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医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第5回)議事次第


1   日時: 平成17年11月8日(火曜日)13時30分〜15時30分

2   場所: 三田共用会議所第3特別会議室

3   出席者:  
    協力者: 高久座長、福田副座長、大橋、小川、北村、佐藤、新道、水田、田中、寺尾、福井、松尾、南、吉新、吉田、吉村の各協力者
    文部科学省: 泉審議官、石野医学教育課長、山本大学病院支援室長、小谷医学教育課長補佐、加藤医学教育課長補佐、ほか関係官

4   議事:  
  1. 開会  
  2. 議事  
   
(1) 委員及び参考人からの説明
1 前田 盛 神戸大学大学院医学系研究科長・医学部長
2 佐藤 俊哉 京都大学医学研究科社会健康医学系専攻教授
3 吉村委員、水田委員
(2) 事務局からの説明
1 へき地を含む地域における医師の確保等の推進に関する調査結果について
(3) 教育者・研究者養成及び大学病院に関する意見交換
(4) 「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」におけるワーキング・グループの設置について(案)
  3. その他

 
5   配付資料:  
   
資料1   前田参考人資料
資料2   佐藤参考人資料
資料3   吉村委員資料
資料4   水田委員資料
資料5   へき地を含む地域における医師の確保等の推進に関する調査結果について
資料6   「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」におけるワーキング・グループの設置について(案)
参考   「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」検討事項メモ
これまでの意見等の整理
資料集


高久座長
   御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございました。本日は、委員の方々、それから医学教育に関係する方からお話を伺うことになっています。2名の方に参考人として本協力者会議に御出席をお願いいたしました。事務局の方から、本日の委員の出欠状況と、今申し上げた参考人の方々の御紹介をよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
   本日は、各委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。本日、辻本委員、名川委員、橋本委員、垣生委員の4名の方が欠席とお聞きしております。遅れていらっしゃる委員もいらっしゃいます。続きまして、本日の参考人の方々を御紹介させていただきます。神戸大学大学院医学系研究科長・医学部長の前田盛様です。

前田参考人
   前田です。よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
   京都大学医学研究科社会健康医学系専攻教授の佐藤俊哉様です。

佐藤参考人
   佐藤です。よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
   以上です。

高久座長
   お二人の先生、どうも御苦労さまです。それでは、事務局から配付資料の確認をよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
   それでは、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、メンバー表、当面のスケジュール(案)というのがそれぞれ1枚ずつございまして、その後に資料目次がございまして、資料1から資料6までございます。資料1から資料4までが、本日御発表いただく先生方の方で作成いただきました資料です。資料5が、これは事務局の方で用意させていただいた資料です。資料6が、後ほど御説明いたします「ワーキング・グループの設置について(案)」というものでございます。また、参考といたしまして、これは前回もお配りしましたけれども、「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議検討事項メモ」、それから「これまでの意見等の整理」というものがございます。そして、本日は教育者・研究者養成と大学病院が主な議題となりますけれども、その関係の基礎資料を資料集ということで、基礎的なデータを集めさせていただいたものをつけさせていただいております。また、お手元の机上に乗せさせていただきましたが、本日、佐藤先生から御提供いただきました京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻の資料、それから高久先生が理事長を務めていらっしゃいます社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構から御提供いただきました『臨床実習開始前の共用試験の第3版』、平成17年版をお手元に、御参考として配付させていただいております。なお、第4回協力者会議の議事録(案)を配付させていただきました。委員の先生方には、現在まで2回ほど確認をさせていただいております。私どもの不手際等ございましたら、また事務局までお申し付けください。後日、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。不足等ございましたら事務局までお願いします。よろしいでしょうか。以上です。

高久座長
   それでは、早速議事に入ります。最初に、神戸大学における教育者・研究者養成への取組について、これは今御紹介がありました神戸大学の医学研究科科長・医学部長の前田盛先生からよろしくお願いします。

前田参考人
   本日は、このような発表の機会をいただきまして、大変どうもありがとうございます。これは非常に難しい課題でありまして、大変気の重いところがございますけれども、これまでの神戸大学での現状と、それから今後の構想について報告いたします。学部教育における研究へのいざないということで、昭和36年、これが従来から神戸大学が最も早くから始めたと説明しているんですけれども、基礎配属実習というのを行っております。この次に、その実施学年と時期の変遷等をまた説明いたしますけれども、最近、慶応大学から岡本彰祐、それから須田勇の両教授が着任されまして、最近、岡本教授が亡くなられたときに、関係の書類等を整理している中で、この基礎配属実習がひょっとすれば慶応大学から持ち込まれたかもしれないということで、また今後確認したいとは思っております。低学年からということで、先にこちらを説明いたしますけれども、平成9年度から新医学研究コースというのを立ち上げました。1年次、これはこういうふうに単位との明確な読み替えをいたしますので、ほぼ100パーセントの学生が、入学と同時に基礎教室に出入りするということになっております。2年次につきましては、選択科目との読み替え、3年次は選択科目との読み替え及び論文作成ということで、2年次、3年次は出入りするということに主眼がありまして、抄読会とか、いろんな医学を紹介するということになっておりますけれども、ここに書いていますように5名から10名ということで、それほどたくさんの学生が受講しているものではございません。これが先ほど説明しました基礎配属実習でありまして、昭和36年からですね。当時は県立医科大学でありまして、昭和39年に国立移管されておりますし、それからずっと3学期制で運営しておりましたので難しい部分がありますけれども、基本的には臨床科目を履修し終わった後に、再度基礎の教室に配属して研究に触れさせるということであります。現在はここからでありまして、4週間を基本として、さらに希望する学生は2週間、2月及び3月に実施するということで、いろいろ国家試験の問題等がございまして、平成20年からは3年次に夏休みを挟んでやるとか、もう少し長い期間がとれる方がいいとか、いろんなことを検討中でありますけれども、このような取組を行っております。大学院の問題ですけれども、主科目分担制度というのが1980年に導入されました。生理から外科の5つの学系であったわけですけれども、各講座に定員制を引きまして、2名とする。同じ系の中、例えば内科学系の中でどこか空きがある場合のみ3名とれるということで、そういう制限を加えるということで、この当時には基礎医学振興ということがよく語られたと理解しております。そういった制約があった中で、あるいはもちろんそれだけじゃなくて、基礎系に非常に優れた教授がおられた、あるいは研究環境が基礎の方が整っておったという問題があるかと思いますけれども、この主科目分担という制度は十分に機能したと考えておりました。ただ、1998年、大学院重点化に向けた取組の中で、大学院定数を多く確保するという方向上、これを廃止ということで、現在は定員制限なし状態になったということになります。2001年、平成13年度ですけれども、大学院部局化が実現いたしまして、生命、展開、実践の3領域に大きく変更いたしました。生命が基礎で、実践が臨床。展開に基礎及び臨床を含むという組み合わせとなっております。ダブルメジャーコースというのは、それ以前の主科目分担をこのように表現しておりますが、内容的には同じものです。それから、コースワークを導入し、ベーシック及びアドバンスドプログラムを行って、基礎的な実験手技とかあるいは知識とか、そういったことを学生に勉強させる。これは主に1年生ということにしております。それから、この年から英語のみで行われる講義・実習がありまして、したがって日本語が分からない学生でも大学院を修了できるということにいたしました。それから、これはこの10月に入ったところですけれども、医学医療国際交流特別コースということで、国費留学生3名がつきまして、しかも3年から3年半での修了ということで、そのためには従来から関係の深かった東南アジアからの留学生を、それ以前から交流のある指導教授と日本と母国、両方の共通の指導という趣旨で、このようなものを立ち上げております。以上まとめますと、学部教育の段階で、新医学研究コースあるいは基礎配属実習によって医学研究への興味をかき立て、あるいは大学院における主科目分担という制度の中で、Physician Scientistの育成ということを合い言葉に運営してきました。こういう方向の中では、それなりに効果があったというふうに考えております。今回「魅力ある大学院イニシアティブ」グッドプラクティスということで、生命医科学リサーチリーダー育成プログラムというのを、9月28日に提案させていただきました。10月末に採択ということになりましたので、その考え方について御紹介いたします。1年次では、基本的には卒後臨床研修修了後の進学者が大半と思われますけれども、修士課程修了者あるいはMD/PhDコースは4年間の学部教育の後、大学院に進む制度ですが、制度化はされておりますけれども、今まではだれもこのコースを進んでおりません。しかし、こちらにもきちっと取り組んで、医科学専攻入学者に対して、こういった実験手技あるいは高度な英語能力の養成等を主に1年次で行いたいと考えております。2年次におきまして、リサーチプロポーザルの提出を行わせます。これにつきましては、研究リーダーとしての資質・能力を養う講義、つまり生命科学の論文あるいは申請書作成特論といったものを行いまして、その結果、リサーチプロボーザルを提出させ、これに厳密な審査を行って、リサーチグラント、年間100万円あるいはRAに採用することによって、ある程度の経済的な支援を行うというふうに考えております。もちろんこの10名に入れない人たちは、一般コースとしてそこは研究者養成及び研究能力を備えた臨床医養成という方向での教育を行うと考えております。3・4年次においては、先ほど審査によって決められました10名について、進捗状況の報告、個別指導あるいは再審査によって、場合によっては一般コースの方に移っていただくということも考えております。それから、ワシントン大学、シアトルへの長期留学ということで、希望者より2名程度を1ないし2年間留学させるということで、この実際の受入については、ついせんだって具体的な確認まで進みました。海外での研究発表等の予算もとっておりまして、3年もしくは3年半、これは一定の条件をクリアした場合に、4年間を待たず修了するという制度のことであります。それから、いろんな特論あるいは産学官連携特論とか、そういった今現在求められている新しい視点での教育を行うということを考えております。これは13年度、2001年度なんですけれども、このベーシックプログラムというシステムで実際にスタートして、アンケートの結果が芳しくなかったので新たなものに組み替えたという内容なんですが、1から4のコースの中から12を同時期に開講し、34が同時期に開講されますので、どちらからか1つずつということで2コースを選択します。それから、分子生物学的な基本的手技は一応1及び3でありますので、大体の学生はそれが習得できるということでやってまいりました。しかし、アンケートの結果、もちろん学生に基本的な知識での差がございまして、それに配慮した方向として、こういった組み替えを行ったという内容です。新しいシステムとして、助教授相当の大学院専任教員を採用することにしております。この内容は次に説明いたしますが、従来余り行われていなかったFDとかそういったものをきちんとして行うということを考えておりますし、研究統括室、全体を把握するところ、そういったところが密接に協力しながら大学院教育の実質化を図るということ。それから、修了生については、キャリアパスを形成するという方向で考えております。大学院助教授相当の担当教員の募集を現在しておりまして、これは諸事項の企画、実施に主体的に関与する。それから、時間的余裕があれば研究に従事可能ということですけれども、海外、主に米国が行っているようなシステムを多少のモデルとしておりますので、留学経験があって、なおかつ今回の場合、特に医学系では非常に臨床系の大学院離れが起こる可能性があるということも含めまして臨床の人が望ましいということで、現在選考中であります。それから、大学院教育研究委員会というのがふだん行っている、毎月開催している委員会ですけれども、そこにグッドプラクティスの実施委員会を設け、発表及び質疑応答ということで、提出されたリサーチプロポーザルが御本人によって書かれたものかどうかとか、まずそういった点をできるだけ公平に審査したいと考えております。基本的には先ほども触れましたように、このワシントン大学への留学の道筋については、向こうとも具体的な協定が締結できておりますし、いろんな点について十分に対応が進んでいる。ただ、MD/PhDコースについては、これはこのシステムを恒常的に、現在大学院GPは2年間ということで採択されているわけですが、それ以降も継続することによって学部学生の研究への取組を推進したいというのは考えております。基本的には今まであまり学生自身が、大学院生自身が実績に言及するとかそういったことはございませんでしたし、あるいは国際的なレベルでの取組という視点を欠いておったと思うわけですけれども、その点に十分配慮したものとして本教育プログラムを提案させていただきました。以上でありまして、従来歴史的に説明いたしましたように、主科目分担制度ということ、あるいは基礎配属実習ということで取り組んできた流れから、今年度は中教審答申の趣旨等を生かして、リサーチリーダー育成プログラムとして提案することができました。現在、卒後2年間の臨床研修の義務化等によって、若い医師の大学離れが大きく進んでいるというふうに考えられております。数年後には定員割れが起こることも危惧いたしておりますので、一方では、むしろ臨床能力の養成ということも大学院の主要な課題になるとは思いますけれども、しかし大学院の重要性をアピールすることによって、大学に若手医師を大学に引きつけるということを考えております。以上です。

