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1.入学時点に係わる論点

(1)入学定員の在り方

協力者会議における委員の意見
・医師の過剰労働がクローズアップされているが、医師の絶対数が足りない。
・このままの医師数とするのであれば、コメディカルを増やして、医療体制そのものの中での医師の果たすべき役割を限定しないと、患者のためにはならない。
・勤務医不足の一因は、勤務医が過酷な勤務実態と将来への展望のなさに耐えかねて大量に開業していることにあるのではないか。
・地域医療における医師不足は医師絶対数の不足だけではなく、若い医師が地方に定着しないために生じる「医師偏在」こそが問題であり、その理由は、1専門医研修(困難例の治療、高度医療技術研修)の機会が少ない、2医師不足による精神的、肉体的な負担(小児科、産婦人科など)、3経験できる症例、疾患が少ない、4子どもの教育など生活上の不安、が挙げられる。
・地域の医療ニーズは総合診療的なものが高く、必ずしも専門家を全部そろえることではない。
・大学院生が増加したのは事実であるが、全員がその後研究者になるのではなく臨床に戻るので、大学院生が増えたので医師不足につながるということはない。
・新医師臨床研修が始まって2年間が過ぎても、若手医師はそのまま後期研修として臨床研修病院に残り、大学病院における医師不足の状況はまだまだ続くのではないか。
・地域に医師が足りないという議論の原点はその病院に医師が足りないということであって、そもそもそこに病院が必要なのかという病床数の過剰ということについても考えることが必要。
・病院の数と医師の数とのバランスについて、大きな視点で方向性を示すことが必要。
・20年前から始まった入学定員の削減は、人口10万人に対しての必要医師数や医療費の抑制という視点だけで検討されている。
・イギリスの人口は日本の半分ぐらいだが、医学部定員は日本と同じくらいになっており、日本では本当に医師が過剰で入学定員を削減しなければならないのか今からでも議論すべき。
・患者の医療に対する要求は高まっており、削減目標に向けて医学部の入学定員をさらに削減するというのはいかがなものか。
・医学部における女子学生が増加しており、女性医師の労働確保の観点を踏まえても、患者や国民の立場からすると、入学定員は増やして欲しい。
協力者会議における参考人の意見
・日本の医師については1総数が足りない、2地方に足りない、3小児科、産婦人科が足りない、4研究者が足りない、5行政機関、保健所で足りない、が、1駅前のビル開業の内科医は増えている、2心臓外科医のような特定の分野については増えている。
・平成10年当時と医師の仕事の質、量ともに増大している。質については、インフォームド・コンセントが重視されることにより、術前、術後の説明に時間をかけるようになった。量については、平均在院日数の短縮化により大変増えている。
・大学院を重点化した大学が、地方から医師を吸い上げている。
・専門分野の細分化が見られる。
・今の日本の医療は若い医師の向上心と責任感で成り立っているが、労働基準法の遵守により、ますます難しくなっている。
・ほとんど24時間、365日オンコール体制というように、病院医師のクオリティ・オブ・ライフが低いため、昔は定年前か卒後10年くらいして開業していたが、現在は部長クラスの医師がどんどん開業している。
・医学部の新たな入学定員の増員は行われておらず、北海道、東北地域においては、医療施設に従事する医師数が、中国、四国、九州地方に比較してかなり少なくなっている。
・へき地を含む地域の病院・診療所等においては、地域医療に従事する医師不足が深刻化しており、診療体制の維持が困難な状況にある。
・今後、へき地で開業している医師の高齢化などにより、医師不足がさらに深刻化するおそれもある。
・地元大学医学部卒業医師の大都市圏への流出、法人化及び臨床研修義務化等の大学を取り巻く環境の変化により、専門医療における医師不足も、郡部の自治体病院を中心に深刻なものとなっている。
・総合診療医として、1専門化した科の複数の病気を診ることのできる者、2専門分化による全体の中の見落としを見ることのできる者、3医療経済や医療疫学のような基礎と臨床の隙間を診ることができる者、4トリアージのできる者、5研修医を教えるための講師、の5つのタイプの人材が必要。
