進めておりますので,その観点からもカリキュラム改訂が必要かと思います。例えば評価の中に行動科学というのは明記されています。そういうこともありますので,資料を用意させていただきました。

時間がありませんので,簡単に4点だけに絞りたいと思いますが,まず,資料6のスライド番号2を御覧ください。医学教育のカリキュラム調査は,1974年から始まっておりまして,2年置きに調査して,そして2年置きに冊子として報告書を作ってまいりました。一番新しい報告書はつい先日発行され,全国医学部長病院長会議で各医学部長並びに病院長には配布してございます。この中で要点だけ絞って申しますと,まず,1つは統合型教育(スライド4)についてです。従来は教養教育があって,基礎医学,臨床医学ということだったわけですけども,現在国際的な流れとしては,そういったように区別せずに,基礎医学と臨床医学が統合した形が必要であるとされます。スライド5ですけども,現在統合型教育の浸透度をみてみますと,既に80校中74校で何らかの形で統合型が組み入れられていることが分かります。これには基礎医学間の水平型統合,臨床医学間の水平統合,さらに基礎医学と臨床医学を垂直統合したというのがありますが,その内容については大学間で差があるものの,74校というかなり多くの大学で取り入れていることは間違いありません。

それから,2つ目,スライド6でありますけども,現在は学生が学ぶべき知識が膨大になっており,学生自身が学修する自己学修が推進されています。その観点から能動学修が重要になっております。能動学修には,反転授業など様々なものがありますけども,今回の調査では,まず,スライド7のように,PBLがどのぐらい導入されているかと調べてみました。PBLは80校70校で導入されており,これも多くの大学で取り入れられている現状です。導入は臨床医学の主要科目に多いのですが,例えば一般教育とか,あるいは病院実習などでも実際されている大学があり,各大学が工夫されていると考えられます。

PBLの導入時間数,あるいは用意しているシナリオ数など,内容的にはかなり各大学に差があります。詳細はぜひ報告書をごらんいただければと思います。

一方,必ずしも能動学修とは言い切れませんが,TBLの導入状をスライド8に示しています。TBLは43校で導入されており,PBLと同様に臨床医学での導入が38校と多くなってございます。

それから,臨床実習の充実について述べます。これも医学教育ではきわめて重要なところでありますが,スライド9に,平成23年度,25年度,27年度の臨床時間数を掲載しています。この間に確実に伸びてきているということがうかがえます。平成21年に,文科省の医学教育カリキュラム検討会が開かれ,臨床実習を充実すべきだということがかなり議論されました。そして,5年次及び6年次で,50単位以上を臨床実習に充てることが望ましいと報告されました。この提言が出る前の平成21年度あたりまでは,1,500時間を切っている大学がかなりあったわけですけども,カリキュラム検討会の提言を受けて平成23年度には臨床時間数が増えていますし,さらに1,500時間を切っている大学はずいぶんと少なくなりました。それでもまだ臨床実習の時間数が少ない大学があり,ぜひ充実を望みたいと思います。

さらに,臨床実習は時間数だけ延ばせばいいというものではなく,学生が主体性と責任を持つ診療参加型が重要ということで,診療参加型臨床実習の導入状況も調査しています。これは時間の関係で割愛していますが,報告書で詳しい内容をごらんいただきたいと思います。

また,臨床実習が終わった後の学生の評価も重要です。その評価の1つとして,臨床実習後のOSCEがあります。スライド10に示しますが,前回の調査では80校中56校が導入していましたが,今回の調査では59校が導入しており,微増しています。それだけ各大学の意識が高まってきた表れかと思います。

ただ,前回も指摘しましたが,OSCEは実施されているとはいうものの,ステーション数が少ないのが現実です。全国平均ではステーション数が4.1にすぎず,,OSCEとしての評価の妥当性,信頼性を考えれば,少なくとも12ステーションが必要とされており,それを鑑みると,ステーション数を増やすなど,OSCEの充実が必要かと思います。

それから,4番目に研究マインドの涵養が課題になります。スライド11でありますように,研究室配属が多くの大学で導入されています。全学生を配属したのが63校,一部の希望者のみを配属しというのが7校であり,合わせて70校が研究室配属を行っている結果になります。多くは学内ですが,国内の他施設,あるいは海外での実習もみられます。まだ導入していない大学は,学生の研究マインドを涵養することを検討していただきたいと思います。

5番目が,海外交流です。基礎研究の交流は省いていますが,臨床実習だけを考えてみますと,80校中66校が海外交流による臨床実習を実施しており,しかも全国平均が2カ月ほどになりますので,まずまず評価できると思います。逆に導入していない大学は進めるべきだと考えます。

以上が,医学部の教育にかかる現状であります。もう一つの話題として,医学教育分野別評価があります。これも時間の都合で詳しくは申しませんが,国際基準に基づいて医学教育を評価して,そして教育の質を保証することに意義があります。その必要性はスライド4に示すとおりで,分野別評価制度を導入することになったきっかけは,アメリカECFMGからの2023年以降は国際的な基準で評価を受けた医学部の卒業生にしか申請資格は与えないという通告であります。これを受けて,スライド6に示すように,わが国では全国医学部長病院長会議が主体となって,平成23年から制度設計等を始めて,そして平成24年度から28年度まで5文科省の大学改革推進事業としてこの研究を始めました。そして昨年12月1日付で,日本医学教育評価機構(JACME)が発足し,医学教育分野別評価を試行として開始しています。JACMEが世界医学教育連盟(WFME)として認知されれば,国際的な評価団体として認められ,正式な分野別評価を行うことになります。

8番目のスライドにありますように,WFMEに申請を出して,今後国際委員の外部視察を受けて,そして認証を頂く手続きを行っています。

スライド11ページは,グローバルスタンダードを踏まえた評価基準を示します。スライド13には,医学教育分野別評価でも重視している学修成果基盤型教育,統合型教育,自己学修などを掲載していますが,これらは現状の医学部教育において改変されていくことは間違いないかと思っております。

最後に,現在までの分野別評価の進捗状況を示します。スライド23にありますが,2013年12月の新潟大学を皮切りに,昨年度までに計11校がトライアルとして評価を受けています。今年度も進行中で,7校が受審の予定です。来年度以降はさらに数多くの大学が受審を計画しており,それに合わせて医学教育の改善,改良が進められると期待されます。あわせて御報告させていただきました。

以上でございます。

【齋藤委員長】  ありがとうございました。次に,田中委員から,資料7についての御説明をお願いいたします。

【田中委員】  資料7をごらんください。先ほど北村先生,泉先生から,医師に求められる資質の調整についてお話がありましたけれども,卒前,卒後のいろんな段階があります。例えば卒後でも臨床研修,専門研修,それから生涯教育とありますけれども,それぞれに資質というものについて議論がされていて,それはそれですばらしいんですけれども,それを調整して一貫性のあるものにすれば,例えば卒前段階ではどこまでやる,臨床研修ではその次にさらに発展させるということができてきて,一貫性が生まれるであろうということで,そこの調整の場として,日本医学教育学会の中に医学教育の一貫性委員会を設置するというのが新しい理事長の御提案でありました。