高久座長
   どうもありがとうございました。どなたか御質問は。後の方で説明された生命医科学リサーチリーダー育成プログラム。これは従来の大学院と並行しての計画ですか、それとも今までの大学院生を全部このように変えてしまわれるのですか。

前田参考人
   特に今年は、今年度からスタートするという仕組みになっておりますので、今現在の2年生に、急遽このリサーチプロポーザルを提出させ、それを審査して、この10名を。

高久座長
   10名ですか。

前田参考人
   はい。

高久座長
   今までの中から選ぶということになりますね。

前田参考人
   そういうことになります。

高久座長
   ほかにどなたか、どうぞ。

福井委員
   MD/PhDコースが何年か前からあるが誰も専攻しないということですが、何か特別な理由があるのでしょうか。

前田参考人
   いや、やはり経済的な支援とか、そういった部分が遅れておりましたので、時々先ほどのような1年生から基礎教室に出入りさせますので、そういった関心を持つ学生はいたことはいたんですが、指導者側が躊躇する部分があって、4年修了時に大学院へ進めて、3ないし4年間で大学院修了後、学部の5年生に戻すという仕組みで、それに踏み切れなかった。ただ、聞きますところ、例えば東京大学とかそういったところで、かなり具体的に動いているということも分かってきましたので、これを契機にその方向を強く進めたいと考えております。

水田委員
   そういう人は国家試験はどうなさるんですか。

前田参考人
   だから、大学院修了後、学部の5年生に戻しまして、卒業いたしまして医師国家試験を受ける。もちろん医師国家試験を受けない人というのは当然あってもいいかとは思いますけれども、基本的には医師免許の取得ということを前提に考えております。

高久座長
   ほかにどなたか、どうぞ。

吉村委員
   9つ目ですか、修士課程修了者から医科学専攻と書いてありますけれども、修士というのは医学部の方にはないんじゃないかと思いますけれども、どうですか。

前田参考人
   現在定員が20名なんですけれども、非常に多数入っておりまして、医学部卒業以外の人、薬学部出身の人なんかが今のところは多いですけれども、今後変わっていくとは思いますけれども、他学部の生物とか、あるいは工学系の生物関係の人たちが既に平成これは14年からスタートしまして、かなり熱心に研究しておりますので、その人たちを念頭に置いた書き方です。

吉村委員
   この学位はどんな学位になるんですか。

前田参考人
   2年間で修了した者は修士の学位ですし、その後博士に進んで博士課程を修了すれば医学になります。

高久座長
   ほかにどなたか、どうぞ。

新道委員
   リサーチグラントの資金はどういうふうに、100万円ですと10人で1,000万円。

前田参考人
   そのことはこの魅力ある大学院、グッドプラクティスの中でも、これは2年間について3,000、4,000万円が手当されていくという構造でありまして、今現在の仕組みでいきますと各学年2,000万ずつだから完成形で言いますと年間6,000万円要るという話でありまして、ちゃんとできるのかということを質問もされました。ただ、先ほども言いましたように、今、医学系については大学離れということにおける、あるいは学位よりも専門医という問題等がありまして、この仕組みをきちっとして後継者育成に励みたいということです。だから、今一番もちろん外部資金としての取組が一番考えられるわけですが、しかし従来、学部教育を中心として運営している運営費交付金の中での運営の仕組みを、やはり大学院中心にシフトできないものかということを現在思案中です。

高久座長
   どうぞ。

大橋委員
   ちょっとお尋ねしたいんですけれども、大変おもしろい試みだと思うんですが、この10名の方を留学させて特別扱いするところまでは本人にはインセンティブがあると思うんですけれども、最終ゴールはリーダー、研究者のリーダーにさせるというと、大学院の4年間だけのインセンティブを果たせるのか、その後に何か仕掛けをつくっておかないと、本当の意味での後継者が作れるかのというあたりが一つ疑問なんですけれどもいかがでしょうか。もう一つは、大学院教育の途中でこのコースに不合格となるというと、このコースに最初は入れても、ある程度実績を積まないと一般コースに落とされちゃうというんでしょうか、そういう点の問題はないでしょうか。そういう意味で、教育センターで大学院教育専任教官を置くと書いてありますけれども、これはどういう仕組みをつくって、どういうふうに運用するんでしょうか。

前田参考人
   わかりました。実は13ページのところに、学生のキャリアパス形成ということで、ちょうど右側中ほどのところですけれども、任期付研究員の採用とか、そんなような形で書かせている、ちょうどこれの右端の部分ですけれども、海外留学とか産学官連携とか、こういったような、今現在はこういう若手を育成するためのポストそのものの準備は、例えば助手が空いたときにそこへ入れるとか、そんなようなことなんですけれども、そこまでのつなぎをやはり制度としてつくりたいというふうに、今考えております。ちょっと2番目は忘れました。3番目の方、大学院専任教員というのは、これはもちろん通常の人たち自身がそうなんですけれども、この場合には助教授1名の予算をとらせていただきまして、それはもちろん2年間という約束でしか今現在は約束できないんですが、成果等が十分普通に、普通にというか十分に上がれば、2年目以降も何らかの形で任用するという条件で、現在学内公募しています。2番目、すみません、何でしたか。

前田参考人
   その件が、やはり結局例えば本人が書いていない状態が起こるんじゃないかとか、それから選考、実はMD/non MDの問題点は、医学部の場合過去から常にいろいろあって、どうしてもnon MDの人が経済的に大変なわけだからという問題があって、これは実は私自身は答えを持っていません。しかし、これはMDが引き続き、もちろん臨床でも構わないんですが、研究者として引き続き頑張ってくれると、その人たちを育成するプログラムなので、その点には配慮したいわけですけれども、しかしできるだけ的確に、だから選び方のところでちょっと書いたりしていたんですけれども、要するに上の人たちから5名を選ぶときに、関係者は一切ノータッチだとか、基本的には厳しくすることによって、やはり研究の進捗に身が入るだろうし、あるいは我々のところ、学生定員は78名ですので、10名以外の方が圧倒的に多いわけですよね。そういった人たちにもやっぱり再度のチャンスを与えるというような趣旨で、ここのところはできるだけきちっとやりたいというふうに考えております。

高久座長
   どうもありがとうございました。時間が大分過ぎていますので、次に、公衆衛生大学院の現状と課題ということで、京都大学の佐藤先生、よろしくお願いいたします。

