a) |
平成17年9月の中央教育審議会答申等に基づき、医学系大学院においても、大学院教育の実質化に取り組むことが必要であり、大学院の目的を研究者養成と臨床医等養成に分けて明確化した上で、それに応じたコースワークの充実・強化等を推進することが求められる。 |
b) |
その際、臨床医等の養成に係るコースワークの工夫・改善にあたっては、大学病院又は地域の医療機関との連携を図ることが重要である。地域の医療機関との連携にあたっては、報酬の支給等も含め、臨床教授制度の一層の活用が求められる。 |
c) |
また、大学院設置基準の改正を踏まえ、大学院の人材養成に係る目的を明確にした上で、大学病院での研究等を目的とした診療への従事についてカリキュラムに位置付けるなど、その目的に応じた臨床教育の改善を図ることも必要である。 |
d) |
このようにして教育課程を目的別に編成・展開した上で、相互の連携を保ちつつ、基礎研究と臨床研究の双方の教員が指導に当たるなど、大学院生に対する複数教員の指導体制の確立を図り、大学院生に基礎研究と臨床研究の双方あるいは全般的な資質を身に付けさせる取組の充実も必要である。その上で、基礎研究と臨床研究の双方の教員が連携し、学生に対して研究者への道筋を明確に提示して支援の充実を図ることが重要である。 |
e) |
疾病構造の変化・多様化や学際的な研究領域のニーズの増大等を踏まえ、臨床研究の充実のためには、臨床疫学や生物統計学等の教科科目の充実を図るとともに、日常の臨床活動の中から新たな問題点を発見することのできる洞察力や思索力を身につけるための研究指導体制や指導者の資質の改善充実を図ることが求められる。このため、公衆衛生分野の大学院の整備を促進することが必要であり、それに必要な教員の養成やカリキュラムの開発、修了者の社会での活躍の場の拡大等の処遇の改善など、関連する施策を進めていくことが求められる。 |
f) |
また、修士課程の活用や社会人に対する大学院教育を受ける機会の拡充等により、医学以外の分野を専門とする人材を基礎的生命科学分野等における研究者として積極的に育成することも求められる。 |
g) |
研究者の育成については、新医師臨床研修修了後に大学院への入学準備に十分な時間的余裕を確保するための秋季入学の実施や、新医師臨床研修を受けることなく早期に進学するコースの設定など、医学部卒業生が大学院に進学しやすくするための取組の工夫改善が必要である。 |
h) |
また、MD/Ph.Dコース(医学部4年次を修了した時点で大学院医学研究科に入学しPh.Dを取得した後、学部の5年次に再入学しMDを取得する取組)の活用を促進することも必要であり、それに必要な学生が退学することなく進学できるための休学制度の整備・活用、カリキュラムの工夫改善、大学院生に対する経済的支援、助教採用時における考慮等の修了者に対する処遇の改善など、関連する施策を進めていくことが求められる。 |
i) |
イギリスにおいては、2年間の臨床研修(Foundation Programs)のオプションとして、将来教育者、研究者を目指す医師を対象に、研修2年目の1年間を医学研究等の学術活動に専念するアカデミックF2プログラムの取組が行われている。このような取組も参考に、新医師臨床研修の基本研修科目及び必修科目以外の研修期間に、教育者・研究者を目指す者等を対象に、研究者に求められる志や資質等(以下「研究マインド」という。)を育む研修を盛り込むなど、大学病院における新医師臨床研修の研修プログラムの工夫改善も考えられる。
なお、イギリスにおいては、臨床研修修了者に対しても、大学と関連病院等が連携して、経済的支援も含めた、教育者・研究者養成のためのプログラムの構築に取り組んでおり、このような取組も参考に、教育者・研究者を目指す医師に対する経済的支援も含めたキャリア形成の支援方策の充実も検討する必要がある。 |
j) |
また、大学院における人材養成に係る目的の明確化やコースワークのカリキュラムの工夫・改善を図った上で、専門医養成における大学院の取組の充実や、大学院と大学病院との連携の充実を図ることが必要である。具体的には、大学院のコースワークの中に専門医資格取得のための教育内容を盛り込むとともに大学病院における実施修練を充実させる取組や、大学病院の専門医研修者が大学院にも在籍し博士号を取得することができる取組の推進とそのための体制の整備が求められる。 |
k) |
さらに、大学院教育の充実や、大学院生に対する様々な支援方策の推進・強化により、博士号の取得が、教育者・研究者のスタートラインとして明確に位置づけられることが必要である。博士号取得にあたっては、コースワーク等による単位取得や論文審査等に基づく客観的・公正な博士課程修了要件を定めるなど、学位審査のプロセスの透明性を確保した上で、博士号取得の有無を助教採用時に考慮する等の処遇の改善など博士号取得者に対する社会的な評価の向上が求められる。 |
l) |
さらに、生涯学習・研修体制の構築も含めて、大学院卒業後または新医師臨床研修修了後の、臨床医、臨床研究者、基礎医学研究者等それぞれのキャリアパスの明確化とキャリア形成への支援が必要である。医療人の養成の場である大学や大学病院においては、生涯にわたって個々人の専門性を高められるよう、自ら積極的にキャリア形成の場の提供を図るとともに、都道府県や地域の医療機関等と連携して、キャリア形成に中核的な役割を果たすことが求められる。 |
m) |
上記のような大学院教育等の改善方策を進めるにあたっては、教育や研究の成果に関して、講座や研究チームなど、プロジェクトごとに適正に評価した上で必要な教育内容の改善を図るなど、教育や研究の改善に向けた評価の充実も重要である。 |