そこの委員会は,6月1日から発足,といってもまだ一回も開かれていないんですけれども,平成30年まで2年間,年三,四回の開催を予定しております。最終的には,提言のような形でまとめたいと思っておりますけれども,その委員ですけれども,理事長の御指名なので,私が委員長を務めさせていただきまして,あと金沢大学の野村先生に副委員長になっていただいて,あと卒前で北村班というんでしょうか,北村先生のところで担当されている大滝先生,それから国家試験も重要なウエートを占めますので,国際医療福祉大学に移られたかと思いますが,吉田先生,それから臨床研修では,病院の視点も重要ですので,聖隷浜松病院の清水貴子先生に入っていただきまして,それから,臨床研修と専門研修両方を担当するということで,東京医科歯科大学の高橋誠先生,それから社会学の視点も重要なので,京都大学の今中先生に入っていただくということまでは決まっております。そして,AJMCからは推薦をお願いしていて,東京医科歯科大学の医学部長で江石先生という先生がいらっしゃるんですけども,江石先生が重要なことをAJMCの中で関連することを担当されているので,江石先生,専門医機構は,今いろいろな議論が行われている最中ですので,まだお名前を頂いていません。日本医師会からは横倉会長に御推薦をお願いして頂いたお名前が羽鳥先生という理事の方でいらっしゃいます。あと,有識者ということで,一般の社会の視点をお持ちの方にも入っていただくように,今お願いをしているところであります。

このほかに,文部科学省や厚生労働省,あるいは日本医学教育学会の執行部に入っていただく予定で,共用試験実施評価機構にも入っていただきたいと思っておりますけれども,そこは福島先生が医学教育学会の副理事長でもいらっしゃいます。また,齋藤先生とも御相談させていただきたいと思いますけども,今こんなメンバーでスタートするということで,ここでそれぞれのレベルで議論されていることを持ち寄って,調整できればと考えています。

以上です。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。次に,厚労省から武井医事課長からの御説明をお願い申し上げます。

【武井医事課長】  今御紹介いただいた厚労省の武井です。資料としては資料番号8と9をごらんいただければと思います。まず,資料8ですけれども,平成30年版医師国家試験の出題基準の概要というペーパーでございまして,こちらは先日6月30日に公表させていただいて,既にごらんになっている方も多いかと思うんですけれども,今回の改訂のポイントということで,上の枠の中に5つほどございますけれども,まず,1つ目の丸にございますように,平成30年の国家試験から問題数の変更ということで500から400ということですけれども,これは減ってはいますけれども,共用試験,先ほどからも出てございますけれども,いわゆるCBTの導入を踏まえた対応ということで,そちらでは約250問ほど記載されているということですので,そちらとトータルで考えていくということでございます。

それから,2つ目にありますように,保健医療ですとか,公衆衛生の問題数は担保される必要があるだろうということで,特に臨床実地問題については重視するというスタンスでございます。

3つ目の丸が,今日の議題と非常に関連するところではございますけれども,モデル・コア・カリキュラムと,それから卒後の臨床研修到達目標との整合性を考慮しということで,到達目標につきましては,こちらにいらした福井先生など多数の先生方に御協力いただきまして,今まさに検討を進めております。医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループということで,既に9回ほど開催しておりまして,今年度中にワーキンググループの取りまとめを行う予定でございます。いずれにしても,このモデル・コア・カリキュラムとしっかり整合性の取れた連携ができた形で進めるということでございます。

それから,4つ目の丸が,医学・医療の進歩を踏まえた出題事項の見直しということで,近年非常に社会的に注目されている医療安全の問題ですとか,それから薬剤耐性,これは次に触れます。それから,地域包括ケアシステムなどという社会の問題にきちっと対応できるような,そういった出題を目指していくということと,最後は細かな話ですけれども,ワーディングですね。医学用語辞典との整合性という利便性の向上も考えていくということでございます。

今御紹介しましたAMRなんですけども,次の資料9をごらんください。薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(概要)となっているペーパーでございまして,こちらも既に御存じの方は多いと思うんですけれども,今年G7サミットが日本で開催されるということで,今回のこの薬剤耐性のアジェンダについては,G7サミットの主要な議題の1つにもなりましたし,グローバリゼーションの進展を踏まえた国際保健への対応という視点も入っているかと思います。特に背景のところにありますように,新たな薬剤耐性菌が増加しているという状況ですとか,新たな抗微生物薬の開発は減少ということで,非常に開発に費用が掛かるということで,医療経済的な側面からも,こういう薬剤耐性の問題にしっかり対応していく必要があるかと思いますし,限られた医療資源を最大限有効に活用するという観点ですとか,最終的には国内のみならず世界の人々の命,健康を守るという,そういった視点も入ってきていると言えるかと思います。

特に2015年,昨年ですけれども,WHOで盛んにこうした観点について議論が始まりまして,ドイツのサミット,その後の保健大臣会合でもこの点についてはしっかり触れられております。

それに合わせるような形で,昨年から我が国の厚生労働省としてもこの問題を重要な課題として位置付けまして,タクスフォースの設置ですとか,あと調整会議を設けるなど,今年のG7サミットの下準備をしっかりやってきたということと,今年の秋に保健大臣会合が日本で開催されますので,そのときもしっかりフォローしていくということになろうかと思います。

このアクションプランの中身がその下に書いてありますけれども,それぞれの目標ごとに戦略,具体的な取組を決めていくということで,1番目が普及啓発・教育ということの中で教育研修を推進ということが書いてございますけれども,その裏を見ていただきますと,具体的な方針を書いておりまして,真ん中のところに取組の事例としまして,卒前教育という項目がありますけれども,カリキュラムや指導ガイドライン等への薬剤耐性,感染予防・管理について適正使用に関する内容の追加・充実という項目がございますので,このカリキュラムについては今議論していただいておりますコア・カリキュラムも当然その視野に入っていると考えております。

それから,その下にございますように,国家資格試験,医療関係,これは医師・歯科医師だけではございませんで,獣医師,介護福祉関係者も含めてこの問題の重要性をしっかり認識して,それから試験としても問うという形で対応を図る必要があるということから,資格試験出題基準にこうした問題の追加・充実を今後もしっかりと進めていきたいと考えているところでございます。

簡単ですが,資料の説明となります。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。質問をさせていただきたいのは,アクションプランの卒前教育の黒ポツのところで真ん中辺よりちょっと右に,抗微生物剤と書いてあるんですけど,国家試験は抗菌薬になっていると思うんですが,今後言葉遣いとしてはどういう方向へ転がっていくんでしょうか。

【武井医事課長】  そうですね。微生物剤ということで,直近に問題になっているのが,微生物関係のものかと思うんですけれども,広く捉えると,もうちょっと広い概念でということもあると思いますので,ここはしっかり対応できるような形で進めていく必要があると思っております。

【齋藤委員長】  いつも問題になるのは,剤と薬という言葉の問題ですから,その辺は線を引いておいていただくと非常に楽でございますね。

【武井医事課長】  はい,分かりました。

【齋藤委員長】  お願いいたします。

それから,ちょっと戻りますけど,先ほどの北村委員からの御説明のところで,資料2のカラーコピーの御説明をお願いしなければならなかったので,すみません,よろしくお願いいたします。

【北村委員】  資料2,このカラーコピーですが,これに対応するものが資料5の6ページです。黄色い冊子の6ページで,間違い探しみたいで恐縮ですが,順次上から行きますと,上の丸4つが3つに減っています。減ったのは4つ目の丸です。「医学の基礎となる基礎科学については,別途準備教育モデル・コア・カリキュラムとして記載」というのが,準備教育モデル・コア・カリキュラムを廃止して,全部中に取り込んだために「準備教育モデル・コア・カリキュラム」はなくなりました。図でいうと,ちょうど左端に三角形のような形をして「準備教育モデル・コア・カリキュラム」,それから,物理現象,生命現象,情報,人の行動と心理というようなものが書かれていましたが,これらを中に取り込むということにしたため,丸がなくなりました。