・医師需給の見直しに当たっては、行政や地域医療の関係者が、何科で何人不足しているのかということを、積み上げ方式でガラス張りで議論して欲しい。
・入学定員における診療科枠や講座別の定員枠を設けて欲しい。
・専門医の養成については分野別の育成計画と入学定員を関連付けて検討して欲しい。
・医師不足地域の医学部の入学定員の拡大と地域枠の創設が必要。県立の医科大学の入学定員は、県の判断で増やせるようにして欲しい。
・自治医科大学の入学定員と医師不足地域への配分枠の拡大が必要。
各種団体・機関の意見
・日本の医療機関が先進諸国に比べ少ない医師数で過剰な勤務により医療を支えている現状に加え、今後女性医師の増加に伴うワークシェアリングの必要性が増加することなどにより、我が国の医師数の相対的な不足は依然続くと予想されるため、特に地域医療に貢献する医師養成の充実の観点から、医学部入学定員の在り方を検討する。また、専門医の不足解消について、各「講座」ごとに入学定員を設定すべきとの意見が一部で出されているが、このことは、多方面から慎重な検討が必要な課題である。(国、地方公共団体、大学医学部)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・自治医大の定員枠の見直し等 医師確保の困難さの度合いに応じ、原則都道府県一律となっている定員枠を弾力的に見直す。
・将来の医師需給の推計は、この中間報告書で述べてきたような、医療の質と量の変化をはじめとした医師の需要側の変化、労働法規の遵守、女性医師の増加などの供給側の変化を十分考慮に入れたものとすべきである。また、総量としての医師の数だけではなく、診療科別、地域別に需給の推計を行うことにより、現在医療の場で起こっている変化やその対策が明らかになると考えられる。併せて、医師需給を取り巻く変化の定量的な分析や将来推計に必要なデータを得るための基盤整備を進めていく必要がある。
【医師の需給に関する検討会中間報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・自治医科大学卒業生は、その大多数が、出身各都道府県において、へき地・離島等における勤務義務を果たし、義務終了後もへき地等において勤務を継続するものも多い。自治医科大学の定員枠を見直すことによって、効率的にへき地・離島における医師の確保が進むことが期待される。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・自治医科大学入学者の定員枠の拡大
【提案・要望書(平成17年6月(九州知事会)】
・医師不足地域の医学部の入学定員の拡大及びへき地医療を担う医師の養成を目的とする自治医科大学の入学定員と医師不足地域への配分枠の拡大を図ること。
【要望書(平成17年6月 青森県)】
・医師不足地域の医学部については、地方の判断による入学定員の増を認めること。
・医師が不足している地域への配分枠の拡大ができるよう自治医科大学の入学定員を増員すること
【提言・要望書(平成17年6月 福島県)】
・地域医療を担う医師の都道府県格差を是正し、医師不足が深刻化している地域の医師を確保する観点から、医科大学入学定員の削減方針を撤回し、医科大学入学定員の増員を図るなど、必要な措置を講じること。特に、筑波大学及び自治医科大学の入学定員を増員すること。
【提案・要望書(平成17年7月 茨城県)】
・医学部定員については、医師の地域偏在を踏まえ、見直しを行い、医師不足地域の医学部への「地域枠」設定による定員増を図ること。
・へき地医療の確保及び向上という建学精神をもつ自治医科大学の入学定員の在り方について、医師の地域偏在改善の観点から厚生労働省と検討すること。
【平成18年度政府予算に対する要望書(平成17年6月 新潟県)】
・地域の実情に応じた大学医学部への入学定員の見直し
【平成18年度国の予算編成に関する提言・要望書(平成17年6月 三重県)】
・女性医師の増加に対応する産前・産後休暇、育児休暇の代替要員の医師を確保するため医学部定員の増員を図ること。
【提案・要望書(平成17年6月 島根県)】
・小児科、産婦人科、麻酔科をはじめ医師の不足・偏在状況を改善するため、診療科別の入学定員を採用、または、いわゆる「講座」別の定員を設定。
【医師の地域別及び診療科別不足・偏在の改善に向けての要望(平成17年2月 全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会)】