佐藤参考人
   よろしくお願いします。京都大学の佐藤です。私は、医療統計学を担当しております。現在、この専攻で教務委員長を務めております。まず、私たちの社会健康医学系専攻の歩みですけれども、2004年の4月に一橋大学のMBAコースと同時に、我が国初の専門大学院として発足いたしました。初代の専攻長、それから立ち上げに非常に尽力を尽くされた福井先生がこの委員会の委員でございますので、何か補足がありましたら、後で福井先生の方からよろしくお願いいたします。皆さん御存知のように、2003年の4月に法科大学院の設置に伴い、専門大学院がすべて専門職大学院に移行いたしました。このときまでは修士課程を置いていたんですけれども、その修士課程が専門職大学院の移行に伴いまして専門職学位課程という、修士課程と同じ2年のコースですけれども、修士課程よりもより一層実務を重視した教育を行うというコースに移行しております。2004年12月、昨年ですけれども、5周年の記念のシンポジウムを行いまして、石野課長にもわざわざお越しいただいて御言葉をいただきました。そのタイトルは「健康・医療と社会・人間を結ぶ」というタイトルで、まさに後でミッションで述べますけれども、社会・人間とそれから健康・医療とのインターフェースを目標としているというシンポジウムです。お手元に専攻のパンフレットをお配りしてありますが、多少今年度から立ち上がりました新しいコース、後で簡単に解説させていただきますけれども、そちらの方もございますので、もしできましたらこちらの専攻のホームページの方をごらんいただければ、最新の情報が載せてありますのでよろしくお願いいたします。私たち社会健康医学系専攻のミッションですけれども、先ほど申しましたように医学・医療とそれから社会・環境とのインターフェースを機軸として、そこに挙げてあります教育、研究、それに基づいた成果の還元、そして専門的貢献を通して、その相互作用を通して人々の健康と福祉を向上させること、これをミッションとしております。研究につきましては、社会健康医学にかかわる実務ですとか政策、それから研究、教育において専門的かつ指導的役割を身に付けるような幅広い教育を行うことを目標としておりますし、研究は人々の健康にかかわる経済、環境、行動、そして社会的要因などいろいろな要因がありますけれども、それらについての知識と理解を深め、新しい知識と技術を生み出すということを目標にしております。そういった教育、研究から得られました成果を健康、医療にかかわる現実社会の実践方策と、さらには政策にも還元をする。そして、それらの専門的知識と技術を持って個人、組織、地域、国、できましたら世界的なレベルでの健康に関する貢献を行う、こういう人材を養成することを目標としております。私たち社会健康医学系専攻の構成ですけれども、先ほど申しました専門職学位課程、通常ですと修士課程に相当します専門職学位課程2年間のコースがございます。こちらは目標を先ほど申しましたような高度専門職業人ですね。公衆衛生にかかわる、社会健康医学にかかわる高度専門職業人の養成を目標としておりますので、通常の修士課程とは異なりまして、徹底した講義、実習、そしてコースワーク、これらを行いまして単位を出して、そして学位を認定するという大学院になっております。最終的には、課題研究、発表会といいます総合的な発表プレゼンテーションを学生にさせて、教員一同で評価を行って学位を認定するという方式をとっております。これとは別に、博士後期課程3年間も同時に設置しております。こちらは通常の博士課程と同じなんですけれども、社会健康医学にかかわる教育者あるいは研究者の養成、指導者ですね。後継者指導者の養成ということを大きな目標としております。私たちの専攻、特に専門職学位課程の特徴なんですけれども、欧米にスクール・オブ・パブリック・ヘルスはたくさんあるんですが、欧米のスクール・オブ・パブリック・ヘルスで、そこはきちんと公衆衛生専門職の教育ができるということを認定する機関があります。その認定する機関が何をもって認定しているかといいますと、この5科目ですね。バイオスタティスティックス、エピデミオロジー、ヘルス・ポリシー・アンド・アドミニストレーション、エンバイロメンタルサイエンス、ビヘービオラルサイエンス、この少なくともこの5つのコースが開設されていなければ、スクール・オブ・パブリック・ヘルスとしては認定されないという仕組みになっています。このほかにいろいろな選択科目ですとか専門科目を受講して、あるいは実習を受けて、コースワークを受けて、そしてマスター・オブ・パブリック・ヘルスを取得するということになっているんですけれども、我が国では特にこの上の2つのバイオスタスティクッス、それからエピデミオロジーにかかわる人材が不足しております。幸い私どもの専攻では、この欧米のスクール・オブ・パブリック・ヘルスのカリキュラムに対応しております医療統計学、疫学、医療マネジメント、環境科学、行動学というコースを基幹講座で分担して担当しております。例えば医療統計学ですと、私のところの医療統計学分野、それから薬剤疫学分野で担当しておりますし、疫学は医療疫学と健康情報学、医療マネジメントは医療経済学と健康政策国際保健学、環境科学は環境衛生学と社会疫学、行動学につきましては医療倫理学と健康増進行動科学というように、基幹講座が分担してこの5つの科目をきちんと担当できるというカリキュラム構成になっております。さらに私たちのところは医療系以外、医学、歯学、看護学、薬学以外の学生さんも多数入学しておりますので、そういった学生さんたちには、医学、生物学の基礎的な科目、そして臨床医学概論にかかわるような科目についても必修として受講してもらっています。もう一つ私たちのところに入学してくる学生の特徴なんですけれども、1つは社会人経験者が非常に多いという特徴があります。大体毎年半数近くが社会人経験者となっております。在職のまま大学院に入学してくる学生さんも、そのさらに半分ぐらいはいらっしゃいます。それから、女性もかなり普通の大学院に比べて多くて、女性も半分近く、場合によっては、年度によっては半分を超えるということもございます。さらに今言いましたように医療系以外ですね。医学、歯学、薬学、看護学以外の分野からも非常に多様な分野から学生が進学しております。法学ですとか、経済学ですとか、書き落としましたけれども社会学から進学してきた学生もおりますし、心理学。特に私のところの医療統計は、数学とか工学の出身者も進学してきておりますし、農学部からの進学者もおります。こういった学生たちが専門職課程を修了した後の進路ですけれども、大体ほぼ3分の1ずつですが、在職のまま大学院に来ている学生さんについては、もとの職場に戻るという方がいらっしゃいます。それから、3分の1の学生さんは、先ほど申しました博士後期課程に進学をする。残りの3分の1の学生さんが、新たに大学研究機関あるいは企業に就職をするという、大体今のところほぼこのそれぞれが3分の1ずつぐらいの構成となっていて、比較的就職についても今のところは問題なく成功しております。専門職学位課程には、さらに最近幾つか特別コースが設けられております。1つは、文部科学省の科学技術振興調整費振興分野人材養成という費用をいただきまして、知的財産経営学コースというのが2003年度より立ち上がっております。これは年間数名程度の生物、バイオですね。バイオ医学に関する知的財産の専門職を育てるというコースです。それから、今年度からなんですけれども、同じく科学技術振興調整費によりまして、遺伝カウンセラー、それから臨床研究コーディネーター、この両方をそれぞれ毎年4名ずつ養成するというコースが立ち上がっております。実際にこの学生さんが入学してくるのは来年の4月からになりますけれども、今年度の7月よりこの遺伝カウンセラー・コーディネーターユニットというコースが立ち上がっています。それからもう一つ、今年の4月から立ち上げたコースなんですけれども、こちらはちょっと変わった1年生のコース、今までの専門職学位課程はあくまでも2年制のコースだったんですが、こちらは医師・歯科医師でかつ実務経験者を対象とするということで、1年のコースとしておりますけれども、臨床研究者養成コースという、どちらかといいますと、公衆衛生学というよりも臨床疫学の専門家を育てるというコースになりますが、これが始まりまして、今年度4月から7名の学生が入学して、今現在勉強中です。公衆衛生専門職大学院、私たちのところもその1つなんですけれども、社会の健康に関するニーズ、これは非常に多様なものがあって、どうも医療系の学生だけでは専門性が不足しているように思われます。実際に私たちのところでも、先ほど申しましたように非常に広い今、文化系を含めて広い分野からの学生さんが入学してきて、一緒に勉強しております。それからもう一つ問題点は、やはり日本では医療統計学、それから疫学の専門家が非常に多く不足しているというふうに思います。これは私たちのところが早く人材を養成しなければいけないという、自らの自戒を込めての言葉なんですけれども、こういった専門家を育てないと、なかなか教員も、これから新たに公衆衛生学専門大学院を立ち上げるということになって、欧米のスクール・オブ・パブリック・ヘルス並みのコアカリキュラムを組もうとすると、なかなか人材の供給が難しいのではないかと思います。それから最後に、社会健康医学、公衆衛生の高度専門職業人としての活躍の場なんですけれども、残念ながら私たちのところの専門職大学院は、法科大学院などと違いまして、国家資格に対応したような専門職ではありません。講座の内容を見ましても、医療統計学から医療倫理学、それから健康政策、いろいろ幅広い分野にありますので、そのすべてを包括したような社会健康医学のような国家資格をつくるのは非常に難しいと思いますので、私たちにはそれなりに就職先をいろいろと考えまして、その専門職としての活躍の場を今模索中のところですけれども、私たちとしては先ほど申しましたようなカリキュラムで、専門家としての十分力量を備えた学生を輩出しているつもりなんですけれども、なかなか社会からそういう専門職を持った、バックグラウンドを持った高度専門職業人がいるということが、まだ認知されていないように思います。これに関しましては、私たちも積極的に社会の認知を受けるように活動していきたいと思いますけれども、ぜひ皆様方の御支援を今後ともよろしくお願いいたします。以上で終わりです。

高久座長
   どうもありがとうございました。どなたか御質問おありでしょうか。どうぞ。

吉田委員
   幾つか御質問させていただきます。MDとnon MDの学生の比率は大体どのくらいですか。

佐藤参考人
   MDが、すみません。定員を言うのを忘れたんですけれども、専門職学位課程の定員が1学年24名です。博士後期課程が12名となっています。その24名の中でMDの方は大体年間数名ですね。それから、先ほど申しました臨床研究者養成コース、こちらは医師・歯科医師と限っておりますので、今年度はたまたま歯科医師の方はいらっしゃいませんでしたので、7名のMDが入学しております。

高久座長
   博士後期課程の方はどうですか。

佐藤参考人
   博士後期課程ですか。博士後期課程も、大体そのぐらいの比率で、定員が半分に減りますけれども推移しておりますので、大体MDが入学するのは2、3名というふうになっています。

吉田委員
   それからもう一つは、1年制コースですけれども、1年で済んだらどのような資格がえられるのですか。

佐藤参考人
   資格といたしましては、専門職学位を出しておりますけれども、ただそのコースの設置のそもそもの目的が、やはり1年ではすべての教育をするのは不足であるので、修了した後もメンタリングをきちんと行って、研究指導を行うということを前提としたコースとして立ち上げています。

吉田委員
   最後にもう一つアメリカのスクール・オブ・パブリック・ヘルス、例えばハーバードとかジョンホプキンスと比較しまして日本のスクール・オブ・パブリック・ヘルス的な大学院は全部を合わせてもハーバードよりも小さいのではないかと推測しますが、規模の面から見てどうでしょうか。

佐藤参考人
   基本的には私たちのところが、今、社会健康医学系専攻でスクール・オブ・パブリック・ヘルスと言っていますけれども、欧米のスクール・オブ・パブリック・ヘルスの1つのデパートメントぐらいの規模だというふうに、現状を認識しております。

高久座長
   どうぞ。

松尾委員
   今、例えば小さな政府ということで、医療保険の立案や、あるいは実施ということもこれからどんどん地方に委ねれられていく時代が来るかと思いますが、そうしますと、私も、県の人たちに言っているんですけれども、やっぱり県としてそういう医療保険政策をどうするのかということをもう少し考えないといけない。そのときに、こういう医療政策や医療経済を考える人材がすごく不足しているので、やっぱり何らか養成していく必要があるだろうというふうなことを考えます。こういう地方自治体とか行政の方からの引き合いというのはどういうのかというのが1つと、それから社会人が多いと言われたんですけれども、どういう職というか、会社というか、どういうところから来る人が多いんでしょうか。

佐藤参考人
   例えば私のところの医療統計で申しますと、製薬企業で統計の専門家として働いている社会人がいるんですけれども、なかなか学位を持っていない方がいらっしゃいますので、もう1回きちんと勉強、それから日本では医療統計を専門的に勉強するコースというのは今までありませんでしたので、皆さん独学でやっておりました。そういう方が、私のところに入ってくる専門職課程の学生は、ほとんどが製薬企業に勤めながら働いている学生さんです。そのほか、あといろいろな、例えば薬剤疫学講座などのやはり製薬会社に勤めている学生さんが、在職のまま入学してきておりますし、あとその他看護職の方などは看護職のまま、勤めながら大学に来たりとかいう方も結構いらっしゃいます。

松尾委員
   行政の方から来る人はいないのですか。

佐藤参考人
   行政の方からは、保健所に勤めていて、保健所を途中で辞められてうちの課程に来て、また保健所に戻られたという学生さんが2名、確かいらっしゃったと思うんですが。ただ、行政からストレートに来て、なかなかやはり私たちの通常の修士課程とは違いまして、非常に厳しい授業を行っておりますので、特に1年の前半・後半ぐらいに関しましては、かなりの頻度で大学に来ていただかないと単位がとれないという状況になっております。それでなかなか休職をしてとか、あるいは職場の方で勤務の手当をつけてもらってこちらに出していただくというのが難しい状況だというふうには思いますけれども。

高久座長
   ほかにどなたか、もう1人ぐらいよろしいでしょうか。どうぞ。

福田委員
   先生、最後におっしゃった、社会から認知されていないというところが非常に大事でして、実は中央教育審議会の大学院部会でも議論がありました。共通して皆さんこれが必要だとわかっているんですけれども、やはり出口の活躍する分野を、例えば資格を持たせるような工夫が必要ということです。行政においても、健康管理においても、あるいは環境問題などについても、活躍できる分野をきちんと準備する必要があると思います。せっかく京都でおつくりになって広がらないのは、どうもその辺にあるような気がしています。ちょうど厚労省の方もいらっしゃいますので、もしその辺のところのお考えをお聞きして、多くの学生が集まってくる、あるいは就職ができることがうまくできたらと思っていたのですが、いかがでございましょうか。