その次の古い方では選択的なカリキュラムと書かれている部分ですが,コア・カリキュラムは基本的に3分の2くらいの教育エネルギーでやっていただき,3分の1程度は各大学の教育理念に基づいてやっていただくということです。そこに選択的なカリキュラムというと,選択項目のように聞こえたので,言葉を変えまして,各大学の特色ある独自のカリキュラム,それは必修であっても選択であってもいいんですが,各大学として特色ある独自のカリキュラムという部分が3分の1程度あっていただきたい,プラス下に教育モデル・コア・カリキュラム,医師として求められる基本的な資質と能力が加わりました。先ほど泉先生からお話があったように,Aの基本事項とかなり似ているので,さっきのお話を聞いて,その下にAの基本事項というのを持ってきた方がいいかなとも思っておりますが,これと関連します。

さっきの奈良先生の図表にあったように,1年生から卒業生までずっと続いているプロフェッショナリズムであり,そういうものをイメージしております。

その後B,C,D,E,F,G,Gが臨床実習ですが,それぞれ大体このあたりで教えるのかなというような感じで入れてあります。BもAと同様に,6年間続けて学ぶ社会医学的なものをイメージしております。

Cは,先ほど言った準備教育モデル・コア・カリキュラムの一部分,あるいはかなりの部分が取り込まれるようになっています。これが概略ですが,今悩んでいるのが,左の上,教養教育,さらにその下に人文社会科学,数学,語学教育などというので,これも医学教育の中に取り込んで医師として教養教育を受けてもいいかなという気もしますし,人文社会,数学は医師とは別だろうという考えもあるので,もうちょっとここのところはディスカッションを深めたいと思っています。御意見があれば教えてください。

以上です。

【齋藤委員長】  それでは,次に,先ほど北村委員から御説明がございました全体的なことに基づいて,各項目別にディスカッションしていきたいと思いますが,まずは,資料5と机上資料1あたりをご用意いただきまして。

【佐々木企画官】  委員長,資料3と,あと資料5の11ページ,机上資料も同じく11ページになります。

【齋藤委員長】  机上資料は色がいろいろ付いていて見にくくて,なおかつ字が小さそうございますから,大変なんですけれど,まず,基本事項のAのところから参りましょうか。よろしゅうございますかな。

【北村委員】  それより医師として求められる基本的な資質の方がいい。

【齋藤委員長】  資質から,そこについての何か御意見,御発言はございますでしょうか。どうぞ。

【福井委員】  この前北村先生と打ち合わせをしました。卒後研修では,プロフェッショナリズムという言葉の意味が人によって大きく異なるものですから,卒後臨床研修の到達目標を考えるグループでは,あえてプロフェッショナリズムという言葉を使わないで,違う言葉にしています。

例えば,プロフェッショナリズムの下に書いてある項目もかなりプロフェッショナリズムに含まれると考える人もいます。もし,このままプロフェッショナリズムとされる場合は,プロフェッショナリズムが何を意味しているか,定義を明確にされた方がいいのではないでしょうか。

【北村委員】  ありがとうございます。あえて先生がおっしゃらなかったのかもしれないんですが,卒後研修のところは医師としての価値観という言葉を使われていて,価値観というのはすごく魅力的で,個人的には大好きなんですが,価値観ですよ。また,それなりに難しいので。

【福井委員】  いや,資質・能力の1番は価値観とは異なる項目ではなかったかと思います。

【北村委員】  価値観と分けてありました。

【福井委員】  価値観は別個に扱っています。

【北村委員】  別に出ていますよね。

【福井委員】  ええ。

【北村委員】  あれが個人的にはものすごく魅力的なんですね。要するに測れないものでも,堂々と価値観というのを持てというメッセージが,価値観をどうやって測るんですかとか,卒業時,研修終了時に,どんな価値観を持っていたら研修終了で,どういう価値観を持っていたらアウトかとか,そんな細かいことは絶対言わずに堂々と価値観と出されて,すごく感銘を受けています。ただ,それを是非プロフェッショナリズムという言葉を使っても,やはり社会に認めてもらえるような価値観というか,何と言っていいか分からないですけど,価値観という言葉を使わせていただきたいと思うんですが,代わる言葉として職責というのが今まで使われています。職責というのも,また使いにくい言葉とは思いますが,今のところプロフェッショナリズムとしてしっかりと書き込んでみたいなとは思っています。おっしゃるとおり,少なくとも全部が入っていることは間違いないんですね。チーム医療でできることとか,生涯にわたって勉強することとか,そういうのはまさにプロフェッショナリズムなんですが,ここに入らないプロフェッショナリズムがあると,そうすると,その1は価値観だとは思いますね。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。そのあたりは,例えば我々の世界では今プロフェッショナリズムというのは大体こんなものだよという感覚になっているかと思うんですけれども,果たしてそれでよろしきやという問題があると思うんですが,例えば邉見委員,プロフェッショナリズムという言葉を聞いて,いかがお思いになりますか。

【邉見委員】  私は,やっぱり新渡戸稲造の名誉と恥というか,武士道を思い出しますね。私は外科医なんですけれども,先日,盛岡であった日本病院学会で,この武士道というのがテーマだったんですけれども,坂本すがさんと対談させていただいたんですけれども,医療職はああいう武士道みたいなのがいいと思いますね。価値観というと,何となくちょっと落ちるような感じがしますね。

【北村委員】  今これを担当している錦織君が,どこか外国の武士道と医学教育というようなことを書いていまして,その前筑波におられた亡くなった堀先生も,武士道というのを使われていて,それもいいんですが,逆に武士道とそのまま書いてしまうと。

【邉見委員】  ちょっと分かりにくいですね。

【北村委員】  じゃ,恕はどうですか。

【邉見委員】  恕。

【北村委員】  先生の病院は特に。

【邉見委員】  うちのところは思いやりです。ホスピタリティですけれども。

【北村委員】  思いやりがあって,あれもいいなとは思うんですけど。

【齋藤委員長】  何となく片仮名にするというと,内容が高まったのかどうかちょっと分からないんですけれども,南さん,いかがでございますか。

【南委員】  そうですね。私は,プロフェッショナリズムというと,文字どおりその言葉の元となっているプロフェッションという言葉を想起します。もともと皆様方も御存じのとおり,中世では法律と医学と,それから宗教と,この3つのプロフェッション,この言葉はこの3つの職業にしか使われない言葉だったわけですよね。この3つの職業の専門家というのは,弱い立場の人を対象にした職業ゆえ,党利ではなく公益のために働くことが求められ,それゆえ厳しい職業倫理を持たないといけない。それと引き換えにプロフェッションという言葉が与えられるという,そういうものであったのわけで,この原点を私は思うのです。プロフェッショナリズムという言葉は,ここで使う場合もそういうふうに取っていただけるのであればいいんだと思うんですけど,今世の中では,残念ながらプロフェッションというのは,テレビの番組に出てくる「匠」みたいなものを全部プロフェッションというので,誤解を招かないかなという気はいたします。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。ほかに御意見のある方はいらっしゃいますか。

じゃ,そのあたりの言葉はこのチームでもう少しよく練っていただいた方が,それで,我々の仲間だけが分かったんじゃしようがないので,社会の方々全員に分かっていただかなきゃ,伝わらなきゃいけない,そういう考え方の方がよろしかろうと思います。ありがとうございます。

