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3.卒後教育に係わる論点

 

(1)地域医療を担う医師養成の在り方

協力者会議における委員の意見
・新医師臨床研修においては「地域保健医療」が必修科目になっているので、そのプログラムの在り方について注意することが必要。
・新医師臨床研修における3ヶ月の地域医療プログラムは、医師にとっての非常に重要な地域医療の初期体験である。
・地域医療のプログラムについては、指導医自身が地域医療の重要性を理解しておらず、そのような指導医への働きかけが必要。
・地域を担う医師を供給するのに研修医を配置するということがよく言われるが、若手医師が最先端の医学で専門領域を勉強したいという気持ちを持つのは当然であり、それを抑え付けることには無理がある。
・大学を卒業後も、研修医の期間中は先輩医師のもとへ行って自分たちの問題を解決する仕組みを医科大学ごとに作ることが必要ではないか。
・地域の医療ニーズに応えるため、総合研修、あるいは総合臨床、総合内科といったものを一つの専門として認めて、研修を行うことが必要。
・プライマリー・ケアの能力を育成するための組織や仕組みを作らなければならない。
・地域の医療を担う医師をいかに育成するかということと、地域医療を担う医師を育てる臨床系大学院をどのようにマッチさせればよいのか議論が必要。
・地域の医師を確保するためには、ある程度のレベルに達した医師や専門医を再教育し、プライマリケアのできる熟練医師を育てることも一つの考え方である。
協力者会議における参考人の意見
・開業医が増えているが、開業しても総合診療ができないと困るので、総合診療を学ぶために、2年間程度地域医療を研修してはどうか。
各種団体・機関の意見
・各地域全体として大学病院と地域医療機関(病院・診療所)・保健所等が連携した卒後臨床研修体制を整備し、医学部学生への積極的な情報提供を行い、地域での卒後臨床研修者数を増やすとともに、地域医療への定着化を図る。このなかで、地域医療を一定期間(半年〜1年)経験する等のコースを設ける。(地方公共団体、大学医学部)
・地域で総合的に診療を行う医師の育成体制を確保する。(大学と医療機関の連携)
・へき地医療を理解させるために「へき地医療の専門履修コース」を設定するなど、専門研修体制を整備する。(大学医学部及び附属病院)
・専門医、指導者等の育成を目指した後期臨床研修制度(仮称)や臨床系大学院の組織並びにカリキュラム改革等を行い、臨床研修終了後の医師が総合的医療やへき地医療を学べるコースを大学院に設置し、国及び地方公共団体は財政的に支援する。(国、大学医学部)
・退職後医師を含めて、地域医療に関わることを希望する様々な年代の医師が総合的医療やへき地医療を学べるコースを大学院に設置し、国及び地方公共団体は財政的に支援する。(国、地方公共団体、大学医学部及び附属病院)
・地域医療、特にへき地医療を担っている医師が、定期的に一定期間大学病院や地域中核病院または外国の医療機関において、医学・医療の進歩を学べるよう受け入れ側体制の整備や研修期間中の代替医の派遣制度の整備を図る。(国、地方公共団体、大学医学部及び附属病院)
・大学病院における研修登録医制度などを活用して、病院回診、症例検討、手術技法の修得、諸検査技法の修得などを通じ地域の医師の生涯研修システムを構築し、地域医療を担う医師に、その存在意義と重要性を認識、理解してもらう取り組みを行う。(大学病院)
【地域における医師の確保等の推進について(提言)(平成17年3月 国立大学医学部長会議・国立大学附属病院長会議)】
・医師の臨床研修の必修化を契機として、患者の症状全般を診るという総合診療への関心が高まり、へき地・離島での診療の総合性に関心を持つ医師は徐々に増加している。このため卒前教育や臨床研修など、あらゆる機会をとらえて、へき地・離島での診療への関心をさらに高めるよう努めるべきである。また、へき地保健医療アンケート調査において、へき地診療所医師に臨床研修におけるへき地・離島研修への期待について尋ねたところ、臨床研修を契機として、へき地・離島での診療への関心が高まることが期待されている。こうしたことを踏まえると、卒後臨床研修においてへき地・離島での診療の実習を経験する医師を増加させることを通じて、臨床研修医に将来のへき地・離島における勤務についての関心を持ってもらうことが重要である。
【へき地保健医療対策検討会報告書(平成17年7月 厚生労働省)】