高久座長
   それは宇都宮さん、何かありますか。

宇都宮医師臨床研修推進室長
   担当外なんですけれども、まず実際にはこういったマスター・オブ・パブリック・ヘルスをアメリカなどで取ってきて、我々のような国レベル若しくは都道府県でそれを生かして活躍しているという方はいらっしゃいます。それから今、先ほどまさに松尾先生がおっしゃったような医療保険の関係で、都道府県単位にすべきじゃないかという議論の中で、じゃ、県の職員に勉強していただかなければならないということで、国立保健医療科学院とかそういうところで勉強していただいたらいいんじゃないかみたいな話も出ているようです。現時点では、行政の面では、今申しましたように保健所もしくは国レベルだけですけれども、今後はもう少し広がりを見せる可能性はあるのかなということは個人的に感じております。ただ、担当部署じゃないんで、実際どの程度今それが進んでいるのかというのは分からないんですけれども。そんな感じです。

高久座長
   どうもありがとうございました。それでは、次の教育・研究病院としての大学病院の取組、これにつきまして、最初に吉村委員からよろしくお願いします。

吉村委員
   北里大学の医学部長の吉村です。一私学の立場からということで、お話し致します。まず、医科大学の附属病院ですけれども、学校教育法による大学設置基準によりますと、医学部の教育・研究のための附属施設、すなわち附属病院ということになっております。また、医療法上は特定機能病院ということで、医療提供体制の中で機能を分担することになっております。第一の機能として、高度医療の提供、第二に高度の医療技術の開発及び評価、そして第三に高度医療に関する研修を行うということになっております。これは、全国医学部長病院長会議のアンケート結果ですが、大学附属病院の基本姿勢の優先順位はということで、全国の医学部長又は病院長にお聞きしました。aは、将来の医療を担う医師・医療従事者の教育及び養成、そしてbが臨床医学研究の発展と医療水準の向上、cが高度医療の提供、その他、d過疎地への医師派遣、e健全経営、これについて順番をつけていただきました。そうしますと、まずaの将来の医療を担う医療者の教育と養成につきましては、国立大学43校のうちの42校の御返事ですけれども、優先順位1位であるという答えが16校(38パーセント)で一番多く、公立大学では返事のあった6校中4校、私立大学は25校中18校という、全体で半数以上の方が教育が優先順位の第1位であると答えています。それから、b医学研究の発展というのは優先順位の何位かといいますと、2位というふうに答えた方が全体の32校で一番多くなっています。ただし国立では、10校の方はやはり研究が1位であると答えておられます。そして、c高度医療の提供というのは優先順位の3番目であるというのが一番多い答えですけれども、国立大学でこれが1位だと答えた方も11校あったということで、やはり国立もあるいは公立の先生方も、高度医療の提供ということも大変大事だと、1位という方も結構おられるということでございます。全体の意見といたしましては、医師・医療従事者の教育と養成が1位、そして臨床医学研究の発展が2位、そしてそれを支える高度医療の提供が3番目というのが、多分これは医学部長の先生の御意見かと思いますけれども、アンケート結果として出ております。さて、大学附属病院における教育の取組ですけれども、1番目に卒前教育、すなわち医学部の学生教育を担っております。そして、この卒前教育についての取組状況は、最近の医学教育の変化と非常に密接に関連しております。医学教育の変化の第1番目に挙げられるのは、6年一貫教育の導入です。それから2番目に、モデル・コア・カリキュラムの導入。平成13年から教育内容の最低限のコア部分を全国共通のカリキュラムとして導入することになりました。3番目は、アーリー・エクスポージャーと言いまして医学教育の早い時期で臨床の体験学習をさせる。4番目は、PBL、プロブレム・ベースト・ラーニング・チュートリアルという教育の方法ですね。小グループで行う問題解決型の学習が進められています。5番目に臨床実習開始前の入門学習、これは医療面接技術とか診療技術を患者さんに接する前にしっかり教育しましょうということです。それから6番目に、いよいよ今年から臨床実習開始前の医学生を評価する共用試験ですね、知識を問うコンピューター・ベースト・テスティングと模擬患者を用いたオスキーの試験を全国の医学部で行うことになりました。それから、7番目に、クリニカルクラークシップ、医療チームの一員として参加型の臨床実習をやるということになっております。例えば第一番目の6年一貫教育ですと、現在80大学中、61大学が一般教養と専門教育を一貫的に行っております。専門教育の開始時期も1年からが80大学中53大学、2年からというところもあります。それから3年からというのはもう2校しかない。これはいずれも臨床実習、臨床能力の充実が目的です。それから、2番目のモデル・コア・カリキュラムは、医学教育の基本的な内容を履修させるための全国共通のガイドラインですけれども、特にその趣旨といたしまして、1講座単位のばらばらのカリキュラムでなくて、臓器・器官別に基礎と臨床を統合したカリキュラムに変えること。それから、2詰め込み型教育から学生自ら学ぶ問題解決型の教育に変えること。そして3臨床実習開始前の教育を充実すること。例えば、倫理とか医療安全の教育とかコミュニケーション能力その他の診療能力を充実させることですね。それから4見学型から診療参加型の実習に変えること、などが強調されています。このコアカリキュラムに則ったカリキュラムの改訂が既に80大学中56大学で修了しております。この改訂には6年かかりますので、かなりの大学で修了している。それから3番目に、アーリー・エクスポージャーということで、これは早期体験学習ですけれども、教育の早い時期に医学・医療の現場に接して動機づけを行う。これはもう全大学で行われております。しかも1年生からこれをやるということが75大学、大体1年生で平均10日ぐらいをこれに費やしているということです。これは私どもの大学の北里大学の病院体験当直のプログラムですけれども、1年生は4月20日から、もう入学して間もないころから6月にかけまして、内科、外科、小児科のいずれかを、3人ずつ毎晩体験当直をさせます。それから、3年次にも10月から11月にかけて神経内科、消化器内科、消化器外科、精神科のいずれかを1日4名ずつ当直させます。この写真はその一例ですけれども、左にありますように、これは男子の学生の当直室です。女子用ももちろんございます。そして、当直医と一緒に一晩過ごすということです。ちょっと浮かぬ顔をしているようですけれども、1年生です。それから、4番目のPBL・チュートリアルですが、これは大教室での講義にかわりまして小グループで行う問題解決型の学習です。臨床例を特に具体的な症例に基づいて学生が自分で調べて学んでいく。この教育法は現在65大学で導入されておりまして、1年次で年1回のところもありますけれども、平均60回です。2年次116回、102回など、大講義はすべてやめて、こういった小グループでやっているという、岐阜大学とかいろいろあるようでございます。この写真はPBL・チュートリアルをやっているところです。若手指導教員であるチューターがおりまして、問題を、例えば臨床問題で62歳の男性で、6時間前から胸が痛くなった。救急外来を受診したけれども、病歴と必要な身体所見をとりなさいというふうにナースから言われて、どうしましょうかというようなことで、胸痛とは何かとか、あるいは心筋梗塞が起こったときに、なぜ起こるか。心電図はどうしたらいいかなどを全部自分で調べて、次の時間に互いに発表し合うというようなことで行う教育です。次に、臨床実習開始前の入門学習ですが、面接技法の習得に当たって模擬患者さんを導入している大学が現在48大学ございます。それから、基本診察の習得にも模擬患者を入れているのが8大学ございます。その他、シュミレーターを用いるとか学生同士で互いに基本診察の実習を行うなど、いずれにしましてもこの入門学習は77大学で、大体平均16日間、実際の臨床実習に入る前に行われているようです。この写真は私どもの北里の4年生のちょうど終わりに当たる1月から2月にかけて、大体1カ月間、医療面接、オスキーの実習、カルテの書き方、その他コミュニケーション能力の練習を実際にやっているところです。左上は模擬患者さんですけれども、血圧をはかったり、それから右の方はシュミレーターを使って心音を聞いたり、あるいは学生同士お互いに採血をしたりと、こういうことをしっかりやってから実習をさせています。そして、共用試験は臨床実習開始前に、ほとんどの大学では4年生の終わりに学生を評価する。CBTといわれるコンピューターを用いた知識のテストと、オスキーといわれる模擬患者を用いた医療面接と基本的診察の評価を行うということで、全国の医科大学で来年の2月から本格実施されることになっております。これは私どものパンフレットですけれども、このようにコンピューターを使いましてCBTを行ったり、右の方はシュミュレーターを使いまして救急の蘇生の試験をしております。この写真は、模擬患者さんを用いて医療面接をやっている学生を評価しているところです。それからクリニカルクラークシップとは、学生が医療チームの一員として臨床実習を行うということで、私ども5年と6年をクリニカルクラークシップの臨床実習に充てております。そして5年生は、私どものところでは1グループ5名に分かれまして、診療科を2週間又は1週間で全科を回ります。それから6年になりますと、選択実習ということで3週間、3回、希望する国内外の施設、診療科を選べます。海外にも今年6名ほど派遣いたしました。これは5年生の外来での実習の写真です。6年生になりますと、もう完全に、医療チームの一員として手術に入ったり、病棟を受け持ったりするということになっております。さて、卒前の医学教育の次に、卒後の初期の臨床研修も、もちろん大学病院が担当しております。昨年から新たに導入された新医師臨床研修制度の目的は御承知のように、すべての医師にプライマリ・ケアに対応できる基本的診療能力を涵養する。また、研修医の処遇を確保するということで導入されました。マッチングシステムが入りまして、研修指定病院が大学以外にたくさんできましたので、下に書きましたようにだんだん大学で研修する人が減ってきたということで、これは大学としてもこれから大きな課題でございます。プライマリ・ケアに対しても大学でしっかりしてやっていかなきゃいけないということだと思います。私たち北里大学は、管理型研修施設になっており、協力型の近隣15病院と協力いたしまして、この他、保健所その他で初期臨床研修を受け持っております。研修プログラムの1年目は、内科、外科、救急、2年目に小児科、産婦人科、精神科、その他ということで、今現在2年目が終わろうとしております。私どもの目指す医師像ですけれども、第1に、自ら考え解決法を探ることのできる医師。2番目に、医療事故を起こさない医師ということで、いろいろな安全教育をやっております。それから、3番目に救急の現場で自信を持って対応できる医師を育てたいということで、救急当直その他もしっかりとやっております。この写真は、毎週金曜日の午後に研修医を集めまして、安全教育あるいは基本的な処置のやり方その他を教育しているところです。それから3番目に、初期研修終了後の後期研修ももちろん大学が受け持っております。この部分が非常に大事だと思います。初期研修は2年間ですが、私どものところは、年間大体60名から70名で、これが終わりますと後期の専門研修になります。北里大学では病棟医というシステムを以前から持っておりますけれども、4年間助手として雇用しております。年間、大体70名ずつ入ってくるとして4年間で280名ぐらいになりますけれども、学内に161名、一応病床数10床に1名が目安ですが、北里大学病院は約1,500床です。学外には113名ということで関連病院と連携をしながら医師の養成を図っております。それが終わりますと研究員という制度がございます。病棟医終了後、自動的に全員を受け入れていますが、これは10年間のポストですが、学内には127名、大体原則診療科に4名なんですが、多いところは14名で、これは学内の有給のポストです。それから、学外に307名ということで、これがいろいろ話題になっております医師の派遣とか、批判を浴びているところでもございますけれども、学内と院外を10年間ぐるぐるとローションしながら研鑽を積みます。その他、医学部卒の大学院生は、146名です。この他に、医療衛生学部卒など他学部卒の大学院生が300人ぐらい修士・博士がおります。このほか現在非常に少なくなりまして留学が12名。講師以上のスタッフが、これは臨床系の有給のスタッフが162名です。このほかに基礎系教員が70名おりますけれども、合計大体スタッフが240名ぐらいでしょうか。それから、前述の病棟医が161名、研究員127名、初期研修医が130〜140名ということで診療を行っております。次に、大学病院ではコメディカルの研修も担っており、コメディカルの学生さんと職員の研修を受け持っております。例えば医学部以外の北里大学の学生実習として、医療衛生学部が年間948名、看護学部が490名、その他薬学部、看護学部大学院生、薬学部大学院生、その他で大体1,700名ほどの北里大学の、医学部以外の学生を受け入れて実習をしております。それから、他大学の学生も受け入れておりまして、42校から469名が来て研修をしております。それから、私どもの大学の職員の研修も大変これ大事でございまして、例えばMEセンターですと年間128回、人工呼吸器の使い方など、これはもちろん医師も参加いたします。それから、薬剤部ですと適正な使用セミナーというのを毎週のようにやっております、84回です。看護部は42回、その他各部署でやっておりまして、合計300回のいろんな研修が開かれております。この写真は看護師の方の心肺蘇生の研修とか、輸液ポンプを新人に対する研修の模様です。それから、この写真のように、「がんを語ろう」とか、いろんな取組がなされています。そして、大学では社会人の研修も行っておりまして、例えば救命救急士の方201名、それから救命救急士6名が気管内挿管の研修のために、麻酔科に来ております。その他医師、看護師160名、合計373名の社会人の研修を受け入れております。それから、海外からの医師、看護師、検査技師、現在32名、これは16年度の実績です。次に、研究についてお話しさせていただきます。北里大学附属病院における研究の取組ということになりますと、医学部の教員の臨床研究は、ほとんどすべて大学病院の臨床実績、レベルの高い臨床を行うことによって、それに基づいていると言っても過言ではありません。もちろん基礎的な研究は、医学部の研究施設とか他学部とかも行いますけれども、そのマテリアルは、多くが臨床の方からのマテリアルを使うものも多いということです。これは私どもの平成12年に竣工いたしました遺伝子高次機能解析センターです。ここで使ういろんなマテリアルも、ほとんどは臨床の中から得られたマテリアルでございます。もちろん動物実験も独自のものがたくさん行われます。例えば、文部科学省、厚生労働省から科学研究費をいただきます。それから研究助成金、企業からの受託研究、臨床治験、それから講座の研究、プロジェクト研究その他大学間の研究などございまして、この結果が学会発表とか学術論文、研究報告になりますけれども、16年度私どもの大学での学会発表、一応業績集にまとめたものだけですけれども2,144件、学術論文が1,226件、研究報告書が53件という実績でございました。これは、16年度の私どもの医学部の研究助成の実績ですけれども、文部科学省から科研費、69課題で大体2億1,000万ぐらいいただきました。それから、ハイテクリサーチということで5プロジェクト、これは年間7,000万ぐらいいただいていると思います。それから科学技術振興調整費、これも数千万いただくことになっております。それから、厚労省の厚生労働科学研究費、39課題。これはがん助成金とかいろいろございます。それから、私立学校振興・共済事業団からの高度化特別経費10課題、ハイテクフロンティア1プロジェクトです。その他企業の助成金が285課題。それから受託研究が8課題、それから臨床治験はうちは第1相もやっておりまして、87件ということになっております。例えばこれは私どもの16年度の69課題の1つで、がんに関するもの、冠動脈の狭窄に関するステント治療の評価とか、骨髄の由来の細胞を用いたハイブリッド骨の開発など、いずれも非常に臨床に密着した課題、もちろん基礎的なものもございますけれども、研究が行われている。これは私どもの北里大学病院ですが1,033床。すぐ近くに東病院、478床ございます。これは消化器センターと精神科です。本院の方で外来の患者さん、年間70万人。入院患者30万人、手術が9,700件。それから、東病院でも外来が30万人と入院が13万人、手術も1,929。ですから、手術も両病院あわせて1万件以上やっておりますので、こういった高いレベルの臨床実績の上に教育と研究を展開しているということになると思います。結語といたしまして、大学附属病院の使命は、第一に、医学生・医師・医療従事者の教育と養成。それから2番目に、臨床医学研究の発展と医療水準の向上と、そしてそれを支える高度医療の提供。この高度医療の提供の果実をもって、この教育と研究に生かしているというのが私学の立場ではないかと思います。以上でございます。