それでは,ちょっと時間が押しておりますので,次,Aの基本事項をごらんください。いかがでございましょうか。

【福井委員】  よろしいでしょうか。

【齋藤委員長】  はい,お願いします。

【福井委員】  北村先生が,A1医の原則の2行目の行動変容をアウトカムとした行動主義的な文言を,可能なものは構成主義的な文言に改変すると言われたところと,それから先のところに関係して,2ページの7のところで,「説明できる」という動詞をたくさん使われています。この動詞には,知っているということを行動で表わすという目的で使われる場合と,素直に説明という行為ができるという場合があるように思います。これらの使い分けをしないと分かりにくいのではないかと思います。先生が1ページで使われたのは,行為としての説明ではなくて,知っているということを言いたいときの「説明できる」について,ここでは使わないということを言われているように思います。

【北村委員】  そのとおりなんですよ。まだそこまで考えが及んでいません。

【福井委員】  僕自身は,もっと素直な日本語にしておいた方がいいんじゃないかと思っています。評価は次の段階ですので。

【泉委員】  例えばどのような。

【福井委員】  「終末期患者とのコミュニケーションを説明できる」というのも,ちょっと奇異ですね,日本語としては。ここではできなくてもいいという意味ですので,「コミュニケーションの基本を知っている」とか。

【北村委員】  ほんとうはできるようにしたいです。

【福井委員】  だから,あえて。

【北村委員】  コミュニケーションできるでもいいと思います。

【福井委員】  コミュニケーションを取れるということではなく,その前のレベルを言いたいのであれば,知っているという動詞に変えればいいように思います。

【北村委員】  その上あたりに,死に至る心の過程を理解しているとか,学んだというのはだめですかね,学ぶというのは。

【福井委員】  いや,学ぶはどうかな。

【北村委員】  学ぶというのはちょっと違うか。

【福井委員】  学んだけれども,知らなくてもいいということになるかもしれない。

【北村委員】  そうそうそう。議論させていただきます。

【福井委員】  行動主義的な文言と,先生がおっしゃる構成主義的な文言がどういうふうに対比するのかよく分かりませんが,そのように思います。

【南委員】  すみません。私どもは職業柄,言葉にはこだわってしまうので,申し訳ないんですが,コミュニケーションは今では日本語になっている言葉ですが,これもコミュニケーションの専門家の方に言わせると,広い会場で話をしてもコミュニケーションとは何かを正しく言える人は1人か2人しかないと,あるとき言われたことがあります。日本人の多くは,コミュニケーションとは,自分の意思,その他思いなどをきちんと伝えることだと答える方が多いけれども,それは違うと言われました。伝えることではないんですね,コミュニケーションの本当の意味は。一言で申し上げると,コミュニケーションとは伝えることではなくて,伝わるもの,伝えた相手が何を思い,どう行動を変えたか,これがきちんと意思どおり伝わったときコミュニケーションが成立したということなんだそうです。英語で言うコミュニケーションという言葉はそもそもそういう意味なのだそうです。ですから,片仮名言葉というのは,実は非常に難しい。もし英文でもこれを作られるとしたら,よほど練らないと,そごが出ることがあるとお思いになった方がいいと思います。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。日本語の難しさというのがそういうところに。

【南委員】  伝えたつもり,というのがありますよね。

【齋藤委員長】  ええ,非常にあるので,医学部の学生が分かるだけでは不十分ですから,かなり慎重に言葉を御検討いただかなければならないと思っていますが。

次に進んでよろしゅうございましょうか。次は,Bのところへ行きましょうか。医学・医療と社会のところでございますが,ちょっと時間がなくて,これ,中の机上資料を全部行なっている時間がないかと存じますけれども,何か御意見がありましたら。

いずれにしても,これはじっくりお読みいただいて,またお寄せいただいた方がいいのかもしれない,もちろんこれから各大学に振ったり,あるいは学会に振ったり,パブコメを求めたりということになるとは思いますけれども,まだまだ非常にラフな段階だと思っています。

【福島委員】  すみません。

【齋藤委員長】  はい,お願いします。

【福島委員】  システムベストプラクティスという言葉がありますよね。要するに社会システムだとか,医療システムだとか,行政システムだとかと医療との関係というのは,このBの中に入れるという意味が,さっきの社会保障の山口委員の意見と,そういう意味で理解していいんですよね。そうすると,実際の医療というのがシステムの中で行われているということを,多分入るとしたらここにしか入らないですね。若しくは臨床実習に入れるか,そういうことを検討するという方向性でよろしいですか。

【齋藤委員長】  北村委員,どうぞ。

【北村委員】  医療は日本では当然保健医療がメーンで,保健医療システムの中で公平性,あるいはソーシャルジャスティスを考えてやるというので,ここにしか入らないので,どこか適切な場所に入れたいと思います。おっしゃるとおりです。

【齋藤委員長】  いつでしたか,やっぱりこの議論をしていたときに,卒前でもってちゃんと日本の医療保険の仕組みなんかを教えているかという議論が起こりまして,そういうこともお考えいただかなければならないと思います。ありがとうございます。ほかに御意見ございませんでしょうか。

なければ,次,Cの医学一般というところをごらんください。

【泉委員】  すみません。医学一般の担当をいたしました泉ですが,先ほど奈良先生からもおっしゃられたように,これからは基礎医学と臨床医学を垂直的に統合していかなければならない,これはみんな概念としては分かっているのですが,実は,私はCを担当しましたけれども,これは全く基礎と臨床が分かれた形で,旧態依然たる形で書いてありまして,もう一人の仲間の佐々木先生が基礎医学が御専門で,私は病理学ですけれども,佐々木先生が,ほとんど削るところも足すところも余りないのではないかとの御意見です。要は人間をこれから全体として捉えていこうというのに,モデル・コア・カリキュラムがやっぱりこのまま基礎は基礎,臨床は臨床と分かれておりましたら,どうしても皆さんの教える方も教わる方もそこの考えが変わっていかないと思うのです。そこで,本当は今回はもしかしたら無理かもしれませんが,本来は臨床からどういうことを基礎にというような形に書き方を変える,あるいは表現の仕方を変える,何かうまいそういったことが伝わるような教育者や教育される側に伝わるような書き方にしないといけないんではないかと思っていますが,何かよい御意見はありませんでしょうか。

【奈良委員】  もともとコア・カリキュラムの策定においては,学体系を排して統合型にするというのが基本的なコンセプトでした。例えば臨床のところのDをご覧いただくと分かりますように,まず,人体の正常構造と機能が入っており,これは基礎医学です。その上で2番目が診断と検査と臨床の基本的な議論が行われ,さらにその上で症候とか疾患など,臨床医学に進む仕組みになっています。これこそが基礎医学と臨床医学の統合なのです。泉先生がご指摘になったのは,基礎医学と臨床医学の垂直統合はある程度明記されていますが,むしろ基礎医学間での水平統合,あるいは臨床医学間での水平統合が十分には記載されておらず,これは課題だと思われます。

【泉委員】  それが言いたかったんです。

【福島委員】  作っていた人間として,そのときに。これは要するに臓器別の場合は,統合カリキュラムを組みやすいので組みますと,だけど,一気に臓器別に入れないので,その導入段階としてのメデシン・イン・ジェネラルというものを集めて,これは言葉をまず教えていかないと,その中に入っていけないというものをここに集めたというのが,これを作ったときなので,Cのところの,言ってしまえば医学一般とか,医学イン・ジェネラルですけど,これはそういう意味だったということで,決して学体系という意味合いではなかったと,だからこれがないと,でも,実際,臓器別の基礎,臨床の統合には入っていけないんじゃないかと思います。

