1 臨床研究(治験を含む)関係 |
(現状、総論等について)
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○ |
治験は海外が先行しており、近年マルチナショナルあるいはグローバルに行われるようになっている中で、露骨な日本はずしが起きていて、危機的状況になっているのが現状。 |
○ |
ランセットやニューイングランド・ジャーナルメディスンに掲載するためには、臨床研究においても、GCPの準用等国際的なスタンダードを自主的に運用していくことが求められる時代。 |
○ |
国際的な連携や共同研究のためには、質と速度とコストが課題。 |
○ |
我が国では育薬研究が全然進んでいないという状況。 |
○ |
創薬、育薬の医療チームとしてのチームプレーができていないというのが我が国の現状。 |
○ |
産学連携の協力システムが必要。 |
○ |
我が国では治験のところだけが突出した感じがあるが、海外では、人間を対象にした研究(臨床研究)に治験も含まれているという考え方。治験は臨床試験の一部で、臨床試験は臨床研究の一部。人間を対象にした臨床研究の中で、介入の効果や影響を調べるのが臨床試験、その中で、医薬品、医療用具、医療機器の承認に必要な認証試験が治験。我が国は、治験のところは法制化されているが、全体が法制化されていない。 |
○ |
臨床研究の法制化等制度的整備にあたっては、被験者保護とともに臨床研究者の育成という観点が重要。治験は基本的な考え方として規制がベースにあり、その規制の考え方が臨床試験、臨床研究まで下りてきているが、規制という考え方では研究者は育つことはできないことから、治験の基盤となる臨床研究等では推進という考え方が重要。 |
○ |
臨床試験の目的は、新しい医療技術の開発と、最適な医療の提供に必要なエビデンスの収集の2点。 |
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(臨床研究を総合的に推進・支援する組織体制等について)
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○ |
医師だけでは質の高い臨床研究を遂行することは困難であり、医師を支援する組織が必要。特に、研究事務局を支援するデータセンター、具体的には、データマネジメントや生物統計に関する統計解析等を行う支援部門が必要。 |
○ |
臨床試験や研究者の総合的な支援を行う、ARO(Academic Clinical Research Organization)の整備が必要。データマネジメントや生物統計のみならず教育・研修も行う組織。どこの大学も本当に必要かということはあり、主要な拠点大学に整備し、ここを核として専門人材の養成等を推進していくことが有効。AROで、医学生が臨床実習を行うことや、大学院生やレジデントを受け入れることも考えられる。 |
○ |
公衆衛生大学院は教育のレベルでは重要だが、実習のレベルでは病院内に支援センターを設置することが必要。大学病院には、動物センターや放射線センターはあるが、臨床研究センターがない。誰でもそこに行けば指導が受けられるという組織を大学病院に設置することが必要。 |
○ |
各大学病院には臨床試験部等の組織があるが、各大学の連携・ネットワーク作りのための連絡協議会のような組織が必要。 |
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(臨床情報の基盤整備等について)
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○ |
電子カルテや診療情報システム等医療機関における電子化は進んでいるが、それを有効に活用する方法が整備されていない。有機的に整備していけば、統計情報を医療行政、疫学研究、さらには臨床試験の基礎データに活用することができる。安全性に関する情報も含め、このような臨床情報基盤の整備が必要。 |
○ |
現状では各診療科のマニュアルに基づき手入力の情報データベースがある程度。これを、病院全体のレベル、あるいはもっと大きなレベルで統合して利用していくことが必要。 |
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(その他の大学病院の組織体制・基盤整備等について)
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○ |
欧米の場合は治験責任者と依頼者の直接契約であるのに対し、我が国の場合は医療機関の長(病院長)と治験依頼者(製薬企業)との契約であり、このことを活かし、病院のセクター化を効率よく進め、治験依頼者への対応を一元化したワンストップオフィスを設置することが必要。 |
○ |
治験や臨床研究の質を確保するためには、IRB(治験審査委員会)等の品質を確保しコントロールするゲートキーパーの整備と、委員に対する教育の充実、教育プログラムの確立等による統一的な教育など、質の確保が必要。 |
○ |
トランスレーショナル・リサーチのノウハウが十分でなく、これを解決するには、民間や規制当局等との人事交流が有効。大学病院は、そのような受け皿になり得ることから、システム作りが求められる。 |
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(医学教育、人材養成等について)
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○ |
医学教育や薬学教育への臨床研究の組み入れが必要。 |
○ |
臨床薬理や臨床疫学等の講座の設置や教育の充実も必要。 |
○ |
専任講座の設立と教員の養成とともに、社会人養成コースや公開講座等の充実も必要。CRC(治験コーディネーター)の定員化も必要。 |
○ |