(2)大学病院における卒後臨床研修の現状と課題

協力者会議における委員の意見
・医師の地域偏在の理由の一つとして、学生は卒業後、研修の充実している病院を選んで大都会に行く、ということが挙げられる。
・大学では研修医への処遇に限度があり、また、プライマリケア中心のプログラムであるため、専門教育中心の大学では初期研修にふさわしくないのではないかと言うことで、どんどん大学から研修医がいなくなっている。
・地方の大学では研修医が激減して崩壊寸前になっているが、地方大学が崩壊すると周辺の地域医療も崩壊してしまうので、新医師臨床研修制度は見直しが必要。
・卒後すぐに大学病院以外の病院で研修することによって、大学では経験することの少ない疾患を勉強することや他学出身の人達と切磋琢磨することによって生じる連帯感を経験することは良いことである。
・1年次は全員が大学以外の病院で研修を行い、2年次は大学病院で研修をしながらその後の方向性を決め、大学病院での専門研修へ続けるようにすると良い。
・大学病院の研修医が少ないから制度が悪いというのはおかしな話で、多くの研修医が大学病院を希望するような病院になるように大学側も変わる努力が必要。
・研修には学生からの意見を反映させることが必要で、そのための仕組みが必要。
・研修医や学生、関連病院会からの要望により、2年目のプログラムについて、1年間を必修科も含めて外の関連病院で行うというプログラムも加えた。
各種団体・機関の意見
・新臨床研修制度の導入と共に大学病院における臨床研修医在籍状況の推移は制度の導入前の平成15年度72.6%から、導入後平成16年度55.9%、平成17年度49.2%と大幅に減少しつつある。ことに一学年の研修医総数が20名以下の大学病院は全国で実に14施設に及んでいる。医学研究・教育施設におけるこの様な人材不足は、近未来における医学・医療研究の沈滞の可能性を強く危惧させるものである。これは医学・医療研究の国際競争力の低下をもたらし、世界のトップレベルを維持している日本の医学研究と高度先進医療の低下につながって行くことが予想される。結果的に、国民の医療と福祉の大きな危機をもたらすことを危惧させるものである。
・医学部教育における実効的で実践的な臨床実習の充実は、卒後の新臨床研修制度と重複する。前述した卒後の新臨床研修制度がもたらす地域医療と将来の医学研究への影響は国民の福祉に直結する重大問題である。従って、卒前教育において実践的医療を含む臨床実習を確立するとともに、これと関連し卒後の研修期間、研修施設、研修教育内容などの観点から、幅広く新臨床研修制度を見直す必要がある。
・生涯教育を基本とする医学教育においては卒前・卒後の一貫した教育理念が強く求められる。卒前医学教育は文部科学省、卒後医学教育は厚生労働省によって指導監督が行われており、今後、両省における、一貫した卒前・卒後を通じた医師養成教育及び医師生涯教育を推進する行政システムが強く望まれる。
【臨床研修/臨床実習教育環境充実・改善に関する提言と要望(平成17年6月 全国医学部長病院長会議】

(3)大学病院における専門医養成の在り方
(4)大学院(特に臨床系大学院)の役割と充実方策

協力者会議における委員の意見
・医療人の育成という視点からは、医療人の生涯研修といったところまで、地域にある国立大学法人の医科大学としては責任を負わなければならないと感じている。
・医師の養成については1年、2年の問題ではなく、5年、10年の養成システムでなければならず、1施設だけでそのような養成をすることは不可能であり、大学病院、専門病院、場合によっては中小病院もローテーションしながら、大体10年くらいかけて、家庭医としての専門医も含め、しっかりした専門医の養成をすることが必要。
・後期の専門研修について大学全体としてしっかりしたシステムを作り上げていくことが必要。
・臨床研修が終わって、専門医への道となる専門研修は大学病院で行うべき。
各種団体・機関の意見
・都会を中心に分布する臨床研修病院に研修希望者が集中する一方、研修希望者が少ない地域では、医師の過疎化がすすみ、地域医療が崩壊の危機に瀕している。新医師臨床研修制度においては地域保健・医療研修が必修科目とされているが、今後も、地域保健・医療研修の更なる充実のため、卒後臨床研修プログラムの見直しが必要である。さらに、卒後2年間だけでなく、卒後3年目以降についても診療経験を通じて地域医療の重要性についての認識を深める必要がある。
・研修医に対しては、精神面や安全管理などの点で、きめ細かな配慮が必要であり、卒後3〜7年目の医師が指導医とともにチーム診療の中で研修医をサポートする必要がある。
・国立大学には「知識・技術の創造拠点」「中核人材の養成拠点」「社会的な寄与」という果たすべき役割があり、優れた医師を育成・輩出するという医育機関としての責務は重大なものである。
【地域医療を活性化する国立大学病院専門医養成システム(平成17年8月 国立大学附属病院長会議)】

 

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