【泉委員】  何か表し方なんかで工夫がないですか。実際には統合して考えなくてはいけないんだという表し方だけでも,この時代には工夫が要るんじゃないかと思うんですけど,福島先生,何かいいアイデアはないですか。

【福島委員】  そんなこと言ったら,準備教育って言っちゃうじゃないですか。

【泉委員】  いえいえ,あれは。

【北村委員】  僕もちょうどそのときいて,「コアカリする」という動詞があって,コアカリするというのは,臓器別のユニット制にすることで,今までの学体系みたいに解剖,生理とやるのはやめようということだって。今,奈良先生のところで一緒にいろんな大学へ行くと,むしろそれが逆に戻っているような気すらします。学体系は解剖をやって,生理をやってというのがあって,やはりここのところはどう書いても,その心は伝わらないので,その一番元の1ページ目あたりに,でかく統合型教育というような項でも起こして,しっかりと水平型,垂直型統合教育をして,医師全体がしっかりした医師が作るような工夫が求められるというようなことを言わないとだめなんじゃないでしょうかね。

【邉見委員】  よろしいですか。

【齋藤委員長】  はい。

【邉見委員】  私は大昔の教育を受けた原始人のようなもので,基礎,臨床と順に来たんですけども,今の臨床の現場というのは,例えば胃の内視鏡をやっていても,これで大体病理のマクロはこういう格好かなとか,これでミクロはアッカーマンのサージカル・パソロジーぐらいまでの病理までも浮かばなくてはいかんという現場なんですね。だから恐らく昔風の教育でも現場へ出たらそういうふうになるから,もっと進んだ人はナラティブな,患者さんと話しながらこの人の胃はこうだろうというぐらいまで,病理まで浮かばないと一流の医者じゃないと言う人もおりますからね。だから,どういうやり方をしても最後は受けた学生とか,将来ずっと一生勉強するかどうかと,臨床の場でも,そういうことに尽きるんじゃないでしょうかね。余り難しい統合統合と言わなくても,実際は統合されないと臨床はできないですよね。

【泉委員】  基礎の先生はなかなかそうおっしゃらないです。

【邉見委員】  そうですか。

【齋藤委員長】  それは各大学のFDでもって基礎の職務の考え方をだんだん,焦らなくてもいいですけれども,今の常識はインテグレーションなんだというぐらいに持っていかないと難しいかなという気はいたしますが。

【齋藤委員長】  どうぞ。

【梶井委員】  最近,学生が変わってきたんですね。どういうふうに変わってきたかというと,臨床に入ってから,基礎医学の教科書をもう一回引っ張り出して読んでいるんですね。ですから,まさに先生がおっしゃったような方向に学生自身が動いてきていると,そうすると教育の体制をどうするかということは,やっぱり考えていかなければいけないですし,系統講義でやっていくときに,基礎医学の関わり方をもう一回見直していくとか,そういう学生のニーズに応えることができるんではないかと思うんですね。

逆に,系統講義に入る前に基礎医学の時間をもっと圧縮して,本当に臨床と一体化したような基礎医学の在り方ということも考える時期に来ているのではないかなと思います。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。かつて医学部長病院長会議のカリキュラム調査をしていたときに,インテグレーションが常識だぞと投げても,大学から出てくるカリキュラムというのは決してそうじゃなかった時代があります。その頃から思うと,随分今の教員の方々も実は考え方は変わってきているんじゃないかという期待を持っていますが,そのあたりをどのようにここに書き込んでいくかということが,このチームに委ねられた責任かと思いますが,よろしくお願いいたします。

次に,D.人体各器官の云々というところですね。Dについて御意見を賜れればと思います。いかがでございましょう。

ここは割にすんなりといいますか,それぞれの例えば医師国家試験のガイドラインはあります。それから,臨床研修の今度のワーキンググループの到達目標がその先にあります。それから,その先には日本医師会のカリキュラムがございます。それを縦に並べてつなげていけば,かなりのものができてくるんじゃないかと,これは先生方がお考えではないかと思うんですけれども,いかがでしょうか。そこで,日本医師会の先生,いかがでございますか。

【釜萢委員】  今,先生の御指摘のとおりだと思います。それぞれの医学部の教育,それから臨床研修,それとまた専門医もありますけれども,きちんと連続していけるような形が整理されることが必要だろうと思いますので,日本医師会の生涯教育のカリキュラムもやりますが,しっかり横目で学生のときからどうやっているかということ見ながら,また考えていければと思っておりますが。

【齋藤委員長】  先生方,これは御存じでいらっしゃいますしょうか,福井先生がお作りになった。これを必ず頭の中に置いて,このコアカリを眺めていただくというのがよろしいかと思います。

【田中委員】  いいですか。

【齋藤委員長】  はい,お願いします。

【田中委員】  まさにさっきお話しした一貫性,教育委員会でもその部分については日本医師会のは非常によくできているので,それを議論のたたき台にしようという話にはなっておりますので,そこもお話しさせていただいて。

【齋藤委員長】  随分昔よりは改善したと思っています。

【田中委員】  昔は私は余り知らないので,ちょっと。

【齋藤委員長】  実はかつて富士研でもって大変なことをやりましてね,私がディレクターの頃。そのときに福島さんがえらく苦労したんですけれど,それぞれ比べてみると随分ずれがあったということを,少なくともあのときの参加者の先生方はよくお分かりいただけたんじゃないかと。福島さん,何かありますか。

【福島委員】  いえいえ,ありません。

【齋藤委員長】  それでは,次に,Dが終わりましたので,Eのところです,全身。さっきの人の死のところ,これはかなり慎重にいろんな議論が出てくるかと思いますが,いかがでございましょう。個人的な希望を申し上げますと,ここはしっかり書き込んで作っていただきたいなと思うんですけれど。

【邉見委員】  よろしいですか。

【齋藤委員長】  はい,お願いします。

【邉見委員】  新幹線の中でグリーフケアの本を読んでいたんですけれども,遺族とかグリーフケアとかというのは,教育ではないんですか。ここまで,患者さんまで,遺族までですか。

【北村委員】  いえいえ,今後グリーフケアを入れようと。

【邉見委員】  ここへですか。

【北村委員】  はい。国家試験でいうと,看護の国家試験は10年近く前からグリーフケアというのは入っていたんですが,恐らく医師国家試験は入っていなかったと思います。ここに今度グリーフケアというのがキーワードで入るので,広がるというイメージです。

【邉見委員】  ありがとうございます。

【齋藤委員長】  30日に出た。

【邉見委員】  あるんですね,下に書いていますね。すみません。

【齋藤委員長】  医師国家試験のガイドラインも,かなりこういう部分がたしか入ってきているやに認識しておりますが,遅いと言えば遅いんですけれどもね。

【邉見委員】  見過ごしていました,すみません。

【齋藤委員長】  よろしゅうございましょうか。

【釜萢委員】  先生,よろしいですか。

【齋藤委員長】  お願いします。

【釜萢委員】  自分が医学部で教育を受けたときは,死について学生としてどう考えるかというようなことを余り授業でしっかり扱われていなかったように思うんですが,最近は学校教育の中でそれをしっかりと扱っておられるのかどうか,そのあたりを。