臨床研究に必要とされる基本的知識は、大きくは科学性、倫理性、信頼性だが、具体的には、 臨床研究・臨床試験の必要性、 医薬品・医療機器の研究開発のステップ、 臨床研究に適用される倫理指針・規制、 倫理審査・インフォームドコンセント、 臨床研究・臨床試験のデザインと限界、 安全性確保の義務、 臨床研究の立案(文献検索の演習、Plan-Do-Seeの考え方)、 生物統計に関する基本的知識と演習、 研究報告書のまとめ方、 信頼性の確保(品質管理の基本的知識、記録の保存)、 臨床試験の登録・公開、と考えられる。 |
○ |
我が国の教育では、PlanとDoはある程度入ってきているが、Seeのところが欠けている。薬を選んで使うだけでなく、その結果がどうなのかも学ぶことが重要。 |
○ |
公衆衛生大学院を整備して、医学部以外の人材も含め、疫学者や生物統計家等の養成の充実を図ることが重要。公衆衛生大学院に関しては指導者の養成が重要。 |
○ |
臨床研究者の動機づけ、インセンティブが必要であり、学会認定や業績評価における臨床研究の業績の評価、臨床研究経験を履歴書の記入事項とするなどの人事面での評価などが必要。 |
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(その他)
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○ |
少数例多施設という現状に対し、どうまとめていくかが課題。大学病院においても、症例の集積が課題。 |
○ |
臨床研究では被験者になる患者の協力やそのための啓発が不可欠であり、医療者と地域住民、患者が一緒になって安心できる医療を構築していくという観点が重要。 |
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2 臨床研修関係 |
(研修体制・研修プログラム全般等について)
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○ |
高度先進医療を行っている特定機能病院では、疾患の偏りやcommon diseaseが少ないこと、診療科別の診療体制や専門志向が強い指導医等の状況の中で、均質な指導体制を確保した上での横断的な研修の実施が課題。 |
○ |
厚生労働省のアンケート結果から、学生は研修体制や研修プログラムを重視していることが伺える。 |
○ |
関連病院との連携の充実を図りつつ、研修内容、研修プログラムを魅力あるものにしないと、学生は来ない。 |
○ |
研修医の減少は教育・研究のみならず地域医療にも大きな影響があることから、学外での研修の方針を持つ大学は別として、地理的に見ても不利な条件のない大学で研修医に残らない大学の原因分析が必要。 |
○ |
学外での新たな出会いや様々な疾患の治療等の経験は有意義であり、卒業後1年は学外の病院で研修をし、その後の1年は大学で研修するというプログラムが資質向上には有効。その上で、大学病院は専門医研修に重点を置くべき。 |
○ |
学外に出すプログラムはどの大学でもできるものではなく、自校の附属病院での研修に力を入れざるをえない大学もある。 |
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(指導医等のサポート体制等の基盤整備等について)
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○ |
臨床研修必修化でよくなったことということは大事。これを契機として、指導医等を対象としたワークショップやシミュレーションコースなどの実践的な学びの場が急速に広がっている。充実した研修指導や研修における医療安全に有用なものとなっているが、こうした動きは一過性に終わる可能性もあり、何らかの形でサポートしていくことは医学教育全体の実りのある発展につながる。 |
○ |
研修指導の担当者は臨床実習の担当者とも重なっており、負担はさらに増えるというジレンマがある。こういう指導医等を何とかサポートすることも必要。 |
○ |
イギリスでは、教育の仕事をする看護師を、リサーチ・ステーション・オフィサーと認定するなど、政府が認定書を出している。 |
○ |
教育に対する評価をきちんとフィードバックする体制や取組が必要。 |
○ |
指導医の研修医に対する教育活動をいかに評価していくかということも、モチベーションを高める上で必要。 |
○ |
臨床研修センターや卒前の教育センターなど、各大学でセンター的な教育機能を担う部署に対するサポートが今後重要。 |
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(学部教育との関係等について)
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○ |
大学の臨床研修のアドバンテージとして、臨床研修と臨床実習をペアにできることが挙げられる。研修医の下に学生をつけるなどの取組により、研修医の自立などティーチング・イズ・ラーニングという効果が生まれる。 |
○ |
卒前教育の到達目標が終わってから臨床研修をどうやってつなげるかが課題であり、卒前・卒後を通した教育履歴をチェックする必要がある。研修医を時間軸で見て、どういうことを修得してきたかということをきちんと管理していくことが必要。 |
○ |
昔のシステム(医局)でも、教育に熱心な教授のところに学生が卒業後集まっていた。臨床研修において、自校の卒業生をマッチングで入れるためには、臨床系をはじめ教員スタッフが十分に意識して学部教育の改善を図り、自分たちの学生を大事にし、あの先生のところで臨床研修を受けたいと学生が思うようにすることが重要。 |
○ |
学部教育の段階から学生の面倒をきっちり見て、研究にも参加させて、学生を丁寧に指導することが原点。 |
○ |
熱意のある指導者の存在だけでなく、システムとしてどのような仕組みが必要かを検討することが重要。 |