高久座長
   どうもありがとうございました。今の御発表に何か御質問おありでしょうか。それでは、引き続いて水田委員の方から、同じテーマで、大学病院での取組についてお話、よろしくお願いします。

水田委員
   いただきましたテーマは、主に大学病院としての研究の取組と、それから女性医師としての環境を整えることに対する何かということでございましたので、この2つについて、少し私どもの経験をお話しさせていただきたいと思います。まず、私どもはプロフェッショナルドクターを育てたいということが目標です。プロフェッショナルドクターとはなにかといいますと、以前も言ったと思いますが、要するにグッドクリニシャンであれということと、それからグッドリサーチャーであれと。いわゆるフィジシャンサイエンティストを育てたいということ。それから、グッドティーチャーであれということ、やはりフィジシャンエデュケーターという部分も非常に大事でございますので、この3つを備えた医師を育てたいというのが、九州大学及び私自身の目標でもございます。それで、研究につきましては、卒前教育における取組としまして、6年生の時に研究室配属というのが1カ月ございます。まず基礎と臨床の各講座が研究テーマを出します。この講座でこういうことができますよということを学生に提示して、それを学生が、自分はこれをやってみたいということ選び、マッチングが成立し、大体1カ月、その研究室の人がいろいろ教えながら研究をさせます。それが終わるとレポートを出させますけれども、中にはやはりちゃんとしたペーパーにまでしたいということで、夏休みに実験を続ける学生もいます。スライドに示すのは小児外科の方に来られた方が2人ペーパーにされたんですけれども、「福岡医学雑誌」といいまして、九州大学医学研究院が出している雑誌ですけれども、ちゃんとレビュアーもおりまして、そういうジャーナルにきちんと投稿できるような論文をまとめる、ジャーナルに掲載され、別冊が来たりしますと、研究した成果を出すという喜びを学生のときから知ることができるというシステムになっております。それから、卒後におきましては、大学院生や研究生として研究することになりますが、大学院部局かになりまして学生の定員が増えまして、17年はちょっと心配したんですけれども、幸いにしまして95.3パーセントの充足率でしたが、しかし今年は研修制度が始まって2年目で、来年は大学院志望者がどうなるかなというのがやっぱりちょっと心配しています。しかし来年度の3年次研修に対しての病院としての処遇については、きちんと10月の運営委員会議で決まりましたので、そうしますと医局としても、教室としても動きやすくなってくるということで、大学院生を2月の試験で振り当てていくんじゃないかと期待しております。
 次に研究資金につきましては、まず運営費交付金として文科省の方からいただくものと、それから外部資金に分けられます。これが16年度の資金の状況でございまして、大学病院と医学研究院を比べたものですものですけれども、どちらも13パーセントちょっとが、文科省からいただいたもので、残りは外部資金として、額はかなり医学研究院の方が多いんですけれども、割合としては大体同じぐらいのところをいっております。額で比べますと、病院はちょっと割が悪いわけですね。といいますのは、医学研究院の方は教授とか、助教授とかかなり大型の研究費を取られる方が多いんですけれども、病院の方は講師以下でございまして、なかなか大型が取れないというちょっと引け目がございます。これが科学研究費で17年度の分でございますけれども、応募は皆さん1件以上はなさっているんですけれども、その確率としては半分ぐらいしか当たっていません。それから、今年から医員も応募できることが決まりましたので、医員の方も59件出しているんですけれども、採択が21件でございます。医員も応募できるようになって若い方がどんどん研究もできていい制度になったことは、ありがたいとは思うんですけれども、考えてみますと医員というのはやはり臨床に張りついている医員なんで、臨床しながら研究というのは若い人はなかなか大変だろうなと思うこともございます、
 研究体制としましては、九州大学全体の研究の一環として加わるもの、例えば21世紀COEとか、それからもう一つリサーチコアというのがございまして、これは後で説明させていただきます。それから大学病院主体の研究というのが、病棟業務に関連した共同研究でこれはもうアドホック的に問題が起こったときに研究をするということですね。もう一つは、トランスレーショナルリサーチをやっていくということでございます。リサーチコアというのは、九州大学の中での特殊なシステムですけれども、後にCOEに行けるような体制をとろうということで、これに対して全学的な広い意味での研究をするということ。それから、外部資金をどういうふうに取ったらいいのかとか、いろんなことに対しての支援をいろいろしてくれるというシステムでございます。幾つかのリサーチのコアがありまして、今まではライフサイエンスのところは医学研究院が中心でやっていたんですけれども、今年3月に初めて病院からも出させていただいたわけでございます。これは母子総合研究のリサーチということで、私自身が小児外科関係でございますので、小児関係の人たちで親子の体と心、そしてその関連性に関しての学際的、総合的な研究、臨床応用、社会貢献を行うということを目標にしておりまして、九州大学病院とそれから医学研究院、農学研究院、歯学研究院や保健学科、人間環境研究院の心理学科の方々にも入っていただいて共同研究する体制をつくりました。カンファレンスをしたり、研究会を一緒にやりながらプロジェクトを進めているところでございます。病棟中心の共同研究としましては、安全管理のものが多いのですけれども、医療安全の全学教育プログラムの開発ということで、JALと三井物産と一緒にやっている研究と、それから病棟で転倒が結構多いということが出てまいりまして、しかもトイレに座り損なってお年寄りが落ちるとか、そういうことで骨折が非常に続いたもんですから、TOTOという会社、これは便器の会社ですけれども、そういうところと一緒に研究をするプロジェクトを今組んでおりまして、もう一つは病棟クラークが、どこまで本当に貢献するのかということについて、安全及び経営の面からの検討というプロジェクトを、工学研究院と医学研究院の経営管理学の先生方と一緒にやっておりまして、経営の面では、DPCなどの関連をクラークの方がしてくれますので効果が上がってきているんですけれども、医療安全に対してどこまでいけるかということを今いろいろ勉強しているところでございます。こういう病棟中心というのは、一つ問題が起こったときにそれに対する研究テーマをアドホック的に組んでいきますので、どんどん変わっていくというのが現状でございます。それからもう一つは、やはり院内の先端医療の推進を目的に研究をする必要があります。先端医療のトランスレーショナルリサーチは、遺伝子治療、ロボット医学、細胞療法という3つセクションがございます。しかし、現在の九州大学病院における課題としましては、この方たちがみんなそれぞれ別々に動いている。1つの統一したシステムができていないというのが問題でして、そこを何とか1つにまとめたいと話し合いをやっているところでございます。将来構想としましては、トランスレーショナル・アンド・クリニカルセンターというふうなものをつくって、臨床と直結したものとして研究病床なども入れてやっていきたいと思っております。
 研究推進のための取組としまして、1つは研究推進委員会から、病院のスタッフに情報提供を行うことや、研究システム全体の整備をしております。それから、九州大学の臨床研究センターが2003年10月にでき上がりまして、臨床研究センターの構図につきましては、時間の関係で説明は省略しますけれども、このセンターの目的は九州大学における臨床研究の適切勝迅速な推進の支援、良質で、安全かつ倫理的な臨床試験の推進、臨床研究の成果を社会に還元する事です。この結果、7−8年前は治験が減っておりましたけれども、最近は件数も、被験者数もふえてきておりまして、外部資金の導入に役立っております。九州臨床研究支援センターというのは、これはクリニカル・リサーチ・サポート・センターというもので、これは中間法人、クレス九州と呼んでおりますけれども、2004年8月に大型治験の導入ということでつくったものでございます。この目的は、大型治験がご存じのように日本では減っておりまして、外国に全部行っているような状況になっておりましたので、それを何とかして日本でしたい。ただ、1つの施設では難しい。1施設で100例、200例実地するというのは大変なことでございますので、それを地域別にまとめたらどうかということでできたものですが、九州地区の熊本大学以外全部の大学が入っております。さらに大学が中心になって地域の病院も含んでいくシステムにするということ。そして、大学のセンターのところが合併症など、何か起こったときにはきちんとその対処までやるというふうなことでやっております。これは中間法人でございますので、大学とはちょっと切り離してやっております。
 先ほどから大学病院の使命と役割という話が出ております。教育、研究、診療ですね。そういうことに対して法人化になりまして、経営というものが入ってきたわけでございますけれども、法人化1年目の16年度は私たちもそうでしたけれども、やはり診療というか、いわゆる経営ですね。そちらの方に重点を置きまして、この3つの中で研究は少し忘れられたんじゃないかというような気がしております。果たしてそれでいいのかどうかということですね。そうしますと、問題としましては、やはり大学病院のこの3つの使命をきちんと果たすために、現在の大学病院の制度が本当にこのままでいいのかどうかということも一つ問題になってくるんじゃないかと思います。全国の大学病院がみんな並列で、一人の人が研究も何もかもするというのは、なかなかできないというのが現状ですので、これで良いのかどうかという事を検討する時期ではないかと思います。研究重視型の大学病院とか、臨床重視型の大学病院にするなど機能別に分けるのはどうかという考え方もございます、また、同じ病院の中で研究病棟の設置も考えうる選択肢だと思います。それをどれぐらいの割合にしたらいいのかはちょっとわからないんですけれども、だいぶ前に九大病院の方でメイヨークリニックとか、いろんなところを見学に行ったことがあるんですけれども、なかなか予算の問題などで難しいということも分かっております。それから、アメリカの外資系の会社からのレンタルベッドというようなことで治験をするために九大病院のベットを一部貸してくれというような話も出ておりますけれども、いろいろ検討すべき点が多いところですが、そういうこともやはり将来的には考えなくちゃいけないんじゃないかということを思っております。私は個人的には病院を1つの部局としまして大学直属とし、イギリス型のシステムとするような考えです。イギリスでは病院は大学の附属ではなく、大学の関連病院です。医師の職位がコンサルタント、レジストラー、ハウスマンに分かれておりましてコンサルタントは日本でいうなら部長クラスで大学の教授と同格、レジストラーは医長クラスでハウスマンは医員クラスです。「コンサルタント」ー「レジストラー」ー「ハウスマン」からなる1つのチームで、それぞれの病院には病院の規模によって数は異なりますが、こういうチームが各科毎にいくつかありチーム毎に病棟をもっています。教授もそのうちの1つを持つことができます。教授は大学では別のスタッフ達と教育と研究を行い、病院ではレジストラーとハウスマンというスタッフと共に病棟や外来を持っています。コンサルタントは、研究もできますが、主に病院で臨床研究を行う。病院勤務の医師が大学で研究を希望する場合は、大学のポジションに応募するし、逆に大学の研究者が病院での臨床を希望する場合も、レジストラーやコンサルタントのポジションにアプライしてやっていくというやり方ですので、日本みたいに、研究も診療も教育も何もかもするというシステムじゃないこういうやり方も、これから日本にもあっていいのではないかなというふうに思っております。