【齋藤委員長】  それはどなたに投げられた質問かなと思って。

【北村委員】  幸か不幸か,脳死移植のディスカッションがありましたね,A案とか,B案とか。あれがきっかけで,脳死とは何か,脳死は社会的な死でというようなことで,死ぬということを,ちょっとそこから入ってきています。臨床実習でここにあるDNRは,ほとんど実習に行けばカルテの最初に書いてあるので,これ,何ですかという会話は出てきています。それから,尊厳死に関しても,尊厳死協会が出している紙もありますし,各市町村なり病院でデクレアー,文章を出したりしているので,そこでも,これ,何ですかという議論があるので,触れるチャンスは随分出てきたと思います。ただ,ここに書いてある安楽死に関しては,ちゃんと教えているところは少ないかもしれないです。単に安楽死は殺人ですで終わっているだけかもしれないので。ただ,医師国家試験には過去に出たことがあります。森鴎外の作品で安楽死を扱っているのはどれかと,そういう問題でしたけど,ちょっとはさわっています。

【釜萢委員】  ありがとうございます。

【齋藤委員長】  いや,先生のしっかりやっているかとおっしゃった,そのしっかりのところが僕は非常に疑問だと思って。

【福島委員】  すみません。あと,附属病院以外の臨床実習は増えてきているのと,ある期間ずっと在宅に行くみたいな実習が増えてくると,どうも学生がそういうケースに遭うチャンスは増えてきていると思います。だから臨床実習期間が長くなって外病院を使うようになると,実際のケースということで,学ぶチャンスは明らかに,ちょっとずつですけど,増えていると認識しています。

【釜萢委員】  先ほど発言させていただきましたので,やはり学生のときから,どこまで自分自身で深く考えていくかというところの経験を早く積むことが大事だろうと思いまして,それは医師になる前に,どこまで深く自分自身で考えるかということを是非これからさらに深めていくべきだろうと思ったものですから,発言させていただきました。

【齋藤委員長】  ありがとうございました。はっきり申し上げると,大学に在籍している教員でいいのかという問題が僕はあると思っていますね。実際に医師会の先生方のそういう御経験をお持ちの方が,どんどん学生の教育に携わっていただけるようなシステムというのは,各大学が苦労して,いいプログラムを作るべきではないかと思います。ありがとうございます。

次には,F.診療の基本というところでございます。では,きっかけで申し上げますけれども,今私ども共用試験機構では,臨床実習が終わった後の評価でOSCEをちゃんとやっていこうという話をしつつありますが,そのときにどこまでできればいいんだろうということが,卒業時点で医学生はどこまでできればいいんだろう,その辺がOSCEの課題に関与してくるわけで,今苦労して作りつつありますが,そういうことも含めていろいろ御意見を頂ければと思います。

もう一つは,卒前のCBTでもって治療薬のところは意識して余り踏み込んでいない,これでいいだろうかと思っていますが,そのあたり。それから,もう一つは,高齢者の問題,これが大層難しゅうございまして,各大学でCBTの問題を作っていただきますというと,いろんな大学の先生が来て,その問題をごらんになって,いや,これは意見が違うというような部分というのは結構あります。そのあたりも,このチームでもってしっかりガイドライン用のものをお作りいただけるとありがたいと思いますが,そのあたりは梶井先生,いかがですか。

【梶井委員】  そうですね。どこまで教えるかというのはすごく難しいですね。

【齋藤委員長】  難しいんです。

【梶井委員】  例えばCBTで治療薬までどうかとなると,そもそもCBTは何を目標にしているの,目的として目標は何なんだという部分だと思うんですよね。私はCBTの最初の方に関わらせていただきましたけども,そこでもかなり議論があったんですよね。基本的な知識の部分を問うべきではないかと,だんだんとそれがエスカレートしていくと,国家試験と余り変わらなくなるということも当時あったんですけど,今はどうですか,先生,そのあたり。

【齋藤委員長】  それはずっと前から議論はしていますね。例えば血圧を下げる薬を使えと言うのと,降圧薬のうちのこれこれを,具体的にカルシウムアンタゴニストならカルシウムアンタゴニストを使えと,どこまで臨床実習開始前の学生さんに必要かという問題が出てくると思います。しかしながら,いつまでたってもやさしい問題を延々と続けていいのかという問題がある。ちょっと背伸びすれば届くぐらいのレベルというのはどこだろうかと。

【南委員】  すみません。先ほどから高齢者医療が問題になっているのですが,私は変わった経歴で,医療を少しやってから社会に足場を置く職業に転じているわけですけども,30年間本当にいろいろなことがありました。ずっと考えていたことの1つは,医学と医療という似て非なるものをどう考えるのかということです。そこで一番分かりやすいのが,今問題になっている高齢者医療と老年医学というものなんですね。老年医学というのは,学問体系で医学の中で教えられるエージングがもたらす医学的な変化だとか,薬の代謝の違いとか,もちろん個人差があり,その個人差が若い人より大きいというのも老年医学の知見です。いろんな学問的なことが,その中にはあると思います。一方,高齢者医療といった場合,厳密に言うと,先ほど山口委員が言われた社会保障としての医療ということですから,例えば高齢者にふさわしい医療の選択ということで,100歳の人に手術的な治療をするのが本当にふさわしいのかとか,手術をするより在宅で,などといった選択をするわけです。これらは厳密に言うと全然違う次元の話なんですが,世の中では非常に混然としてしまっている。医学の世界でも,老年医学というものの扱いをめぐって,私が記者になってからの30年だけを見ても,これを講座にしたり,やめたり,医療現場でも診療科にしたり,やめたり,と混乱のきわみなんですね。ですから,こういうことを考えていくと,私は,余りいたずらに学ぶべきことを広げて学生さんに教えていくよりは,先ほど邉見委員が言われたように,医師となって世の中に立つと見えてくることが多いというのが1つなんだろうなという思いがしています。何となく最近はそういう結論に達しているんですね。全部を教えるということは,不可能ですから,教えることはむしろダウンサイズすることを考えた方がいいような気がします。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。非常に貴重な御意見を賜ったと思っています。

ほかにはいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。北村委員,何かそれについて大丈夫ですか。

【北村委員】  大丈夫だと思います。

【齋藤委員長】  大丈夫というのはどういう意味ですか。

それでは,臨床実習のGのところに参りたいと思いますが,何か御意見はいかがでございましょう。

【福井委員】  根本的なことでいいですか。

【齋藤委員長】  お願いします。

【福井委員】  資料2ですけど,Gの臨床実習は,教え方を書いていて,一方,左側はコンセプトです。教え方とか時間とは無関係で,つまりAからFまでは,どういう組み合わせにするかなどには,全く触れていなくて,Gだけが物理的にこれこれのところで勉強すると書いていて,随分コンセプトが違いますね。最初にコア・カリキュラムを考えたときは,統合カリキュラムにしようということで,AからFを統合したものにという話し合いをしたように何となく思っています。

【齋藤委員長】  御意見,どうですか。

【北村委員】  もちろんAからFまでで学んだものを統合的に,有機的にごっちゃにしてオン・ザ・ジョブで学ぶという方針で,学ぶ内容は高度にはなるんですが,決して今までと別格のものではなくて,ただ,臨床現場でオン・ザ・ジョブで学ぶというところ,そういう意味では方法も書いてありますが,最近の流れでは逆を考えておりまして,臨床実習というのが臨床教育のメーンであって,そこに登場していい人間かどうかをCBTとOSCE等で評価する,そこに評価される内容がそこまでのAからFまでという,そういう逆算の論理で書かれていて,本当はGの臨床実習で研修できる状態にして卒業させると,国家試験を経て臨床実習はできたということは,研修医になっていいんだという流れというコンセプトなんですね。だからおっしゃるとおりなんですけど,字をもっとでかく書いていいかもしれないですね。