(2)地域枠の取扱い

協力者会議における委員の意見
・地方に医師が不足している原因の一つとして学生は親元で仕事をしたいという気持ちを持っていることがある。地元に医師を供給するためには、入学者に占める地元出身者の割合を高めることが必要。
・地元の学生を入学させるためには、1校当たりの推薦枠を増加させるとともに、大学側が高校を訪問したり、逆に高校の校長を招いたりして、校長にどの程度の生徒を推薦すればよいのか理解を促すことが必要。
・地域枠を設けることにより、限られた対象校にきめ細やかに大学の情報を発信するとともに、県民を挙げて医師育成をどうするのかということについてマスコミも参加しての意識改革をすることにもつながった。
・地域枠の設定に当たっては、高等学校校長会や市町村で、趣旨の説明、協力依頼を行うともに地域マスコミを介して県民全体への趣旨説明、生徒向けの説明会などを行うことにより、優秀な学生を確保できた。
・理数系に特化したスーパー・サイエンス・ハイスクールには医師志望の生徒が多く、ここに的確な情報を提供することは有効であったし、校長の支援も得られた。
・地域枠を設けても地域医療問題に関心を持つようなプログラムでの教育を継続的に行わないと、地域枠で医学部に入学しただけで終わってしまう。
・アメリカにおいては医師が少ない地域の出身者を地域枠として入学させている例があり、地域枠についてはそのような学生を選抜する方が有効ではないか。
・地域枠で入学した学生は、病院で働くゼネラリストの核となるように、特別なプログラムを組むことが必要ではないか。
・地域枠を設けても卒業し、義務を果たすとまた都会へ出て行ってしまうのではないか。
・地域枠については、かなり当該地域の細かな解析をしないと、妥当性については勘案できない。
協力者会議における参考人の意見
・現在の地域枠については、枠を作らなくても本来の成績で合格する人数を「枠」として設定しているとの指摘もある。国立大学であれば、最低3割、最高5割を目指して設定して欲しい。
各種機関・団体等の意見
・「地域特別推薦枠」などの学部入試方法の改革を行い、地域医療を担う優秀な医師の育成を図る。(大学医学部)
・医学部入学者に対して、地元入学者への奨学金(一定期間、地元医療へ従事すれば返還免除)等の修学支援を行い、地域からの進学希望を増加し、優れた人材を確保する。(大学医学部)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・医師確保が困難な都道府県における医師確保対策に資するものとして、入学定員の地域枠の拡大を推進する。その際、奨学金の有効活用等、実際に地元に定着することを促す施策を併せて検討する。
【医師の受給に関する検討会中間報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・文部科学省によれば、平成17年度7大学において地域を指定した入学者選抜を実施しており、平成18年度からさらに7大学が実施する予定となっている。これにより医師の地域への定着が期待される。
・自治医科大学などへき地・離島の保健医療サービスの向上を目的とした開学の精神を有する医学部の環境が、学生にへき地・離島の保健医療に従事する医師を持続させることができる。奨学金制度を実施する都道府県は、奨学金制度や地域を指定した入学者選抜を通じ、へき地・離島の保健医療サービスの提供に実効性のある取組が期待される。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】
・地域医療を担う医師の養成と地域への定着を促進するため、奨学金制度の構築や医学部入学定員の地域枠設定など、新たなシステムを構築すること。
【決議 (平成17年5月 全国自治体病院経営都市議会協議会)】
・医師の地域偏在を改善するため、入学定員に「地域枠」を設定、または、その枠を拡大
【医師の地域別及び診療科別不足・偏在の改善に向けての要望(平成17年2月 全国自治体病院開設者協議会、社団法人全国自治体病院協議会)】
・大学医学部のへき地医療従事医師養成特別入試(入学)枠の設定
・当該特別枠医学生等に対する修学資金貸与制度の創設(自治医科大学に準じたへき地勤務の義務年限あり)
【へき地医療における医師の確保対策について(平成17年6月 四国知事会)】

(3)学士編入学の現状と課題

協力者会議における委員の意見
・学士編入学枠を増やすことによって地域医療に興味関心を持つ医師が増えるのではないか。
・学士編入学については、1クラスで学生が2層化してしまうのではないかという懸念があり、編入学を100パーセントにすればメディカルスクール構想につながることから、この点について検討が必要。
・4年制のメディカルスクールのコースを試行的にでも実施することが必要。
・18歳という年齢が未熟にならざるを得ない社会状況があり、若い人がきちんと踏むべきプロセスを踏んで、教えられるべきことを教えられてはぐくまれていくという観点からの手立てが必要。

(4)AO入試等入学者選抜方法の改善

協力者会議における委員の意見
・少子化の中で医学部へ入学する学生が極端に成績優秀な人間に偏ってきており、日本全体の知的財産という観点から考えると、それほどまでに医学・医療に偏った人材が来ていいのだろうかと感じる一方で、入学後に目的意識が欠如し、大変優秀だが本来の医師になるべきモチベーションが落ちてしまうという事例も目に付く。
・医学部の入学志願者の中には、資格を持ちたい、社会的な安定を保ちたい、ある意味でプライドを持ちたい、ということで必ずしも医師への動機付けが十分でなく、入学後の留年が問題になっているケースがある。

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