高久座長
   時間が過ぎているので早目に願います。

水田委員
   では次に、女性医師増加に伴う環境整備ということでございますけれども、女性医師の増加ということがいいのか悪いのかは別としまして、そういうことが社会現象になってきた途端に、医師需要の問題で女性医師が非常にクローズアップされてきたというのは、ちょっと皮肉なことだなというふうに思っております。いろんなところが女性医師の環境問題に対しましては感心をもっております。女性の労働環境問題に関する全国の検討のワーキング・グループとか、それから女性医師バンクとか、女性医師のキャリア形成維持を目指す会とか、エイジットとかいろいろありますけれども、環境を整えるということのエンドポイントは何なのかということは、何もだれもわからないということです。それから、どんなふうにするのかという具体案もでてきていない。総論だけで女性医師の環境、環境と言われているのが現状です。
 少し九州大学の現状をお話ししますと、年代別の卒業生の女子占有率というのは、九州大学の場合、まだ2割行っておりません。ただ、2000年以降の人たちは結構増えています。所属科は、やはり内科、外科が多いんですけれども、それを年代別に見ますと、ある時期は非常に小児科が多かったんですけれども、最近やはり昔に比べまして小児科はちょっと減ってきておりますし、麻酔科は割と余り変わらないぐらいかなというのが現状でございます。入局した医局での女性医師の受け入れ状況につきましては、「困る」というところはさすがに今の時代はなくなってまいりましたけれども、「仕方がない」とか、「ご自由に」とか、そういうのも出てきております。「大歓迎」というのも出てきております。それから、結婚していますかという質問に対しては、お年を召した方は結婚している方が多いですが、最近の方はやはりまだ未婚の方が多いという状況ですし、配偶者の職業としては、やはり断トツ医師が一番多いということでございます、子供さんの有無については、答えた方の72.4パーセントが子供さんがあるということで、1人から4人までということでございます。産休は、大体ほとんどの方がとっていらっしゃいます。ただ、退職したという方もいらっしゃいますので、そこのところがいろいろ問題かなと思います。妊娠、結婚、出産を契機として仕事の内容が変わられましたかということに関しましては、昔の方ほど変えなかったという、非常に頑張ったんだなという気がいたしますけれども、最近はやっぱり核家族ですので、そういうサポートが減っているのかという気もいたします。それから、年代別の就労状況を見てみますと、やはり年代的に大学に残っている方は若い方が多いんですけれども、男性と女性はそれほど若い方たちの差は余り変わっていない。しかしながら、大学でのポジションは、九州大学の場合に研究院と病院の助手以上の方々の380名の中で25名、6.6パーセントしか女性はスタッフにはなっていないということを考えますと、やはり非常に女性の教官の数は少ないということでございます。しかし、現在は教官となりうる女性医師の母数も少ないのですから、後10年くらい後にはずいぶん増えるのではないかと期待しております。
 次に九大小児外科の女性医師の経歴、これはちょうど私が教授をさせていただきました15年間の中で、17人の女性が入局してまいりまして、その中でフォローしたものですけれども、中にはやはり結婚してもう開業した方もいらっしゃいますし、それから研究職に変わった方もいらっしゃいますし、私立病院勤務とか、それから行政に2人行っております。結婚した方が9人いらっしゃいまして、17人中の9人ですから半分ちょっとですね。1つ気になるのが、3人が離婚されているということです。3人の離婚した方のうち1人が再婚されまして、現在はお子さんが2人いて、研究職を続けていらっしゃる。それから、8人が学位を取られまして、さらに6人が専門医を取っていらっしゃいます。同期の男性医師との比較で見てみますと、このクラスは3人入局のうちの1人が女性で、その方は結婚されまして、産休もとりまして、そしてその後専修生となって研究を続けられましたので、学位取得はほかの男性2人に対してはちょっと遅れておりますけれども、学位もきちんと取って、専門医も取りまして、今は行政の係長さんで非常に頑張っていらっしゃいます。それから、この方は二人入局したクラスの1人ですけれども、2人は全く同じような経歴をとりまして、結婚も研修医のときにしまして、その後研究に入って、海外へ留学して、留学して帰ってきた途端に離婚したんで気になってはいるんですけれども、それでも学位取得も同期の男性医師と同じですし、それから同期と同じように助手にも就任してきちんとやっているという方です。ですから、女性医師の中には結婚しても学位も取得し、専門医にもなってきちんとできる人もいるということは、認めるべきじゃないかと思います。これは、仕事と育児を両立させるために何が必要かということを尋ねたアンケートですけれども、皆さん大体が「夫の意識」とか「自分の意識」とか、「ヘルプがたくさん必要」というのが多いのですけれども、ちょっと気になるのが若い年代の方が「自分の意識」というものが何か少なくなってきて、「上司の理解」というのが増えているんですね。何か最近の方はそういうのがちょっと多くなってきたなという気がいたします。女性医師の支援対策としてはご存じのように子育ての支援、勤務体制の改善、それから生涯教育・再教育支援というものが挙げられます。男女共同参画社会におきまして、総論は大賛成ですけれども、各論になりますと、さあ、大変ということになっております。その中で、産休をとる、育休をとる男性の方もいらっしゃいますし、働く女性を助ける夫の会とか、そういうのもできてきておりますので、少しずつ社会的な意識は広まっていっているのかと思います。実施可能なこととしましては、やはりパートナーの育児への参加とありますね。それから両親の支援ですね。もう使えるものは親でも使えというあれで、おじいちゃん、おばあちゃんに全部助けてもらうというのも大事じゃないかなと思います。それができない人が大変だなと思いますし、保育園の充実などが必要ですね。女性医師本人たちに言いたいことは、出産、妊娠などの時期を考慮した人生プランの設計ということも大事になってくるんじゃないかなと思います。大学でできることは、シェアレジデンシーをするとか、フレックスタイム制とか、複数主治医チーム制とか、インターネットスタディで勉強しなさいと教えてあげることとか、それから勤務時間内のカンファレンス等が上げられます。私が一番気をつけたことは、勤務時間内にカンファレンスをするということですね。カンファレンスなどを夕方遅くからしますと、お子さんを保育園に迎えに行ったりするので参加できない。そうすると、やっぱりその人は何かものすごく引け目を感じますし寂しい思いをします。幸い小児外科というのは朝から手術をしまして、3時ごろには大体終わりますんで、4時から5時というのはポンと空く時間がございましたので、そこにカンファレンスをするようにしました。もちろんカンファレンスというのは毎日じゃございませんので、科全体でするときはこういうふうな時間。あとはもうそれぞれのグループでやるというふうにして、なるべくたくさんの人たちが参加できるようにいたしました。男性や女性の同僚、上司に言いたいことは、ただ1つ、フェアであれということですね。常にフェアであれということ。それから、女性医師自身にはやはり断固たる意志を持って甘えないということも大事じゃないかなと思いますし、その時、その時の自分のプライオリティを決めてやっていただきたいなと思います。当たり前にさっそうと生きていただきたいということでございます。いろんな生き方を選ぶことができるようになった今、一人一人ガそれぞれ好きな道を選び、最前を尽くすことが大切であり、そうできることは幸せであると思います。