【福井委員】  長い時間Gを横に伸ばせるようなカリキュラムが本当は望ましいと思います。どこの国かは忘れましたが,最初に病院実習に長い期間とって,その後,知識を加えるというカリキュラムもあります。やり方の話と概念の話とがごちゃごちゃになっているように思います。

【北村委員】  二次元で書くとどうしてもこんなになるんですが,臨床実習の最初のところには結構ごちょごちょと,余り読んでもらえない場所なんですが,ごじょごじょとは書いてはありますが,それをもうちょっとフォントとか,いろいろ駆使して臨床教育の一番中心的なものだということを明記できるようにします。

【福井委員】  つまり,アーリー・エクスポージャーとか。

【北村委員】  そうですね。

【福井委員】  アーリー・エクスポージャーも臨床実習としてカウントしていいんでしょう。

【北村委員】  はい。

【福井委員】  であれば,最後のところだけという書き方でアピールするのではないでしょうか。

【北村委員】  そうですね。

【田中委員】  資料2に臨床実習,さっき北村先生は,ここでいいかなみたいにちょっとおっしゃっていましたけども,最後の実習という位置付けじゃ必ずしもなくなってきている部分もありますよね。例えば臨床実習が終わった後とか,あるいは並行してもう少し学び直そうとかというような考えで,ただ,現実には国家試験は目の前にあって,なかなかうまく動かないというのはありますけれど,学生の中にもやっぱり臨床実習の合間に下の学年の授業に出るとすごくよく分かって,よかったみたいなことを言う学生が結構いますのでね。例えばハーバードみたいに新しいカリキュラムでは臨床実習の後にもう一遍授業をやるみたいなのになっていますし,そういう考え方もあると,じゃ,CBTをどこに持ってくるんだという話にもなっちゃうんですけど,だから臨床実習の定義というか,それはもう一度考えた方がいいかもしれません。

【福島委員】  そうですね。結構大きな問題だと思うんですけれど,もともとモデル・コア・カリキュラムは共用試験の出題基準として作られたという経緯があるので,そのときに臨床実習前教育の効率性と,よりよい方向性というのをどう模索するかというのは,先生,一緒でしたら,でしたよね。ところが,それは今の段階では,実は共用試験というのは,低学年からの臨床実習をやめさせているわけです。つまり共用試験を受けていないから,例えばそれより前の学年で老人保健施設に行かせたけど,決して触らせないという大学が実際に存在するわけで,ということはどういうことかというと,実は共用試験が臨床実習を低学年から行うことを阻止していると,だから共用試験の考え方は,本来は診療参加型臨床実習に入るための資格試験,そういう意味だった。ところが,見学型の臨床実習も,要は大学が,俺たちがやっているのは全部参加型だと言うものだから,どんな臨床実習も共用試験の後でなきゃいけないということを作っちゃったわけです。もう一度ここで再確認をして,CBTとOSCEの意味というのを再確認した上で,共用試験以前の,もっと言ってしまえば,前臨床実習と慈恵大では言っているんですけど,そういう意味では診療参加型の臨床実習より前の臨床体験というのをちゃんとできるようにしておくというのは必要だと思います。

【北村委員】  分かりました。確かに国際基準も,低学年から継続した患者との接触という言葉で表されているので,どうですか。臨床実習というカラムをPの字みたいに,こう伸ばしましょうか。

【奈良委員】  私の提示した資料6のスライド4に,基礎医学と臨床医学をくさび型で行う形式を揚げています。これは早い時期に臨床医学にも触れさせ,高学年でも基礎医学を意識すべきだというかんがえです。さらに医師になるのに重要な教養教育を,1~2年だけでなく,倫理とか統計,語学などは6年間を通して教育してはどうかという案を示しています。

【北村委員】  診療参加型臨床実習というのをこの位置に置いて,低学年から横に伸びるものとして患者との学年に応じた接触ということで入れて。

【奈良委員】  そうですよね。それは是非考えていただきたいと思います。

【北村委員】  福島先生の指摘はまさにそうだと思います。低学年の接触をかえって妨げていたかもしれない。

【奈良委員】  あと,別の件でよろしいですか。

【齋藤委員長】  どうぞ。

【奈良委員】  領域Fで,いつも話題になるのが,基本的臨床手技です。モデル・コア・カリキュラムの84ページに記載されていますが,これは今回全国医学部長病院長会議で医行為として提示したものと整合性は取れているんでしょうか。

【北村委員】  大体合っているはずなんですが。

【奈良委員】  是非確認していただきたいと思います。

【北村委員】  もう一回確認します。

もう一つ,余り公にもできないんですが,基本的手技とOSCEの課題ですね。共用試験OSCEの課題が本来は整合性が合っていないといけないんですね。OSCEのステーションに基本主義というのがあるんですが,おむつ交換とか,それはないんです,試験には。

【奈良委員】  臨床実習などでおむつ交換などを行っている大学はありますが,OSCEのステーションには試験として出ていないものがありますね。

【北村委員】  おむつ交換しろとか,ネブライザーをやれとか,そういうのがないので,共用試験でもそういうのを入れてもらえたら,ちょうどこれがカバーできる。そしてそれが許容される手技と一致すれば一番いいと思います。

【齋藤委員長】  共用試験に身を置く者としては,何だか風向きがこっちに吹いてきたような気がするんですけれども。

実は先ほど福井先生がおっしゃいましたけども,例えば2年生でもってメディカルインタビューを教えたら,講義と一緒に病棟に行っちゃってもいいんじゃないか,白衣を着せて出していいんじゃないか,そういう大学がどんどんあっていいと私は個人的には思っていますけども,その途中でもって評価をして,この学生さんはそれより上の学年に行かせてもいいだろうかという考え方があっていいんじゃないでしょうか。昭和56年に懸田先生の医学教育振興財団の国際シンポジウムの内容なんて,余り覚えていらっしゃる方はいらっしゃらないかもしれないけども,途中で医学生に,今でいうところのステップ1から2みたいなところの,そういう試験をして,それは国か当時の文部省がやってもいいんじゃないかというディスカッションもあったんです。だからそういうことを,どうも年寄りだな,これは。私が年寄りで申し訳ないんですけれども,そういう考え方があってもいいんじゃないかと思っていますが,余計なことを申し上げまして,あいすみません。

それでは,Gがまだ済んでいませんね。臨床実習についてという,これは今大体含まれてしまったので,よろしかろうと思いますが,全体を通していかがでございましょうか,,,この際。

【邉見委員】  いいですか。

【齋藤委員長】  はい。

【邉見委員】  ちょっとプリミティブな質問で申し訳ないんですけど,アーリー・エクスポージャーはほとんどの大学でやっているんですか,もう全部。

【齋藤委員長】  はい,内容はともかく,やっていらっしゃる。それは,もう。

【奈良委員】  医学教育カリキュラム調査で調査しておりまして,ほとんどの大学が早期体験実習を行っています。詳しいデータは,是非ご覧下さい。実施時期や時間数等を記載しています。

【邉見委員】  あれをやるのとやらないのでは全く基礎を習おうというモチベーションが違うと思うんですね。

【奈良委員】  その通りで,早期体験実習を行うことで医師になろうとするモチベーションが高まる効果があります。

【邉見委員】  それを親戚の者がずっと落第していたので,私に付いて1週間私のホスピタルライフに付かせたら,何で勉強せないかんかというのが分かりました。1週間うちで夏休み合宿させて。

