資料4

「『国立大学法人会計基準』及び『国立大学法人会計基準注解』」改訂案に対するコメント

1.「その他有価証券評価差額金」の定義

 「その他有価証券評価差額金」は、当然に純資産の部で表示される項目と認識しているが(「第54 純資産の表示項目」等参照)、改訂案の「第18 純資産の定義」によると、「純資産は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に分類される」とされており、「第19 資本金等」においても、「資本剰余金とは、資本金及び利益剰余金以外の純資産であって、・・・(以下省略)」とされている。
  基準第18や第19においては、その他有価証券評価差額金が純資産の表示項目であることについて言及されていないが、問題ないか

2.リース資産の会計処理に関する注記について

 改訂案の「第29 リース資産の会計処理」において、「ファイナンス・リース取引が損益に与える影響額等を財務諸表に注記する」とあるが、国立大学法人等は、運営費交付金の収益化基準として、原則期間進行基準を採用している一方で、実務上大半が費用進行基準を採用している独法とは異なる状況にあるため、本注記を会計基準において要求する趣旨が明確でない限り、国立大学法人等において同様の注記は不要ではないか
 関連して、実務指針Q77-10も、運営費交付金について原則期間進行基準を採用していることと整合しないと考えられるため、実務指針から削除したほうがいいのではないか。

3.引当外賞与見積額の表記

 改訂案の「第84 賞与引当金にかかる会計処理」により、引当金を計上しない賞与引当金相当額について、退職給付と同様の取扱いになったと認識しているため、整合性を考慮すると、であれば、国立大学法人等業務実施コスト計算書の勘定科目「引当外賞与増加見積額」とするのが正確と考える。
 同様に、運営費交付金により財源措置が手当されないものとしてBS注記されるのはあくまでも「引当外賞与見積額」の残高であり、一方、国立大学法人等業務実施コスト計算書に表示されるのは「引当外賞与増加見積額」として計算される前期末との差額になると考えられる。しかし、改訂案の「第84 賞与引当金に係る会計処理」においては、BS注記額と国立大学法人等業務実施コスト計算書における表示額とは同額と解釈できてしまうため、例えば、「・・・(前略)表示するとともに、その増加額を国立大学法人等業務実施コスト計算書に表示する。」としてはいかがか

以上


参考

会社計算規則(平成十八年二月七日法務省令第十三号)(抄)

(評価・換算差額等)

第八十五条  次に掲げるものその他資産、負債又は株主資本若しくは社員資本以外のものであっても、純資産の部の項目として計上することが適当であると認められるものは、純資産として計上することができる。
  • 一 資産又は負債(デリバティブ取引により生じる正味の資産又は負債を含む。以下この条において同じ。)につき時価を付すものとする場合における当該資産又は負債の評価差額(利益又は損失に計上するもの並びに次号及び第三号に掲げる評価差額を除く。)
  • 二 ヘッジ会計を適用する場合におけるヘッジ手段に係る損益又は評価差額
  • 三 土地の再評価に関する法律(平成十年法律第三十四号)第七条第二項に規定する再評価差額

「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針 報告書(平成15年7月10日(平成19年3月1日最終改訂)文部科学省 日本公認会計士協会)(抜粋)

Q77−10

  • (1) 運営費交付金を財源としてリース料を支払う場合で、当該リース取引をファイナンス・リース取引と整理し、リース資産を資産計上する場合、どのような会計処理を行うのか。
  • (2) 当該運営費交付金の会計処理は、一旦運営費交付金債務に計上した後、リース料支払を業務の進行と認識してリース料支払に応じて当該運営費交付金債務を収益化するのか、それともリース資産を償却資産の取得と認識し、当該運営費交付金債務を資産見返運営費交付金に振り替えるのか。
    (関連項目;基準第29 リース資産の会計処理)

A

  • 1 ファイナンス・リースの揚合は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う(基準29参照)のであるから、リース契約時に借方にリース資産、貸方にリース債務が計上される。毎年度におけるリース料の支払いは、会計上はリース債務の減少と支払利息を意味することになり、運営費交付金を財源としてリース料を支払う場合は、その額(自己収入等がある場合は運営費交付金に相当する額)が収益化されることになる。この際、会計上費用として認識されるのは、支払利息相当分と当該資産の減価償却費のみである。なお、リース料のうち損益取引ではないリース債務の減少の部分についても収益化を行うのは、リース債務の減少は資本取引であり、資産の取得と同様であると観念できるからである。
  • 2 具体的な会計処理のイメージは以下のとおり。なお、貸手側のリース物件購入額まるまる円、減価償却額ばつばつ円、毎年のリース料さんかくさんかく円、リース料は運営費交付金により手当てされるとする。
    <契約時> (借) リース資産 まるまる (貸) リース債務 まるまる
    <毎年度> (借) 減価償却費 ばつばつ (貸) 減価償却累計額 ばつばつ
    現金 さんかくさんかく 運営費交付金債務 さんかくさんかく
    運営費交付金債務 さんかくさんかく 運営費交付金収益 さんかくさんかく
    リース債務 くろさんかくくろさんかく    
    支払利息 ぎゃくくろさんかくぎゃくくろさんかく 現金 さんかくさんかく