高久座長
   どうもありがとうございました。どなたかご質問おありでしょうか。1つだけ、九州大学の場合、大学院の充足率は95パーセントですが基礎と臨床の割合はどれぐらいですか。

水田委員
   ほとんどが臨床の所属で、基礎の教室で研究だけするというパターンです。

高久座長
   籍は臨床の方が多いのでしょうね。

水田委員
   そうです。

高久座長
   実際に仕事をするのが基礎という。

水田委員
   基礎でやるということですね。

高久座長
   そういうことですね。それから、病棟中心の共同研究というのは非常に良いと思うのですが、そのお金はどこから出てくるのですか。病院の方から出されるのですか。

水田委員
   テーマに感心のある企業に研究費を寄付していただきます。

高久座長
   企業が出す。

水田委員
   企業が出して、寄附金ということでやっていくということに。

高久座長
   それでは、時間が大分過ぎていますので、今度は事務局の方から、へき地を含む地域における医師の確保等の推進に関する調査結果について、これは山本さんの方から説明していただけますか。

山本大学病院支援室長
   じゃ、座ったまま失礼いたします。資料の5でございますけれども、これは昨年の2月に関係省庁連絡会議で取りまとめられた課題のうち文科省に関係する部分につきまして、16年度の各大学病院の取組を調査した結果でございます。1ページからご覧いただきたいと思いますけれども、ローマ数字の1でございますけれども、地域医療の支援の実施状況でございます。その1でございます。病病・病診連携の実態でございますけれども、その表をご覧いただきますと、右側に質問に対する選択肢、それから縦の欄は国公私の数を掲載してございます。合計の欄をご覧いただきますと、全部で実施しているところが68、検討中も含めますと大体90数パーセントということで、ほとんどの病院が実施しているという状況になっております。下のグラフは、その国公私別の実施状況あるいは大学全体の実施状況をグラフにしたものでございます。それから、2ページ目でございますけれども、2ページ目は連携を実施している場合に、地域の医療機関とどのような機能分担を行っているかということを表にしたものでございます。合計しますと50病院が機能分担を行っているという結果が出てございます。それから、3ページ目でございますけれども、遠隔医療の関係でございます。遠隔医療を実施している病院につきまして調査いたしました結果、実施しているところは28、検討中を含めまして大体半分程度が遠隔医療を実施しているということでございます。これは地域性もございますんで、すべてということではなかろうと思っております。それから、4ページ目でございます。裏側になりますけれども、生涯教育に関する取組状況でございますけれども、これも実施しているところが68、検討中も含めると約90パーセントということで、かなりの病院で実施しているという結果が出ております。それから、次の5ページ目でございますけれども、これをもうちょっと具体的に質問をしたわけでございますけれども、生涯教育を行っている場合で、地域の医師とか看護師等を研修生として受け入れているかどうかという表でございます。全体では受け入れているところが57、検討中も合わせまして大体4分の3ぐらいの大学病院が受け入れているという実態でございます。それから、6ページでございますけれども、その医療従事者のうち、医療従事者を対象とした講演会等を実施しているかどうかという質問でございますけれども、実施しているところも、これも大体4分の3実施しているということになってございます。それから、7ページ目にまいりまして、もう一つ大学病院に対しての課題がございまして、医師紹介の透明化とか、明確化の確保ということでございます。医師紹介が公平公正に、円滑に行うための仕組みをつくっているかどうかということでございますが、1つの方策として、医師窓口の一本化というのがございますけれども、一本化している大学が35、検討中も合わせて大体50程度、5割を超えて6割程度ということになってございます。それから、続いて一本化している以外の場合で、透明化あるいは明確化を図っている、組織的な取組を行っているかという質問でございますけれども、行っている大学が21、検討中も合わせて大体30数校、大体40パーセントですか、の大学病院が何らかの形で組織的な取組を行っているという結果が出ております。一本化以外でございますので、例えば教授会に学務委員会とか、それから地域医療支援委員会、それから関連教育病院委員会というようなものを設けて、外部の人も入っていただいて関連病院の情報収集とか、あるいは人事に関する取組を行っていくということでございます。ちょっと早口で申し訳ございませんけれども、一応調査の結果でございます。

高久座長
   どうもありがとうございました。少し時間が少なくなりましたが、今までの4人の方々からの御発表と、それから今の問題につきまして、どの問題でも結構ですが、少し自由に御議論をしていただきたいと思います。教育者・研究者養成及び大学病院と、それから今の報告にありました地域における医師の確保等の推進、どのテーマでも結構ですから、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。水田先生にもう一つ御意見をお伺いしたかったのは、これは九州大学だけの問題ではないのですが、大学病院を独立行政法人化すると、どうしても病院の収入のウエートが大きくなりますね。おっしゃったように研究、特に、臨床研究がやれなくなることが心配されるわけです。1つの意見として、これは大学病院に限らず大きな病院は少し外来を制限して、マンパワーが非常に少ないもんですから、やはりマンパワーを入院にする必要があるのではないか。可能か不可能かは別にして、そういうことについてはどういうふうにお考えですね。

水田委員
   九州大学だけではないと思いますが、もともとほとんどの大学病院は入院型の病院なんです。ですけど、大学の外来は一方では特殊外来の機能を持っておりますので、なかなか制限できないというのが現状です。

高久座長
   ほかにどなたか御質問、御意見、どうぞ吉村先生。

吉村委員
   今の高久先生の御意見ですが、例えば米国のメイヨークリニックは、完全にクリニックなんですよね。日本の外来も、非常に高度な診断、検査機能を持って、本当に1週間とか3日ぐらいで全部診断がついて、入院が必要なものは病院に行くと。ですから、私、診療所の一般診療の外来機能とは別に、病院の外来機能はもっと強化すべきじゃないかというふうに私は思っているんですが。

高久座長
   いわゆる一般外来を制限すべきで、専門外来は当然強化しなきゃならないと思うのですが、一般外来を何らかの形で少し制限ということです。

吉村委員
   そうですね、振り分け外来みたいなのは別にして。

高久座長
   そうですね。

吉田委員
   公衆衛生の佐藤先生にお伺いしたいんですけれども、たしか7〜8年前に公衆衛生学教育協議会というのがあると聞いておりますけれども、そこで小規模のこういったスクール・オブ・パブリック・ヘルス的なものを幾つかつくるよりも、むしろ大きなものを東に1つ、西に1つぐらい、連合大学院のような構想でやったらどうかというふうなことが議論されたように聞いておりますけれども、いわばコンソーシアム的なもの、その点についていかがでしょうか。

小谷課長補佐
   ちょっと今退席されました。すみません。

吉田委員
   そうですか。福井先生はどうですか。

福井委員
   ええ、そのような話もありました。私たちが社会健康医学系専攻をつくるときも、幾つかの大学が似たようなものを考えていると伺ったんですけれども、最大の問題はティーチングスタッフがいないことです、日本に。つまり統計学や疫学を教える教員がいないために、ほかの大学ではつくれないと聞きました。いろいろなアイデアはありますが、私も日本に2、3カ所は絶対に公衆衛生大学院が必要だと思っています。しかし、ティーチングスタッフが不足しているという問題があるのです。最近思っていますのは、福島県立会津大学がコンピューター関係の大学を立ち上げたときに、半分以上のティーチングスタッフを外国から招聘して、非常に評判がよく、すばらしい教育をやって、学生も日本全国から集まっていると聞いていますので、それと似たようなことを公衆衛生大学院もされるといいんじゃないかなと。つまり外国から優秀なティーチングスタッフを半分以上招聘して、授業も英語でやるというくらいのものをつくった方がいいのではないかと最近は思っています。

高久座長
   公衆衛生学の教室ができたのはたしか終戦後ですね。60年たっているはずなのですが、そこでの博士課程はどういうことになってきたのですか。もうたくさんの方が公衆衛生学の教室を出られて、博士も当然取られたし、学会もやってこられた。その人たちが、なぜ外国のスクール・オブ・パブリック・ヘルスの卒業生と同じようなクオリティーを持たなかったのか、そこがよく分からないのですが。

福井委員
   それは恐らく日本の医学部の大学院の制度とアメリカの大学院の制度の違いに行き着く問題だと思います。大学院の最初のところでコースワークなどをきっちりしないで、教授のやっている狭い範囲のことだけをやれば何年後かに学位が取れる。アメリカのスクール・オブ・パブリック・ヘルスでは、幅広いサブジェクトについて、きっちりコースワークをやった上でしか学位が取れません。学問としての統計学だとか疫学をきっちり勉強して、学生に体系立って教えられる教授が少ないために、その下で育っている人が少ないというのが実情だろうと思います。

高久座長
   ほかにどなたか。どうぞ、南さん、その次に寺尾先生。南さんが先に、どうぞ。

南委員
   ちょっと素人的というか、国民的な視点から申し上げるんですが、医療費が総枠抑制で非常に厳しい状況になっていまして、医療、医学教育とか全部を含めた日本の医療政策というものがやはり非常に問われているんだと思うんです。それで、先ほど松尾先生もこれからますます小さな政府ということになってというお話をされたんですが、やはり今の議論は、主に小泉政権のもとでは経済財政諮問会議とか規制改革会議の方向でしか医療のことが論じられず、それに対して厚生労働省にしても、医学部にかかわる文部科学省にしても、それに完全に論破できるだけの論理がやはり非常に希薄だということを痛感するんですね。私、規制改革会議とか、今は規制改革会議とは言わないで民間市場開放会議と言うんですか、時々傍聴しますけれども、もう本当にもうちょっときちんとした論理で言い返さないと、とても国民の理解が得られないというところに来ていることを非常に危機的に感じるんです。それで、私自身も何か言わなくちゃいけないとは思うんですが、やはり総合的に医療政策というものを、国の行くべき政策の方向を論じるところが、学問全部を見渡してもないということが、これが公衆衛生大学院がこういうことをしてくださるのかどうかわかりませんけれども、ないということに非常に危機的なものを感じているんですが、こういうことは医学教育の一環のことではないのかどうかということをちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、ない、ないと言って10年くらいが経っているので、どうしたらこの医療費、今や本当にOECDの中でも対GDPでは日本の医療費はついに最低になってしまったんです。イギリスが最低だったんですが、ブレア政権のもとで、5年計画でOECDの平均にするということを言い出して日本を抜きましたので、今は日本が最低なんです。これで本当にいい医療が提供できるのではないということをきちんと論理で言わないといけないと思うんですが。

高久座長
   どなたかお答えを、どうぞ、小川先生。

小川委員
   全く言いたかったことをおっしゃっていただいたと思います。WHOの統計を見ても、OECDのランキングを見ても、日本の医療は決して高過ぎない。むしろ先進国の中で非常に低い。しかも保険制度というものはかなり批判されていますけれども、その各国の中と比較しますと、やはり世界に冠たるいい制度である。もちろんこれでいいわけじゃないんですが、改革はすべきですが、そういうものを感じていましたし、じゃ、エビデンスに応じて反論していくと言ったときに、おっしゃったごとくOECDのデータ、それからアウトカムとしての平均寿命とか乳児死亡率の世界一の低さとか、こういうことをもっと国民にアピールしていく必要があると思っています。