【奈良委員】  以前は高校を卒業して,せっかく医学部に入学したのに教養教育で物理や化学など高校で履修したことの繰り返しで,医師になるモチベーションが下がる傾向がありました。それを防ぐためにも,アーリー・エクスポージャーによって現場に出すというのは大事です。

【邉見委員】  ありがとうございます。それで,その他なんですけれども,例えば褥瘡というのはほぼ解決した,決まった,どうしたら防げるかとかですね。決まっていない問題というのは教えないわけでしょうか。例えば国民皆保険なんていうのは世界文化遺産みたいなものやから,必ず教えてほしいと思いますけれども,決まっていない,医師の地域偏在とか,診療科偏在とか,こういうのは医師になる者は考えてほしいなと私は思うわけです。

それから,例えば胃ろうの問題とか,これなんかはまだ解決していないと思うんです。どういうふうに考えるかという意見がいっぱいあることですね。こういう今直面して,まだ定説が出ていないものは教えてはいけない,教えないですか。

【奈良委員】  それはむしろ学生に考えさせることが大切だと思います。

【邉見委員】  何か問題提起は教師としてした方がいいんじゃないでしょうか。教育の場で。

【奈良委員】  たとえば,PBLでシナリオを与え,正解が出なくても,学生同士でどのようにするのが最善かを議論し,考えることが有効です。

【邉見委員】  分かりました。ありがとうございます。

【齋藤委員長】  ほかには全体的に,お願いいたします。

【南委員】  私は,アーリー・エクスポージャーとか,早期から臨床の現場に学生さんが出るということは,本当に重要だと思うんですね。ただ一方で,社会がますます患者さんの権利だとか,それから医師でない者が患者さんに触れてもらっては困ると,いったことが言われる。高齢者施設などでも,管理する側としては,神経をとがらせている施設が少なくないわけですね。

そういうことを厳しく言うと,結局医療人の養成というものは極めて難しいということを,継続して社会に発信していかないといけないと思うのです。結局患者さんも,社会の側も,いい医師を養成してほしいという限りない希望を持ちながらも,そういうことを言っているわけなので,そこのところをきちんと社会に理解してもらって,こそこそと臨床実習をするんではなくて,医学を志す者として堂々と医療現場の経験を積むということが必要だと思うので,教育病院の立場などはきちんと国民に分かってもらう必要があると思います。

医学教育というと,医学教育って何ですかというくらい一般の人は分かりません。ですからここは医学教育というもの自体を一般の人にも分かってもらうような努力を他方ではしないと,なかなかこれは進まないと思います。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。ほかには。

【福井委員】  最近は,診療現場では必ず了承を取ってからでないと。

【南委員】  そうですね。

【福井委員】  学生も入れないことはかなり徹底してきているんじゃないかと思います。

【南委員】  患者さんのリテラシーもそれによって上がっていくという現実がありますよね。

【福井委員】  随分センシティブになっていますね,現場でも。

【北村委員】  学生に聞くと,テレビ等のドラマ,あれがやっぱりインパクトがあって,それで医学部を志望したとか,そういう人も多いので,社会を動かすのはああいうドラマとか,テレビが大事かなと,そういうところに医学生とか研修医が一生懸命働くようなドラマが出たらいいなとは思います。

【梶井委員】  多分1対1の関係だとなかなか難しいと思うんですね。どこの地域で医師を育てるんだということで,地域全体にアプローチして地域を巻き込んでいくと,多分そういうことは一つ一つクリアしていっているように思います。ですから,私たちは,学生を出身都道府県に47都道府県に帰すんですね,あるとき。そのために何をしたかというと,やっぱり地域の教育環境を作ろうということで,それも首長さんとか,皆さんにいろいろお願いしたり,それからそこの中心人物を決めたり,ですからそういうことをきちっとシステムとして作っていかないと,なかなか1対1の関係だと,いや,それはだめですとかということになって,そこの中にも住民の人も入っていただくということで,地域を挙げて作っていくというようなことではないかなと思います。

【北村委員】  さっき邉見先生からあった中で,医師の地域偏在とか,診療科偏在を教育しているというところはほとんどまだないと思っています。キャリアデザインという項目はあるんですが,ほとんどは女子医学生に対して一生医者を続けなさいみたいな,そういう教育ですが,今後はそういう問題も,答えはもちろんないので,問題意識を持ってもらうという形では要るかもしれない。

【齋藤委員長】  だんだんモデル・コア・カリキュラムから話が大きくなりまして,これをどうやってモデル・コア・カリキュラムに。

【福島委員】  教養教育の話でいいですか。全体像のところで,臨床実習も低学年からで,それでいろんな知識を持って,高学年で診療参加型になっていくわけですよね。そのときに,実は教養教育と言っていますけど,これは何のために必要な教育なんだといったらば,それはいろんな臨床のケースの中で判断しなきゃいけないんです。その判断するときに一番重要なのは,人に対する知識と社会に対する知識なわけですよ。それを英語で言うと人文社会科学というわけです。ソーシャルサイエンスとヒューマンサイエンス。しかも,例えば数学とか言いますけど,数理リテラシーというのは,論理性というものを高めていくときに必要なので,実は教養教育というのは,医学教育から分離するから時間を無駄に使っている,今まで。でも,実際に私たちが医師を育てようと思ったときに,責任ある判断ができる人に育てていかなきゃいけないし,そのためにはいろんなケースにぶつけて,そうして,そこで必要な人文社会科学とか,論理性というものが育っていかなきゃいけないという強い思想を持つべきだと。そうすると,この表の中から教養教育と人文社会,数学,語学という言葉は消すべきだと私は思います。

以上です。

【北村委員】  中に入れ込んで書くというのはどうでしょう。

【福島委員】  中に入れ込んで書いたわけですよ。

それで,もう一つですけど,人の行動と心理は僕の担当なんですけど,Aですか,Cですかと。最初Cに入れていたのが,この絵ではAになっているので,もちろんAでも構わないですけど,そこら辺も問題です。例えば人の行動と心理と書いたときに,これをよく読むと,本当は人の行動は社会の行動なので,ヒューマン・アンド・ソーシャルサイエンスなんです。そうは一般の人に見てもらえないので,ここも書き方を考えなきゃいけない。

それから,せっかくCのところに生命現象の科学とか,物理現象とか,物質の科学が入ってきているので,そういう意味では,ここで基本的なものが学べていて,それが医学の中に入っていて,それをベースにして診療参加型臨床実習,そういうふうに読もうと思えば読めるようにできるんじゃないかと思います。

【齋藤委員長】  ありがとうございます。いろいろたくさんの御意見を頂きまして,調査研究チームは,これから大変な宿題を抱えて仕事をするわけでございますが,それでは,事務局から今後の予定についてよろしくお願いいたします。

【佐々木企画官】  先生方,今日も本当にありがとうございました。

資料10を御用意ください。今後のスケジュール(案)ですけれども,先ほど齋藤委員長からお話がありました追加の意見等がございましたら,7月13日をめどに事務局までお寄せいただきたいと思います。本日,そして13日までに頂いたものを基にして,議事録とは別に意見まとめを整理して,北村先生の調査研究チームにお渡ししたいと思っております。事務局からは以上です。

【齋藤委員長】  ありがとうございました。お約束の時間を5分ほど延長いたしまして,申し訳ございませんでした。

本日の会議はこれにて散会とさせていただきます。ありがとうございました。

 

―― 了 ――



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