○ |
卒前の教育から求心力を持つようなプログラムやカリキュラムが必要。 |
○ |
卒後の臨床研修を想定して卒前の臨床実習を実施、改善することも必要。 |
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(大学院教育との関係等について)
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○ |
臨床研修と大学院教育をどうやって組み合わせていくかも問題。アカディミックな意味で将来の見通しを考えるという視点がプライマリケア等の下に隠れてしまっている嫌いもある。自分は今後どういうふうに専門性とかアカデミックな意味でやっていったらいいかというところが見えないところもあるので、2年目の研修についてもう少し見えるような形を作ることも考えることが必要。 |
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(その他)
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臨床研修制度のいいところを活かして、起こり得る欠点を予防しておくということが重要。 |
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若い時代のある時期、へき地の医療も含め数年間情熱を傾けたいという気持ちは学生にはあり、それを育て支援する取組や体制が必要。 |
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臨床研修の目標をもっとはっきりさせるべき。 |
○ |
臨床研修から見た医師の地域偏在、診療科の偏在の背景には、大学病院から臨床研修指定病院への研修医のシフト、さらには、病院の勤務医から診療所、開業医へのシフトがあるのではないか。 |
○ |
マッチングのポストが過剰に用意されるなど、臨床研修病院を広げ過ぎているような気がし、もう少しクオリティをよく見て絞った方がいいとも感じる。卒前の教育も担ってくれるような教育病院という視点で、研修の資格のある病院を考えていただくという形が実りがあるのではないかと思う。 |
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3 専門医研修関係 |
(臨床研修との関係等について)
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○ |
プライマリケアのベースの上に、専門医研修を充実するということも大事。初期臨床研修で一般病院等の外に出た場合でも、後期でしっかりと大学を中心に養成をしていくというシステムを作ることも大事。 |
○ |
初期研修が終わった後、専門医研修をどのように位置づけてリンクさせるかということも大学附属病院では大きな問題。臨床研修と専門医研修との関係や整合性を、生涯学習の中できちんとすることが必要。 |
○ |
研修医は臨床研修期間中に将来の専門を決める傾向があることから、このような意味でも、臨床研修の充実や、専門医研修とのリンクが必要。 |
○ |
臨床研修と専門医研修の到達目標の整合性の確保など、臨床研修と専門医研修との関係の明確化が望まれる。 |
○ |
専門医研修において、臨床研修で培った総合的診療能力をどのようにして高めるかも課題。 |
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(大学院教育との関係等について)
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○ |
専門医研修と大学院との関係をどうやって図っていくかも課題。 |
○ |
リサーチ・レジデント等、レジデントをやりながら大学院で研究を行うコースも考えられる。 |
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(その他)
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○ |
我が国の専門医制度は、学会が認定条件を決めているので、もっと臨床能力を担保しなければいけない。 |
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臨床研修は研修内容が標準化され教える技法等も広まっているが、専門医研修においても、プログラムの標準化が必要。 |
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4 その他大学病院一般等 |
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○ |
大学病院が生涯教育のコアセンターとしての役割を果たしていくことが重要であり、そのための体制の検討が必要。 |
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臨床実習等の医学教育の充実のためには、大学病院は教育病院であることを患者等にきちんと理解してもらって受け付けることが必要。 |
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医師の養成には、社会と患者の協力が必要ということをメッセージとして出すことが必要。 |
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大学病院の大きな使命は教育にあることから、臨床実習の基本は大学病院でやること、どうしても足りない部分を補完する形で院外実習を行うという位置づけを明確にすることが必要。 |
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