高久座長
   寺尾先生、何か。

寺尾委員
   社会健康医学系専攻のことについてお伺いしたいんですけれども、こういう大学院を出ても、いわゆる国家資格というのがないということもあって、就職にそれほど有利に働かないという面がございます。遺伝カウンセラーコーディネーターというのをつくっておられるわけですが、日本先天異常学会だとか、そういうようなところでそういう認定をしている。また大学は大学でこれは独自に認定をしておられるのか。そして、前、厚労省に伺ったところでは、もう国家資格というのは今後つくらないというようなことをおっしゃっていました。そういう認定の在り方というのをやっぱり国として支援していきませんと、こういう人たちの就職先もないし、あるところでは学会が認定し、あるところではこういうふうに大学自身の大学院の課程が認定しているという意味でばらばらになっているので、もう少しこの辺りを整理する必要があるんじゃないかという気がします。

高久座長
   ほかにどなたか。先ほどの南委員のお話ですが、WHOが日本は平均寿命が一番長い、健康寿命が長いというワールド・ヘルシー・レポートを出したのが、たしか2000年ですね。そのときにそれをメディアが全然取り上げなかった。医師会が、ワールド・ヘルシー・リポートにあるように日本のシステムが良いのだと言ったんですが、医師会が言ってもメディアの方で取り上げなくてそのままずっと来ている。それから私は不思議に思ったんですが、アメリカの医学がいい、いいといろんなところで言っておられた方々が、全然そのことに触れなかった。あの報告では確かアメリカは16位ぐらいだったですね。我々もしばらく経ってから言うべきだったと思う。今でもそうですから、ここにいらっしゃる皆さん方に積極的に御発言いただいて、それからメディアの方も取り上げていただければと、そういうふうに思います。どうぞ。

福井委員
   ワールド・ヘルシー・リポート2000は、私もよく取り上げて話をしたり、講義したりしてきました。生存期間、つまり寿命や健康寿命という、クオリティ・オブ・ライフで調整した寿命などについて日本は世界一なんですが、スチュワードシップという、医療提供プロセスに国民が満足しているかどうかという側面では、世界でトップじゃないんで日本はかなり低くかったように思います。私が思いますのは、生存期間が長いとかそういうことを強調すると、じゃ、今の医療でいいじゃないかということになりますので、そうではなくて、いかに今働いている医療者が過酷な状況なのかとか、欧米と比べてどれくらい負担が大きいかというデータを示さない限りは、なかなか今よりも医療者を増やそうとか、医学部の定員、看護系の人をふやそうという議論にならないのではないかな思います。おそらく日本人の寿命が長いのは医学が優れているばかりではないと思います。単に衛生状態がいいとか、食べ物が欧米に比べてヘルシーだからということなどが重要な要素だと思います。

高久座長
   あのリポートでも患者の医学へのアクセシビリティーは日本が一番良かったですね。

福井委員
   一番ですね。

高久座長
   それは患者さんにとって一番良いことではないかと思うのです。確かにあのときにアメリカなど低い方にランクされたところからは、統計のとり方がおかしいとかいろんな文句が出たのですが、その後の統計でもやはり日本は一番良かったですね。ほかに、どうぞ。

田中委員
   南委員の要するにオピニオン・リーダーになるような人材をもっと育たなければいけないという、そういうお話なんですけれども、東京医科歯科大学では、私は直接やっているわけではないんですけれども、マスター・オブ・メディカル・アドミニストレーションというナイトスクールをつくっているんです。そこには医療政策学コースというのがあって、2年間なんですけれども、要するに学生というのは平均年齢45歳から50歳ぐらいで、要するに社会のいろいろなもうレベルのかなりのレベルにいる、要するに医者じゃない人たちですね。そういう人たちに、医療の現状を2年間かけて理解してもらって、いろいろディスカッションなんかを経て、サポーターといいますか、そういう人たちを育てていくという、そういうコースを今年で2年目、3年目に入りますけれどもつくっています。やっぱり即戦力が必要なので、そういうような対応がやっぱり重要なんじゃないかというふうに考えています。

高久座長
   まだいろいろ御議論があると思いますが、時間が迫ってまいりました。この会議の今後の進め方について御相談します。今まで3回にわたって議論をしていただいたわけですが、今までの議論された主なテーマがいくつかあると思います。1つが、コアカリキュラムの問題です。それからもう一つが、学生がどれだけ臨床にタッチできるかという問題、そういう幾つかの問題についてワーキング・グループをつくって、ワーキング・グループの報告を全体会議にかけたいというふうに考えていますので、事務局の方から簡単に説明していただけますか。

小谷医学教育課長補佐
   それでは、資料6を使いまして説明します。ちょっと座って説明させていただきます。まずこのワーキング・グループの設置の趣旨、1に簡単に書いておりますが、先ほど座長の方からお話がございました2回の御審議をもとに参考で配っておりますが、検討事項メモとして整理したものに従いまして、これまで3回今まで先生方に御審議いただきました。これらのうち、特に専門的な調査研究を必要とするもの、今のところ2つのテーマ、具体的には医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に関するもの、そしてもう一つが、教育者・研究者養成方策の充実に関するものでございますが、これにつきましてワーキング・グループを設置してはいかがかと考えております。2の各ワーキング・グループについてというところですが、このワーキング・グループにおきましては、主査、副主査をそれぞれこの本協力者会議の委員に御就任いただきまして、議論を整理していただきますが、この主査、副主査になられる方も含めて、この会議の委員の方はどちらのワーキング・グループにも自由に参加できるというような形にさせていただければと思います。さらに各ワーキング・グループに、この会議の外部から複数名の専門委員の方を委嘱するというような形を考えております。また、このワーキング・グループ間の議論の調整ということもあろうと思いますが、これにつきましては、副座長でいらっしゃいます福田委員にお願いさせていただければというふうに考えているところです。それぞれのワーキング・グループにつきましては、平成19年3月の本会議の最終報告に向けまして議論に反映できるように、来年の夏ないし秋くらいまでの検討をお願いしたいというふうに考えておりますが、結論が得られたものにつきましては、来春に予定しております本会議の中間報告にも取り入れさせていただきたいと考えております。次に、各ワーキング・グループ、(1)からですけれども、まず1つ目が「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂に関するワーキング・グループです。このモデル・コア・カリキュラムが改訂されました平成13年3月以降に卒後臨床研修の必修化といった医師養成に係る改革ですとか、この会議の大きなテーマの1つでもございます地域医療を担う人材育成の必要性、あるいは本年4月、厚生労働省の方におきまして、「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」の報告書が出されまして、そこでも指摘されておりますが、国民の死因の3割を占めますがんについての体系的な診断や治療の確立といったことのための人材の育成に対するニーズの高まりといった医療ですとか、医学教育をめぐる環境の変化を踏まえまして、改訂を必要とする点を洗い出していただくといったこと。さらに、その洗い出した点を踏まえて具体的な改訂案を作成していただくということを御議論いただきたいと思います。こめじるしの1でつけておりますが、しかしながらこの医学教育モデル・コア・カリキュラムが導入されましてから、まだいまだ卒業生が輩出されていないという状況もございますので、基本的には現在の構成を維持することを前提に検討していただく。そして、さらに2で書いておりますが、今後、またしかるべき時期には本格的な改訂も必要となってくると考えますので、その改訂のサイクルですとか、そのための仕組みについて御検討いただければというふうに考えております。その際、1にまた戻っていただきまして、こめじるしの2でちょっと書いておりますけれども、これまでの御審議も踏まえまして、地域医療を担う人材の教育を充実させる観点から、地域保健・医療に関する実習をこの医学教育モデル・コア・カリキュラムの中に位置づけていただくといったことを御検討いただきたいと思います。地域保健・医療につきましては、モデル・コア・カリキュラムの「医学、医療と社会」というこの章で取り上げられておりまして、実際に51の大学で臨床実習前に地域病院や医療施設で、何らかの形で早期体験学習を行っておられるといっているような実態もあるようでございます。こうした実態も踏まえていただいて御検討いただければと思っております。また、社会的、医学的要請が高いこの腫瘍学教育の充実につきましては、先ほど御紹介いたしました厚生労働省の検討会の報告書では、特に化学療法ですとか、放射線療法を行う人材育成の必要性が指摘されております。現在のこのモデル・コア・カリキュラムにおきましては、「医学一般」という章がございまして、その中で原因と病態につきましては、腫瘍というものが1つの項目として出てまいりますが、その具体的な診断や治療につきましては、それぞれの臓器を学ぶ中でその診断と治療を学ぶといったような形になっておりますので、腫瘍についての発生ですとか病態、診断、治療について、できれば体系的な形で到達目標を設定していただくということを御検討いただければというふうに思っております。これらこの2つの事項につきましては、特に来春予定しております中間報告に盛り込むようなペースで御検討いただければと考えております。このワーキング・グループにつきましては、福田委員に主査を、北村委員に副主査をお願いできればというふうに考えておりまして、さらに医師国家試験ですとか、新医師臨床研修制度との整合性を図るということも重要だと思いますので、厚生労働省の医政局の医事課の担当者の方にも検討への参画をお願いしたいというふうに考えているところです。続きまして、(2)の教育者・研究者養成方策の充実に関するワーキング・グループでございますが、これにつきましては、医系分野で求められる教育者・研究者養成の現状と課題、本日も少し御議論いただきましたけれども、これを整理していただいた上で、学部や大学院における具体的な養成方策、学部における選択カリキュラムですとか、MD/PhDコースの在り方、そういったあるいは大学院における課程制大学院の実質化といった議論もございます、そういったもの。あるいは教育者・研究者養成におきます卒後臨床研修の位置付けと、こういった問題について御検討いただければというふうに思っております。このワーキング・グループにつきましては、主査を大橋委員に、副主査を垣生委員にお願いしたいというふうに考えておりまして、さらに臨床研修のこともかかわりますので、厚生労働省医政局医事課の方、また研究振興という観点から、研究振興局のライフサイエンス課の者もこの検討に参画させていただければというふうに考えております。裏側になりますが、冒頭少し御説明しました今後の予定ですけれども、本日の会議でこの案につきまして御了承いただけましたら、今月中にできればワーキング・グループの外部の専門委員の方の決定、委嘱をしまして、来月から年明けにかけまして、それぞれのワーキング・グループの第1回会合を開催し、来年の夏から秋にかけて、それぞれのワーキング・グループで検討結果を取りまとめるというようなことを考えさせていただいております。以上、よろしくお願いいたします。

高久座長
   今、事務局の方から説明がありましたように、差し当たってこの2つのワーキング・グループを作って、このテーマで御検討いただきたいと思います。主査の福田先生、それから大橋先生、御苦労様ですが、よろしくお願いいたします。今後の予定といたしまして、来年の2月2日木曜日の1時半から3時半、もう来年のことになるので、大分時間がありますが、その間にワーキング・グループの皆さん方にお仕事をしていただくことになると思います。よろしく御予定のほどをお願いいたします。時間になりましたので、これで終わらせていただきます。御発表いただきました4人の先生方、ありがとうございました。


(高等教育局医学教育課)

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